船外機のハンドル支持構造
【課題】フリクション機能を維持しつつ、防振機能を向上することができる船外機のハンドル支持構造を提供する。
【解決手段】ハンドル本体17が略水平状態にあるときにハンドル本体17とハンドルブラケット15及びハンドルカバー16との間に所定のクリアランスCを形成し、且つ、ハンドル本体17とハンドルブラケット15又はハンドルカバー16との少なくとも一方側との間に配置されてハンドル本体17が略垂直状態位置にあるときにハンドル本体17とハンドルブラケット15又はハンドルカバー16との少なくとも一方側との間でフリクションを発生させるフリクション発生装置20と、を備えている。
【解決手段】ハンドル本体17が略水平状態にあるときにハンドル本体17とハンドルブラケット15及びハンドルカバー16との間に所定のクリアランスCを形成し、且つ、ハンドル本体17とハンドルブラケット15又はハンドルカバー16との少なくとも一方側との間に配置されてハンドル本体17が略垂直状態位置にあるときにハンドル本体17とハンドルブラケット15又はハンドルカバー16との少なくとも一方側との間でフリクションを発生させるフリクション発生装置20と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機のエンジン本体を操舵するために略水平状態位置とされると共に、必要に応じて略垂直状態位置へと回動されるハンドル本体を備えた船外機のハンドル支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、船外機においては、エンジン本体側に、スロットル操作並びに操舵(又は操舵のみ)を行うためのハンドル本体が略水平状態位置で突出連結されており、このハンドル本体の先端部を掴んでその向きを船体左右に振ると、船外機がこれに従動して転舵し、船体の走行方向を操舵することが可能となっている。
【0003】
また、ハンドル本体は、その先端部を掴んで上下方向に振ると、ハンドル本体の突出方向を、略水平状態位置から略垂直状態位置まで変えることができる。
【0004】
このハンドル本体の突出方向を略水平状態位置から略垂直状態位置まで変更可能とするのは、船外機の運搬・保管時における船外機全体のコンパクト化のためにハンドル本体を略垂直状態位置として船外機に納めたい(沿わせたい)場合、船体停泊の際や浅瀬を航走するためにハンドル本体の略水平状態を維持しつつ船外機を前倒しにしたい場合、等に必要であることによる。
【0005】
従って、ハンドル本体は、エンジン本体に対して上下方向の向きを変えられるように回転可能に連結すると共に、エンジン本体(船外機)の自重によって船外機が回転しては困るため、所望又は所定の回転位置で停止する必要がある。
【0006】
そこで、エンジン本体側とハンドル本体とを防振装置を介して連結すると共に、その防振装置に、ハンドル本体を略水平状態位置と略垂直状態位置との間の所望位置又は所定位置で摩擦力を利用して停止させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この際、防振装置は、例えば、図11に示すように、エンジン本体側の円筒状ハウジング1とハンドル本体2とを回動可能に連結するものである。
【0008】
ハンドル本体2は、円筒状ハウジング1の内周に所定間隔を開けて挿通される軸部2aと、この軸部2aと一体に形成されて船体左右(紙面上下方向)の操舵用の操作幹2bとで横向きの略L字形状とすると共に、軸部2aの外周面に円筒状フランジ2cが一体に形成されている。尚、軸部2aの端面には、ハンドルカバー3が装着される。
【0009】
一方、軸部2aの外周には、その両端外周に設けられて円筒状フランジ2cとハンドルカバー3とに密着する環状フランジ4a,4bを一体に形成した樹脂製カラー4と、樹脂製カラー4の外周に設けられて円筒状フランジ2cの開放端を閉成する環状フランジ5aを一体に形成した金属製内筒5と、樹脂製カラー4と金属製内筒5の円筒状フランジ2c側に形成された各環状フランジ4a,5a間に設けられたウェーブワッシャ6と、金属製内筒5の外周と円筒状ハウジング1の内周との間に圧入されたゴム製弾性体7と、が設けられている。
【0010】
これにより、軸部2aの軸線方向に沿うウェーブワッシャ6のばね性によって、樹脂製カラー4の両端の環状フランジ4a,4bが円筒状フランジ2cとハンドルカバー3とに弾性的に押し付けられるために、ハンドル本体2の上下方向(紙面奥行き方向)の回動位置を保持するためのフリクション機能が発揮される。
【0011】
また、樹脂製カラー4の外周に金属製内筒5が配置されると共に、この金属製内筒5とエンジン本体側の円筒状ハウジング1との間にゴム製弾性体7が介装されているため、ゴム製弾性体7の弾性により、エンジン本体からの振動がハンドル本体2に伝達されないようにする防振機能が発揮される。
【特許文献1】特許第3729230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記の如く構成された船外機のハンドル支持構造にあっては、ハンドル本体2の上下方向の回動位置(姿勢)は、ウェーブワッシャ6の単なる波型形状に起因する軸部2aの軸線方向に沿うばね性によって発生するフリクション機能に依存しているため、エンジン本体側(円筒状ハウジング1)とハンドル本体2とは、ハンドル本体2の姿勢に拘わらず、常時接触している状態である。
【0013】
従って、エンジン本体が駆動している状態、即ち、ハンドル本体2が略水平状態位置にあって、運転者がハンドル本体2を握持操作している状態では、エンジン本体からの振動をハンドル本体2に伝達させないようにするには限界があるという問題が生じていた。
【0014】
この際、ハンドル本体2に加わる船外機からの荷重は、防振機能とは相反する推進力の伝達、操縦性(安定性)の確保、船体ジャンプ(波越え時等)時の衝撃による船外機本体の変位を規制する機能、船外機本体荷重(自重)の保持(支持)といった様々な要素を考慮する必要がある。
【0015】
しかしながら、上述した単なるウェーブワッシャ6によるフリクション機能のみでは、ハンドル本体2の姿勢維持のためのフリクションの発生を維持しようとすると、エンジン本体からのハンドル本体2への振動伝達抑制のための防振機能の向上を犠牲にせざるを得ず、逆に、防振機能を特化しようとすると、フリクション機能を犠牲にせざるを得ないという問題が発生していた。
【0016】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、フリクション機能を維持しつつ、防振機能を向上することができる船外機のハンドル支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の船外機のハンドル支持構造は、船外機のエンジン本体側に設けられたハンドルブラケットと、前記ハンドルブラケットに着脱可能に保持されるハンドルカバーと、前記ハンドルブラケットと前記ハンドルカバーとに軸支されて略水平状態位置から略垂直状態位置まで上下方向に回動可能とされたハンドル本体と、を備えた船外機のハンドル支持構造であって、前記ハンドル本体が略水平状態にあるときに該ハンドル本体と前記ハンドルブラケット及び前記ハンドルカバーとの間に所定のクリアランスを形成し、且つ、前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケット又は前記ハンドルカバーとの少なくとも一方側との間に配置されて前記ハンドル本体が略垂直状態位置にあるときに前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケット又は前記ハンドルカバーとの少なくとも一方側との間でフリクションを発生させるフリクション発生装置と、を備えていることを特徴とする。
【0018】
この際、前記フリクション発生装置は、前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケット又は前記ハンドルカバーとの少なくとも一方側との間に配置され、前記ハンドル本体が略水平状態位置にあるときには非接触で、且つ、前記ハンドル本体が略垂直状態位置にあるときにフリクションを発生させる摺動部材を備えているのが好ましい。
【0019】
また、前記摺動部材は、前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケットとのそれぞれに配置されると共に、少なくともその一方が弾性を有するのが好ましい。
【0020】
さらに、前記摺動部材が前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケットのそれぞれに設けられ、前記各摺動部材の間に弾性部材を介在させても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明の船外機のハンドル支持構造は、フリクション機能を維持しつつ、防振機能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造を適用した船外機の内部の側面図、図2は本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造を適用した船外機の要部の平面図、図3は本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造を示す要部の断面図、図4(A)は本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造におけるハンドル本体略水平状態位置の要部の断面図、図4(B)は本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造におけるハンドル本体略水平状態位置の要部の平面図、図5(A)は本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造におけるハンドル本体略垂直状態位置の要部の断面図、図4(B)は本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造におけるハンドル本体略垂直状態位置の要部の平面図である。
【0024】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る船外機(全体図省略)11の最上部に搭載されているエンジン本体12は、船体(図示せず)に船外機11を取り付けるためのクランプブラケット13を支持するエンジンブラケット14に固定されている。
【0025】
また、エンジンブラケット14には、ハンドルブラケット15が連結されており、図2に示すように、このハンドルブラケット15に着脱可能に保持されるハンドルカバー16とによって略水平状態位置から略垂直状態位置まで上下方向に回動可能となるようにハンドル本体17の一端側が回動可能に挟持されている。尚、ハンドルカバー16は、ボルト18を介してハンドルブラケット15に着脱可能に装着されている。
【0026】
ハンドル本体17は、図3に示すように、例えば、水平面内で船体略左右方向(図示上下方向)に延びる軸線を上下回動軸線Pとする軸部17aを備え、この軸部17aの両端をハンドルブラケット15とハンドルカバー16とで回動可能に支持するように挟持した状態で上下回動軸線Pと略直行する船体前方に向かって突出した操作幹17bが一体に形成されている。
【0027】
また、ハンドル本体17の軸部17aとハンドルブラケット15又はハンドルカバー16との少なくとも一方側との間には、図4及び図5に示すように、ハンドル本体17が略水平状態にあるときには軸部17aとハンドルブラケット15又はハンドルカバー16との少なくとも一方側との間での干渉を抑制し、且つ、ハンドル本体17が略垂直状態にあるときには軸部17aとハンドルブラケット15又はハンドルカバー16との少なくとも一方側との間での干渉を許容するフリクション発生装置20が配置されている。
【0028】
具体的には、フリクション発生装置20は、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、段階的又は傾斜的に干渉力が変化するように設定されている。
【0029】
本実施の形態では、軸部17aの一端側とハンドルカバー16との間に配置された雌雄の異なる一対の摺動部材21,22を備え、この各摺動部材21,22間における接触圧力(フリクション)が、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、段階的に変化する。
【0030】
即ち、摺動部材21は、上下回動軸線Pと同軸上にハンドルカバー16に螺着されたボルト23を介してハンドルカバー16に固定された断面略凸字形状の剛性材料(金属又は硬質樹脂等)から構成され、上下回動軸線Pと直行する面内の肉厚を、例えば、上下回動軸線Pを中心(同軸)とする円弧形状(扇形状)となるように、90°毎に交互に薄肉部21aと厚肉部21bとで異ならせると共に、その厚肉部21bの上面を対向接触面21cとしている。
【0031】
摺動部材22は、軸部17aと一体に回転するように軸部17aに固定(例えば、接着等)された下向きの断面略凹字形状の弾性部材(ゴム又は軟質樹脂等)から構成されており、上下回動軸線Pと直行する面内の肉厚を、常時(ハンドル本体17が略水平状態にあるとき)は摺動部材21の薄肉部21aと厚肉部21bとは90°位相がずれた状態で上下回動軸線Pを中心(同軸)とする円弧形状(扇形状)となるように、薄肉部21aと対向する厚肉部22aと、厚肉部21bと対向する薄肉部22bとで異ならせると共に、その厚肉部22aの底面を対向接触面22cとしている。
【0032】
尚、本実施の形態においては、軸部17aには、上下回動軸線Pの軸回り方向並びに直交方向に対してハンドルブラケット15及びハンドルカバー16との接触状態を非接触又は低抵抗接触とする複数のパッキン24,25,26が設けられている。
【0033】
パッキン24は、その外周側に凹溝24aが形成されており、ハンドル本体17を上下方向に回動させる際に、ハンドルブラケット15の内周面との接触面積を極力小さくしつつ、ハンドル本体17の回動時のガタの発生を抑制する機能を備えている。
【0034】
パッキン25,26は、上下回動軸線Pと同軸の円筒形状を呈すると共に上下回動軸線Pと直交するフランジを一体に形成することで断面(端面)略L字形状とされ、その直径D1は、軸部17aの回転を支持するハンドルブラケット15及びハンドルカバー16の軸支持凹陥部15a,16aの直径D2よりも小径とされている。また、パッキン25,26間の幅W1は、ハンドルブラケット15及びハンドルカバー16の離間距離W2よりも幅狭とされている。
【0035】
従って、パッキン25とハンドルブラケット15及びパッキン26とハンドルカバー16との間には、所定間隔のクリアランスCが形成されており、ハンドル本体17が略水平状態位置にあるときには、ハンドルブラケット15及びハンドルカバー16とハンドル本体17との間にはクリアランスCが存在していることから、エンジン本体12からの振動が伝達され難い構成となっている。
【0036】
上記の構成において、例えば、ハンドル本体17が略水平状態位置にあるときには、図4(A),(B)に示すように、摺動部材21の対向接触面21cと摺動部材22の対向接触面22cとは離間して非接触な状態、即ち、干渉していない状態にある。
【0037】
これに対し、ハンドル本体17を上下回動軸線Pを軸線として回動させ、例えば、ハンドル本体17が略垂直状態位置にあるときには、図5(A),(B)に示すように、摺動部材21,22の肉厚の相違に伴い、摺動部材21の対向接触面21cと摺動部材22の対向接触面22cとが圧接してフリクション機能発生状態となり、ハンドル本体17の略垂直状態位置を強固に維持することができる。
【0038】
尚、薄肉部21aと厚肉部21bとは、上記実施の形態では、2段階としたが、例えば、その中間の肉厚部分を設けることにより、例えば、浅瀬航走時に船外機11を前倒しとした中立位置での固定等に対応することができる。
【0039】
ところで、上記実施の形態では、厚肉部21b,22aと薄肉部21a,22bとを略90°で交互に形成したことにより、ハンドル本体17が略水平状態位置にある時には完全な非接触状態とすると共に、略垂直状態位置との2位置間でのみハンドル本体17の回動位置を規定する構成で開示したが、ハンドル本体17の回動位置を所定又は所望の位置で複数段階又は無段階で規定することも可能である。
【0040】
また、厚肉部21b,22aと薄肉部21a,22bとを略90°で交互に形成したことにより、ハンドル本体17が略水平状態位置にある時と、ハンドル本体17が上向きで略垂直状態位置或いはハンドル本体17が下向で略垂直状態位置の両方に対応することができる。
【0041】
(変形例1)
図6は、本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例1を示す要部の断面図である。
【0042】
上記実施の形態においては、摺動部材21,22に90°位相がずれた厚肉部21b,22aと薄肉部21a,22bとを交互に形成してハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、段階的に変化するものを開示したが、この変形例1では、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、傾斜的に変化するものを示す。
【0043】
即ち、変形例1のフリクション発生装置30は、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、傾斜的に干渉力が変化するように設定されている。
【0044】
本実施の形態では、軸部17aの一端側とハンドルカバー16との間に配置された一対の摺動部材31,32を備え、この各摺動部材31,32間における接触圧力が、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、傾斜的に変化する。
【0045】
即ち、摺動部材31は、ハンドルカバー16に固定された剛性材料(金属又は硬質樹脂等)から構成され、上下回動軸線Pと同軸上で略円弧形状を呈すると共にその両端付近の肉厚を徐々に薄肉とした厚肉部31bが形成されると共に、上下回動軸線Pと直行する厚肉部31bの上面を対向接触面31cとしている。これにより、厚肉部31bの両端付近の対向接触面31cは、その肉厚が徐々に薄肉となっていることから、傾斜した対向接触面31dとなっている。
【0046】
摺動部材32は、軸部17aと一体に回転するように軸部17aに固定(例えば、接着等)された弾性部材(ゴム又は軟質樹脂等)から構成されており、上下回動軸線Pと直行する面内の肉厚を、常時(ハンドル本体17が略水平状態にあるとき)は摺動部材31の厚肉部31bとは離間した状態で上下回動軸線Pを中心(同軸)とする円弧形状を呈すると共にその両端付近の肉厚を徐々に薄肉とした厚肉部32aが形成され、その厚肉部32aの底面を対向接触面32cとしている。これにより、厚肉部32aの両端付近の対向接触面32cは、その肉厚が徐々に薄肉となっていることから、傾斜した対向接触面32dとなっている。
【0047】
上記の構成において、例えば、ハンドル本体17が略水平状態位置にあるときには、摺動部材31の対向接触面31cと摺動部材32の対向接触面32cとは離間して非接触な状態、即ち、干渉していない状態にある。
【0048】
これに対し、ハンドル本体17を上下回動軸線Pを軸線として回動させ、例えば、ハンドル本体17が略垂直状態位置にあるときには、図6に示すように、摺動部材31,32の肉厚の相違に伴い、摺動部材31の傾斜した対向接触面31dと摺動部材32の傾斜した対向接触面32dとが圧接してフリクション機能発生状態となり、ハンドル本体17の略垂直状態位置を徐々に(傾斜的に)強固に維持することができる。
【0049】
(変形例2)
図7は、本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例2を示す要部の断面図である。
【0050】
上記実施の形態においては、例えば、摺動部材21,22は、ハンドルカバー16又はハンドル本体17とは別体に構成されているものを開示したが、この変形例2では、少なくともその一方を一体成形としたものである。
【0051】
即ち、変形例2のフリクション発生装置40は、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、傾斜的に干渉力が変化するように設定されている。
【0052】
本実施の形態では、軸部17aの一端側とハンドルカバー16との間に配置された一対の摺動部材41,42を備え、この各摺動部材41,42間における接触圧力が、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、傾斜的に変化する。
【0053】
即ち、摺動部材41は、ハンドルカバー16に固定された剛性材料(金属又は硬質樹脂等)から構成され、上下回動軸線Pと同軸上で略円弧形状を呈すると共にその両端付近の肉厚を徐々に薄肉とした厚肉部41bが弾性材料から別体で設けられていると共に、上下回動軸線Pと直行する厚肉部41bの上面を対向接触面41cとしている。これにより、厚肉部41bの両端付近の対向接触面41cは、その肉厚が徐々に薄肉となっていることから、傾斜した対向接触面41dとなっている。
【0054】
摺動部材42は、軸部17aと一体に回転するように軸部17aに一体成形された剛性材料(金属等)から構成されており、上下回動軸線Pと直行する面内の肉厚を、常時(ハンドル本体17が略水平状態にあるとき)は摺動部材41の厚肉部41bとは離間した状態で上下回動軸線Pを中心(同軸)とする円弧形状を呈すると共にその両端付近の肉厚を徐々に薄肉とした厚肉部42aが形成され、その厚肉部42aの底面を対向接触面42cとしている。これにより、厚肉部42aの両端付近の対向接触面42cは、その肉厚が徐々に薄肉となっていることから、傾斜した対向接触面42dとなっている。
【0055】
上記の構成において、例えば、ハンドル本体17が略水平状態位置にあるときには、摺動部材41の対向接触面41cと摺動部材42の対向接触面42cとは離間して非接触な状態、即ち、干渉していない状態にある。
【0056】
これに対し、ハンドル本体17を上下回動軸線Pを軸線として回動させ、例えば、ハンドル本体17が略垂直状態位置にあるときには、図7に示すように、摺動部材41,42の肉厚の相違に伴い、摺動部材41の傾斜した対向接触面41dと摺動部材42の傾斜した対向接触面42dとが圧接してフリクション機能発生状態となり、ハンドル本体17の略垂直状態位置を徐々に(傾斜的に)強固に維持することができる。
【0057】
(変形例3)
図8乃至図10は、本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例3を示す。
【0058】
上記実施の形態においては、例えば、摺動部材21,22は、ハンドルカバー16又はハンドル本体17とは別体に構成されているものを開示したが、この変形例3では、その両方を一体成形としたものである。
【0059】
即ち、変形例3のフリクション発生装置50は、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、段階的に干渉力が変化するように設定されている。
【0060】
本実施の形態では、軸部17aの一端側とハンドルカバー16との間に配置された一対の摺動部材51,52を備え、この各摺動部材51,52間における接触圧力が、弾性部材53を介してハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、段階的に変化する。
【0061】
即ち、摺動部材51は、上下回動軸線Pと同軸上で略円弧形状を呈する厚肉部としてハンドルカバー16と一体に形成され、上下回動軸線Pと直行する上面を対向接触面51cとしている。
【0062】
摺動部材52は、上下回動軸線Pと同軸上で略円弧形状を呈する厚肉部として軸部17aと一体に回転するように軸部17aと一体に形成され、上下回動軸線Pと直行する底面を対向接触面52cとしている。
【0063】
弾性部材53は、ゴム等の薄肉シートから構成されており、各摺動部材51,52の両方に跨る幅の円環状又は真円状に形成されている。
【0064】
上記の構成において、例えば、ハンドル本体17が略水平状態位置にあるときには、図8(A),(B)に示すように、摺動部材51の対向接触面51cと摺動部材52の対向接触面52cとは離間して非接触な状態、即ち、干渉していない状態にあり、弾性部材53はこれら対向接触面51cと対向接触面52cとに噛み込まれていない状態にある。
【0065】
これに対し、ハンドル本体17を上下回動軸線Pを軸線として回動させ、例えば、ハンドル本体17が略垂直状態位置にあるときには、図9(A),(B)に示すように、摺動部材51,52の肉厚の相違に伴い、摺動部材51の対向接触面51cと摺動部材52の対向接触面52cとが対向して弾性部材53を噛み込んだ状態となり、ハンドル本体17の略垂直状態位置を強固に維持することができる。
【0066】
この際、図10に示すように、軸支持凹陥部16a内の軸部17aには、略円筒形状のパッキン54が設けられているが、このパッキン54の外径は軸支持凹陥部16aの内径よりも小径とすることで、ハンドル本体17が略水平状態位置にあるときのハンドル本体17とハンドルカバー16とが干渉しないように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造を適用した船外機の内部の側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造を適用した船外機の要部の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造を示す要部の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造におけるハンドル本体略水平状態位置を示し、(A)は要部の断面図、(B)は要部の平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造におけるハンドル本体略垂直状態位置を示し、(A)は要部の断面図、(B)は要部の平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例1を示す要部の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例2を示す要部の断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例3を示し、(A)はハンドル本体略水平状態位置の要部の正面図、(B)はハンドル本体略水平状態位置の要部の平面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例3を示し、(A)はハンドル本体略垂直状態位置の要部の正面図、(B)はハンドル本体略垂直状態位置の要部の平面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例3を示す要部の断面図である。
【図11】従来の船外機のハンドル支持構造を示す要部の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
11…船外機
12…エンジン本体
15…ハンドルブラケット
16…ハンドルカバー
17…ハンドル本体
20…フリクション発生装置
C…クリアランス
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機のエンジン本体を操舵するために略水平状態位置とされると共に、必要に応じて略垂直状態位置へと回動されるハンドル本体を備えた船外機のハンドル支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、船外機においては、エンジン本体側に、スロットル操作並びに操舵(又は操舵のみ)を行うためのハンドル本体が略水平状態位置で突出連結されており、このハンドル本体の先端部を掴んでその向きを船体左右に振ると、船外機がこれに従動して転舵し、船体の走行方向を操舵することが可能となっている。
【0003】
また、ハンドル本体は、その先端部を掴んで上下方向に振ると、ハンドル本体の突出方向を、略水平状態位置から略垂直状態位置まで変えることができる。
【0004】
このハンドル本体の突出方向を略水平状態位置から略垂直状態位置まで変更可能とするのは、船外機の運搬・保管時における船外機全体のコンパクト化のためにハンドル本体を略垂直状態位置として船外機に納めたい(沿わせたい)場合、船体停泊の際や浅瀬を航走するためにハンドル本体の略水平状態を維持しつつ船外機を前倒しにしたい場合、等に必要であることによる。
【0005】
従って、ハンドル本体は、エンジン本体に対して上下方向の向きを変えられるように回転可能に連結すると共に、エンジン本体(船外機)の自重によって船外機が回転しては困るため、所望又は所定の回転位置で停止する必要がある。
【0006】
そこで、エンジン本体側とハンドル本体とを防振装置を介して連結すると共に、その防振装置に、ハンドル本体を略水平状態位置と略垂直状態位置との間の所望位置又は所定位置で摩擦力を利用して停止させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この際、防振装置は、例えば、図11に示すように、エンジン本体側の円筒状ハウジング1とハンドル本体2とを回動可能に連結するものである。
【0008】
ハンドル本体2は、円筒状ハウジング1の内周に所定間隔を開けて挿通される軸部2aと、この軸部2aと一体に形成されて船体左右(紙面上下方向)の操舵用の操作幹2bとで横向きの略L字形状とすると共に、軸部2aの外周面に円筒状フランジ2cが一体に形成されている。尚、軸部2aの端面には、ハンドルカバー3が装着される。
【0009】
一方、軸部2aの外周には、その両端外周に設けられて円筒状フランジ2cとハンドルカバー3とに密着する環状フランジ4a,4bを一体に形成した樹脂製カラー4と、樹脂製カラー4の外周に設けられて円筒状フランジ2cの開放端を閉成する環状フランジ5aを一体に形成した金属製内筒5と、樹脂製カラー4と金属製内筒5の円筒状フランジ2c側に形成された各環状フランジ4a,5a間に設けられたウェーブワッシャ6と、金属製内筒5の外周と円筒状ハウジング1の内周との間に圧入されたゴム製弾性体7と、が設けられている。
【0010】
これにより、軸部2aの軸線方向に沿うウェーブワッシャ6のばね性によって、樹脂製カラー4の両端の環状フランジ4a,4bが円筒状フランジ2cとハンドルカバー3とに弾性的に押し付けられるために、ハンドル本体2の上下方向(紙面奥行き方向)の回動位置を保持するためのフリクション機能が発揮される。
【0011】
また、樹脂製カラー4の外周に金属製内筒5が配置されると共に、この金属製内筒5とエンジン本体側の円筒状ハウジング1との間にゴム製弾性体7が介装されているため、ゴム製弾性体7の弾性により、エンジン本体からの振動がハンドル本体2に伝達されないようにする防振機能が発揮される。
【特許文献1】特許第3729230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記の如く構成された船外機のハンドル支持構造にあっては、ハンドル本体2の上下方向の回動位置(姿勢)は、ウェーブワッシャ6の単なる波型形状に起因する軸部2aの軸線方向に沿うばね性によって発生するフリクション機能に依存しているため、エンジン本体側(円筒状ハウジング1)とハンドル本体2とは、ハンドル本体2の姿勢に拘わらず、常時接触している状態である。
【0013】
従って、エンジン本体が駆動している状態、即ち、ハンドル本体2が略水平状態位置にあって、運転者がハンドル本体2を握持操作している状態では、エンジン本体からの振動をハンドル本体2に伝達させないようにするには限界があるという問題が生じていた。
【0014】
この際、ハンドル本体2に加わる船外機からの荷重は、防振機能とは相反する推進力の伝達、操縦性(安定性)の確保、船体ジャンプ(波越え時等)時の衝撃による船外機本体の変位を規制する機能、船外機本体荷重(自重)の保持(支持)といった様々な要素を考慮する必要がある。
【0015】
しかしながら、上述した単なるウェーブワッシャ6によるフリクション機能のみでは、ハンドル本体2の姿勢維持のためのフリクションの発生を維持しようとすると、エンジン本体からのハンドル本体2への振動伝達抑制のための防振機能の向上を犠牲にせざるを得ず、逆に、防振機能を特化しようとすると、フリクション機能を犠牲にせざるを得ないという問題が発生していた。
【0016】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、フリクション機能を維持しつつ、防振機能を向上することができる船外機のハンドル支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の船外機のハンドル支持構造は、船外機のエンジン本体側に設けられたハンドルブラケットと、前記ハンドルブラケットに着脱可能に保持されるハンドルカバーと、前記ハンドルブラケットと前記ハンドルカバーとに軸支されて略水平状態位置から略垂直状態位置まで上下方向に回動可能とされたハンドル本体と、を備えた船外機のハンドル支持構造であって、前記ハンドル本体が略水平状態にあるときに該ハンドル本体と前記ハンドルブラケット及び前記ハンドルカバーとの間に所定のクリアランスを形成し、且つ、前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケット又は前記ハンドルカバーとの少なくとも一方側との間に配置されて前記ハンドル本体が略垂直状態位置にあるときに前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケット又は前記ハンドルカバーとの少なくとも一方側との間でフリクションを発生させるフリクション発生装置と、を備えていることを特徴とする。
【0018】
この際、前記フリクション発生装置は、前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケット又は前記ハンドルカバーとの少なくとも一方側との間に配置され、前記ハンドル本体が略水平状態位置にあるときには非接触で、且つ、前記ハンドル本体が略垂直状態位置にあるときにフリクションを発生させる摺動部材を備えているのが好ましい。
【0019】
また、前記摺動部材は、前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケットとのそれぞれに配置されると共に、少なくともその一方が弾性を有するのが好ましい。
【0020】
さらに、前記摺動部材が前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケットのそれぞれに設けられ、前記各摺動部材の間に弾性部材を介在させても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明の船外機のハンドル支持構造は、フリクション機能を維持しつつ、防振機能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造を適用した船外機の内部の側面図、図2は本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造を適用した船外機の要部の平面図、図3は本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造を示す要部の断面図、図4(A)は本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造におけるハンドル本体略水平状態位置の要部の断面図、図4(B)は本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造におけるハンドル本体略水平状態位置の要部の平面図、図5(A)は本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造におけるハンドル本体略垂直状態位置の要部の断面図、図4(B)は本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造におけるハンドル本体略垂直状態位置の要部の平面図である。
【0024】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る船外機(全体図省略)11の最上部に搭載されているエンジン本体12は、船体(図示せず)に船外機11を取り付けるためのクランプブラケット13を支持するエンジンブラケット14に固定されている。
【0025】
また、エンジンブラケット14には、ハンドルブラケット15が連結されており、図2に示すように、このハンドルブラケット15に着脱可能に保持されるハンドルカバー16とによって略水平状態位置から略垂直状態位置まで上下方向に回動可能となるようにハンドル本体17の一端側が回動可能に挟持されている。尚、ハンドルカバー16は、ボルト18を介してハンドルブラケット15に着脱可能に装着されている。
【0026】
ハンドル本体17は、図3に示すように、例えば、水平面内で船体略左右方向(図示上下方向)に延びる軸線を上下回動軸線Pとする軸部17aを備え、この軸部17aの両端をハンドルブラケット15とハンドルカバー16とで回動可能に支持するように挟持した状態で上下回動軸線Pと略直行する船体前方に向かって突出した操作幹17bが一体に形成されている。
【0027】
また、ハンドル本体17の軸部17aとハンドルブラケット15又はハンドルカバー16との少なくとも一方側との間には、図4及び図5に示すように、ハンドル本体17が略水平状態にあるときには軸部17aとハンドルブラケット15又はハンドルカバー16との少なくとも一方側との間での干渉を抑制し、且つ、ハンドル本体17が略垂直状態にあるときには軸部17aとハンドルブラケット15又はハンドルカバー16との少なくとも一方側との間での干渉を許容するフリクション発生装置20が配置されている。
【0028】
具体的には、フリクション発生装置20は、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、段階的又は傾斜的に干渉力が変化するように設定されている。
【0029】
本実施の形態では、軸部17aの一端側とハンドルカバー16との間に配置された雌雄の異なる一対の摺動部材21,22を備え、この各摺動部材21,22間における接触圧力(フリクション)が、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、段階的に変化する。
【0030】
即ち、摺動部材21は、上下回動軸線Pと同軸上にハンドルカバー16に螺着されたボルト23を介してハンドルカバー16に固定された断面略凸字形状の剛性材料(金属又は硬質樹脂等)から構成され、上下回動軸線Pと直行する面内の肉厚を、例えば、上下回動軸線Pを中心(同軸)とする円弧形状(扇形状)となるように、90°毎に交互に薄肉部21aと厚肉部21bとで異ならせると共に、その厚肉部21bの上面を対向接触面21cとしている。
【0031】
摺動部材22は、軸部17aと一体に回転するように軸部17aに固定(例えば、接着等)された下向きの断面略凹字形状の弾性部材(ゴム又は軟質樹脂等)から構成されており、上下回動軸線Pと直行する面内の肉厚を、常時(ハンドル本体17が略水平状態にあるとき)は摺動部材21の薄肉部21aと厚肉部21bとは90°位相がずれた状態で上下回動軸線Pを中心(同軸)とする円弧形状(扇形状)となるように、薄肉部21aと対向する厚肉部22aと、厚肉部21bと対向する薄肉部22bとで異ならせると共に、その厚肉部22aの底面を対向接触面22cとしている。
【0032】
尚、本実施の形態においては、軸部17aには、上下回動軸線Pの軸回り方向並びに直交方向に対してハンドルブラケット15及びハンドルカバー16との接触状態を非接触又は低抵抗接触とする複数のパッキン24,25,26が設けられている。
【0033】
パッキン24は、その外周側に凹溝24aが形成されており、ハンドル本体17を上下方向に回動させる際に、ハンドルブラケット15の内周面との接触面積を極力小さくしつつ、ハンドル本体17の回動時のガタの発生を抑制する機能を備えている。
【0034】
パッキン25,26は、上下回動軸線Pと同軸の円筒形状を呈すると共に上下回動軸線Pと直交するフランジを一体に形成することで断面(端面)略L字形状とされ、その直径D1は、軸部17aの回転を支持するハンドルブラケット15及びハンドルカバー16の軸支持凹陥部15a,16aの直径D2よりも小径とされている。また、パッキン25,26間の幅W1は、ハンドルブラケット15及びハンドルカバー16の離間距離W2よりも幅狭とされている。
【0035】
従って、パッキン25とハンドルブラケット15及びパッキン26とハンドルカバー16との間には、所定間隔のクリアランスCが形成されており、ハンドル本体17が略水平状態位置にあるときには、ハンドルブラケット15及びハンドルカバー16とハンドル本体17との間にはクリアランスCが存在していることから、エンジン本体12からの振動が伝達され難い構成となっている。
【0036】
上記の構成において、例えば、ハンドル本体17が略水平状態位置にあるときには、図4(A),(B)に示すように、摺動部材21の対向接触面21cと摺動部材22の対向接触面22cとは離間して非接触な状態、即ち、干渉していない状態にある。
【0037】
これに対し、ハンドル本体17を上下回動軸線Pを軸線として回動させ、例えば、ハンドル本体17が略垂直状態位置にあるときには、図5(A),(B)に示すように、摺動部材21,22の肉厚の相違に伴い、摺動部材21の対向接触面21cと摺動部材22の対向接触面22cとが圧接してフリクション機能発生状態となり、ハンドル本体17の略垂直状態位置を強固に維持することができる。
【0038】
尚、薄肉部21aと厚肉部21bとは、上記実施の形態では、2段階としたが、例えば、その中間の肉厚部分を設けることにより、例えば、浅瀬航走時に船外機11を前倒しとした中立位置での固定等に対応することができる。
【0039】
ところで、上記実施の形態では、厚肉部21b,22aと薄肉部21a,22bとを略90°で交互に形成したことにより、ハンドル本体17が略水平状態位置にある時には完全な非接触状態とすると共に、略垂直状態位置との2位置間でのみハンドル本体17の回動位置を規定する構成で開示したが、ハンドル本体17の回動位置を所定又は所望の位置で複数段階又は無段階で規定することも可能である。
【0040】
また、厚肉部21b,22aと薄肉部21a,22bとを略90°で交互に形成したことにより、ハンドル本体17が略水平状態位置にある時と、ハンドル本体17が上向きで略垂直状態位置或いはハンドル本体17が下向で略垂直状態位置の両方に対応することができる。
【0041】
(変形例1)
図6は、本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例1を示す要部の断面図である。
【0042】
上記実施の形態においては、摺動部材21,22に90°位相がずれた厚肉部21b,22aと薄肉部21a,22bとを交互に形成してハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、段階的に変化するものを開示したが、この変形例1では、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、傾斜的に変化するものを示す。
【0043】
即ち、変形例1のフリクション発生装置30は、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、傾斜的に干渉力が変化するように設定されている。
【0044】
本実施の形態では、軸部17aの一端側とハンドルカバー16との間に配置された一対の摺動部材31,32を備え、この各摺動部材31,32間における接触圧力が、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、傾斜的に変化する。
【0045】
即ち、摺動部材31は、ハンドルカバー16に固定された剛性材料(金属又は硬質樹脂等)から構成され、上下回動軸線Pと同軸上で略円弧形状を呈すると共にその両端付近の肉厚を徐々に薄肉とした厚肉部31bが形成されると共に、上下回動軸線Pと直行する厚肉部31bの上面を対向接触面31cとしている。これにより、厚肉部31bの両端付近の対向接触面31cは、その肉厚が徐々に薄肉となっていることから、傾斜した対向接触面31dとなっている。
【0046】
摺動部材32は、軸部17aと一体に回転するように軸部17aに固定(例えば、接着等)された弾性部材(ゴム又は軟質樹脂等)から構成されており、上下回動軸線Pと直行する面内の肉厚を、常時(ハンドル本体17が略水平状態にあるとき)は摺動部材31の厚肉部31bとは離間した状態で上下回動軸線Pを中心(同軸)とする円弧形状を呈すると共にその両端付近の肉厚を徐々に薄肉とした厚肉部32aが形成され、その厚肉部32aの底面を対向接触面32cとしている。これにより、厚肉部32aの両端付近の対向接触面32cは、その肉厚が徐々に薄肉となっていることから、傾斜した対向接触面32dとなっている。
【0047】
上記の構成において、例えば、ハンドル本体17が略水平状態位置にあるときには、摺動部材31の対向接触面31cと摺動部材32の対向接触面32cとは離間して非接触な状態、即ち、干渉していない状態にある。
【0048】
これに対し、ハンドル本体17を上下回動軸線Pを軸線として回動させ、例えば、ハンドル本体17が略垂直状態位置にあるときには、図6に示すように、摺動部材31,32の肉厚の相違に伴い、摺動部材31の傾斜した対向接触面31dと摺動部材32の傾斜した対向接触面32dとが圧接してフリクション機能発生状態となり、ハンドル本体17の略垂直状態位置を徐々に(傾斜的に)強固に維持することができる。
【0049】
(変形例2)
図7は、本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例2を示す要部の断面図である。
【0050】
上記実施の形態においては、例えば、摺動部材21,22は、ハンドルカバー16又はハンドル本体17とは別体に構成されているものを開示したが、この変形例2では、少なくともその一方を一体成形としたものである。
【0051】
即ち、変形例2のフリクション発生装置40は、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、傾斜的に干渉力が変化するように設定されている。
【0052】
本実施の形態では、軸部17aの一端側とハンドルカバー16との間に配置された一対の摺動部材41,42を備え、この各摺動部材41,42間における接触圧力が、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、傾斜的に変化する。
【0053】
即ち、摺動部材41は、ハンドルカバー16に固定された剛性材料(金属又は硬質樹脂等)から構成され、上下回動軸線Pと同軸上で略円弧形状を呈すると共にその両端付近の肉厚を徐々に薄肉とした厚肉部41bが弾性材料から別体で設けられていると共に、上下回動軸線Pと直行する厚肉部41bの上面を対向接触面41cとしている。これにより、厚肉部41bの両端付近の対向接触面41cは、その肉厚が徐々に薄肉となっていることから、傾斜した対向接触面41dとなっている。
【0054】
摺動部材42は、軸部17aと一体に回転するように軸部17aに一体成形された剛性材料(金属等)から構成されており、上下回動軸線Pと直行する面内の肉厚を、常時(ハンドル本体17が略水平状態にあるとき)は摺動部材41の厚肉部41bとは離間した状態で上下回動軸線Pを中心(同軸)とする円弧形状を呈すると共にその両端付近の肉厚を徐々に薄肉とした厚肉部42aが形成され、その厚肉部42aの底面を対向接触面42cとしている。これにより、厚肉部42aの両端付近の対向接触面42cは、その肉厚が徐々に薄肉となっていることから、傾斜した対向接触面42dとなっている。
【0055】
上記の構成において、例えば、ハンドル本体17が略水平状態位置にあるときには、摺動部材41の対向接触面41cと摺動部材42の対向接触面42cとは離間して非接触な状態、即ち、干渉していない状態にある。
【0056】
これに対し、ハンドル本体17を上下回動軸線Pを軸線として回動させ、例えば、ハンドル本体17が略垂直状態位置にあるときには、図7に示すように、摺動部材41,42の肉厚の相違に伴い、摺動部材41の傾斜した対向接触面41dと摺動部材42の傾斜した対向接触面42dとが圧接してフリクション機能発生状態となり、ハンドル本体17の略垂直状態位置を徐々に(傾斜的に)強固に維持することができる。
【0057】
(変形例3)
図8乃至図10は、本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例3を示す。
【0058】
上記実施の形態においては、例えば、摺動部材21,22は、ハンドルカバー16又はハンドル本体17とは別体に構成されているものを開示したが、この変形例3では、その両方を一体成形としたものである。
【0059】
即ち、変形例3のフリクション発生装置50は、ハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、段階的に干渉力が変化するように設定されている。
【0060】
本実施の形態では、軸部17aの一端側とハンドルカバー16との間に配置された一対の摺動部材51,52を備え、この各摺動部材51,52間における接触圧力が、弾性部材53を介してハンドル本体17が略水平状態にあるときと略垂直状態にあるときとで、段階的に変化する。
【0061】
即ち、摺動部材51は、上下回動軸線Pと同軸上で略円弧形状を呈する厚肉部としてハンドルカバー16と一体に形成され、上下回動軸線Pと直行する上面を対向接触面51cとしている。
【0062】
摺動部材52は、上下回動軸線Pと同軸上で略円弧形状を呈する厚肉部として軸部17aと一体に回転するように軸部17aと一体に形成され、上下回動軸線Pと直行する底面を対向接触面52cとしている。
【0063】
弾性部材53は、ゴム等の薄肉シートから構成されており、各摺動部材51,52の両方に跨る幅の円環状又は真円状に形成されている。
【0064】
上記の構成において、例えば、ハンドル本体17が略水平状態位置にあるときには、図8(A),(B)に示すように、摺動部材51の対向接触面51cと摺動部材52の対向接触面52cとは離間して非接触な状態、即ち、干渉していない状態にあり、弾性部材53はこれら対向接触面51cと対向接触面52cとに噛み込まれていない状態にある。
【0065】
これに対し、ハンドル本体17を上下回動軸線Pを軸線として回動させ、例えば、ハンドル本体17が略垂直状態位置にあるときには、図9(A),(B)に示すように、摺動部材51,52の肉厚の相違に伴い、摺動部材51の対向接触面51cと摺動部材52の対向接触面52cとが対向して弾性部材53を噛み込んだ状態となり、ハンドル本体17の略垂直状態位置を強固に維持することができる。
【0066】
この際、図10に示すように、軸支持凹陥部16a内の軸部17aには、略円筒形状のパッキン54が設けられているが、このパッキン54の外径は軸支持凹陥部16aの内径よりも小径とすることで、ハンドル本体17が略水平状態位置にあるときのハンドル本体17とハンドルカバー16とが干渉しないように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造を適用した船外機の内部の側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造を適用した船外機の要部の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造を示す要部の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造におけるハンドル本体略水平状態位置を示し、(A)は要部の断面図、(B)は要部の平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造におけるハンドル本体略垂直状態位置を示し、(A)は要部の断面図、(B)は要部の平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例1を示す要部の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例2を示す要部の断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例3を示し、(A)はハンドル本体略水平状態位置の要部の正面図、(B)はハンドル本体略水平状態位置の要部の平面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例3を示し、(A)はハンドル本体略垂直状態位置の要部の正面図、(B)はハンドル本体略垂直状態位置の要部の平面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る船外機のハンドル支持構造における変形例3を示す要部の断面図である。
【図11】従来の船外機のハンドル支持構造を示す要部の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
11…船外機
12…エンジン本体
15…ハンドルブラケット
16…ハンドルカバー
17…ハンドル本体
20…フリクション発生装置
C…クリアランス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機のエンジン本体側に設けられたハンドルブラケットと、前記ハンドルブラケットに着脱可能に保持されるハンドルカバーと、前記ハンドルブラケットと前記ハンドルカバーとに軸支されて略水平状態位置から略垂直状態位置まで上下方向に回動可能とされたハンドル本体と、を備えた船外機のハンドル支持構造であって、
前記ハンドル本体が略水平状態にあるときに該ハンドル本体と前記ハンドルブラケット及び前記ハンドルカバーとの間に所定のクリアランスを形成し、且つ、前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケット又は前記ハンドルカバーとの少なくとも一方側との間に配置されて前記ハンドル本体が略垂直状態位置にあるときに前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケット又は前記ハンドルカバーとの少なくとも一方側との間でフリクションを発生させるフリクション発生装置と、を備えていることを特徴とする船外機のハンドル支持構造。
【請求項2】
前記フリクション発生装置は、前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケット又は前記ハンドルカバーとの少なくとも一方側との間に配置され、前記ハンドル本体が略水平状態位置にあるときには非接触で、且つ、前記ハンドル本体が略垂直状態位置にあるときにフリクションを発生させる摺動部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の船外機のハンドル支持構造。
【請求項3】
前記摺動部材は、前記ハンドル本体の上下回動軸と同心の円弧形状を呈し、且つ、前記ハンドル本体が略水平状態位置から略垂直状態位置へと回動した際には、緩やかにフリクションを発生させるように傾斜設定されていることを特徴とする請求項2に記載の船外機のハンドル支持構造。
【請求項4】
前記摺動部材は、前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケットとのそれぞれに配置されると共に、少なくともその一方が弾性を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の船外機のハンドル支持構造。
【請求項5】
前記摺動部材が前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケットのそれぞれに設けられ、前記各摺動部材の間に弾性部材が介在されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の船外機のハンドル支持構造。
【請求項1】
船外機のエンジン本体側に設けられたハンドルブラケットと、前記ハンドルブラケットに着脱可能に保持されるハンドルカバーと、前記ハンドルブラケットと前記ハンドルカバーとに軸支されて略水平状態位置から略垂直状態位置まで上下方向に回動可能とされたハンドル本体と、を備えた船外機のハンドル支持構造であって、
前記ハンドル本体が略水平状態にあるときに該ハンドル本体と前記ハンドルブラケット及び前記ハンドルカバーとの間に所定のクリアランスを形成し、且つ、前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケット又は前記ハンドルカバーとの少なくとも一方側との間に配置されて前記ハンドル本体が略垂直状態位置にあるときに前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケット又は前記ハンドルカバーとの少なくとも一方側との間でフリクションを発生させるフリクション発生装置と、を備えていることを特徴とする船外機のハンドル支持構造。
【請求項2】
前記フリクション発生装置は、前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケット又は前記ハンドルカバーとの少なくとも一方側との間に配置され、前記ハンドル本体が略水平状態位置にあるときには非接触で、且つ、前記ハンドル本体が略垂直状態位置にあるときにフリクションを発生させる摺動部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の船外機のハンドル支持構造。
【請求項3】
前記摺動部材は、前記ハンドル本体の上下回動軸と同心の円弧形状を呈し、且つ、前記ハンドル本体が略水平状態位置から略垂直状態位置へと回動した際には、緩やかにフリクションを発生させるように傾斜設定されていることを特徴とする請求項2に記載の船外機のハンドル支持構造。
【請求項4】
前記摺動部材は、前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケットとのそれぞれに配置されると共に、少なくともその一方が弾性を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の船外機のハンドル支持構造。
【請求項5】
前記摺動部材が前記ハンドル本体と前記ハンドルブラケットのそれぞれに設けられ、前記各摺動部材の間に弾性部材が介在されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の船外機のハンドル支持構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−6090(P2010−6090A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163992(P2008−163992)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
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