説明

蒸気処理装置

【課題】処理室内に蒸気を供給することで低酸素下の還元雰囲気にしつつ、加熱ヒーターによる加熱域と処理室から被処理物の搬出側に冷却域を設けることで有機系の物質を固液状態により殺菌、加熱処理、乾燥及び炭化処理等、目的に応じた蒸気処理を可能にした処理装置の提供を目的とする。
【解決手段】被処理品の投入口及び搬出口が開口されたトンネル型の処理装置であって、トンネル型の処理室を通過するように搬送コンベアを配置し、前記トンネル型の処理室は蒸気供給手段により内部に蒸気が供給されるとともに、当該処理室の搬出口よりも所定の距離を隔てた内部に加熱ヒーターを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機系の物質を加熱、乾燥及び炭化処理する装置に関する。
有機系の物質が水分の多い野菜や果物であれば加熱調理が可能であり、肉系の食品であれば焼肉のような調理が可能であり、コーヒー生豆等の豆類や穀物であれば焙煎のような処理が可能である。
また、有機系の物質がおかきやせんべいのような食品であれば乾燥処理でき、液状食品であれば殺菌処理が可能である。
さらには、有機系の物質が木材や竹材であれば表面のみ、あるいは全体を炭化処理することが可能である。
また、有機系の廃棄物にあっては炭化処理による減容化が可能である。
【背景技術】
【0002】
飽和水蒸気を高温に過熱して得られた過熱水蒸気を用いて有機系の原材料を乾燥又は炭化処理する技術は公知である。
例えば特許文献1は、第1のローターリーキルンで有機系原料を乾燥し、第2のロータリーキルンに過熱蒸気を供給することで炭化処理し、この第2のロータリーキルンの排出部に水蒸気を用いた冷却部を設けることで自燃を防止した技術を開示する。
しかし、同公報に開示する炭化処理装置は2つのロータリーキルンからなり、工程が複雑でしかも蒸気と混合した乾留ガスを高温燃焼しなければならないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−263193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、処理室内に蒸気を供給することで低酸素下の還元雰囲気にしつつ、加熱ヒーターによる加熱域と処理室から被処理物の搬出側に冷却域を設けることで有機系の物質を固液状態により殺菌、加熱処理、乾燥及び炭化処理等、目的に応じた蒸気処理を可能にした処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る蒸気処理装置は、被処理品の投入口及び搬出口が開口されたトンネル型の処理装置であって、トンネル型の処理室を通過するように搬送コンベアを配置し、前記トンネル型の処理室は蒸気供給手段により内部に蒸気が供給されるとともに、当該処理室の搬出口よりも所定の距離を隔てた内部に加熱ヒーターを備えたことを特徴とする。
【0006】
ここで被処理品は、有機系の物質であれば液体、固体の区別を問わず、蒸気処理の温度と処理時間の調整により、液体の状態のまま殺菌する工程から水分の多い食品等の加熱調理、乾燥及び炭化処理まで目的に応じた処理が可能である。
【0007】
従来は処理室内に単に飽和蒸気あるいは過熱蒸気を噴射するものであったために蒸気が処理物に当たり、すぐに蒸気の温度が低下し水になってしまう場合が多かった。
これに対して本発明は、蒸気による処理室内にシーズヒーター、IHヒーター等の加熱ヒーターを設けることで処理室内が150℃〜400℃位に加熱された状態を維持した点に特徴がある。
また、被処理品がコンベアにて処理室に投入される投入口と処理室から外部に搬出される搬出口が開口したトンネル型の処理室を採用し、搬出口よりも所定の距離を隔てた内部に加熱ヒーターを設けると次のような作用が生じる。
このトンネル型の処理室のうち、加熱ヒーターの有する部分は加熱域となり蒸気が所定の温度に加熱されるが、この加熱域よりも搬出口側は加熱ヒーターがなく、処理室内の蒸気が加熱されることなく、少し冷えながら開口した搬出口から外部に放出されるため、この部分に冷却域を形成することになる。
これにより処理室内全体が蒸気により低酸素の還元雰囲気に維持されつつ、搬出口側では温度が下がった蒸気により被処理品が冷却されつつ搬出されることになる。
【0008】
トンネル型の処理室内が蒸気のような環境下に設定されたことにより、次のような効果を得ることができる。
例えばコーヒー生豆を処理室にコンベアで投入すると、加熱域にて蒸気とヒーターによる焙煎が行われ、冷却域にて蒸気により約150℃以下まで冷却された状態で外部に搬出されるので、酸化されることなく焙煎が完了することになり酸化による苦みがないフルーティな味わいのコーヒーを抽出することができる。
また、例えば木材や竹材を本発明に係る処理装置に投入すると、加熱された活性蒸気により還元雰囲気下で乾留が進行し、この際に発生する乾留ガスも活性蒸気にて分解される。
従って、250℃〜500℃の低温で炭化処理が可能であるとともに搬出口側では自燃しない温度まで冷却される。
本発明者らが繰り返し実験検討した結果、処理室内にタール分が付着することがなく、嫌な臭いの発生も殆どなく、炭化処理が可能であった。
【0009】
本発明者らが実験を繰り返すことでさらに驚いたのは、肉を投入すると高温蒸気により加熱調理されるために肉が減量されることなく焼き上がり、芋類も焼き上がる。
また、焼きりんご等、果実も焼き調理できた。
さらには、液状食品にあっては殺菌作用も発現した。
【0010】
処理室内に供給される蒸気は、処理室内の加熱ヒーターにて150℃〜500℃、好ましくは200℃〜400℃に加熱されるようになっていて、通常の飽和蒸気でもよいが熱効率向上の観点から250℃〜600℃の過熱蒸気を処理室内に供給してもよい。
また、処理室内に遠赤外線を放射するセラミックス体を配置してもよい。
セラミックス体はセラミックスボールとして入手することが容易である。
例えば石川県の戸室石等は過熱蒸気を当てることで遠赤外線を多く放出する。
セラミックスボールは戸室石等、ケイ素系の鉱石を粉末にした後に所定の大きさに焼結して得られる。
また、遠赤外線を放射する鉱石であれば種類に限定はない。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る蒸気処理装置は、活性水蒸気と加熱ヒーターとの組み合せによりトンネル型のコンベア式処理装置にあっても有機系の物質を目的に応じて殺菌、加熱調理、乾燥、炭化等の幅広い処理が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る処理装置の構造例を示す。
【図2】トンネル部の断面構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る処理装置10は、図1,2に示すように被処理物を処理室11a内に投入及び搬出する搬送コンベア14と、この搬送コンベア14の中央部を覆ったトンネル部11にて構成されている。
搬送コンベア14は網目形状、メッシュ形状のSUS等の金属製からなる。
図1の例では、コンベアがローラー14a〜14hにて張設され、モーター18にチェーン連結18aされた駆動ローラー14fにてゆっくりと搬送移動する。
トンネル部11は投入口12及び搬出口13のみが開口され、その他の部分は密閉状態にあり、必要に応じて断熱材で壁部を形成してある。
トンネル部11を形成した処理室11aの前後方向中央部のコンベアより下部に蒸気供給管15、セラミックス体16及び加熱ヒーター17を配設した。
蒸気供給管15はトンネル部11内に設けたコンベアの支持レール11cの下側にセラミックス体16及び加熱ヒーター17に向けて噴射するように複数のノズル孔を設けてある。
図1に示すように蒸気供給管15に供給される蒸気は、水位計21aにて供給制御された蒸気発生機21にて飽和蒸気が生成され、その後にコイルヒーター、シーズヒーター等にて250℃〜600℃の過熱蒸気にされた蒸気となっている、。
なお、蒸気及び加熱蒸気はそれぞれ検温器21b,22aにて制御されている。
図2に示すようにセラミックスボール等のセラミックス体16はメッシュ状の支持体16aに支持されている。
加熱ヒーター17はシーズヒーターでもIHヒーターでもよく、本実施例は3本のシーズヒーター17a,17b,17cを配置した例になっている。
【0014】
図1に示すように加熱ヒーター17はトンネル部11の前後方向の概ね中央部に配置され、温度センサーHと電源Eにより温度制御されている。
処理室11a内の中央部の加熱ヒーター17を有する範囲が加熱域Lを形成し、加熱域Lから搬出口13側は搬出口13から蒸気が自然放出するようになっていて、この際に蒸気の温度が約150℃以下に低下する冷却域Lとなっている。
なお、本実施例では蒸気が搬出口13のみならず、投入口12からも自然放出するようになっていて、処理室11a全長にわたって蒸気による低酸素状態になっている。
この加熱ヒーター17から投入口12までの間は予熱域Lとなっていて、蒸気放出のバランスを考慮し、LとLとは同じ長さになっている。
【0015】
次に本発明に係る処理装置10にて色々な種類の有機物質を処理した例について説明する。
加熱域Lの長さ約100cm、冷却域Lの長さ30cmに設定し、処理室11aの加熱域Lにおける温度を検出器T(11b)にて検出しながら、約250℃に設定した。
過熱蒸気の温度は480℃〜500℃に設定した。
また、加熱ヒーターによるパネル部は約300℃であった。
【0016】
次に上記装置の条件にて処理時間を変更して各実験をした。
【実施例1】
【0017】
コーヒー生豆を投入口12から搬出口13までの処理時間を約10分に設定し処理した。
その結果、良好な焙煎コーヒー豆が得られ、この焙煎豆を用いてコーヒーを入れたところ、フルーティな味のコーヒーが得られた。
【実施例2】
【0018】
処理時間を7分に設定し、焼肉用の肉を串差しにて処理したところ、体積が縮むことなく、加熱調理できた。
また、殺菌作用があることも確認された。
【実施例3】
【0019】
処理時間を7分にして生のさつまいもを投入したところ、焼きいもに近い状態に出来上がった。
【実施例4】
【0020】
処理時間を約20分にして木材及び竹材を投入したところ、タール分の発生が認められることなく、炭化された状態で搬出口から出てきた。
なお、処理時間を約10分にすると木材の表面近くのみが黒く炭化された状態の強化された木材が得られた。
【実施例5】
【0021】
処理時間を約1分間にし、おかきを投入処理したところ、おかきのその後の吸湿が抑えられ、従来に比較して長期間にわたって乾燥状態が維持された。
【実施例6】
【0022】
処理時間約3分にして生の大豆を投入したところ、豆が蒸された状態で得られた。
【符号の説明】
【0023】
10 処理装置
11 トンネル部
11a 処理室
12 投入口
13 搬出口
14 搬送コンベア
15 蒸気供給管
16 セラミックス体
17 加熱ヒーター
21 蒸気発生機
22 蒸気過熱機
冷却域
加熱域
予熱域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理品の投入口及び搬出口が開口されたトンネル型の処理装置であって、
トンネル型の処理室を通過するように搬送コンベアを配置し、
前記トンネル型の処理室は蒸気供給手段により内部に蒸気が供給されるとともに、当該処理室の搬出口よりも所定の距離を隔てた内部に加熱ヒーターを備えたことを特徴とする蒸気処理装置。
【請求項2】
前記処理室内に供給される蒸気は過熱蒸気であることを特徴とする請求項1記載の蒸気処理装置。
【請求項3】
前記処理室内に遠赤外線を放射するセラミックス体を配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の蒸気処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−255591(P2012−255591A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128752(P2011−128752)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(594079349)
【出願人】(507152202)
【出願人】(511139604)株式会社ミツヤマ電気 (1)
【Fターム(参考)】