説明

花粉症緩和材

【課題】花粉症の症状の緩和効果を高めるとともに、薄荷の香りが強いことで不快感を伴うことを防止できる花粉症緩和材を提供すること。
【解決手段】花粉症の症状を緩和する花粉症緩和材1であって、花粉症緩和材1は、薄荷3及びアルコール類を主原料とする液体を用いて作製される。薄荷3の緩和効果と相俟って、アルコール類自体の弱麻酔効果によって、充分な花粉症の緩和効果を発揮するとともに、アルコール類が薄荷3の香りの強さを和らげることができるため、香りを強く感じることで伴う不快感を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉症の症状を緩和する花粉症緩和材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の花粉症緩和材は、薄荷から成り、この薄荷が収容されたマスクを装着することで、花粉症の症状が緩和されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−36653号公報(第5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のマスクにあっては、薄荷の香りが強いため、使用者が不快感を感じる虞がある。また、この種の花粉症緩和材において、花粉症の症状の緩和効果を高めたい要望がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、花粉症の症状の緩和効果を高めるとともに、薄荷の香りが強いことで不快感を伴うことを防止できる花粉症緩和材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の花粉症緩和材は、
花粉症の症状を緩和する花粉症緩和材であって、
前記花粉症緩和材は、薄荷及びアルコール類を主原料とする液体を用いて作製されることを特徴としている。
この特徴によれば、薄荷の緩和効果と相俟って、アルコール類自体の弱麻酔効果によって、充分な花粉症の緩和効果を発揮するとともに、アルコール類が薄荷の香りの強さを和らげることができるため、香りを強く感じることで伴う不快感を防止できる。
【0007】
本発明の花粉症緩和材は、
前記薄荷を、前記アルコール類を主原料とする液体に所定期間浸け込み、その後取り出して乾燥処理が行われることを特徴としている。
この特徴によれば、薄荷に含まれる本来の香りの強さの基になる成分が、アルコール類を主原料とする液体に溶け出しており、乾燥処理した花粉症緩和材における香りの強さの基になる成分を減少させることができる。
【0008】
本発明の花粉症緩和材は、
前記薄荷を、前記アルコール類を主原料とする液体に1週間から2週間までの所定期間浸け込むことを特徴としている。
この特徴によれば、薄荷の香りを強く感じることで伴う不快感を極力防止できるとともに、花粉症の症状を緩和することができる。
【0009】
本発明の花粉症緩和材は、
前記アルコール類を主原料とする液体には、木炭が浸されることを特徴としている。
この特徴によれば、木炭が薄荷の香りの強さの基になる成分を吸着するため、薄荷の香りの強さの基になる成分がアルコール類を主原料とする液体に溶け出すことを促進させることができ、花粉症緩和材における薄荷の香りを低減させることができる。
【0010】
本発明の花粉症緩和材は、
前記花粉症緩和材は、アルコール類を主原料とする液体に、木炭が浸されるとともに、薄荷が所定期間浸け込まれて作製される液体であることを特徴としている。
この特徴によれば、木炭が、アルコール類を主原料とする液体に溶け出した薄荷の香りの強さの基になる成分を吸着するため、アルコール類を主原料とする液体における薄荷の香りの強さの基になる成分を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1における花粉症緩和材を示す斜視図である。
【図2】花粉症緩和材の作製工程を示す説明図である。
【図3】香りに対する高感度について調査した結果を示す表である。
【図4】香りに対する刺激度について調査した結果を示す表である。
【図5】使用後の残臭度について調査した結果を示す表である。
【図6】目の痒みの軽減度について調査した結果を示す表である。
【図7】鼻の痒みの軽減度について調査した結果を示す表である。
【図8】鼻水の量の軽減度について調査した結果を示す表である。
【図9】くしゃみの回数の軽減度について調査した結果を示す表である。
【図10】実施例2における花粉症緩和材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る花粉症緩和材を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例1に係る花粉症緩和材につき、図1〜図9を参照して説明する。先ず図1に示されるように、符号1は、本発明の適用された花粉症の症状を緩和する花粉症緩和材である。この花粉症緩和材1は、通気性を有している綿布から成る袋2に内包されており、花粉症緩和材1を内包されている袋2が、マスク6に収容されるようになっている。
【0014】
マスク6は、主に、通気性を有し口及び鼻を被覆するシート部4と、シート部4の両端部からそれぞれ延びて耳に掛けられる一対の掛け部5,5から成り、このシート部4は、略筒状に形成されている。すなわちシート部4は、マスク6を着用した際に顔に接する一面部4aにおける両端部と、マスク6を着用することで一面部4aの前方側に位置する他面部4bにおける両端部と、がそれぞれ縫合される縫合部4c,4dを有している。これら縫合部4c,4dの間に形成された収容部4eには、花粉症緩和材1が内包されている袋2が収容されるようになっている。
【0015】
次に、花粉症緩和材1の作製工程について説明する。図2に示されるように、日干しを行った後に葉や茎等が細かく砕かれた薄荷3を、アルコール類を主原料とする液体としての日本酒9’が注入された容器8に入れる。尚、本実施例の薄荷3は、重量が100gとなっている。更に尚、本実施例の日本酒9’は、アルコール度数が15度であり、容量が1.8Lとなっている。
【0016】
次いで、薄荷3の香りの強さの基になる成分を吸着するために容器8に、木炭としての備長炭7を浸す。尚、浸される備長炭7は、重量が200gとなっている。そして、容器8内を10日間そのまま放置しておく。つまり、薄荷3を日本酒9’に10日間浸け込む。その後、容器8内から薄荷3を取り出し、薄荷3に付着した液を除去するために薄荷3を乾燥する。この乾燥した薄荷が前述の花粉症緩和材1(図1参照)となっている。
【0017】
そして、図1に示されるように、花粉症緩和材1(本実施例では、重量が3g)を袋2内に内包し、この内包した花粉症緩和材1をシート部4の収容部4eに収容する。袋2が収容部4eに収容されたマスク6を装着することで、花粉症緩和材1が発する香りが鼻孔に吸引されて作用する。
【0018】
図3〜図9に示されるように、試料1として薄荷が日本酒に浸け込まれた期間が5日間で得られた花粉症緩和材と、試料2として薄荷が日本酒に浸け込まれた期間が1週間で得られた花粉症緩和材と、試料3として実施例1の花粉症緩和材(薄荷が日本酒に浸け込まれた期間が10日間で得られた花粉症緩和材)と、試料4として薄荷が日本酒に浸け込まれた期間が2週間で得られた花粉症緩和材と、試料5として薄荷が日本酒に浸け込まれた期間が1ヶ月間で得られた花粉症緩和材と、試料6として薄荷が日本酒に浸け込まれた期間が3ヶ月間で得られた花粉症緩和材と、試料7としてアルコール類等何も処理がなされていない薄荷で構成される花粉症緩和材と、に関して、花粉症の症状を有する被験者No.1〜No.10の10人に、香りに対する高感度、香りに対する刺激度、使用後の残臭度、目の痒みの軽減度、鼻の痒みの軽減度、鼻水の量の軽減度、及びくしゃみの回数の軽減度について、調査をそれぞれ行った。
【0019】
尚、試料1、試料2、試料4、試料5、及び試料6は、薄荷が日本酒に浸け込まれる期間のみ、実施例1の花粉症緩和材である試料3と異なっている。また、試料1〜7を前述の袋2にそれぞれ内包する。そして、被験者が、収容部4eに試料1〜7を内包した袋2がそれぞれ収容されたマスク6を着用し、前述の調査が行われる(図1参照)。
【0020】
また、香りに対する高感度とは、花粉症緩和材が良好な香りであると感じた度合いであり、香りに対する刺激度とは、花粉症緩和材の香りが強いと感じた度合いであり、使用後の残臭度とは、花粉症緩和材の使用後に臭いが鼻孔内に残った度合いであり、目の痒みの軽減度とは、目の痒みの症状が軽減した度合いであり、鼻の痒みの軽減度とは、鼻の痒みの症状が軽減した度合いであり、鼻水の量の軽減度とは、鼻水の量が軽減した度合いであり、くしゃみの回数の軽減度とは、くしゃみの回数が軽減した度合いである。また、図中の合計は、各項目の度合いが大変高いまたは大変低い結果を示す二重丸印(◎)の数と、各項目の度合いが高いまたは低い結果を示す丸印(○)の数との合計を示している。
【0021】
図3〜図5に示されるように、薄荷が日本酒に浸け込まれた期間が長くなるにつれて、香りに対する高感度が高くなっている。また、薄荷が日本酒に浸け込まれた期間が長くなるにつれて、香りに対する刺激度が低くなっている。更に、薄荷が日本酒に浸け込まれた期間が長くなるにつれて、使用後の残臭度が低くなっている。
【0022】
また、試料1〜6の香りに対する刺激度は、試料7の香りに対する刺激度よりも低くなっている。つまり、薄荷が日本酒に所定期間浸け込まれて得られた花粉症緩和材は、アルコール類等何も処理がなされていない薄荷で構成される花粉症緩和材よりも、香りに対する刺激、すなわち薄荷の香りの強さを抑えることができる。
【0023】
特に、試料2〜6の香りに対する刺激度は、充分に低くなっている。すなわち、薄荷が日本酒に1週間以上浸け込まれて得られた花粉症緩和材は、薄荷の香りの強さを抑えることができる。
【0024】
図6〜図9に示されるように、花粉症の症状の緩和の度合いを示す目の痒みの軽減度、鼻の痒みの軽減度、鼻水の量の軽減度、及びくしゃみの回数の軽減度について、試料3が最も高くなっている。また、図7及び図8に示されるように、鼻の痒みの軽減度及び鼻水の量の軽減度については、試料2及び試料4が、試料3に続いて高くなっている。また、図6に示されるように、目の痒みの軽減度については、試料4が、試料3に続いて高くなっており、試料2が、試料4に続いて高くなっている。また、図9に示されるように、くしゃみの回数の軽減度については、試料2が、試料3に続いて高くなっており、試料4が、試料2に続いて高くなっている。
【0025】
すなわち、薄荷が日本酒に浸け込まれた期間が10日間を基点として、薄荷が日本酒に浸け込まれた期間が短くなるにつれて、目の痒みの軽減度、鼻の痒みの軽減度、鼻水の量の軽減度、及びくしゃみの回数の軽減度が低くなっているとともに、薄荷が日本酒に浸け込まれた期間が10日間を基点として、薄荷が日本酒に浸け込まれた期間が長くなるにつれて、目の痒みの軽減度、鼻の痒みの軽減度、鼻水の量の軽減度、及びくしゃみの回数の軽減度が低くなっている。つまり、薄荷が日本酒に浸け込まれる期間が、1週間から2週間までの間で得られた花粉症緩和材は、花粉症の症状を極力緩和することできる。
【0026】
また、目の痒みの軽減度、鼻の痒みの軽減度、鼻水の量の軽減度、及びくしゃみの回数の軽減度については、試料1〜6は、試料7よりも高くなっている。つまり、薄荷が日本酒に所定期間浸け込まれて得られた花粉症緩和材は、アルコール類等何も処理がなされていない薄荷で構成される花粉症緩和材よりも、花粉症の症状を緩和することできる。
【0027】
以上に説明したように、本発明の花粉症緩和材1は、薄荷3及び日本酒9’を主原料として作製されることで、薄荷3の緩和効果と相俟って、日本酒9’自体の弱麻酔効果によって、充分な花粉症の緩和効果を発揮するとともに、日本酒9’が薄荷3の香りの強さを和らげることができるため、薄荷3の香りを強く感じることで伴う不快感を防止できる。
【0028】
また、薄荷3を、日本酒9’に所定期間浸け込み、その後取り出して乾燥処理することで、薄荷3に含まれる本来の香りの強さの基になる成分が、日本酒9’に溶け出しており、乾燥処理した花粉症緩和材1における薄荷3の香りの強さの基になる成分を減少させることができる。
【0029】
また、薄荷3を、日本酒9’に1週間から2週間までの所定期間浸け込むことで、薄荷3の香りを強く感じることで伴う不快感を防止できるとともに、花粉症の症状を緩和することができる。
【0030】
また、日本酒9’に備長炭7が浸されることで、備長炭7が薄荷の香りの強さの基になる成分を吸着するため、薄荷3の香りの強さの基になる成分が日本酒9’に溶け出すことを促進させることができ、花粉症緩和材1における薄荷3の香りを低減させることができる。
【実施例2】
【0031】
次に、実施例2に係る花粉症緩和材につき、図2及び図10を参照して説明する。尚、実施例1と同一構成で重複する構成を省略する。
【0032】
図10に示されるように、実施例2では、容器13に所定量注入された緩和液9が花粉症緩和材として構成される。この緩和液9の作製工程について説明すると、緩和液9の作製工程は、実施例1の花粉症緩和材の作製工程の途中まで同じであり、図2に示されるように、薄荷3を日本酒9’に10日間浸け込んだ後に、容器8内から日本酒を所定量取り出して、この日本酒を緩和液9として容器13に注入する。つまり、緩和液9及び日本酒9’は、容器8から取り出したか否かで異なり、緩和液9に含まれる成分は、日本酒9’に含まれる成分とほぼ同じである。
【0033】
そして、この緩和液9を綿棒14の綿部14aに所定量(本実施例では、3ml)含浸し、緩和液9を含浸した綿部14aを鼻孔内の皮膚に塗布することで、実施例1と同様に、薄荷の香りを強く感じることで伴う不快感を防止できるとともに、花粉症の症状を緩和することができる。
【0034】
このように、実施例2の花粉症緩和材を構成する緩和液9は、備長炭7が浸され、かつ薄荷3が所定期間浸け込まれる日本酒9’であることで、備長炭7が、日本酒9’に溶け出した薄荷3の香りの強さの基になる成分を吸着するため、緩和液9における薄荷3の香りの強さの基になる成分を減少させることができる。
【0035】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0036】
前記実施例1,2では、備長炭7が日本酒9’に浸されるが、これに限らず、例えば、クヌギ等から成る木炭が日本酒9’に浸されてもよい。
【0037】
また、前記実施例1,2では、日本酒9’がアルコール類を主原料とする液体として適用されているが、アルコール類を主原料とする液体は日本酒に限定されることなく、例えば、アルコール類を主原料とする液体としてメチルアルコールを含む液体が適用されてもよい。
【0038】
また、前記実施例1,2では、花粉症の症状を緩和するために本発明の花粉症緩和材1,9が用いられているが、本発明の花粉症緩和材1,9は花粉症のみならず、風邪やインフルエンザ等に起因するくしゃみ、咳、鼻水等の症状を緩和することに用いてもよい。
【0039】
また、前記実施例1では、本発明の花粉症緩和材1を内包する袋2がマスク6に収容されるようになっているが、袋2を使用者の口及び鼻に取り付ける際には、マスク6に限ることなく、例えば、普段は袋2をポケット等に収容しておき、花粉症の症状が現れたときに、使用者が袋2を直接口及び鼻に近づけて使用するようにしてもよい。
【0040】
また、前記実施例1にて、花粉症緩和材1の作製工程で用いた薄荷3を浸け込んだ日本酒9’の容器8を、使用者が就寝する際に、枕元において置くようにしてもよく、この容器8から揮発した成分が就寝中の使用者の呼吸器に作用し、症状を緩和させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 花粉症緩和材
3 薄荷
7 備長炭(木炭)
9 緩和液(花粉症緩和材)
9’ 日本酒(アルコール類)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
花粉症の症状を緩和する花粉症緩和材であって、
前記花粉症緩和材は、薄荷及びアルコール類を主原料とする液体を用いて作製されることを特徴とする花粉症緩和材。
【請求項2】
前記薄荷を、前記アルコール類を主原料とする液体に所定期間浸け込み、その後取り出して乾燥処理が行われることを特徴とする請求項1に記載の花粉症緩和材。
【請求項3】
前記薄荷を、前記アルコール類を主原料とする液体に1週間から2週間までの所定期間浸け込むことを特徴とする請求項2に記載の花粉症緩和材。
【請求項4】
前記アルコール類を主原料とする液体には、木炭が浸されることを特徴とする請求項2または3に記載の花粉症緩和材。
【請求項5】
前記花粉症緩和材は、アルコール類を主原料とする液体に、木炭が浸されるとともに、薄荷が所定期間浸け込まれて作製される緩和液であることを特徴とする請求項1に記載の花粉症緩和材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−32227(P2011−32227A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181189(P2009−181189)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(501236870)
【Fターム(参考)】