説明

舶用発電システム

【課題】化石燃料の使用をなるべく控えつつ変動的な船内需要電力を賄うことができ、廃熱回収系の大型化を抑制することができ、且つ、余剰電力が発生するときにはこれを有効に活用することができる舶用発電システムを提供する。
【解決手段】発電機4に電気的に接続された蓄電池5を備え、主機1の負荷が高負荷域にあり機関室温が基準温度であるときの廃熱による発電機4の発生可能電力が、船内で連続的に必要となる連続電力Wよりも大きく且つ当該連続電力Wに一時的且つ追加的に必要となる電力分Wが上乗せされた総需要電力Wよりも小さく、廃熱による発電機4の発生可能電力が船内の電力需要を上回るときには発電機4により発生された余剰電力で蓄電池5が充電され、廃熱による発電機4の発生可能電力が船内の電力需要を下回るときには蓄電池5を放電して発電機4の駆動が助勢される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主機の廃熱から生成された蒸気で蒸気タービン駆動して、その蒸気タービンの出力に基づいて発電する舶用発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型の船舶は、運航中に必要となる電力を発電する発電システムを搭載している。近年、省エネルギー化に対する要請に応えるため、主機周辺の廃熱を回収して蒸気を生成する廃熱回収系を舶用発電システムに付加し、廃熱回収系で生成された蒸気で蒸気タービンを駆動し、その蒸気タービンの出力に基づき発電機を駆動することがある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−116847号公報
【特許文献2】特開平5−65804号公報
【特許文献3】特開平8−93410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、主機が低負荷で運転している場合、排ガス量及び主機周辺の廃熱量が小さくなるので、蒸気タービンに流入する蒸気量が少なくなってしまう。また、主機がディーゼルエンジンである場合、排ガスエコノマイザ内に排ガスに含まれる煤が付着することがあり、廃熱回収系の熱回収効率を維持するためには、煤を払う作業(スートブロー)を妥当な期間毎に行う必要がある。このスートブローを廃熱回収系で生成された蒸気を用いて行う場合にも、蒸気タービンに流入する蒸気量が少なくなってしまう。このように蒸気量が少なくなると、蒸気タービンの出力が小さくなるので、発電機の発電量で船内の電力需要を賄いきれなくなるおそれがある。
【0005】
また、船内の電力需要は、連続的に使用される電力よりも一時的に大きくなることがある。例えば、船舶に搭載された冷蔵装置のコンプレッサといった間欠補機を起動させるときには、船内の電力需要が、その起動に必要な電力を連続電力に上乗せした値となる。
【0006】
従来の舶用発電システムにおいては、蒸気量が少なくなる状況下や、船内の電力需要が連続電力よりも一時的に大きくなる状況下では、補助ボイラを作動して蒸気タービンに供給する蒸気量を増加させることで発電機の発電量を増やしたり、ディーゼル発電機等の別の発電機を作動させたりして対処している。一般に、補助ボイラ及びディーゼル発電機の作動には化石燃料を必要とするので、ランニングコストの増大を招き、また、高い省エネルギー化を実現することが困難となる。
【0007】
逆に、補助ボイラ及びディーゼル発電機を作動させることなく発電機の発電量で船内の電力需要を賄おうとする場合は、主機が低負荷であるときに、発電機の発電量が連続電力に一時的に必要な電力を上乗せした値となるようシステム設計することが考えられる。しかし、この場合には、主機が低負荷であっても蒸気タービンが大きな出力を発生することを担保しなければならず、廃熱回収系の構成の大型化を招く。すると、限られた船内スペースに舶用発電システムを配置することが困難となる。また、主機が高負荷になると、発電機の発電量が船内の電力需要を超えることとなり、有効活用されることのない余剰電力が発生してしまう。
【0008】
そこで本発明は、化石燃料の使用をなるべく控えつつも変動的な船内の電力需要を賄うことができ、且つ、発電機から余剰電力が発生し得るときにはこれを有効に活用することができる舶用発電システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る舶用発電システムは、主機の廃熱を回収して蒸気を生成する廃熱回収系と、前記廃熱回収系により生成された蒸気で駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンの出力に基づき駆動されて発電する発電機と、前記発電機に電気的に接続された蓄電池と、を備え、前記発電機は、前記主機の負荷が高負荷域にあるときの廃熱による発生可能電力が船内で連続的に必要となる連続電力よりも大きく且つ当該連続電力に一時的且つ追加的に必要となる電力分が上乗せされた総需要電力よりも小さくなるよう構成され、前記蓄電池は、廃熱による前記発電機の発生可能電力が船内の電力需要を上回るときには前記発電機により発生された余剰電力で充電され、廃熱による前記発電機の発生可能電力が船内の電力需要を下回るときには放電されて前記発電機の駆動を助勢するよう構成される。
【0010】
前記構成によれば、廃熱による発電機の発生可能電力が船内の電力需要を十分に賄いきれるような場合に、発電機が発生した余剰電力で蓄電池を充電することができる。このように、発電機が船内の電力需要に対して余剰電力を生み出したときでも、その余剰電力を有効活用することができる。また、廃熱による発電機の発生可能電力が船内の電力需要を賄いきれないような場合であっても、蓄電池を放電して発電機の駆動を助勢することができる。これにより発電機の発電量を嵩上げすることができ、補助ボイラやディーゼル発電機を作動させる機会を減らすことができる。これにより、主機の負荷変動等により廃熱による発電機の発生可能電力が変動しても、また、船内の電力需要が変動しても、これに容易に対応することができる。そして、主機の負荷が高負荷域にあるときの廃熱による発電機の発生可能電力を連続電力よりも大きくかつ総需要電力よりも小さく設定している。このため、主機の通常航行中に充電する機会と放電する機会とが互いに偏らずに出現することになり、蓄電池の充電と放電とをバランスよく行わせることができる。
【0011】
このとき、前記発電機は、前記主機の負荷が85%負荷から95%負荷までの範囲内にあり機関室温が摂氏25度であるときの廃熱による発生可能電力が前記連続電力よりも大きく且つ前記総需要電力よりも小さくなるよう構成されてもよい。
【0012】
前記蓄電池の充放電を制御する制御手段、を備え、前記制御手段が、廃熱による前記発電機の発生可能電力が船内の電力需要を上回る所定の充電条件が成立したときに、前記発電機により発生された余剰電力で前記蓄電池を充電させ、且つ、廃熱による前記発電機の発生可能電力が船内の電力需要を下回る所定の放電条件が成立したときに、前記蓄電池を放電して前記発電機の駆動を助勢する制御を実施するよう構成されていてもよい。
【0013】
前記構成によれば、蓄電池の充電動作と放電動作とを状況に応じて適宜切り替えることができる。
【0014】
船内の補機の始動を検出する補機始動検出手段を更に備え、前記充電条件は、前記補機始動検出手段により前記補機の始動が検出されていないとの条件を含み、前記放電条件は、前記補機始動検出手段により前記補機の始動が検出されているとの条件を含んでいてもよい。
【0015】
前記構成によれば、補機の始動により一時的に且つ追加的に船内の電力需要が増加するような場合に、これに対応して蓄電池の放電を行って発電機の駆動を助勢することができ、補助ボイラやディーゼル発電機を作動させる機会を減らすことができる。
【0016】
前記廃熱回収系を構成し、主機の排ガスが通流する排ガスエコノマイザと、前記排ガスエコノマイザ内に前記廃熱回収系で生成された蒸気を噴射するブロワと、前記ブロワが作動しているか否かを検出するブロー検出手段と、を更に備え、前記充電条件は、前記ブロー検出手段により前記ブロワの停止が検出されているとの条件を含み、前記放電条件は、前記ブロー検出手段により前記ブロワの作動が検出されているとの条件を含んでいてもよい。
【0017】
前記構成によれば、排ガスエコノマイザ内への蒸気の噴射により、廃熱回収により生成された蒸気の全てを蒸気タービンの駆動に回せないために廃熱による発電機の発生可能電力が低下するような場合であっても、これに対処して蓄電池を放電させることにより発電機の駆動を助勢することができる。したがって、補助ボイラやディーゼル発電機を作動させる機会を減らすことができる。
【0018】
前記蒸気タービンの蒸気入口へと蒸気を送る蒸気系統と、前記蒸気系統にリフト量を可変にして設けられ、該リフト量を変更することで前記蒸気入口に送られる蒸気の流量を調整するガバナ弁と、前記ガバナ弁のリフト量を検出するリフト量検出手段と、を更に備え、前記充電条件は、前記リフト量検出手段により検出されるリフト量が第1リフト閾値未満であるとの条件を含み、前記放電条件は、前記リフト量検出手段により検出されるリフト量が前記第1リフト閾値よりも大きい第2リフト閾値以上であるとの条件を含んでいてもよい。
【0019】
前記構成によれば、ガバナ弁のリフト量が大きくなると蒸気入口に供給される蒸気の流量が多くなって蒸気タービンが大きい出力を発生することができ、ガバナ弁のリフト量が小さくなると、この逆となる。このようにリフト量に応じて廃熱による発電機の発生可能電力の大小を判断し、それに応じて蓄電池を充電すべきか放電すべきかを適切に判断することができる。
【0020】
前記廃熱回収系を構成し、生成された蒸気を溜める汽水分離器と、前記汽水分離器の内圧を検出する圧力検出手段と、を更に備え、前記充電条件は、前記圧力検出手段により検出される内圧が第1圧力閾値以上であるとの条件を含み、前記放電条件は、前記圧力検出手段により検出される内圧が前記第1圧力閾値よりも小さい第2圧力閾値未満であるとの条件を含んでいてもよい。
【0021】
前記構成によれば、蒸気の圧力が高くなると蒸気タービンが大きい出力を発生することができ、圧力が低くなるとその逆となる。このように蒸気の圧力に応じて廃熱による発生可能電力の大小を判断し、それに応じて蓄電池を充電すべきか放電すべきかを適切に判断することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、化石燃料の使用をなるべく控えつつも変動的な船内の電力需要を賄うことができ、廃熱回収系の大型化を抑制することができ、且つ、発電機から余剰電力が発生し得るときにはこれを有効に活用することができる舶用発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る舶用発電システムの全体構成を示す概念図である。
【図2】エンジン負荷と廃熱による発電機の発生可能電力との関係を示すグラフである。
【図3】廃熱による発電機の発生可能電力と高圧ドラムの内圧との相関図、廃熱による発電機の発生可能電力とガバナ弁のリフト量との相関図、廃熱による発電機の発生可能電力と計画点との相関図、及び充放電制御の概念図を併せて示す図である。
【図4】主コントローラにより実行される充放電制御の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、全ての図を通して同一又は対応する要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る舶用発電システム100の全体構成を示す概念図である。図1に示す舶用発電システム100は、主機として舶用ディーゼルエンジン1(以下、単に「エンジン」と称す)を備えた船舶に搭載されている。
【0026】
舶用発電システム100は、エンジン1周辺からの廃熱を回収して蒸気を生成する廃熱回収系2と、廃熱回収系2で生成された蒸気により駆動される蒸気タービン3と、蒸気タービン3の出力に基づき駆動される発電機4と、発電機4と電気的に接続された蓄電池5とを備えている。
【0027】
廃熱回収系2は、主に、排ガスエコノマイザ10、復水器21、給水系統22、給水加熱器23、高圧ドラム(高圧汽水分離器)24、中圧ドラム(中圧汽水分離器)25、低圧ドラム(低圧汽水分離器)26、高圧循環水系統27、蒸気系統28、中圧循環水系統29、中圧混気系統30、低圧循環水系統31、低圧蒸発器32及び低圧混気系統33を備えている。廃熱回収系2により回収される廃熱は、エンジン1の排気系によって排出されようとしている排ガスの熱、エンジン1の冷却水の熱及びエンジン1の給気の熱等を含む。
【0028】
エンジン1の排気系は、排ガスを煙突等の排気出口に導くための排気管1aを備えている。排ガスエコノマイザ10は、排気管1aと排気出口との間に介在しており、排気系の一部を構成している。排気管1aには、排ガスエコノマイザ10を迂回するバイパス管8が接続されており、排ガスエコノマイザ10の入口部及びバイパス管8の入口部は、ダンパ9a及びダンパ9bそれぞれにより開閉される。エンジン1の負荷が所定値を超えているとき等、蒸気タービン3を駆動させる蒸気を発生するために必要とされる排ガスの流量又は熱量が十分に確保されているときには、排ガスエコノマイザ10側のダンパ9aが開いてパイパス管8側のダンパ9bが閉じる。排ガスの流量又は熱量が十分でなければ、ダンパ9aが閉じてダンパ9bが開く。以降、特段説明しない限り、ダンパ9aが開き且つダンパ9bが閉じているものとして説明する。
【0029】
排ガスエコノマイザ10は、上流側から順に入口管11、高圧蒸発器12、中間管13、中圧蒸発器14及び出口管15を備えている。入口管11は、排気管1aと接続され、エンジン1からの排ガスを高圧蒸発器12に導く。中間管13は、高圧蒸発器12における熱交換後の排ガスを中圧蒸発器14に導く。出口管15は、中圧蒸発器14における熱交換後の排ガスを排気出口に導く。
【0030】
排ガスが排ガスエコノマイザ10を通流する過程では、排ガス中の煤が高圧蒸発器12及び中圧蒸発器14に付着することがあるので、排ガスエコノマイザ10は、煤を吹き落とすための第1スートブロワ16及び第2スートブロワ17を備えている。各スートブロワ16,17は、ブロー系統(図示せず)を介して高圧ドラム24、中圧ドラム25及び低圧ドラム26のうち少なくとも一つと接続され、当該少なくとも一つのドラムから蒸気の供給を受ける。第1スートブロワ16は、供給された蒸気を高圧蒸発器12に向けて噴射するための複数の噴射口を有し、これら噴射口より蒸気を噴射することで高圧蒸発器12に付着した煤を吹き落とすことができる。第2スートブロワ17も、供給された蒸気を中圧蒸発器14に向けて噴射するための複数の噴射口を有している。
【0031】
復水器21は、蒸気タービン3の蒸気出口3aと接続され、蒸気出口3aから流出した蒸気を凝縮させる。給水系統22は、復水器21を各ドラム24〜26に接続し、復水器21で生成された復水を給水として各ドラム24〜26まで送る。給水系統22は、復水器21から延びるライン22aと、ライン22aから二股に分岐するライン22b,22cとを有しており、ライン22bは、更に二股に分岐して高圧ドラム24及び中圧ドラム25に接続され、ライン22cは、低圧ドラム26に接続されている。給水加熱器23は、ライン22b上に設けられている。給水加熱器23は、高圧ドラム24及び中圧ドラム25に送られる給水とエンジン1の掃気(過給器出口ブロワ空気)との間で熱交換させ、それにより当該給水を加熱し且つ当該掃気を冷却する。
【0032】
高圧ドラム24、中圧ドラム25及び低圧ドラム26は、給水系統22からの給水を循環水として貯留するとともに、循環水より得た蒸気を貯留する。高圧ドラム24には、高圧ドラム24の内圧(高圧ドラム24内に溜められている蒸気の圧力)を検出する第1圧力センサ41が設けられている。中圧ドラム25及び低圧ドラム26にもそれぞれ、同様の第2圧力センサ42及び第3圧力センサ43が設けられている。
【0033】
高圧循環水系統27は、高圧ドラム24を高圧蒸発器12に接続するライン27aと、高圧蒸発器12を高圧ドラム24に接続するライン27bとを有している。蒸気系統28は、高圧汽水分離器24を蒸気タービン3の蒸気入口3bに接続する。ライン27a上のポンプ27Pが動作すると、高圧ドラム24内の循環水がライン27aを介して高圧蒸発器12内へと送られ、送られた循環水が高圧蒸発器12内で排ガスとの熱交換により蒸気となる。循環水は気液混合状態でライン27bを介して高圧ドラム24内に戻され、戻された循環水は高圧ドラム24内で蒸気と液体とに分離される。高圧ドラム24内の蒸気は、蒸気系統28を介し、蒸気タービン3の蒸気入口3bに供給される。
【0034】
中圧循環水系統29は、中圧ドラム25を中圧蒸発器14に接続するライン29aと、中圧蒸発器14を中圧ドラム25に接続するライン29bとを有している。中圧混気系統30は、中圧ドラム25を蒸気タービン3の中圧混気入口3cに接続する。ライン29a上のポンプ29Pが動作すると、中圧ドラム25内の循環水がライン29aを介して中圧蒸発器14内へと送られ、送られた循環水が中圧蒸発器14内で排ガスとの熱交換により蒸気となる。循環水は気液混合状態でライン29bを介して中圧ドラム25内に戻され、戻された循環水は中圧ドラム25内で蒸気と液体とに分離される。中圧ドラム25内の蒸気は、中圧混気系統30を介し、蒸気タービン3の中圧混気入口3cに供給される。
【0035】
低圧循環水系統31は、低圧ドラム26を低圧蒸発器32に接続するライン31aと、低圧蒸発器32を低圧ドラム26に接続するライン31bとを有している。低圧混気系統33は、低圧ドラム26を蒸気タービン3の低圧混気入口3dに接続する。ライン31a上のポンプ31Pが動作すると、低圧ドラム26内の循環水がライン31aを介して低圧蒸発器32内へと送られる。本実施形態では、給気を冷却するためのエアクーラが低圧蒸発器32に適用されており、送られた循環水は低圧蒸発器32内で給気との熱交換により蒸気となる。循環水は気液混合状態でライン31bを介して低圧ドラム26内に戻され、戻された循環水は低圧ドラム26内で蒸気と液体とに分離される。低圧ドラム26内の蒸気は、低圧混気系統33を介し、蒸気タービン3の低圧混気入口3dに供給される。
【0036】
蒸気タービン3は、複数の動翼を有した多段式タービンである。蒸気タービン3は、蒸気入口3bに供給された蒸気、中圧混気入口3cに供給された中圧混気、及び低圧混気入口3dに供給された低圧混気により動翼を回転させ、これにより出力軸3eに回転出力が発生する。
【0037】
蒸気系統28は、ドラム側の上流ライン28aと、タービン側の下流ライン28bとを備える。上流ライン28aと下流ライン28bとの間には過熱器35が介在している。蒸気系統28は、過熱器を迂回して上流ライン28a及び下流ライン28bを接続するバイパスライン28cと、高圧ドラム24からの蒸気が蒸気入口3bに送られるまでに過熱器35を経由するか否かを制御する弁ユニット34を備えている。弁ユニット34は、バイパスライン28cを介した蒸気の通流を許容又は阻止する第1開閉弁34aと、過熱器35を介した蒸気の通流を許容又は阻止する第2開閉弁34bと、過熱器を通流した蒸気を部分的に逃がすための逃がし弁34cとからなる。過熱器35は、排ガスエコノマイザ10の入口管11内に設けられている。蒸気が過熱器35を経由するときには、蒸気を排ガスとの熱交換により昇温・昇圧させることができ、それにより蒸気タービン3の出力を大きくすることができる。
【0038】
また、蒸気系統28は、弁ユニット34の下流側(すなわち、蒸気入口3b側)において、入口弁及び加減弁としてのガバナ弁36を備えている。ガバナ弁36は、そのリフト量が可変の弁棒(図示せず)を有し、弁棒のリフト量に応じて蒸気入口3bに供給される蒸気の流量を調整することができる。中圧混気系統30及び低圧混気系統33も、中圧混気入口3c及び低圧混気入口3dそれぞれに供給される混気の流量を調整するための入口弁37,38を備えている。ガバナ弁36及び入口弁37,38が蒸気の流量を大きくするよう動作したときには、蒸気タービン3の出力を大きくすることができる。ガバナ弁36には、そのリフト量を検出するためのリフト量センサ44が設けられている。
【0039】
高圧ドラム24は、補助ボイラ24aを備えている。補助ボイラ24aは、化石燃料の燃焼により生ずる熱で高圧ドラム24内の循環水を加熱し、それにより高圧ドラム24内で蒸気を発生することができる。この補助ボイラ24aの追い焚きによっても、蒸気タービン3の出力を大きくすることができる。以下では、補助ボイラ24aの追い焚きに頼らず、回収された廃熱のみに基づき生成された蒸気で発生した蒸気タービン3の出力を「廃熱による蒸気タービン3の出力」と称し、当該廃熱による蒸気タービン3の出力に基づき発電機4を駆動したときの発電機4の発生可能電力を、「廃熱による発電機4の発生可能電力」と称して説明する。なお、中圧ドラム25及び低圧ドラム25は加熱器25a,26aをそれぞれ備えている。各加熱器25a,26aは、蒸気系統28を介して高圧ドラム24からの蒸気の供給を受け(図1中米印参照)、それによりドラム25,26内の循環水を加熱してドラム内25,26で蒸気を発生することができる。
【0040】
発電機4は、蒸気タービン3の出力、すなわち、廃熱回収系2より蒸気タービン3に供給される蒸気及び混気の圧力や流量に応じて電力を発電する。エンジン負荷が低いため蒸気の圧力及び流量が小さくなりがちであったり、廃熱回収系2で生成された蒸気の一部が第1スートブロワ16又は第2スートブロワ17で使用されているときには、廃熱による蒸気タービン3の出力が相対的に小さくなり、廃熱による発生可能電力が船内の電力需要を下回ることがある。逆に、エンジン負荷が高いため蒸気の圧力及び流量が十分に大きいときや、第1スートブロワ16及び第2スートブロワ17が停止しているときには、廃熱による発生可能電力が船内の電力需要を超えることがある。
【0041】
蓄電池5は、この発電機4と後述する副コントローラ7を介して電気的に接続されている。このため、発電機4が船内の電力需要を超える電力を発電し得るときには、余剰電力で蓄電池5を充電することができる。また、発電機4が電力需要を下回る電力しか発電し得ないときには、蓄電池5を放電して発電機4の駆動を助勢することができる。蓄電池5は、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池等、様々な種類の蓄電池から適宜選択される。
【0042】
ニッケル・水素蓄電池は、他種と比較して、充電状態(SOC:state of charge)中間域でのSOC変化による電圧変化が小さい点、常温作動のため非常に取り扱い易い点、水溶液系の電解液を使用しているので発火のおそれをなくすことができる点、鉛フリー、水銀フリー及びカドミウムフリーとなり環境にやさしい点で有利である。
【0043】
また、ニッケル・水素蓄電池に、内部抵抗を小さくする構造を採用することが好ましい。これにより、冷却性能を向上して大電流の充放電による温度上昇を抑制することができ、高効率及び高速で充放電可能にすることができ、サイクル耐久性を向上して高速充放電を繰り返しても長期使用可能になる。また、ニッケル・水素蓄電池に、電池材料と電極を溶接しない非溶接構造を採用することが好ましい。これにより、リサイクル性が向上して組立及び解体を容易に行うことができる。このような構造を採用することで、ニッケル・水素蓄電池の特性と相まって、長期航海にも耐え得る蓄電池として好適に利用可能となる。
【0044】
主コントローラ6の入力側は、前述した第1圧力センサ41、第2圧力センサ42、第3圧力センサ43及びリフト量センサ44のほか、ブロースイッチ45及び補機始動スイッチ46と接続されている。ブロースイッチ45は、第1スートブロワ16及び/又は第2スートブロワ17が動作中であるか、第1スートブロワ16及び第2スートブロワ17が停止中であるかを検出する。補機始動スイッチ46は、冷蔵装置のコンプレッサ等の間欠補機の始動中であるか否かを検出する。主コントローラ6の出力側は、副コントローラ7が接続されている。副コントローラ7は、主コントローラ6からの指令に従って、蓄電池5の充放電制御、充電時における発電機4からの交流電流のAC/DC変換制御、放電時における蓄電池5からの放電直流のDC/AC変換制御、DC/AC変換により生成された交流の周波数制御、生成された交流と発電機4が発生している交流との同期制御などを実施する。
【0045】
図2は、エンジン負荷と、廃熱による発電機4の発生可能電力との関係を示すグラフである。横軸は、エンジン負荷を全負荷を100%とする百分率で表しており、縦軸は、廃熱による発電機4の発生可能電力を船内の総需要電力を100%とする百分率で表している。線Wは、船内の総需要電力を表わし、線Wは、総需要電力Wに対する連続電力の割合を表わしている。これらは横軸と平行に引かれている。すなわち、総需要電力W及び連続電力Wは、エンジン負荷に基づくことなく決まる値である。
【0046】
連続電力Wは、船舶の通常航行中に常時必要とされる電力である。一方、航行中には、冷蔵装置のコンプレッサを起動するとき等、連続電力Wとは別の電力需要が一時的に発生する場合がある。総需要電力Wは、このように一時的且つ追加的に必要となる電力Wを連続電力Wに上乗せした値である。本実施形態では、連続電力Wが総需要電力Wの約83%程度であるとしている(W≒W×0.83,W≒W×0.17)。換言すれば、総需要電力Wが連続電力Wに当該連続電力Wの約20%の追加的な電力Wを上乗せした値となる(W≒W×0.20,W≒W×1.20)。線A、線B及び線Cは、機関室温が摂氏35度、摂氏25度及び摂氏10度であるときの蒸気タービン3及び発電機4の特性線図の一例をそれぞれ示している。線A〜Cより、エンジン負荷が高いほど、機関室温が高いほど、廃熱による発生可能電力が高くなることがわかる。
【0047】
従前のシステムでは、例えば、点Dを蒸気タービン3及び発電機4の設計点としている。つまり、従前のシステムは、機関室温が摂氏25度であり且つエンジン負荷が全負荷付近の高負荷域(例えば90%負荷)にあるときに、廃熱による発生可能電力が総需要電力Wに達するように構成される。すると、エンジン負荷が設計点未満(例えば90%負荷未満)であるときに、間欠補機の始動時やスートブローの実行時に、船内の電力需要を発電機4で賄いきれなくなるので、補助ボイラ24aの追い焚きやディーゼル発電機の作動が必要となる。逆に、エンジン負荷が全負荷であるときには、発電機4が総需要電力Wを超える電力を発生し、そのときの余剰電力は有効活用されることなく棄てられる。
【0048】
これに対し、本実施形態に係る舶用発電システム100は、前述のとおり、発電機4と電気的に接続された蓄電池5を備える。このため、エンジン負荷が高く、廃熱による発電機4の発生可能電力が船内の電力需要を十分に賄いきれる場合に、発電機4により発生された余剰電力で蓄電池5を充電することができる。逆に、廃熱による発電機4の発生可能電力が船内の電力需要を賄いきれない場合に、蓄電池5を放電して発電機4の駆動を助勢することができる。これにより、補助ボイラ24aの追い焚きやディーゼル発電機の作動に必要な化石燃料を節約することができ、低コスト化及び省エネルギー化を図ることができる。
【0049】
このように、船内の電力需要を、廃熱から得た電気エネルギーのみならず、蓄電池5に蓄えられている電力に基づき発電機4が発生した電気エネルギーよっても賄うことができるため、蒸気タービン3及び発電機4の設計点を従来よりも低くすることができる。例えば、図2に示すように、設計点を点Dから点Eへと変更することが可能となる。すなわち、機関室温及びエンジン負荷が同一の条件下で、廃熱による発電機4の発生可能電力を小さくするようにシステム設計を変更することができる。
【0050】
この場合、設計点の下げ幅は、蓄電池5を放電して発電機4の駆動を助勢することで発生し得る電力相当とすることができる。このとき、エンジン負荷が85%負荷から95%負荷までの範囲内にあり機関室温が摂氏25度であるときの廃熱による発電機4の発生可能電力が連続電力Wよりも大きく且つ総需要電力Wよりも小さく設定されていてもよい。例えば、図2に示すように、設計点の下げ幅を総需要電力Wの10%とし、エンジン負荷が全負荷付近の高負荷域(例えば90%負荷)にあるときの廃熱による発生可能電力が連続電力Wを超える値に設定されていることが好ましい。このように設定すると、充電及び放電のいずれか一方が偏ることがなく、充電機会及び放電機会をバランスさせることができる。
【0051】
このように機関室温及びエンジン負荷が同一の条件下で、廃熱による発電機4の発生可能電力を従来よりも低下させようとするときには、排ガスエコノマイザ10を小型化して排ガスからの熱回収量を小さくすることを試みたり、蒸気タービン3の小型化を試みたりすることができる。このため、廃熱回収系2及び蒸気タービン3の小型化を図ることができ、舶用発電システム100全体の小型化及び低コスト化を図ることが可能となる。よって、サイズ面及びコスト面から従前は廃熱回収系を付加した発電システムを搭載し得なかったような小型の船舶が、このような発電システムを搭載可能となり、船舶業界における省エネルギー化を広く推進することができる。
【0052】
以下、本実施形態に係る舶用発電システム100において実施される充放電制御について説明する。図3は、廃熱による発生可能電力と高圧ドラム24の内圧(すなわち、高圧ドラム24内の蒸気の圧力)との相関図、廃熱による発生可能電力とガバナ弁36のリフト量との相関図、廃熱による発生可能電力と計画点との相関図及び充放電制御の概念図を併せて示す図である。なお、「計画点」は、船内の電力需要が廃熱による発電機4の発生可能電力とバランスする点である。
【0053】
図3に示すように、高圧ドラム24の内圧Pが常用圧力域であるとき、発電機4が計画点で表わされる発生可能電力を発生するとする。なお、常用圧力は、常用航海中に補助ボイラの追い焚き無しに廃熱による発生可能電力と船内の電力需要がバランスしたところでの圧力である。
【0054】
他方、高圧ドラム24の内圧Pが高いほど、廃熱による発電機4の発生可能電力は高くなる。よって、高圧ドラム24の内圧Pが常用圧力Pを超えると、廃熱による発電機4の発生可能電力は船内の電力需要に対して余剰を生み出す。逆に、高圧ドラム24の内圧Pが常用圧力Pを下回ると、廃熱による発電機4の発生可能電力は船内の電力需要に対して不足する。
【0055】
また、ガバナ弁36のリフト量Lが所定値Lであって内圧Pが常用圧力域にあるとき、発電機4が計画点で表わされる発生可能電力を発生するとする。他方、リフト量Lが大きいほど、廃熱による発電機4の発生可能電力は低くなる。よって、リフト量Lが所定値Lを下回ると、廃熱による発電機4の発生可能電力は船内の電力需要に対して余剰を生み出す。逆に、リフト量Lが所定値Lを超えると、廃熱による発電機4の発生可能電力は船内の電力需要に対して不足する。
【0056】
ここで、従前の発電システムにおいては、内圧Pが常用圧力域から低値側へ外れたり、ガバナ弁のリフト量が所定値を超えたりすると、廃熱による発電機4の発生可能電力によって舶内の電力需要を賄いきれないとして、補助ボイラの追い焚きやディーゼル発電機の起動が自動的に行われていた。
【0057】
本実施形態に係る主コントローラ6は、放電中に、第1圧力センサ41により検出される高圧ドラム24の内圧Pが常用圧力域の高値側限界値又は該限界値付近の値である第1圧力閾値P以上になると、まず、副コントローラ7に蓄電池5を充電するよう指令を与える。また、主コントローラ6は、放電中に、リフト量センサ44により検出されるガバナ弁36のリフト量Lが所定値Lよりも低値である第1リフト閾値L未満になると、副コントローラ7に蓄電池5を充電するよう指令を与える。
【0058】
また、主コントローラ6は、充電中に、第1圧力センサ41により検出される高圧ドラム24の内圧Pが常用圧力域の低値側限界値又は該限界値付近の値である第2圧力閾値P未満になると、副コントローラ7に蓄電池5を放電させるよう指令を与える。また、主コントローラ6は、充電中に、リフト量センサ44により検出されるガバナ弁36のリフト量Lが所定値Lよりも高値である第2リフト閾値L以上になると、副コントローラ7に蓄電池5を放電させるよう指令を与える。
【0059】
このように、放電から充電へ移行するときの閾値P,Lと、充電から放電へ移行するときの閾値P,Lとは、ヒステリシスを有している。このため、高圧ドラム24の内圧Pやガバナ弁36のリフト量Lが計画点付近となるように制御されている場合に、充電/放電の移行が頻繁に生じるのを良好に抑制することができる。より詳しく言えば、高圧ドラム24は、その保有水の蓄熱により変化する時定数が緩やかである。そこで、高圧ドラム24の内圧Pを検出要素としてヒステリシスを設定することで、時定数に合わせて充放電が頻繁に繰り返されるのを良好に抑制することができる。
【0060】
なお、充電から放電へ移行した後、内圧Pが第2圧力閾値Pよりも低値である第3圧力閾値Pを下回る又はリフト量Lが第2リフト閾値Lよりも高値である第3リフト閾値L以上になると、蓄電池5の助勢があっても船内の電力需要を賄いきれないとして補助ボイラ24aの追い焚きを行うようにしてもよい。また、内圧Pが第3圧力閾値Pよりも低値である第4圧力閾値Pを下回る又はリフト量Lが第3リフト閾値Lよりも高値である第4リフト閾値L以上になると、蓄電池5及び補助ボイラ24aの追い焚きの助勢があっても船内の電力需要を賄いきれないとしてディーゼル発電機を駆動させるようにしてもよい。このように、蓄電池5の助勢を最優先して行うようにしたうえで、補助ボイラ24aの追い焚き及びディーゼル発電機の駆動のバックアップ機能を持たせることにより、化石燃料の使用頻度を極力抑えたうえで廃熱による発生可能電力が極端に不足するような場合においても船内の電力需要を賄うことができる発電システムを提供することができる。このようなバックアップ機能を持たせる場合において、内圧Pが第1圧力閾値Pを上回る又はリフト量Lが第1リフト閾値L未満であるときには、所定のバックアップ停止条件を充足するか否かを判断し、補助ボイラ24aの自動消火又はディーゼル発電機の停止を行うようにすることが好ましい。なお、ディーゼル発電機の停止は、電子的な制御によらず、手動で行われるようにしてもよい。バックアップ停止条件は、内圧Pが第1圧力閾値P以上である又はリフト量Lが第1リフト閾値L未満であるとの条件でもよいし、内圧Pが第1圧力閾値Pよりも高値である第5圧力閾値P以上である又はリフト量Lが第1リフト閾値Lよりも低値である第5リフト閾値L未満であるとの条件でもよい。
【0061】
図4は、主コントローラ6が実施する充放電制御の手順を示すフローチャートである。主コントローラ6は、蓄電池が放電中であるか充電中であるかを判断する(ステップS1)。放電中であれば(S1:YES)、船内の電力需要の増加やスートブローの実施があるか否かを判断する(ステップS2)。なお、主コントローラ6は、船内の電力需要が増加しているか否かを、補機始動検出手段45からの入力に基づいて判断することができる。補機始動検出手段46により補機の始動が検出されると、船内の電力需要が連続電力を上回るので、このとき、船内の電力需要が増加していると判断することができる。また、主コントローラ6は、スートブローが行われているか否かを、ブロースイッチ45からの入力に基づいて判断することができる。船内の電力需要の増加又はスートブローの実施があれば(S2:YES)、主コントローラ6は、放電条件が成立しているとして、副コントローラ7に蓄電池5を放電させるよう指令を与える(ステップS5)。これにより、廃熱による発電機4の発生可能電力が船内の電力需要を賄いきれないおそれがあっても、蓄電池5を放電させ続けることにより発電機4の駆動を助勢して発電機4の発電量を高くすることができる。
【0062】
放電中において船内の電力需要の増加及びスートブローの実施がなければ(S2:NO)、主コントローラ6は、ガバナ弁36のリフト量Lが第1リフト閾値L未満であるか否かを判断する(ステップS3)。リフト量Lが第1リフト閾値L以上であれば(S3:NO)、主コントローラ6は、高圧ドラム24の内圧Pが第1圧力閾値P以上であるか否かを判断する(ステップS4)。高圧ドラム24の内圧Pが第1圧力閾値P未満であれば(S4:NO)、主コントローラ6は、放電条件が成立しているとして、副コントローラ7に蓄電池5を放電させるよう指令を与える(ステップS5)。これにより、エンジン負荷が低いなどの理由で廃熱による発電機4の発生可能電力が船内の電力需要を賄いきれないおそれがあっても、蓄電池5を放電させ続けることにより、発電機4の駆動を助勢して発電機4の発電量を高くすることができる。
【0063】
放電中においてリフト量Lが第1リフト閾値L未満又は高圧ドラム24の内圧Pが第1圧力閾値P以上であれば(S3:YES or S4:YES)、主コントローラ6は、充電条件が成立したとして、副コントローラ7に蓄電池5を充電させるよう指令を与える(ステップS6)。これにより、間欠補機の始動等がなく船内の電力需要が連続電力W付近にあったり、スートブローが実施されておらず廃熱回収により生成された蒸気を蒸気タービン3の駆動に十分に活用可能であったり、エンジン負荷及び機関室温が高いなどの理由で、廃熱による発電機4の発生可能電力が船内の電力需要を超えるような場合には、その余剰電力を蓄電池5に充電させることができ、余剰電力を有効活用することができる。
【0064】
蓄電池5が充電中であれば(S1:NO)、上記同様にして船内の電力需要の増加又はスートブローの実施があるか否かを判断する(ステップS22)。船内の電力需要の増加又はスートブローの実施があれば(S22:YES)、主コントローラ6は、放電条件が成立しているとして、副コントローラ7に蓄電池5を放電させるよう指令を与える(ステップS26)。
【0065】
充電中において船内の電力需要の増加及びスートブローの実施がなければ(S22:NO)、主コントローラ6は、リフト量Lが第2リフト閾値L以上であるか否かを判断する(ステップS23)。リフト量Lが第2リフト閾値L未満であれば(S23:NO)、主コントローラ6は、高圧ドラム24の内圧Pが第2圧力閾値P未満であるか否かを判断する(ステップS24)。高圧ドラム24の内圧Pが第2圧力閾値P以上であれば(S24:NO)、主コントローラ6は、充電条件が成立しているとして、副コントローラ7に蓄電池5を充電させるよう指令を与える(ステップS25)。
【0066】
放電中においてリフト量Lが第2リフト閾値L以上又は高圧ドラム24の内圧Pが第2圧力閾値P未満であれば(S23:YES or S24:YES)、主コントローラ6は、放電条件が成立しているとして、副コントローラ7に蓄電池5を放電させるよう指令を与える(ステップS26)。
【0067】
これにより、充電中においても、廃熱による発電機4の発生可能電力が船内の電力需要を賄いきれないおそれがあるときに、蓄電池5の放電により発電機4の駆動を助勢して発電機4の発電量を高くすることができる。また、廃熱による発電機4の発生可能電力が船内の電力需要を超えるような場合には、その余剰電力を蓄電池5に充電させ続けることができ、余剰電力を有効活用することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記構成は本発明の範囲内で適宜変更可能である。充電条件及び放電条件に、第2圧力センサ及び第3圧力センサの検出結果が第1圧力センサと同様にして考慮されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、化石燃料の使用をなるべく控えつつも変動的な船内の電力需要を賄うことができ、廃熱回収系の大型化を抑制することができ、且つ、発電機から余剰電力が発生し得るときにはこれを有効に活用することができる舶用発電システムを提供することができるとの作用効果を奏し、従前から廃熱回収系を付加した舶用発電システムを搭載していた船舶については勿論のこと、サイズ面及びコスト面から従前そのようなシステムを搭載し得なかった小型船舶についても広く適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 舶用発電システム
1 舶用ディーゼルエンジン
2 廃熱回収系
3 蒸気タービン
4 発電機
5 蓄電池
6 主コントローラ
7 副コントローラ
10 排ガスエコノマイザ
16,17 スートブロワ
24 高圧ドラム
25 中圧ドラム
26 低圧ドラム
28 蒸気系統
30 中圧混気系統
33 低圧混気系統
36 ガバナ弁
37,38 入口弁
41 第1圧力センサ
42 第2圧力センサ
43 第3圧力センサ
44 リフト量センサ
45 ブロースイッチ
46 補機始動スイッチ
第1圧力閾値
第2圧力閾値
第1リフト閾値
第2リフト閾値


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主機の廃熱を回収して蒸気を生成する廃熱回収系と、
前記廃熱回収系により生成された蒸気で駆動される蒸気タービンと、
前記蒸気タービンの出力に基づき駆動されて発電する発電機と、
前記発電機に電気的に接続された蓄電池と、を備え、
前記発電機は、前記主機の負荷が高負荷域にあるときの廃熱による発生可能電力が船内で連続的に必要となる連続電力よりも大きく且つ当該連続電力に一時的且つ追加的に必要となる電力分が上乗せされた総需要電力よりも小さくなるよう構成され、
前記蓄電池は、廃熱による前記発電機の発生可能電力が船内の電力需要を上回るときには前記発電機により発生された余剰電力で充電され、廃熱による前記発電機の発生可能電力が船内の電力需要を下回るときには放電されて前記発電機の駆動を助勢する、舶用発電システム。
【請求項2】
前記発電機は、前記主機の負荷が85%負荷から95%負荷までの範囲内にあり機関室温が摂氏25度であるときの廃熱による発生可能電力が前記連続電力よりも大きく且つ前記総需要電力よりも小さくなるよう構成される、請求項1に記載の舶用発電システム。
【請求項3】
前記蓄電池の充放電を制御する制御手段、を備え、
前記制御手段が、廃熱による前記発電機の発生可能電力が船内の電力需要を上回る所定の充電条件が成立したときに、前記発電機により発生された余剰電力で前記蓄電池を充電させ、且つ、廃熱による前記発電機の発生可能電力が船内の電力需要を下回る所定の放電条件が成立したときに、前記蓄電池を放電して前記発電機の駆動を助勢する制御を実施するよう構成されている、請求項1又は2に記載の舶用発電システム。
【請求項4】
船内の補機の始動を検出する補機始動検出手段を更に備え、
前記充電条件は、前記補機始動検出手段により前記補機の始動が検出されていないとの条件を含み、前記放電条件は、前記補機始動検出手段により前記補機の始動が検出されているとの条件を含む、請求項3に記載の舶用発電システム。
【請求項5】
前記廃熱回収系を構成し、主機の排ガスが通流する排ガスエコノマイザと、
前記排ガスエコノマイザ内に前記廃熱回収系で生成された蒸気を噴射するブロワと、
前記ブロワが作動しているか否かを検出するブロー検出手段と、を更に備え、
前記充電条件は、前記ブロー検出手段により前記ブロワの停止が検出されているとの条件を含み、前記放電条件は、前記ブロー検出手段により前記ブロワの作動が検出されているとの条件を含む、請求項3又は4に記載の舶用発電システム。
【請求項6】
前記蒸気タービンの蒸気入口へと蒸気を送る蒸気系統と、
前記蒸気系統にリフト量を可変にして設けられ、該リフト量を変更することで前記蒸気入口に送られる蒸気の流量を調整するガバナ弁と、
前記ガバナ弁のリフト量を検出するリフト量検出手段と、を更に備え、
前記充電条件は、前記リフト量検出手段により検出されるリフト量が第1リフト閾値未満であるとの条件を含み、前記放電条件は、前記リフト量検出手段により検出されるリフト量が前記第1リフト閾値よりも大きい第2リフト閾値以上であるとの条件を含む、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の舶用発電システム。
【請求項7】
前記廃熱回収系を構成し、生成された蒸気を溜める汽水分離器と、
前記汽水分離器の内圧を検出する圧力検出手段と、を更に備え、
前記充電条件は、前記圧力検出手段により検出される内圧が第1圧力閾値以上であるとの条件を含み、前記放電条件は、前記圧力検出手段により検出される内圧が前記第1圧力閾値よりも小さい第2圧力閾値未満であるとの条件を含む、請求項3乃至6のいずれか1項に記載の舶用発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−163076(P2012−163076A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25820(P2011−25820)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】