説明

芳香族モノヒドロキシ体の製造方法及びそれにより得られた芳香族モノヒドロキシ体。

【課題】 芳香族化合物から簡便に且つ効率よく芳香族モノヒドロキシ体を得る。
【解決手段】 遺伝子破壊や発現抑制、阻害剤の使用などによって、多環芳香族化合物分解酵素(bphB)の酵素活性が抑制された微生物又はその微生物の細胞内容物、例えばSphingomonas属の微生物を、芳香族化合物、例えばジベンゾチオフェンと接触させて、芳香族モノヒドロキシ体、例えばモノヒドロキシジベンゾチオフェンを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族モノヒドロキシ体の製造方法及びそれにより得られた芳香族モノヒドロキシ体に関する。
【背景技術】
【0002】
多環芳香族化合物にヒドロキシル基が付加した化合物は、石油製品をはじめ、除草剤、医薬品などさまざまな製品の原料となりうる物質であることから、常温常圧で生産可能である微生物を用いたバイオプロセス生産を目的とした研究が多数行われてきた。バイオプロセスを用いた工業製品の生産はコスト面で優れており、環境にも優しい技術として従来の化学合成に代わる技術として期待されている。
【0003】
モノオキシゲナーゼによる多環芳香族化合物(PAH)のヒドロキシ化について、森らは、白色腐朽菌(Phlebia lindtneri)のP450モノキシゲナーゼが、ジベンゾジオキシン(DBD)、ジベンゾフラン(DBF)、ビフェニル(BPH)の位置特異的なヒドロキシル化を担っていることを報告している(非特許文献1)。また、糸状菌や酵母ではヒドロキシ化合物を介した多環芳香族化合物の分解に関する報告がいくつかある(例えば、非特許文献2)。
しかし、白色腐朽菌は、基質のヒドロキシル化のみを担っており、それ以降は分解が進行しない。
一方、単環のベンゼン、トルエンについては、モノヒドロキシ化合物を介した環開裂型分解経路が存在していることが明らかとなっている(非特許文献3)。また微生物を用いた各種芳香環ジオキシゲナーゼを用いてジヒドロジオール等を得ることができることが報告されている(特許文献1乃至4)。
【非特許文献1】Appl.Microbiol.Biotechnol., 60, 200-205, (2002)
【非特許文献2】Appl.Environ.Microbiol., 67(4), 1551-1557, (2001)
【非特許文献3】Aldrichimia Acta, Vol. 32,(2), 35-62, (1999)
【特許文献1】特開平5−130875号公報
【特許文献2】特開平6−181789号公報
【特許文献3】特開2003−269号公報
【特許文献4】特開2003−93087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
芳香族化合物を直接モノヒドロキシ化できれば、少ない工程で効率よくモノヒドロキシ体を得ることができる。
従って、本発明は、芳香族化合物から簡便に且つ効率よく芳香族化合物モノヒドロキシ体を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の芳香族モノヒドロキシ体の製造方法は、芳香族化合物を、多環芳香族化合物分解酵素(bphB)の酵素活性が抑制された微生物又はその微生物の細胞内容物と接触させることを特徴としている。
ここで、前記bphBの酵素活性の抑制が、bphB遺伝子の発現抑制及び遺伝子破壊並びにbphBの活性阻害剤の使用からなる群より選択された少なくとも1つによって行われることが好ましい。
本発明の芳香族モノヒドロキシ体は、前記製造方法によって得られたものである。
【0006】
本発明では、bphBの酵素活性が抑制された微生物又はその微生物の細胞内容物を用いるので、芳香族化合物の分解経路が不完全となる。この結果、ジヒドロキシ体ではなくモノヒドロキシ体が生成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、芳香族化合物から、簡便に且つ効率よく芳香族モノヒドロキシ体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の芳香族モノヒドロキシ体の製造方法は、芳香族化合物を、bphBの酵素活性が抑制された微生物又は微生物の細胞内容物と接触させることを含む。
一般に多芳香族化合物の分解経路としては、ジオールを介した経路のみが知られており、例えばジベンゾチオフェンの分解経路としては、図1に挙げるいわゆる児玉経路のみが科学的に証明されているにすぎない。
本発明の製造方法では、この経路に関与するbphBの酵素活性が抑制されている微生物又は微生物の細胞内容物を用いる。この結果、芳香族化合物の分解経路が不完全となって、合成のメカニズムの詳細は不明であるが、ジヒドロキシ体を副生することなく芳香族化合物が直接ヒドロキシル化され、一段階反応で簡便に且つ効率よくモノヒドロキシ体が得られる。本方法により得られたモノヒドロキシ体は、例えば他の微生物由来のジオキシゲナーゼ等を用いた経路と比較して、高い純度のものである。
【0009】
bphBは微生物に存在し、2以上の芳香環及びヘテロ原子を含む芳香環を有する多環芳香族化合物を分解することができる酵素であり、bphBタンパク質はいわゆる短鎖型脱水素酵素として知られている。bphBタンパク質の結晶構造は、HulsmeyerらによりBurkholderia sp. LB400株由来のbphBで最初に決定された(Protein Sci., 7(6), 1286-93, (1998).)。Burkholderia sp. LB400株はさまざまなポリ塩化ビフェニル(BPH)に対して基質特異性をもっており、下記のような環開裂型分解経路にてビフェニルを分解、資化する。
【0010】
【化1】

【0011】
LB400のbphBは四量体を成しており、補酵素としてNAD+を利用する。LB400におけるbphBの作用機構を以下に示した。bphBは以下の2ステップの反応機構により、ジヒドロジオールを脱水素化しているものと考えられている。
【0012】
【化2】

【0013】
(A) Tyr155が脱プロトン化する。(B)脱プロトン化したTyrが基質の3−ヒドロキシル基と水素結合を形成する。次にBPDD(cis−(2R,3S)−ジヒドロキシ−1−フェニルシクロヘキサ−4,6−ジエン)の3−ヒドロキシル基のプロトンをTyr155が取り込み、3−Hを遊離して、基質は補酵素であるNAD+と結合する。(C)水素を取り込んだNAD(H)は基質から遊離し、反応中間体であるα−ヒドロキシシクロヘキサ−2,4−ジエンが生じる。この物質はケト−エノール互変異性によって、亜反応でベンゼン環の再編成が起こり、2,3−ジヒドロキシBPH(DHBP)が生成する。
【0014】
このbphBの核酸配列及びアミノ酸配列は、配列番号1及び2として既に既知であるが、本発明におけるbphBは、配列番号1及び2の配列のみに限定されず、同様の機能を有するものであれば、核酸又はアミノ酸の1つ以上が欠失、置換又は付加されたものであってよい。
【0015】
本発明では、bphBの酵素活性が抑制されたものであればよく、この酵素活性の抑制としては、bphB遺伝子の発現抑制及び遺伝子破壊並びに、bphB活性阻害剤の使用からなる群から選択された少なくとも1つであることが好ましい。
【0016】
破壊される遺伝子領域は、bphBの機能を破壊することができる程度の破壊であればよく、bphB配列全体の破壊でなくてもよい。例えば、コーディング領域、触媒活性領域の配列の一部の欠損やプロモーター配列等の破壊を挙げることができ、このうち、効率よくbphBの機能を破壊する観点から、触媒活性部位の領域の破壊が好ましい。
遺伝子の破壊及び遺伝子発現抑制は、この分野で通常行われている方法であれば、当業者によって適宜選択され、容易に用いることができる。例えば、遺伝子破壊としては、トランスポゾンを用いたランダムな遺伝子破壊や、相同組換えによる領域指定の破壊等を挙げることができる。また、遺伝子発現抑制としては、アンチセンス、RNAi等を挙げることができる。このような技術には、これらの手法の適用は、目的となる配列が明らかであるので、当業者であれば適宜用いることができる。
【0017】
また、bphBの遺伝子の発現が行われてもその酵素活性を阻害できれば、前記と同様の効果を得ることができる。このため、bphBの酵素活性の阻害剤も、この機能を有する化合物であれば、特に限定なく使用することができる。
【0018】
また、bphBの酵素活性を抑制する他の方法としては、bphBに相当する他の代謝酵素遺伝子の破壊や発現抑制を挙げることができ、このような代謝酵素遺伝子としては、ジヒドロジオールデヒドロゲナーゼを挙げることができる。この代謝酵素遺伝子を破壊等することによっても、bphBの酵素活性を抑制することができる。
【0019】
本発明では、bphBの酵素活性が抑制された微生物又は微生物の細胞内容物が用いられる。
本発明に使用可能な微生物としては、芳香族化合物分解能を有する微生物であれば特に限定されないが、生成物の生成・回収効率等の観点からグラム陰性菌及びグラム陽性菌から成る群より選択された少なくとも1つであることが好ましく、中でも、工業的にまた研究対象としての実績が豊富なSphingomonas属、Pseudomonas属、Rhodococcus属からなる群より選択された少なくとも1種であることが工業的価値及び利便性の観点から更に好ましい。これらの微生物は、目的とするモノヒドロキシ体の種類や、基質となる芳香族化合物の種類に応じて適宜選択可能である。また、これらの微生物のうち、特に、効率よく本発明の化合物を生成することができる観点から、Sphingomonas paucimobilis等のSphingomonas属であることが特に好ましい。
【0020】
微生物の細胞内容物は、細胞内の酵素活性が失われない通常の方法に従って細胞の内容物を抽出したものであれば、特に限定されず、リゾチーム等の溶解酵素を用いた溶解物、超音波破砕機やフレンチプレスまたホモジナイザー等を用いた粉砕物を挙げることができる。
ここで、生成されたモノヒドロキシ体を容易に回収できる観点から、微生物をそのまま用いることが好ましい。
【0021】
本発明で使用する微生物は、bphBの酵素活性が抑制されている以外は、天然のものと同一であってよく、この微生物における他の生物学的機能を用いて、本発明におけるモノヒドロキシ体を生成することができる。なお、本微生物における他の機能には、天然由来の酵素活性等を挙げることができるが、本発明の効果を損なわない程度の改変が行われたものであってもよい。このような改変には、他の酵素活性効率の向上や増殖速度の向上などを挙げることができる。これらの改変は、当業者であれば、適宜選択可能であり、容易に実施可能である。
【0022】
本発明においてモノヒドロキシ体を得るには、上述のような微生物又はその細胞内容物を芳香族化合物と接触させればよい。
【0023】
使用される芳香族化合物としては、目的とするモノヒドロキシ体の基礎となる芳香族化合物であり、分解経路にbphBが関連するものであれば特に限定されない。
ここで芳香族化合物とは、分子中に1つ又は2つ以上、例えば三環、四環の縮合又は非縮合の芳香環を有するものをいい、工業的観点から多環芳香族化合物及び芳香族アミノ酸からなる群より選択されたものであることが好ましい。この芳香族化合物は、分子中に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子や、低級の飽和炭化水素基や脂環炭化水素基で構成された側鎖をそれぞれ単数又は複数有していてもよい。低級飽和炭化水素基としては、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル等を挙げることができる。また、低級の脂環炭化水素基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロペンテン等を挙げることができる。化合物中に含まれる芳香環は、環状のものであれば特に制限されず、5員環、6員環から8員環までを好ましく挙げることができる。このような芳香族化合物としては、工業的観点及び効率よく生成することができることから、炭素数5〜50、好ましくは炭素数6〜40のものが該当し、多環芳香族化合物としてビフェニル、ジベンゾフラン、ジベンゾダイオキシン、ジベンゾチオフェン等、芳香族アミノ酸としてフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ヒスチジンを挙げることができる。
【0024】
なお、本発明の製造方法では、合成経路においてbphBの前段に関与する芳香族化合物酸化還元酵素は特に制限されない。このため、いずれの酸化還元酵素が関与する系であっても、前記同様に、モノヒドロキシ体を簡便に得ることができる。
【0025】
芳香族化合物と上記微生物又は微生物の細胞内容物との接触の条件としては、使用する微生物による化合物の資化に必要な通常の条件をそのまま適用すればよく、当業者であれば、使用する微生物の種に応じて適宜選択することができる。
【0026】
上記接触工程によって生成された芳香族モノヒドロキシ体は、通常、単独の化合物として反応産物中に存在するので、芳香族モノヒドロキシ体の抽出は、容易に行うことができる。
ここで用いられる抽出手法は、一般的な低分子化合物の精製に用いられる方法であれば、いずれでもよい。例えば、培養濾液中の生成物についてはこれを水不混和性の有機溶媒、例えば酢酸エチルなどで抽出する方法、あるいは菌体内の生成物についてはろ過、遠心分離などで得た菌体をメタノール、エタノール、アセトンなどで回収する方法や、適当な溶媒を用いた向流分配法などを挙げることができる。なお菌体を分離せずに培養物そのままを上記の抽出操作に付すこともできる。また、既に液状となっている生成物含有物、例えば培養濾液や、抽出操作によって得られた抽出液を対象として、適当な吸着剤、例えばシリカゲル、活性炭、「ダイヤイオンHP-20」(三菱化成社製)などを用いて目的の生成物を吸着させ、その後適当な溶媒にて溶離させることもできる。このようにして得られた生成物溶液を減圧濃縮乾固すれば、生成物粗標品が得られる。この生成物粗標品を更に精製するためには、上記の抽出法および吸着法にゲル濾過法、高速液体クロマトグラフィーなどを必要に応じて組み合わせて必要回数行えばよい。例えばシリカゲルなどの吸着剤、「セファデックスLH-20」(ファルマシア社製)などのゲル濾過剤を用いたカラムクロマトグラフィー、「YMCパック」(山村科学社製)などを用いた高速液体クロマトグラフィーおよび向流分配法を適宜組み合わせて実施することができる。
【0027】
本発明によって得られたモノヒドロキシ体は、1H NMR及び13C NMRスペクトル分析、及び、MSスペクトル分析等によって同定することができる。得られた芳香族化合物モノヒドロキシ体は、種々の分野の中心となる機能性物質、例えば医薬品の出発原料や導電性ポリマーの出発原料として使用されているものであるので、有用な芳香族化合物モノヒドロキシ体を効率よく提供することができる。
【0028】
このように本発明の芳香族化合物モノヒドロキシ体の製造方法によれば、種々の芳香族化合物モノヒドロキシ体を一段階反応で短時間に得ることができる。また、芳香族化合物を効率よくモノヒドロキシ体に資化することができるため、環境改善にも効果的に適用することができる。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、重量(質量)基準である。
【0030】
[実施例1]
TZS−7株におけるbphB遺伝子の破壊によるジベンゾチオフェン(DBT)および各種芳香族モノヒドロキシ体の作製
(1)TZS−7株における遺伝子破壊
多環芳香族化合物分解能を有することが既知、即ちbphB遺伝子の存在が確認されている菌株、Sphingomonas paucimobulis TZS-7株(Journal of Bioscience and Bioengineering 88: 293-299 (1999))のbphB遺伝子に、微生物の遺伝子破壊法の定法の一つである相同組換え法を利用して、カナマイシン耐性遺伝子を導入した。具体的にはORFの27番目と28番目の塩基の間(図2参照)に薬剤耐性遺伝子カナマイシン耐性遺伝子を挿入したDNA断片を作製し、エレクトロポレーション法によりTZS−7株に導入し相同組換え体を得た。直接塩基配列を解析することにより、bphB遺伝子が破壊されていることが確認された。この菌株を、Tn399とした。
【0031】
(2)塩基配列の決定法
上記で得られたTn399株を、LB培地4mlに植菌し、37℃で一晩振盪培養した後、培養液をGenElute Plasmid Mini-Prep Kit(シグマ株式会社)に供し、プラスミドの調製を行った。このプラスミド調製液、またはプラスミドを鋳型としたPCR反応産物を用いた。
PCRによるシークエンス用テンプレートの調製には、LA Taq polymerase(宝酒造株式会社)を用いた。反応液をLA Taq polymeraseに添付された説明書に従い、LA Taq polymerase 0.5U、滅菌水にて溶解したプラスミドを約5ng、5'−M13プライマー(M13−20(5'-GTAAAACGACGGCCAGT-3'):配列番号3)と3'−M13プライマー(RP(5'-GGAAACAGCTATGACCATG-3'):配列番号4)をそれぞれ終濃度0.2μMで用いて、全量50μlに調製した。PCR反応は、まず94℃−3分間熱変性を行ったのち、94℃−3分、68℃−5分を1サイクルとして合計30サイクル反応させた。続いて70℃−10分間にてPCR反応産物の補正伸長を行い、最後に4℃で保存した。
得られたPCR産物を、UltraClean PCR Clean-up DNA Purification Kit(宝酒造株式会社製)に供し、不要なプライマー、未反応のdNTPなどを除去し、シークエンス用テンプレートとした。
【0032】
以上のようにして調製したテンプレートとABI PRISM Big DyeTM Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction ver.2(ABI社製)を用いてサイクルシークエンス反応を行った。
まず、0.2ml容のマイクロテストチューブに、プラスミド調製液もしくはPCR反応産物、キットに付属しているBig Dye ver.2を4μl、それにEZ::TNTM〈KAN-2〉Tnp TransposomeTM Kit付属のKAN-2 FP-1 Forward Primer、またはKAN-2 RP-1 Reverse Primer(0.2pmol/μl)を1μl添加し、超純水で全量10μlにして調製した。
次にこれらのサンプルをPCR反応に供した。まず96℃で1分間熱変性したあと、96℃,30秒、45℃,5秒、60℃,4分を1サイクルとし、25サイクル行い、反応終了後4℃で保存した。その後、シークエンス反応液に滅菌水10μl、3.0Mの酢酸ナトリウムを2μlと99.5%のエタノールを添加し、混合後、常温にて10分間静置した。続いて、15,000rpm,18℃,30分間遠心し、沈殿物を70%エタノールで洗浄して、エバポレーターでDNAペレットを乾燥させた。乾燥させたDNAペレットにPE社製TSRを15μl添加し、十分に溶解させ、95℃、2分間インキュベートした後、氷中で急冷して、サンプル調製した。
【0033】
(3)塩基配列のコンピュータ解析
上記のように調製したサンプルをABI社製Genetic Analyzer 310に供して、挿入断片の塩基配列を決定した。
得られた塩基配列のデータは、SDCソフトフェア開発社製のコンピュータプログラム、GENETYX-MAC(Ver.11.0)を用いて解析した。また、DNA、アミノ酸のホモロジー解析にはBlastを用いた。
【0034】
(4)bphBのアミノ酸配列のアライメント
TZS−7株におけるbphBをアミノ酸配列に変換したものと、相同性の高かった遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列との比較を行った。結果を図3に示す。
図3に示されるように、Sphingomonas aromaticivorans F199株のbphB(putative dihydrodiol dehydrogenase)と89.5%、Sphingomonas sp. BN6株のORF4(putative 1,2-dihydrodiol dehydrogenase)と75.6%、Pseudomonas sp. KKS 102株のbphB(cis-2,3-dihydrobiphenyl-2,3-dehydrogenase )と44.0%の相同性が確認された。これらの結果より、トランスポゾンで破壊された遺伝子はジヒドロジオールデヒドロゲナーゼをコードするbphBであると示唆された。TZS−7におけるbphBのBlastドメイン検索の結果、bphBは短鎖アルコールデヒドロゲナーゼファミリー(SDRファミリー)に分類された。SDRファミリーは、微生物からヒトまで保存されているが、その直接的な反応などは詳細には調べられていない。
【0035】
SDRファミリーに共通した特徴は、補酵素であるNAD(H)、NADP(H)の結合部位と考えられているGlyXXXGlyXGlyモチーフと、触媒活性部位であるTyrXXXLys構造をもっていることであることが知られている。TZS−7株のbphB配列からもこれらのモチーフが確認された。
LB400におけるbphBのLys159は、この反応機構に直接は関わっていないが、Lys159はTyr155を分極化することができ、静電相互作用によりヒドロキシル基の酸性度指数(pKa値)を低く保つ。この影響は、Tyr155の脱プロトン化を促進し、結果的に酵素の触媒を促進しているものと考えられる。
LB400におけるbphBの立体構造解析により、Ser142、Tyr155、Lys159の3アミノ酸が触媒活性基であると考えられた。この可能性をさらに実験的に証明したのがVadaiらである(Biochemistry, 39(17), 5028-34, (2000))。
【0036】
Vadadiらは、ビフェニル(BPH)、ポリ塩化ビフェニル分解菌であり、LB400のbphBとも相同性の高いComamonas testosteroni B-356株のbphB(cis-2,3-Dihydro-2,3-dihydroxybiphenyl Dehydrogenase)のSer145、Tyr158、Lys161、それぞれに対し、部位特異的変異導入法によりアミノ酸の置換を行い、変異型bphBを作製して、その動態について解析している。その結果、これらのアミノ酸が触媒活性基であることが示唆された。彼らはこの3アミノ酸を“catalytic triad”(活性中心アミノ酸)と呼び、bphBの触媒活性に不可欠なアミノ酸であることを主張した。本実施例で用いられたTZS−7のbphBにおいても、この“catalytic triad”が保存されていた(図3)。
【0037】
[実施例2]
bphB破壊によるモノヒドロキシDBTの生成
(1)供試菌株
TZS−7株およびTZS−7株におけるDBT分解関連酵素遺伝子(bphB)の破壊株(Tn399)
(2)培地、培養条件
休止菌体反応によって、それぞれの基質の分解速度を算出した。まず、NB寒天培地に4℃で保存している菌株をかき取り、NB培地5mlの入った中試験管に植菌し、30℃にて定常期(OD660=1.5)に達するまで培養した。その後、培養液200μl、またPAH分解酵素誘導のため、トルエン20ppmをNB培地100ml入った500ml容三角フラスコに添加し、30℃で回転振盪培養した。なお、トルエンはアセトンで希釈して100μlにしたものを添加した。
ODが1.0に達したところで、再びトルエンを20ppm添加し、再誘導した。ODが1.3になったところで4,500rpm,20分間培養液を遠心し、菌体を回収した。次に、菌体に対して0.1Mリン酸−カリウム緩衝液(pH7.0)を10ml加え、ボルテックスでよく撹拌したあと、再び4,500rpmで20分間遠心し、菌体を回収した。なお、この操作は二回繰り返した。洗浄後、同緩衝液でOD660が10になるように休止菌体懸濁液を調製した。なお、懸濁液を保存する際は−80℃にてフリーズストックし、使用時は氷冷した水の中で融解させた。
【0038】
以上のようにして調製した休止菌体500μlを、氷上で冷やした小試験管に添加し、そこへ5g/lのDBT/DMF溶液、もしくは4,6−DMDBT/DMF溶液を10μl(終濃度100ppm)を加え、にて30℃,600rpmの回転振盪で休止菌体反応を行った。反応後、6NのHClを50μl加え酸性化したのち、反応液と当量の酢酸エチルを添加してボルテックスにてよく撹拌した。5分間静置したあと、遠心にて水層と有機層を分離し、基質の抽出を行った。
【0039】
(3) 試薬
DBTは、10g/lの濃度でアセトンに溶解させたものを用いた(未滅菌)。その他の試薬類は特記しない限り、フィルター滅菌、またはオートクレーブ滅菌したものを用いた。PCRに用いたDNA関連酵素、休止菌体調製に用いた緩衝液の試薬等は宝酒造株式会社、東洋紡績株式会社、もしくはInvitrogen社製のもの使用した。
(4) 分析条件
GCは島津製作所製のGC-2010を用いた。GCシステムは、水素炎イオン化検出器(Flame Ionization Detector, FID)とキャピラリーカラム(DB-1, J&W Scietific社)を備えている。カラム温度は260℃恒温、インジェクター及び検出器温度はそれぞれ300℃とした。
Tn399の休止菌体反応における分解産物をGC/MS用のサンプルとして用いた。
DBT分解産物の構造解析は、質量分析ガスクロマトグラフィー(Gas chromatography/mass spectrometry, GC/MS)によって決定した。GC/MSシステム(Thermo Quest社)は、キャピラリーカラムを備え、カラムオーブンは150℃から275℃へ昇温(gradient、10℃/min)した。またマススペクトルの解析にはGC/MS付属のスペクトル検索ソフト“Xcalibur”を用いた。
【0040】
(4)TZS−7と組換え株Tn399の生育曲線比較
TZS−7(四角)及びTn399(菱形)の生育曲線を図4に示した。NB培地において野生株と変異株の間で生育の違いは見られず、Tn399にてトランスポゾンによる破壊をうけた遺伝子は生育に影響を与えないものであることが明らかとなった。従って、TZS−7において確立されている休止菌体調製法をTn399にそのまま適応できることが明らかであった。
(5)Tn399におけるDBT分解産物のGC/MS解析
GC/MS解析におけるGCクロマトグラム、及びTn399に特有なピークのマススペクトルを図5に示す。マススペクトルより、この化合物は分子量(M+)が200であると推定され、DBT(MW=184)のいずれかの位置に酸素原子が付加したものであると推定された。しかし、クロマトグラムの保持時間よりDBTスルホキシドとは異なる物質であると思われ、ピーク1のマススペクトルより、Tn399にて蓄積している化合物はヒドロキシDBTであると示唆された。
【0041】
[実施例3]
1H−NMRによるTn399のモノヒドロキシDBTの解析
(1)休止菌体の調製、および休止菌体反応
TZS−7、Tn399の休止菌体調製法については、実施例2で記述したものと同じ方法を用いた。休止菌体反応は、300ml容の羽根つき三角フラスコに休止菌体を50ml加え、そこへN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)にて溶解したDBTを5mg(終濃度100ppm)添加し、30℃200rpm、24h分解を行った。DBTの溶解に用いたDMF量は、菌体への有機溶媒の影響を最小限にするため、DBTが目視にて可溶化する最小量で溶解し、用時調製とした。
【0042】
(2)DBT分解産物の抽出
(1)の反応液を4,500rpm、40分間遠心し、菌体と未分解基質を除去した。上清液を太型試験管に移し、6NのHClをサンプル量の10分の1量添加して酸性化した後、サンプルと等量の酢酸エチルを加え、ボルテックスにてよく撹拌した。5分間静置した後、ガラス製の遠沈管に移し、4,500rpm、20分間遠心し、水層と有機層を分離した。有機層を回収し、DBT分解産物を抽出した。なお、この操作は2回繰り返した。
抽出したサンプルを100ml容のガラス製の蓋付き三角フラスコにまとめ、無水硫酸ナトリウムを適当量くわえて一晩静置し、サンプル中の脱水を行った。続いて、サンプルをロータリーエバポレーターに供して、分解産物の濃縮を行った。
【0043】
(3)シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる標的化合物の単離
調整したサンプルの重量を測定し、アセトンにて1,000ppmになるようにサンプルを溶解した。溶解したサンプルをTLCに供した。
まず5×20cmのTLCプレートシリカゲル60F254(MERCK社)をガラス切りで5×3cm大に切断し、以下のTLC操作に用いた。展開層に20%アセトン−クロロホルム溶液を加え、そこへサンプルおよび基質をスポットしたTLCプレートを入れて、サンプルの展開を行い、サンプル中に含まれている化合物を予測した。次にヘキサン100%、5%ジエチルエーテル−ヘキサン溶液、10%ジエチルエーテル−ヘキサン溶液に順次展開し、標的化合物を単離可能な溶媒系の検討を行った。なお、シリカゲルにおける混合溶媒系の溶出力については入門クロマトグラフィー 第1版, 東京化学同人, (1971) pp.35.を参考にした。
【0044】
TLCの結果を元に、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行った。はじめに、ディスポーザブルのパスツールピペット(IWAKI社製)に脱脂綿もしくはシリカウールを加え、その上層にシリカゲルをサンプル重量の10倍量(ただし、シリカゲルは最低でも500mgとする)加え、簡易的なカラムを作成した。
TLCでの結果をもとに、カラムクロマトグラフィーの溶媒系を構築した。始めに展開を行う溶媒系(今回はヘキサン100%)でサンプルの転溶を行い、同溶媒でシリカゲルを洗浄した。洗浄は、目視にてシリカゲル中の空気が完全に除去されるのを確認できるまで行った。
【0045】
以上のようにして調製したカラムにサンプルを通し、その後ヘキサン100%、5%ジエチルエーテル−ヘキサン溶液、10%ジエチルエーテル−ヘキサン溶液、20%アセトン−クロロホルム溶液をそれぞれ5mlずつ用いて順次溶出を行った。溶出したサンプルはそれぞれの溶媒系ごとにガラス遠沈管(三洋株式会社製)に回収した。
回収したサンプルを再び20%アセトン−クロロホルム溶液でTLCに供し、標的化合物が単離されているかを確認した。またTLCとともに、GC、GC/MSでもサンプル中の化合物の検出、および構造の推定を行った。標的化合物の単離が確認できたら、ロータリーエバポレーターでサンプルを濃縮し、重量を測定したあと、4℃で保存し、1H−NMR用のサンプルとした。
【0046】
(4)シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる標的化合物の単離
上述の溶媒系にてカラムクロマトグラフィーを行ったところ、20%アセトン−クロロホルム溶液にて溶出を行った系で、ヒドロキシDBTと思われる物質の存在を確認した。GC/MS解析から、ヒドロキシDBTのみが検出され(データ省略)、標的化合物を単離することができた。
(5)1H−NMRによるTn399のDBT中間代謝物の解析
1H−NMRの解析から、図8に示めすように2−ヒドロキシDBTの蓄積が確認された。このことから、酢酸エチルによって抽出された中間代謝産物は、2−ヒドロキシDBTであることが明らかとなった。
強い酸性化ではジヒドロジオールが不安定になる可能性が高いため、抽出の際に6NのHClを加えず中性にて抽出をおこない解析を試みたが、やはり2−ヒドロキシDBTのみが検出された。Tn399にて蓄積している中間代謝物がDBTのジヒドロジオールであったとしても、そのすべてが2−ヒドロキシDBTになってしまうという可能性は考えにくいことから、Tn399においてなんらかの反応により、2−ヒドロキシDBTのみが生成しているものと考えられる。
従って、本実施例によれば、2−ヒドロキシDBTのみを得ることができるので、混合物からの精製工程を用いることなく、直接目的とするモノヒドロキシ体を得ることができることが明らかであった。
【0047】
[実施例4]
Tn399における各種芳香族化合物分解産物のGC/MS解析(定性)
(1)実験方法
TZS−7野生株、Tn399株を供試菌株として用いた。
これらTZS−7及びTn399の休止菌体調製には、NB培地(Difco社)を用いた。培養条件はどちらも30℃,200rpmにて行った。
本実験に用いた基質を図7にまとめる。トルエンは和光純薬工業社製の特級品、BT、4,6−DMDBT、DBF、DBD、BPH、1,2−NT、2,1−NT、2,3−NT、ANT、PHE、BNTを用いた。その他、有機溶媒などの試薬類は和光純薬工業社製、ナカライテスク株式会社製の特級品、またはそれに準ずるものを用いた。
TZS−7及びTn399の休止菌体調製法、休止菌体反応、分解産物の抽出については前述と同様に行った。
抽出サンプルの解析にはGC/MSを用いた。分析条件は、実施例3と同様とした。
【0048】
(2) Tn399における単環芳香族化合物(mono-aromatic)の分解産物のGC/MS解析
TZS−7野生株またはTn399株におけるトルエン、BTの分解産物のGC/MS解析より、これらの基質ではDBTの分解させたときのようなヒドロキシ化合物の生成は確認できなかった。この結果より、DBTの分解とは異なりTZS−7によるトルエン及びBTの分解には、DBT分解酵素遺伝子とは異なる遺伝子が関与しているものと思われた。
(3) Tn399における2環芳香族化合物(di-aromatic)の分解産物のGC/MS解析
図8に示すように、DBF分解産物においても野生株では見られない未知ピーク(ピーク2)を確認した。ピーク1のマススペクトルパターンより、この化合物はヒドロキシDBFであることが示唆された。したがって、DBFもDBTと同様の分解経路により代謝されているものと考えられた。
図9にはTn399におけるDBD代謝産物のクロマトグラムを示した。DBDでも同様にTn399特有のピークが確認され、そのマススペクトルよりヒドロキシDBDの蓄積が示された。
【0049】
図10に、Tn399におけるBPH代謝産物のクロマトグラムを示した。これまでの二環芳香族化合物では基質の分解に伴って生成するピークは一つのみであったが、BPHにおいてはTn399特有のピークが2種類確認され、それぞれのマススペクトルよりどちらも置換位置の異なるモノヒドロキシ化合物、2−ヒドロキシBPH(ピーク4)、4−ヒドロキシBPH(ピーク5)であることが示唆された。これまでBPHの中間代謝産物として、さまざまヒドロキシ化合物を生産する例はDBF、DBD同様、糸状菌、酵母などの真核微生物において多く見られている。例えば、DBDよりヒドロキシDBDを生産する微生物として紹介した白色腐朽菌、Paecilomyces lilacinusは、BPHの分解産物として2−、3−、4−ヒドロキシBPHを生成することが報告されている。これらの化合物を中間代謝産物として、ヒドロキシル基が順次付加され、最終産物としてBPHの片側のベンゼン環が開裂した化合物を生成する。しかし、原核微生物においてヒドロキシBPHを生成する例は報告されていない。
【0050】
図11、図12に石油汚染の代表的な芳香族化合物である1,2−NT、2,1−NTのTn399における代謝産物のGC/MSクロマトグラム、マススペクトルを示した。これらの化合物でも同様にTn399特有のピークが確認され、それぞれヒドロキシ1,2−NT(図11、ピーク6)、ヒドロキシ2,1−NT(図12、ピーク7)の存在が示唆された。
【0051】
(4) Tn399における3環芳香族化合物(tri-aromatic)の分解産物のGC/MS解析
図13に示されるように、PHEにおいてもモノヒドロキシ化合物と思われる物質(ピーク8)が検出された。ピーク1のマススペクトルよりヒドロキシPHEであるものと示唆された。また、図14に示されるように、ANTではモノヒドロキシ化合物と思われるピークが2種類確認された(ピーク9、ピーク10)。それぞれのマススペクトルは非常に類似していたため、いずれのヒドロキシANTの構造類似体であることが示唆された。
【0052】
3環のPHE、ANTに対してもbphBが基質特異性を有しているという結果より、bphBは2環から3環の広範な芳香族化合物に対して基質特異性を有することが示された。bphBがモノヒドロキシ化合物を如何にして代謝しているのか、またbphBが本当にモノヒドロキシル化合物の代謝に関わっているのかは定かではないが、トランスポゾンによるbphBのノックアウトにより、各種PAHの代謝系が阻害されたこと、さらにいずれのPAH代謝産物からもジヒドロジオールが検出されず、モノヒドロキシ化合物のみが検出されたことから、TZS−7株がヒドロキシ化合物を介した代謝系を保有していることを強く示す結果が得られた。
【0053】
[実施例5]
各種PAHの分解によるヒドロキシ体への変換効率測定(定量)
これまで述べてきたように、Tn399はさまざまなPAHに対してヒドロキシル基を付加することができる優れた微生物である。しかしバイオプロセスによる工業生産を目的とした場合は、純粋なPAH−OHを大量に得ることがまず重要である。したがって、Tn399によるさまざまなPAHの変換効率について検証を行うこととした。
(1)休止菌体の調製、休止菌体反応、PAH分解産物の抽出
Tn399の休止菌体調製法、休止菌体反応については、前述と同様に行った。PAHのヒドロキシ化合物への変換効率を測定するために、ヒドロキシ化合物の定量にヒドロキシDBTの検量線を用いた。
Tn399によるPAHの変換効率を、表1に示す。最も高い変換効率が確認されたのは1,2−NTで、90%前後であった。続いてPHE、DBT、DBD、2,1−NT、ANTの順で変換効率が高く、それぞれ30〜60%程度の効率が確認された。
【0054】
【表1】

【0055】
これらのことから、本発明によれば、芳香族化合物のモノヒドロキシ体を効率よく製造できることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】従来知られているジゲンゾチオフェン環開裂分解経路を示した図である。
【図2】本実施例においてトランスポゾンにより破棄されるbphB遺伝子の塩基配列を示す図である。
【図3】TZS−7におけるbphBと各種微生物のアミノ酸配列アライメントを示す図である。図中、矢印は、TZS−7のbphB遺伝子にも保存されている核酸結合モチーフと触媒活性部位を示している。TZS-7 bphB aa Seq:TZS-7株のbphB、pNL1: Sphingomonas aromaticivorans F199株のbphB、SDHD: Sphingomonas sp. BN6株のORF4、DOXE: Pseudomonas putida C18株のDoxE、KKS.BPHB: Pseudomonas sp. KKS102株のbphBをそれぞれ表す。
【図4】TZS−7及びTn399のNB培地における生育曲線を示すグラフである。
【図5】Tn399におけるDBT分解産物のGC/MS解析を示すグラフであり、(A)は野生株のDBT分解産物GCクロマトグラム、(B)はTn399のDBT分解産物GCクロマトグラム、(C)はTn399において検出されたDBT中間代謝物(ピーク1)のマススペクトルをそれぞれ示す。
【図6】Tn399におけるDBT分解産物の1H−NMRのスペクトルである。
【図7】本発明の実施例で用いられた芳香族化合物の一覧である。
【図8】Tn399におけるDBF分解産物のGC/MS解析を示すグラフであり、(A)はDBF分解産物のGCクロマトグラム、(B)は、(A)におけるピーク2のマススペクトルを示す。
【図9】Tn399におけるDBD分解産物のGC/MS解析を示すグラフであり、(A)は、Tn399におけるDBD分解産物のGCクロマトグラム、(B)は、(A)におけるピーク3のマススペクトルを示す。
【図10】Tn399におけるBPH分解産物のGC/MS解析を示すグラフであり、(A)は、Tn399のBPH分解産物のGCクロマトグラム、(B)は、(A)におけるピーク4のマススペクトル、(C)は、(A)におけるピーク5のマススペクトルをそれぞれ示す。
【図11】Tn399における1,2−NT分解産物のGC/MS解析を示すグラフであり、(A)は、Tn399の1,2−NT分解産物のGCクロマトグラム、(B)は、(A)におけるピーク6のマススペクトルを示す。
【図12】Tn399における2,1−NT分解産物のGC/MS解析を示すグラフであり、(A)は、Tn399の2,1−NT分解産物のGCクロマトグラム、(B)は、(A)におけるピーク7のマススペクトルを示す。
【図13】Tn399におけるPHE分解産物のGC/MS解析を示すグラフであり、(A)は、Tn399のPHE分解産物のGCクロマトグラム、(B)は、(A)におけるピーク8のマススペクトルを示す。
【図14】Tn399におけるANT分解産物のGC/MS解析を示すグラフであり、(A)は、Tn399のANT分解産物のGCクロマトグラム、(B)は、(A)におけるピーク9及び10のマススペクトルを示す。示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族化合物を、多環芳香族化合物分解酵素(bphB)の酵素活性が抑制された微生物又はその微生物の細胞内容物と接触させることを特徴とする芳香族モノヒドロキシ体の製造方法。
【請求項2】
前記bphBの酵素活性の抑制が、bphB遺伝子の発現抑制及び遺伝子破壊並びにbphB活性阻害剤の使用からなる群より選択された少なくとも1つによって行われることを特徴とする請求項1記載の芳香族モノヒドロキシ体の製造方法。
【請求項3】
前記微生物が、グラム陽性菌及びグラム陰性菌から成る群より選択された少なくとも1つであることを特徴とする請求項1又は2記載の芳香族モノヒドロキシ体の製造方法。
【請求項4】
前記微生物が、Sphingomonas属、Pseudomonas属、Rhodococcus属からなる群より選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の芳香族モノヒドロキシ体の製造方法。
【請求項5】
前記微生物が、Sphingomonas属の株であることを特徴とする請求項1又は2記載の芳香族モノヒドロキシ体の製造方法。
【請求項6】
前記芳香族化合物が、多環芳香族化合物及び芳香族アミノ酸からなる群より選択されたものであることを特徴とする請求項1記載の芳香族モノヒドロキシ体の製造方法。
【請求項7】
前記芳香族化合物が、ヘテロ原子を含む又は含まない炭素数5〜50の芳香族化合物であることを特徴とする請求項1記載の芳香族モノヒドロキシ体の製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の製造方法によって得られた芳香族モノヒドロキシ体。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−314224(P2006−314224A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138465(P2005−138465)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】