説明

芳香族水素添加触媒および方法

SiOおよび第IV族金属酸化物(TiOまたはZrOなど)を含む結晶骨格を有するMCM−41触媒が提供される。触媒は、酸性度が低く、炭化水素原料材の芳香族飽和を含む方法で用いるのに適切である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族を含む炭化水素原料ストリームを処理するための新規触媒、およびその触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
歴史的に、水素仕上げ技術は、非晶質担体上に担持された塩基および貴金属の両触媒を用いている。貴金属触媒により、優れた色相および酸化安定性は、塩基金属触媒を用いる場合に必要とされるものより小さな反応器容積を用いて、より低圧低温で達成することができる。より高い処理温度では、色相の品質は、十分な酸化安定性を達成するのに犠牲にされる。貴金属触媒により、優れた色相安定性(ウォーターホワイト)、優れた酸化安定性、および芳香族の殆ど完全な除去を得ることが可能である。しかし、貴金属触媒は、硫黄によって被毒され、非常に低い硫黄レベルを含む原料を水素仕上げするのに用いられるのみである。
【0003】
(特許文献1)には、潤滑油沸点範囲の原料ストリームの水素添加方法が記載される。これは、Pt、Pd、およびそれらの混合物から選択される少なくとも一種の第VIII族貴金属を、平均細孔直径約15〜約40Å未満を有する担体物質上に担持して含む触媒を用いる。少なくとも一種の第VIII族貴金属のための担体物質には、MCM−41メソポーラス担体物質が含まれ得る。SiOおよびAlから構成されるMCM−41担体物質などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0070917号明細書
【特許文献2】米国特許第5,098,684号明細書
【特許文献3】米国特許第5,573,657号明細書
【特許文献4】米国特許第5,837,639号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「工業用途における形状選択性触媒(Shape Selective Catalysis in Industrial Applications)」、36 CHEMICAL INDUSTRIES、41〜61頁(1989年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
依然として、炭化水素原料の水素仕上げおよび芳香族飽和のための向上した触媒および/または方法に対する技術的な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態においては、焼成後に、直径少なくとも約15Åを有しかつd100値約18Å超で指標化することができる六方晶系回折パターンを示す六方晶系配置の均一サイズ細孔を有する無機多孔質結晶質相物質を含む物質の組成が提供される。無機多孔質結晶質相物質は、SiOおよびXOを含み、式中、Xは第IV族金属であり、かつ無機多孔質結晶質相物質は、SiO:XO比約100:1以下を有する合成混合物から形成される。任意に、無機多孔質結晶質相物質には、さらに、第VIII族貴金属から選択される水素添加−脱水素成分が含まれ得、かつ無機結晶物質は、水素添加−脱水素成分の担体として資する。
【0008】
他の実施形態においては、SiOおよびXO(式中、Xは第IV族金属である)を含む結晶骨格を有するMCM−41担体物質を含む触媒が提供される。MCM−41担体物質は、合成混合物におけるSiO:XO比約100:1以下を有する合成混合物から形成される。触媒にはまた、第VIII族貴金属から選択される少なくとも一種の水素添加−脱水素成分が含まれる。
【0009】
さらに他の実施形態においては、SiOおよびXOを含む結晶骨格を有するMCM−41担体物質を含む触媒が提供される。MCM−41は、SiO:XO比約7.5:1〜約100:1を有する合成混合物から形成される。これらの実施形態においては、Xは、TiまたはZrであり、MCM−41担体物質の平均細孔直径は、約15Å〜約40Å未満である。触媒にはまた、第VIII族貴金属から選択される少なくとも一種の水素添加−脱水素成分が含まれる。
【0010】
一実施形態においては、炭化水素原料ストリームを芳香族飽和するための方法が提供される。本方法には、芳香族を含む炭化水素原料ストリームを、効果的な芳香族水素添加条件下に運転される第一の反応段において、水素含有処理ガスの存在下に、水素添加触媒と接触させる工程が含まれる。水素添加触媒には、焼成後に、直径少なくとも約15Åを有しかつd100値約18Å超で指標化することができる六方晶系回折パターンを示す六方晶系配置の均一サイズ細孔を有する無機多孔質結晶質相物質が含まれる。無機多孔質結晶質相物質は、SiOおよびXOを含み、式中、Xは第IV族金属であり、かつ無機多孔質結晶質相物質は、SiO:XO比約100:1以下を有する合成混合物から形成される。水素添加触媒にはまた、第VIII族貴金属から選択される少なくとも一種の水素添加−脱水素成分が含まれる。
【0011】
他の実施形態においては、炭化水素原料ストリームを芳香族水素添加するための方法が提供される。本方法には、芳香族、窒素、および有機的結合硫黄汚染物を含む炭化水素原料ストリームを、効果的な水素化条件下に運転される第一の反応段において、水素含有処理ガスの存在下に、少なくとも一種の第VIII族金属酸化物および少なくとも一種の第VI族金属酸化物を含む水素化触媒と接触させる工程が含まれる。これは、少なくとも蒸気生成物および液体炭化水素生成物を含む反応生成物を製造する。反応生成物を、効果的な芳香族水素添加条件下に運転される第二の反応段において、水素含有処理ガスの存在下に、水素添加触媒と接触させる。水素添加触媒には、SiOおよびXO(式中、Xは第IV族金属である)を含む結晶骨格を有するMCM−41担体物質が含まれる。MCM−41担体物質は、合成混合物におけるSiO:XO比約100:1以下を有する合成混合物から形成される。水素添加触媒にはまた、第VIII族貴金属から選択される少なくとも一種の水素添加−脱水素成分が含まれる。
【0012】
さらに他の実施形態においては、炭化水素原料ストリームを水素処理するための方法が提供される。本方法には、芳香族を含む炭化水素原料ストリームを、効果的な接触脱ロウ条件下に運転される第一の反応段において、水素含有処理ガスの存在下に、接触脱ロウ触媒と接触させ、それにより反応生成物を製造する工程が含まれる。反応生成物を、次いで、効果的な芳香族水素添加条件下に運転される第二の反応段において、水素含有処理ガスの存在下に、水素添加触媒と接触させる。水素添加触媒には、SiOおよびXO(式中、Xは第IV族金属である)を含む結晶骨格を有するMCM−41担体物質が含まれる。MCM−41担体物質は、合成混合物におけるSiO:XO比約100:1以下を有する合成混合物から形成される。水素添加触媒にはまた、第VIII族貴金属から選択される少なくとも一種の水素添加−脱水素成分が含まれる。
【0013】
さらに他の実施形態においては、炭化水素原料ストリームを水素処理するための方法が提供される。本方法には、芳香族を含む炭化水素原料ストリームを、効果的な芳香族水素添加条件下に運転される第一の反応段において、水素含有処理ガスの存在下に、水素添加触媒と接触させ、それにより反応生成物を製造する工程が含まれる。水素添加触媒には、SiOおよびXO(式中、Xは第IV族金属である)を含む結晶骨格を有するMCM−41担体物質が含まれる。MCM−41担体物質は、合成混合物におけるSiO:XO比約100:1以下を有する合成混合物から形成される。水素添加触媒にはまた、第VIII族貴金属から選択される少なくとも一種の水素添加−脱水素成分が含まれる。反応生成物を、次いで、効果的な接触脱ロウ条件下に運転される第二の反応段において、水素含有処理ガスの存在下に、接触脱ロウ触媒と接触させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の結晶質担体物質のX線回折スペクトルを示す。
【図2】本発明の結晶質担体物質のX線回折スペクトルを示す。
【図3】本発明の結晶質担体物質のX線回折スペクトルを示す。
【図4】本発明の結晶質担体物質のX線回折スペクトルを示す。
【図5】種々の触媒による炭化水素原料材の芳香族飽和の結果を示す。
【図6】種々の触媒による炭化水素原料材の芳香族飽和の結果を示す。
【図7】種々の触媒による炭化水素原料材の芳香族飽和の結果を表す。
【図8】種々の触媒による炭化水素原料材の芳香族飽和の結果を表す。
【図9】種々の触媒による炭化水素原料材の芳香族飽和の結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、芳香族を含む炭化水素原料ストリームを水素添加するための向上された触媒および水素添加方法を提供する。本発明の触媒には、第IV族金属(チタンまたはジルコニウムなど)を有する無機多孔質非層状結晶質相物質(MCM−41など)から構成される担体が含まれる。これは、主に、シリカから構成される結晶骨格に組込まれる。骨格内のチタンおよび/またはジルコニウムの存在は、骨格内に組込まれたシリカ、またはシリカおよびアルミナのみを有する触媒に比較して、水素添加および/または芳香族飽和のための触媒性能を、触媒の酸性度を増大することなく、予想外に向上する。好ましくは、本発明の触媒にはまた、チタン含有またはジルコニウム含有担体上に担持されたPt、Pd、またはそれらの混合物が含まれる。担体は、任意に、一種以上の結合剤と結合することができる。アルミナ、シリカ、チタニア、イットリア、ジルコニア、酸化ガリウム、シリカ−アルミナ、またはそれらの組み合わせなどである。
【0016】
本発明の担体は、水素添加−脱水素成分と組み合わされる場合には、水素添加触媒を、原料ストリームの水素添加および芳香族飽和の両方に用いることができるという理解の下で、以下に水素添加触媒と呼ばれるであろう。同様に、水素添加方法とは、原料ストリームの水素添加または芳香族飽和のいずれかをいうことができる。
【0017】
本発明の触媒による水素添加に適切な原料ストリームには、水素添加または芳香族飽和が望ましい任意の従来の炭化水素原料ストリームが含まれる。これらの原料ストリームには、炭化水素流体、ディーゼル、灯油、および潤滑油原料ストリームが含まれ得る。これらの原料ストリームにはまた、他の留出油原料ストリームが含まれ得る。これには、ワックス含有原料ストリーム(原油、シェール油、およびタールサンドから誘導される原料など)が含まれる。フィッシャー−トロプシュプロセスから誘導されるものなどの合成原料はまた、本発明の触媒を用いて芳香族飽和することができる。潤滑基油を調製するのに典型的なワックス含有原料材は、初留点約315℃以上を有し、これには、抜頭原油、水素化分解油、ラフィネート、水素化油、常圧ガス油、減圧ガス油、コーカーガス油、常圧および減圧残油、脱瀝油、スラックワックス、およびフィッシャー−トロプシュワックスなどの原料が含まれる。これらの原料は、蒸留塔(常圧および減圧)、水素化分解装置、水素化装置、および溶剤抽出装置から誘導されてもよく、ワックス含有量50%以下またはそれより多く有してもよい。好ましい潤滑油沸点範囲の原料ストリームには、570〜760°Fの範囲で沸騰する原料ストリームが含まれる。ディーゼル沸点範囲の原料ストリームには、480〜660°Fの範囲で沸騰する原料ストリームが含まれる。灯油沸点範囲の原料ストリームには、350〜617°Fの範囲で沸騰する原料ストリームが含まれる。
【0018】
本明細書で用いるのに適切な炭化水素原料ストリームはまた、芳香族、ならびに窒素および硫黄汚染物を含む。原料ストリームを基準として、窒素0.2wt%以下、硫黄3.0wt%以下、および芳香族50wt%以下を含む原料ストリームを、本方法で用いることができる。種々の実施形態においては、原料ストリームの硫黄含有量は、約500wppm未満、または約300wppm未満、または約200wppm未満、または約100wppm未満、または約20wppm未満であってもよい。芳香族水素添加方法において用いられる圧力は、原料ストリーム中の予想硫黄含有量に基づいて、変更することができる。高ワックス含有量を有する原料は、典型的には、200以下またはそれより多くの高粘度指数を有する。硫黄および窒素含有量は、それぞれ、標準ASTM法D5453およびD4629によって測定されてもよい。
【0019】
一実施形態においては、本発明は、触媒、および炭化水素原料ストリームをこれらの触媒(担体物質、結合剤物質、および少なくとも一種の水素添加−脱水素成分を含む)と接触させる方法を含む。好ましくは、担体物質は、無機多孔質非層状結晶質相物質であり、(その焼成形態で)d−間隔約18Å超で少なくとも一つのピーク(相対強度100)を有するX線回折パターンによって特徴付けられる。好ましくは、担体物質はまた、50トル(6.67kPa)および25℃で、物質100グラム当たりベンゼン15グラム超のベンゼン吸着能を有するものとして特徴付けられる。好ましくは、担体物質は、最大直交断面細孔寸法少なくとも約15〜約100Å未満を有する均一サイズ細孔の六方晶系配置を有する。より好ましくは、担体物質は、MCM−41担体物質である。MCM−41は、直径少なくとも13Åの六方晶系配置された均一サイズ細孔の特性構造を有し、d100値約18Å超で指標化することができる六方晶系電子回折パターンを示す。これは、X線回折パターンにおける少なくとも一つのピークに相当する。MCM−41はまた、(特許文献2)、(特許文献3)、および(特許文献4)に記載される。
【0020】
一般に、本発明の結晶質担体物質は、式Mn/q(W)の組成を有する。この式においては、Wは、二価元素であり、これは、二価第一列遷移金属、好ましくはマンガン、コバルト、鉄、および/またはマグネシウム、より好ましくはコバルトから選択される。Xは、三価元素、好ましくはアルミニウム、ホウ素、鉄、および/またはガリウム、より好ましくはアルミニウムである。Yは、ケイ素、チタン、ジルコニウム、および/またはゲルマニウムなどの四価元素である。好ましくは、ケイ素およびチタンである。Zは、五価元素である。リンなどである。Mは、例えば、アンモニウム、第IA族、第IIA族、および第VIIB族イオンなどの一種以上のイオンである。通常、水素、ナトリウム、および/またはフッ化物イオンである。「n」は、酸化物として表されるMを除いて、組成物の電荷であり、qは、Mの重量モル平均原子価であり、n/qは、Mのモル数またはモル分率であり、a、b、c、およびdは、それぞれ、W、X、Y、およびZのモル分率であり、hは、1〜2.5の数であり、(a+b+c+d)=1である。本明細書で用いるのに適切な結晶質担体物質の好ましい実施形態においては、aおよびd=0、ならびにh=2である。好ましい実施形態においては、これらの結晶質担体物質は、MCM−41担体物質である。
【0021】
合成されたままの形態においては、本明細書で用いるのに適切な担体物質は、無水物基準で、式rRMn/q(W)によって実験的に表される組成を有する。式中、Rは、M中にイオンとして含まれない全ての有機物質であり、rは、Rの係数、すなわちRのモル数またはモル分率である。MおよびR成分は、結晶化中にそれらが存在する結果として、物質に付随され、容易に除去されるか、またはMの場合には、次に記載される後結晶化方法によって置き換えられる。所望の程度に、本発明の合成されたままの物質である元のM(例えばナトリウムまたは塩化物)イオンは、従来のイオン交換技術にしたがって置き換えてもよい。好ましい置換イオンには、金属イオン、水素イオン、水素前駆体(例えばアンモニウム)イオン、およびこれらのイオンの混合物が含まれる。特に好ましいイオンは、所望の金属官能基を最終触媒中に提供するものである。これらには、元素周期律表の水素、希土類金属、第VIIA族金属(例えばMn)、第VIIIA族金属(例えばNi)、第IB族金属(例えばCu)、第IVB族金属(例えばSn)、およびこれらのイオンの混合物が含まれる。
【0022】
次の記載においては、結晶質担体物質の形成は、特定比率の物質を含む合成混合物について記載されるであろう。例えば、物質には、シリカ(SiO)素材、アルミナ(Al)素材、チタニア(TiO)素材、またはジルコニア(ZrO)素材が含まれ得る。混合物をいう一つの方法は、単純に、各成分について用いられる比率を引用することである。例えば、シリカおよびチタニアの両方を含む合成混合物については、SiO/TiO比は、100:1以下であり得る。しかし、アルミナ(Al)の基本単位は、2個のアルミニウム原子を含み、一方TiOおよびZrOは、それぞれ、単に1個の金属原子を含むことに注目されたい。これを説明するために、アルミナを含む混合物、およびチタニアまたはジルコニアを含む混合物を比較する場合には、次の実施例は、しばしば、SiO/(TiOまたは(ZrOの比率を引用するであろう。SiO/TiO比100:1は、SiO/(TiO比200:1と同じであることは、容易に理解することができる。
【0023】
種々の実施形態においては、本発明で用いられる結晶質担体物質は、特定比率のSiO/(TiOを含む合成混合物から形成される。これらの実施形態においては、結晶質担体物質を形成するのに用いられる合成混合物は、SiO/(TiO比200:1以下、または150:1以下、または120:1以下、または100:1以下、または90:1以下、または80:1以下、または60:1以下、または50:1以下、または30:1以下を有する。上記されるように、これらの比率は、SiO/TiO比100:1以下〜15:1以下に対応する。他の実施形態においては、担体物質は、SiO/(TiO比少なくとも15:1、または少なくとも20:1、または少なくとも25:1、または少なくとも30:1、または少なくとも40:1を有する合成混合物から形成される。上記されるように、これらの比率は、SiO/TiO比少なくとも7.5:1〜少なくとも20:1に対応する。これは、Ti約3wt%〜約6wt%を含む結晶質担体物質をもたらす。さらに他の実施形態においては、本発明で用いられる結晶質担体物質は、SiO/(ZrO比200:1以下、または150:1以下、または120:1以下、または100:1以下、または90:1以下、または80:1以下、または60:1以下、または50:1以下、または30:1以下を有する合成混合物から形成される。上記されるように、これらの比率は、SiO/ZrO比100:1以下〜15:1以下に対応する。さらに他の実施形態においては、担体物質は、SiO/ZrO比少なくとも15:1、または少なくとも20:1、または少なくとも25:1、または少なくとも30:1、または少なくとも40:1を有する合成混合物から形成される。上記されるように、これらの比率は、SiO/ZrO比少なくとも7.5:1〜少なくとも20:1に対応する。これは、Zr約3wt%〜約6wt%を含む結晶質担体物質をもたらす。担体物質を形成するための合成混合物はまた、少量のアルミナを含んでもよい。これは、合成混合物中のシリカ/アルミナ比少なくとも250:1、または少なくとも500:1、または少なくとも700:1、または少なくとも800:1をもたらす。
【0024】
次の記載においては、MCM−41担体物質を含む種々の好ましい実施形態が、記載される。実質的にSiOから構成されるMCM−41担体物質(またはこれらの担体物質を含む触媒)は、Si−MCM−41と呼ばれるであろう。例えば、TiOまたはZrOを含まず、SiO:Al比200:1超を有する合成混合物から形成される結晶質担体は、Si−MCM−41と呼ばれるであろう。SiO:Al比200:1以下を有する合成混合物から形成される結晶質担体物質は、Al−MCM−41と呼ばれるであろう。SiO:(TiO比200:1以下を有する合成混合物から形成される結晶質担体物質は、Ti−含有MCM−41物質と呼ばれるであろう。SiO:(ZrO比200:1以下を有する合成混合物から形成される結晶質担体物質は、Zr−含有MCM−41物質と呼ばれるであろう。Ti−含有MCM−41物質およびZr−含有MCM−41物質の両方にはまた、少量のアルミナが含まれてもよく、SiO:Al比は、600:1〜800:1、または恐らくはそれ以上であることに注目されたい。
【0025】
種々の実施形態においては、担体物質は、それらの構造(顕著に大きな細孔窓を含む)、ならびにその高い収着能によって特徴付けられる結晶質メソポーラス担体物質である。ここで、結晶質とは、すなわち、例えばX線、電子、または中性子回折などによる回折パターン(焼成後には少なくともひとつのピークを有する)を示すのに十分な配列を有することを意味する。本明細書で用いられる用語「メソポーラス」とは、約13Å〜約200Åの均一細孔を有する結晶を示すことを意味する。本明細書で用いられる「多孔質」とは、多孔質物質100グラム当たり、小分子(Ar、N、n−ヘキサン、またはシクロヘキサンなど)少なくとも1グラムを吸着する物質をいうことを意味することに注目すべきである。次の記載においては、細孔サイズの値は、Ar−収着データによって決定されている。上述されるように、本発明は、Ar収着データに基づいて、平均細孔直径約15〜約40Å未満、好ましくは約15〜約35Å、より好ましくは約20〜約30Åを有する担体物質を用いるものとして特徴付けられる。他の実施形態においては、平均細孔直径は、少なくとも約15Å、または少なくとも約20Åである。さらに他の実施形態においては、平均細孔直径は、約40Å以下、または約35Å以下、または約30Å以下である。
【0026】
次の記載においては、平均細孔直径約15〜30Åを有する物質は、小細孔物質と呼ばれるであろう。平均細孔直径約35〜50Åを有する物質は、中間細孔物質と呼ばれるであろう。平均細孔直径60Å超を有する物質は、大細孔物質と呼ばれるであろう。物質の細孔サイズは、物質の合成混合物中に用いられる界面活性剤に対して、より長いまたはより短い炭素鎖を選択することによって、いくぶん制御することができる。
【0027】
本明細書で用いるのに適切な担体物質は、担体物質における大開口細孔の規則性によって、他の多孔質無機固体と区別することができる。本発明の担体物質における大開口細孔の細孔サイズは、非晶質または準結晶質物質の細孔サイズに、殆ど類似している。しかし、規則的配置およびサイズの均一性(単一相内の細孔サイズ分布が、その相の平均細孔サイズの、例えば±25%、通常±15%以下である)は、ゼオライトなどの結晶質骨格物質のものによく似ている。本明細書で用いるための担体物質はまた、六方晶系配置の大開口チャネルを有するものとして記載され得る。これは、Ar収着データに基づいて、開口の内径約15〜約40Å未満、好ましくは約15〜約35Å、より好ましくは約20〜約30Åを有して合成することができる。
【0028】
本明細書で用いられる用語「六方晶系」は、実験測定の制限内で、数学的に完全な六方対称を示す物質だけでなく、またその理想状態との実質的に観察可能なずれを有するものをも包含するものである。したがって、本明細書で用いるのに適切な担体物質を記載するのに用いられる「六方晶系」とは、物質中の殆どのチャネルが、ほぼ同じ距離で六個の最近接チャネルによって囲包されるであろう事実をいうことを意味する。しかし、担体物質中の欠陥および不完全性は、物質調製の品質により、相当数のチャネルがこの規準を異なる程度に破る原因になるであろうことが注目されるべきである。隣接するチャネルの間の平均繰返し距離からの無作為なずれの±25%程度を示す試料は、依然として明らかに、結晶質物質の認識可能な像を示す。比較可能な偏差はまた、電子回折パターンによるd100値に観察される。
【0029】
本明細書で用いるのに適切な担体物質は、当該技術分野で知られる任意の手段によって調製することができる。一般に、担体物質の最も標準的な調製物は、極度の低角度領域にいくつかの明瞭な最大値を有するX線回折パターンを示す。これらのピークの位置は、六方格子からのhkO反射の位置におよそ一致する。X線回折パターンは、しかし、微細構造中の規則性の程度および個々の粒子内の構造の繰返しの程度が、観測されるであろうピークの数に影響を及ぼすことから、これらの物質の存在の十分な指標であるとは限らない。実際には、唯一の明瞭なピークをX線回折パターンの低角度領域に有する調製物は、実質量の物質をその中に含むことが見出されている。この物質の微細構造を説明する他の技術は、透過型電子顕微鏡および電子回折である。適切な担体物質の適切に配向された種は、大きなチャネルの六方晶系配置を示し、対応する電子回折パターンは、回折最大値のほぼ六方晶系配置を示す。電子回折パターンのd100間隔は、六方格子のhkO投影上の隣接するスポット間の距離であり、電子顕微鏡写真で観測されるチャネル間の繰返し距離サブゼロと、式d100=a√3/2によって関係づけられる。電子回折パターンで観測されるこのd100間隔は、適切な担体物質のX線回折パターンにおける低角度ピークのd−間隔に対応する。これまで得られた適切な担体物質の最も高度に配列された調製物は、電子回折パターンに観測可能な20〜40個の明瞭なスポットを有する。これらのパターンは、100、110、200、210等の独特な反射、およびそれらの対称関連反射の、六方晶系hkOサブセットで指標化することができる。
【0030】
その焼成形態において、本明細書で用いるのに適切な担体物質はまた、d−間隔約18Å超(Cu K−アルファ照射放射の2θ4.909°)の位置に、少なくとも一つのピークを有するX線回折パターンによって特徴付けられてもよい。これは、担体物質の電子回折パターンのd100値に対応する。また、適切な担体物質は、50トル(6.67kPa)および25℃で、結晶100グラム当たりベンゼン約15グラム超の平衡ベンゼン吸着能を示す。(基準:必要に応じて、付随的な汚染物による細孔の閉塞を確実になくすように処理されている結晶物質。)
【0031】
適切な担体物質の平衡ベンゼン吸着能特性は、付随的な汚染物による細孔の閉塞が全くないものを基準として測定されることに注目すべきである。例えば、収着試験は、通常の方法によって除去された細孔閉塞汚染物および水を全く有さない結晶質物質相について行われるであろう。水は、脱水技術(例えば熱処理)によって除去されてもよい。細孔を閉塞する無機非晶質物質(例えばシリカおよび有機物)は、砕屑物質が結晶に有害な影響を及ぼすことなく除去されるように、酸または塩基、もしくは他の化学剤と接触させることによって除去されてもよい。
【0032】
好ましい実施形態においては、本明細書で用いるのに適切な焼成された結晶質非層状担体物質は、担体物質の電子回折パターンのd100値に対応するd−間隔約10Å超(Cu K−アルファ放射の2θ8.842°)の位置に、少なくとも二つのピークを有するX線回折パターンによって特徴付けることができる。その少なくとも一つは、d−間隔約18Å超の位置にあり、d−間隔約10Å未満の位置には、最強のピークの約20%超の相対強度を有するピークは全く存在しない。さらに、最も好ましくは、本発明の焼成物質のX線回折パターンは、d−間隔約10Å未満の位置には、最強のピークの約10%超の相対強度を有するピークを全く有さないであろう。いずれにしても、X線回折パターンにおける少なくとも一つのピークは、物質の電子回折パターンのd100値に対応するd−間隔を有するであろう。
【0033】
本明細書で用いるのに適切な焼成された無機非層状結晶質担体物質はまた、物理収着測定によって測定された細孔サイズ約13Å以上を有するものとして特徴付けることができる。本明細書で用いられる細孔サイズは、結晶の最大直交断面の細孔寸法と考えられることに注目すべきである。
【0034】
X線回折データは、シータ−シータジオメトリー、Cu K−アルファ放射、およびエネルギー分散型X線検出器を用いるScintag PAD X自動回折系で収集された。エネルギー分散型X線検出器の使用は、入射および回折ビームモノクロメーターの必要性をなくす。入射および回折X線ビームはいずれも、二重スリット入射および回折コリメーター系によって平行にされた。用いられるスリットのサイズは、X線管源から始まって、それぞれ、0.5、1.0、0.3、および0.2mmであった。異なるスリット系は、ピークに対して異なる強度をもたらしてもよい。最大細孔サイズを有する本発明の物質は、低角度ピークを透過された入射X線ビームから分解するために、より高度に平行化された入射X線ビームを必要としてもよい。
【0035】
回折データは、2θ=0.04゜(θは、Bragg角である)のステップ走査、および各ステップに対して10秒の計測時間によって記録された。格子面間隔(d)は、オングストローム(Å)で計算され、ラインの相対強度(I/I)(Iは、最強ラインの強度の100分の1である)は、バックグラウンド上で、プロフィル設定ルーチンを用いて誘導された。強度は、Lorentzおよび分極効果に対して補正されなかった。相対強度は、記号vs=非常に強い(75〜100)、s=強い(50〜74)、m=中程度(25〜49)、およびw=弱い(0〜24)として示される。単一の線として示される回折データは、複数の重なった線からなってもよい。これは、ある条件下(非常に高い実験的分解能または結晶学的変化など)では、分解または部分分解された線として現れてもよい。典型的には、結晶学的変化には、単位セルパラメータにおける軽微な変化、および/または結晶対称性における変化(実質的な構造変化はない)が含まれ得る。これらの軽微な影響は、相対強度の変化を含むが、これはまた、カチオン含有量、骨格組成、細孔充填の性質および程度、熱および/または熱水履歴、ならびにピーク幅/形状の変化(粒子のサイズ/形状効果、構造的無秩序、またはX線回折の当業者に知られた他の要因による)の結果として生じることができる。
【0036】
平衡ベンゼン吸着能は、脱水または焼成(例えば、約540℃で少なくとも約1時間)、および必要に応じて、いかなる細孔閉塞汚染物をも除去しようとする他の処理の後に、平衡が達成されるまで、25℃および50トルでベンゼンに接触させることによって決定される。収着されるベンゼンの重量は、次いで、次に記載されるように決定される。
【0037】
触媒物質のアンモニウム形態は、容易に、熱処理(焼成)によって水素形態へ転化されてもよい。この熱処理は、一般に、これらの形態の一つを、少なくとも400℃の温度で少なくとも1分間、一般には20時間以下、好ましくは約1〜約10時間加熱することによって行われる。準大気圧を熱処理に用いることができるものの、大気圧が、便宜上の理由で望ましい(空気、窒素、アンモニア等など)。熱処理は、温度約750℃以下で行ってもよい。熱処理された生成物は、特に、ある炭化水素転化反応の触媒作用に有用であり、物質は、本触媒で用いるためにこの形態であることが好ましい。
【0038】
本明細書で用いるのに適切な担体物質は、幅広い種類の粒子サイズに成形することができる。概して言えば、担体物質の粒子は、粉末、粒状、または成形生成物の形態であってもよい。2メッシュ(Tyler)スクリーンを通過し、400メッシュ(Tyler)スクリーン上に保持されるのに十分な粒子サイズを有する押出し成形物などである。最終触媒が、押出し成形によるなどで成形されるべきである場合には、担体物質の粒子は、乾燥前に押出し成形されるか、または部分的に乾燥され、次いで押出し成形することができる。
【0039】
本担体物質の細孔サイズは、それらが、分解などの反応において遷移状態の種に関して空間的選択性が最小化されるのに十分に大きいように制御される(Chenらによる(非特許文献1):これは、形状選択性に影響を及ぼす要因を議論するために引用される)。また、拡散限界はまた、非常に大きな細孔の結果として最小化されることが、注目されるべきである。
【0040】
本明細書で用いるのに適切な担体物質は、自己結合することができる(すなわち結合剤を含まない)。しかし、本発明はまた、適切な結合剤物質も含むことが好ましい。この結合剤物質は、本水素添加方法で用いられる温度および他の条件に耐性があると知られる任意の結合剤物質から選択される。担体物質は、結合剤物質と複合化されて、金属を添加することができる仕上げ触媒を形成する。本明細書で用いるのに適切な結合剤物質には、活性および不活性物質、ならびに無機物質(クレー、および/またはアルミナ、シリカ、またはシリカ−アルミナなどの酸化物など)が含まれる。チタニアまたはジルコニアなどのさらに他の酸化物もまた、用いてもよい。結合剤混合物もまた、用いてもよい。シリカ結合剤およびアルミナ結合剤の混合物(シリカ−アルミナ粒子から構成される結合剤とは異なる)などである。シリカ−アルミナ、アルミナ、チタニア、およびジルコニアは、好ましい結合剤物質であり、アルミナは、より好ましい結合剤担体物質である。シリカ−アルミナは、天然であるか、もしくはゼラチン状沈殿物またはゲル(シリカおよび金属酸化物の混合物を含む)の形態のいずれかであってもよい。物質をゼオライト結合剤物質(それ自体触媒活性がある)と組み合わせて用いること(すなわちそれと組み合わされるか、またはその合成中に存在する)は、仕上げ触媒の転化および/または選択性を変化させてもよいことに、注目すべきである。同様に、不活性物質は、転化の量を制御するための希釈剤として適切に資する。本発明がアルキル化方法で用いられる場合には、そのために、アルキル化生成物は、反応の速度を制御する他の手段を用いることなく、経済的かつ正常に得ることができる。これらの不活性物質は、天然クレー(例えばベントナイトおよびカオリン)中に組込まれて、商業的運転条件下での触媒の破砕強度が向上され、および触媒の結合剤または基質として機能してもよい。
【0041】
本明細書で用いるのに適切な水素添加触媒は、典型的には、複合化形態で、結合剤なしの担体物質(結合剤物質0部の担体物質100部)〜(担体物質20部/結合剤物質80部)の範囲のメソポーラス担体物質/結合剤物質比を含む。全ての比率は、重量で表される。一実施形態においては、担体物質/結合剤物質比は、約80:20〜約50:50である。他の好ましい実施形態においては、担体物質/結合剤物質比は、約65:35〜約35:65である。複合化は、物質を混和し、引続いて押出し成形(所望の仕上げ触媒粒子へペレット化する)を含む従来の手段によってなされてもよい。
【0042】
好ましい実施形態においては、本明細書で用いるのに適切な水素添加触媒はまた、第VIII族貴金属から選択される少なくとも一種の水素添加−脱水素成分を含む。水素添加−脱水素成分は、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、およびそれらの混合物、より好ましくは白金、パラジウム、およびそれらの混合物から選択されることが好ましい。本発明の水素添加−脱水素成分は、白金およびパラジウムであることが最も好ましい。
【0043】
水素添加−脱水素成分は、典型的には、約0.1〜約2.0wt%、好ましくは約0.2〜約1.8wt%、より好ましくは0.3〜約1.6wt%、最も好ましくは0.4〜約1.4wt%の範囲の量で存在する。全ての金属重量パーセントは、担体に関する。「担体に関する」とは、%が、担体、すなわち複合化担体物質および結合剤物質の重量に基づくことを意味する。例えば、担体が、重量100グラムである場合には、水素添加−脱水素成分20wt%は、水素添加−脱水素金属20グラムが担体上にあることを意味するであろう。
【0044】
水素添加−脱水素成分は、担体物質上へ交換されるか、それに含浸されるか、またはそれと物理的に混合することができる。水素添加/脱水素成分は、含浸によって組込まれることが好ましい。水素添加−脱水素成分が、複合化担体物質および結合剤に含浸されるか、またはそれへ交換されるべき場合には、それは、例えば、水素添加−脱水素成分を含む適切なイオンを用いて、複合物を処理することによってなされてもよい。水素添加−脱水素成分が白金である場合には、適切な白金化合物には、クロロ白金酸、塩化白金、および白金アミン錯体を含む種々の化合物が含まれる。水素添加−脱水素成分はまた、水素添加−脱水素成分が化合物のカチオンで存在する化合物、および/またはそれが化合物のアニオンで存在する化合物を用いることによって、複合化担体および結合剤物質に、それへ、またはそれと共に組込まれてもよい。カチオン化合物およびアニオン化合物はいずれも、用いることができることに注目すべきである。金属がアニオンまたはカチオン錯体の形態にある適切なパラジウムまたは白金化合物について、限定しない例は、Pd(NHClである。または、Pt(NHClは、バナジン酸およびメタタングステン酸のイオンなどのアニオン錯体であることから、特に有用である。他の金属のカチオン形態はまた、それらが、結晶質物質上へ交換されるか、まれに含浸されてもよいことから、非常に有用である。
【0045】
本発明の水素添加触媒は、炭化水素原料材を、効果的な水素添加条件下に運転される反応段において、水素含有ガスの存在下に処理するのに適切である。反応段は、一つ以上の反応器または反応域から構成されてもよく、そのそれぞれは、同じか、または異なる水素添加触媒(上記される)を有する一つ以上の触媒床を含むことができる。他のタイプの触媒床を用いることができるものの、固定床が好ましい。これらの他のタイプの触媒床には、流動床、沸騰床、スラリー床、および移動床が含まれる。反応器間、反応域間、または同じ反応器中の触媒床間の段間冷却または加熱を用いることができる。水素添加方法を実施中に発生するいかなる熱も一部分を回収することができる。この熱回収の選択肢が利用可能ではない場合には、従来の冷却が、冷却水または空気などの冷却設備、もしくは水素クエンチストリームを用いることによって行われてもよい。この方式で、最適反応温度は、より容易に維持することができる。
【0046】
水素添加方法で用いるのに適切な水素含有処理ガスは、実質的純水素から構成されてもよく、または製油所水素ストリーム中に典型的に見出される他の成分の混合物であってもよい。水素含有処理ガスストリームは、硫化水素を殆ど含まないことが好ましい。より好ましくは、全く含まない。水素含有処理ガスの純度は、水素少なくとも約50vol%、好ましくは水素少なくとも約75vol%、より好ましくは水素少なくとも約90vol%(最良の結果に対して)であるべきである。水素含有ストリームは、実質的に純水素であることが最も好ましい。
【0047】
炭化水素原料ストリームを、効果的な水素添加条件下に、水素添加触媒と接触させる。一実施形態においては、効果的な水素添加条件は、炭化水素原料ストリーム中に存在する芳香族の少なくとも一部分、好ましくは芳香族少なくとも約50wt%、より好ましくは約75wt%超が飽和される条件であると考えられるべきである。効果的な水素添加条件には、温度150℃〜400℃、水素分圧740〜20786kPa(100〜3000psig)、空間速度0.1〜10液空間速度(LHSV)、および水素/原料比89〜1780m/m(500〜10000scf/B)が含まれる。
【0048】
本発明の一実施形態においては、効果的な水素添加条件は、窒素および有機的結合硫黄汚染物の少なくとも一部分を除去し、前記芳香族の少なくとも一部分を水素添加し、したがって、ディーゼル沸点範囲の原料ストリームより低い濃度の芳香族ならびに窒素および有機的結合硫黄汚染物を有する、少なくとも液体ディーゼル沸点範囲の生成物を製造する際に効果的な条件である。
【0049】
上記されるように、いくつかの場合においては、炭化水素原料ストリームは、水素化されて、硫黄汚染物が約500wppm未満へ、好ましくは約300wppm未満へ、より好ましくは約200wppm未満へ低減される。これらの実施形態においては、本方法は、少なくとも二つの反応段を含む。第一は、効果的な水素化条件下に運転される水素化触媒を含み、第二は、上記される効果的な水素添加条件下に運転される、上記された水素添加触媒を含む。したがって、これらの実施形態においては、炭化水素原料ストリームは、最初に、効果的な水素化条件下に運転される第一の反応段において、水素含有処理ガスの存在下に水素化触媒と接触されて、潤滑油沸点範囲の原料ストリームの硫黄含有量が、上記される範囲内へ低減される。したがって、本明細書で用いられる用語「水素化」とは、水素含有処理ガスが、ヘテロ原子(硫黄および窒素など)を除去するのに活性である適切な触媒の存在下に用いられる方法をいう。本発明で用いるのに適切な水素化触媒は、任意の従来の水素化触媒であり、これには、少なくとも一種の第VIII族金属(好ましくはFe、Co、およびNi、より好ましくはCoおよび/またはNi、最も好ましくはCo)、および少なくとも一種の第VI族金属(好ましくはMoおよびW、より好ましくはMo)が、高表面積担体物質(好ましくはアルミナ)上に含まれる。一種以上のタイプ以上の水素化触媒が、同じ反応槽中で用いられることは、本発明の範囲内である。第VIII族金属は、典型的には、約2〜20wt%、好ましくは約4〜12%の範囲の量で存在する。第VI族金属は、典型的には、約5〜50wt%、好ましくは約10〜40wt%、より好ましくは約20〜30wt%の範囲の量で存在するであろう。全ての金属のwt%は、担体に関する。「担体に関する」とは、%が、担体の重量に基づくことを意味する。例えば、担体が重量100グラムである場合には、第VIII族金属20wt%は、第VIII族金属20グラムが担体上にあることを意味するであろう。
【0050】
効果的な水素化条件は、潤滑油沸点範囲の原料ストリームの硫黄含有量を、上記される範囲内へ効果的に低減できる条件と考えられるべきである。典型的な効果的な水素化条件には、温度約150℃〜約425℃、好ましくは約200℃〜約370℃、より好ましくは約230℃〜約350℃が含まれる。典型的な重量空間速度(「WHSV」)は、約0.1〜約20時−1、好ましくは約0.5〜約5時−1の範囲である。任意の効果的な圧力を用いることができる。圧力は、典型的には、約4〜約70気圧(405〜7093kPa)、好ましくは10〜40気圧(1013〜4053kPa)の範囲である。好ましい実施形態においては、前記効果的な水素化条件は、前記有機的結合硫黄汚染物の少なくとも一部分を除去し、前記芳香族の少なくとも一部分を水素添加し、したがって、潤滑油沸点範囲の原料ストリームより低い濃度の芳香族および有機的結合硫黄汚染物を有する、少なくとも液体潤滑油沸点範囲の生成物を製造する際に効果的な条件である。
【0051】
炭化水素原料ストリームと水素化触媒との接触は、少なくとも蒸気生成物および液体生成物を含む反応生成物を製造する。蒸気生成物は、典型的には、HSなどのガス状反応生成物を含み、液体反応生成物は、典型的には、低減されたレベルの窒素および硫黄汚染物を有する液体炭化水素を含む。全反応生成物は、第二の反応段に直接送ることができる。しかし、ガス状および液体反応生成物は分離され、液体反応生成物が、第二の反応段へ導かれることが好ましい。したがって、本発明の一実施形態においては、蒸気生成物および液体生成物は、分離され、液体生成物は、第二の反応段に送られる。蒸気生成物を液体生成物から分離する方法は、ガス状および液体反応生成物を分離する際に効果的であると知られる任意の手段によって達成することができる。例えば、ストリッピング塔または反応域が用いられて、蒸気生成物が、液体潤滑油沸点範囲の生成物から分離することができる。第二の反応段へこのように導かれる液体生成物は、約500wppmの範囲内、好ましくは約300wppm未満、より好ましくは約200wppm未満の硫黄濃度を有するであろう。
【0052】
さらに他の実施形態においては、本発明の触媒は、統合水素処理方法で用いることができる。本発明の触媒を含む水素仕上げおよび/または芳香族飽和方法に加えて、統合水素処理方法にはまた、水素化、水素化分解、接触脱ロウ(水素化脱ロウなど)、および/または溶剤脱ロウの種々の組み合わせが含まれ得る。水素化、続いて記載される水素仕上げという方式は、統合プロセスフローの一タイプを表す。他の統合処理の例は、脱ロウ工程(接触脱ロウまたは溶剤脱ロウのいずれか)、続いて本発明の触媒を用いる水素処理を有するものである。さらに他の例は、水素化、脱ロウ(接触または溶剤)、次いで本発明の触媒を用いる水素処理を含むプロセス方式である。さらに他の例は、本発明の触媒を用いる水素処理、続いて脱ロウ(接触または溶剤)である。あるいは、複数の水素仕上げおよび/または芳香族飽和工程が、水素化、水素化分解、または脱ロウ工程と共に用いることができる。これらのプロセスフローの例は、水素仕上げ、脱ロウ(接触または溶剤)、次いで再度の水素仕上げである。その際、水素仕上げ工程の少なくとも一つは、本発明の触媒である。接触脱ロウを含む方法については、効果的な接触脱ロウ条件には、温度250℃〜400℃、好ましくは275℃〜350℃、圧力791〜20786kPa(100〜3000psig)、好ましくは1480〜17338kPa(200〜2500psig)、液空間速度0.1〜10時−1、好ましくは0.1〜5時−1、および水素処理ガス速度45〜1780m/m(250〜10000scf/B)、好ましくは89〜890m/m(500〜5000scf/B)が含まれる。任意の適切な脱ロウ触媒が用いられてもよい。
【0053】
上記の説明は、本発明のいくつかの実施形態に関連する。当業者は、等しく効果的な他の実施形態が、本発明の精神を実施するのに案出され得ることを理解するであろう。
【0054】
次の実施例は、本発明の水素添加触媒および対応する水素添加方法について、向上された効果を説明する本発明の実施形態を示す。
【実施例】
【0055】
実施例1:SiO/(TiO(=約50/1)を有する小細孔Ti−MCM−41の調製
混合物を、水620g、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)35%溶液250g、ARQUAD 12/37溶液(C12界面活性剤、Akzo−Nobelから入手可能である)370g、エタノール40g中チタンエトキシド38.4g溶液、およびUltrasil 170gから調製した。混合物は、次のモル組成を有した。
SiO/(TiO 約50/1
O/SiO 約22
TEAOH/界面活性剤 約1
SiO/界面活性剤 約6
【0056】
混合物を、2リットルのオートクレーブ中で、90RPMで撹拌しながら265゜F(129.5℃)で36時間反応させた。生成物をろ過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、引続いて250゜F(120℃)で乾燥し、1000゜F(540℃)で6時間焼成した。図1は、合成されたままの物質のXRDパターンを示す。図1は、小細孔(<30Å)MCM−41トポロジーの純相に対する典型的な識別特性を示す。合成されたままの物質のSEMは、物質が、小結晶の凝集物から構成されたことを示した。得られたTi−MCM−41結晶は、Ti約4.35wt%および表面積1276m/gを含んだ。
【0057】
実施例2:SiO/(TiO(=約50/1)を有する小細孔Ti−MCM−41の調製
混合物を、水620g、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)35%溶液250g、ARQUAD 12/37溶液370g、エタノール溶液40g中チタンエトキシド38.4g、およびUltrasil 170gから調製した。混合物は、次のモル組成を有した。
SiO/(TiO 約50/1
O/SiO 約22
TEAOH/界面活性剤 約1
SiO/界面活性剤 約6
【0058】
混合物を、2リットルのオートクレーブ中で、90RPMで撹拌しながら212゜F(100℃)で48時間反応させた。生成物をろ過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、引続いて250゜F(120℃)で乾燥し、1000゜F(540℃)で6時間焼成した。図2は、合成されたままの物質のXRDパターンを示す。これは、純相の小細孔(<30Å)MCM−41トポロジーに対する典型的な識別特性を示す。合成されたままの物質のSEMは、物質が、小結晶の凝集物から構成されたことを示した。得られたTi−MCM−41結晶は、Ti約4.3wt%および表面積1170m/gを含んだ。
【0059】
実施例3:SiO/(TiO(=約50/1)を有する小細孔Ti−MCM−41の調製
混合物を、水805g、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)35%溶液250g、ARQUAD 12/37溶液185g、n−デシルメチルアンモニウムブロミド61g、エタノール溶液40g中チタンエトキシド38.4g、およびUltrasil 170gから調製した。混合物は、次のモル組成を有した。
SiO/(TiO 約50/1
O/SiO 約22
TEAOH/界面活性剤 約1
SiO/界面活性剤 約6
【0060】
混合物を、2リットルのオートクレーブ中で、90RPMで撹拌しながら212゜F(100℃)で36時間反応させた。生成物をろ過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、引続いて250゜F(120℃)で乾燥し、1000゜F(540℃)で6時間焼成した。図3は、合成されたままの物質のXRDパターンを示す。これは、小細孔(<30Å)MCM−41トポロジーの純相に対する典型的な識別特性を示す。合成されたままの物質のSEMは、物質が、小結晶の凝集物から構成されたことを示した。得られたTi−MCM−41結晶は、Ti4.62wt%および表面積1186m/gを含んだ。
【0061】
実施例4:SiO/(TiO(=約60/1)を有する大細孔Ti−MCM−41の調製
混合物を、水737g、NaOH50%溶液56.1g、ARQUAD 16/29溶液(C16界面活性剤)305.8g、メシチレン99%溶液198.1g、エタノール溶液30g中チタンエトキシド31.5g、およびUltrasil 181.5gから調製した。混合物は、次のモル組成を有した。
SiO/(TiO 約60/1
O/SiO 約20
Na/界面活性剤 約0.252
SiO/界面活性剤 約10
メシチレン/界面活性剤 約6
【0062】
混合物を、2リットルのオートクレーブ中で、250RPMで撹拌しながら240゜F(115.5℃)で24時間反応させた。生成物をろ過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、引続いて250゜F(120℃)で乾燥し、1000゜F(540℃)で6時間焼成した。図4は、合成されたままの物質のXRDパターンを示す。これは、大細孔(>60Å)MCM−41トポロジーの典型的な純相を示す。合成されたままの物質のSEMは、物質が、小結晶の凝集物から構成されたことを示す。得られたTi−MCM−41結晶は、Ti2.61wt%および表面積771m/gを含んだ。
【0063】
実施例5:SiO/(ZrO(=約50/1)を有する小細孔Zr−MCM−41の調製
混合物を、水620g、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)35%溶液250g、ARQUAD 12/37溶液370g、水40g中ジルコニルクロライド8HO 14g、およびUltrasil 170gから調製した。混合物は、次のモル組成を有した。
SiO/(ZrO 約50/1
O/SiO 約22
TEAOH/界面活性剤 約1
SiO/界面活性剤 約6
【0064】
混合物を、2リットルのオートクレーブ中で、90RPMで撹拌しながら265゜F(129.5℃)で36時間反応させた。生成物をろ過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、引続いて250゜F(120℃)で乾燥し、1000゜F(540℃)で6時間焼成した。合成されたままの物質のXRDパターンは、小細孔(<30Å)MCM−41トポロジーの典型的な純相を示した。合成されたままの物質のSEMは、物質が、小結晶の凝集物から構成されたことを示す。得られたZr含有MCM−41結晶は、空気中540℃での焼成後、Zr約2.36wt%および表面積1138m/gを含んだ。
【0065】
実施例6:Ti含有およびZr含有MCM−41物質と、Al−MCM−41およびSi−MCM−41との比較
一連の触媒を、Si−MCM−41(SiO:Al比=600:1〜800:1かつ中間細孔直径の開口)、Al−MCM−41の二変種(SiO:Al=50:1かつ中間細孔直径の開口、SiO:Al=25:1かつ小細孔直径の開口)、およびTi−MCM−41(SiO:(TiO=25:1かつ小細孔直径の開口)を用いて作製した。小細孔物質は、C12界面活性剤を用いて調製され、一方中間細孔物質は、C16界面活性剤を用いて調製された。次の実施例においては、MCM−41メソポーラス物質を、合成し、洗浄し、フィルターケーキに調製した。フィルターケーキを、乾燥し、次いで窒素中約540℃で予備焼成した。予備焼成MCM−41物質を、次いで、アルミナ結合剤と65:35重量比で混合し、1/16インチ円筒に押出し成形した。押出し成形物を、乾燥し、次いで空気中約538℃で焼成した。焼成押出し成形物を、次いで、白金0.3wt%およびパラジウム0.9wt%で共含浸し、120℃で乾燥した。触媒を、次いで、空気中304℃の最終焼成に付して、白金およびパラジウム化合物が分解された。
【0066】
比較のために、非晶質触媒を、アルミナ80%およびシリカ20%を1/16インチ円筒に押出し成形することによって作製した。押出し成形物を、乾燥し、次いで空気中約538℃で焼成した。焼成押出し成形物を、次いで、白金0.3wt%およびパラジウム0.9wt%で共含浸し、120℃で乾燥した。触媒を、次いで、空気中304℃の最終焼成に付して、白金およびパラジウム化合物が分解された。
【0067】
仕上げ触媒の特性を、次に要約する。金属の分散は、酸素化学吸着によって測定されるが、仕上げ触媒全てに対して類似であることに注目されたい。金属の分散は、Ti含有MCM−41に対しては、MCM−41の他の変種より僅かに高いと思われる。これは、表に示される。ベンゼン水素添加活性指数は、全てのMCM−41物質に対して高く、より高い値は、骨格置換MCM−41物質に対して観察される。ベンゼン水素添加活性指数およびO化学吸着はいずれも、水素添加金属の単位量当りで標準化される。
【0068】
【表1】

【0069】
触媒の調製に引続いて、Ti含有MCM−41の性能を、Si−MCM−41およびAl−MCM−41試料、ならびに非晶質シリカーアルミナ試料に比較して、商業的に入手可能な炭化水素流体の水素仕上げを評価した。分析された際の炭化水素流体は、沸点範囲約520〜640゜F、硫黄および窒素<5ppm、ならびに芳香族約1.8wt%を有した。各触媒およそ20ccを、アップフロー型マイクロリアクターに充填した。80〜120メッシュの砂約15ccを、触媒へ加えて、均一な液体流が確保された。窒素および水素による圧力試験の後、触媒を、窒素中260℃で3時間乾燥し、室温へ冷却し、水素中約260℃で8時間活性化し、次いで150℃へ冷却した。次いで、油原料を導入し、運転条件を、1 LHSV、350psig、および1000scfH/bblへ調整した。反応器の温度を、175から220℃へ、約10日間に亘って昇温した。水素純度は、100%であり、ガスリサイクルは、全く用いられなかった。
【0070】
芳香族を、UV吸収(ppm)によって測定し、これを日々監視した。温度の関数としての全芳香族を、非晶質シリカ−アルミナ触媒、および異なるMCM−41物質を用いて作製された触媒に対して図5に示す。図5に示されるように、全てのMCM−41触媒は、非晶質シリカ−アルミナ触媒より、実質的に良好に性能を発揮した。
【0071】
図6は、まさにMCM−41触媒に焦点を合わせた図5のプロットの拡大図を示す。図6においては、温度約190℃以下におけるTi含有MCM−41触媒は、芳香族飽和方法後に残留する芳香族量の実質的な減少を示す。Ti含有MCM−41触媒は、芳香族含有量20ppm以下をもたらし、一方試験されたAl−MCM−41触媒は、芳香族含有量30ppm以上をもたらした。Ti含有MCM−41触媒はまた、芳香族飽和の最高比率を、他の触媒のいかなるものより低温で達成する。芳香族飽和に含まれる平衡過程は、温度が減少するにつれて、芳香族飽和に有利である傾向があり、そのために、より低温での触媒芳香族飽和に対する能力が、望まれる。より低温プロセスはまた、触媒寿命を向上すること、および運転コストを低減することの両方に、好ましい。
【0072】
実施例7:細孔サイズの効果
図7は、一連のTi含有MCM−41触媒について、細孔サイズを変動する効果を示す。図7においては、芳香族飽和方法を、硫黄210ppmおよび芳香族415ミリモル/kgを含む脱ロウ600N潤滑油原料材について行なった。脱ロウ油原料材を、275℃、2 LHSV、および1000psigで、図7に示される時間処理した。用いられたTi−MCM−41触媒は、細孔サイズ約15Å、約25Å、または約80Åを有した。三種の細孔サイズを全て、SiO:(TiO比80:1を有するTi−MCM−41に対して検討し、さらなる試験を、細孔サイズ約25Åおよび約40:1比を有する触媒に対して行なった。図7に示されるように、細孔サイズ約25Åを有するTi−MCM−41触媒は、最良の芳香族飽和を示し、細孔サイズ約80Åを有する触媒は、細孔サイズ約15Åを有する触媒より僅かに良好に性能を発揮した。
【0073】
実施例8:結合剤の効果
TiをMCM−41担体の骨格に加えることによる活性の向上は、単にTiOをMCM−41触媒の結合剤として用いることによっては、達成することができない。図8は、中間細孔サイズを有する一連のMCM−41触媒に対する芳香族飽和性能を示す。触媒には、Alと結合されたTi含有MCM−41触媒、Alと結合されたSi−MCM−41触媒、およびTiOと結合されたSi−MCM−41触媒が含まれる。これらの触媒を、原料材の芳香族飽和に用いた。その際、原料材およびプロセス条件は、実施例7に記載されるものに類似であった。図8に示されるように、アルミナおよびチタニア結合剤を用いるSi−MCM−41触媒は、類似の芳香族飽和を示した。対照的に、本発明のTi含有MCM−41触媒は、Si−MCM−41触媒に比較して、向上された活性を示した。
【0074】
実施例9:Zr含有MCM−41触媒の活性
類似の活性増大がZr含有MCM−41触媒に対して観察されることを確認するために、図7で用いられた方法に類似の芳香族飽和方法を、Zr含有MCM−41触媒(表1)、Si−MCM−41触媒、およびAl−MCM−41触媒(約50:1 SiO/Al比)について行なった。図9は、硫黄210ppmおよび芳香族415ミリモル/gを含む600N潤滑油原料材に関する芳香族飽和の実施に対して、各触媒の相対活性を示す。脱ロウ油原料材を、275℃、2 LHSV、および1000psigで、図9に示される時間処理した。図9に示されるように、Zr含有MCM−41触媒は、Al−MCM−41またはSi−MCM−41触媒の飽和性能に比較して、より大きな芳香族飽和を示した。
【0075】
実施例10:MCM−41触媒の酸性度
芳香族飽和活性の向上に加えて、Ti含有MCM−41触媒はまた、アルミナと結合された場合に、Si−MCM−41またはAl−MCM−41触媒より低い酸性度を有した。触媒の酸性度の低下は、水素仕上げまたは芳香族飽和方法において触媒に起因する副反応数を低減する。水素化分解などである。したがって、より低い酸性度の水素添加または芳香族飽和触媒は、所望の水素添加方法の実施に対して、一方収率の減損および/または処理原料油の特性の望ましくない変化を導くであろう水素化分解の低減に対して、より高い選択性を有するであろう。
【0076】
Ti含有MCM−41触媒のより低い酸性度を示すために、モデル化合物検討を、2−メチル−2−ペンテン(2MP2)の異性化に基づいて行なった。2MP2の異性化反応は、反応が、酸点の数ならびに酸点の酸強度の両方の検討を可能にすることから、モデル系として有用である。2MP2は、4−メチル−2−ペンテン(4MP2)、3−メチル−2−ペンテン(3MP2)、2,3ジメチル−2−ブテン(23DMB2)、および一連の他の異性体への異性化を経ることができる。この異性化は、酸性触媒点の存在によって促進される。3MP2、4MP2、および23DMB2への転化速度を、測定することができ、その情報は、酸点の相対数および酸点の相対酸性度を同定するのに用いられる。例えば、CT3MP2または23DMB2に対するより高い相対製造速度は、触媒が、より多数の酸点を有することを示す。利用可能な酸点の酸性度は、CT3MP2/CT4MP2または23DMB2/CT4MP2のいずれかの速度比によって示され、より高い値は、より高い酸強度を示す。
【0077】
一連のアルミナ結合MCM−41触媒物質を、モデル2−メチル−2−ペンテン(2MP2)原料を用いて試験した。原料を、各触媒1.0gへ、1.0atm、250℃、およびWHSV 2.4の条件で、通油2時間暴露した。触媒には、Ti含有MCM−41触媒、Al−MCM−41触媒、およびSi−MCM−41触媒(いずれも、SiO:Alの結合剤比65/35を有する)、他のSi−MCM−41触媒(結合剤比50/50を有する)、およびSi−MCM−41触媒(表面に析出されたPtおよびPdを有する)が含まれる。SiO:Al比87/13を有するシリカーアルミナ触媒をまた、結合触媒の参照として、比較のために示す。
【0078】
表2は、各触媒による2MP2のCT4MP2、CT3MP2、および23DMB2への転化に対する反応速度を示す。表2に示されるように、Ti−MCM−41触媒は、CT3MP2および23DMB2の相対製造速度に基づいて、酸点の低減された数を示す。したがって、Ti含有MCM−41触媒は、利用可能な酸点をより少なく有することに基づいて、より低い有効酸性度を有するであろう。
【0079】
【表2】

【0080】
表3は、各触媒によるCT4MP2、CT3MP2、および23DMB2への2MP2の転化に対する反応速度比を示す。転化反応に対する反応障壁の高さに基づく速度比の計算平衡値をまた、比較のために示す。表3に示されるように、Ti含有MCM−41触媒の酸点はまた、速度比の値によって示されるように、酸性度が低い。表2の値との組み合わせでは、これは、Ti含有MCM−41触媒は、より少ない酸点およびより低い酸性度の酸点の両方を有することを示す。これは、シリカ−アルミナ結合剤および他の形態のMCM−41のいずれかに比較して、Ti含有MCM−41のより低い全酸性度、したがって芳香族飽和/水素化分解反応のより高い期待選択性を示す。
【0081】
【表3】

【0082】
触媒または触媒担体の酸性度を特徴づける他の手段は、コリジン吸着試験によるものである。コリジンは、2,4,6−トリメチルピリジンの一般名である。コリジン吸着試験は、大細孔ゼオライトおよび/またはメソポーラス物質の酸性度を決定するのに用いることができる特性化手法である。MCM−41は、メソポーラス物質の例である。より多量のコリジンを吸着する物質は、より多数の接触可能な酸点を有する物質に対応する。
【0083】
種々のタイプのMCM−41物質(結合剤なし)における酸点の数は、200℃におけるコリジンの吸着によって決定される。検討されたMCM−41は、Al−MCM−41(Si/Al比約40:1)、Ti含有MCM−41(Si/Ti比約40:1)、Zr含有MCM−41(Si/Zr比約40:1)、およびSi−MCM−41(Si/Al比約600:1超)であった。コリジン吸着値(コリジンのμモル数/MCM−41のg数)を、次の表4に示す。
【0084】
【表4】

【0085】
表4に示されるように、Al−MCM−41担体は、明らかに、最高の酸性度を有する。これは、表3の速度比データと一致し、これはまた、Al−MCM−41が最高の酸性度を有することを示す。コリジン吸着試験を用いて、Ti含有およびZr含有MCM−41は、次の最高の酸性度を有し、一方Si−MCM−41は、最低の酸性度を示した。コリジン吸着データに基づいて、Zr含有およびTi含有MCM−41は、類似の酸点数を有する。Zr含有およびTi含有MCM−41物質は、酸性度が反応方式に影響を及ぼす方法に対して、類似の酸性度特性を示すであろうことが考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成後に、少なくとも15Å〜40Å未満の平均細孔直径を有しかつ18Å超のd100値で指標化することができる六方晶系回折パターンを示す六方晶系配置の均一サイズ細孔を有する無機多孔質結晶質相物質、および
第VIII族貴金属から選択される少なくとも一種の水素添加−脱水素成分
を含み、
前記無機多孔質結晶質相物質は、SiOおよびXOを含み、式中、Xは第IV族金属であり、かつ前記無機多孔質結晶質相物質は、SiO:XO比が100:1以下である合成混合物から形成されることを特徴とする触媒組成物。
【請求項2】
前記第VIII族貴金属は、Pt、Pd、Ir、Rh、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記無機多孔質結晶質相物質は、平均細孔サイズの±25%の細孔サイズ分布を有することを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記Xは、Ti、Zr、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記無機多孔質結晶質相物質は、MCM−41であることを特徴とする請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項6】
MCM−41担体物質を形成するための合成混合物における前記SiO:XO比は、7.5:1〜50:1であることを特徴とする請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記触媒は、活性および不活性物質、無機物質、クレー、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、またはそれらの組み合わせから選択される結合剤物質をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記MCM−41担体物質は、前記結合剤物質と複合化されることを特徴とする請求項7に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記水素添加−脱水素成分は、0.1〜2.0wt%の範囲の量で存在することを特徴とする請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項10】
炭化水素原料ストリームを水素添加するための方法であって、
芳香族を含む炭化水素原料ストリームを、効果的な芳香族水素添加条件下に運転される反応段において、水素含有処理ガスの存在下に、請求項1〜9のいずれか一項に記載の水素添加触媒と接触させる工程を含むことを特徴とする芳香族水素添加方法。
【請求項11】
芳香族、窒素、および有機的結合硫黄汚染物を含む炭化水素原料ストリームを、効果的な水素化条件下に運転される第一の反応段において、水素含有処理ガスの存在下に、少なくとも一種の第VIII族金属酸化物および少なくとも一種の第VI族金属酸化物を含む水素化触媒と接触させ、それにより少なくとも蒸気生成物および液体炭化水素生成物を含む反応生成物を製造する工程をさらに含み、
前記第一の反応段における接触は、効果的な芳香族水素添加条件下に運転される前記反応段における前記接触の前に行うことを特徴とする請求項10に記載の芳香族水素添加方法。
【請求項12】
芳香族を含む炭化水素原料ストリームを、効果的な接触脱ロウ条件下に運転される第一の反応段において、水素含有処理ガスの存在下に、脱ロウ触媒と接触させ、それにより反応生成物を製造する工程をさらに含み、
前記第一の反応段における接触は、効果的な芳香族水素添加条件下に運転される前記反応段における前記接触の前に行うことを特徴とする請求項10に記載の芳香族水素添加方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2011−509172(P2011−509172A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540642(P2010−540642)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/013751
【国際公開番号】WO2009/085148
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】