説明

色素増感型太陽電池の負極電極及び色素増感型太陽電池

【課題】樹脂基板上に配された透明導電膜と多孔質層との剥離を抑制することが可能な色素増感型太陽電池の負極電極を提供すること。
【解決手段】樹脂基板11と、樹脂性基板11の一面11a側に、順に重ねて配される透明導電膜12と多孔質層13を少なくとも備えた色素増感型太陽電池の負極電極であって、樹脂粒子14が複数、樹脂基板11と透明導電膜12との間にそれぞれ孤立して配される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池を構成する負極電極と、該負極電極を備えた色素増感型太陽電池に係り、より詳しくは、透明導電膜と多孔質層とを順に備えた負極電極において、透明導電膜と多孔質層との剥離が抑制された負極電極と、該負極電極を備えた色素増感型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、太陽電池などの光エネルギーを有効に利用する手段の1つとして、光エネルギーを電気エネルギーに直接変換する太陽電池が広く用いられている。この太陽電池は、シリコンの多結晶、または単結晶を用いたシリコン型太陽電池がよく知られており、すでに住宅用の電力供給用から電卓等の微弱電力用電源として利用されている。
【0003】
しかしながら、こうしたシリコン型太陽電池の製造にあたって必須となるシリコンの単結晶や多結晶、あるいはアモルファスシリコンを製造するためには、シリコン高純度化でのプロセスや高温での溶融プロセスを必要とするために多大なエネルギーを消費する。このため、シリコン型太陽電池を製造するために費やしたエネルギー量の総和が、この太陽電池の発電可能期間に発電できる総発電エネルギー量よりも大きいことが危惧されている。
【0004】
こうした、シリコン型太陽電池の課題を解決する太陽電池として、近年、色素増感型太陽電池が注目されている。色素増感型太陽電池は、スイスのミカエル・グレツェルらがその基礎となる構造を開発したもので、光電変換効率が高く、かつ、シリコン型太陽電池のように単結晶シリコンなどの製造に多大なエネルギーを消費する材料が必要ではないため、太陽電池を作製するためのエネルギーも桁違いに少なく、かつ低コストで量産が可能なものであり、その普及が期待されるものである。
【0005】
昨今、このような色素増感型太陽電池において、軽重量化やインテリア性、携帯性の観点から、フィルム化の開発がなされている。この場合、樹脂基板に透明導電膜をスパッタ法により成膜し、酸化チタン膜やPt膜等をスパッタやMOCVD、塗布法により形成し、電解液は高分子ゲルにて固定化する。
【0006】
樹脂基板を用いた色素増感型太陽電池の特性の管理における重要な課題として、透明導電膜から多孔質層が剥離しやすいということがあった。この剥離が生じると、色素から半導体電極に注入される電子が伝導体における励起寿命内に透明導電膜に移動することが難しくなり、十分な電流がとれなくなる。また、電圧が低下する等の原因に繋がる。更に、剥離面積が大きいと、半導体の多孔質層自体が機能しなくなり、著しい電流密度の低下が発生するという問題もある。
【0007】
そこで、多孔質層と樹脂基板との密着性を改善させるため、樹脂基板に多孔質層を保持させる際に、加圧して密着させることが提案されている(特許文献1)。この加圧処理の背景としては、熱により下地の透明導電膜と樹脂基板とを焼結させることは樹脂の耐熱温度の観点から困難であるからである。また、多孔質層をなす酸化チタンを、酸化チタン粒子とチタンのアルコキシドの混合物から作製し、アルコキシドの加水分解により形成される酸化物を用いて、透明導電膜と酸化チタンとの結合を生じさせ、酸化チタン膜を保持させることも検討されてきた(特許文献2)。
【0008】
しかしながら、これらの方法では、加圧処理では酸化チタン膜を圧着している状態であるために、繰り返しの曲げでは剥離を生じやすく、また、アルコキシドの加水分解による透明導電膜と酸化チタン膜の結合も強いとは言えず、また、アルコキシドの加水分解で作製される酸化チタンは抵抗値が高く、太陽電池の特性を阻害する懸念があった。
【特許文献1】特開2007−115513号公報
【特許文献2】特開2003−282160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、樹脂基板上に配された透明導電膜と多孔質層との剥離を抑制することが可能な色素増感型太陽電池の負極電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の色素増感型太陽電池の負極電極は、樹脂基板と、該樹脂性基板の一面側に、順に重ねて配される透明導電膜と多孔質層を少なくとも備えた色素増感型太陽電池の負極電極であって、樹脂粒子が複数、前記樹脂基板と前記透明導電膜との間にそれぞれ孤立して配されることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に記載の色素増感型太陽電池の負極電極は、請求項1において、前記樹脂粒子の少なくとも一部は、前記樹脂基板に接していることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に記載の色素増感型太陽電池の負極電極は、請求項1において、前記樹脂粒子の少なくとも一部は、前記樹脂基板に接していることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に記載の色素増感型太陽電池の負極電極は、請求項2又は3において、前記樹脂粒子の平均粒径が、0.1μm以上10μm以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に記載の色素増感型太陽電池の負極電極は、請求項4において、前記粒子が前記透明導電膜に接している面積の総和が、前記透明導電膜の表面積の0.1%以上10%以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項6に記載の色素増感型太陽電池は、請求項1乃至5いずれか1項記載の色素増感型太陽電池の負極電極、該負極電極に対向して配される正極電極、及び前記負極電極と前記正極電極との間に配される電解液、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の色素増感型太陽電池の負極電極は、平面である樹脂基板と、該樹脂基板の一面側に、透明導電膜と多孔質層とが順に重ねて配されている。また、前記樹脂基板と前記透明導電膜との間には、樹脂粒子が複数、それぞれ孤立して配されている。
かかる構成によれば、樹脂基板上に樹脂粒子が配していることから、その表面は凹凸を有する形状となる。この樹脂粒子が配された樹脂基板の一面に、透明導電膜が配されることから、該透明導電膜も樹脂粒子の形状に合わせて凹凸を有するようになる。従って、透明導電膜は、樹脂基板から多数突出した状態となるので、該透明導電膜を介して配される多孔質層の一部に突出した透明導電膜が食い込む状態となる。これは、多孔質層に対する透明導電膜の接触面積を実質的に増加させる。
よって、多孔質層は透明導電膜の側、即ち樹脂基板に繋ぎとめられ、多孔質層の収縮や樹脂基板の湾曲等が生じても、該多孔質層が樹脂基板から剥離してしまうことを効果的に防止することが可能となる。そのため、本発明の負極電極を用いて色素増感型太陽電池を形成した場合、多孔質層の微少な剥離による導通性の低下、出力特性の劣化、及び大規模な剥離による多孔質層の電極としての機能不全、といった不具合を確実に防止し、長期間にわたって安定した出力特性を維持した発電が可能となる色素増感型太陽電池の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0018】
図1は、本発明の色素増感型太陽電池の負極電極10を模式的に示したものである。図1(a)は、本発明の負極電極の断面図を模式的に示した図であり、図1(b)は、樹脂基板11上に樹脂粒子14を配した状態を模式的に示した斜視図である。
本発明の負極電極10は、樹脂基板11の一面11aに透明導電膜12と多孔質層13とを重ねて順に配し、樹脂粒子14が、樹脂基板11と透明導電膜12との間に、それぞれ孤立して配している。以下、それぞれについて説明する。
【0019】
樹脂基板11としては、光を透過させる透明基板が用いられる。また、表面が平面であるものが好ましく、その平面は曲面であっても良い。また、後述の樹脂粒子14の形成に溶媒を用いる場合、該溶媒に対するバリア性を上げるため、樹脂基板11の表面に酸化珪素や酸化アルミ、酸化マグネシウム等の膜を少なくとも10nm以上成膜することが好ましい。
樹脂基板11を形成する樹脂としては、後述の樹脂粒子14と同様なものを用いることができる。
【0020】
透明導電膜12としては、ITO、FTOなどからなる厚さが100nm以上の透明な導電体からなる。そのシート抵抗は1〜100Ω程度が好ましく、より好ましくは30Ω以下である。これにより、樹脂基板11の一面11aが導電性を有する透明な樹脂基板11が形成される。
【0021】
多孔質層13としては、例えば粒子径が3〜20nm程度のアナターゼ型結晶構造をもつ多孔質構造の酸化チタン層が挙げられる。また、Sn、Zn等の酸化物を含有させてもよく、酸化チタンにおいても、ルチル型結晶構造を持つものが含まれても良い。酸化チタンからなる多孔質層としては、酸化チタンがネット構造を形成し、多孔質膜となっているものが好ましく、望ましくは貫通型の多孔質体、あるいは空隙がつながったような多孔質体が良い。
【0022】
樹脂粒子14は樹脂基板11と透明導電膜12の間に複数、孤立して配されている。このうち、すくなくとも一部は樹脂基板11に接しており、図1(b)に示すように、樹脂基板11上に配された樹脂粒子14は、お互い離間して配されている。
なお、ここで接しているとは、単に樹脂基板11の上に樹脂粒子14を載せた形態の他に、両者間を架橋反応等によりポリマー化して定着させる化学的な結合の形態、あるいは紫外線やレーザー、熱融着等により機械的に接合させる形態等も意味する。
【0023】
樹脂基板11または樹脂粒子14に用いる樹脂は、
熱硬化性樹脂として、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
また、光硬化性樹脂として、例えば、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂を用いてもよく、例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、アクリル(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ナイロン/ポリアミド(PA)、ポリカーボネイト(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PKKK)、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、ハイミラン、メタアクリレート等が挙げられる。
【0024】
このような、樹脂基板11と透明導電膜12の間に複数、それぞれ独立して散在させた樹脂粒子14は、透明導電膜12から多孔質層13が剥離することを防止する。即ち、従来のように、透明導電膜と多孔質層とが平滑な面どうしで接している構造では、透明導電膜から多孔質層が剥離して、導通不良を生じさせやすい。
ところが、本発明のように、樹脂基板11と透明導電膜12の間に樹脂粒子14を複数、それぞれ孤立して散在させることで、樹脂粒子14の底面が樹脂基板11に接した樹脂粒子14が、多数突出した状態となる。そして、こうした樹脂粒子14が透明導電膜12を介して多孔質層13の一部に食い込み、透明導電膜12と多孔質層13との接触面積を実質的に増加させる。これによって、多孔質層13は透明導電膜12の側、即ち樹脂基板11に繋ぎとめられ、多孔質層13に収縮あるいは樹脂基板11に湾曲等が生じても、樹脂基板11から多孔質層13が剥離してしまうことを効果的に防止することができる。
【0025】
樹脂粒子14のサイズとしては、樹脂基板11から透過してくる光を樹脂粒子11と多孔質層13との接触界面において光を散乱させ、多孔質層13における光吸収性能を上げることから、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0026】
樹脂粒子14が透明導電膜12に接している面積は、その面積が多いと抵抗が増大し、少なすぎても剥離が生じてしまう。従って、樹脂粒子14と透明導電膜12との接触面積の総和は、透明導電膜12の一面における表面積に対して、0.1%以上15%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以上10%以下である。
【0027】
上述したような構成の本発明の負極電極を用いた、色素増感型太陽電池の一例を以下に説明する。
図2は、本発明の色素増感型太陽電池の一例を模式的に示した図である。色素増感型太陽電池40は、上述したような負極電極10、即ち、樹脂基板11と透明導電膜12との界面に沿って、樹脂粒子14を孤立して多数散在させ、多孔質層13と樹脂基板11とを強固に結び付けた負極電極10を用いたもので、この多孔質層13に増感用の色素を吸着させて使用する。
この負極電極10に対向して正極電極20を配し、負極電極10と正極電極20はその周縁部で封止部32によって接合されている。そして、負極電極10と正極電極20との間には電解液31が満たされている。
【0028】
多孔質層13に吸着させる色素としては、例えば、ルテニウムビピリミジン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポリフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0029】
上記色素の吸着方法としては、例えば、負極電極10を色素が溶解された溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。
色素を溶解する溶剤としては、色素を溶解するものであればよく例えば、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの溶剤は、2種類以上を混合して用いることもできる。
【0030】
溶液中の色素濃度は、使用する色素及び溶剤の種類により、適宜調整することができるが、吸着機能を向上させるためにはできるだけ高濃度であることが好ましいが、高濃度であると多孔質層の表面に過剰に吸着した層が形成されるため、低濃度が好ましく、3×10−4モル/リットル以上であればよい。
【0031】
電解液31を構成する酸化還元対としては、I/I系の電解質、Br/Br系の電解質などのレドックス電解質等が挙げられるが、酸化還元対を構成する酸化体がIであり、かつ、前記酸化還元対を構成する還元対がI/I系の電解質が好ましく、LiI、NaI、KI、CsI、CaIなどの金属ヨウ化物、およびテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなどの4級アンモニウム化合物のヨウ素塩などのヨウ化物と、Iとの組み合わせが挙げられる。
電解液25において、このようなヨウ素系レドックス溶液からなる電解質が用いられる場合には、正極27側は白金または導電性炭素材料からなること、及び、触媒粒子が白金または導電性炭素材料からなることが好ましい。
【0032】
電解液31を構成する溶剤としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物;3−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物;オキサン、字エチルエーテルなどのエーテル化合物;エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのエーテル類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物;ジメチルスルフォキシド、スルフォランなどの非プロトン極性物質などが挙げられる。
【0033】
電解液31の濃度は、用いる電解質や溶剤の種類等を考慮して適宜設定すればよく、例えば、0.01〜1.5モル/リットルであり、好ましくは0.01〜0.7モル/リットルである。具体的な電解液の一例としては、リチウムアイオダイドが0.06モル/リットル、ヨウ素が0.06モル/リットル、ターシャルブチルピリジンが0.3モル/リットルの濃度となるようにそれぞれをアセトニトリルに溶解させたものが挙げられる。
【0034】
電解液31の蒸発防止のために、電解液の分子量を増やし、蒸気圧が小さく、かつ、沸点の高いものを選択することで、局所欠陥部の漏洩による電解液の枯渇を防ぐことが可能である。また、電解液として、イミダゾリウム系やビリジニウム系イオン液体を用いることでも、同様な効果が得られる。このような電解液を保持する高分子ゲルマトリックスを形成して、電解液の漏洩自体を低減することも可能である。このような高分子ゲルマトリックスを形成するものとして、例えば、PEOやフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)等が挙げられる。
高分子ゲルマトリックス中に電解液25を含浸させると、高分子ゲルと電解液31の相互間の親和により、電解液31がマトリックスから染み出ることが抑制されるため、電解液31の蒸発が低減できる。このような高分子ゲルに電解液31を固定化することにより、長期安定性が可能となる。
【0035】
色素増感型太陽電池40の形成方法としては、負極電極10と白金22を担持させた正極電極20とを対面させた後に荷重を掛け、負極電極10と正極電極20間に予め形成していた封止部32(例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等)により接着固定させる。その後、負極電極10または正極電極20の樹脂基板11,21の少なくともどちらか一方に、接着固定させる前に形成した注入口から電解液31を入れ、該注入口を塞ぎ密閉化して色素増感型太陽電池40を作製する。
【0036】
このようにして作製した色素増感型太陽電池40の周端部を、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の接着剤で固定したり、また、更に外周部にブチルゴムやシリコンゴム系等の弾性的な材料により保護し、アルミフレームやSUSフレームにより周端部の補強を行うことが好ましい。
【0037】
図3は、色素増感型太陽電池の負極電極の製造方法を模式的に示した工程図の一例である。
まず、図3(a)に示すように、樹脂基板11を用意し、次に、図3(b)に示すように、樹脂基板11の一面に、樹脂粒子14を形成する。
まず、樹脂粒子14自体を形成する方法を説明する。樹脂板を液体窒素やドライアイス等により冷却し、硬度を上げた状態にしてからスタンプミル、ビーズミル、ジェットミル等にかけて、所定のサイズにまで粉砕することにより、樹脂粉を製造することができる。または、エマルジョン化して、エマルジョン中の分散径のサイズを制御することにより、所定のサイズの樹脂粉を形成することも可能である。このエマルジョンにおいては、熱硬化や紫外線硬化等を起こし、樹脂粉を形成してもよい。
次に、樹脂粒子14を樹脂基板上に形成する。上記で形成した樹脂粉を用いて形成する場合は、樹脂基板の一面に、スプレー法、グラビア印刷法、ブレード法、転写法等により樹脂基板の一面に定着させる。また、樹脂粒子34をエマルジョンにより形成する場合は、上記で形成したエマルジョンを樹脂基板の一面に塗布して乾燥させる。
このように樹脂粒子14を樹脂基板11上に形成する場合、各方法で樹脂基板11に塗布した状態、または熱を加えて乾燥させても良いが、紫外線やレーザー等により定着させても良く、また樹脂粒子14を形成する樹脂を架橋反応等によりポリマー化して定着しても良い。
これにより、樹脂基板11の一面には、樹脂粒子14が複数、それぞれ孤立して散在した状態となる。
【0038】
次に、図3(c)に示すように、樹脂粒子14が複数、それぞれ孤立して散在した樹脂基板31の一面31aを覆うように、透明導電膜12をCVD法等により成膜する。
【0039】
次に、図3(d)に示すように、樹脂粒子14によって凹凸が形成された透明導電膜12を覆うように、多孔質層13を形成する。
その後、加圧処理を行うことで、樹脂基板11と多孔質層13との密着力、及び樹脂基板11と樹脂粒子14との密着力を上げることができる。その際の圧力としては、0.1kgf/cm以上であることが好ましい。
【0040】
以上の工程によって、樹脂基板11と透明導電膜12との間に、樹脂粒子14を複数、それぞれ孤立して散在させ、樹脂基板11と多孔質層13とを強固に結び付けて多孔質層13の剥離を確実に防止した色素増感型太陽電池の負極電極を得ることができる。
【0041】
図面には示していないが、本発明の色素増感型太陽電池の負極電極の他の構成として、樹脂基板11の表面に酸化珪素や酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化膜を配置するようにしても良い。
この場合、金属酸化膜を設けることにより、樹脂基板11の表面に溶媒に対するバリア膜として該金属酸化膜が作用するので、樹脂粒子14を樹脂基板11上に形成する際、該溶媒を利用した製造方法を適用することが可能となる。
溶媒に対するバリア性を考慮すると、金属酸化膜の厚さは、少なくとも10nm以上が好ましい。金属酸化膜は、CVD法等により樹脂基板11上に成膜することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は色素増感型太陽電池に適用でき、特にフィルム化された色素増感型太陽電池に適用することで、多孔質層の剥離を著しく抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る色素増感型太陽電池の負極電極を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る色素増感型太陽電池を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明に係る色素増感型太陽電池の負極電極の製造方法を模式的に示す断面工程図である。
【符号の説明】
【0044】
10 負極電極、11 樹脂基板、12 透明導電膜、13 多孔質層、14 樹脂粒子、20 正極電極、31 電解液、32 封止部、40 色素増感型太陽電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板と、該樹脂性基板の一面側に、順に重ねて配される透明導電膜と多孔質層を少なくとも備えた色素増感型太陽電池の負極電極であって、
樹脂粒子が複数、前記樹脂基板と前記透明導電膜との間にそれぞれ孤立して配されることを特徴とする色素増感型太陽電池の負極電極。
【請求項2】
前記樹脂粒子の少なくとも一部は、前記樹脂基板に接していることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池の負極電極。
【請求項3】
前記樹脂粒子の少なくとも一部は、金属酸化膜を介して前記樹脂基板に接していることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池の負極電極。
【請求項4】
前記樹脂粒子の平均粒径が、0.1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の色素増感型太陽電池の負極電極。
【請求項5】
前記粒子が前記透明導電膜に接している面積の総和が、前記透明導電膜の表面積の0.1%以上10%以下であることを特徴とする請求項4に記載の色素増感型太陽電池の負極電極。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか1項記載の色素増感型太陽電池の負極電極、該負極電極に対向して配される正極電極、及び前記負極電極と前記正極電極との間に配される電解液、を備えたことを特徴とする色素増感型太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−37847(P2009−37847A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200747(P2007−200747)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【Fターム(参考)】