荷電粒子ビーム装置及びアパーチャの軸調整方法
【課題】短時間で容易に、かつ、精度良くアパーチャの中心軸の位置調整が可能な荷電粒子ビーム装置、及び、アパーチャの軸調整方法を提供する。
【解決手段】荷電粒子ビーム装置1は、荷電粒子源9と、アパーチャ18と、対物レンズ12と、観察手段32と、アパーチャ駆動部19と、制御部30とを備える。制御部30は、荷電粒子ビームIを照射することで、試料Nの表面N1に複数のスポットパターンを形成させるスポットパターン形成手段33と、スポットパターンのスポット中心の位置、及びハローの幾何学的な中心位置を算出する解析手段34と、各スポットパターンにおけるスポット中心の位置とハローの中心位置とを結んだ線同士が交差する位置に基づいて調整位置を算出する調整位置決定手段35とを有し、調整位置にアパーチャ18の中心軸を移動させることでアパーチャ18の位置を調整する。
【解決手段】荷電粒子ビーム装置1は、荷電粒子源9と、アパーチャ18と、対物レンズ12と、観察手段32と、アパーチャ駆動部19と、制御部30とを備える。制御部30は、荷電粒子ビームIを照射することで、試料Nの表面N1に複数のスポットパターンを形成させるスポットパターン形成手段33と、スポットパターンのスポット中心の位置、及びハローの幾何学的な中心位置を算出する解析手段34と、各スポットパターンにおけるスポット中心の位置とハローの中心位置とを結んだ線同士が交差する位置に基づいて調整位置を算出する調整位置決定手段35とを有し、調整位置にアパーチャ18の中心軸を移動させることでアパーチャ18の位置を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に荷電粒子ビームを照射して、試料の加工、観察を行う荷電粒子ビーム装置及び荷電粒子ビーム装置におけるアパーチャの軸調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、イオンビームや電子ビームなどの荷電粒子ビームを所定位置に照射させて、加工、観察などを行う荷電粒子ビーム装置が様々な分野で用いられている。荷電粒子ビーム装置としては、例えば、荷電粒子ビームとして電子ビームを照射可能な走査型電子顕微鏡(SEM)、あるいは、荷電粒子ビームとして集束イオンビームを照射可能な集束イオンビーム装置(FIB)などがある。走査型電子顕微鏡では、試料表面上で電子ビームを走査しながら試料表面から発生する二次電子を検出することで試料表面の状態を観察することが可能である。また、集束イオンビーム装置では、走査型電子顕微鏡同様に二次電子を検出して試料表面を観察可能であるとともに、加速電圧を高くすることで試料のエッチングやデポジションを行うことが可能であり、TEM(透過電子顕微鏡)の試料作成やフォトマスクの修正などにも使用されている。また、近年、集束イオンビーム装置においては、集束イオンビームの加速電圧を100Vから5000V程度とする低加速領域で使用することで、低ダメージ加工を実現する方法が注目されている。また、加速電圧が3000V程度の範囲で、集束イオンビームの照射量を1nA以上とする大電流領域で使用することでワイヤボンディングや半田バンプなどの大面積加工を実現する方法なども注目されてきている。
【0003】
ところで、これらの荷電粒子ビーム装置においては、正確な観察や加工を実施するために、焦点位置の調整とともに、軸外収差と呼ばれるボケを除去する必要がある。軸外収差は、荷電粒子ビームの中心が、対物レンズの中心軸を通過しないことによって発生するものであり、より具体的には、荷電粒子ビームを絞り込んで対物レンズに入射させるアパーチャの中心軸と、対物レンズの中心軸との間にずれが生じていることに起因する。このため、軸外収差を除去して正確な観察や加工を実施するためには、使用前にアパーチャの中心軸の位置を、対物レンズの中心軸と一致させるように調整する必要がある。
【0004】
従来、このような軸外収差は、具体的には以下の方法によって除去してきた。すなわち、アパーチャの中心軸を任意の位置として、過焦点の状態の像と不足焦点の状態の像とを、対物レンズの焦点位置を調整することで交互に取得する。アパーチャの中心軸と対物レンズの中心軸とが略一致していない状態では、過焦点の状態で映し出される像の位置と、不足焦点の状態で映し出される像の位置とは異なるため、対物レンズの焦点位置を変化させると取得される像は大きく変化する。そして、アパーチャの中心軸を調整しながら上記作業を繰り返して、焦点位置を変化させても像の位置が変化しないようにすることで、アパーチャの中心軸と対物レンズの中心軸とを一致させていた(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、他の方法としては、過焦点の状態と不足焦点の状態とのそれぞれで、荷電粒子ビームをナイフエッジ上で走査して、過焦点の状態と不足焦点の状態とでナイフエッジによって検出された電流値の誤差を求める。そして、この電流値の誤差が所定範囲内になるまで、アパーチャの位置を繰り返し変化させて調整する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【非特許文献1】「走査電子顕微鏡の基礎と応用」、共立出版株式会社、1991年10月25日、p.78−79
【特許文献1】特開2005−276639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1による方法では、過焦点の状態の像と不足焦点の状態の像との変化から、アパーチャの中心軸のずれを定性的に把握するにすぎないため、アパーチャの中心軸の調整は、上記現象及び経験則に基づく手作業によって、繰り返し行うことで実現可能なものである。このため、アパーチャの中心軸の調整には、作業者の技量と、多大な時間とを必要としてしまう問題があった。特に上述のような大電流領域での使用では加工速度が速いので、試料の損傷を最小限とするように調整作業を迅速に行う方法が望まれている。さらに、作業者毎に調整精度にばらつきが生じてしまい、また、同じ作業者が調整したとしても、異なる装置間で調整精度を統一させることは困難であり、装置間で性能のばらつきが生じてしまう問題があった。また、上述のように低加速領域で荷電粒子ビームを照射する場合では、加速電圧が低電圧であることに起因しても荷電粒子ビームの収差が大きくなってボケが生じてしまう。このため、アパーチャの中心軸のずれに起因するものと、加速電圧に起因するものとを分離することができず、アパーチャの中心軸の調整を正確に行うことができなくなってしまう問題があった。
【0007】
また、特許文献1による方法では、電流値の誤差からある程度定量的にアパーチャのずれを評価して調整することは可能であるが、電流値の誤差とアパーチャとのずれとの相関関係は不明確であり、繰り返し行うことでずれを調整しなければならない。このため、非特許文献1同様に、調整に多大な時間を必要としてしまう問題があった。
【0008】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、短時間で容易に、かつ、精度良くアパーチャの中心軸の位置調整が可能な荷電粒子ビーム装置、及び、アパーチャの軸調整方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビームを放出する荷電粒子源と、前記荷電粒子ビームを所定の径に絞り込むアパーチャと、該アパーチャで絞り込まれた前記荷電粒子ビームを集束させて試料に照射させる対物レンズと、前記試料の表面の画像を取得可能な観察手段と、前記アパーチャの中心軸を、該中心軸に対して略直交する二軸であるX方向及びY方向に移動可能なアパーチャ駆動部と、該アパーチャ駆動部によって前記アパーチャを移動させて、前記対物レンズの中心軸に対して前記アパーチャの前記中心軸の位置を調整可能な制御部とを備え、該制御部は、前記アパーチャ駆動部によって前記アパーチャを前記X方向及び前記Y方向に異なる位置に移動させて前記試料に前記荷電粒子ビームを複数回照射することで、前記試料の表面に複数のスポットパターンを形成させるスポットパターン形成手段と、前記観察手段によって取得した画像から、前記試料に形成された各前記スポットパターンの中心をなすスポット中心の位置、及び外縁をなすハローの幾何学的な中心位置を算出する解析手段と、該解析手段で算出された各前記スポットパターンにおける前記スポット中心の位置と前記ハローの前記中心位置とを結んだ線同士が交差する位置に基づいて前記アパーチャの前記中心軸の調整位置を算出する調整位置決定手段とを有し、該調整位置決定手段によって算出された前記調整位置に前記アパーチャの前記中心軸を移動させることで前記アパーチャの位置を調整することを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、荷電粒子源から放出された荷電粒子ビームを、アパーチャで所定の径に絞り込むとともに、対物レンズで集束して試料に照射させる荷電粒子ビーム装置について、前記対物レンズの中心軸に対するアパーチャの中心軸の位置調整を行うアパーチャの軸調整方法であって、前記アパーチャの前記中心軸の位置を、該中心軸と略直交する二軸であるX方向及びY方向に異なるものとし、予め用意した試料に前記荷電粒子ビームを複数回照射して、前記試料の表面に複数のスポットパターンを形成するスポットパターン形成工程と、各該スポットパターンの中心をなすスポット中心の位置、及び、外縁をなすハローの幾何学的な中心位置を算出するスポットパターン解析工程と、各前記スポットパターンにおける前記ハローの前記中心位置と前記スポット中心の位置とを結んだ線同士が交差する位置に基づいて前記アパーチャの前記中心軸の調整位置を算出する調整位置決定工程と、算出された該調整位置に、前記アパーチャの前記中心軸を移動させる中心軸位置調整工程とを備えることを特徴としている。
【0011】
この発明に係る荷電粒子ビーム装置及びアパーチャの軸調整方法によれば、スポットパターン形成工程として、試料の表面に複数のスポットパターンを形成する。すなわち、制御部のスポットパターン形成手段は、荷電粒子源から荷電粒子ビームを放出させて、試料の表面の任意の位置に荷電粒子ビームを照射させる。これにより、試料の表面の任意の位置には、照射された荷電粒子ビームの焦点状態に応じて所定の大きさのスポットパターンが形成される。次に、制御部のスポットパターン形成手段は、アパーチャ駆動部によってアパーチャの中心軸をX方向及びY方向に所定の移動量分移動させて、再び荷電粒子ビームを照射することでスポットパターンを形成する。このようにして形成された複数のスポットパターンは、それぞれ、中心をなすスポット中心と、外縁をなすハローとを有した形状を呈する。ハローは試料表面における荷電粒子ビームの照射範囲を表わすものである。また、対物レンズの中心軸に対してアパーチャの中心軸が位置ずれしている場合には、ハローの幾何学的な中心位置に対して、アパーチャの中心軸の位置ずれの方向と対応する方向に偏心した位置にスポット中心が形成されることとなる。
【0012】
次に、スポットパターン解析工程として、形成されたスポットパターンの解析を行う。すなわち、制御部の解析手段は、観察手段によって取得した試料の表面の画像に映し出された各スポットパターンにおいて、スポット中心の位置及びハローの幾何学的な中心位置を算出する。次に、調整位置決定工程として、アパーチャの中心軸と対物レンズの中心軸とが略一致するようなアパーチャの中心軸の調整位置を決定する。すなわち、制御部の調整位置決定手段は、スポットパターン解析工程の結果から、各スポットパターンにおけるスポット中心の位置とハローの中心位置とを結んだ線同士が交差する位置を調整位置として算出する。最後に、中心軸位置調整工程として、制御部は、アパーチャ駆動部によってアパーチャの中心軸を算出された調整位置に移動させることで、アパーチャの中心軸は対物レンズの中心軸と略一致した状態とすることができる。
【0013】
また、上記の荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビームの照射位置を前記試料に対して相対移動させることが可能な走査手段を備え、前記制御部の前記スポットパターン形成手段は、前記アパーチャの前記中心軸を移動させて前記試料に前記荷電粒子ビームを照射させる毎に、前記アパーチャの前記X方向及び前記Y方向へのそれぞれの移動量に一定の値を乗じた分だけ、前記走査手段によって前記荷電粒子ビームの前記照射位置を前記試料に対して相対移動させることがより好ましいとされている。
【0014】
また、上記のアパーチャの軸調整方法において、前記スポットパターン形成工程は、前記アパーチャの前記中心軸を移動させて前記試料に前記荷電粒子ビームを照射する毎に、前記アパーチャの前記X方向及び前記Y方向へのそれぞれの移動量に一定の値を乗じた分だけ、前記荷電粒子ビームの照射位置を前記試料に対して相対移動させることがより好ましいとされている。
【0015】
この発明に係る荷電粒子ビーム装置及びアパーチャの軸調整方法によれば、スポットパターン形成工程において複数のスポットパターンを形成する際に、アパーチャの中心軸の位置をX方向及びY方向に異なる位置とするともに、走査手段によって荷電粒子ビームの照射位置を試料に対して相対移動させる。このため、試料の表面において複数のスポットパターンを互いに重ならないよう形成することができ、スポットパターンをより明確に識別可能な画像を取得することができ、より正確な軸調整が可能となる。この際、荷電粒子ビームの照射位置の相対的な移動量を、アパーチャの中心軸のX方向及びY方向への移動量に一定の値を乗じた分とすることで、その移動方向を、対物レンズの中心軸に対するアパーチャの中心軸の位置ずれの方向と一致させることができる。このため、上記のように照射位置を相対移動させても、調査位置決定工程において、スポット中心の位置とハローの中心位置とを結んだ線同士が交差する位置に基づいて、同様に調査位置を決定することができる。
【0016】
また、上記の荷電粒子ビーム装置において、前記制御部は、前記スポットパターン形成手段によって前記試料に前記荷電粒子ビームを照射する際に、前記試料に対して前記荷電粒子ビームを過焦点の状態に設定することがより好ましいとされている。
【0017】
また、上記のアパーチャの軸調整方法において、前記スポットパターン形成工程は、前記対物レンズによって集束される前記荷電粒子ビームを過焦点の状態で前記試料に照射させることがより好ましいとされている。
【0018】
この発明に係る荷電粒子ビーム装置及びアパーチャの軸調整方法によれば、スポットパターン形成工程において、制御部のスポットパターン形成手段によって荷電粒子ビームを過焦点の状態に設定して試料に照射することで、不足焦点の状態に比べて、形成されるスポットパターンをより大きく形成することができる。このため、スポットパターン解析工程において、取得された画像からスポットパターンをより明確に識別することができ、より正確な軸調整が可能となる。
【0019】
また、上記の荷電粒子ビーム装置において、前記制御部の前記解析手段は、前記観察手段から取得した前記画像を二値化処理した二値化データとするとともに、該二値化データに基づいて前記スポットパターンの前記ハローの前記中心位置及び前記スポット中心の位置を算出することがより好ましいとされている。
【0020】
また、上記のアパーチャの軸調整方法において、前記スポットパターン解析工程は、前記スポットパターンが形成された前記試料の表面の前記画像を二値化処理した二値化データを作成し、該二値化データから各前記スポットパターンの前記ハローの前記中心位置と前記スポット中心の位置とを算出することがより好ましいとされている。
【0021】
この発明に係る荷電粒子ビーム装置及びアパーチャの軸調整方法によれば、スポットパターン解析工程において、制御部の解析手段によって画像を二値化処理した二値化データとすることで、画像に表示されたスポットパターンをより明確に識別することができ、より正確な軸調整が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の荷電粒子ビーム装置によれば、制御部として、スポットパターン形成手段と、解析手段と、調整位置決定手段とを有し、複数のスポットパターンを試料に形成するだけで、自動的に、短時間で容易に、かつ、精度良くアパーチャの中心軸の位置調整を行うことができる。
また、本発明のアパーチャの軸調整方法によれば、スポットパターン形成工程と、スポットパターン解析工程と、調整位置決定工程とを備えて、複数のスポットパターンを試料に形成するだけで、短時間で容易に、かつ、精度良くアパーチャの中心軸の位置調整を行うことができ、自動化の適用も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、この発明に係る第1の実施形態を示している。図1に示すように、荷電粒子ビーム装置である集束イオンビーム装置(FIB)1は、試料Mに荷電粒子ビームであるイオンビームIを照射することによって、試料Mの表面の加工等を行うものである。例えばウエハを試料Mとして配置し、TEM(透過型電子顕微鏡)観察用の試料を作製することが可能であり、あるいは、フォトリソグラフィ技術におけるフォトマスクを試料Mとして、フォトマスクの修正などが可能である。以下、本実施形態における集束イオンビーム装置1の詳細について説明する。
【0024】
図1に示すように、集束イオンビーム装置1は、試料Mを配置可能な試料台2と、試料台2に配置された試料M対してイオンビームIを照射可能なイオンビーム鏡筒3とを備える。試料台2は、真空チャンバー4の内部4aに配置されている。真空チャンバー4には、真空ポンプ5が設けられていて、内部4aを高真空雰囲気まで排気可能である。また、試料台2には三軸ステージ6が設けられていて、試料MをイオンビームIの照射方向であるZ方向と、Z方向と略直交する二軸であるX方向及びY方向に移動させることが可能である。
【0025】
イオンビーム鏡筒3は、先端に真空チャンバー4と連通する照射口7が形成された筒体8と、筒体8の内部8aにおいて、基端側に収容された荷電粒子源であるイオン源9とを備える。イオン源9を構成するイオンとしては、例えばガリウムイオン(Ga+)などである。イオン源9は、イオン源制御電源10と接続されている。そして、イオン源制御電源10によって加速電圧及び引き出し電圧を印加することで、イオン源9から引き出されたイオンを加速させてイオンビームIとして放出することが可能である。
【0026】
また、筒体8の内部8aにおいて、イオン源9よりも先端側には、イオン源9から放出されたイオンビームIを集束させる光学系として、コンデンサレンズ11及び対物レンズ12が設けられている。コンデンサレンズ11及び対物レンズ12は、それぞれの中心軸がZ方向と略平行な状態で互いに一致するように調整されている。コンデンサレンズ11及び対物レンズ12は、静電レンズであり、貫通孔11a、12aが形成された3枚の電極で形成されていて、コンデンサレンズ制御電源13、対物レンズ制御電源14とそれぞれ接続されている。コンデンサレンズ制御電源13よってコンデンサレンズ11に電圧を印加することで、貫通孔11aを通過する拡散状態にあるイオンビームIを集束させることができる。さらに、対物レンズ制御電源14によって対物レンズ12に電圧を印加することで、貫通孔12aを通過するイオンビームIをさらに集束させて、集束イオンビームとして試料Mに照射させることが可能である。
【0027】
また、コンデンサレンズ11と対物レンズ12との間には、基端側から順に可動絞り15と、スティグマ16と、走査手段である走査電極17とが設けられている。可動絞り15は、所定の径を有する貫通孔であるアパーチャ18と、アパーチャ18をX方向及びY方向に移動させるアパーチャ駆動部19とを備える。アパーチャ18は、コンデンサレンズ11から照射されるイオンビームIを自身の径に応じて絞り込むものである。本実施形態においては、アパーチャ18は一つ設けられているのみであるが、径を異なるものとして複数有し、アパーチャ駆動部19で移動させて好適な径のものを選択可能な構成としても良い。また、スティグマ16は、通過するイオンビームIの非点補正を行うものであり、スティグマ制御電源20から電圧を印加することで行われる。また、走査電極17は、走査電極制御電源21によって電圧を印加することで、通過するイオンビームIをX方向及びY方向に所定量だけ偏向させることが可能であり、これにより試料M上でイオンビームIを走査させる、あるいは、所定の位置に照射するように照射位置をシフトさせることができる。
【0028】
また、上記のイオン源制御電源10、コンデンサレンズ制御電源13、対物レンズ制御電源14、スティグマ制御電源20、及び走査電極制御電源21は、制御部30と接続されている。すなわち、制御部30で各電源を制御することによって、所定の加速電圧及び電流のイオンビームIを試料Mの所定位置に焦点を合わせて照射することが可能である。また、制御部30には端末25が接続されていて、端末25によって各種条件を設定して試料MにイオンビームIを照射することも可能である。また、アパーチャ駆動部19及び三軸ステージ6も制御部30に接続されていて、制御部30による制御の下、アパーチャ18の調整を行い、また、試料Mの位置調整を行うことが可能である。さらに、集束イオンビーム装置1は、試料MにイオンビームIを照射した際に試料Mから発生する二次電子を検出可能な二次電子検出器22を備えていて、制御部30の画像処理手段31に検出結果を出力可能である。画像処理手段31では、検出結果から試料Mの表面の状態を画像として取得することが可能であり、すなわち、二次電子検出器22及び画像処理手段31によって観察手段32を構成している。なお、観察手段32で取得した画像データは、端末25でモニタリングすることが可能である。
【0029】
ここで、イオンビームIは、対物レンズ12の中心軸とアパーチャ18の中心軸とがX方向及びY方向に位置ずれしていると、軸外収差と呼ばれるボケが生じてしまう。このような軸外収差が生じた状態では、試料Mの所定位置にイオンビームIを正確に照射することができなくなってしまう。このため、制御部30は、試料Mの観察、加工をするに際して、この軸外収差を自動的に補正するために、スポットパターン形成手段33、解析手段34、及び、調整位置決定手段35を備えている。以下に、アパーチャ18の軸調整を行って軸外収差を補正する手順ととともに、制御部30の各構成の作用の詳細について、図2のフロー図に基づいて説明する。
【0030】
まず、予め用意した標準試料Nを試料台2に配置する(ステップS1)。標準試料Nは、イオンビームIの照射によって表面にスポットパターンと呼ばれる照射痕が形成可能な材質であれば良いが、アパーチャ18の軸調整を行うためのものであるため、平坦面を有しているものが好ましい。なお、試料表面にスポットパターンが形成されても観察、加工時に差し支えなければ、実際に観察、加工する試料Mを標準試料Nとしても良い。
【0031】
次に、スポットパターン形成工程S2として、標準試料Nの表面N1の複数箇所にイオンビームIを照射して、複数のスポットパターンを形成する。まず、制御部30のスポットパターン形成手段33は、標準試料Nの表面N1において、任意の位置にイオンビームIを一定時間照射させてスポットパターンPを形成させる(ステップS21)。この際、対物レンズ12による焦点位置を標準試料Nの表面N1に対して過焦点の状態、すなわち対物レンズ12と標準試料Nの表面N1との間の距離を焦点距離よりも長くする。また、この時のアパーチャ18の中心軸L18のX方向及びY方向の位置を、アパーチャ初期位置A0(0、0)と設定し、また、標準試料Nの表面N1上における照射位置を初期照射位置B0(0、0)と設定する。
【0032】
図3は、イオンビームIを照射した様子を模式的に示したものである。図3において、二点鎖線L´で示すように、アパーチャ15の中心軸L15が対物レンズ12の中心軸L12と一致する場合には、イオンビームIは対物レンズ12の中心軸L12と略対称な照射範囲で照射される。一方、アパーチャ18の中心軸L18が対物レンズ12の中心軸L12に対して位置ずれしたままの状態であるアパーチャ初期位置A0の場合には、過焦点の状態であるので、その位置ずれと方向を同じくして焦点位置Fを挟んで反対側に偏心した初期照射位置B0で照射され、初期照射位置B0を幾何学的な中心とする範囲で標準試料NがエッチングされてスポットパターンPが形成される。
【0033】
図4(a)は、スポットパターンPを観察手段32で観察した場合の画像を示していて、図4(b)は図4(a)におけるA−A断面で破断した断面図を示している。図4(a)、(b)に示すように、標準試料Nの表面N1の照射範囲には、イオンビームIによってエッチングされて凹みが形成されることになるが、この凹みがスポットパターンPとして画像上で認識される。すなわち、表面N1の凹みの始まりが外縁をなす略円形状のハローP1として認識され、初期照射位置B0はハローP1の幾何学的な中心P3と略一致する。また、図4(b)に示すように、スポットパターンPは、内部へ行くに従って急激に凹みの深さが深くなるような断面形状を呈することとなる。このため、図4(a)に示すように、取得される画像には、ハローP1の内部に凹みの深さに応じて略円形状のグラデーションが形成され、その中心にスポット中心P2が形成される。スポット中心P2は、最も深くエッチングされた位置を示している。スポット中心P2付近においては凹みが急激に深くなるので、その付近から放出される二次電子は、そのほとんどが観察手段32の二次電子検出器22で検出されない。このため、取得された画像では、スポット中心P2は黒点として認識される。ここで、アパーチャ18の中心軸L18が対物レンズ12の中心軸L12に対して位置ずれしていることで、スポット中心P2は、ハローP1の幾何学的な中心P3に対して位置ずれして形成される。そして、その位置ずれする方向は、アパーチャ18の中心軸L18が対物レンズ12の中心軸12に対して位置ずれしている方向と対応するものとなる。
【0034】
このようにして、最初のスポットパターンPが形成されたら、さらに次のスポットパターンQを形成する。まず、制御部30のスポットパターン形成手段33は、アパーチャ駆動部19を駆動させて、アパーチャ初期位置A0(0、0)から、予め設定されているX方向への移動量ΔX1及びY方向への移動量ΔY1だけ移動させたアパーチャ位置A1(ΔX1、ΔY1)に、アパーチャ18を移動させる(ステップS22)。さらに、スポットパターン形成手段33は、走査電極制御電源21及び走査電極17によって、アパーチャ18の移動量ΔX1、ΔY1に予め設定された定数αを乗じた大きさの移動量α・ΔX1、α・ΔY1だけイオンビームIをシフトさせる(ステップS23)。そして、この状態で一定時間標準試料NにイオンビームIを照射して、二箇所目のスポットパターンQを形成する(ステップS24)。
【0035】
このようにして、標準試料Nの表面N1にスポットパターンP、Qの形成が完了したら、観察手段32によって標準試料Nの表面N1の画像を取得する(ステップS3)。すなわち、制御部30は、イオン源制御電源によって加速電圧を低く設定してイオン源9からイオンビームIを照射させ、走査電極17によって標準試料Nの表面N1上全体に走査させる。そして、照射に応じて標準試料Nの表面N1から放出される二次電子を順次観察手段32の二次電子検出器22で検出し、その結果を画像処理手段31で画像化することで標準試料Nの表面Nの画像を取得することができる。図5に取得した画像を示す。
【0036】
次に、スポットパターン解析工程S4として、取得した画像から、形成されたスポットパターンP、Qの解析を行う。まず、制御部30の解析手段34は、取得した画像の二値化処理を行い、二値化データを作成する(ステップS41)。これにより、スポットパターンP、Qが形成されていない標準試料Nの表面N1は黒色となる一方、スポットパターンP、Qの内部は白色となり、コントラストによって明確にハローP1、Q1を識別することができる。さらに、スポットパターンP、Qのスポット中心P2、Q2は黒色となり、スポットパターンP、Qの他の部分と明確に識別することが可能となる。
【0037】
次に、図5に示すように、画像の二値化データに基づいて、各スポットパターンP、Qにおける、ハローP1、Q1の中心P3、Q3の位置と、スポット中心P2、Q2の位置を算出する(S42)。すなわち、まず、一箇所目のスポットパターンPにおいて、認識されたハローP1からその幾何学的な中心P3の位置を算出し、これを初期照射位置B0(0、0)とする。そして、この初期照射位置B0(0、0)を基準として、スポットパターンPのスポット中心P2の位置C0(Xc0、Yc0)を算出する。さらに、初期照射位置B0(0、0)を基準として、二箇所目のスポットパターンQのハローQ1の幾何学的な中心Q3である照射位置B1(Xb1、Yb1)と、スポット中心Q2の位置C1(Xc1、Yc1)を算出する。
【0038】
ここで、一箇所目の原点である初期照射位置B0と、二箇所目の照射位置B1との間には、以下に示す関係がある。図6に示すように、アパーチャ18の中心軸L18を一箇所目のアパーチャ初期位置A0から二箇所目のアパーチャ位置A1に移動させると、焦点位置Fは一定であるため、標準試料Nの表面上N1における照射位置は初期照射位置B0から照射位置B1´に変位する。照射位置B1´は、アパーチャ18の移動量ΔX1、ΔY1、及び、焦点位置Fと標準試料Nとの位置関係によって決定される係数βを用いて、焦点位置Fを基準とする相似的関係から、B1´(βΔX1、βΔY1)で表わされる。すなわち、図5に示すように、二箇所目としてイオンビームIが照射された照射位置B1におけるX方向の成分Xb1は、アパーチャ18の移動量及びイオンビームIのシフト量からXb1=(α+β)・ΔX1で表わされることとなる。同様に、Y方向の成分Yb1は、Yb1=(α+β)・ΔY1で表わされることとなり、すなわち、アパーチャ18の中心軸L18の位置と、標準試料Nの表面N1上における照射位置とは、相似比(α+β)の相似的関係を有することとなる。
【0039】
次に、調整位置決定工程S5として、アパーチャ18の中心軸L18を対物レンズ12の中心軸L12に一致させることが可能となる調整位置Tの算出を行う。まず、図5に示すように、制御部30の調整位置決定手段35は、スポットパターン解析工程S4における算出結果に基づいて、スポットパターンPのハローP1の中心P3とスポット中心P2とを結んだ直線Lpと、スポットパターンQのハローQ1の中心Q3とスポット中心Q2とを結んだ直線Lqとの交点D(Xd、Yd)を算出する(ステップS51)。次に、算出した交点Dに基づいて、アパーチャ初期位置A0を基準としたアパーチャ18の中心軸L18の調整位置T(Xt、Yt)を算出する。
【0040】
ここで、上述のように、スポット中心P2は、ハローP1の中心P3に対して、アパーチャ18の中心軸L18が位置ずれしている方向と対応する方向に位置ずれして形成されている。このため、アパーチャ初期位置A0に対してアパーチャ18の中心軸L18を調整する方向は対応する直線Lpの向きと一致している。同様に、スポットパターンQと対応するアパーチャ位置A1に対してアパーチャの中心軸L18を調整する方向は、対応する直線Lqの向きと一致している。このため、調整位置TのX方向の成分Xtは、交点DのX方向の成分Xdを相似比(α+β)で除した値となり、Xt=Xd/(α+β)で算出される。同様に、調整位置TのY方向の成分Ytは、交点DのY方向の成分Ydを相似比(α+β)で除した値となり、Yt=Yd/(α+β)で算出される。
【0041】
最後に、中心軸位置調整工程S6として、制御部30は、アパーチャ駆動部19を駆動させて、アパーチャ18の中心軸18の位置を、アパーチャ初期位置A0に対して調整位置Tとなる位置まで移動させる。これにより、アパーチャ18の中心軸L15を対物レンズ12の中心軸L12に略一致させるものとして、軸外収差を補正することができる。
【0042】
以上のように、アパーチャ18の中心軸L18の位置を異なるものとして複数のスポットパターンP、Qを形成することで、アパーチャ18の位置ずれを定量的に評価して自動的に調整することができ、短時間で容易に、かつ、精度の良い調整が実現できる。なお、本実施形態においては制御部30によって自動的に行うものとして説明したが、手作業によるものとしても、本手順により短時間で容易に、かつ、精度良くアパーチャの中心軸の位置調整を行うことが可能となる。また、リアルタイムで取得される画像を確認しながら、交点Dとなる位置にスポットパターンのハローの中心を一致させるように、手作業によってアパーチャ駆動部19と走査電極17を操作するものとしても良い。
【0043】
また、本実施形態においては、次のスポットパターンを形成する際に、アパーチャ18を移動させるとともに、走査電極17によってイオンビームIをシフトさせるものとしたが、アパーチャ18のみの移動としても同様の手法によって調整することが可能である。しかしながら、走査電極17によってイオンビームIをシフトさせることで、複数形成されるスポットパターンを互いに重ならないよう形成することができる。このため、取得した画像から、スポットパターンをより明確に識別することが可能となり、より正確な軸調整が可能となる。また、走査手段として走査電極17を備え、この走査電極17によってイオンビームIをシフトさせるものとしたが、これに変えて三軸ステージ6によって試料M側をX方向及びY方向に移動させるものでも良い。少なくともイオンビームIの照射位置を試料Mに対して相対移動できれば同様の効果を得ることができる。また、スポットパターン形成工程S2においては、イオンビームIを過焦点の状態とするものとしたが、これに限るものではなく、不足焦点の状態としても良い。少なくとも識別可能な一定の大きさのスポットパターンが形成されるような焦点状態であれば良いが、本実施形態のように過焦点の状態とすることで、より大きなスポットパターンに調整して識別を容易にすることが可能である。
【0044】
また、本実施形態においては二箇所のスポットパターンを形成して調整位置を算出するものとしたが、これに限るものではない。例えば、図7に示すように、4箇所形成するものとしても良い。この場合には、調整位置Tは、4つのスポットパターンO、P、Q、Rの各直線Lo、Lp、Lq、Lrの交点Eから算出され、誤差などにより一点で交差しない場合には、平均化することによって二箇所のスポットパターンによって算出した場合よりも精度を向上させることができる。また、一回だけ上記工程を行ってアパーチャの軸調整をするのに限定されるものではなく、複数回繰り返すものとしても良い。このようにすれば、一回目で観察手段による画像の倍率を小さくして調整し、二回目以降で倍率を大きくして調整することで、効率良く調整を行なうとともに、調整精度を向上させることができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図8は、この発明に係る第2の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0046】
図8に示すように、本実施形態の集束イオンビーム装置40は、観察手段41としてSEM鏡筒42を備えている。この実施形態においては、解析工程において使用する画像を取得する手段としてSEM鏡筒42及び二次電子検出器22を用いることで、より精度良い画像に基づいてアパーチャ18の軸調整を行うことができる。なお、イオンビーム鏡筒3の調整に限らず、SEM鏡筒42においても、図示しないアパーチャの軸調整を同様の方法で行うことが可能である。
【0047】
(第3の実施形態)
図9は、この発明に係る第2の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0048】
図9に示すように、本実施形態の集束イオンビーム装置50は、さらに希ガスイオンビーム鏡筒51を備えている。希ガスイオンビーム鏡筒51は、例えばアルゴンイオンなどの希ガスイオンをイオンビームとして低加速で照射可能なもので、試料を損傷させること無く加工することが可能であり、通常のイオンビームによる加工の仕上げ加工などにも好適に使用される。このような集束イオンビーム装置50においても、イオンビームイオンビーム鏡筒3のみならず、SEM鏡筒42や希ガスイオンビーム鏡筒51の図示しないアパーチャの軸調整を同様の方法で行うことができる。
【0049】
(第4の実施形態)
図10及び図11は、この発明に係る第2の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
図10に示すように、本実施形態の集束イオンビーム装置60は、さらにガス導入機構61を備えている。集束イオンビーム装置60では、イオンビームIを照射するとともに、ガス導入機構61によって有機ガスを試料表面に導入することでデポジションを行うことが可能である。このため、本実施形態の集束イオンビーム装置60においては、スポットパターン形成工程において、試料のエッチングによってスポットパターンを形成するのではなく、デポジションによってスポットパターンを形成するものとしても良い。すなわち、ガス導入機構61によって有機ガスGを導入するとともに、イオンビームIを照射することで、照射位置には図11に示すような凸状のスポットパターンP´が形成されることとなる。このような凸状のスポットパターンP´においても観察手段によって取得された画像から識別できることで、同様にスポットパターンP´に基づいてアパーチャの軸調整を行うことができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0052】
なお、荷電粒子ビーム装置として、集束イオンビーム装置を各実施形態で例に挙げたがこれらに限られるものは無い。例えば、同様に荷電粒子ビームとしてイオンビームを用いるものとしては、イオンビーム露光装置などが挙げられる。また、荷電粒子ビームとして電子ビームを用いるものとしては、走査型電子顕微鏡や、電子線露光装置などが挙げられる。これらにおいても、制御部として同様の構成を有することで、内蔵されたアパーチャを自動的に短時間で容易に、かつ、精度良く軸調整することができる。また、標準試料としては、エッチングやデポジションによってスポットパターンを形成可能なものが選択されるが、これ以外にも、レジスト膜なども選択される。この場合には、標準試料となるレジスト膜に荷電粒子ビームを照射して露光することで、露光パターンによって同様の調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の第1の実施形態の荷電粒子ビーム装置の構成図である。
【図2】この発明の第1の実施形態のアパーチャの軸調整のフロー図である。
【図3】この発明の第1の実施形態のアパーチャの中心軸と対物レンズの中心軸との関係を示す説明図である。
【図4】この発明の第1の実施形態のスポットパターン形成工程で形成されるスポットパターンの詳細図である。
【図5】この発明の第1の実施形態のスポットパターンが形成された標準試料の表面の画像を示す平面図である。
【図6】この発明の第1の実施形態の一箇所目におけるアパーチャの中心軸と二箇所目におけるアパーチャの中心軸との関係を示す説明図である。
【図7】この発明の第1の実施形態の変形例のスポットパターンが形成された標準試料の表面の画像を示す平面図である。
【図8】この発明の第2の実施形態の荷電粒子ビーム装置の構成図である。
【図9】この発明の第3の実施形態の荷電粒子ビーム装置の構成図である。
【図10】この発明の第4の実施形態の荷電粒子ビーム装置の構成図である。
【図11】この発明の第4の実施形態のスポットパターン形成工程で形成されるスポットパターンの詳細図である。
【符号の説明】
【0054】
1 集束イオンビーム装置(荷電粒子ビーム装置)
9 イオン源(荷電粒子源)
12 対物レンズ
L12 対物レンズの中心
17 走査電極(走査手段)
18 アパーチャ
L18 アパーチャの中心軸
19 アパーチャ駆動部
30 制御部
32 観察手段
33 スポットパターン形成手段
34 解析手段
35 調整位置決定手段
I イオンビーム(荷電粒子ビーム)
M 試料
N 標準試料(試料)
N1 表面
P、Q、O、R、P´ スポットパターン
P1、Q1、O1、R1 ハロー
P2、Q2、O2、R2 スポット中心
P3、Q3、O3、R3 ハローの中心
S2 スポットパターン形成工程
S4 スポットパターン解析工程
S5 調整位置決定工程
S6 中心軸位置調整工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に荷電粒子ビームを照射して、試料の加工、観察を行う荷電粒子ビーム装置及び荷電粒子ビーム装置におけるアパーチャの軸調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、イオンビームや電子ビームなどの荷電粒子ビームを所定位置に照射させて、加工、観察などを行う荷電粒子ビーム装置が様々な分野で用いられている。荷電粒子ビーム装置としては、例えば、荷電粒子ビームとして電子ビームを照射可能な走査型電子顕微鏡(SEM)、あるいは、荷電粒子ビームとして集束イオンビームを照射可能な集束イオンビーム装置(FIB)などがある。走査型電子顕微鏡では、試料表面上で電子ビームを走査しながら試料表面から発生する二次電子を検出することで試料表面の状態を観察することが可能である。また、集束イオンビーム装置では、走査型電子顕微鏡同様に二次電子を検出して試料表面を観察可能であるとともに、加速電圧を高くすることで試料のエッチングやデポジションを行うことが可能であり、TEM(透過電子顕微鏡)の試料作成やフォトマスクの修正などにも使用されている。また、近年、集束イオンビーム装置においては、集束イオンビームの加速電圧を100Vから5000V程度とする低加速領域で使用することで、低ダメージ加工を実現する方法が注目されている。また、加速電圧が3000V程度の範囲で、集束イオンビームの照射量を1nA以上とする大電流領域で使用することでワイヤボンディングや半田バンプなどの大面積加工を実現する方法なども注目されてきている。
【0003】
ところで、これらの荷電粒子ビーム装置においては、正確な観察や加工を実施するために、焦点位置の調整とともに、軸外収差と呼ばれるボケを除去する必要がある。軸外収差は、荷電粒子ビームの中心が、対物レンズの中心軸を通過しないことによって発生するものであり、より具体的には、荷電粒子ビームを絞り込んで対物レンズに入射させるアパーチャの中心軸と、対物レンズの中心軸との間にずれが生じていることに起因する。このため、軸外収差を除去して正確な観察や加工を実施するためには、使用前にアパーチャの中心軸の位置を、対物レンズの中心軸と一致させるように調整する必要がある。
【0004】
従来、このような軸外収差は、具体的には以下の方法によって除去してきた。すなわち、アパーチャの中心軸を任意の位置として、過焦点の状態の像と不足焦点の状態の像とを、対物レンズの焦点位置を調整することで交互に取得する。アパーチャの中心軸と対物レンズの中心軸とが略一致していない状態では、過焦点の状態で映し出される像の位置と、不足焦点の状態で映し出される像の位置とは異なるため、対物レンズの焦点位置を変化させると取得される像は大きく変化する。そして、アパーチャの中心軸を調整しながら上記作業を繰り返して、焦点位置を変化させても像の位置が変化しないようにすることで、アパーチャの中心軸と対物レンズの中心軸とを一致させていた(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、他の方法としては、過焦点の状態と不足焦点の状態とのそれぞれで、荷電粒子ビームをナイフエッジ上で走査して、過焦点の状態と不足焦点の状態とでナイフエッジによって検出された電流値の誤差を求める。そして、この電流値の誤差が所定範囲内になるまで、アパーチャの位置を繰り返し変化させて調整する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【非特許文献1】「走査電子顕微鏡の基礎と応用」、共立出版株式会社、1991年10月25日、p.78−79
【特許文献1】特開2005−276639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1による方法では、過焦点の状態の像と不足焦点の状態の像との変化から、アパーチャの中心軸のずれを定性的に把握するにすぎないため、アパーチャの中心軸の調整は、上記現象及び経験則に基づく手作業によって、繰り返し行うことで実現可能なものである。このため、アパーチャの中心軸の調整には、作業者の技量と、多大な時間とを必要としてしまう問題があった。特に上述のような大電流領域での使用では加工速度が速いので、試料の損傷を最小限とするように調整作業を迅速に行う方法が望まれている。さらに、作業者毎に調整精度にばらつきが生じてしまい、また、同じ作業者が調整したとしても、異なる装置間で調整精度を統一させることは困難であり、装置間で性能のばらつきが生じてしまう問題があった。また、上述のように低加速領域で荷電粒子ビームを照射する場合では、加速電圧が低電圧であることに起因しても荷電粒子ビームの収差が大きくなってボケが生じてしまう。このため、アパーチャの中心軸のずれに起因するものと、加速電圧に起因するものとを分離することができず、アパーチャの中心軸の調整を正確に行うことができなくなってしまう問題があった。
【0007】
また、特許文献1による方法では、電流値の誤差からある程度定量的にアパーチャのずれを評価して調整することは可能であるが、電流値の誤差とアパーチャとのずれとの相関関係は不明確であり、繰り返し行うことでずれを調整しなければならない。このため、非特許文献1同様に、調整に多大な時間を必要としてしまう問題があった。
【0008】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、短時間で容易に、かつ、精度良くアパーチャの中心軸の位置調整が可能な荷電粒子ビーム装置、及び、アパーチャの軸調整方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビームを放出する荷電粒子源と、前記荷電粒子ビームを所定の径に絞り込むアパーチャと、該アパーチャで絞り込まれた前記荷電粒子ビームを集束させて試料に照射させる対物レンズと、前記試料の表面の画像を取得可能な観察手段と、前記アパーチャの中心軸を、該中心軸に対して略直交する二軸であるX方向及びY方向に移動可能なアパーチャ駆動部と、該アパーチャ駆動部によって前記アパーチャを移動させて、前記対物レンズの中心軸に対して前記アパーチャの前記中心軸の位置を調整可能な制御部とを備え、該制御部は、前記アパーチャ駆動部によって前記アパーチャを前記X方向及び前記Y方向に異なる位置に移動させて前記試料に前記荷電粒子ビームを複数回照射することで、前記試料の表面に複数のスポットパターンを形成させるスポットパターン形成手段と、前記観察手段によって取得した画像から、前記試料に形成された各前記スポットパターンの中心をなすスポット中心の位置、及び外縁をなすハローの幾何学的な中心位置を算出する解析手段と、該解析手段で算出された各前記スポットパターンにおける前記スポット中心の位置と前記ハローの前記中心位置とを結んだ線同士が交差する位置に基づいて前記アパーチャの前記中心軸の調整位置を算出する調整位置決定手段とを有し、該調整位置決定手段によって算出された前記調整位置に前記アパーチャの前記中心軸を移動させることで前記アパーチャの位置を調整することを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、荷電粒子源から放出された荷電粒子ビームを、アパーチャで所定の径に絞り込むとともに、対物レンズで集束して試料に照射させる荷電粒子ビーム装置について、前記対物レンズの中心軸に対するアパーチャの中心軸の位置調整を行うアパーチャの軸調整方法であって、前記アパーチャの前記中心軸の位置を、該中心軸と略直交する二軸であるX方向及びY方向に異なるものとし、予め用意した試料に前記荷電粒子ビームを複数回照射して、前記試料の表面に複数のスポットパターンを形成するスポットパターン形成工程と、各該スポットパターンの中心をなすスポット中心の位置、及び、外縁をなすハローの幾何学的な中心位置を算出するスポットパターン解析工程と、各前記スポットパターンにおける前記ハローの前記中心位置と前記スポット中心の位置とを結んだ線同士が交差する位置に基づいて前記アパーチャの前記中心軸の調整位置を算出する調整位置決定工程と、算出された該調整位置に、前記アパーチャの前記中心軸を移動させる中心軸位置調整工程とを備えることを特徴としている。
【0011】
この発明に係る荷電粒子ビーム装置及びアパーチャの軸調整方法によれば、スポットパターン形成工程として、試料の表面に複数のスポットパターンを形成する。すなわち、制御部のスポットパターン形成手段は、荷電粒子源から荷電粒子ビームを放出させて、試料の表面の任意の位置に荷電粒子ビームを照射させる。これにより、試料の表面の任意の位置には、照射された荷電粒子ビームの焦点状態に応じて所定の大きさのスポットパターンが形成される。次に、制御部のスポットパターン形成手段は、アパーチャ駆動部によってアパーチャの中心軸をX方向及びY方向に所定の移動量分移動させて、再び荷電粒子ビームを照射することでスポットパターンを形成する。このようにして形成された複数のスポットパターンは、それぞれ、中心をなすスポット中心と、外縁をなすハローとを有した形状を呈する。ハローは試料表面における荷電粒子ビームの照射範囲を表わすものである。また、対物レンズの中心軸に対してアパーチャの中心軸が位置ずれしている場合には、ハローの幾何学的な中心位置に対して、アパーチャの中心軸の位置ずれの方向と対応する方向に偏心した位置にスポット中心が形成されることとなる。
【0012】
次に、スポットパターン解析工程として、形成されたスポットパターンの解析を行う。すなわち、制御部の解析手段は、観察手段によって取得した試料の表面の画像に映し出された各スポットパターンにおいて、スポット中心の位置及びハローの幾何学的な中心位置を算出する。次に、調整位置決定工程として、アパーチャの中心軸と対物レンズの中心軸とが略一致するようなアパーチャの中心軸の調整位置を決定する。すなわち、制御部の調整位置決定手段は、スポットパターン解析工程の結果から、各スポットパターンにおけるスポット中心の位置とハローの中心位置とを結んだ線同士が交差する位置を調整位置として算出する。最後に、中心軸位置調整工程として、制御部は、アパーチャ駆動部によってアパーチャの中心軸を算出された調整位置に移動させることで、アパーチャの中心軸は対物レンズの中心軸と略一致した状態とすることができる。
【0013】
また、上記の荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビームの照射位置を前記試料に対して相対移動させることが可能な走査手段を備え、前記制御部の前記スポットパターン形成手段は、前記アパーチャの前記中心軸を移動させて前記試料に前記荷電粒子ビームを照射させる毎に、前記アパーチャの前記X方向及び前記Y方向へのそれぞれの移動量に一定の値を乗じた分だけ、前記走査手段によって前記荷電粒子ビームの前記照射位置を前記試料に対して相対移動させることがより好ましいとされている。
【0014】
また、上記のアパーチャの軸調整方法において、前記スポットパターン形成工程は、前記アパーチャの前記中心軸を移動させて前記試料に前記荷電粒子ビームを照射する毎に、前記アパーチャの前記X方向及び前記Y方向へのそれぞれの移動量に一定の値を乗じた分だけ、前記荷電粒子ビームの照射位置を前記試料に対して相対移動させることがより好ましいとされている。
【0015】
この発明に係る荷電粒子ビーム装置及びアパーチャの軸調整方法によれば、スポットパターン形成工程において複数のスポットパターンを形成する際に、アパーチャの中心軸の位置をX方向及びY方向に異なる位置とするともに、走査手段によって荷電粒子ビームの照射位置を試料に対して相対移動させる。このため、試料の表面において複数のスポットパターンを互いに重ならないよう形成することができ、スポットパターンをより明確に識別可能な画像を取得することができ、より正確な軸調整が可能となる。この際、荷電粒子ビームの照射位置の相対的な移動量を、アパーチャの中心軸のX方向及びY方向への移動量に一定の値を乗じた分とすることで、その移動方向を、対物レンズの中心軸に対するアパーチャの中心軸の位置ずれの方向と一致させることができる。このため、上記のように照射位置を相対移動させても、調査位置決定工程において、スポット中心の位置とハローの中心位置とを結んだ線同士が交差する位置に基づいて、同様に調査位置を決定することができる。
【0016】
また、上記の荷電粒子ビーム装置において、前記制御部は、前記スポットパターン形成手段によって前記試料に前記荷電粒子ビームを照射する際に、前記試料に対して前記荷電粒子ビームを過焦点の状態に設定することがより好ましいとされている。
【0017】
また、上記のアパーチャの軸調整方法において、前記スポットパターン形成工程は、前記対物レンズによって集束される前記荷電粒子ビームを過焦点の状態で前記試料に照射させることがより好ましいとされている。
【0018】
この発明に係る荷電粒子ビーム装置及びアパーチャの軸調整方法によれば、スポットパターン形成工程において、制御部のスポットパターン形成手段によって荷電粒子ビームを過焦点の状態に設定して試料に照射することで、不足焦点の状態に比べて、形成されるスポットパターンをより大きく形成することができる。このため、スポットパターン解析工程において、取得された画像からスポットパターンをより明確に識別することができ、より正確な軸調整が可能となる。
【0019】
また、上記の荷電粒子ビーム装置において、前記制御部の前記解析手段は、前記観察手段から取得した前記画像を二値化処理した二値化データとするとともに、該二値化データに基づいて前記スポットパターンの前記ハローの前記中心位置及び前記スポット中心の位置を算出することがより好ましいとされている。
【0020】
また、上記のアパーチャの軸調整方法において、前記スポットパターン解析工程は、前記スポットパターンが形成された前記試料の表面の前記画像を二値化処理した二値化データを作成し、該二値化データから各前記スポットパターンの前記ハローの前記中心位置と前記スポット中心の位置とを算出することがより好ましいとされている。
【0021】
この発明に係る荷電粒子ビーム装置及びアパーチャの軸調整方法によれば、スポットパターン解析工程において、制御部の解析手段によって画像を二値化処理した二値化データとすることで、画像に表示されたスポットパターンをより明確に識別することができ、より正確な軸調整が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の荷電粒子ビーム装置によれば、制御部として、スポットパターン形成手段と、解析手段と、調整位置決定手段とを有し、複数のスポットパターンを試料に形成するだけで、自動的に、短時間で容易に、かつ、精度良くアパーチャの中心軸の位置調整を行うことができる。
また、本発明のアパーチャの軸調整方法によれば、スポットパターン形成工程と、スポットパターン解析工程と、調整位置決定工程とを備えて、複数のスポットパターンを試料に形成するだけで、短時間で容易に、かつ、精度良くアパーチャの中心軸の位置調整を行うことができ、自動化の適用も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、この発明に係る第1の実施形態を示している。図1に示すように、荷電粒子ビーム装置である集束イオンビーム装置(FIB)1は、試料Mに荷電粒子ビームであるイオンビームIを照射することによって、試料Mの表面の加工等を行うものである。例えばウエハを試料Mとして配置し、TEM(透過型電子顕微鏡)観察用の試料を作製することが可能であり、あるいは、フォトリソグラフィ技術におけるフォトマスクを試料Mとして、フォトマスクの修正などが可能である。以下、本実施形態における集束イオンビーム装置1の詳細について説明する。
【0024】
図1に示すように、集束イオンビーム装置1は、試料Mを配置可能な試料台2と、試料台2に配置された試料M対してイオンビームIを照射可能なイオンビーム鏡筒3とを備える。試料台2は、真空チャンバー4の内部4aに配置されている。真空チャンバー4には、真空ポンプ5が設けられていて、内部4aを高真空雰囲気まで排気可能である。また、試料台2には三軸ステージ6が設けられていて、試料MをイオンビームIの照射方向であるZ方向と、Z方向と略直交する二軸であるX方向及びY方向に移動させることが可能である。
【0025】
イオンビーム鏡筒3は、先端に真空チャンバー4と連通する照射口7が形成された筒体8と、筒体8の内部8aにおいて、基端側に収容された荷電粒子源であるイオン源9とを備える。イオン源9を構成するイオンとしては、例えばガリウムイオン(Ga+)などである。イオン源9は、イオン源制御電源10と接続されている。そして、イオン源制御電源10によって加速電圧及び引き出し電圧を印加することで、イオン源9から引き出されたイオンを加速させてイオンビームIとして放出することが可能である。
【0026】
また、筒体8の内部8aにおいて、イオン源9よりも先端側には、イオン源9から放出されたイオンビームIを集束させる光学系として、コンデンサレンズ11及び対物レンズ12が設けられている。コンデンサレンズ11及び対物レンズ12は、それぞれの中心軸がZ方向と略平行な状態で互いに一致するように調整されている。コンデンサレンズ11及び対物レンズ12は、静電レンズであり、貫通孔11a、12aが形成された3枚の電極で形成されていて、コンデンサレンズ制御電源13、対物レンズ制御電源14とそれぞれ接続されている。コンデンサレンズ制御電源13よってコンデンサレンズ11に電圧を印加することで、貫通孔11aを通過する拡散状態にあるイオンビームIを集束させることができる。さらに、対物レンズ制御電源14によって対物レンズ12に電圧を印加することで、貫通孔12aを通過するイオンビームIをさらに集束させて、集束イオンビームとして試料Mに照射させることが可能である。
【0027】
また、コンデンサレンズ11と対物レンズ12との間には、基端側から順に可動絞り15と、スティグマ16と、走査手段である走査電極17とが設けられている。可動絞り15は、所定の径を有する貫通孔であるアパーチャ18と、アパーチャ18をX方向及びY方向に移動させるアパーチャ駆動部19とを備える。アパーチャ18は、コンデンサレンズ11から照射されるイオンビームIを自身の径に応じて絞り込むものである。本実施形態においては、アパーチャ18は一つ設けられているのみであるが、径を異なるものとして複数有し、アパーチャ駆動部19で移動させて好適な径のものを選択可能な構成としても良い。また、スティグマ16は、通過するイオンビームIの非点補正を行うものであり、スティグマ制御電源20から電圧を印加することで行われる。また、走査電極17は、走査電極制御電源21によって電圧を印加することで、通過するイオンビームIをX方向及びY方向に所定量だけ偏向させることが可能であり、これにより試料M上でイオンビームIを走査させる、あるいは、所定の位置に照射するように照射位置をシフトさせることができる。
【0028】
また、上記のイオン源制御電源10、コンデンサレンズ制御電源13、対物レンズ制御電源14、スティグマ制御電源20、及び走査電極制御電源21は、制御部30と接続されている。すなわち、制御部30で各電源を制御することによって、所定の加速電圧及び電流のイオンビームIを試料Mの所定位置に焦点を合わせて照射することが可能である。また、制御部30には端末25が接続されていて、端末25によって各種条件を設定して試料MにイオンビームIを照射することも可能である。また、アパーチャ駆動部19及び三軸ステージ6も制御部30に接続されていて、制御部30による制御の下、アパーチャ18の調整を行い、また、試料Mの位置調整を行うことが可能である。さらに、集束イオンビーム装置1は、試料MにイオンビームIを照射した際に試料Mから発生する二次電子を検出可能な二次電子検出器22を備えていて、制御部30の画像処理手段31に検出結果を出力可能である。画像処理手段31では、検出結果から試料Mの表面の状態を画像として取得することが可能であり、すなわち、二次電子検出器22及び画像処理手段31によって観察手段32を構成している。なお、観察手段32で取得した画像データは、端末25でモニタリングすることが可能である。
【0029】
ここで、イオンビームIは、対物レンズ12の中心軸とアパーチャ18の中心軸とがX方向及びY方向に位置ずれしていると、軸外収差と呼ばれるボケが生じてしまう。このような軸外収差が生じた状態では、試料Mの所定位置にイオンビームIを正確に照射することができなくなってしまう。このため、制御部30は、試料Mの観察、加工をするに際して、この軸外収差を自動的に補正するために、スポットパターン形成手段33、解析手段34、及び、調整位置決定手段35を備えている。以下に、アパーチャ18の軸調整を行って軸外収差を補正する手順ととともに、制御部30の各構成の作用の詳細について、図2のフロー図に基づいて説明する。
【0030】
まず、予め用意した標準試料Nを試料台2に配置する(ステップS1)。標準試料Nは、イオンビームIの照射によって表面にスポットパターンと呼ばれる照射痕が形成可能な材質であれば良いが、アパーチャ18の軸調整を行うためのものであるため、平坦面を有しているものが好ましい。なお、試料表面にスポットパターンが形成されても観察、加工時に差し支えなければ、実際に観察、加工する試料Mを標準試料Nとしても良い。
【0031】
次に、スポットパターン形成工程S2として、標準試料Nの表面N1の複数箇所にイオンビームIを照射して、複数のスポットパターンを形成する。まず、制御部30のスポットパターン形成手段33は、標準試料Nの表面N1において、任意の位置にイオンビームIを一定時間照射させてスポットパターンPを形成させる(ステップS21)。この際、対物レンズ12による焦点位置を標準試料Nの表面N1に対して過焦点の状態、すなわち対物レンズ12と標準試料Nの表面N1との間の距離を焦点距離よりも長くする。また、この時のアパーチャ18の中心軸L18のX方向及びY方向の位置を、アパーチャ初期位置A0(0、0)と設定し、また、標準試料Nの表面N1上における照射位置を初期照射位置B0(0、0)と設定する。
【0032】
図3は、イオンビームIを照射した様子を模式的に示したものである。図3において、二点鎖線L´で示すように、アパーチャ15の中心軸L15が対物レンズ12の中心軸L12と一致する場合には、イオンビームIは対物レンズ12の中心軸L12と略対称な照射範囲で照射される。一方、アパーチャ18の中心軸L18が対物レンズ12の中心軸L12に対して位置ずれしたままの状態であるアパーチャ初期位置A0の場合には、過焦点の状態であるので、その位置ずれと方向を同じくして焦点位置Fを挟んで反対側に偏心した初期照射位置B0で照射され、初期照射位置B0を幾何学的な中心とする範囲で標準試料NがエッチングされてスポットパターンPが形成される。
【0033】
図4(a)は、スポットパターンPを観察手段32で観察した場合の画像を示していて、図4(b)は図4(a)におけるA−A断面で破断した断面図を示している。図4(a)、(b)に示すように、標準試料Nの表面N1の照射範囲には、イオンビームIによってエッチングされて凹みが形成されることになるが、この凹みがスポットパターンPとして画像上で認識される。すなわち、表面N1の凹みの始まりが外縁をなす略円形状のハローP1として認識され、初期照射位置B0はハローP1の幾何学的な中心P3と略一致する。また、図4(b)に示すように、スポットパターンPは、内部へ行くに従って急激に凹みの深さが深くなるような断面形状を呈することとなる。このため、図4(a)に示すように、取得される画像には、ハローP1の内部に凹みの深さに応じて略円形状のグラデーションが形成され、その中心にスポット中心P2が形成される。スポット中心P2は、最も深くエッチングされた位置を示している。スポット中心P2付近においては凹みが急激に深くなるので、その付近から放出される二次電子は、そのほとんどが観察手段32の二次電子検出器22で検出されない。このため、取得された画像では、スポット中心P2は黒点として認識される。ここで、アパーチャ18の中心軸L18が対物レンズ12の中心軸L12に対して位置ずれしていることで、スポット中心P2は、ハローP1の幾何学的な中心P3に対して位置ずれして形成される。そして、その位置ずれする方向は、アパーチャ18の中心軸L18が対物レンズ12の中心軸12に対して位置ずれしている方向と対応するものとなる。
【0034】
このようにして、最初のスポットパターンPが形成されたら、さらに次のスポットパターンQを形成する。まず、制御部30のスポットパターン形成手段33は、アパーチャ駆動部19を駆動させて、アパーチャ初期位置A0(0、0)から、予め設定されているX方向への移動量ΔX1及びY方向への移動量ΔY1だけ移動させたアパーチャ位置A1(ΔX1、ΔY1)に、アパーチャ18を移動させる(ステップS22)。さらに、スポットパターン形成手段33は、走査電極制御電源21及び走査電極17によって、アパーチャ18の移動量ΔX1、ΔY1に予め設定された定数αを乗じた大きさの移動量α・ΔX1、α・ΔY1だけイオンビームIをシフトさせる(ステップS23)。そして、この状態で一定時間標準試料NにイオンビームIを照射して、二箇所目のスポットパターンQを形成する(ステップS24)。
【0035】
このようにして、標準試料Nの表面N1にスポットパターンP、Qの形成が完了したら、観察手段32によって標準試料Nの表面N1の画像を取得する(ステップS3)。すなわち、制御部30は、イオン源制御電源によって加速電圧を低く設定してイオン源9からイオンビームIを照射させ、走査電極17によって標準試料Nの表面N1上全体に走査させる。そして、照射に応じて標準試料Nの表面N1から放出される二次電子を順次観察手段32の二次電子検出器22で検出し、その結果を画像処理手段31で画像化することで標準試料Nの表面Nの画像を取得することができる。図5に取得した画像を示す。
【0036】
次に、スポットパターン解析工程S4として、取得した画像から、形成されたスポットパターンP、Qの解析を行う。まず、制御部30の解析手段34は、取得した画像の二値化処理を行い、二値化データを作成する(ステップS41)。これにより、スポットパターンP、Qが形成されていない標準試料Nの表面N1は黒色となる一方、スポットパターンP、Qの内部は白色となり、コントラストによって明確にハローP1、Q1を識別することができる。さらに、スポットパターンP、Qのスポット中心P2、Q2は黒色となり、スポットパターンP、Qの他の部分と明確に識別することが可能となる。
【0037】
次に、図5に示すように、画像の二値化データに基づいて、各スポットパターンP、Qにおける、ハローP1、Q1の中心P3、Q3の位置と、スポット中心P2、Q2の位置を算出する(S42)。すなわち、まず、一箇所目のスポットパターンPにおいて、認識されたハローP1からその幾何学的な中心P3の位置を算出し、これを初期照射位置B0(0、0)とする。そして、この初期照射位置B0(0、0)を基準として、スポットパターンPのスポット中心P2の位置C0(Xc0、Yc0)を算出する。さらに、初期照射位置B0(0、0)を基準として、二箇所目のスポットパターンQのハローQ1の幾何学的な中心Q3である照射位置B1(Xb1、Yb1)と、スポット中心Q2の位置C1(Xc1、Yc1)を算出する。
【0038】
ここで、一箇所目の原点である初期照射位置B0と、二箇所目の照射位置B1との間には、以下に示す関係がある。図6に示すように、アパーチャ18の中心軸L18を一箇所目のアパーチャ初期位置A0から二箇所目のアパーチャ位置A1に移動させると、焦点位置Fは一定であるため、標準試料Nの表面上N1における照射位置は初期照射位置B0から照射位置B1´に変位する。照射位置B1´は、アパーチャ18の移動量ΔX1、ΔY1、及び、焦点位置Fと標準試料Nとの位置関係によって決定される係数βを用いて、焦点位置Fを基準とする相似的関係から、B1´(βΔX1、βΔY1)で表わされる。すなわち、図5に示すように、二箇所目としてイオンビームIが照射された照射位置B1におけるX方向の成分Xb1は、アパーチャ18の移動量及びイオンビームIのシフト量からXb1=(α+β)・ΔX1で表わされることとなる。同様に、Y方向の成分Yb1は、Yb1=(α+β)・ΔY1で表わされることとなり、すなわち、アパーチャ18の中心軸L18の位置と、標準試料Nの表面N1上における照射位置とは、相似比(α+β)の相似的関係を有することとなる。
【0039】
次に、調整位置決定工程S5として、アパーチャ18の中心軸L18を対物レンズ12の中心軸L12に一致させることが可能となる調整位置Tの算出を行う。まず、図5に示すように、制御部30の調整位置決定手段35は、スポットパターン解析工程S4における算出結果に基づいて、スポットパターンPのハローP1の中心P3とスポット中心P2とを結んだ直線Lpと、スポットパターンQのハローQ1の中心Q3とスポット中心Q2とを結んだ直線Lqとの交点D(Xd、Yd)を算出する(ステップS51)。次に、算出した交点Dに基づいて、アパーチャ初期位置A0を基準としたアパーチャ18の中心軸L18の調整位置T(Xt、Yt)を算出する。
【0040】
ここで、上述のように、スポット中心P2は、ハローP1の中心P3に対して、アパーチャ18の中心軸L18が位置ずれしている方向と対応する方向に位置ずれして形成されている。このため、アパーチャ初期位置A0に対してアパーチャ18の中心軸L18を調整する方向は対応する直線Lpの向きと一致している。同様に、スポットパターンQと対応するアパーチャ位置A1に対してアパーチャの中心軸L18を調整する方向は、対応する直線Lqの向きと一致している。このため、調整位置TのX方向の成分Xtは、交点DのX方向の成分Xdを相似比(α+β)で除した値となり、Xt=Xd/(α+β)で算出される。同様に、調整位置TのY方向の成分Ytは、交点DのY方向の成分Ydを相似比(α+β)で除した値となり、Yt=Yd/(α+β)で算出される。
【0041】
最後に、中心軸位置調整工程S6として、制御部30は、アパーチャ駆動部19を駆動させて、アパーチャ18の中心軸18の位置を、アパーチャ初期位置A0に対して調整位置Tとなる位置まで移動させる。これにより、アパーチャ18の中心軸L15を対物レンズ12の中心軸L12に略一致させるものとして、軸外収差を補正することができる。
【0042】
以上のように、アパーチャ18の中心軸L18の位置を異なるものとして複数のスポットパターンP、Qを形成することで、アパーチャ18の位置ずれを定量的に評価して自動的に調整することができ、短時間で容易に、かつ、精度の良い調整が実現できる。なお、本実施形態においては制御部30によって自動的に行うものとして説明したが、手作業によるものとしても、本手順により短時間で容易に、かつ、精度良くアパーチャの中心軸の位置調整を行うことが可能となる。また、リアルタイムで取得される画像を確認しながら、交点Dとなる位置にスポットパターンのハローの中心を一致させるように、手作業によってアパーチャ駆動部19と走査電極17を操作するものとしても良い。
【0043】
また、本実施形態においては、次のスポットパターンを形成する際に、アパーチャ18を移動させるとともに、走査電極17によってイオンビームIをシフトさせるものとしたが、アパーチャ18のみの移動としても同様の手法によって調整することが可能である。しかしながら、走査電極17によってイオンビームIをシフトさせることで、複数形成されるスポットパターンを互いに重ならないよう形成することができる。このため、取得した画像から、スポットパターンをより明確に識別することが可能となり、より正確な軸調整が可能となる。また、走査手段として走査電極17を備え、この走査電極17によってイオンビームIをシフトさせるものとしたが、これに変えて三軸ステージ6によって試料M側をX方向及びY方向に移動させるものでも良い。少なくともイオンビームIの照射位置を試料Mに対して相対移動できれば同様の効果を得ることができる。また、スポットパターン形成工程S2においては、イオンビームIを過焦点の状態とするものとしたが、これに限るものではなく、不足焦点の状態としても良い。少なくとも識別可能な一定の大きさのスポットパターンが形成されるような焦点状態であれば良いが、本実施形態のように過焦点の状態とすることで、より大きなスポットパターンに調整して識別を容易にすることが可能である。
【0044】
また、本実施形態においては二箇所のスポットパターンを形成して調整位置を算出するものとしたが、これに限るものではない。例えば、図7に示すように、4箇所形成するものとしても良い。この場合には、調整位置Tは、4つのスポットパターンO、P、Q、Rの各直線Lo、Lp、Lq、Lrの交点Eから算出され、誤差などにより一点で交差しない場合には、平均化することによって二箇所のスポットパターンによって算出した場合よりも精度を向上させることができる。また、一回だけ上記工程を行ってアパーチャの軸調整をするのに限定されるものではなく、複数回繰り返すものとしても良い。このようにすれば、一回目で観察手段による画像の倍率を小さくして調整し、二回目以降で倍率を大きくして調整することで、効率良く調整を行なうとともに、調整精度を向上させることができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図8は、この発明に係る第2の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0046】
図8に示すように、本実施形態の集束イオンビーム装置40は、観察手段41としてSEM鏡筒42を備えている。この実施形態においては、解析工程において使用する画像を取得する手段としてSEM鏡筒42及び二次電子検出器22を用いることで、より精度良い画像に基づいてアパーチャ18の軸調整を行うことができる。なお、イオンビーム鏡筒3の調整に限らず、SEM鏡筒42においても、図示しないアパーチャの軸調整を同様の方法で行うことが可能である。
【0047】
(第3の実施形態)
図9は、この発明に係る第2の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0048】
図9に示すように、本実施形態の集束イオンビーム装置50は、さらに希ガスイオンビーム鏡筒51を備えている。希ガスイオンビーム鏡筒51は、例えばアルゴンイオンなどの希ガスイオンをイオンビームとして低加速で照射可能なもので、試料を損傷させること無く加工することが可能であり、通常のイオンビームによる加工の仕上げ加工などにも好適に使用される。このような集束イオンビーム装置50においても、イオンビームイオンビーム鏡筒3のみならず、SEM鏡筒42や希ガスイオンビーム鏡筒51の図示しないアパーチャの軸調整を同様の方法で行うことができる。
【0049】
(第4の実施形態)
図10及び図11は、この発明に係る第2の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
図10に示すように、本実施形態の集束イオンビーム装置60は、さらにガス導入機構61を備えている。集束イオンビーム装置60では、イオンビームIを照射するとともに、ガス導入機構61によって有機ガスを試料表面に導入することでデポジションを行うことが可能である。このため、本実施形態の集束イオンビーム装置60においては、スポットパターン形成工程において、試料のエッチングによってスポットパターンを形成するのではなく、デポジションによってスポットパターンを形成するものとしても良い。すなわち、ガス導入機構61によって有機ガスGを導入するとともに、イオンビームIを照射することで、照射位置には図11に示すような凸状のスポットパターンP´が形成されることとなる。このような凸状のスポットパターンP´においても観察手段によって取得された画像から識別できることで、同様にスポットパターンP´に基づいてアパーチャの軸調整を行うことができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0052】
なお、荷電粒子ビーム装置として、集束イオンビーム装置を各実施形態で例に挙げたがこれらに限られるものは無い。例えば、同様に荷電粒子ビームとしてイオンビームを用いるものとしては、イオンビーム露光装置などが挙げられる。また、荷電粒子ビームとして電子ビームを用いるものとしては、走査型電子顕微鏡や、電子線露光装置などが挙げられる。これらにおいても、制御部として同様の構成を有することで、内蔵されたアパーチャを自動的に短時間で容易に、かつ、精度良く軸調整することができる。また、標準試料としては、エッチングやデポジションによってスポットパターンを形成可能なものが選択されるが、これ以外にも、レジスト膜なども選択される。この場合には、標準試料となるレジスト膜に荷電粒子ビームを照射して露光することで、露光パターンによって同様の調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の第1の実施形態の荷電粒子ビーム装置の構成図である。
【図2】この発明の第1の実施形態のアパーチャの軸調整のフロー図である。
【図3】この発明の第1の実施形態のアパーチャの中心軸と対物レンズの中心軸との関係を示す説明図である。
【図4】この発明の第1の実施形態のスポットパターン形成工程で形成されるスポットパターンの詳細図である。
【図5】この発明の第1の実施形態のスポットパターンが形成された標準試料の表面の画像を示す平面図である。
【図6】この発明の第1の実施形態の一箇所目におけるアパーチャの中心軸と二箇所目におけるアパーチャの中心軸との関係を示す説明図である。
【図7】この発明の第1の実施形態の変形例のスポットパターンが形成された標準試料の表面の画像を示す平面図である。
【図8】この発明の第2の実施形態の荷電粒子ビーム装置の構成図である。
【図9】この発明の第3の実施形態の荷電粒子ビーム装置の構成図である。
【図10】この発明の第4の実施形態の荷電粒子ビーム装置の構成図である。
【図11】この発明の第4の実施形態のスポットパターン形成工程で形成されるスポットパターンの詳細図である。
【符号の説明】
【0054】
1 集束イオンビーム装置(荷電粒子ビーム装置)
9 イオン源(荷電粒子源)
12 対物レンズ
L12 対物レンズの中心
17 走査電極(走査手段)
18 アパーチャ
L18 アパーチャの中心軸
19 アパーチャ駆動部
30 制御部
32 観察手段
33 スポットパターン形成手段
34 解析手段
35 調整位置決定手段
I イオンビーム(荷電粒子ビーム)
M 試料
N 標準試料(試料)
N1 表面
P、Q、O、R、P´ スポットパターン
P1、Q1、O1、R1 ハロー
P2、Q2、O2、R2 スポット中心
P3、Q3、O3、R3 ハローの中心
S2 スポットパターン形成工程
S4 スポットパターン解析工程
S5 調整位置決定工程
S6 中心軸位置調整工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを放出する荷電粒子源と、
前記荷電粒子ビームを所定の径に絞り込むアパーチャと、
該アパーチャで絞り込まれた前記荷電粒子ビームを集束させて試料に照射させる対物レンズと、
前記試料の表面の画像を取得可能な観察手段と、
前記アパーチャの中心軸を、該中心軸に対して略直交する二軸であるX方向及びY方向に移動可能なアパーチャ駆動部と、
該アパーチャ駆動部によって前記アパーチャを移動させて、前記対物レンズの中心軸に対して前記アパーチャの前記中心軸の位置を調整可能な制御部とを備え、
該制御部は、前記アパーチャ駆動部によって前記アパーチャを前記X方向及び前記Y方向に異なる位置に移動させて前記試料に前記荷電粒子ビームを複数回照射することで、前記試料の表面に複数のスポットパターンを形成させるスポットパターン形成手段と、
前記観察手段によって取得した画像から、前記試料に形成された各前記スポットパターンの中心をなすスポット中心の位置、及び外縁をなすハローの幾何学的な中心位置を算出する解析手段と、
該解析手段で算出された各前記スポットパターンにおける前記スポット中心の位置と前記ハローの前記中心位置とを結んだ線同士が交差する位置に基づいて前記アパーチャの前記中心軸の調整位置を算出する調整位置決定手段とを有し、該調整位置決定手段によって算出された前記調整位置に前記アパーチャの前記中心軸を移動させることで前記アパーチャの位置を調整することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記荷電粒子ビームの照射位置を前記試料に対して相対移動させることが可能な走査手段を備え、
前記制御部の前記スポットパターン形成手段は、前記アパーチャの前記中心軸を移動させて前記試料に前記荷電粒子ビームを照射させる毎に、前記アパーチャの前記X方向及び前記Y方向へのそれぞれの移動量に一定の値を乗じた分だけ、前記走査手段によって前記荷電粒子ビームの前記照射位置を前記試料に対して相対移動させることを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記制御部は、前記スポットパターン形成手段によって前記試料に前記荷電粒子ビームを照射する際に、前記試料に対して前記荷電粒子ビームを過焦点の状態に設定することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記制御部の前記解析手段は、前記観察手段から取得した前記画像を二値化処理した二値化データとするとともに、該二値化データに基づいて前記スポットパターンの前記ハローの前記中心位置及び前記スポット中心の位置を算出することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
荷電粒子源から放出された荷電粒子ビームを、アパーチャで所定の径に絞り込むとともに、対物レンズで集束して試料に照射させる荷電粒子ビーム装置について、前記対物レンズの中心軸に対するアパーチャの中心軸の位置調整を行うアパーチャの軸調整方法であって、
前記アパーチャの前記中心軸の位置を、該中心軸と略直交する二軸であるX方向及びY方向に異なるものとし、予め用意した試料に前記荷電粒子ビームを複数回照射して、前記試料の表面に複数のスポットパターンを形成するスポットパターン形成工程と、
各該スポットパターンの中心をなすスポット中心の位置、及び、外縁をなすハローの幾何学的な中心位置を算出するスポットパターン解析工程と、
各前記スポットパターンにおける前記ハローの前記中心位置と前記スポット中心の位置とを結んだ線同士が交差する位置に基づいて前記アパーチャの前記中心軸の調整位置を算出する調整位置決定工程と、
算出された該調整位置に、前記アパーチャの前記中心軸を移動させる中心軸位置調整工程とを備えることを特徴とするアパーチャの軸調整方法。
【請求項6】
請求項5に記載のアパーチャの軸調整方法において、
前記スポットパターン形成工程は、前記アパーチャの前記中心軸を移動させて前記試料に前記荷電粒子ビームを照射する毎に、前記アパーチャの前記X方向及び前記Y方向へのそれぞれの移動量に一定の値を乗じた分だけ、前記荷電粒子ビームの照射位置を前記試料に対して相対移動させることを特徴とするアパーチャの軸調整方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のアパーチャの軸調整方法において、
前記スポットパターン形成工程は、前記対物レンズによって集束される前記荷電粒子ビームを過焦点の状態で前記試料に照射させることを特徴とするアパーチャの軸調整方法。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれかに記載のアパーチャの軸調整方法において、
前記スポットパターン解析工程は、前記スポットパターンが形成された前記試料の表面の前記画像を二値化処理した二値化データを作成し、該二値化データから各前記スポットパターンの前記ハローの前記中心位置と前記スポット中心の位置とを算出することを特徴とするアパーチャの軸調整方法。
【請求項1】
荷電粒子ビームを放出する荷電粒子源と、
前記荷電粒子ビームを所定の径に絞り込むアパーチャと、
該アパーチャで絞り込まれた前記荷電粒子ビームを集束させて試料に照射させる対物レンズと、
前記試料の表面の画像を取得可能な観察手段と、
前記アパーチャの中心軸を、該中心軸に対して略直交する二軸であるX方向及びY方向に移動可能なアパーチャ駆動部と、
該アパーチャ駆動部によって前記アパーチャを移動させて、前記対物レンズの中心軸に対して前記アパーチャの前記中心軸の位置を調整可能な制御部とを備え、
該制御部は、前記アパーチャ駆動部によって前記アパーチャを前記X方向及び前記Y方向に異なる位置に移動させて前記試料に前記荷電粒子ビームを複数回照射することで、前記試料の表面に複数のスポットパターンを形成させるスポットパターン形成手段と、
前記観察手段によって取得した画像から、前記試料に形成された各前記スポットパターンの中心をなすスポット中心の位置、及び外縁をなすハローの幾何学的な中心位置を算出する解析手段と、
該解析手段で算出された各前記スポットパターンにおける前記スポット中心の位置と前記ハローの前記中心位置とを結んだ線同士が交差する位置に基づいて前記アパーチャの前記中心軸の調整位置を算出する調整位置決定手段とを有し、該調整位置決定手段によって算出された前記調整位置に前記アパーチャの前記中心軸を移動させることで前記アパーチャの位置を調整することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記荷電粒子ビームの照射位置を前記試料に対して相対移動させることが可能な走査手段を備え、
前記制御部の前記スポットパターン形成手段は、前記アパーチャの前記中心軸を移動させて前記試料に前記荷電粒子ビームを照射させる毎に、前記アパーチャの前記X方向及び前記Y方向へのそれぞれの移動量に一定の値を乗じた分だけ、前記走査手段によって前記荷電粒子ビームの前記照射位置を前記試料に対して相対移動させることを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記制御部は、前記スポットパターン形成手段によって前記試料に前記荷電粒子ビームを照射する際に、前記試料に対して前記荷電粒子ビームを過焦点の状態に設定することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記制御部の前記解析手段は、前記観察手段から取得した前記画像を二値化処理した二値化データとするとともに、該二値化データに基づいて前記スポットパターンの前記ハローの前記中心位置及び前記スポット中心の位置を算出することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
荷電粒子源から放出された荷電粒子ビームを、アパーチャで所定の径に絞り込むとともに、対物レンズで集束して試料に照射させる荷電粒子ビーム装置について、前記対物レンズの中心軸に対するアパーチャの中心軸の位置調整を行うアパーチャの軸調整方法であって、
前記アパーチャの前記中心軸の位置を、該中心軸と略直交する二軸であるX方向及びY方向に異なるものとし、予め用意した試料に前記荷電粒子ビームを複数回照射して、前記試料の表面に複数のスポットパターンを形成するスポットパターン形成工程と、
各該スポットパターンの中心をなすスポット中心の位置、及び、外縁をなすハローの幾何学的な中心位置を算出するスポットパターン解析工程と、
各前記スポットパターンにおける前記ハローの前記中心位置と前記スポット中心の位置とを結んだ線同士が交差する位置に基づいて前記アパーチャの前記中心軸の調整位置を算出する調整位置決定工程と、
算出された該調整位置に、前記アパーチャの前記中心軸を移動させる中心軸位置調整工程とを備えることを特徴とするアパーチャの軸調整方法。
【請求項6】
請求項5に記載のアパーチャの軸調整方法において、
前記スポットパターン形成工程は、前記アパーチャの前記中心軸を移動させて前記試料に前記荷電粒子ビームを照射する毎に、前記アパーチャの前記X方向及び前記Y方向へのそれぞれの移動量に一定の値を乗じた分だけ、前記荷電粒子ビームの照射位置を前記試料に対して相対移動させることを特徴とするアパーチャの軸調整方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のアパーチャの軸調整方法において、
前記スポットパターン形成工程は、前記対物レンズによって集束される前記荷電粒子ビームを過焦点の状態で前記試料に照射させることを特徴とするアパーチャの軸調整方法。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれかに記載のアパーチャの軸調整方法において、
前記スポットパターン解析工程は、前記スポットパターンが形成された前記試料の表面の前記画像を二値化処理した二値化データを作成し、該二値化データから各前記スポットパターンの前記ハローの前記中心位置と前記スポット中心の位置とを算出することを特徴とするアパーチャの軸調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−53002(P2008−53002A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226867(P2006−226867)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】
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