説明

蒸気タービンの制御装置

【課題】蒸気タービンの制御装置において、作業者の負担を軽減すると共に安定したタービン起動時間を確保して安全性の向上を図る。
【解決手段】ボイラ11から蒸気タービン12に蒸気を供給する蒸気配管13に蒸気加減弁14を設けると共に、起動指令値に基づいて蒸気加減弁の開度を増加して蒸気タービン12の回転数を上昇させる起動速度制御ピストン31と、蒸気加減弁14の開度を調節して蒸気タービン12の回転数を規定回転数に制御する速度制御ガバナ32とを設け、制御装置34が蒸気タービン12の運転状態に応じて起動速度制御ピストン31と速度制御ガバナ32を切換制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンを所定の起動時間で安定して自動的に起動可能とした蒸気タービンの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは、供給された蒸気により動翼を介してロータを駆動回転することで、動力を確保するものであり、安定した駆動力を確保するためには、ロータを一定の回転数に維持する必要がある。一般的には、蒸気タービンに蒸気を供給する供給通路に蒸気加減弁を設け、調速装置(ガバナ)を用いてこの蒸気加減弁の開度を制御することで、蒸気タービンに供給される蒸気量を調整し、タービン回転数を制御している。
【0003】
このような調速装置を用いた蒸気タービンの制御装置としては、下記特許文献1に記載されたものがある。
【0004】
【特許文献1】特開平05−321604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の蒸気タービンの制御装置では、調速装置により蒸気加減弁の開度を調節することで蒸気タービンへの蒸気量を調整し、タービン回転数を制御している。ところが、この調速装置は、蒸気タービンのロータの回転数をフィードバックして蒸気加減弁の開度を調節しており、タービン起動時に、蒸気加減弁の開度を調節することで蒸気タービンへの蒸気量を徐々に増加し、タービン回転数を上昇させるような制御を行うことは困難である。
【0006】
そのため、従来は、蒸気タービンに蒸気を供給する供給通路に蒸気加減弁を設けると共に、その上流側に手動操作弁を設け、タービン起動時には、蒸気加減弁の開度を全開にした状態で、作業者が手動操作弁を徐々に開放することで、蒸気タービンに供給される蒸気量を徐々に増加し、タービン回転数を上昇させている。
【0007】
しかし、タービン起動時に、大量の蒸気が蒸気タービンに供給されると、その衝撃により動翼などが破損するおそれがあり、作業者が手動操作弁を操作してその開度を徐々に大きくしていく作業は困難性を伴い、作業者にかかる負担が大きいという問題がある。また、蒸気タービンを原子力プラントに用いた場合、安全性を考慮してプラントの要求内容を満足するタービン起動時間を確保する必要があり、作業者による手動操作弁の開放操作では、安定したタービン起動時間を確保することは困難である。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するものであり、作業者の負担を軽減すると共に安定したタービン起動時間を確保して安全性の向上を図った蒸気タービンの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための請求項1の発明の蒸気タービンの制御装置は、蒸気タービンに蒸気を供給する蒸気通路に設けられた蒸気量調節弁と、起動指令値に基づいて前記蒸気量調節弁の開度を増加することで前記蒸気タービンの回転数を上昇させる第1調速手段と、前記蒸気量調節弁の開度を調節することで前記蒸気タービンの回転数を所定回転数に制御する第2調速手段と、前記蒸気タービンの運転状態に応じて前記蒸気量調節弁の開度を調節する前記調速手段を切換える制御手段とを具えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明の蒸気タービンの制御装置では、前記蒸気量調節弁は、前記蒸気通路を開閉可能な弁体を有し、回動自在に支持された開度調節ロッドの一端部が前記弁体に連結されると共に、該開度調節ロッドは前記弁体が前記蒸気通路を開放する方向に付勢支持され、前記第1調速手段としての油圧ピストンは、供給油圧に応じて前記開度調節ロッドの他端部を押圧して前記弁体により前記蒸気通路を閉止可能であることを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明の蒸気タービンの制御装置では、前記油圧ピストンは、内蔵された圧縮スプリングにより前記開度調節ロッドの他端部を押圧して前記弁体により前記蒸気通路を閉止可能である一方、前記油圧ピストンに油圧を供給することで前記開度調節ロッドの他端部への押圧を解除して前記弁体により前記蒸気通路を開放可能であることを特徴としている。
【0012】
請求項4の発明の蒸気タービンの制御装置では、前記油圧ピストンに油圧を供給する油圧配管に流量調整弁が設けられ、前記制御手段は、起動指令値に応じて前記流量調整弁の開度を設定することを特徴としている。
【0013】
請求項5の発明の蒸気タービンの制御装置では、前記蒸気量調節弁は、前記蒸気通路を開閉可能な弁体を有し、回動自在に支持された開度調節ロッドの一端部が前記弁体に連結されると共に、該開度調節ロッドは前記弁体が前記蒸気通路を開放する方向に付勢支持され、前記蒸気タービンの低回転領域で前記第1調速手段の制御ロッドが前記開度調節ロッドの他端部に係合可能であり、前記蒸気タービンの高回転領域で前記第2調速手段の制御ロッドが前記開度調節ロッドの他端部に係合可能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明の蒸気タービンの制御装置によれば、蒸気タービンに蒸気を供給する蒸気通路に蒸気量調節弁を設けると共に、起動指令値に基づいて蒸気量調節弁の開度を増加することで蒸気タービンの回転数を上昇させる第1調速手段と、蒸気量調節弁の開度を調節することで蒸気タービンの回転数を所定回転数に制御する第2調速手段と、蒸気タービンの運転状態に応じて蒸気量調節弁の開度を調節する調速手段を切換える制御手段を設けたので、タービン起動時には、第1調速手段が起動指令値に基づいて蒸気量調節弁の開度を増加して蒸気タービンの回転数を上昇させ、その後、蒸気タービンの回転数が所定回転数を超えると、第2調速手段が蒸気量調節弁の開度を調節して蒸気タービンの回転数を所定回転数に制御することとなり、タービン起動時における作業者の負担を軽減することができると共に、安定したタービン起動時間を確保して安全性を向上することができる。
【0015】
請求項2の発明の蒸気タービンの制御装置によれば、回動自在に支持された開度調節ロッドの一端部を蒸気量調節弁の弁体に連結すると共に、この開度調節ロッドを弁体が蒸気通路を開放する方向に付勢支持し、第1調速手段としての油圧ピストンへの供給油圧に応じて開度調節ロッドの他端部を押圧して弁体により蒸気通路を閉止可能としたので、油圧ピストンへの供給油圧により開度調節ロッドを介して弁体を移動して蒸気通路を閉止可能であり、簡単な構成で、タービン起動時の蒸気量を調節して適正に蒸気タービンの回転数を上昇させることができる。
【0016】
請求項3の発明の蒸気タービンの制御装置によれば、油圧ピストンに内蔵された圧縮スプリングにより開度調節ロッドの他端部を押圧して弁体により蒸気通路を閉止可能である一方、油圧ピストンに油圧を供給することで開度調節ロッドの他端部への押圧を解除して弁体により蒸気通路を開放可能としたので、タービン停止時には、油圧ピストンの圧縮スプリングにより開度調節ロッドを介して弁体により蒸気通路を閉止し、タービン起動時には、油圧ピストンに油圧を供給して開度調節ロッドへの押圧を解除することで、弁体により蒸気通路を開放することとなり、タービン起動時における蒸気の供給を自動的に行うことができる。
【0017】
請求項4の発明の蒸気タービンの制御装置によれば、油圧ピストンに油圧を供給する油圧配管に流量調整弁を設け、制御手段が起動指令値に応じて流量調整弁の開度を設定するので、タービン起動時には、制御手段が起動指令値に基づいて流量調整弁の開度を設定して油圧ピストンに所定量の油圧を供給することができ、タービン起動時における蒸気の供給を安定して行うことができる。
【0018】
請求項5の発明の蒸気タービンの制御装置によれば、回動自在に支持された開度調節ロッドの一端部を蒸気量調節弁の弁体に連結すると共に、この開度調節ロッドを弁体が蒸気通路を開放する方向に付勢支持し、蒸気タービンの低回転領域で第1調速手段の制御ロッドが開度調節ロッドの他端部に係合可能とし、蒸気タービンの高回転領域で第2調速手段の制御ロッドが開度調節ロッドの他端部に係合可能としたので、蒸気タービンの低回転領域では、第1調速手段を用いてタービン回転数を制御し、蒸気タービンの高回転領域では、第2調速手段を用いてタービン回転数を制御することとなり、調速手段の切換を適正に行うことで、安定したタービン起動時間を確保して安全性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る蒸気タービンの制御装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明の一実施例に係る蒸気タービンの制御装置を表す概略構成図、図2は、本実施例の蒸気タービンの制御装置における起動速度制御ピストンの制御ロッドと開度調節ロッドとの係合関係を表す断面図、図3は、本実施例の蒸気タービンの制御装置における蒸気量調節弁の断面図である。
【0021】
本実施例の蒸気タービンは、原子力プラントにおいて、蒸気発生器に二次冷却水を供給する給水ポンプの非作動時に、この給水ポンプと並列状態で配設された補助給水ポンプを駆動するために使用されるものであり、安定したタービン起動時間を確保が重要である。
【0022】
蒸気タービンシステムにおいて、図3に示すように、ボイラ11で生成された蒸気を蒸気タービン12に供給する蒸気配管13には、蒸気量調節弁としての蒸気加減弁14が設けられている。この蒸気加減弁14において、支持リング15には、中空形状をなすケーシング16が固定されており、このケーシング16には、蒸気配管13に連通する蒸気通路17が形成されている。この蒸気通路17には、上流側と下流側を区画する断面U字形状をなす隔壁部18が形成され、この隔壁部18に連通路19が形成されている。弁体20は、ケーシング16における蒸気通路17の連通路19に移動自在に位置し、この連通路19を開閉可能であると共に、流通面積(開度)を調節可能となっている。そして、この弁体20の支持部20aには、操作ロッド21の一端部が固定され、この操作ロッド21の他端部には、支持リング15の取付片15aに回動自在に支持された第1連結ロッド22の一端部に連結され、この第1連結ロッド22の他端部には、第2連結ロッド23の一端部が連結されている。
【0023】
一方、上述した蒸気タービンシステムの蒸気加減弁14を開閉制御することで、蒸気タービン12の回転数を制御する本実施例の蒸気タービンの制御装置は、図1に示すように、蒸気タービン12の起動運転時に、起動指令値に基づいて蒸気加減弁14の開度を調節(増加)することで、蒸気タービン12の回転数が上昇するように制御する第1調速手段としての起動速度制御ピストン(油圧ピストン)31と、蒸気タービン12の定常運転時に、蒸気加減弁14の開度を調節することで蒸気タービン12の回転数を所定回転数に制御する第2調速手段としての速度制御ガバナ32及び速度リミッティングガバナ33と、蒸気タービン12の運転状態に応じて蒸気加減弁14の開度を調節する2つの調速手段、つまり、起動速度制御ピストン31と各ガバナ32,33とを切換える制御手段34とを有している。
【0024】
起動速度制御ピストン31において、密閉形状をなすシリンダ35内には、円板形状をなすピストン36が嵌合して上下方向に沿って移動自在に支持されると共に、シリンダ35に内蔵された圧縮スプリング37により下方に付勢支持されている。そして、このピストン36には、制御ロッド38が固定されており、この制御ロッド38は先端部がシリンダ35の外部に延出されている。また、シリンダ35内は、ピストン36により第1室39と第2室40に区画されており、各室39,40には油圧を給排する第1、第2ポート41,42が設けられている。
【0025】
そして、油圧タンク43から第1ポート41に至る第1油圧配管44が設けられ、この第1油圧配管44には、油圧ポンプ45、ニードル弁(流量調整弁)46、電磁弁47、三方弁48が設けられている。また、油圧タンク43から第2ポート42に至る第2油圧配管49が設けられ、この第2油圧配管49には、三方弁48に接続される切換配管50が設けられている。
【0026】
従って、起動速度制御ピストン31に油圧を供給しない状態では、圧縮スプリング37の付勢力によりピストン36が下降位置に支持されており、この状態から、三方弁48の切換配管50側が閉止されたまま、ニードル弁46、電磁弁47、三方弁48を開放して油圧ポンプ45を駆動すると、油圧タンク43内の油圧が第1油圧配管44を通して起動速度制御ピストン31に供給され、第1ポート41から第1室39に供給される。すると、この第1室39に油圧が供給されることで、ピストン36が圧縮スプリング37の付勢力に抗して上昇し、ピストン36と一体の制御ロッド38を上昇させることができる。このとき、制御装置34によりニードル弁46の開度を調節することで、起動速度制御ピストン31への供給油圧を調整し、制御ロッド38が上昇する速度を制御することができる。なお、ピストン36が上昇するとき、第2室40内の油圧が第2油圧配管49を通して油圧タンク43に戻される。そして、油圧ポンプ45の駆動を停止すると共に、三方弁48の切換配管50側を開放すると、第1室39内の油圧が第1油圧配管44、三方弁48、切換配管50、第2油圧配管49を通して油圧タンク43に戻され、ピストン36と共に制御ロッド38を下降することができる。
【0027】
一方、速度制御ガバナ32及び速度リミッティングガバナ33は、ほぼ同様の構造をなし、速度制御ガバナ32は、蒸気タービン12の定格回転数までの領域で、蒸気量により蒸気タービン12の回転数を制御しており、速度リミッティングガバナ33は、速度制御ガバナ32に対するフェイルセーフ用のガバナであり、蒸気タービン12の定格回転数より高い上限回転数までの領域で、蒸気量により蒸気タービン12の回転数を制御する。
【0028】
即ち、ハウジング51の上部には、速度制御ガバナ32及び速度リミッティングガバナ33が隣接して装着されており、下方に検出ロッド52,53が延出されている。一方、蒸気タービン12の主軸(ロータ)54には駆動歯車55が固定されており、この駆動歯車55には、その両側に従動歯車56,57が噛み合っており、各従動歯車56,57の従動軸58,59はハウジング51に回転自在に支持され、上端部が各検出ロッド52,53に連結されている。また、各ガバナ32,33の側部には、出力軸60,61が突出され、各出力軸60,61には制御ロッド62,63が連結され、下方に延出されている。
【0029】
従って、制御装置34は、速度制御ガバナ32及び速度リミッティングガバナ33に指令値を出力すると、この各ガバナ32,33は、指令値に応じて各出力軸60,61を介して制御ロッド62,63を昇降することができる。この場合、各ガバナ32,33は、蒸気タービン12の主軸54の回転数を、駆動歯車55、従動歯車56,57、従動軸58,59、検出ロッド52,53を介して検出することで、フィードバック制御を行っている。
【0030】
また、起動速度制御ピストン31と速度制御ガバナ32及び速度リミッティングガバナ33の下方に位置して開度調節ロッド64が回動自在に支持され、この開度調節ロッド64の一端部には、蒸気加減弁14に至る第2連結ロッド23の他端部が連結される一方、他端部には引張スプリング65が係止されている。この場合、開度調節ロッド64は、この引張スプリング65により図1にて時計回り方向に付勢されることで、図3に示すように、第2連結ロッド23、第1連結ロッド22、操作ロッド21を介して弁体20が蒸気加減弁14における蒸気通路17の連通路19を開放する方向に付勢支持されている。
【0031】
そして、起動速度制御ピストン31の制御ロッド38は、図2に示すように、先端部に所定間隔で一対の支持片66a,66bが連結ピン67により固定され、この支持片66a,66bが開度調節ロッド64を挟持している。この場合、開度調節ロッド64は、引張スプリング65の付勢力により図2にて上方に付勢されており、制御ロッド38の連結ピン67が開度調節ロッド64の上面部を押圧することができる。
【0032】
従って、起動速度制御ピストン31の制御ロッド38が圧縮スプリング37の付勢力により下降したときには、連結ピン67が開度調節ロッド64を押圧して図2にて下降し、弁体20により蒸気加減弁14の連通路19を閉止している。一方、制御ロッド38を上昇すると、連結ピン67が開度調節ロッド64の押圧をやめ、開度調節ロッド64が引張スプリング65により図2にて上昇、つまり、図1にて時計回り方向に回動し、弁体20により蒸気加減弁14の連通路19を開放することができる。
【0033】
この場合、制御ロッド38は、支持片66a,66bが開度調節ロッド64を挟持し、下降時に連結ピン67がこの開度調節ロッド64を押圧可能であるが、上昇時には、支持片66a,66bによる開度調節ロッド64の挟持状態が解除されないように、制御ロッド38のストローク及び開度調節ロッド64の回動範囲が設定されている。
【0034】
なお、速度制御ガバナ32及び速度リミッティングガバナ33の制御ロッド62,63も、起動速度制御ピストン31の制御ロッド38と同様に、先端部に設けられた支持片が開度調節ロッド64を挟持し、連結ピンがこの開度調節ロッド64を下方に押圧可能であると共に、上昇時には支持片による開度調節ロッドの挟持状態が解除されないように、各制御ロッド62,63のストローク及び開度調節ロッド64の回動範囲が設定されている。
【0035】
このように構成された本実施例の蒸気タービンの制御装置において、図1乃至図3に示すように、蒸気タービン12の駆動力を必要とせずにこの蒸気タービン12が停止しているとき、制御装置34は、起動速度制御ピストン31に対する油圧供給を停止していると共に、速度制御ガバナ32及び速度リミッティングガバナ33の作動を停止している。即ち、起動速度制御ピストン31では、引張スプリング65の付勢力より大きい圧縮スプリング37の付勢力により、ピストン36が下降位置に位置しており、このピストン36と一体の制御ロッド38は、連結ピン67が開度調節ロッド64を押圧して図1にて反時計回り方向に回動し、第2連結ロッド23、第1連結ロッド22、操作ロッド21を介して弁体20が蒸気加減弁14における蒸気通路17の連通路19を閉止している。一方、速度制御ガバナ32及び速度リミッティングガバナ33では、各制御ロッド62,63が開度調節ロッド64より上方に位置し、この開度調節ロッド64を押圧していない。
【0036】
このような蒸気タービン12の状態から、この蒸気タービン12を起動するとき、制御装置34は、ニードル弁46、電磁弁47、三方弁48を開放して油圧ポンプ45を駆動し、油圧タンク43内の油圧を第1油圧配管44から起動速度制御ピストン31の第1ポート41に供給し、第1室39を加圧する。すると、この第1室39が加圧されることで、ピストン36が圧縮スプリング37の付勢力に抗して上昇し、このピストン36と一体の制御ロッド38を上昇させる。そして、この制御ロッド38を上昇すると、連結ピン67により開度調節ロッド64の押圧を解除され、開度調節ロッド64が引張スプリング65の付勢力により図1にて時計回り方向に回動し、第2連結ロッド23、第1連結ロッド22、操作ロッド21を介して弁体20が蒸気加減弁14における蒸気通路17の連通路19を開放する。
【0037】
このとき、蒸気タービンに12の駆動力により作動する機器(本実施例では、補助給水ポンプ)に応じて適正なタービン起動時間が設定されており、制御装置34は、このタービン起動時間(タービン起動指令値)に応じてりニードル弁46の開度を調節している。そのため、設定されたニードル弁46の開度により、起動速度制御ピストン31に供給する単位時間当たりの油圧供給量が規定され、これにより制御ロッド38の上昇速度が設定されることとなり、蒸気加減弁14での弁体20により連通路19の開放速度が規定される。従って、蒸気加減弁14の弁体20が連通路19を所定の開放速度で開放することで、ボイラ11の蒸気が所定の速度で蒸気タービンに供給されることとなり、タービン回転数が所定の速度で上昇する。
【0038】
そして、起動速度制御ピストン31の制御ロッド38が最上昇位置まで上昇すると、開度調節ロッド64などを介して弁体20が蒸気加減弁14における蒸気通路17の連通路19を50%まで開放し、蒸気タービン12の回転数が定格回転数の50%まで(低回転領域)上昇する。すると、起動速度制御ピストン31の制御ロッド38が開度調節ロッド64と離間し、この起動速度制御ピストン31による蒸気加減弁14の開度制御が終了する一方、速度制御ガバナ32(速度リミッティングガバナ33)による蒸気加減弁14の開度制御が開始される。
【0039】
即ち、蒸気タービン12の回転数が定格回転数の50%以上(高回転領域)になると、制御装置34は、速度制御ガバナ32(速度リミッティングガバナ33)に対して、規定回転数の指令値を出力し、速度制御ガバナ32はこの指令値に応じて出力軸60を介して制御ロッド62を昇降させる。すると、速度制御ガバナ32は、指令値に応じて制御ロッド62を昇降させることで、この制御ロッド62により開度調節ロッド64の回動位置を調整し、第2連結ロッド23、第1連結ロッド22、操作ロッド21を介して弁体20による蒸気加減弁14の開度を調節する。従って、蒸気加減弁14の弁体20が連通路19を所定の開放速度に調整することで、ボイラ11から蒸気タービンに供給する蒸気量を調整し、タービン回転数を所定の規定回転数に維持してタービン12を安定して運転することができる。なお、このとき、速度制御ガバナ32は、蒸気タービン12の主軸54の回転数を駆動歯車55、従動歯車56、従動軸58、検出ロッド52を介して検出しており、実際のタービン回転数が規定回転数となるようにフィードバック制御を行っている。
【0040】
このように本実施例の蒸気タービンの制御装置にあっては、ボイラ11から蒸気タービン12に蒸気を供給する蒸気配管13に蒸気加減弁14を設けると共に、起動指令値に基づいて蒸気加減弁の開度を増加して蒸気タービン12の回転数を上昇させる起動速度制御ピストン31と、蒸気加減弁14の開度を調節して蒸気タービン12の回転数を規定回転数に制御する速度制御ガバナ32とを設け、制御装置34が蒸気タービン12の運転状態に応じて起動速度制御ピストン31と速度制御ガバナ32を切換制御するようにしている。
【0041】
従って、蒸気タービン12の起動時には、起動速度制御ピストン31が起動指令値に基づいて蒸気加減弁14の開度を増加して蒸気タービン12への蒸気量を制御してタービン回転数を上昇させ、その後、蒸気タービン12の回転数が所定の回転数を超えると、速度制御ガバナ32が蒸気加減弁14の開度を調節して蒸気タービン12の回転数を規定回転数に制御することとなり、蒸気タービン12を自動的に所定の時間で起動することができ、タービン起動時における作業者の負担を軽減することができると共に、安定したタービン起動時間を確保して安全性を向上することができる。
【0042】
また、本実施例の蒸気タービンの制御装置では、回動自在に支持された開度調節ロッド64の一端部を蒸気加減弁14の弁体20に連結すると共に、この開度調節ロッド64を引張スプリング65により弁体20が蒸気通路17を開放する方向に付勢支持し、起動速度制御ピストン31の制御ロッド38は内蔵された圧縮スプリング37により開度調節ロッド64の他端部を押圧して弁体20により蒸気通路を閉止しており、起動速度制御ピストン31へ油圧を供給することで、制御ロッド38による開度調節ロッド64の他端部の押圧を解除して弁体20により蒸気通路17を開放可能としている。
【0043】
従って、蒸気タービン12の停止時には、起動速度制御ピストン31の圧縮スプリング37により制御ロッド38が開度調節ロッド64を回動して弁体20によって蒸気通路17を閉止し、蒸気タービン12の起動時には、起動速度制御ピストン31に油圧を供給して制御ロッド38による開度調節ロッドの押圧を解除することで、弁体20により蒸気通路17を開放することとなり、簡単な構成で、タービン起動時の蒸気量を自動的に調節し、適正に蒸気タービンの回転数を上昇させることができる。
【0044】
また、本実施例の蒸気タービンの制御装置では、起動速度制御ピストン31に油圧を供給する第1油圧配管にニードル弁46を設け、制御装置34が起動指令値に応じてニードル弁46の開度を設定している。従って、タービン起動時には、ニードル弁46の開度により起動速度制御ピストン31に所定量の油圧を供給することができ、タービン起動時における蒸気の供給を安定して行うことができる。
【0045】
更に、本実施例の蒸気タービンの制御装置では、蒸気タービン12の低回転領域(定格回転数の0〜50%)では、起動速度制御ピストン31の制御ロッド38が開度調節ロッド64に係合可能とし、蒸気タービン12の高回転領域(定格回転数の50〜100%)では、速度制御ガバナ32の制御ロッド62が開度調節ロッド64の他端部に係合可能としている。従って、蒸気タービン12の低回転領域では、起動速度制御ピストン31を用いてタービン回転数を制御し、蒸気タービン12の高回転領域では、速度制御ガバナ32を用いてタービン回転数を制御することとなり、2つの調速手段を適正に切換えて使用することで、安定したタービン起動時間を確保して安全性を向上することができる。
【0046】
この場合、起動速度制御ピストン31の使用時には、速度制御ガバナ32の制御ロッド62と開度調節ロッド64との係合が解除される一方、速度制御ガバナ32の使用時には、起動速度制御ピストン31の制御ロッド38と開度調節ロッド64との係合が解除されている。従って、互いの制御が干渉することはなく、開度調節ロッド64を介して蒸気加減弁14を適正に開閉制御することができる。
【0047】
なお、上述した実施例では、本発明の蒸気タービンの制御装置を、原子力プラントにおける補助給水ポンプを駆動する蒸気タービンに適用して説明したが、他のプラントに使用される蒸気タービンに適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る蒸気タービンの制御装置は、タービン起動時における作業者の負担を軽減すると共に安定したタービン起動時間を確保するようにしたものであり、いずれの種類の蒸気タービンにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例に係る蒸気タービンの制御装置を表す概略構成図である。
【図2】本実施例の蒸気タービンの制御装置における起動速度制御ピストンの制御ロッドと開度調節ロッドとの係合関係を表す断面図である。
【図3】本実施例の蒸気タービンの制御装置における蒸気量調節弁の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
11 ボイラ
12 蒸気タービン
13 蒸気配管
14 蒸気加減弁(蒸気量調節弁)
17 蒸気通路
19 連通路
20 弁体
31 起動速度制御ピストン(第1調速手段)
32 速度制御ガバナ(第2調速手段)
33 速度リミッティングガバナ(第2調速手段)
37 圧縮スプリング
38 制御ロッド
44 第1油圧配管
45 油圧ポンプ
46 ニードル弁(流量調整弁)
62,63 制御ロッド
64 開度調節ロッド
65 引張スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンに蒸気を供給する蒸気通路に設けられた蒸気量調節弁と、起動指令値に基づいて前記蒸気量調節弁の開度を増加することで前記蒸気タービンの回転数を上昇させる第1調速手段と、前記蒸気量調節弁の開度を調節することで前記蒸気タービンの回転数を所定回転数に制御する第2調速手段と、前記蒸気タービンの運転状態に応じて前記蒸気量調節弁の開度を調節する前記調速手段を切換える制御手段とを具えたことを特徴とする蒸気タービンの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気タービンの制御装置において、前記蒸気量調節弁は、前記蒸気通路を開閉可能な弁体を有し、回動自在に支持された開度調節ロッドの一端部が前記弁体に連結されると共に、該開度調節ロッドは前記弁体が前記蒸気通路を開放する方向に付勢支持され、前記第1調速手段としての油圧ピストンは、供給油圧に応じて前記開度調節ロッドの他端部を押圧して前記弁体により前記蒸気通路を閉止可能であることを特徴とする蒸気タービンの制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の蒸気タービンの制御装置において、前記油圧ピストンは、内蔵された圧縮スプリングにより前記開度調節ロッドの他端部を押圧して前記弁体により前記蒸気通路を閉止可能である一方、前記油圧ピストンに油圧を供給することで前記開度調節ロッドの他端部への押圧を解除して前記弁体により前記蒸気通路を開放可能であることを特徴とする蒸気タービンの制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の蒸気タービンの制御装置において、前記油圧ピストンに油圧を供給する油圧配管に流量調整弁が設けられ、前記制御手段は、起動指令値に応じて前記流量調整弁の開度を設定することを特徴とする蒸気タービンの制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の蒸気タービンの制御装置において、前記蒸気量調節弁は、前記蒸気通路を開閉可能な弁体を有し、回動自在に支持された開度調節ロッドの一端部が前記弁体に連結されると共に、該開度調節ロッドは前記弁体が前記蒸気通路を開放する方向に付勢支持され、前記蒸気タービンの低回転領域で前記第1調速手段の制御ロッドが前記開度調節ロッドの他端部に係合可能であり、前記蒸気タービンの高回転領域で前記第2調速手段の制御ロッドが前記開度調節ロッドの他端部に係合可能であることを特徴とする蒸気タービンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−211683(P2007−211683A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32442(P2006−32442)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】