説明

芳香族コポリアミドの製造方法

【課題】ポリマーの固有粘度(IV)を制御することができ、引張強度、初期モジュラス等の機械的物性に優れた芳香族コポリアミド繊維を得ることのできる芳香族コポリアミドを、効率よく得ることのできる芳香族コポリアミドの製造方法の提供。
【解決手段】少なくとも2種の特定の反復構造単位を有する芳香族コポリアミドを製造するに際し、重合溶媒中に水分率が特定値以下の無機塩を存在させる。すなわち、すなわち下記式(1)で表される構造反復単位(1)と下記式(2)で表される構造反復単位(2)とを含む芳香族コポリアミドの製造方法であって、水分率が150ppm以下の無機塩を、重合溶媒中に存在させる芳香族コポリアミドの製造方法である。




(式(1)および式(2)中、ArおよびArは各々独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張強度、初期モジュラス等の機械的物性に優れた芳香族コポリアミド繊維を得ることのできる芳香族コポリアミドを、効率よく得ることのできる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とからなるアラミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維)、特にパラ系のアラミド繊維は、その強度、高弾性率、高耐熱性といった特性を活かして産業用途、衣料用途等に広く用いられている。
代表的なアラミド繊維としては、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維がある。これらの繊維は、多くの利点を有するが、ポリマードープの重合度が上がるにしたがい粘度が高くなるため、固有粘度(IV)のコントロールが困難であった。
この問題を解消するため、公知のアミド溶媒に対して高い溶解度を有する溶媒を用いて重合を行なうことにより、延伸処理後に高い強度値と高い初期モジュラスを有する芳香族コポリアラミドを開発する試みがなされてきた。
【0003】
例えば、特許文献1(特開昭51−76386号公報)においては、アミド溶媒に対して等方性溶液を形成するような、パラ配向の芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とからなるアラミドに、メタ配向の酸成分またはジアミン成分を共重合したコポリアラミド、例えば、テレフタル酸、p−フェニレンジアミン、および3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとからなる芳香族コポリアラミドが提案されている。
また、例えば特許文献2(特開平7−300534号公報)においては、式Xおよび式XIの構造反復単位を含む芳香族コポリアミドアミドであって、アミド溶媒に対して等方性溶液を形成するような芳香族コポリアミドが提案されている。
しかしながら、上記特許文献1および特許文献2に開示されている芳香族コポリアミドは、ポリマーの固有粘度(IV)のコントロールが困難であり、IVを制御しつつ、繊維とした場合に優れた機械的物性を発現させることのできるポリマー溶液の製造方法については、未だ提案されていないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭51−76386号公報
【特許文献2】特開平7−300534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術を背景になされたもので、その目的は、ポリマーの固有粘度(IV)を制御することができ、引張強度、初期モジュラス等の機械的物性に優れた芳香族コポリアミド繊維を得ることのできる芳香族コポリアミドを、効率よく得ることのできる芳香族コポリアミドの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、少なくとも2種の特定の反復構造単位を有する芳香族コポリアミドを製造するに際し、重合溶媒中に水分率が特定値以下の無機塩を存在させることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される構造反復単位(1)と下記式(2)で表される構造反復単位(2)とを含む芳香族コポリアミドの製造方法であって、水分率が150ppm以下の無機塩を、重合溶媒中に存在させることを特徴とする芳香族コポリアミドの製造方法である。
【0007】
【化1】

【化2】

【0008】
(式(1)および式(2)中、ArおよびArは各々独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリマーの固有粘度(IV)を制御することができ、引張強度、初期モジュラス等の機械的物性に優れた芳香族コポリアミド繊維を得ることのできる芳香族コポリマミドを、効率よく得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<芳香族コポリアミド>
本発明の製造方法における芳香族コポリアミドとは、2種類以上の2価の芳香族基が直接アミド結合により連結されているポリマーであって、一般に公知の方法に従って、アミド系極性溶媒中で、芳香族ジカルボン酸ジクロライドと芳香族ジアミンの重縮合反応により得られるものである。このとき、上記芳香族基は、2個の芳香族環が酸素、硫黄、アルキル基で結合されたものであっても特に差し支えない。また、これらの2価の芳香環は、非置換またはメチル基やメチル基等の低級アルキル基や、メトキシ基、また塩素基等のハロゲン基で置換されていても差し支えは無く、その置換基の種類や置換基の数は特に限定されるものではない。
【0011】
<芳香族コポリアミドの製造方法>
[芳香族コポリアミドの原料]
(芳香族ジカルボン酸ジクロライド)
本発明の芳香族コポリアミドにおいて、上記式(1)あるいは式(2)の構造反復単位に用いられる芳香族ジカルボン酸ジクロライドとしては、例えばテレフタル酸ジクロライド、2−クロロテレフタル酸ジクロライド、3−メチルテレフタル酸ジクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド等が挙げられる。これらの中では、汎用性や繊維の機械的物性等の面から、テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸クロライドが最も好ましい。また、これら芳香族ジカルボン酸ジクロライドは、1種類のみならず2種類以上を用いることができ、その組成比は特に限定されるものではない。
【0012】
(第1のジアミン)
本発明において使用されるジアミンのうち、上記式(1)で表される構造反復単位(1)に用いられるジアミン(以下「第1のジアミン」ともいう)としては、p−フェニレンジアミン、2−クロルp−フェニレンジアミン、2,5−ジクロルp−フェニレンジアミン、2,6−ジクロルp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン等を単独あるいは2種以上挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
中でも、第1のジアミン成分として、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミンおよび3,4’−ジアミノジフェニルエーテルを単独あるいは2種以上使用することが好ましい。
【0014】
(第2のジアミン)
また、芳香族コポリアミドに用いられるジアミンのうち、上記式(2)で表される構造反復単位(2)に用いられるジアミン(以下「第2のジアミン」ともいう)としては、置換または非置換のフェニルベンジミダゾール基を有する芳香族ジアミンであり、中でも入手のし易さ、得られる繊維の引張強度および初期モジュラス等の点から、5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾールが好ましい。
【0015】
(ジアミンの組成)
本発明に用いられる芳香族コポリアミドにおいては、式(1)および式(2)の構造反復単位を構成するために、少なくとも1種類ずつの「第1のジアミン」と「第2のジアミン」とを用いる。その組み合わせとしては、汎用性や繊維の機械的物性等の面から、パラフェニレンジアミン等の第1のジアミンと、5−アミノ−2−(4−アミノフェニレン)ベンズイミダゾール等の第2のジアミンとの組み合わせが最も好ましい。
【0016】
本発明の製造方法における芳香族コポリアミドにおいては、「第1のジアミン」と「第2のジアミン」とのモル比、換言するならば、構造反復単位(1)と構造反復単位(2)とのモル比は、10:90〜70:30であることが好ましく、30:70〜50:50であることがさらに好ましい。構造反復単位(2)、すなわち、第2のジアミンの割合が70モル%を超える場合には、重縮合反応の際に反応液が濁るばかりでなく、製糸作業性や得られる繊維の機械的物性が低下する問題がある。一方、構造反復単位(2)、すなわち、第2のジアミンの割合が30モル%未満の場合には、重合反応においては反応溶液が濁るという問題が生じ、このような濁ったドープでは製糸することが困難となる。
【0017】
(ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジクロライドとの組成)
また、本発明の製造方法においては、上記のジアミンと芳香族ジカルボン酸ジクロライドのモル比を、ジアミン成分対酸クロライド成分のモル比として、好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05とする。
【0018】
[溶媒]
芳香族コポリアミドを重合する際の溶媒としては、特に制限されるものではないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム等の有機極性アミド系溶媒が挙げられる。特に、芳香族コポリアミドの重合からドープ調製、湿式紡糸工程に至るまでの取扱い性や安定性、および該溶媒の有害性等の観点から、N−メチル−2−ピロリドンが最も好ましい。
これらの溶媒は、2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。なお、上記溶媒は、脱水されていることが望ましい。
【0019】
[無機塩]
本発明の製造方法においては、得られる芳香族コポリアミドのアミド系溶媒に対する溶解性を上げることを目的として、重合前、一般に公知の無機塩を適当量添加する。このような無機塩としては、例えば、塩化リチウム、塩化カルシウム等が挙げられる。好ましくは、塩化カルシウムである。
無機塩の添加量としては、重合溶媒に対して3〜10重量%とすることが好ましい。さらに好ましくは、3〜6重量%である。添加量が10重量%を超える場合には、アミド系溶媒等の重合溶媒に対し、無機塩の全量を溶解させることが困難となる。一方で、3重量%未満の場合には、溶解性向上の効果が不十分となる。
本発明においては、重合溶媒に添加する無機塩の水分率が、ポリマー溶液の固有粘度(IV)をコントロールするうえで重要である。紡糸性に優れた芳香族コポリアミド溶液を得るためには、無機塩の水分率を、150ppm以下とする必要があり、特に100ppm以下とすることが好ましい。塩化カルシウム等の無機塩の水分率を150ppm以下にするには、例えば、窒素を内部にフローしている乾燥容器に、水分率を低下させたい無機塩を入れて乾燥する方法が挙げられる。無機塩の水分率が150ppmを超える場合には、その水分により重合が阻害され、紡糸に適した重合度のポリマーを得ることが困難となる。
【0020】
[濃度]
本発明の芳香族コポリアミドの製造方法において、得られる芳香族コポリアミド溶液のポリマー濃度は、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%である。ポリマー濃度が0.5重量%未満の場合には、ポリマーの絡み合いが少なく紡糸に必要な粘度が得られない。一方で、ポリマー濃度が30重量%を超える場合には、ノズルから吐出する際に不安定流動が起こりやすくなり、安定的に紡糸することが困難となる。特に、均質な高重合度のポリマーを得るためには、生成ポリマー濃度として、10重量%以下とすることが好ましい。とりわけ、3〜8重量%の範囲が、安定したポリマーを得るのに好都合である。
【0021】
[その他]
本発明の芳香族コポリアミドの製造方法においては、芳香族コポリアミドの末端を封止することもできる。末端封止剤を用いて封止する場合には、その末端封止剤としては、例えば、フタル酸クロライドおよびその置換体、アミン成分としてアニリンおよびその置換体が挙げられる。
【0022】
本発明の芳香族コポリアミドの製造方法においては、酸クロライドとジアミンの反応において生成する塩化水素のごとき酸を捕捉するために一般的に用いられる脂肪族や芳香族のアミン、第4級アンモニウム塩等を併用することができる。
【0023】
反応の終了後、必要に応じて塩基性の無機化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等を添加し、中和反応を実施する。
【0024】
反応条件は特別な制限を必要としない。酸クロライドとジアミンとの反応は、一般に急速であり、反応温度は例えば−25℃〜100℃好ましくは−10℃〜80℃である。
【0025】
本発明の製造方法にて得られる芳香族コポリアミドは、アルコール、水といった非溶媒に投入して沈殿させ、パルプ状にして取り出すこともできる。これを再度他の溶媒に溶解して成形に供することもできるが、芳香族コポリアミドの重合反応によって得た溶媒を含むポリマー溶液を、そのまま成形用溶液(ドープ)として用いることもできる。再度溶解させる際に用いる溶媒としては、芳香族コポリアミドを溶解するものであれば特に限定はされないが、上記芳香族コポリアミドの重合に使用されるアミド系溶媒が好ましい。
【0026】
[芳香族コポリアミドの固有粘度]
本発明の製造方法によって得られる芳香族コポリアミドの固有粘度(IV)(98%濃度の硫酸中、ポリマー濃度0.5g/dLの溶液について30℃で測定した値)は、通常、3.5〜6.5程度である。
【0027】
<芳香族コポリアミド繊維の製造方法>
本発明の製造方法により得られた芳香族コポリアミドから芳香族コポリアミド繊維を製造する方法としては、従来公知の方法を採用することができ、例えば、芳香族コポリアミドおよびアミド系溶媒からなる紡糸用溶液(ドープ)を調製し、得られたドープをノズルより吐出し、貧溶媒からなる凝固浴中で凝固、脱溶媒し、延伸、乾燥、熱処理することにより製造することができる。
【0028】
紡糸用ドープのポリマー濃度は、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0029】
また、本発明における紡糸用ドープには、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば、酸化防止剤や耐熱安定剤、耐候剤、染料、帯電防止剤、難燃剤、導電性ポリマー、その他の重合体等を添加することができる。
【0030】
なお、本発明の製造方法で得られる芳香族コポリアミドから繊維を得る場合に、芳香族コポリアミドを紡糸した後、400℃〜550℃の範囲で熱処理を行なうことが好ましい。この温度範囲で熱処理を行えば、得られる繊維の配向結晶化が十分に進み、また、熱劣化を抑制できることから、十分な引張強度、および、初期モジュラスを有するコポリアミド繊維を得ることができる。熱処理温度が400℃より低い場合には、延伸時の糸切れが頻発し、連続的な延伸を行うことが困難となる。一方で、延伸温度が550℃を超える場合には、芳香族コポリアミドポリマーの熱劣化が起こり、高強力繊維としての特徴が損なわれる。
【0031】
<芳香族コポリアミド繊維の物性>
本発明の製造方法によって得られるコポリアミドから得られる繊維の引張強度は、20cN/dtex以上、好ましくは25cN/dtex以上である、また、初期モジュラスは、500cN/dtex以上、好ましくは550cN/dtexである。
また、単繊維の繊度、および長繊維として用いる場合のヤーンデニールは、特に限定される必要はないが、好適な単繊維繊度は0.55〜5.5dtex、特に好適には1.1〜3.3dtexの範囲であり、好適なヤーン繊度は110〜5,500dtex、特に好適には330〜3,300dtexの範囲である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の各特性値は下記の方法で測定した。
<固有粘度IV>
98%濃度の濃硫酸に、ポリマー濃度0.5g/dLとなるようポリマーを溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
<水分率>
試料を乾燥窒素雰囲気中で絶乾した後、NMPに溶解させ、カールフィッシャー法により水分率を求めて、得られた水分率から溶媒の水分率を除去することにより、該試料の水分率を算出した。
<繊度>
JIS−L−1015 B法に準じ、測定した。
【0033】
<引張強度、初期モジュラス>
引張試験機(オリエンテック社製、商品名:テンシロン万能試験機、型式:RTC−1210A)を用いて、引張試験機(INSTRON社製、商品名:INSTRON、型式:5565型)を用いて、ASTM D885の手順に基づき、糸試験用チャックを用いて、以下の条件の引張試験を行い、引張強度、破断伸度、初期モジュラスをそれぞれ測定した。
(測定条件)
温度 :室温
測定試料長 :500mm
チャック引張速度 :250mm/min
初荷重 :0.2cN/dtex
チャック間距離 :500mm
試験スタート法 :スラックスタート法
【0034】
<実施例1>
窒素を内部にフローしている乾燥容器に、塩化カルシウムを入れて乾燥し、水分率100ppmの粉状塩化カルシウムを得た。この塩化カルシウム粉末とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1.940Lとを、窒素フローしている攪拌翼を有する攪拌槽に投入し、塩化カルシウムを溶解させた。次いで、パラフェニレンジアミン(PPD)11.0g(30mol%)と、5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾール(DAPBI)53.0g(70mol%)とを秤量して投入し、溶解させた。続いて、テレフタル酸クロライド(TPC)68.6g(100mol%)を投入し、反応させることにより、ポリマー溶液を得た。得られた生成物に、22.5重量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液110.0gを添加し、中和反応を行った。得られたポリマー溶液から析出させたポリマーについて、固有粘度を測定したところ、5.4であった。
得られたポリマー溶液を用いて、孔径0.15mm、孔数24ホールの紡糸口金から、毎分3.5ccの割合で吐出し、エアーギャップと呼ばれる空隙部分を介して、NMP濃度30重量%、温度50℃の水溶液中に紡出し、凝固糸を得た。
次いで、温度30℃、濃度70%のNMP水溶液中で、2.0倍の延伸倍率で延伸を行った。
延伸後、水洗、乾燥し、次いで、温度450℃下で熱処理を行い、30.0m/分の速度で巻き取って、42dtex/25filの糸条を得た。
得られた芳香族コポリアミド繊維の機械的物性は、引張強度26.9cN/dtex、初期モジュラス870cN/dtexであった。結果を表1に示す。
【0035】
<比較例1>
塩化カルシウムの水分率が300ppmであること以外は、実施例1と同様にして重合を行ない紡糸した。しかしながら、ポリマーの固有粘度が低いため断糸が生じ、糸を得ることができなかった。
【0036】
<比較例2>
塩化カルシウムを溶解させなかったこと以外は、実施例1と同様に紡糸した。しかしながら、断糸が生じ、糸を得ることができなかった。
【0037】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明により得られる芳香族コポリアミド繊維は、引張強度、初期モジュラスに優れているため、防護衣料等の高い機械的物性の求められる用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造反復単位(1)と下記式(2)で表される構造反復単位(2)とを含む芳香族コポリアミドの製造方法であって、水分率が150ppm以下の無機塩を重合溶媒中に存在させることを特徴とする芳香族コポリアミドの製造方法。
【化1】

【化2】



(式(1)および式(2)中、ArおよびArは各々独立であり、非置換あるいは置換された2価の芳香族基である。)
【請求項2】
前記重合溶媒は、アミド系溶媒であり、このアミド系溶媒に無機塩を溶解したアミド溶液にジアミンモノマーを溶解させる請求項1記載の芳香族コポリアミドの製造方法。
【請求項3】
無機塩が塩化カルシウムである請求項1または2記載の芳香族コポリアミドの製造方法。
【請求項4】
式(2)で表わされる構造反復単位(2)が構造単位の全量に対して30〜90モル%である請求項1〜3いずれかに記載の芳香族コポリアミドの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の製造方法によって得られた芳香族コポリマミドを用いた芳香族コポリアミド繊維の製造方法。

【公開番号】特開2010−163506(P2010−163506A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5508(P2009−5508)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】