説明

荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法

【目的】斜入射反射光学系を用いた露光装置で生じるシャドーウィング効果の位置依存性誤差について補正可能な描画装置を提供する。
【構成】描画装置100は、斜入射反射光学系を用いてパターンが形成されたマスク基板に照明光を斜入射してマスク基板からの反射光を用いてマスク基板に形成されたパターンを被露光基板に転写する露光装置におけるシャドーウィング効果の位置依存誤差を補正する補正値が定義された補正テーブルを記憶する記憶装置142と、複数の図形について位置と形状とサイズが定義されたパターンデータを入力し、図形毎に、当該図形の位置に基づいて、補正テーブルから対応する補正値を取得する取得部12と、図形毎に、補正値を用いて、当該図形をリサイズするリサイズ処理部14と、荷電粒子ビームを用いて、パターン形成前のマスク基板にリサイズされた図形を描画する描画部150と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法に係り、例えば、描画装置内でパターンをリサイズする手法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、高精度の原画パターン(レチクル或いはマスクともいう。)が必要となる。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、高精度の原画パターンの生産に用いられる。
【0003】
図13は、可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
可変成形型電子線(EB:Electron beam)描画装置は、以下のように動作する。第1のアパーチャ410には、電子線330を成形するための矩形の開口411が形成されている。また、第2のアパーチャ420には、第1のアパーチャ410の開口411を通過した電子線330を所望の矩形形状に成形するための可変成形開口421が形成されている。荷電粒子ソース430から照射され、第1のアパーチャ410の開口411を通過した電子線330は、偏向器により偏向され、第2のアパーチャ420の可変成形開口421の一部を通過して、所定の一方向(例えば、X方向とする)に連続的に移動するステージ上に搭載された試料340に照射される。すなわち、第1のアパーチャ410の開口411と第2のアパーチャ420の可変成形開口421との両方を通過できる矩形形状が、X方向に連続的に移動するステージ上に搭載された試料340の描画領域に描画される。第1のアパーチャ410の開口411と第2のアパーチャ420の可変成形開口421との両方を通過させ、任意形状を作成する方式を可変成形方式(VSB方式)という。
【0004】
描画装置では、例えば、EUV(Extreme Ultra−Violet)光を斜入射させ、反射光学系を用いてパターンを転写するEUV露光装置で用いるEUVマスクを製作するにあたって、そのパターンをEUVマスク基板に描画する(例えば、特許文献1参照)。かかる露光装置では、マスクへの入射光が斜入射となるので、パターンの向きによって、影(シャドーウィング)が生じ、寸法の非等方誤差が生じる。このようなシャドーウィング効果は、非等方誤差であるため、描画装置内部で電子ビームの照射量変調を用いて補正することが困難である。そのため、設計データの段階でパターンの方向に応じてパターン寸法を補正しておくことが行われる。また、シャドーウィング効果は、概ね入射角度に依存するため、一般に、マスク面内において、一律に同一の補正式で補正される。
【0005】
しかしながら、シャドーウィング効果には、微小ではあるが露光装置のスリット内の位置依存性の誤差が生じる。昨今のパターンの微細化に伴い、かかるスリット内の位置依存性、ひいてはマスク面内の位置依存性の誤差も無視できないものとなってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−198783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、昨今のパターンの微細化に伴い、例えば、上述したEUV露光装置等の斜入射反射光学系を用いた露光装置でパターンを転写する際、シャドーウィング効果が生じてしまう。そして、シャドーウィング効果は、露光装置のスリット内の位置依存性の誤差が生じる。かかる位置依存性誤差は、露光装置が変われば、その誤差も変化してしまう。そのため、設計データを作成する段階で補正することは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点を克服し、斜入射反射光学系を用いた露光装置で生じるシャドーウィング効果のうち、特に、位置依存性誤差について補正可能な描画装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、
斜入射反射光学系を用いてパターンが形成されたマスク基板に照明光を斜入射してマスク基板からの反射光を用いてマスク基板に形成されたパターンを被露光基板に転写する露光装置におけるシャドーウィング効果の位置依存誤差を補正する補正値が定義された補正テーブルを記憶する記憶部と、
複数の図形について位置と形状とサイズが定義されたパターンデータを入力し、図形毎に、当該図形の位置に基づいて、補正テーブルから対応する補正値を取得する取得部と、
図形毎に、補正値を用いて、当該図形をリサイズするリサイズ処理部と、
荷電粒子ビームを用いて、パターン形成前のマスク基板にリサイズされた図形を描画する描画部と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、パターンデータには、図形毎に、当該図形を構成する複数の辺についてそれぞれリサイズするために移動を許可する可動辺なのか、移動を許可しない不動辺なのか、を識別する情報が定義され、
リサイズ処理部は、不動辺については移動せずに、可動辺についてリサイズするために移動するように構成すると好適である。
【0011】
また、リサイズ処理部は、マスク基板に照明光を斜入射する際のマスク基板上の入射方向と同じ方向に延びる辺については移動せず、入射方向とは異なる方向に延びる辺についてリサイズするために移動するように構成すると好適である。
【0012】
また、記憶部は、複数の露光装置に対応する複数の補正テーブルを記憶し、
露光装置を識別する情報を入力し、入力された露光装置に応じて前記複数の補正テーブルの中から対応する補正テーブルを選択する選択部をさらに備えるように構成すると好適である。
【0013】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、
斜入射反射光学系を用いてパターンが形成されたマスク基板に照明光を斜入射してマスク基板からの反射光を用いてマスク基板に形成されたパターンを被露光基板に転写する露光装置におけるシャドーウィング効果の位置依存誤差を補正する補正値が定義された補正テーブルを記憶装置に記憶する工程と、
複数の図形について位置と形状とサイズが定義されたパターンデータを入力し、図形毎に、当該図形の位置に基づいて、補正テーブルから対応する補正値を取得する工程と、
図形毎に、補正値を用いて、当該図形をリサイズする工程と、
荷電粒子ビームを用いて、パターン形成前のマスク基板にリサイズされた図形を描画する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、斜入射反射光学系を用いた露光装置で生じるシャドーウィング効果における位置依存性誤差について補正できる。その結果、高精度なパターンを描画できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1における入射角に依存したシャドーウィング効果の一例を示す図である。
【図3】実施の形態1における入射角に依存したシャドーウィング効果の比較例を示す図である。
【図4】実施の形態1における位置に依存したシャドーウィング効果を説明するための概念図である。
【図5】実施の形態1におけるシャドーウィング効果の位置依存誤差を示す補正テーブルの一例を示す概念図である。
【図6】実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【図7】実施の形態1における入射方向に対して90度の方向に延びるパターンのリサイズ処理の一例を示す概念図である。
【図8】実施の形態1における入射方向に対して0度の方向につながる複数のパターンのリサイズ処理の一例を示す概念図である。
【図9】実施の形態1における入射方向に対して135度の方向につながる複数のパターンのリサイズ処理の一例を示す概念図である。
【図10】実施の形態1における入射方向に対して45度の整数倍を除いた任意角の方向に延びるパターンのリサイズ処理の一例を示す概念図である。
【図11】実施の形態2におけるパターンのリサイズ処理の一例を示す概念図である。
【図12】実施の形態2におけるパターンのリサイズ処理の他の一例を示す概念図である。
【図13】可変成形型電子線描画装置の動作を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型の描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、主偏向器208及び副偏向器209が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象となるマスク基板101が配置される。マスク基板101には、斜入射反射光学系を用いた露光装置で使用される露光用マスクが含まれる。例えば、EUVマスクが含まれる。また、マスク基板101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0018】
制御部160は、制御計算機110、メモリ112、制御回路120、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142,144を有している。制御計算機110、メモリ112、制御回路120、及び記憶装置140,142,144は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0019】
制御計算機110内には、選択部10、入力部11、補正値P’(x)取得部12、リサイズ処理部14、判定部16、描画データ処理部18、及び描画制御部20が配置される。選択部10、入力部11、補正値P’(x)取得部12、リサイズ処理部14、判定部16、描画データ処理部18、及び描画制御部20といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。選択部10、入力部11、補正値P’(x)取得部12、リサイズ処理部14、判定部16、描画データ処理部18、及び描画制御部20に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。また、リサイズ処理部14内には、設定部30、判定部32,34,38、及び移動処理部36が配置される。設定部30、判定部32,34,38、及び移動処理部36といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。設定部30、判定部32,34,38、及び移動処理部36に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0020】
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、位置偏向用には、主偏向器208と副偏向器209の主副2段の多段偏向器を用いているが、1段の偏向器或いは3段以上の多段偏向器によって位置偏向を行なう場合であってもよい。
【0021】
記憶装置140(記憶部)には、複数の図形パターンから構成されるパターンデータ(描画データ)が外部より入力され、格納されている。パターンデータには、各図形の形状、配置座標、およびサイズ等のデータが定義される。また、パターンデータには、図形毎に、後述するリサイズ処理を行うにあたって、移動させても構わない可動辺と移動させない不動辺とを識別する識別子がさらに定義されている。
【0022】
図2は、実施の形態1における入射角に依存したシャドーウィング効果の一例を示す図である。図2では、x方向に並ぶ1:1のラインアンドスペースパターンの一例を示している。また、図2では、斜入射反射光学系の露光装置でかかるパターンが形成されたマスクに照明光を斜め上方から照射した際、マスク上においてx方向が照明光の入射方向である場合を示している。かかる場合、スペース部分に照射される照明光は、手前の厚さdのパターンによって一部が遮られ、スペース部分に影ができる。そのため、スペース部分の設計寸法Lに対して実際に露光される寸法L1には誤差が生じる(シャドーウィング効果の主要効果)。かかるスペース部分の設計寸法Lと実際に露光される寸法L1との差分(誤差)は、露光装置の縮小率をsとすると、Δ=L−L1=2d・tanθ・sで定義される。このように、シャドーウィング効果の主要効果Seは、−2d・tanθ・sの寸法変動を引き起こすことがわかる。
【0023】
図3は、実施の形態1における入射角に依存したシャドーウィング効果の比較例を示す図である。図3では、y方向に並ぶ1:1のラインアンドスペースパターンの一例を示している。また、図3では、斜入射反射光学系の露光装置でかかるパターンが形成されたマスクに照明光を斜め上方から照射した際、マスク上においてx方向が照明光の入射方向である場合を示している。かかる場合、スペース部分に照射される照明光は、厚さdのパターンによって遮られない。そのため、影が生じず、スペース部分の設計寸法Lに対して実際に露光される寸法L2にはシャドーウィング効果の主要効果としての誤差は生じない。
【0024】
このように、シャドーウィング効果の主要効果は、マスク上に形成されたパターンの厚さdと照明光の入射角θに依存する。しかしながら、シャドーウィング効果には、かかる主要効果の他に、露光装置固有の位置依存の誤差P(x)が生じる。
【0025】
図4は、実施の形態1における位置に依存したシャドーウィング効果を説明するための概念図である。斜入射反射光学系を用いた露光装置500(スキャナー)では、斜入射反射光学系を用いてパターンが形成されたマスク基板101に照明光を斜入射してマスク基板101からの反射光を用いてマスク基板101に形成されたパターンを被露光基板に転写する。かかる露光装置500(スキャナー)では、光源502からの照明光は、上述したようにマスクとなる基板101に対して斜め上方から照射される。例えば、基板101上においてx方向が照明光の入射方向(例えばx方向)となるように斜め上方から照射される。そして、一般には入射方向と直交する方向(例えばy方向)にスキャン移動させることでウェハ等の半導体基板にパターンを転写していく。その際、転写されたパターンには、設計寸法に対して、露光装置500の入射方向と同方向に延びる照明スリット内の位置に依存した誤差P(x)が生じる。かかるスリットの中心位置で誤差P(x)=0とすると、入射方向の手前側(−側)の位置で例えば負(−)の誤差が、入射方向の奥側(+側)の位置で例えば正(+)の誤差が生じる。このように、入射方向に対して位置に比例した量の誤差が生じる。
【0026】
以上のように、斜入射反射光学系を用いた露光装置500(スキャナー)で生じるシャドーウィング効果は、上述した主要効果Se+位置依存誤差P(x)となる。シャドーウィング効果の主要効果Seについては、装置に依存しないため、設計段階で補正すればよい。或いは、かかる主要効果Seの補正値を描画装置100が入力し、位置依存誤差P(x)と合わせて補正しても構わない。実施の形態1では、上述した主要効果Seと位置依存誤差P(x)のうち、特に、装置固有の位置依存誤差P(x)を補正する場合について説明する。主要効果Seも合わせて補正する場合には、以下、位置依存誤差P(x)について、位置依存誤差P(x)に主要効果Seの値も加算した値と読み替えればよい。
【0027】
まず、実施の形態1では、描画処理を開始する前に、予め、かかる位置依存誤差P(x)の補正テーブルを作成する。各補正値は、予め、シミュレーション或いは実験等により求めておけばよい。
【0028】
図5は、実施の形態1におけるシャドーウィング効果の位置依存誤差を示す補正テーブルの一例を示す概念図である。図5において、シャドーウィング効果の位置依存誤差を示す補正テーブル50では、位置xと、位置依存誤差P(x)を補正する補正値P’(x)と、の相関関係(相関データ)が定義される。或いは、かかる位置依存誤差P(x)を補正する補正値P’(x)を示す、位置xに依存した関数P’(x)が補正テーブル(或いは相関関数)として定義されてもよい。かかる補正テーブル50は、斜入射反射光学系を用いた複数の露光装置500(スキャナー)について、露光装置500毎に作成され、かかる複数の補正テーブルは、それぞれ対応する露光装置500が識別可能なように記憶装置142(記憶部)に格納(記憶)される。ここでxは、基板101上における照明光の入射方向の方向における位置を示す。
【0029】
図6は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。図6において、実施の形態1における描画方法は、スキャナー選択工程(S102)と、パターンデータ入力工程(S104)と、補正値P’(x)取得工程(S106)と、リサイズ処理工程(S108)と、判定工程(S120)と、ショットデータ生成工程(S122)と、描画工程(S124)という一連の工程を実施する。また、リサイズ処理工程(S108)の内部工程として、辺設定工程(S110)と、判定工程(S112)と、判定工程(S114)と、辺移動工程(S116)と、判定工程(S118)という一連の工程を実施する。
【0030】
スキャナー選択工程(S102)として、選択部10は、露光装置500を識別する情報を入力し、入力された露光装置500に応じて記憶装置142に格納された複数の補正テーブルの中から対応する補正テーブルを選択する。露光装置500を識別する情報は、描画装置100で今回描画対象となる基板100をマスクとして用いる露光装置500を識別するための情報である。
【0031】
パターンデータ入力工程(S104)として、入力部11は、記憶装置140からパターンデータを入力する。ここでは、図形毎にデータを入力してもよいし、まとめて複数の図形のデータを入力してもよい。
【0032】
補正値P’(x)取得工程(S106)として、補正値P’(x)取得部12は、複数の図形について位置と形状とサイズが定義されたパターンデータを入力し、図形毎に、当該図形の位置に基づいて、選択された補正テーブルから対応する補正値を取得する。P’(x)取得部12は、取得部の一例である。具体的には、入力されたパターンデータが示す図形の配置座標から当該図形の位置xを取得し、選択された補正テーブル50を参照して、かかる位置xに対応する補正値P’(x)を取得する。
【0033】
リサイズ処理工程(S108)として、リサイズ処理部14は、図形毎に、取得された補正値P’(x)を用いて、当該図形をリサイズする。リサイズ処理の内容について以下に示す。
【0034】
辺設定工程(S110)として、設定部30は、リサイズ対象となる図形を構成する複数の辺のうちの1つを選択し、リサイズ対象として設定する。
【0035】
判定工程(S112)として、判定部32は、設定された当該辺が露光装置500における照明光の入射方向に対して、0度の角度の辺かどうかを判定する。言い換えれば、入射方向(x方向)に延びる辺かどうかを判定する。0度の角度の辺の場合には、判定工程(S118)へ進む。0度の角度の辺ではない場合には、判定工程(S114)へ進む。
【0036】
判定工程(S114)として、判定部34は、設定された当該辺がリサイズするために移動を許可する可動辺かどうかを判定する。上述したように、パターンデータには、図形毎に、当該図形を構成する複数の辺についてそれぞれリサイズするために移動を許可する可動辺なのか、移動を許可しない不動辺なのか、を識別する情報が定義される。そこで、判定部34は、かかる情報を参照して、設定された当該辺がリサイズするために移動を許可する可動辺かどうかを判定すればよい。当該辺が可動辺である場合に辺移動工程(S116)へ進む。当該辺が可動辺ではない場合に判定工程(S118)へ進む。
【0037】
辺移動工程(S116)として、移動処理部36は、不動辺については移動せずに、可動辺について、補正値P’(x)取得工程(S106)により取得された補正値P’(x)に基づき、リサイズするために移動する。
【0038】
判定工程(S118)として、判定部38は、当該図形についてすべての辺が終了したかどうかを判定する。すべての辺が終了した場合は、判定工程(S120)へ進む。すべての辺が終了していない場合は、辺設定工程(S110)へ戻る。そして、辺設定工程(S110)において次の辺を設定する。そして、すべての辺が終了するまで辺設定工程(S110)から判定工程(S118)までを繰り返す。具体的には以下のように辺を移動させる。
【0039】
図7は、実施の形態1における入射方向に対して90度の方向に延びるパターンのリサイズ処理の一例を示す概念図である。図7(b)では、図7(a)に示す基板101の描画領域52上において露光装置500の照明光の入射方向(例えばx方向)に対して手前側の位置53に描画される予定の図形60についてリサイズする場合を示している。図7(b)に示すように、図形60は、入射方向(x方向)に対して90度の方向(y方向)に長く延びる長方形パターンの一例である。図形60は、4つの辺62,64,66,68で構成される。辺62,66は、入射方向に対して、0度の角度の辺である。また、辺62,66は、不動辺と定義される。辺64,68は、入射方向に対して、90度の角度の辺である。また、辺64,68は、可動辺と定義される。かかる場合、移動処理部36は、不動辺62,66については辺の移動をしない。そして、移動処理部36は、可動辺64,68についてリサイズするために辺の移動を行う。辺の移動は、1つの辺に対して、取得された補正値P’(x)の1/2の値だけ移動させる。図7(b)の例では、可動辺64については−x側に、可動辺68については+x側にそれぞれ補正値P’(x)の1/2ずつ移動させる。これにより、x方向の寸法を構成する2つの辺64,68について補正値P’(x)だけリサイズすることができる。なお、図7(b)に示す図形60は、入射方向(例えばx方向)に対して手前側の位置53に描画されるので、位置依存誤差P(x)は例えば負(−)の値になる。そのため、補正値P’(x)は、位置依存誤差P(x)を補正するように極性が逆の正(+)の値となる。
【0040】
一方、図7(c)では、図7(a)に示す基板101の描画領域52上において露光装置500の照明光の入射方向(例えばx方向)に対して奥側の位置54に描画される予定の図形60についてリサイズする場合を示している。図7(c)に示す図形60は、入射方向(例えばx方向)に対して奥側の位置54に描画されるので、位置依存誤差P(x)は例えば正(+)の値になる。そのため、補正値P’(x)は、位置依存誤差P(x)を補正するように極性が逆の負(−)の値となる。よって、移動処理部36は、不動辺62,66については辺の移動をしない。そして、移動処理部36は、可動辺64,68についてリサイズするために辺の移動を行う。図7(c)の例では、可動辺64については+x側に、可動辺68については−x側にそれぞれ補正値P’(x)の1/2ずつ移動させる。これにより、x方向の寸法を構成する2つの辺64,68について補正値P’(x)だけリサイズすることができる。
【0041】
図8は、実施の形態1における入射方向に対して0度の方向につながる複数のパターンのリサイズ処理の一例を示す概念図である。図8(b)では、図8(a)に示す基板101の描画領域52上において露光装置500の照明光の入射方向(例えばx方向)に対して手前側の位置53に描画される予定の3つの図形69,70,71についてリサイズする場合を示している。図8(b)に示すように、図形69は、入射方向(x方向)に対して0度の方向に長く延びる長方形パターンの一例である。図形69は、4つの辺58,59,75,78で構成される。辺58,59は、入射方向に対して、0度の角度の辺である。また、辺58,59は、可動辺と定義される。辺75,78は、入射方向に対して、90度の角度の辺である。また、辺75,78は、不動辺と定義される。
【0042】
図形70は、4つの辺72,74,76,78で構成される。辺78は、図形69と共有する。辺72,76は、入射方向に対して、0度の角度の辺である。また、辺72,76は、可動辺と定義される。辺74,78は、入射方向に対して、90度の角度の辺である。また、辺74は、可動辺と定義される。辺78は、不動辺と定義される。
【0043】
図形71は、4つの辺73,75,77,79で構成される。辺75は、図形69と共有する。辺73,77は、入射方向に対して、0度の角度の辺である。また、辺73,77は、可動辺と定義される。辺75,79は、入射方向に対して、90度の角度の辺である。また、辺79は、可動辺と定義される。辺75は、不動辺と定義される。
【0044】
かかる場合に、移動処理部36は、図形69について、可動辺58,59は入射方向(x方向)に対して、0度の角度の辺なので、辺の移動はしない。また、辺75,78は、不動辺なので辺の移動はしない。よって、図形69についてはリサイズしない。
【0045】
また、移動処理部36は、図形70について、可動辺72,76は入射方向(x方向)に対して、0度の角度の辺なので、辺の移動はしない。また、辺78は、不動辺なので辺の移動はしない。しかし、可動辺74については、入射方向(x方向)に対して、90度の角度の辺なので、取得された補正値P’(x)の1/2の値だけ移動させる。図8(b)に示す図形70は、入射方向(例えばx方向)に対して手前側の位置53に描画されるので、位置依存誤差P(x)は例えば負(−)の値になる。そのため、補正値P’(x)は、位置依存誤差P(x)を補正するように極性が逆の正(+)の値となる。よって、図8(b)の例では、可動辺74については−x側に、補正値P’(x)の1/2だけ移動させる。
【0046】
また、移動処理部36は、図形71について、可動辺73,77は入射方向(x方向)に対して、0度の角度の辺なので、辺の移動はしない。また、辺75は、不動辺なので辺の移動はしない。しかし、可動辺79については、入射方向(x方向)に対して、90度の角度の辺なので、取得された補正値P’(x)の1/2の値だけ移動させる。図8(b)に示す図形71は、入射方向(例えばx方向)に対して手前側の位置53に描画されるので、位置依存誤差P(x)は例えば負(−)の値になる。そのため、補正値P’(x)は、位置依存誤差P(x)を補正するように極性が逆の正(+)の値となる。よって、図8(b)の例では、可動辺79については+x側に、補正値P’(x)の1/2だけ移動させる。
【0047】
以上のリサイズ処理により、図形70についてx方向の寸法を構成する2つの辺74,78のうち辺74について補正値P’(x)だけリサイズすることができる。また、図形71についてx方向の寸法を構成する2つの辺75,79のうち辺79について補正値P’(x)だけリサイズすることができる。これにより、入射方向に対して0度の方向に繋がる3つの図形69,70,71について、図形間に隙間なく、かつ重複領域なくリサイズ処理ができる。
【0048】
図9は、実施の形態1における入射方向に対して135度の方向につながる複数のパターンのリサイズ処理の一例を示す概念図である。図9(b)では、図9(a)に示す基板101の描画領域52上において露光装置500の照明光の入射方向(例えばx方向)に対して手前側の位置53に描画される予定の、平行四辺形(図形80)と平行四辺形(図形80)に繋がる直角2等辺3角形(図形87)についてリサイズする場合を示している。図9(b)に示すように、図形80は、入射方向(x方向)に対して90度の方向(y方向)に長く延びる平行四辺形パターンの一例である。図形80は、底辺83,86と斜辺84,85の4つの辺83,86,84,85で構成される。辺83,86は、入射方向の方向に対して、0度の角度の辺である。また、辺86は、可動辺と定義される。また、辺83は、不動辺と定義される。辺84,85は、入射方向の方向に対して、135度の角度の辺である。また、辺84,85は、可動辺と定義される。
【0049】
図形87は、直交する2辺81,83と斜辺82の3つの辺81,82,83で構成される。辺83は、図形80と共有する。辺83は、入射方向に対して、0度の角度の辺である。また、辺83は、不動辺と定義される。辺81は、入射方向に対して、90度の角度の辺である。また、辺81は、可動辺と定義される。辺82は、入射方向に対して、135度の角度の辺である。また、辺82は、可動辺と定義される。
【0050】
かかる場合に、移動処理部36は、図形80について、可動辺86は入射方向(x方向)に対して、0度の角度の辺なので、辺の移動はしない。辺83は、不動辺なので辺の移動はしない。しかし、可動辺84,85については、入射方向(x方向)に対して、135度の角度の辺なので、取得された補正値P’(x)の1/2の値だけ移動させる。図9(b)に示す図形80は、入射方向(例えばx方向)に対して手前側の位置53に描画されるので、位置依存誤差P(x)は例えば負(−)の値になる。そのため、補正値P’(x)は、位置依存誤差P(x)を補正するように極性が逆の正(+)の値となる。よって、図9(b)の例では、可動辺84については−x側に、可動辺85については+x側に、それぞれ補正値P’(x)の1/2ずつ移動させる。
【0051】
また、移動処理部36は、図形87について、辺83は、不動辺なので辺の移動はしない。しかし、可動辺81,82については、入射方向(x方向)に対して、90度の角度の辺と135度の角度の辺なので、取得された補正値P’(x)の1/2の値だけ移動させる。図8(b)に示す図形87は、入射方向(例えばx方向)に対して手前側の位置53に描画されるので、位置依存誤差P(x)は例えば負(−)の値になる。そのため、補正値P’(x)は、位置依存誤差P(x)を補正するように極性が逆の正(+)の値となる。よって、図9(b)の例では、可動辺81については−x側に、可動辺82については+x側に、それぞれ補正値P’(x)の1/2ずつ移動させる。
【0052】
以上のリサイズ処理により、図形80についてx方向の寸法を構成する2つの辺84,85について補正値P’(x)ずつリサイズすることができる。また、図形87についてx方向の寸法を構成する2つの辺81,82について補正値P’(x)ずつリサイズすることができる。これにより、入射方向に対して135度の方向に繋がる2つの図形80,87について、図形間に隙間なく、かつ重複領域なくリサイズ処理ができる。
【0053】
図10は、実施の形態1における入射方向に対して45度の整数倍を除いた任意角の方向に延びるパターンのリサイズ処理の一例を示す概念図である。45度の整数倍を除いた任意角パターンは、描画装置100に入力される前の段階で複数の45度の整数倍の角度を持つパターンに分割される。図10の例では、図10(b)に示すように、x方法に少しずつずれて配置された複数の長方形(図形91,93,95,96)に分割された例を示している。そして、上段の長方形(図形91)は、続く長方形(図形93)と入射方向に対して、0度の角度の不動辺98aを共有する。長方形(図形93)は、さらに、続く長方形(図形95)と入射方向に対して、0度の角度の不動辺98bを共有する。長方形(図形95)は、さらに、続く長方形(図形96)と入射方向に対して、0度の角度の不動辺98cを共有する。複数の長方形(図形91,93,95,96)は、図10(a)に示すように基板101の描画領域52上において露光装置500の照明光の入射方向(例えばx方向)に対して手前側の位置53に描画される場合を示している。
【0054】
図10(b)に示すように、図形91,93,95,96は、共に、入射方向(x方向)に対して0度の方向に長く延びる長方形パターンの一例である。
【0055】
図形91は、4つの辺92a,94a,97,98aで構成される。辺97,98aは、入射方向に対して、0度の角度の辺である。また、辺98aは、不動辺と定義される。辺97は、可動辺と定義される。辺92a,94aは、入射方向に対して、90度の角度の辺である。辺92a,94aは、可動辺と定義される。
【0056】
図形93は、4つの辺92b,94b,98a,98bで構成される。辺98a,98bは、入射方向に対して、0度の角度の辺である。また、辺98a,98bは、不動辺と定義される。辺92b,94bは、入射方向に対して、90度の角度の辺である。辺92b,94bは、可動辺と定義される。
【0057】
図形95は、4つの辺92c,94c,98b,98cで構成される。辺98b,98cは、入射方向に対して、0度の角度の辺である。また、辺98b,98cは、不動辺と定義される。辺92c,94cは、入射方向に対して、90度の角度の辺である。辺92c,94cは、可動辺と定義される。
【0058】
図形96は、4つの辺92d,94d,98c,98dで構成される。辺98c,98dは、入射方向に対して、0度の角度の辺である。また、辺98cは、不動辺と定義される。辺98dは、可動辺と定義される。辺92d,94dは、入射方向に対して、90度の角度の辺である。辺92d,94dは、可動辺と定義される。
【0059】
かかる場合に、移動処理部36は、図形91について、可動辺97は入射方向(x方向)に対して、0度の角度の辺なので、辺の移動はしない。辺98aは、不動辺なので辺の移動はしない。しかし、可動辺92a,94aについては、入射方向(x方向)に対して、90度の角度の辺なので、取得された補正値P’(x)の1/2の値だけ移動させる。図10(b)に示す図形91は、入射方向(例えばx方向)に対して手前側の位置53に描画されるので、位置依存誤差P(x)は例えば負(−)の値になる。そのため、補正値P’(x)は、位置依存誤差P(x)を補正するように極性が逆の正(+)の値となる。よって、図10(b)の例では、可動辺92aについては−x側に、可動辺94aについては+x側に、それぞれ補正値P’(x)の1/2ずつ移動させる。
【0060】
また、移動処理部36は、図形93について、辺98a,98bは、不動辺なので辺の移動はしない。しかし、可動辺92b,94bについては、入射方向(x方向)に対して、90度の角度の辺なので、取得された補正値P’(x)の1/2の値だけ移動させる。図10(b)に示す図形93は、入射方向(例えばx方向)に対して手前側の位置53に描画されるので、位置依存誤差P(x)は例えば負(−)の値になる。そのため、補正値P’(x)は、位置依存誤差P(x)を補正するように極性が逆の正(+)の値となる。よって、図10(b)の例では、可動辺92bについては−x側に、可動辺94bについては+x側に、それぞれ補正値P’(x)の1/2ずつ移動させる。
【0061】
また、移動処理部36は、図形95について、辺98b,98cは、不動辺なので辺の移動はしない。しかし、可動辺92c,94cについては、入射方向(x方向)に対して、90度の角度の辺なので、取得された補正値P’(x)の1/2の値だけ移動させる。図10(b)に示す図形95は、入射方向(例えばx方向)に対して手前側の位置53に描画されるので、位置依存誤差P(x)は例えば負(−)の値になる。そのため、補正値P’(x)は、位置依存誤差P(x)を補正するように極性が逆の正(+)の値となる。よって、図10(b)の例では、可動辺92cについては−x側に、可動辺94cについては+x側に、それぞれ補正値P’(x)の1/2ずつ移動させる。
【0062】
また、移動処理部36は、図形96について、可動辺98dは入射方向(x方向)に対して、0度の角度の辺なので、辺の移動はしない。辺98cは、不動辺なので辺の移動はしない。しかし、可動辺92d,94dについては、入射方向(x方向)に対して、90度の角度の辺なので、取得された補正値P’(x)の1/2の値だけ移動させる。図10(b)に示す図形96は、入射方向(例えばx方向)に対して手前側の位置53に描画されるので、位置依存誤差P(x)は例えば負(−)の値になる。そのため、補正値P’(x)は、位置依存誤差P(x)を補正するように極性が逆の正(+)の値となる。よって、図10(b)の例では、可動辺92dについては−x側に、可動辺94dについては+x側に、それぞれ補正値P’(x)の1/2ずつ移動させる。
【0063】
以上のように、リサイズ処理部14は、マスク基板に照明光を斜入射する際のマスク基板上の入射方向と同じ方向に延びる辺については移動せず、入射方向とは異なる方向に延びる辺についてリサイズするために移動する。そして、辺を移動する際には、取得した補正値の1/2を移動する。
【0064】
判定工程(S120)として、判定部16は、すべての図形について終了したかどうかを判定する。すべての図形について終了した場合にはショットデータ生成工程(S122)に進む。すべての図形について終了していない場合にはパターンデータ入力工程(S104)に戻る。そして、すべての図形について終了するまで、パターンデータ入力工程(S104)から判定工程(S120)までを繰り返す。
【0065】
以上により、シャドーウィング効果の装置固有の位置依存誤差P(x)を補正することができる。描画装置100でかかる露光装置500固有の位置依存誤差P(x)を補正することで、パターンデータ(描画データ)の使い回しが可能となる。
【0066】
ショットデータ生成工程(S122)として、描画データ処理部18は、リサイズされた各図形のデータについて、複数段のデータ変換処理を行い、描画装置100用のショットデータを生成する。描画装置100で図形パターンを描画するためには、1回のビームのショットで照射できるサイズにパターンデータ(描画データ)に定義された各図形パターンを分割する必要がある。そこで、描画データ処理部18は、実際に描画するために、リサイズ処理された各図形パターンを1回のビームのショットで照射できるサイズに分割してショット図形を生成する。そして、ショット図形毎にショットデータを生成する。ショットデータには、例えば、図形種、図形サイズ、及び照射位置といった図形データが定義される。生成されたショットデータは、記憶装置144に記憶される。
【0067】
描画工程(S124)として、描画制御部20に制御された制御回路120は、記憶装置144からショットデータを入力し、描画部150を制御し、描画部150は、電子ビーム200を用いて、パターン形成前のマスク基板101にリサイズされた図形を描画する。具体的には、以下のように動作する。
【0068】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形例えば長方形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形例えば長方形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。偏向器205によって、かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させる(可変成形させる)ことができる。そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、主偏向器208及び副偏向器209によって偏向され、連続的に移動するXYステージ105に配置された試料101の所望する位置に照射される。図1では、位置偏向に、主副2段の多段偏向を用いた場合を示している。かかる場合には、主偏向器208でストライプ領域をさらに仮想分割したサブフィールド(SF)の基準位置にステージ移動に追従しながら該当ショットの電子ビーム200を偏向し、副偏向器209でSF内の各照射位置にかかる該当ショットのビームを偏向すればよい。
【0069】
以上のように実施の形態1によれば、斜入射反射光学系を用いた露光装置で生じるシャドーウィング効果における位置依存性誤差について補正できる。その結果、高精度なパターンを描画できる。
【0070】
実施の形態2.
実施の形態1では、パターンデータに、図形毎に、後述するリサイズ処理を行うにあたって、移動させても構わない可動辺と移動させない不動辺とを識別する識別子が定義される場合を示した。実施の形態2では、各可動辺についてさらにリサイズ方向の情報についても付加する場合について説明する。以下、特に説明しない点は実施の形態1と同様である。
【0071】
図11は、実施の形態2におけるパターンのリサイズ処理の一例を示す概念図である。図11では、y方向に長い両端の長方形に挟まれるように、x方向に長い2つの長方形が上下の位置に配置されているパターンを示している。かかる場合に、x方向に長い2つの長方形の左辺は、左側のy方向に長い長方形の右辺の一部と共用している。同様に、x方向に長い2つの長方形の右辺は、右側のy方向に長い長方形の左辺の一部と共用している。かかる各図形について、x方向について取得された補正値P’(x)の1/2の値だけ可動辺を移動させると、y方向に長い長方形の左右の辺は、点線で示すように、共に、太くなる側(正(+)側)に辺を移動させればよい。しかし、x方向に長い2つの長方形の左辺にあたる可動辺301,302は、逆に細らせる側(負(−)側)に移動させる必要がある。同様に、x方向に長い2つの長方形の右辺にあたる可動辺303,304についても、逆に細らせる側(負(−)側)に移動させる必要がある。そこで、実施の形態2では、パターンデータに、可動辺と不動辺とを識別する識別子の他に、さらに、各可動辺についてリサイズ方向の情報についても付加する。リサイズ方向は、サイズを太らせる場合には、正(+)、細らせる場合には負(−)の情報を定義すればよい。移動処理部36は、辺の移動の際、かかるリサイズ方向に従って可動辺を補正値P’(x)の1/2を移動させる。
【0072】
図12は、実施の形態2におけるパターンのリサイズ処理の他の一例を示す概念図である。図12では、平行四辺形のy方向に延びる底辺を高さ方向の辺として共有する直角三角形が配置されているパターンを示している。かかる場合に、直角三角形のかかる高さ方向の辺は、点線で示すように、x方向について取得された補正値P’(x)の1/2の値だけ可動辺を移動させる必要がある。しかし、平行四辺形にとって、かかる底辺となる可動辺305は、逆に細らせる側(負(−)側)に移動させる必要がある。よって、移動処理部36は、辺の移動の際、かかるリサイズ方向に従って可動辺を補正値P’(x)の1/2を移動させる。かかる構成により、平行四辺形の可動辺305は、細らせる側(負(−)側)に移動させることができる。
【0073】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。斜入射反射光学系を用いた露光装置は、EUV露光装置に限るものではなく、その他の斜入射反射光学系を用いた露光装置でもよい。
【0074】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0075】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置及び方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0076】
10 選択部
11 入力部
12 P’(x)取得部
14 リサイズ処理部
16 判定部
18 描画データ処理部
20 描画制御部
30 設定部
32,34,38 判定部
36 移動処理部
50 補正テーブル
52 描画領域
53,54 位置
58,59 辺
60,69,70,71,80,87,91,93,95,96 図形
62,64,66,68 辺
72,73,74,75,76,77,78,79 辺
81,82,83,84,85,86 辺
92,94,97,98 辺
100 描画装置
101 基板
102 電子鏡筒
103 描画室
105 XYステージ
110 制御計算機
112 メモリ
120 制御回路
140,142,144 記憶装置
150 描画部
160 制御部
200 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203,410 第1のアパーチャ
204 投影レンズ
205 偏向器
206,420 第2のアパーチャ
207 対物レンズ
208 主偏向器
209 副偏向器
301,302,303,304,305 辺
330 電子線
340 試料
411 開口
421 可変成形開口
430 荷電粒子ソース
500 露光装置
502 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜入射反射光学系を用いてパターンが形成されたマスク基板に照明光を斜入射して前記マスク基板からの反射光を用いて前記マスク基板に形成されたパターンを被露光基板に転写する露光装置におけるシャドーウィング効果の位置依存誤差を補正する補正値が定義された補正テーブルを記憶する記憶部と、
複数の図形について位置と形状とサイズが定義されたパターンデータを入力し、図形毎に、当該図形の位置に基づいて、前記補正テーブルから対応する補正値を取得する取得部と、
図形毎に、前記補正値を用いて、当該図形をリサイズするリサイズ処理部と、
荷電粒子ビームを用いて、パターン形成前のマスク基板にリサイズされた図形を描画する描画部と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記パターンデータには、図形毎に、当該図形を構成する複数の辺についてそれぞれリサイズするために移動を許可する可動辺なのか、移動を許可しない不動辺なのか、を識別する情報が定義され、
前記リサイズ処理部は、不動辺については移動せずに、可動辺についてリサイズするために移動することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記リサイズ処理部は、前記マスク基板に照明光を斜入射する際の前記マスク基板上の入射方向と同じ方向に延びる辺については移動せず、前記入射方向とは異なる方向に延びる辺についてリサイズするために移動することを特徴とする請求項1又は2記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
前記記憶部は、複数の露光装置に対応する複数の補正テーブルを記憶し、
露光装置を識別する情報を入力し、入力された露光装置に応じて前記複数の補正テーブルの中から対応する補正テーブルを選択する選択部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項5】
斜入射反射光学系を用いてパターンが形成されたマスク基板に照明光を斜入射して前記マスク基板からの反射光を用いて前記マスク基板に形成されたパターンを被露光基板に転写する露光装置におけるシャドーウィング効果の位置依存誤差を補正する補正値が定義された補正テーブルを記憶装置に記憶する工程と、
複数の図形について位置と形状とサイズが定義されたパターンデータを入力し、図形毎に、当該図形の位置に基づいて、前記補正テーブルから対応する補正値を取得する工程と、
図形毎に、前記補正値を用いて、当該図形をリサイズする工程と、
荷電粒子ビームを用いて、パターン形成前のマスク基板にリサイズされた図形を描画する工程と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−115304(P2013−115304A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261562(P2011−261562)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】