説明

船推進機およびその運転制御方法

【課題】構造を複雑にすることなく船を速やかに停止させることができる、船推進機およびその運転制御方法を提供する。
【解決手段】船推進機10は、プロペラ12の駆動源としてエンジン14および電動モータ16を含むハイブリッド型の船推進機である。操作レバー46によって停止モードとして減速アシストモードが指示されたとき、コントローラ42は、エンジン14を停止させかつ電動モータ16を逆回転させてプロペラ12を逆回転させる。コントローラ42は、操作レバー46の平均移動速度に基づいて減速アシストモードが指示されたか否かを判断し、船の速度に基づいて電動モータ16を制御する。また、コントローラ42は、減速アシストレバー56による指示に基づいて電動モータ16を制御するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は船推進機およびその運転制御方法に関し、より特定的には、エンジンと電動モータとをプロペラの駆動源として備えたハイブリッド型の船推進機およびその運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術が特許文献1および2において開示されている。
特許文献1には、エンジンの駆動力を電動モータの駆動力によってアシストして動力伝達装置を駆動する技術について開示されている。
【0003】
また、特許文献2では、バーハンドルに回動操作自在なスロットルグリップが設けられ、スロットルグリップの近傍に制御スイッチが設けられている。制御スイッチの操作によってエンジンと電動モータの運転と停止、および電動モータの回転方向を制御でき、スロットルグリップの回動操作に応じて電動モータとエンジンの回転数を調整できる。
【特許文献1】特開2004−257294号公報
【特許文献2】特開2006−36086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの従来技術では、船を停止させるときにはエンジンおよび電動モータを停止させるだけであり、船を速やかに停止させたい場合に対応できないおそれがあった。
【0005】
また、従来のエンジン船外機には、船を速やかに停止させたい場合、オペレータがシフト操作を行い前進ギヤから後進ギヤへ素早くシフト変更することによって、プロペラを逆回転させて停止を行うものがあるが、プロペラの回転方向を切り替えるための切替機構が必要であり、構造が複雑になってしまう。
【0006】
それゆえにこの発明の主たる目的は、構造を複雑にすることなく船を速やかに停止させることができる、船推進機およびその運転制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の船推進機は、プロペラの駆動源としてエンジンおよび電動モータを含む船推進機であって、運転モードの種類を指示するための第1指示手段、および前記第1指示手段によって停止モードが指示されたとき、前記エンジンを停止させかつ前記電動モータを逆回転させる制御手段を備える。
【0008】
請求項2に記載の船推進機は、請求項1に記載の船舶推進機において、前記停止モードは減速を補助する減速アシストモードを含み、前記制御手段は、前記第1指示手段によって前記減速アシストモードが指示されたとき、前記エンジンを停止させかつ前記電動モータを逆回転させることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の船推進機は、請求項2に記載の船舶推進機において、前記第1指示手段は、回動可能でありかつその位置に基づいて前記運転モードの種類を指示可能な操作レバーを含むことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の船推進機は、請求項3に記載の船舶推進機において、前記制御手段は、前記操作レバーの平均移動速度に基づいて前記減速アシストモードが指示されたか否かを判断することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の船推進機は、請求項1に記載の船舶推進機において、当該船推進機が搭載された船の速度を検出する速度検出手段をさらに含み、前記制御手段は、前記船の速度に基づいて前記電動モータを制御することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の船推進機は、請求項1に記載の船舶推進機において、前記電動モータによる減速アシストを指示するための第2指示手段をさらに含み、前記制御手段は、前記第2指示手段による指示に基づいて前記電動モータを制御することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の船推進機の運転制御方法は、プロペラの駆動源としてエンジンおよび電動モータを含む船推進機の運転制御方法であって、運転モードの種類の指示を受ける第1ステップ、および前記第1ステップにおいて停止モードが指示されたとき、前記エンジンを停止させかつ前記電動モータを逆回転させる第2ステップを備える。
【0014】
請求項1に記載の船推進機では、プロペラの駆動源としてエンジンおよび電動モータを含むハイブリッド型の船推進機において、停止モードが指示されたとき、エンジンを停止させるだけでなく電動モータを逆回転させてプロペラを逆回転させることによって船を速やかに停止させることができる。また、電動モータを逆回転させるだけでプロペラを逆回転させることができるので、従来のエンジン船外機とは異なり切替機構を設ける必要はなく構造も複雑にならない。請求項7に記載の船推進機の運転制御方法についても同様である。
【0015】
請求項2に記載の船推進機では、停止モードとして減速アシストモードが指示されたときには、エンジンを停止させるだけではなく電動モータを逆回転させて停止処理を行い、一方、減速アシストモードが指示されていないときには、電動モータを逆回転させることなくエンジンを停止させて停止処理を行う。このように停止モードが減速アシストモードか否かを指示可能とすることによって、船を所望のモードで停止させることができる。
【0016】
請求項3に記載の船推進機では、従来のエンジン船外機のようにオペレータが前進ギヤから後進ギヤへシフト操作を行うのではなく、操作レバーの回動操作によって簡単かつ速やかに減速アシストモードを指示することができる。これによって、オペレータの操船フィーリングを向上できる。また、ギヤチェンジによる音や振動もないので、この点からも操船フィーリングを向上できる。
【0017】
請求項4に記載の船推進機では、操作レバーの平均移動速度に基づいて確実に減速アシストモードが指示されたか否かを判断できる。
【0018】
請求項5に記載の船推進機では、停止モードにおいてエンジンを停止させるが、さらに、船の速度が所定値未満になるまで船の速度に応じて電動モータを逆回転させ、船の速度が所定値未満になれば電動モータを停止させる。このように船の速度に基づいて電動モータを制御して、船を円滑かつ速やかに停止させる。
【0019】
請求項6に記載の船推進機では、オペレータが船を迅速に停止させたい場合には第1指示手段を操作することなく第2指示手段からの指示によって電動モータを逆回転できプロペラを逆回転できる。このようにして減速アシストが可能となりオペレータの利便性を向上できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、船推進機の構造を複雑にすることなく船を速やかに停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
図1を参照して、この発明の一実施形態の船推進機10は、プロペラ12とプロペラ12の駆動源としてのエンジン14と電動モータ16とを含むハイブリッド型であり、電動モータ16がエンジン14とプロペラ12との間に設けられるモータ中央タイプの船推進機である。なお、船推進機10および後述する船推進機10aは、船外機として構成されても船の一部として構成されてもよい。
【0022】
船推進機10では、エンジン14のクランクシャフト18と電動モータ16のロータ20との間には電磁クラッチ22が設けられ、電磁クラッチ22のオン/オフによってクランクシャフト18とロータ20とが接続/離間される。電動モータ16のロータ20にはドライブシャフト24が連結され、ドライブシャフト24はかさ歯車26を介してプロペラ12に接続される。プロペラ12の回転方向は、電動モータ16の回転方向によって決定される。
【0023】
エンジン14の上部にはエンジン発電用の発電体28が配置され、発電体28はクランクシャフト18の上端に設けられている。また、エンジン14には、排気ガスを水中に排出するための排気管30、エンジン14の点火のため点火装置32、エンジン14への燃料供給量を調整するためのスロットルバルブ34、エンジン回転数を検出するためのエンジン回転数センサ36、および船推進機10が搭載された船の速度を検出するための速度センサ37が設けられている。スロットルバルブ34には、スロットルバルブ34を駆動するためのスロットルモータ38およびスロットルバルブ34の開度を検出するためのスロットル開度センサ40が設けられている。排気管30は、その排気口がプロペラ12より後方に位置するように設けられる。
【0024】
電動モータ16、電磁クラッチ22、発電体28、点火装置32、エンジン回転数センサ36、速度センサ37、スロットルモータ38およびスロットル開度センサ40にはコントローラ42が接続される。また、コントローラ42には、船推進機10の運転をオン/オフためのメインスイッチ44、運転モードの種類とともに駆動源の出力の大きさを指示するための操作レバー46、駆動か発電かを設定するための駆動/発電スイッチ48、異常を報知するための異常ランプ50、たとえば24Vバッテリからなる電池52、および電池52の電圧を検出するための電池電圧センサ54が接続される。
【0025】
コントローラ42には、スロットル開度センサ40からスロットルバルブ34の開度を示す信号が与えられ、エンジン回転数センサ36からエンジン14の回転数を示す信号が与えられ、速度センサ37から船の速度を示す信号が与えられ、メインスイッチ44からのオン/オフ信号が入力され、操作レバー46から運転モードの種類および駆動源の出力の大きさを示すレバー位置信号が与えられ、駆動/発電スイッチ48から駆動か発電かの設定信号が与えられ、電池電圧センサ54から電池電圧を示す信号が与えられる。また、発電体28でのエンジン発電によって得られた電力はコントローラ42を介して電池52を充電する。
【0026】
また、コントローラ42は、点火装置32へ点火指示を与え、スロットルモータ38へ駆動信号を与え、電磁クラッチ22へオン/オフ信号を与え、電動モータ16へ駆動信号や電池52からの電力を与え、異常ランプ50へランプ点灯信号を与える。
【0027】
さらに、コントローラ42はメモリ42aを含む。メモリ42aには、図4〜図8に示す動作を実行するためのプログラムが格納されている。また、メモリ42aには、演算データ、減速アシストフラグ、船の速度と比較される第1所定値、操作レバー46の平均移動速度と比較される第2所定値、および図3(a)に示す船の速度と電動モータ16の出力との対応関係を示すテーブルデータ等が格納されている。
【0028】
この実施形態において、操作レバー46が第1指示手段に相当する。コントローラ42が制御手段に相当する。速度センサ37が速度検出手段に相当する。
【0029】
ついで、図2を参照して、操作レバー46の位置と運転モードの種類との関係について説明する。
操作レバー46は、図2に示すように前後方向に回動可能でありかつその位置によって運転モードの種類(通常航行、トローリング、停止、後退)を指示でき、かつその位置によって駆動源の出力の大きさを指示できる。
【0030】
操作レバー46の中立点を挟む前後所定範囲は停止モード、それより前進方向の所定範囲がトローリングモード、さらにそれより前進方向が通常航行モードとなる。また、停止モードより後退方向が後退モードとなる。
【0031】
これによれば、操作レバー46の回動操作によって運転モードの種類と駆動源の出力の大きさとを簡単かつ連続的に指示することができ、操作性が格段に向上する。
【0032】
また、操作レバー46を中立点から遠ざける開操作時と中立点に近づける閉操作時とでは、操作レバー46のモード切替位置が厳密には異なり所謂ヒステリシスが設けられている。これによって、モード切替処理に「遊び」を設けることができ、隣接するモードの境目付近でモード切替が頻繁に生じることを防ぐことができる。
【0033】
図4を参照して、このような船推進機10の全体動作について説明する。
まず、メインスイッチ44が押されると(ステップS1)、システムが初期化される(ステップS3)。
【0034】
ついで、コントローラ42に、操作レバー46のレバー位置信号が入力され(ステップS5)、電池電圧センサ54によって検出された電池電圧を示す信号が入力される(ステップS7)。さらに、コントローラ42に、駆動/発電スイッチ48からの設定信号が入力され(ステップS9)、スロットル開度センサ40によって検出されたスロットルバルブ34の開度(スロットル位置)を示す信号が入力され(ステップS11)、エンジン回転数センサ36によって検出されたエンジン回転数を示す信号が入力される(ステップS13)。コントローラ42では、これらの入力情報に基づいて船推進機10の異常の有無が検出され(ステップS15)、異常がなければ運転モードが判断される(ステップS17)。
【0035】
運転モードが停止モードであれば停止処理が施され(ステップS19)、前進モードであれば前進処理が施され(ステップS21)、後退モードであれば後退処理が施され(ステップS23)、発電モードであれば発電処理が施され(ステップS25)、その後ステップS5に戻る。
【0036】
一方、ステップS15において、船推進機10に異常が検出されればコントローラ42からの指示によって異常ランプ50が点灯され(ステップS27)、異常停止処理が施され(ステップS29)、終了する。
【0037】
ここで、図4のステップS17における運転モードの判定処理について、図5を参照して詳しく説明する。
まず、コントローラ42によって、駆動/発電スイッチ48からの設定信号が発電を示すか駆動を示すかが判断され(ステップS51)、駆動に設定されていれば、操作レバー46の位置に変化があるか否かが判断される(ステップS53)。レバー位置に変化があれば、操作レバー46の位置は中立点またはそれより前進側に位置しているか否かが判断される(ステップS55)。操作レバー46の位置が中立点またはそれより前進側に位置していれば、操作レバー46の操作方向は前進の開方向か否かが判断される(ステップS57)。操作レバー46の操作方向は、前回の制御サイクルと今回の制御サイクルとにおけるレバー位置に基づいて判断できる。
【0038】
ステップS57において、レバー操作方向が前進の開方向であれば、操作レバー46の位置は前進開操作時の停止範囲か否かが判断される(ステップS59)。レバー位置がその停止範囲であれば、運転モードは停止モードであると判定される(ステップS61)。一方、ステップS59において、レバー位置が前進開操作時の停止範囲でなければ、運転モードは前進モードであると判定される(ステップS63)。なお、運転モードが前進モードと判定されたとき初期的には運転モードはトローリングモードと判定される。
【0039】
ステップS57において、操作レバー46の操作方向が前進の閉方向であると判断されれば、レバー位置は前進閉操作時の停止範囲か否かが判断される(ステップS65)。レバー位置がその停止範囲であれば、運転モードは停止モードと判定される(ステップS67)。一方、ステップS65において、レバー位置が前進閉操作時の停止範囲でなければ、運転モードは前進モードと判定される(ステップS69)。
【0040】
また、ステップS55において、操作レバー46の位置が中立点より後退側であれば、ステップS71に進む。ステップS71において、操作レバー46の操作方向は後退の開方向か否かが判断され、後退の開方向であれば、レバー位置は後退開操作時の停止範囲か否かが判断される(ステップS73)。レバー位置がその停止範囲であれば、運転モードは停止モードと判定される(ステップS75)。一方、ステップS73において、レバー位置が後退開操作時の停止範囲でなければ、運転モードは後退モードと判定される(ステップS77)。
【0041】
ステップS71において、操作レバー46の操作方向が後退の閉方向であると判断されれば、レバー位置は後退閉操作時の停止範囲か否かが判断される(ステップS79)。そして、レバー位置がその停止範囲にあれば、運転モードは停止モードと判定される(ステップS81)。一方、ステップS79において、レバー位置が後退閉操作時の停止範囲になければ、運転モードは後退モードと判定される(ステップS83)。
【0042】
また、ステップS51において、駆動/発電スイッチ48が発電に設定されていれば、運転モードは発電モードと判定される(ステップS85)。
【0043】
ステップS53において、操作レバー46の位置に変化がなければ、現モードは発電モードか否かが判断される(ステップS87)。現モードが発電モードであれば、運転モードは停止モードと判定される(ステップS89)。一方、ステップS87において、現モードが発電モードでなければ、現モードが維持される(ステップS91)。
【0044】
ついで、図4のステップS19の停止処理の一動作例について、図6を参照して説明する。初期的には減速アシストフラグは下ろされている。
まず、停止モードが判断され設定される(ステップS101)。たとえば、操作レバー46の平均移動速度が第2所定値以上の場合には、減速アシストフラグが立てられ(フラグが1にされ)、停止モードが減速を助ける減速アシストモードに設定される。
【0045】
ついで、停止モードが減速アシストモードか否かがコントローラ42によって判断される(ステップS103)。減速アシストモードか否かは減速アシストフラグが立っているか否かによって判断できる。
【0046】
減速アシステトフラグが立っており減速アシストモードであれば、エンジン14が停止しているか否かがコントローラ42によって判断される(ステップS105)。エンジン14が停止していなければ、電磁クラッチ22をオフする処理が行われ(ステップS107)、エンジン14を停止する処理が行われ(ステップS109)、ステップS111に進む。一方、ステップS105においてエンジン14が停止していれば、直接ステップS111に進む。
【0047】
ステップS111において、速度センサ37によって検出された船の速度を示す信号がコントローラ42に入力される。船の速度が第1所定値(減速アシスト終了速度、たとえば1ノット)未満か否かが判断される(ステップS113)。船の速度が第1所定値以上であれば、コントローラ42によって、図3(a)の対応関係を示すテーブルデータを参照して船の速度に応じたモータ出力が得られるように、電動モータ16に与えられる電動モータ駆動電流が計算される(ステップS115)。そして、その電動モータ駆動電流が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS117)、電動モータ16の逆回転出力処理が行われる(ステップS119)。一方、ステップS113において、船の速度が第1所定値未満であれば、コントローラ42によって減速アシストフラグが下ろされ(フラグが0にされ)(ステップS121)、電動モータ16の停止処理が行われる(ステップS123)。
【0048】
このように減速アシストモードでは、ステップS105〜S123の処理が行われ、エンジン14を停止させかつ電動モータ16を逆回転させてプロペラ12を逆回転させることによって、船が減速され停止される。
【0049】
一方、ステップS103において、減速アシストフラグが立っておらず減速アシストモードでなければ、エンジン14が停止しているか否かがコントローラ42によって判断される(ステップS125)。エンジン14が停止していなければ、電磁クラッチ22をオフする処理が行われ(ステップS127)、エンジン14を停止する処理が行われ(ステップS129)、電動モータ16の停止処理が行われる(ステップS131)。一方、ステップS125においてエンジン14が停止していれば、終了する。
【0050】
このように減速アシストモードでなければ、ステップS125〜S131の処理が行われ、電動モータ16を逆回転させることなくエンジン14を停止させることによって、船が減速され停止される。
【0051】
ついで、図7を参照して、図6のステップS101に示す停止モードの判断・設定処理について説明する。
まず、減速アシストモードか否かがコントローラ42によって判断される(ステップS201)。減速アシストモードでなければ、メモリ42aに記憶される過去の所定サイクル(たとえば10回)分の操作レバー位置の履歴情報が更新され(ステップS203)、直前サイクルの運転モードは前進モードであるか否かがコントローラ42によって判断される(ステップS205)。直前サイクルの運転モードが前進モードであれば、過去の所定サイクル分の操作レバー46の平均移動速度が計算される(ステップS207)。この平均移動速度は、たとえば次のようにして求められる。メモリ42aに記憶されている操作レバー位置の履歴情報に基づいて操作レバー46の一サイクル分の移動距離を求め、それを一サイクル分の所要時間で割って一サイクルの移動速度を計算する。この処理を過去の所定サイクル分について行う。そして、得られた移動速度を平均して平均移動速度を求める。
【0052】
当該平均移動速度が第2所定値より大きいか否かがコントローラ42によって判断される(ステップS209)。平均移動速度が第2所定値より大きければ、コントローラ42によって、減速アシストモードが指示されたと判断され減速アシストフラグが立てられ減速アシストモードが設定される(ステップS211)。一方、ステップS209において、平均移動速度が第2所定値以下であれば、減速アシストモードが指示されていないと判断され減速アシストフラグを下ろしたまま進む。
【0053】
また、ステップS201がYESであれば減速アシストフラグを立てたまま進む。ステップS205がNOであれば減速アシストフラグを下ろしたまま進む。
【0054】
なお、図8のステップS301、図10のステップS401および図11のステップS501においても図7の処理が実行される。
【0055】
この動作例によれば、停止モードとして減速アシストモードが指示されたときには、エンジン14を停止させるだけではなく電動モータ16を逆回転させてプロペラ12を逆回転させることによって船を速やかに停止させることができる。一方、減速アシストモードが指示されていないときには、電動モータ16を逆回転させることなくエンジン14を停止させて停止処理を行う。このように停止モードが減速アシストモードか否かを指示可能とすることによって、船を所望のモードで停止させることができる。
【0056】
また、電動モータ16を逆回転させるだけでプロペラ12を逆回転させることができるので、従来のエンジン船外機とは異なり切替機構を設ける必要はなく構造も複雑にならない。
【0057】
さらに、従来のエンジン船外機のようにオペレータが前進ギヤから後進ギヤへシフト操作を行うのではなく、操作レバー46を前側から中立点に向けて所定速度以上で回動させるだけで簡単かつ速やかに減速アシストモードを指示することができる。これによって、オペレータの操船フィーリングを向上できる。また、ギヤチェンジによる音や振動もないので、この点からも操船フィーリングを向上できる。
【0058】
また、操作レバー46の平均移動速度に基づいて確実に減速アシストモードが指示されたか否かを判断できる。
【0059】
停止モードではエンジン14を停止させるが、さらに、船推進機10が搭載される船の速度が極低速の第1所定値になるまでは船の速度に応じて電動モータ16を逆回転させ、船の速度が第1所定値未満になれば電動モータ16を停止させる。このように船の速度に基づいて電動モータ16を制御して、船を円滑かつ速やかに停止させる。
【0060】
ついで、図8を参照して、図4のステップS19の停止処理の他の動作例について説明する。この動作を行うために、船推進機10は、電動モータ16による減速アシストを指示するための第2指示手段に相当する減速アシストレバー56をさらに備える。メモリ42aには、図3(b)に示す減速アシストレバー56の位置(操作量)と電動モータ16の出力との対応関係を示すテーブルデータが格納されている。
【0061】
初期的には減速アシストフラグは下ろされている。なお、図8に示すステップS301〜S331の処理は、図6に示すステップS101〜S131の処理と同様であるので、その重複する説明は省略し、ここでは、ステップS333〜S341の処理について説明する。
【0062】
動作において、ステップS331の処理後やステップS325がYESのときには、ステップS333に進む。
【0063】
ステップS333では、船の速度が第1所定値(たとえば1ノット)未満か否かが判断される。船の速度が第1所定値以上であれば、コントローラ42によって、図3(b)の対応関係を示すテールデータを参照して減速アシストレバー位置に応じたモータ出力が得られるように、電動モータ16に与えられる電動モータ駆動電流が計算される(ステップS335)。そして、その電動モータ駆動電流が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS337)、電動モータ16の逆回転出力処理が行われる(ステップS339)。なお、減速アシストレバー56の位置(操作量)が0からAまで(図3(b)参照)であれば、電動モータ16の逆回転出力は0であり、減速アシストレバー56による減速アシストすなわち電動モータ16の逆回転は行われない。
【0064】
一方、ステップS333において船の速度が第1所定値未満であれば、電動モータ16の停止処理が行われる(ステップS341)。
【0065】
この動作例によれば、上述の動作例と同様の効果が得られ、さらに、減速アシストモードでなくても、たとえばオペレータが船を迅速に停止させたい場合には減速アシストレバー46を操作することによって電動モータ16を逆回転できプロペラ12を逆回転できる。このようにして減速アシストが可能となりオペレータの利便性を向上できる。
【0066】
ついで、図9を参照して、この発明の他の実施形態の船推進機10aについて説明する。
船推進機10aは、エンジン14の上側に電動モータ16が設けられるモータ上部タイプに構成され、電磁クラッチ22を用いない。そして、エンジン14のクランクシャフト18の下端部にはドライブシャフト24が連結され、クランクシャフト18の上端部には電動モータ16のロータ20が連結され、ロータ20の上端には発電体28が設けられている。メモリ42aには、図10および図11に示す動作を実行するためのプログラム等が格納されている。その他の構成については船推進機10と同様であるので、その重複する説明は省略する。
【0067】
図10を参照して、船推進機10aの停止処理の一動作例について説明する。初期的には減速アシストフラグは下ろされている。
まず、減速モードが判断され設定される(ステップS401)。
【0068】
ついで、停止モードが減速アシストモードか否かがコントローラ42によって判断される(ステップS403)。減速アシストフラグが立っており減速アシストモードであれば、エンジン14が停止しているか否かがコントローラ42によって判断される(ステップS405)。エンジン14が停止していなければ、エンジン14を停止する処理が行われる(ステップS407)。船推進機10aでは、電動クラッチ22がないのでエンジン14を停止させてから電動モータ16の逆回転を開始する。
【0069】
一方、ステップS405においてエンジン14が停止していれば、速度センサ37によって検出された船の速度を示す信号がコントローラ42に入力され(ステップS409)、船の速度が第1所定値未満か否かが判断される(ステップS411)。船の速度が第1所定値以上であれば、コントローラ42によって、図3(a)の対応関係を示すテーブルデータを参照して船の速度に応じたモータ出力が得られるように、電動モータ16に与えられる電動モータ駆動電流が計算される(ステップS413)。そして、その電動モータ駆動電流が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS415)、電動モータ16の逆回転出力処理が行われる(ステップS417)。一方、ステップS411において、船の速度が第1所定値未満であれば、コントローラ42によって減速アシストフラグが下ろされ(ステップS419)、電動モータ16の停止処理が行われる(ステップS421)。
【0070】
一方、ステップS403において、減速アシストモードでなければ、エンジン14が停止しているか否かがコントローラ42によって判断される(ステップS423)。エンジン14が停止していなければ、エンジン14を停止する処理が行われ(ステップS425)、電動モータ16の停止処理が行われる(ステップS427)。一方、ステップS423においてエンジン14が停止していれば、終了する。
【0071】
この動作例によれば、停止モードとして減速アシストモードが指示されたときには、エンジン14を停止させるだけではなく電動モータ16を逆回転させてプロペラ12を逆回転させることによって船を速やかに停止させることができる。一方、減速アシストモードが指示されていないときには、電動モータ16を逆回転させることなくエンジン14を停止させて停止処理を行う。このように停止モードが減速アシストモードか否かを指示可能とすることによって、船を所望のモードで停止させることができる。
【0072】
また、電動モータ16を逆回転させるだけでプロペラ12を逆回転させることができるので、従来のエンジン船外機とは異なり切替機構を設ける必要はなく構造も複雑にならない。
【0073】
また、停止モードではエンジン14を停止させるが、さらに、船推進機10が搭載される船の速度が極低速の第1所定値になるまでは船の速度に応じて電動モータ16を逆回転させ、船の速度が第1所定値未満になれば電動モータ16を停止させる。このように船の速度に基づいて電動モータ16を制御して、船を円滑かつ速やかに停止させる。
【0074】
さらに、図11を参照して、船推進機10aの停止処理の他の動作例について説明する。この動作を行うために、船推進機10aは減速アシストレバー56をさらに備える。メモリ42aには、図3(b)に示す減速アシストレバー56の位置と電動モータ16の出力との対応関係を示すテーブルデータが格納されている。
【0075】
初期的には減速アシストフラグは下ろされている。なお、図11に示すステップS501〜S527の処理は、図10に示すステップS401〜S427の処理と同様であるので、その重複する説明は省略し、ここでは、ステップS529〜S537の処理について説明する。
【0076】
動作において、ステップS527の処理後やステップS523がYESのときには、ステップS529に進む。
【0077】
ステップS529では、船の速度が第1所定値未満か否かが判断される。船の速度が第1所定値以上であれば、コントローラ42によって、図3(b)の対応関係を示すテーブルデータを参照して減速アシストレバー位置に応じたモータ出力が得られるように、電動モータ16に与えられる電動モータ駆動電流が計算される(ステップS531)。そして、その電動モータ駆動電流が急変しないように急変制限処理が行われ(ステップS533)、電動モータ16の逆回転出力処理が行われる(ステップS535)。
【0078】
一方、ステップS529において船の速度が第1所定値未満であれば、電動モータ16の停止処理が行われ(ステップS537)、終了する。
【0079】
この動作例によれば、図10に示す動作例と同様の効果が得られ、さらに、減速アシストモードでなくても、たとえばオペレータが船を迅速に停止させたい場合には減速アシストレバー46を操作することによって電動モータ16を逆回転できプロペラ12を逆回転できる。このようにして減速アシストが可能となりオペレータの利便性を向上できる。
【0080】
上述の実施形態では、減速アシストモードが指示されたか否かの判断を操作レバー46の平均移動速度に基づいて行ったが、これに限定されず、操作レバー46の位置に関連する任意の情報に基づいて行うことができる。
【0081】
また、コントローラ42は、操作レバー46によって減速アシストモードが指示されたか否かに拘わらず停止モードが指示されれば、エンジン14を停止させかつ電動モータ16を逆回転させるようにしてもよい。このときさらに、船の速度に基づいて電動モータ16を制御するようにしてもよい。
【0082】
第1指示手段はジョイスティックレバーであってもよい。
【0083】
第2指示手段は足で操作可能なペダルタイプであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】この発明の一実施形態の船推進機を示す図解図である。
【図2】操作レバーを示す図解図である。
【図3】(a)は船の速度と電動モータの出力との対応関係を示すグラフであり、(b)は減速アシストレバーの位置と電動モータの出力との対応関係を示すグラフである。
【図4】船推進機の全体動作を示すフロー図である。
【図5】図4のステップS17における運転モードの判定処理を示すフロー図である。
【図6】図1に示す実施形態の停止処理の一例を示すフロー図である。
【図7】停止モード判断・設定処理の一例を示すフロー図である。
【図8】図1に示す実施形態の停止処理の他の例を示すフロー図である。
【図9】この発明の他の実施形態の船推進機を示す図解図である。
【図10】図9に示す実施形態の停止処理の一例を示すフロー図である。
【図11】図9に示す実施形態の停止処理の他の例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0085】
10,10a 船推進機
12 プロペラ
14 エンジン
16 電動モータ
22 電磁クラッチ
26 かさ歯車
28 発電体
32 点火装置
34 スロットルバルブ
36 エンジン回転数センサ
37 速度センサ
38 スロットル電動モータ
40 スロット開度センサ
42 コントローラ
42a メモリ
44 メインスイッチ
46 操作レバー
48 駆動/発電スイッチ
50 異常ランプ
52 電池
54 電池電圧センサ
56 減速アシストレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラの駆動源としてエンジンおよび電動モータを含む船推進機であって、
運転モードの種類を指示するための第1指示手段、および
前記第1指示手段によって停止モードが指示されたとき、前記エンジンを停止させかつ前記電動モータを逆回転させる制御手段を備える、船推進機。
【請求項2】
前記停止モードは減速を補助する減速アシストモードを含み、
前記制御手段は、前記第1指示手段によって前記減速アシストモードが指示されたとき、前記エンジンを停止させかつ前記電動モータを逆回転させる、請求項1に記載の船推進機。
【請求項3】
前記第1指示手段は、回動可能でありかつその位置に基づいて前記運転モードの種類を指示可能な操作レバーを含む、請求項2に記載の船推進機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記操作レバーの平均移動速度に基づいて前記減速アシストモードが指示されたか否かを判断する、請求項3に記載の船推進機。
【請求項5】
当該船推進機が搭載された船の速度を検出する速度検出手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記船の速度に基づいて前記電動モータを制御する、請求項1に記載の船推進機。
【請求項6】
前記電動モータによる減速アシストを指示するための第2指示手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記第2指示手段による指示に基づいて前記電動モータを制御する、請求項1に記載の船推進機。
【請求項7】
プロペラの駆動源としてエンジンおよび電動モータを含む船推進機の運転制御方法であって、
運転モードの種類の指示を受ける第1ステップ、および
前記第1ステップにおいて停止モードが指示されたとき、前記エンジンを停止させかつ前記電動モータを逆回転させる第2ステップを備える、船推進機の運転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−100534(P2008−100534A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282197(P2006−282197)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】