説明

芳香組成物

【課題】 青葉アルコールや青葉アルデヒドの芳香成分がもたらす効果はそのままに、当該効果が長期にわたって維持できる芳香組成物を提供し、そのままの態様でも、また、様々な健康グッズの充填物としても利用できるようにすることを課題として開発された。
【解決手段】 成分(A)〜(D)、すなわち、(A)高分子吸水ポリマー1〜10重量%、(B)水60〜85重量%、(C)青葉アルコール又は青葉アルデヒドのいずれか一方若しくはその双方の抽出液3〜15重量%、(D)グリセリン10〜25重量%を、含有してなり、これをガス透過性の包装フィルムに充填・密閉しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香性に優れ、且つ、健康グッズへの充填剤とした場合に好ましい使用感が得られる芳香組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子吸水ポリマーからなるゲル組成物は、そのままの態様で利用するものとしては消臭剤や芳香剤が知られており、また、容器に密閉した態様で利用するものとしては保温保冷具などが知られている。また、自然素材由来の高分子ゲル体からなる組成物は化粧品として利用されている。しかしながら、ゲル組成物はその取り扱いの難しさから、未だ身近な製品とりわけストレス発散や精神安定に資する健康グッズへの利用は殆どされていないのが実情である。
【0003】
また、昨今、緑葉から抽出される青葉アルコールや青葉アルデヒドの芳香成分が「みどりの香り」と銘打たれ、高い精神安定やストレス発散の効果を有する芳香成分として注目されているが、外気に触れることで抽出液が短時間のうちに揮発してしまい、長期にわたって芳香性を維持することが困難であったため、これも未だ製品として十分に利用されていないのが実情である。
【0004】
そんな中、一部では、青葉アルコール又は青葉アルデヒドの抽出液を花や葉の部分に塗布し、その芳香成分を生活域で吸引できるようにすることで、ストレス鎮静の効果を持たせた造花等の繊維製品などが開発されているが、所謂「みどりの香り」成分の持つ鎮静効果にのみ着目したもので、長期にわたって芳香性を維持する点についての考察はなされていないものであった。
【特許文献1】特開2005−299066
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、青葉アルコールや青葉アルデヒドの芳香成分がもたらす効果はそのままに、当該効果が長期にわたって維持できる芳香組成物を提供し、そのままの態様でも、また、様々な健康グッズの充填物としても利用できるようにすることを課題として開発された。
【0006】
また、空気との接触による酸化によって変質したり品質劣化を来たすことがなく、長期の使用によっても細菌の発生が抑制できるような芳香組成物を提供することも、本発明が解決すべき課題の1つである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、如上の課題を解決するため、度重なる実験を行った結果、芳香性が長期にわたって維持され、また、健康グッズ等への充填剤として利用する際の使用感に優れた芳香組成物として、以下の構成の芳香組成物を得た。
【0008】
先ず、請求項1の発明では、成分(A)〜(D)、すなわち、(A)高分子吸水ポリマー1〜10重量%、(B)水60〜85重量%、(C)青葉アルコール又は青葉アルデヒドのいずれか一方若しくはその双方の抽出液3〜15重量%、(D)グリセリン10〜25重量%を、含有してなる芳香組成物を提案する。
【0009】
次に、請求項2の発明では、請求項1に記載の芳香組成物において、前記成分(B)を40〜65重量%とし、更に、成分(E)緑茶液10〜30重量%を加えてなる芳香組成物を提案する。
【0010】
更に、請求項3の発明では、請求項1又は請求項2に記載の芳香組成物であって、ガス透過性の包装フィルムに密閉されている芳香組成物も提案する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る芳香組成物により、以下の効果が期待できる。
(1)芳香性が長期にわたって維持されるため、そのままの態様で芳香剤として利用したり、また、枕やアイマスクなど健康グッズへの充填剤としても利用することができる。
(2)森林や草原におけると同等の芳香環境が得られるため、利用するだけでストレスが発散され、精神の安定化を図ることができる。
(3)カビや菌の発生が抑制されるため、長期にわたる利用でも品質の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の構成
先ず、本発明に係る芳香組成物で用いられる高分子吸水ポリマーは、多くの水の分子をつなぎ止められるように合成されたポリマーであり、自重の数十倍から数百倍もの水を吸収できる素材である。そのため、高分子吸水ポリマーの当該性質に鑑みて、これを顆粒状としたものが紙おむつや生理用品などに利用されている。また、高分子吸水ポリマーは一度吸った水をなかなか離さない性質も有するため、その保水性に鑑みて、保温保冷剤や土壌保水剤などに利用されている。
【0013】
このように、高分子吸水ポリマーは大量の水を吸収且つ保水する性質を有するが、水を吸収することで化学的に安定したゲル状を呈するに至る。ゲル状の粘性は混合する水の量によって異なるが、本発明に係る芳香組成物では、高分子吸水ポリマー1〜10重量%に対し、水60〜85重量%の範囲で混合すれば、望ましい粘性を得られることが、度重なる実験から明らかとなった。
【0014】
次に、本発明に係る芳香組成物で用いられる青葉アルコールと青葉アルデヒドは、前者は「cis−3−hexenol」の化学名で表され、炭素が6個つながったアルコール類であり、後者は「trans−2−hexenal」の化学名で表され、青葉アルコールが酸化したアルデヒド類である。青葉アルコールも青葉アルデヒドも木の葉や野菜に含まれる香気成分であり、緑葉の青臭い香を有することを特徴とするが、昨今、その香気成分が脳に作用し、ストレス発散や精神安定の効果を有することが明らかとなった。
【0015】
このように、青葉アルコールと青葉アルデヒドは共に緑葉の青臭い香を発する香気成分であり、本発明ではその一方若しくは双方を混合することで、利用するだけでストレス発散や精神安定の効果が得られるようにした。青葉アルコールと青葉アルデヒドを混合する量については、それが利用される商品に応じて適宜調整し得るが、本発明に係る芳香組成物では、その抽出液3〜15重量%の範囲であれば、不快にならない程度の芳香が得られることが、度重なる実験から明らかとなった。
【0016】
次に、本発明に係る芳香組成物で用いられるグリセリンは、殆ど毒性がなく、また、アルコールに可溶で、且つ、水に非常に溶けやすいという性質を有するため、化粧品や利尿剤、目薬、石鹸、歯磨き、カプセル、インクなど広範な商品に利用されている。
【0017】
このように、グリセリンはアルコールに可溶で、水に非常に溶けやすく、しかも、粘稠性を有するため、高分子吸収ポリマーと水を混合して得られたゲル体との相性が良く、また、その保水性により芳香性を長期にわたって封じ込める効果が得られる。混合するグリセリンの分量によっては、ゲル体の粘性が失われてしまうので注意を要するが、本発明に係る芳香組成物では、グリセリン10〜25重量%の範囲であれば、適度な粘性を保ちつつ、しかも、芳香性が長期にわたって維持されることが、度重なる実験から明らかとなった。
【0018】
本発明ではまた、前記した混合する水の量を減じ、緑茶液を加えた芳香組成物の提供も予定しているが、緑茶に含まれる成分の1つであるカテキンは抗酸化や抗菌の効果を有するため、長期にわたる利用によっても、芳香組成物へのカビや菌の発生を抑制することができる。
【0019】
このように、緑茶液には抗酸化や抗菌の効果を有するカテキンが含まれているが、その他、カリウムやナトリウムなどの陽イオン成分も含まれているため、その混合する分量には注意を要する。すなわち、高分子吸収ポリマーは高い吸水性を有するが、水の中にカリウムやナトリウムなどの陽イオンが多く含まれる場合は吸水性が著しく低下するからである。この点、本発明に係る芳香組成物では、前記水を40〜65重量%に減じ、更に、緑茶液10〜30重量%の範囲で加えれば、高分子吸水ポリマーの吸水性に悪影響を及ぼすことなく、抗酸化や抗菌の効果を備えた好ましい粘性のゲル体が得られることが、度重なる実験で明らかとなった。
【0020】
本発明では更に、前記した成分の混合により得られたゲル体を、ガス透過性の包装フィルムに密閉した芳香組成物の提供も予定しており、ガス透過性の包装フィルムについては既に市販されているもので構わない。
【0021】
前記の成分を混合して得られた芳香組成物をガス透過性の包装フィルムに密閉することで、適度な粘性を備え、且つ、より長期にわたって芳香性を維持できる芳香組成物の充填剤が得られるため、これを枕やアイマスクその他の健康グッズに利用することで、ストレス発散や精神安定を図ることができる。実験では、前記の成分によって得られた芳香組成物の場合、24〜48時間で包装フィルムから適度な香気成分が透過してくることが明らかとなった。
【0022】
本発明の製造方法
本発明の請求項1に記載の芳香組成物は以下の手順で製造される。
(1)高分子吸水ポリマー1〜10重量%、水60〜85重量%を混合して、十分に攪拌した後、少なくとも12時間放置する。
(2)(1)に青葉アルコール又は青葉アルデヒドのいずれか一方若しくはその双方の抽出液3〜15重量%を混合して、十分に攪拌した後、少なくとも3時間放置する。
(3)(2)にグリセリン10〜25重量%を混合して、十分に攪拌した後、少なくとも12時間放置する。
【0023】
本発明の請求項2に記載の芳香組成物は以下の手順で製造される。
(1)高分子吸水ポリマー1〜10重量%、水40〜65重量%、緑茶液10〜30重量%を混合して、十分に攪拌した後、少なくとも12時間放置する。
(2)(1)に青葉アルコール又は青葉アルデヒドのいずれか一方若しくはその双方の抽出液3〜15重量%を混合して、十分に攪拌した後、少なくとも3時間放置する。
(3)(2)にグリセリン10〜25重量%を混合して、十分に攪拌した後、少なくとも12時間放置する。
【0024】
本発明の請求項3に記載の芳香組成物は以下の手順で製造する。
上記各(1)〜(3)の後、
(4)得られたゲル体をガス透過性の包装フィルムに充填し、密閉する。
【0025】
本発明に係る芳香組成物は、上記のように製造されるが、芳香性が得られる容器であれば、必ずしもガス透過性の包装フィルム内に密閉した充填剤である必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、芳香剤としてそのままの態様でも利用できるほか、ガス透過性の包装フィルムに充填・密閉することで、多方面にわたる利用が可能となる。本発明の特徴は利用に際してストレス発散や精神安定に資する芳香成分を吸引できる点にあるから、枕やアイマスク、バンダナなどの健康グッズへの利用に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)〜(D):
(A)高分子吸水ポリマー1〜10重量%
(B)水60〜85重量%
(C)青葉アルコール又は青葉アルデヒドのいずれか一方若しくはその双方の抽出液3〜15重量%
(D)グリセリン10〜25重量%
を含有してなることを特徴とする芳香組成物。
【請求項2】
前記成分(B)を40〜65重量%とし、更に、
(E)緑茶液10〜30重量%
の成分を加えてなることを特徴とする請求項1に記載の芳香組成物。
【請求項3】
ガス透過性の包装フィルムに密閉されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の芳香組成物。

【公開番号】特開2008−297439(P2008−297439A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145145(P2007−145145)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(591238475)株式会社クレールインターナショナルクリエート (2)
【Fターム(参考)】