舶用燃料油供給装置
【課題】センサや自動弁などを使用することなく確実に濾過装置で濾過された燃料油を主機関や発電機関に供給し、且つ容易で安価に設置することのできる燃料油供給方法とその装置を提供する。
【解決手段】船舶の船体内に設けた燃料油を貯蔵するストレージタンク6と、燃料油中に含まれる水分やスラッジ等を沈降分離させるセットリングタンク7と、エンジンに供給される燃料油を保持するサービスタンク2とを備えた舶用燃料供給装置において、前記サービスタンク2と連通する緩衝タンク1を設け、この緩衝タンク1にセットリングタンク7の燃料油f2を供給すると共にサービスタンク2の燃料油f4を供給し、前記緩衝タンク1に供給された燃料油f2と燃料油f4とが混合した燃料油f2,f4の中間層を抜き出してその燃料油f2,f4を濾過装置3で濾過し、濾過された燃料油をサービスタンク2に供給する。
【解決手段】船舶の船体内に設けた燃料油を貯蔵するストレージタンク6と、燃料油中に含まれる水分やスラッジ等を沈降分離させるセットリングタンク7と、エンジンに供給される燃料油を保持するサービスタンク2とを備えた舶用燃料供給装置において、前記サービスタンク2と連通する緩衝タンク1を設け、この緩衝タンク1にセットリングタンク7の燃料油f2を供給すると共にサービスタンク2の燃料油f4を供給し、前記緩衝タンク1に供給された燃料油f2と燃料油f4とが混合した燃料油f2,f4の中間層を抜き出してその燃料油f2,f4を濾過装置3で濾過し、濾過された燃料油をサービスタンク2に供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用燃料のC重油に含まれているFCC触媒などの粒子状不純物を除去し、その粒子状不純物を除去したC重油をエンジンに供給する舶用燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンカーなどの大型船舶の機関としては、大型低速機関が使用されており、その機関の舶用燃料油として一般にC重油を用いている。このC重油は、原油を加熱炉で加熱して常圧蒸留装置によりガスやガソリン、灯油や軽油などの軽質留分を精製した後に残る常圧蒸留残渣油に軽油を混合させて所定の粘度にしたものである。
【0003】
近年の原油高騰、ガスやガソリン、軽油などの軽質油の需要の増大、そして、前記常圧蒸留装置によって精製されたガスやガソリン等の軽質油と、精製後に残る常圧蒸留残渣油との比率はほぼ同等であることから、この常圧蒸留残渣油を加熱して分解させて軽質油を取り出すことが行われている。
【0004】
前記常圧蒸留残渣油から軽質油を取り出す方法としては、流動接触分解法(Fluid Catalytic Cracking)と熱分解法(ビスブレーキング)とを一連に行うことが一般的に行われている。
【0005】
前記流動接触分解法(FCC法)は、常圧蒸残渣油を加熱炉で加熱して減圧蒸留装置によりガス分と重質軽油と重質残渣とに分留し、分留された重質軽油を流動接触分解装置内で触媒と流動接触させる方法である。この方法により、ガスやガソリンや軽油といった軽質油と、残渣油(スラリー油)とに常圧蒸残渣油が分解される。
【0006】
また、熱分解法(ビスブレーキング)は、FCC法における減圧蒸留装置により分留された後に残ったスラリー油を熱分解装置(ビスブレーカー)により数百℃に加熱する方法であり、重質残渣は軽灯油と重質油とに分解される。
【0007】
重油を蒸留装置で分留して精製された軽質油は直留燃料油と呼ばれ、蒸留残渣油を分解装置で分解させて得られた軽質油は分解燃料油と呼ばれている。直留燃料油は精製工程が上流側であり、分解燃料油は精製工程が下流側となるので、下流側の分解燃料油は硫黄分や残炭分などの不純物が相対的に濃縮されることから、上流側の直留油よりも不純物が多い。
【0008】
分解燃料油は直留燃料油よりも安価であることから、前記蒸留法と分解法(FCC法とビスブレーキング)とによって軽質油が留去された重質残渣油に、軽油を添加・混合して安価なC重油を調整することが行われている。即ち、FCC法により得られた安価な軽質油を、ビスブレーカー法により得られた重質残渣油に混合してC重油が製造されている。
【0009】
このようにして製造されたC重油は、FCC油と呼ばれ、このFCC油は、FCC法に使用されている触媒が混入している。FCC法に使用されている触媒としては、例えば、シリカ・アルミナ・カオリン粘土などを原料とした40〜80μmに造粒された固体酸触媒が知られている。
【0010】
流動接触分解法で用いられている流動接触分解触媒(FCC触媒)は、FCC触媒上に吸着したカーボン分を燃焼除去させて触媒活性を再生し、繰り返して使用するので、高い機械強度と耐熱性とを備えている。
【0011】
また、FCC触媒は、その粒子径が製造時には平均60μm程度であるが、FCC装置で繰り返し使用されているうちに粒子径が3〜15μm程度の小径となる。また、FCC触媒はアルミナやシリカを含むことから硬度が高い。
【0012】
このように粒径が小さく機械強度が高いFCC触媒が混入しているFCC油を舶用燃料油として使用すると、FCC触媒がエンジンピストンとシリンダとの十数μmの間隙に侵入し、FCC触媒の極めて高い機械強度と硬度という特性によって、恰も研磨剤のように作用して前記ピストンやシリンダを異常摩耗させたり、燃料噴射ポンプやプランジャを異常摩耗させたりし、シリンダのスティックスリップ(ビビリ現象)やブローバイガスの漏出などといった問題が生ずることがあった。
【0013】
一方、C重油中に含まれている水分や硫黄分、炭素性固形物などの不純物を除去することを目的として、一般に図7に示すような燃料油供給装置が使用されている。この燃料油供給装置は、船体底部の二重底を利用した船体付燃料タンク51(ストレージタンク)に燃料油70(C重油)を貯蔵するようになっており、ストレージタンク51から送油ポンプ57を備えた管路67を介して燃料油70がセットリングタンク52に供給されている。このセットリングタンク52には清浄機54が併設されており、この清浄機54を介して燃料油がサービスタンク80に供給されている。
【0014】
前記清浄機54は、毎分約1万回転の回転体を備えた遠心分離式清浄機が使用され、その遠心力により燃料油よりも比重の大きい炭素性固形物やFCC触媒や水分などの不純物を除去している。即ち、清浄機54によりスラッジや水分などの不純物が除去された燃料油70を主機関に供給するようにしているが、遠心力によるFCC分離性能には限界があり、燃料油中のFCCを十分に除去できるとは言い難い。また、エンジンの手前(上流側)には燃料油2次濾過器(79)が装備されるのが一般的だが、これもFCC除去を目的としたものではなく、FCC油を燃料油とした場合のエンジンのトラブルが発生している。
【0015】
そこで、清浄機で遠心分離した燃料油を、メッシュの細かい濾過装置により濾過し、その濾過された燃料油を主機関に供給することが提案されている(例えば、特許文献1など参照。)。
【特許文献1】特開平11−200973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記特許文献2の燃料供給装置などは、例えば図8に示すようにストレージタンク51からセットリングタンク52に燃料油70を供給し、セットリングタンク52から清浄機54を介して濾過装置55へ燃料油70が供給されている。前記各タンクには、加熱器53などの加熱手段が併設され、その加熱手段によりタンク内の燃料油を昇温させ、所定の粘度等の物性となる温度に保持されている。
【0017】
前記濾過装置55は、10μm前後の粒径のFCC触媒を捕捉するため、焼結金網の網目が公称目開き10μmよりも小孔に形成されているので、ピストンやシリンダなどを異常摩耗させて故障させてしまう10μm前後の粒径のFCC触媒が濾過装置を経由することで燃料油から除去され、シリンダなどの異常摩耗による主機関の異常停止といったトラブルが防止されている。
【0018】
ところが、濾過装置55は必然的に、濾過材である燒結金属の網目に触媒などの不純物が積層して目詰まりするので、燃料油の流量が低下したり、エンジンに供給される燃料油の圧力が低下したりする。このようなことから、濾過装置55の入口側と出口側の圧力が所定の差圧に達したときに、或いは一定時間毎に、入口側バルブ60と出口側バルブ61を閉止して濾過装置55に燃料油70が供給されないようにし、濾過装置55の燃料油出口側の高圧空気供給バルブ63を開放して高圧空気を送り込み、濾過装置55内に溜まっていた燃料油70を下側のバルブ64を開放して排出させ、不純物を燒結金属の網目の内側から外側へ押し出すと共に出口から排出する、逆洗作業が行われている。
【0019】
このような逆洗作業が行われている間は、バルブ62が開放されてバイパス管69を介して燃料油70がエンジンに供給されるようになっているので、エンジンが停止することはないが、濾過装置を経由していない燃料油がエンジンに供給されてしまう。また、通常、逆洗は一日に何度も行われるので、逆洗作業中にエンジンへ供給された燃料油には清浄機で除去しきれなかったFCC触媒が混入しており、そのFCC触媒によって前述のようなエンジントラブルが発生する可能性がある。
【0020】
そこで、濾過装置で濾過された燃料油をサービスタンクに貯留し、このサービスタンクから燃料油をエンジンに供給することが提案されているが、濾過装置が故障したり、濾過装置を修理したりするときに、逆洗作業よりも長時間に亘って燃料油がサービスタンクに供給されなくなってしまうので、そのタンクを大型化して大容量としたり、濾過装置を迂回するバイパス管を設けたりしなければならなかった。
【0021】
また、図9に示すように、濾過装置55で濾過した燃料油70bを貯留するサービスタンク80bと、清浄機54で遠心分離した燃料油70aを貯留するバッファタンク80aとを並設し、自動弁80fを介在させた連通管80gによりバッファタンク80aとサービスタンク80bとを連通し、このサービスタンク80bに設けた図示しない液面計の検出した液面信号により前記自動弁80fを開閉させるように構成したものが提案されている。
【0022】
このように構成したことにより、濾過装置55のトラブルにより燃料油70aが供給されなくなったサービスタンク80a内の燃料油液面が低下すると、液面計がその燃料油の液面低下を検出して自動弁80fを開放し、バッファタンク80bからサービスタンク80aへ燃料油70bを流入させ、サービスタンク80a内の燃料油70aが空になってしまい主機関(Eng.)が停止することを防止している。
【0023】
しかしながら、比較的高価な自動弁80fを取り付けたり、液面計を取り付けたりすると共に、自動制御装置を設置しなければならず、それらの設置費用がかかる上に、維持管理・メンテナンス費用とバルブ操作の手間もかかるという問題があった。
【0024】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑み、逆洗中、フィルタを通過する燃料の流れを一旦停止しなければならないタイプの濾過装置で濾過してエンジンに供給する燃料油供給方法とその装置において、センサや自動弁などを使用することなく通常運転において確実に濾過装置で濾過された燃料油を主機関や発電機関に供給し、且つ容易で安価に設置することのできる燃料油供給方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係る舶用燃料油の供給方法は、次のように構成されている。
【0026】
1)船舶の船体内に設けた燃料油を貯蔵するストレージタンク6と、燃料油中に含まれる水分やスラッジ等を沈降分離させるセットリングタンク7と、エンジンに供給される燃料油を保持するサービスタンク2とを備えた舶用燃料供給装置において、前記セットリングタンク7とサービスタンク2とにそれぞれ連通する緩衝タンク1を設け、この緩衝タンク1にセットリングタンク7の燃料油f2を供給すると共にサービスタンク2の燃料油f4を供給し、前記セットリングタンク7より緩衝タンクに供給された燃料油f2と、前記サービスタンク2より緩衝タンク1に供給された燃料油f4とが混合した中間層の燃料油f2、f4を、前記緩衝タンク1から抜き出してその燃料油f2,f4を濾過装置3で濾過し、この濾過装置3で濾過された燃料油f4をサービスタンク2に供給することを特徴としている。
【0027】
2)遠心分離式清浄機12より緩衝タンク1に供給される燃料油f3の流量を、緩衝タンク1から濾過装置3に供給される燃料油の流量よりも少なくすることで、連通管L6内を燃料がサービスタンク2から緩衝タンク1の方向に流れるようにし、緩衝タンク1内に、清浄機12から供給された燃料油f3とサービスタンク2から供給された燃料油f4とが混合された混合領域1aを形成し、この混合領域1aに位置している燃料油fmを濾過装置3で濾過することを特徴としている。
【0028】
また、本発明に係る舶用燃料油の供給装置は、図1に示すように構成されている。
【0029】
3)船舶の船体内に設けた燃料油f1を貯蔵するストレージタンク6と、このストレージタンク6の燃料油f1に含まれる水分やスラッジ等を沈降分離させるセットリングタンク7と、このセットリングタンク7により水分やスラッジ等が沈降分離された燃料油f2をさらに遠心分離して清浄化させる遠心分離式清浄機12とを備え、この遠心分離式清浄機12により清浄化された燃料油f3は、燃料油調整手段Mを介してエンジンに供給されており、前記燃料油調整手段Mは、遠心分離式清浄機12により清浄化された燃料油f3を受け入れる緩衝タンク1と、この緩衝タンク1に供給された燃料油f3及びサービスタンク2内の燃料油f4を濾過する濾過装置3と、この濾過装置3で濾過された燃料油f4を保持するサービスタンク2とを有し、前記緩衝タンク1は前記サービスタンク2と連通していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
1)緩衝タンクをセットリングタンクとサービスタンクとに連通させ、緩衝タンクに供給されるセットリングタンクからの燃料油とサービスタンクからの燃料油とが混合した混合領域の混合油を抜き出して濾過装置で濾過するようにしたので、濾過装置が停止する逆洗時には、緩衝タンク内の燃料油がサービスタンク内へ供給される。また、緩衝タンクには清浄機を介してセットリングタンクより燃料油が供給されている。従って、濾過装置が停止していてもサービスタンク内には燃料油が緩衝タンクを介して供給されるので燃料油の液面低下が防止されると共に、エンジンへの燃料油の供給が途切れることがない。
【0031】
2)また、清浄機を通過した燃料油が緩衝タンクに供給される流量を、緩衝タンクから濾過装置に供給される燃料油の流量よりも少なくしたので、緩衝タンクの下方には、通常サービスタンク内の、一旦濾過装置により濾過された燃料油が入り込んでおり、逆洗作業時のように濾過装置が数分間停止しても、清浄機を通過した後濾過装置を通過していない燃料油がサービスタンク内へ流入することが防止される。結果、サービスタンク内には濾過装置で濾過された燃料油のみが貯留されることとなり、清浄機で遠心分離しきれないFCC触媒等の不純物がエンジンに供給されてトラブルを引き起こすことが防止される。
【0032】
3)緩衝タンクとサービスタンクの連通部の流れ方向が自然に調整されるので、図9のように自動弁などを設置する必要がなく、構造が単純で比較的安価に製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る燃料供給装置について、図示して説明する。
【0034】
[実施例1]
図1は、本発明に係る舶用燃料供給方法を適用した燃料油供給装置Aの概略構成図であり、図2は燃料油調整装置Mの概略構成図である。この燃料油供給装置Aは、船舶に積載した燃料油f1をストレージタンク6から送油ポンプp1を介してセットリングタンク7に供給している。このセットリングタンク7は、供給された燃料油f1に含まれている大きな異物(沈降スラッジなど)を沈殿させるようになっている。セットリングタンク7により大きな異物を沈殿させた燃料油f2は、図示しない送油ポンプを介して加熱器10に移送して所定の温度(例えば、40〜50℃)に昇温し、次いで遠心分離式清浄機12に導入されている。
【0035】
清浄機12に導入した燃料油f2は、その清浄機12の高速回転体(約10,000rpm)によりカーボン分や水分、FCC触媒等の不純物が遠心力により前記回転体の内壁に付着して分離される。
【0036】
前記清浄機12により不純物が遠心分離された燃料油f3を、緩衝タンク1の上部へ導入し、また、濾過装置3で濾過された燃料油f4を、サービスタンク2から前記緩衝タンク1の下部へ導入している。
【0037】
図2に示すように、緩衝タンク1に供給されたそれぞれの燃料油は、その上方に清浄機12を経由して遠心分離された燃料油f3が層を形成し、下方に濾過装置3で濾過された燃料油f4が層を形成している。また、緩衝タンク1から濾過装置3へ燃料油を導入する配管L4を設けた近傍に燃料油f3と燃料油f4とが混合した混合油fmの層1aが形成されている。前記混合油層1aの中間部分を抜き出して濾過装置3に供給するようになっている。
【0038】
そして、前記混合油層1aが拡散して緩衝タンク1の下方へ広がらないように、上方に位置する燃料油f3と下方に位置する燃料油f4との流量が調整されている。例えば、その流量は、濾過装置3へ抜き出される混合油fmを100とすると、清浄機12で遠心分離した燃料油f3は90〜95、サービスタンク2からの燃料油f4は10〜5となるように調整されている。なお、エンジン(Eng.)に供給される燃料油f4は5〜20となっており、濾過装置3を経由してサービスタンクに供給される燃料油f4の余剰分はオーバーフロー管路L8を介してセットリングタンク7に戻されている。
【0039】
(逆洗作業)
次に、本発明に係る燃料供給装置における逆洗作業について図示して説明する。図3(A)は逆洗開始時、図3(B)は逆洗終了時を示す図である。
【0040】
本実施例では、濾過装置3の入口側に設けた圧力計d1と、出口側に設けた圧力計d2との差圧が0.03MPa〜0.05MPaに達したとき、或いは2〜5時間毎に逆洗を行うようにしている。
【0041】
逆洗作業を開始する際に、濾過装置3の入口側バルブv1と出口側バルブv2とを閉止し、濾過装置3に燃料油f3が供給されないようにする。次いで、高圧空気(air)の供給管L10のバルブv3とドレン管L11のバルブv4とを開放する。
【0042】
前記濾過装置3は、円筒状濾過材の外側から内側へ燃料油f3を通過させてFCC触媒などを濾過し、内側へ通過して濾過された燃料油f4を濾過材の内側に連通している出口管L5から排出している。
【0043】
従って、円筒状濾過材の内側に連通している高圧空気供給管L10から供給された高圧空気がその濾過材の内側に残留している濾過された燃料油f4を押圧し、円筒状濾過材の内側から外側に向かって燃料油f4を押し出すこととなる。この押し出される燃料油f4が、濾過材の外側に堆積したFCC触媒等の不純物をその濾過材の表面から浮き上がらせて押し流す。押し流された不純物は、燃料油と共にドレン管L11を介して排出される。
【0044】
この逆洗作業は数分程度かかり、その間は濾過された燃料油f4が濾過装置を介してサービスタンク2に供給されないが、緩衝タンク1は連通管L6によってサービスタンク2と連通しているので緩衝タンク1の下方に形成された燃料油f4層から供給される。よって、逆洗作業の終了時には、図3(B)に示すように遠心分離された燃料油f3層が緩衝タンク1の下部側に向かって降下した状態となる。
【0045】
そして、逆洗作業が終了すると、空気供給バルブv3とドレインバルブv4とを閉止し、次いで燃料油fの供給バルブv1と排出バルブv2とを開放して混合燃料油fmを濾過装置3に供給する。
【0046】
緩衝タンク1には、再びタンクの下方から濾過された燃料油f4が供給されるので、混合油fmの層1aが上昇する。
【0047】
(濾過装置停止)
次に、濾過装置が故障や修理に伴い、逆洗のときよりも長時間に亘って停止した場合について図4を参照して説明する。
【0048】
濾過装置3が停止状態となってから5〜10分程度経過すると、逆洗時と同様に図4Aに示すような状態となる。即ち、緩衝タンク1の下方には濾過された燃料油f4層が形成されているので、遠心分離された濾過装置で濾過されていない燃料油f3がサービスタンク2内へ流入することが防止されている。
【0049】
濾過装置の停止時間がさらに延長されると、図4Bに示すように、遠心分離された燃料油f3がサービスタンク2内へ流入し、そのサービスタンク2の底部に遠心分離された燃料油f3層と混合油層とが形成される。エンジンには、遠心分離された燃料油f3が供給され、燃料切れとなることはない。
【0050】
サービスタンクに連通した緩衝タンクから燃料油を抜き出して濾過するようにしたので、濾過装置の逆洗中に遠心分離した燃料油がサービスタンク内へ流入することが防止される。よって、通常の運転中にサービスタンク内の濾過された燃料油に、遠心分離された燃料油が混入してしまうことがなく、エンジンには濾過した燃料油のみを供給することができる。
【0051】
また、長時間に亘って濾過装置が停止し、濾過した燃料油をサービスタンクへ供給できなくなっても、緩衝タンクから自然に遠心分離した燃料油がサービスタンク内へ流入するようになっているので、サービスタンク内の燃料油の液面が低下することなくエンジンに燃料油を供給し続けることができる(図4C)。
【0052】
(実施例2)
本実施例は、図5に示すようにサービスタンク20内に緩衝タンク21を形成したことを特徴とするものである。
【0053】
通常の運転時は、前述の第1実施例の燃料供給装置と同様に混合油fmが濾過装置3に供給されるようになっている。
【0054】
逆洗をするときには、図6に示すように濾過装置3の入口側バルブv1と出口側バルブv2とを閉止し、高圧空気供給バルブv3とドレイン排出バルブv4とを開放する。高圧空気(air)が濾過装置に残留している燃料油を下方に押し下げると共に、その燃料油が濾過材の内側から外側に向かって押し出され、これに伴って濾過材の表面に堆積しているFCC触媒等の不純物が押し出される。そして、ドレイン管を介してFCC触媒等の不純物を含んだ燃料油が排出される。
【0055】
本実施例により、サービスタンク内に緩衝タンクを設けており、新たにタンクを船内に設置することがないのでスペースの削減となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る舶用燃料供給装置の概略図である。
【図2】本発明に係る舶用燃料供給装置における燃料油調整装置の概略図である。
【図3】(A)は逆洗作業開始時の燃料油調整装置を示す図、(B)は逆洗作業終了時の燃料油調整装置を示す図である。
【図4A】燃料油調整装置における濾過装置の停止状態における最初期を示す図である。
【図4B】濾過装置が通常の逆洗時間を超えて停止したときの状態を示す図である。
【図4C】図4Bの状態が進行したときを示す図である。
【図5】本発明に係る舶用燃料供給装置における燃料調整装置の第2実施態様を示す図である。
【図6】図5における逆洗作業中の燃料油調整装置を示す図である。
【図7】従来の舶用燃料供給装置の概略図である。
【図8】従来の他の舶用燃料供給装置の概略図である。
【図9】従来の更に他の舶用燃料供給装置の概略図である。
【符号の説明】
【0057】
1 緩衝タンク
1a 混合領域
2 サービスタンク
3 濾過装置
6 ストレージタンク
7 セットリングタンク
12 清浄機
f1,f2,f3,f4 燃料油
fm 混合油
M 燃料油調整装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用燃料のC重油に含まれているFCC触媒などの粒子状不純物を除去し、その粒子状不純物を除去したC重油をエンジンに供給する舶用燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンカーなどの大型船舶の機関としては、大型低速機関が使用されており、その機関の舶用燃料油として一般にC重油を用いている。このC重油は、原油を加熱炉で加熱して常圧蒸留装置によりガスやガソリン、灯油や軽油などの軽質留分を精製した後に残る常圧蒸留残渣油に軽油を混合させて所定の粘度にしたものである。
【0003】
近年の原油高騰、ガスやガソリン、軽油などの軽質油の需要の増大、そして、前記常圧蒸留装置によって精製されたガスやガソリン等の軽質油と、精製後に残る常圧蒸留残渣油との比率はほぼ同等であることから、この常圧蒸留残渣油を加熱して分解させて軽質油を取り出すことが行われている。
【0004】
前記常圧蒸留残渣油から軽質油を取り出す方法としては、流動接触分解法(Fluid Catalytic Cracking)と熱分解法(ビスブレーキング)とを一連に行うことが一般的に行われている。
【0005】
前記流動接触分解法(FCC法)は、常圧蒸残渣油を加熱炉で加熱して減圧蒸留装置によりガス分と重質軽油と重質残渣とに分留し、分留された重質軽油を流動接触分解装置内で触媒と流動接触させる方法である。この方法により、ガスやガソリンや軽油といった軽質油と、残渣油(スラリー油)とに常圧蒸残渣油が分解される。
【0006】
また、熱分解法(ビスブレーキング)は、FCC法における減圧蒸留装置により分留された後に残ったスラリー油を熱分解装置(ビスブレーカー)により数百℃に加熱する方法であり、重質残渣は軽灯油と重質油とに分解される。
【0007】
重油を蒸留装置で分留して精製された軽質油は直留燃料油と呼ばれ、蒸留残渣油を分解装置で分解させて得られた軽質油は分解燃料油と呼ばれている。直留燃料油は精製工程が上流側であり、分解燃料油は精製工程が下流側となるので、下流側の分解燃料油は硫黄分や残炭分などの不純物が相対的に濃縮されることから、上流側の直留油よりも不純物が多い。
【0008】
分解燃料油は直留燃料油よりも安価であることから、前記蒸留法と分解法(FCC法とビスブレーキング)とによって軽質油が留去された重質残渣油に、軽油を添加・混合して安価なC重油を調整することが行われている。即ち、FCC法により得られた安価な軽質油を、ビスブレーカー法により得られた重質残渣油に混合してC重油が製造されている。
【0009】
このようにして製造されたC重油は、FCC油と呼ばれ、このFCC油は、FCC法に使用されている触媒が混入している。FCC法に使用されている触媒としては、例えば、シリカ・アルミナ・カオリン粘土などを原料とした40〜80μmに造粒された固体酸触媒が知られている。
【0010】
流動接触分解法で用いられている流動接触分解触媒(FCC触媒)は、FCC触媒上に吸着したカーボン分を燃焼除去させて触媒活性を再生し、繰り返して使用するので、高い機械強度と耐熱性とを備えている。
【0011】
また、FCC触媒は、その粒子径が製造時には平均60μm程度であるが、FCC装置で繰り返し使用されているうちに粒子径が3〜15μm程度の小径となる。また、FCC触媒はアルミナやシリカを含むことから硬度が高い。
【0012】
このように粒径が小さく機械強度が高いFCC触媒が混入しているFCC油を舶用燃料油として使用すると、FCC触媒がエンジンピストンとシリンダとの十数μmの間隙に侵入し、FCC触媒の極めて高い機械強度と硬度という特性によって、恰も研磨剤のように作用して前記ピストンやシリンダを異常摩耗させたり、燃料噴射ポンプやプランジャを異常摩耗させたりし、シリンダのスティックスリップ(ビビリ現象)やブローバイガスの漏出などといった問題が生ずることがあった。
【0013】
一方、C重油中に含まれている水分や硫黄分、炭素性固形物などの不純物を除去することを目的として、一般に図7に示すような燃料油供給装置が使用されている。この燃料油供給装置は、船体底部の二重底を利用した船体付燃料タンク51(ストレージタンク)に燃料油70(C重油)を貯蔵するようになっており、ストレージタンク51から送油ポンプ57を備えた管路67を介して燃料油70がセットリングタンク52に供給されている。このセットリングタンク52には清浄機54が併設されており、この清浄機54を介して燃料油がサービスタンク80に供給されている。
【0014】
前記清浄機54は、毎分約1万回転の回転体を備えた遠心分離式清浄機が使用され、その遠心力により燃料油よりも比重の大きい炭素性固形物やFCC触媒や水分などの不純物を除去している。即ち、清浄機54によりスラッジや水分などの不純物が除去された燃料油70を主機関に供給するようにしているが、遠心力によるFCC分離性能には限界があり、燃料油中のFCCを十分に除去できるとは言い難い。また、エンジンの手前(上流側)には燃料油2次濾過器(79)が装備されるのが一般的だが、これもFCC除去を目的としたものではなく、FCC油を燃料油とした場合のエンジンのトラブルが発生している。
【0015】
そこで、清浄機で遠心分離した燃料油を、メッシュの細かい濾過装置により濾過し、その濾過された燃料油を主機関に供給することが提案されている(例えば、特許文献1など参照。)。
【特許文献1】特開平11−200973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記特許文献2の燃料供給装置などは、例えば図8に示すようにストレージタンク51からセットリングタンク52に燃料油70を供給し、セットリングタンク52から清浄機54を介して濾過装置55へ燃料油70が供給されている。前記各タンクには、加熱器53などの加熱手段が併設され、その加熱手段によりタンク内の燃料油を昇温させ、所定の粘度等の物性となる温度に保持されている。
【0017】
前記濾過装置55は、10μm前後の粒径のFCC触媒を捕捉するため、焼結金網の網目が公称目開き10μmよりも小孔に形成されているので、ピストンやシリンダなどを異常摩耗させて故障させてしまう10μm前後の粒径のFCC触媒が濾過装置を経由することで燃料油から除去され、シリンダなどの異常摩耗による主機関の異常停止といったトラブルが防止されている。
【0018】
ところが、濾過装置55は必然的に、濾過材である燒結金属の網目に触媒などの不純物が積層して目詰まりするので、燃料油の流量が低下したり、エンジンに供給される燃料油の圧力が低下したりする。このようなことから、濾過装置55の入口側と出口側の圧力が所定の差圧に達したときに、或いは一定時間毎に、入口側バルブ60と出口側バルブ61を閉止して濾過装置55に燃料油70が供給されないようにし、濾過装置55の燃料油出口側の高圧空気供給バルブ63を開放して高圧空気を送り込み、濾過装置55内に溜まっていた燃料油70を下側のバルブ64を開放して排出させ、不純物を燒結金属の網目の内側から外側へ押し出すと共に出口から排出する、逆洗作業が行われている。
【0019】
このような逆洗作業が行われている間は、バルブ62が開放されてバイパス管69を介して燃料油70がエンジンに供給されるようになっているので、エンジンが停止することはないが、濾過装置を経由していない燃料油がエンジンに供給されてしまう。また、通常、逆洗は一日に何度も行われるので、逆洗作業中にエンジンへ供給された燃料油には清浄機で除去しきれなかったFCC触媒が混入しており、そのFCC触媒によって前述のようなエンジントラブルが発生する可能性がある。
【0020】
そこで、濾過装置で濾過された燃料油をサービスタンクに貯留し、このサービスタンクから燃料油をエンジンに供給することが提案されているが、濾過装置が故障したり、濾過装置を修理したりするときに、逆洗作業よりも長時間に亘って燃料油がサービスタンクに供給されなくなってしまうので、そのタンクを大型化して大容量としたり、濾過装置を迂回するバイパス管を設けたりしなければならなかった。
【0021】
また、図9に示すように、濾過装置55で濾過した燃料油70bを貯留するサービスタンク80bと、清浄機54で遠心分離した燃料油70aを貯留するバッファタンク80aとを並設し、自動弁80fを介在させた連通管80gによりバッファタンク80aとサービスタンク80bとを連通し、このサービスタンク80bに設けた図示しない液面計の検出した液面信号により前記自動弁80fを開閉させるように構成したものが提案されている。
【0022】
このように構成したことにより、濾過装置55のトラブルにより燃料油70aが供給されなくなったサービスタンク80a内の燃料油液面が低下すると、液面計がその燃料油の液面低下を検出して自動弁80fを開放し、バッファタンク80bからサービスタンク80aへ燃料油70bを流入させ、サービスタンク80a内の燃料油70aが空になってしまい主機関(Eng.)が停止することを防止している。
【0023】
しかしながら、比較的高価な自動弁80fを取り付けたり、液面計を取り付けたりすると共に、自動制御装置を設置しなければならず、それらの設置費用がかかる上に、維持管理・メンテナンス費用とバルブ操作の手間もかかるという問題があった。
【0024】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑み、逆洗中、フィルタを通過する燃料の流れを一旦停止しなければならないタイプの濾過装置で濾過してエンジンに供給する燃料油供給方法とその装置において、センサや自動弁などを使用することなく通常運転において確実に濾過装置で濾過された燃料油を主機関や発電機関に供給し、且つ容易で安価に設置することのできる燃料油供給方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係る舶用燃料油の供給方法は、次のように構成されている。
【0026】
1)船舶の船体内に設けた燃料油を貯蔵するストレージタンク6と、燃料油中に含まれる水分やスラッジ等を沈降分離させるセットリングタンク7と、エンジンに供給される燃料油を保持するサービスタンク2とを備えた舶用燃料供給装置において、前記セットリングタンク7とサービスタンク2とにそれぞれ連通する緩衝タンク1を設け、この緩衝タンク1にセットリングタンク7の燃料油f2を供給すると共にサービスタンク2の燃料油f4を供給し、前記セットリングタンク7より緩衝タンクに供給された燃料油f2と、前記サービスタンク2より緩衝タンク1に供給された燃料油f4とが混合した中間層の燃料油f2、f4を、前記緩衝タンク1から抜き出してその燃料油f2,f4を濾過装置3で濾過し、この濾過装置3で濾過された燃料油f4をサービスタンク2に供給することを特徴としている。
【0027】
2)遠心分離式清浄機12より緩衝タンク1に供給される燃料油f3の流量を、緩衝タンク1から濾過装置3に供給される燃料油の流量よりも少なくすることで、連通管L6内を燃料がサービスタンク2から緩衝タンク1の方向に流れるようにし、緩衝タンク1内に、清浄機12から供給された燃料油f3とサービスタンク2から供給された燃料油f4とが混合された混合領域1aを形成し、この混合領域1aに位置している燃料油fmを濾過装置3で濾過することを特徴としている。
【0028】
また、本発明に係る舶用燃料油の供給装置は、図1に示すように構成されている。
【0029】
3)船舶の船体内に設けた燃料油f1を貯蔵するストレージタンク6と、このストレージタンク6の燃料油f1に含まれる水分やスラッジ等を沈降分離させるセットリングタンク7と、このセットリングタンク7により水分やスラッジ等が沈降分離された燃料油f2をさらに遠心分離して清浄化させる遠心分離式清浄機12とを備え、この遠心分離式清浄機12により清浄化された燃料油f3は、燃料油調整手段Mを介してエンジンに供給されており、前記燃料油調整手段Mは、遠心分離式清浄機12により清浄化された燃料油f3を受け入れる緩衝タンク1と、この緩衝タンク1に供給された燃料油f3及びサービスタンク2内の燃料油f4を濾過する濾過装置3と、この濾過装置3で濾過された燃料油f4を保持するサービスタンク2とを有し、前記緩衝タンク1は前記サービスタンク2と連通していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
1)緩衝タンクをセットリングタンクとサービスタンクとに連通させ、緩衝タンクに供給されるセットリングタンクからの燃料油とサービスタンクからの燃料油とが混合した混合領域の混合油を抜き出して濾過装置で濾過するようにしたので、濾過装置が停止する逆洗時には、緩衝タンク内の燃料油がサービスタンク内へ供給される。また、緩衝タンクには清浄機を介してセットリングタンクより燃料油が供給されている。従って、濾過装置が停止していてもサービスタンク内には燃料油が緩衝タンクを介して供給されるので燃料油の液面低下が防止されると共に、エンジンへの燃料油の供給が途切れることがない。
【0031】
2)また、清浄機を通過した燃料油が緩衝タンクに供給される流量を、緩衝タンクから濾過装置に供給される燃料油の流量よりも少なくしたので、緩衝タンクの下方には、通常サービスタンク内の、一旦濾過装置により濾過された燃料油が入り込んでおり、逆洗作業時のように濾過装置が数分間停止しても、清浄機を通過した後濾過装置を通過していない燃料油がサービスタンク内へ流入することが防止される。結果、サービスタンク内には濾過装置で濾過された燃料油のみが貯留されることとなり、清浄機で遠心分離しきれないFCC触媒等の不純物がエンジンに供給されてトラブルを引き起こすことが防止される。
【0032】
3)緩衝タンクとサービスタンクの連通部の流れ方向が自然に調整されるので、図9のように自動弁などを設置する必要がなく、構造が単純で比較的安価に製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る燃料供給装置について、図示して説明する。
【0034】
[実施例1]
図1は、本発明に係る舶用燃料供給方法を適用した燃料油供給装置Aの概略構成図であり、図2は燃料油調整装置Mの概略構成図である。この燃料油供給装置Aは、船舶に積載した燃料油f1をストレージタンク6から送油ポンプp1を介してセットリングタンク7に供給している。このセットリングタンク7は、供給された燃料油f1に含まれている大きな異物(沈降スラッジなど)を沈殿させるようになっている。セットリングタンク7により大きな異物を沈殿させた燃料油f2は、図示しない送油ポンプを介して加熱器10に移送して所定の温度(例えば、40〜50℃)に昇温し、次いで遠心分離式清浄機12に導入されている。
【0035】
清浄機12に導入した燃料油f2は、その清浄機12の高速回転体(約10,000rpm)によりカーボン分や水分、FCC触媒等の不純物が遠心力により前記回転体の内壁に付着して分離される。
【0036】
前記清浄機12により不純物が遠心分離された燃料油f3を、緩衝タンク1の上部へ導入し、また、濾過装置3で濾過された燃料油f4を、サービスタンク2から前記緩衝タンク1の下部へ導入している。
【0037】
図2に示すように、緩衝タンク1に供給されたそれぞれの燃料油は、その上方に清浄機12を経由して遠心分離された燃料油f3が層を形成し、下方に濾過装置3で濾過された燃料油f4が層を形成している。また、緩衝タンク1から濾過装置3へ燃料油を導入する配管L4を設けた近傍に燃料油f3と燃料油f4とが混合した混合油fmの層1aが形成されている。前記混合油層1aの中間部分を抜き出して濾過装置3に供給するようになっている。
【0038】
そして、前記混合油層1aが拡散して緩衝タンク1の下方へ広がらないように、上方に位置する燃料油f3と下方に位置する燃料油f4との流量が調整されている。例えば、その流量は、濾過装置3へ抜き出される混合油fmを100とすると、清浄機12で遠心分離した燃料油f3は90〜95、サービスタンク2からの燃料油f4は10〜5となるように調整されている。なお、エンジン(Eng.)に供給される燃料油f4は5〜20となっており、濾過装置3を経由してサービスタンクに供給される燃料油f4の余剰分はオーバーフロー管路L8を介してセットリングタンク7に戻されている。
【0039】
(逆洗作業)
次に、本発明に係る燃料供給装置における逆洗作業について図示して説明する。図3(A)は逆洗開始時、図3(B)は逆洗終了時を示す図である。
【0040】
本実施例では、濾過装置3の入口側に設けた圧力計d1と、出口側に設けた圧力計d2との差圧が0.03MPa〜0.05MPaに達したとき、或いは2〜5時間毎に逆洗を行うようにしている。
【0041】
逆洗作業を開始する際に、濾過装置3の入口側バルブv1と出口側バルブv2とを閉止し、濾過装置3に燃料油f3が供給されないようにする。次いで、高圧空気(air)の供給管L10のバルブv3とドレン管L11のバルブv4とを開放する。
【0042】
前記濾過装置3は、円筒状濾過材の外側から内側へ燃料油f3を通過させてFCC触媒などを濾過し、内側へ通過して濾過された燃料油f4を濾過材の内側に連通している出口管L5から排出している。
【0043】
従って、円筒状濾過材の内側に連通している高圧空気供給管L10から供給された高圧空気がその濾過材の内側に残留している濾過された燃料油f4を押圧し、円筒状濾過材の内側から外側に向かって燃料油f4を押し出すこととなる。この押し出される燃料油f4が、濾過材の外側に堆積したFCC触媒等の不純物をその濾過材の表面から浮き上がらせて押し流す。押し流された不純物は、燃料油と共にドレン管L11を介して排出される。
【0044】
この逆洗作業は数分程度かかり、その間は濾過された燃料油f4が濾過装置を介してサービスタンク2に供給されないが、緩衝タンク1は連通管L6によってサービスタンク2と連通しているので緩衝タンク1の下方に形成された燃料油f4層から供給される。よって、逆洗作業の終了時には、図3(B)に示すように遠心分離された燃料油f3層が緩衝タンク1の下部側に向かって降下した状態となる。
【0045】
そして、逆洗作業が終了すると、空気供給バルブv3とドレインバルブv4とを閉止し、次いで燃料油fの供給バルブv1と排出バルブv2とを開放して混合燃料油fmを濾過装置3に供給する。
【0046】
緩衝タンク1には、再びタンクの下方から濾過された燃料油f4が供給されるので、混合油fmの層1aが上昇する。
【0047】
(濾過装置停止)
次に、濾過装置が故障や修理に伴い、逆洗のときよりも長時間に亘って停止した場合について図4を参照して説明する。
【0048】
濾過装置3が停止状態となってから5〜10分程度経過すると、逆洗時と同様に図4Aに示すような状態となる。即ち、緩衝タンク1の下方には濾過された燃料油f4層が形成されているので、遠心分離された濾過装置で濾過されていない燃料油f3がサービスタンク2内へ流入することが防止されている。
【0049】
濾過装置の停止時間がさらに延長されると、図4Bに示すように、遠心分離された燃料油f3がサービスタンク2内へ流入し、そのサービスタンク2の底部に遠心分離された燃料油f3層と混合油層とが形成される。エンジンには、遠心分離された燃料油f3が供給され、燃料切れとなることはない。
【0050】
サービスタンクに連通した緩衝タンクから燃料油を抜き出して濾過するようにしたので、濾過装置の逆洗中に遠心分離した燃料油がサービスタンク内へ流入することが防止される。よって、通常の運転中にサービスタンク内の濾過された燃料油に、遠心分離された燃料油が混入してしまうことがなく、エンジンには濾過した燃料油のみを供給することができる。
【0051】
また、長時間に亘って濾過装置が停止し、濾過した燃料油をサービスタンクへ供給できなくなっても、緩衝タンクから自然に遠心分離した燃料油がサービスタンク内へ流入するようになっているので、サービスタンク内の燃料油の液面が低下することなくエンジンに燃料油を供給し続けることができる(図4C)。
【0052】
(実施例2)
本実施例は、図5に示すようにサービスタンク20内に緩衝タンク21を形成したことを特徴とするものである。
【0053】
通常の運転時は、前述の第1実施例の燃料供給装置と同様に混合油fmが濾過装置3に供給されるようになっている。
【0054】
逆洗をするときには、図6に示すように濾過装置3の入口側バルブv1と出口側バルブv2とを閉止し、高圧空気供給バルブv3とドレイン排出バルブv4とを開放する。高圧空気(air)が濾過装置に残留している燃料油を下方に押し下げると共に、その燃料油が濾過材の内側から外側に向かって押し出され、これに伴って濾過材の表面に堆積しているFCC触媒等の不純物が押し出される。そして、ドレイン管を介してFCC触媒等の不純物を含んだ燃料油が排出される。
【0055】
本実施例により、サービスタンク内に緩衝タンクを設けており、新たにタンクを船内に設置することがないのでスペースの削減となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る舶用燃料供給装置の概略図である。
【図2】本発明に係る舶用燃料供給装置における燃料油調整装置の概略図である。
【図3】(A)は逆洗作業開始時の燃料油調整装置を示す図、(B)は逆洗作業終了時の燃料油調整装置を示す図である。
【図4A】燃料油調整装置における濾過装置の停止状態における最初期を示す図である。
【図4B】濾過装置が通常の逆洗時間を超えて停止したときの状態を示す図である。
【図4C】図4Bの状態が進行したときを示す図である。
【図5】本発明に係る舶用燃料供給装置における燃料調整装置の第2実施態様を示す図である。
【図6】図5における逆洗作業中の燃料油調整装置を示す図である。
【図7】従来の舶用燃料供給装置の概略図である。
【図8】従来の他の舶用燃料供給装置の概略図である。
【図9】従来の更に他の舶用燃料供給装置の概略図である。
【符号の説明】
【0057】
1 緩衝タンク
1a 混合領域
2 サービスタンク
3 濾過装置
6 ストレージタンク
7 セットリングタンク
12 清浄機
f1,f2,f3,f4 燃料油
fm 混合油
M 燃料油調整装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の船体内に設けた燃料油を貯蔵するストレージタンクと、燃料油中に含まれる水分やスラッジ等を沈降分離させるセットリングタンクと、エンジンに供給される燃料油を保持するサービスタンクとを備えた舶用燃料供給装置において、
前記セットリングタンクとサービスタンクとにそれぞれ連通する緩衝タンクを設け、この緩衝タンクにセットリングタンクの燃料油を供給すると共にサービスタンクの燃料油を供給し、
前記セットリングタンクより緩衝タンクに供給された燃料油と、前記サービスタンクより緩衝タンクに供給された燃料油とが混合した中間層の燃料油を、前記緩衝タンクから抜き出してその燃料油を濾過装置で濾過し、この濾過装置で濾過された燃料油をサービスタンクに供給することを特徴とする舶用燃料油供給装置における燃料油供給方法。
【請求項2】
遠心分離式清浄機より緩衝タンクに供給される燃料油の流量を、緩衝タンクから濾過装置に供給される燃料油の流量よりも少なくし、
緩衝タンク内の、清浄機から供給された燃料油とサービスタンクから供給された燃料油を濾過装置で濾過してサービスタンクへ供給することを特徴とする請求項1記載の舶用燃料油供給装置における燃料油供給方法。
【請求項3】
船舶の船体内に設けた燃料油を貯蔵するストレージタンクと、このストレージタンクの燃料油に含まれる水分やスラッジ等を沈降分離させるセットリングタンクと、このセットリングタンクにより水分やスラッジ等が沈降分離された燃料油をさらに遠心分離して清浄化させる遠心分離式清浄機とを備え、この遠心分離式清浄機により清浄化された燃料油は、燃料油調整手段を介してエンジンに供給されており、
前記燃料油調整手段は、遠心分離式清浄機により清浄化された燃料油を受け入れる緩衝タンクと、この緩衝タンクに供給された燃料油を濾過する濾過装置と、この濾過装置で濾過された燃料油を保持するサービスタンクとを有し、前記緩衝タンクは前記サービスタンクと連通していることを特徴とする舶用燃料油供給装置。
【請求項1】
船舶の船体内に設けた燃料油を貯蔵するストレージタンクと、燃料油中に含まれる水分やスラッジ等を沈降分離させるセットリングタンクと、エンジンに供給される燃料油を保持するサービスタンクとを備えた舶用燃料供給装置において、
前記セットリングタンクとサービスタンクとにそれぞれ連通する緩衝タンクを設け、この緩衝タンクにセットリングタンクの燃料油を供給すると共にサービスタンクの燃料油を供給し、
前記セットリングタンクより緩衝タンクに供給された燃料油と、前記サービスタンクより緩衝タンクに供給された燃料油とが混合した中間層の燃料油を、前記緩衝タンクから抜き出してその燃料油を濾過装置で濾過し、この濾過装置で濾過された燃料油をサービスタンクに供給することを特徴とする舶用燃料油供給装置における燃料油供給方法。
【請求項2】
遠心分離式清浄機より緩衝タンクに供給される燃料油の流量を、緩衝タンクから濾過装置に供給される燃料油の流量よりも少なくし、
緩衝タンク内の、清浄機から供給された燃料油とサービスタンクから供給された燃料油を濾過装置で濾過してサービスタンクへ供給することを特徴とする請求項1記載の舶用燃料油供給装置における燃料油供給方法。
【請求項3】
船舶の船体内に設けた燃料油を貯蔵するストレージタンクと、このストレージタンクの燃料油に含まれる水分やスラッジ等を沈降分離させるセットリングタンクと、このセットリングタンクにより水分やスラッジ等が沈降分離された燃料油をさらに遠心分離して清浄化させる遠心分離式清浄機とを備え、この遠心分離式清浄機により清浄化された燃料油は、燃料油調整手段を介してエンジンに供給されており、
前記燃料油調整手段は、遠心分離式清浄機により清浄化された燃料油を受け入れる緩衝タンクと、この緩衝タンクに供給された燃料油を濾過する濾過装置と、この濾過装置で濾過された燃料油を保持するサービスタンクとを有し、前記緩衝タンクは前記サービスタンクと連通していることを特徴とする舶用燃料油供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2009−241903(P2009−241903A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94171(P2008−94171)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】
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