説明

蒸留塔

【課題】分離性能を損なうことなく、可能な限り少ない数の蒸留塔フロアを使用する蒸留塔及び蒸留方法を提供すること。
【解決手段】蒸留塔(1)は下部フロア(8)を有する容器(2)と、蒸留塔(1)の内部領域(5)に至る重合性材料のための少なくとも1つの注入口(4)と、を含み、容器(2)内の材料を均一に分布する手段が設けられている、重合性材料を蒸留するための蒸留塔(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性材料、特にメタクリル酸及びアクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」という;特にアクリル酸が好ましい)を蒸留するための蒸留塔に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な重合に使用されるモノマーには高い純度が要求される。また、大量生産されるプラスチックにもより高い純度が求められている。このことは、特に医学または衛生分野で使用されるポリマーに該当する。一般に「超吸収体」と呼ばれる水または水性液体を吸収するポリマーは、医学または衛生分野における多くの製品の重要な構成要素である。超吸収体は、おむつ、女性用衛生用品、失禁用品に好ましく使用される。超吸収体やその他の人工材料は、二重結合を含むモノマーのラジカル重合によって得る場合が多い。(メタ)アクリル酸などの二重結合を含むモノマーは非常に反応性が高い物質であり、熱応力によって自発的に重合する傾向がある。
【0003】
蒸留は、大規模で高い純度を得るために実証されている好適な処理方法である。しかし、蒸留時に精製対象のモノマーに生じる熱応力によって、モノマーが意に反して重合する傾向がある。ここで、重合抑制剤を添加した場合でも、モノマーの過熱や長過ぎる滞留時間によって重合シードが最初に通常はデッドゾーンで形成され、重合シードは時間の経過とともに成長し、望ましくないポリマーの生成を増加させる。その結果、蒸留操作を停止し、蒸留装置を時間をかけてクリーニングしなければならない。この作業は非常にコストがかかるとともに、人や環境に対して大きな負担となる。
【0004】
蒸留塔は、例えば国際公開第WO00/53561号公報から公知である。この文献は、分離性能を増加させる「デュアルフローフロア(dual flow floor)」を蒸留塔フロア(床)として開示しているが、上述した欠点を解消する手段は開示してない。
【特許文献1】国際公開第WO00/53561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、蒸留における公知の技術的問題点を軽減または克服することにある。
【0006】
特に、本発明の目的は、蒸留対象の材料が重合する傾向を明らかに減少させるように公知の蒸留塔をさらに改善することにある。
【0007】
別の目的は、より長い時間にわたって連続的に運転することができる蒸留塔を提供することにある。
【0008】
また、任意に必要となるメンテナンス及び/又はクリーニング作業を、より容易かつ短時間で行うことができなければならない。
【0009】
また、本発明の更なる目的は、分離性能を損なうことなく、可能な限り少ない数の蒸留塔フロア(特にデュアルフローフロア)を使用する蒸留塔及び蒸留方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、請求項1の特徴を有する分離フロア、請求項17および22に係る方法、請求項23および25に係る使用、請求項24および26に係る製品によって達成される。
【0011】
その他の有利な実施形態は各従属請求項に記載されており、各従属請求項の特徴を任意に組み合わせることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
蒸留塔は、下部フロアを有する容器と、容器の内部領域に至る、重合性材料のための少なくとも1つの注入口と、を含む。本発明によれば、容器内で材料を均一に分布させるための手段が設けられている。手段は、注入口内または注入口に一体化された構成要素または個別の構成要素として設けることができる。また、この種の手段は容器の内部領域に設けることもできる。また、ある状況においては、容器は一体化された構成要素または個別の構成要素として容器内で材料を均一に分布させる手段を含むことができる。重合性材料は主に流体状態、特に過熱流体として注入口を介して容器の内部領域に流入するため、上記手段は導入された流体材料の流れに影響を与えるために特に適している。好ましくは、蒸留塔の容器内に流入した直後に、流体材料は少なくとも部分的に蒸発し、上昇する蒸気流が形成される。均一な分布とは、特に、内部領域を短時間通過した(少なくとも流体状態またはその後の気体状態)重合性材料が、蒸留塔の容器の内部領域の断面の上方で均一な流速を有することを意味する。特に、第一の分離フロアと近接(例えば10cm未満の間隔)して平行する断面における場合に該当する。その結果、重合が発生する傾向が減少し、蒸留塔とその構成要素には重合により形成された塊がほとんど堆積せず、効率的な運転が確実に行われる。
【0013】
重合性材料の均一な流れは、当業者に公知の様々なパラメータによって表すことができる。例えば、材料の速度、流れ方向の分布またはその他のパラメータを使用することができる。また、蒸留は、重合性材料の流体および気体成分の実質的に対向する流れによって特徴付けられる。流体は重力によって分離フロアを通過して下に向かって流れ、気体は蒸留塔内で分離フロアを通過して上方向に流れる。蒸留塔の容器の断面または水平面における流量比が実質的に同じであれば、重合性材料の流体および気体成分は当該水平面で均一に分布される。このことは、成分が自由に流れることができる容器の領域だけではなく、例えば分離フロア内においても当てはまる。重合性材料の気体、流体、固体成分の分布により、均一な流れが存在するかどうか、例えば重合によって形成された塊が蓄積されているかどうかが分かる。
【0014】
蒸留塔の別の態様によれば、少なくとも1つの注入口は注入開口部と排出開口部とを有し、排出開口部は注入開口部よりも蒸留塔の下部フロアに近接して配置されている。なお、注入口は容器と一体化された部分であってもよく、すなわち、注入口の限界表面(limiting surface)は容器の一部であってもよい。ただし、注入口は、例えばコネクタによって容器に接続された個別の構成要素であってもよい。後者の場合には、注入口はコネクタの開口部を介して容器の内部領域へと延びている。この場合、容器の内部領域から容器の周囲への気体の交換を防止する密封剤を設けることが好ましい。このような蒸留塔は通常直立状態で使用されるとともに、本発明では排出開口部が注入開口部よりも容器の下部フロアに近接して位置しているため、特に生成物の出口に向かう蒸留処理時の正流方向とは異なる方向(特に重力と反対方向)で材料が蒸留塔の容器の内部領域に流入する。強制的な方向変化によって、内部の断面における材料の乱流および/または濃度差の平衡がもたらされる。
【0015】
ここでは、少なくとも1つの注入口が、下部フロアと実質的に平行に配置された排出開口部を有することが特に有利である。これは、重合性材料が正流方向とは実質的に反対の方向に蒸留塔の容器の内部領域に導入されることを特に意味する。次に、重合性材料が排出開口部に対して実質的に垂直に内部領域へと流入する。下部フロアに向かう排出開口部の平行な配置は、流入する材料の十分に高い流速により、下部フロアが一種の偏向板として機能するという利点がある。これは、衝突する材料が渦巻くことを意味し、下部フロアは、気体材料が流体となり、流動化した材料の一部が長時間残り、重合により部分的に固化するデッドゾーンを回避するように好ましくは設計する。ここでは、流入する材料を均一に分布させるために、注入口の排出開口部を容器の中心軸に中心合わせして配置することが好ましい。2以上の注入口が設けられている場合、注入口は中心軸を中心として対称となるように配置し、特に下部フロアまたは分離フロアに平行な断面内に配置することが好ましい。
【0016】
蒸留塔の有利な別の形態によれば、少なくとも1つの注入口が排出開口部を有し、少なくとも1つの注入口を介して、排出開口部に好ましくは少なくとも近接して、少なくとも1つのフローインフルエンサーを配置することができる。このようなフローインフルエンサーは、注入口の外側、すなわち、蒸留塔の容器の内部領域に配置することができる。ただし、注入口の外側に加えて、あるいは注入口の外側に代えて、フローインフルエンサーを注入口の内部に配置することもできる。注入口の内部に配置されたフローインフルエンサーは、特に、内部領域への流入時の重合性材料の流れを、蒸留塔の内部領域の周囲条件に適合させる機能を有する。
【0017】
従って、例えば、フローインフルエンサーは材料の乱流を生じさせていることがあるため、容器が流入材料を直接均一にすることに寄与しない場合には、これを考慮する必要がある。フローインフルエンサーが主として注入口内で材料を渦巻かせる場合には、フローインフルエンサーは通常は比較的短い部分、特に2〜100mm、好ましくは10〜50mm、特に好ましくは15〜35mmの範囲で延び、注入口の屈曲領域に配置することが好ましく、注入口の内部の乱流が内部領域に流入する流体材料を迅速に変化させ、大部分を気体凝集状態に変化させる。例えば、別の手段によって分離フロアに向かう流れを均一にすることも可能である。
【0018】
特に好適な材料は、織物材料として無秩序に不規則的に配置するか、同様な方法で配置した、耐熱性および耐食性を有し、必要に応じて繊維状の材料である。このような材料は、重合性材料の乱流を生じさせる複数の切取エッジ(tear−off edge)または表面または両方を含むことが好ましい。ただし、フローインフルエンサーは、特に蒸留塔の内部領域への流入時に層流に類似した流れを生じさせる機能を有していてもよい。
【0019】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1つのフローインフルエンサーが少なくとも1つのバッフルを含み、複数のチャネル(流路)が注入口の一部に形成される。このようなフローインフルエンサーの実施形態では、フローインフルエンサーは100〜2000mm、好ましくは400〜1500mm、特に好ましくは700〜1000mmの範囲の部分において注入口の内部に存在することが好ましい。複数のバッフルが材料の流れ方向に順次配置されていることが特に好ましく、バッフルは少なくとも当該領域内、好ましくは注入口の屈曲部の領域全体に延びている。フローインフルエンサーは容器の内部領域に延出し、好ましくは50〜200mmの突出部が形成されていてもよい。
【0020】
注入口を複数のチャネルに分割することで、部分的な流れが形成され、次第に小さくなっていくチャネル断面により、方向性を有し、必要に応じて層流に類似した流れがチャネル内に短い距離で形成されるという利点がる。チャネルの数は、容器またはその内部領域の設計を考慮して選択される。これは、注入口の外側の場合には、材料の均一な分布のための十分な手段が設けられ、これらの手段への可能な限り狙いを定めた流れを調節することができることを意味する。小さなチャネルの断面または多数のチャネルを使用することが好ましい。この目的を達成するために、個別のバッフル、相互接続されたバッフル、構造化されたバッフルまたは同様な構造を使用することができ、状況に応じてハニカム状構造に形成することもできる。ハニカム状構造の原理は、特に複数の分離されたチャネルが互いに実質的に平行に配置され、必要に応じて貫通孔をバッフル内に設け、互いに連通するチャネルが形成されていることを意味する。ここでは、注入口内のチャネル数/単位断面積で表されるチャネル密度は、5チャネル/cm以下、特に好ましくは3チャネル/cm以下、特に1チャネル/cm以下、最も好ましくは0.5チャネル/cm以下、さらに0.25チャネル/cm以下であることが好ましい。
【0021】
材料が蒸留塔の内部領域で50〜400hPa、好ましくは100〜300hPa、特に好ましくは150〜250hPaの範囲の絶対圧力に曝される場合には(1hPa=1mba=10Newton/平方メートル[N/m]=10Pa)、圧力からより完全に解放されるか、蒸気状態により完全に転化されるため、流体材料の流れを分割することは有利である。フローインフルエンサーとして排出口側に複数のノズルまたはパイプ開口部(例えば10〜30個、特に好ましくは12〜25個)を有し、好ましくは注入口の中心軸に対して、対称的に、特に同じ距離で配置された注入口によって同様の効果が達成される。
【0022】
排出開口部を有する少なくとも1つの注入口を備えた蒸留塔の別の実施形態では、少なくとも1つの流れ分配器を、容器の内部領域、特に排出開口部の中心軸に中心合わせして配置する。重合性材料も排出開口部の中心軸と実質的に平行に注入口から流出する場合には、少なくとも一つの流れ分配器を排出開口部の中央軸と垂直に配置することは非常に理にかなっている。例えば、前述したバッフルを使用して材料が偏向する方向を生じさせる場合には、少なくとも1つの流れ分配器を流出方向の中心に配置することが有利である。流れ分配器は、特に、蒸留塔の容器の内部領域において、注入口から排出される空間的に制限された流れを迅速かつ均等に分配する機能を有する。例えば、流れ分配器は偏向面として形成することもできるが、流動材料が少なくとも部分的に通過するように形成することもできる。後者の場合では、例えば、ふるい、格子または類似の構造を使用することができる。このことは、流入する材料の流れ方向で見ると、重合性材料の一部が流れ分配器の後部を通過し、それに伴って均一な分布が迅速に達成されるという点で有利である。
【0023】
このような流れ分配器を設計する場合には、少なくとも1つの流れ分配器を、中心軸の好ましくは少なくとも30%、特に好ましくは少なくとも70%まで少なくとも部分的に斜めになるように、より好ましくは完全に円錐形となるように設計することが特に有利であり、流れ分配器の先端部(平らな円錐形を有する場合には最小半径領域)は、排出開口部の先端が最も近くなるように排出開口部の中心軸に配置される。先端部は必ずしもエッジの鋭い突出部のみを意味するのではなく、僅かに丸みを帯びた先端部であってもよい。重合性材料が注入口の排出開口部に対して垂直に流出すると仮定すると、先端部は流出する材料の中央に位置することになる。材料が注入口から排出開口部へ垂直に流れない場合には、中心軸に隣接した先端を有する円錐形の流れ分配器を配置することが有利である。流れ分配器の円錐形の設計に関しては、流れ分配器は、中空形状(特に閉じられていない円錐形状、好ましくは、板、ウェブまたは同様な形状、特に壁が薄く、任意に穴の開いた材料が設計に使用される)または中実体(すなわち、薄い材料からなる閉じた形状または中空空間を有していない立体)として形成することができる。流れ分配器の円錐形の設計は、中心に向かう材料の流れにより、材料が放射方向に円錐のジャケット表面を介して頂点から均一に扇形に広がるという利点を有している。このようにして、比較的穏やかな偏向が生じ、望ましくない強い乱流を回避する。
【0024】
蒸留塔の別の形態によれば、容器は少なくとも1つのガイド表面を含む。ガイド表面は容器と一体化された構成要素であってもよいが、例えば接合製造プロセスによって容器に接続された別の構成要素であってもよい。また、ガイド表面は、流入する重合性材料を均一に分布させる為に、特定の流れ形状または材料の部分的な流れの所望の偏向に影響を与える機能を有する。流入する重合性材料が以下の手段の少なくとも2つを使用することによって蒸留塔の内部領域で均一に分布される場合は特に有利である。注入口、注入口の少なくとも1つのフローインフルエンサー、少なくとも1つの流れ分配器または容器の少なくとも1つのガイド表面。ここで、容器の壁に対する流れのエッジまたは表面の位置は、任意の方法で蒸留塔に接続された流れ分配器と容器のガイド表面との間の識別基準(differentiation criterion)として適当である。従って、容器のガイド表面は容器と直接隣接しているか、ガイド表面は容器の内壁の一部である。例えば、流れ分配器によって、円錐形のジャケット表面は容器の内壁から離れた場所に位置し、例えば分配器を容器の内壁または注入口と接続する取り付け部分を設ける。
【0025】
蒸留塔の別の実施形態によれば、少なくとも1つの注入口は内部領域との断熱手段を含むことができる。通常、このような蒸留塔は強制的な循環過熱器を備えており、重合性流体材料は過熱され、蒸気または気体状態で注入口を介して蒸留塔の内部領域に供給される。このため、注入口は容器の内部領域と比べて非常に高い温度を通常有する。この温度差によって、例えば注入口の表面に蓄積する重合性材料の流滴状の蓄積物が生じ、粘性を有し、実質的に静止した集塊(clumping)が形成される。
【0026】
ここで、特に、断熱手段を蒸留塔の容器の内部領域に延びる注入口の少なくとも一部に配置することができる。従って、断熱手段が注入口全体には及んでおらず、蓄積に適した一部領域のみに断熱手段を設けることが好ましい。ここでは、特に注入口、凹部、蒸留塔、キャピラリ、材料境界などの一部領域または複数の位置が含まれる。これらの一部領域は、特に気体または流体重合性材料の貯蔵容器として適している。これらの領域は、例えば容器の注入口からの出口に存在するため、容器の内部領域を超えて注入口に断熱手段を設けることが有利である。
【0027】
別の実施形態によれば、注入口内の断熱手段は少なくとも部分的に断熱材により形成することができる。これは、例えば、注入口自体が断熱材により形成されることを意味する。ただし、注入口に蒸留塔の内部領域に対する断熱コーティングまたはシースを設けることも可能である。コーティングとしては、接合技術を使用して断熱材を注入口の表面に塗布することが好ましく(特に、2種の材料が共通の境界層を形成する)、シースとしては、好ましくは注入口または注入口の内部に除去可能に設けることができる明確に範囲を定めることができる(clearly limitable)構成要素である。
【0028】
ここで、注入口を取り囲む断熱材の数または強度は、過熱された流入材料と蒸留塔の内部領域との温度差、特に1〜30℃、好ましくは5〜25℃、特に好ましくは8〜15℃の範囲から実質的に選択する。
【0029】
有利な別の形態によれば、少なくとも1つの注入口は2以上のジャケットを有することができ、断熱層を少なくとも2つのジャケットの間に設けることが好ましい。特に互いに同軸に配置されたジャケットは、離れているか、接触しているかに関係なく、ある種の境界層を形成する。境界層は、内側シースから外側シースへの熱移動や外側シースから内側シースへの熱移動を妨げる。好ましくは低い熱伝導率を有する材料の断熱層をジャケット間に配置した場合には、この効果は更に高められる このために、任意に注入口の構成要素の温度差膨張を補償することができる無機膨張マットまたは類似の構成要素を使用することができる。
【0030】
2以上のジャケットを有する注入口の実施形態では、ジャケット間に設けられた断熱層が真空であり、好ましくは2以上のジャケットの少なくとも1つの内部表面が反映されている(mirrored)ことが好ましい。例えば、互いに同軸に配置された2つのジャケット(二重壁のジャケットパイプ)の間の真空により、1つのジャケットからもう1つのジャケットへの対流による熱移動が排除される。熱放射を避ける為に、ジャケットの内部表面の少なくとも1つを反映させる。
【0031】
蒸留塔の別の実施形態によれば、少なくとも1つの注入口は、鋼に比べて流体に対する滑り性が向上されたコーティングを少なくとも部分的に含む。ここで、蒸留塔の内部領域に至るまでの全表面にそのようなコーティングが施されていることが好ましい。コーティングとしては、特に、ポリフルオロ炭化水素、好ましくはテフロン(登録商標)、ポリアニリンワニスまたは金属イオンを有していない表面(例えばガラス)を有するコーティング、あるいは少なくともこれらのコーティングの2種の混合物が挙げられる。ガラスをコーティング剤として使用する場合には、特に、二酸化ケイ素(SiO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ナトリウム(NaO)の冷却溶融液から得られ、必要に応じて大量の三酸化ホウ素(B)、酸化アルミニウム(Al)、酸化鉛(PbO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)あるいは酸化カリウム(KO)を含む工業ガラスが好ましい。工業ガラスは、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも65重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%のSiOからなることが好ましい。コーティングは、注入口への流体、粘性または固体重合性材料の蓄積または堆積を減少させる効果を有する。通常、蒸留塔または容器のその他の領域または蒸留塔の内部領域のその他の構成要素にこのようなコーティングを設けることも有利である。表面またはコーティングの特性または実施形態に関する詳細については、図9の記載を参照する。
【0032】
蒸留塔の別の形態によれば、少なくとも1つの注入口は下部フロアおよび分離フロアとの間に配置される。これは、特に、分離フロアを最初に通過する前に、流入重合性材料が下部フロアによって偏向され、材料が再度注入口の領域を通過することを意味する。
【0033】
容器は複数の分離フロアを含み、少なくとも1つの噴霧装置が設けられ、噴霧装置により少なくとも1つの分離フロアの下面に重合性材料を噴霧することができる。この種の噴霧装置は、分離フロアの下面に付着している重合性材料の一部を効果的に取り除き、分離フロアの下面での重合を回避することができる。ここで、蒸留塔の最下部にある分離フロアが、そのような噴霧装置の噴霧範囲内に位置している実施形態が好ましい。噴霧装置には容器の回収容器からの液体重合性材料が供給され、材料は分離フロアの下面に均一に分布するように噴霧される。噴霧装置は好ましくは複数のノズルを含み、ノズルは分離フロアの断面に均一に分布された噴霧領域を形成する。噴霧装置は、例えば2〜5バール、好ましくは3バールの高圧で運転することが特に好ましい。噴霧装置は分離フロアの下面から1mまたは50cm以下の距離に配置することがさらに好ましく、距離は噴霧領域および/またはノズルの数を考慮して変更する。
【0034】
また、本発明は、重合性材料を精製するための方法であって、本発明に係る蒸留塔に注入口を介して重合性材料を材料流体として導入し、内部領域において少なくとも部分的に材料気相に変化させる方法に関する。ここで、材料気相が、注入口の上方に配置された第一の分離フロアに向かって等方性密度を有して流れ、注入口と第一の分離フロアとの間の水平面内での等方性密度の平均値からの最大偏差が15%以下であることが好ましい。最大偏差が10%以下、特に5%であれば特に有利である。蒸留塔の構造を比較的コンパクトにするために、水平面は分離フロアに比較的密接して平行に位置することが好ましい。水平面は分離フロアの下方の100mm以下の位置にあることが好ましいが、第一の分離フロアからの水平面の距離は50mm以下または10mm以下であってもよい。
【0035】
重合性材料の流体相でも等方性密度が得られるように少なくとも1つの分離フロアが設計されていれば、蒸留塔内において重合が生じる可能性の低い特に均一な蒸留が行われる。これは、特に「デュアルフローフロア(Dual−Flow−Floor)」を使用することによって達成される。このようにして、材料気相は分離フロアを上述した等方性密度で流れ、発生する最大偏差は明らかに減少する。
【0036】
重合性材料の蒸留のための蒸留塔の分離フロアは、少なくとも1つの複数の開口部を有する底板と、複数の開口部をグループに分割する少なくとも1つの付属品と、を含み、少なくとも1つの付属品により、内部を流体が流れることができる開口部が形成される。
【0037】
底板は金属材料を含むことが好ましいが、その他の耐熱性および耐酸性の材料を使用することもできる。底板の外形設計は蒸留塔に応じて選択され、例えば、円形、正方形または類似の形状を有することができる。底板には複数の開口部が設けられ、特に底板を介して流体および/またはガスを交換することができる。
【0038】
開口部は、流体材料を保持し、好ましくは熱および成分を交換するための気泡層が流体材料と気体材料との間に形成されるような大きさを有することが好ましい。底板に対する開口部の配置は自由に選択可能であり、蒸留塔内部の条件に合わせる。例えば、底板全体に開口部を均一に分布させてもよく、別の底板の設計が必要な場合もある。例えば、底板の縁部分を蒸留塔の内部に配置する必要がある場合である。また、例えば、底板が空間的な大きさのために片側で支持される場合に支持部が開口部を閉鎖する場合も同様である。従って、底板のこれらの領域には開口部を設けないことが有利である。
【0039】
付属品は複数の開口部をグループに分割し、少なくとも一つの付属品により、流体が流れることができる開口部が形成される。付属品の機能は底板に集まった液体の移動に影響を与えることにあり、高い流速を回避するとともに、液体の滞留時間が比較的長くなる「デッドゾーン」が形成されることはない。
【0040】
例えば、特に、底部を通過する気体材料が底板の断面に完全に均一に導入されない場合には高い流速が生じ得るが、ある領域では特に強力な源が形成される。その後、流体への波状の刺激が生じる。底板全体に広がり、底板上で異なる流体面を生じさせるこのような波面を避ける為に、付属品は流体または気泡層を波に対して沈静化する消波板(wave breaker)としての役割を果たす。
【0041】
実際、底板を空間的に非常に範囲が限定された異なるセクターへと分割しても、流体の移動が必ずしも改善される訳ではない。むしろ、分割により開口部のグループが形成され、重合性材料による影響が少なくなり、セクターに関して程度が異なる蒸留が生じ得る。そのため、付属品によって流体の自由な移動を制限するが、他のセクターの複数の開口部(特に全ての開口部)への到達性に関して制限しないようにする。これは、付属品によって、流体が流れることができる開口部を更に形成することによって達成される。開口部によって、流体は好ましくは底板の任意の開口部に向かって流れることができる。
【0042】
開口部の設計は、流体、重合性材料、蒸留塔またはその運転も考慮に入れて選択する。例えば、円形の開口部、四角形の開口部、スロットなどが挙げられる。開口部は、付属品によって完全または部分的に制限および/または形成することができる。このような開口部の配置では、開口部を低い領域(すなわち、底板の近傍)に配置することが有利である。このようにして、上部の液体または流体層の波状移動の伝播が遮断されるとともに、開口部の異なるグループの近傍の深層は互いに交流する。なお、開口部は、デッドゾーンが可能な限り少なく形成されるか、好ましくは全く形成されないように設計され、デッドゾーンとは流体が比較的長い滞留時間を有する領域を意味する。
【0043】
流体はこのようなデッドゾーンで重合する傾向があり、長期的には開口部の少なくとも部分的な封鎖が生じ得る。その結果、気体または流体の交換が行われる開口部の数が減少し、気体圧力の増加によって流体へのさらなる波状の刺激が生じる。材料の重合が増加すると、所望の品質で蒸留工程を行うことができず、精製および/またはメンテナンス手段が必要となる。その結果、蒸留工程を中断し、蒸留塔の運転を停止しなければならない。分離フロアは時間をかけて洗浄し、再び取り付けなければならない。本発明で提案する底板の付属品により、そのような複雑な対策は長期にわたって少なくとも遅らせることができる。ポリマー堆積物が生じる位置が著しく少なくなるため、精製を更に迅速に行うことができる。これは、蒸留塔を所望の蒸留結果で長期間運転することができるとともに、精製処理を更に迅速に行い、蒸留塔の中断時間を短縮できることを意味する。
【0044】
通常、本発明に係る重合性材料としては、重合傾向を有し、当業者に公知のあらゆる化合物を挙げることができる。好ましい重合性材料は、大量生産プラスチックの製造で使用されるモノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレン、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート等である。本発明に係る方法で使用するポリマー材料は(メタ)アクリル酸であることが特に好ましい。ここで、「(メタ)アクリル酸」という用語は「メタクリル酸」及び「アクリル酸」という命名法上の名称を有する化合物を意味し、アクリル酸が好ましい。本発明に係る方法では、内部領域において絶対圧力が存在することが好ましい。この圧力は、蒸留塔の内部領域において、50〜400hPa(ヘクトパスカル)、好ましくは100〜300hPa、特に好ましくは150〜250hPaの範囲であることが好ましい(1hPa=1mbar=10Newton/平方メートル[N/m]=10Pa)。
【0045】
本発明に係る方法では、材料流体を過熱することが好ましい。ここで、大部分が重合性材料である材料流体の主成分の温度は、材料流体の純粋な上部成分(head component)の沸点よりも少なくとも1℃、好ましくは少なくとも5℃、特に好ましくは少なくとも10℃高いことが好ましい。
【0046】
また、本発明は、重合性材料を製造するための方法であって、反応器内で重合性材料を少なくとも一つの試薬から合成し、重合性材料に対して精製のために本発明に係る方法を行う方法に関する。重合性材料の合成は特定の方法に限定されない。当業者に公知のあらゆる方法を考えることができる。アクリル酸の合成では、好ましくは少なくとも2段階の気相酸化反応を行い、好ましくは、第1段階でプロピレンの接触酸化によってアクロレインを生成し、次の段階でアクリル酸を気相として生成する。得られた気相は、冷却装置内で流体、好ましくは水または水よりも沸点の高い有機化合物またはそれらの混合物と接触させ、精製のために間接的または直接的に本発明に係る方法を行う。アクリル酸の製造および精製方法に関する詳細については国際公開第WO02/55469号を参照し、その開示内容は本願の開示内容の一部をなすものとする。
【0047】
また、本発明は、重合性材料の蒸留のための本発明に係る蒸留塔の注入口の使用に関する。
【0048】
また、本発明は、本発明に係る方法によって得られる重合性材料に関する。
【0049】
また、本発明は、本発明に係る重合性材料(好ましくはアクリル酸)の、成形品、繊維、シート、吸収性ポリマー、革・織物処理のためのポリマー、水処理のためのポリマーまたは石けん製造のためのポリマーにおける出発材料としての使用に関する。
【0050】
また、本発明は、本発明に係る重合性材料(好ましくはアクリル酸)から少なくとも部分的になる成形品、繊維、シート、吸収性ポリマー、革・織物処理のためのポリマー、水処理のためのポリマーまたは石けん製造のためのポリマーに関する。
【0051】
本発明を図面を参照して詳細に説明するが、図示する実施形態は本発明の特に好ましい実施形態または図示する公知の蒸留塔への本発明の導入の特に好ましい実施形態を示す。なお、本発明は図示する実施形態に限定されるものではない。また、本発明とは関係のない蒸留塔の技術分野に関する詳細についても説明する。
【0052】
図1は重合性材料のための蒸留塔1の概略断面図を示し、蒸留塔1は下部フロア8を有する容器2と重合性材料の注入口4とを含む。注入口4は容器2の内部領域5に通じている。以下に更に詳述するように、蒸留塔1は容器2内で材料を均一に分布させるための様々な手段を備えている。
【0053】
重合性材料の流路の理解のために、蒸留塔1内における材料の経路を最初に説明する。通常、重合性材料は最初は流体であり、加熱装置27によって蒸気および/または気体状態に変化および/または過熱される。加熱装置27から供給された材料は注入口4内を流れ方向25に流れ、容器2の内部領域5に流入する。内部領域5への流入時または流入直後に、部分的に流体で部分的に蒸気である材料は、第1の蒸留段階が行われる分離フロア23に向かって流れ方向25(矢印で示される垂直上方向)に流れる。液滴状の材料の濃縮成分は、注入口4または容器2の下部フロア8へと流れ方向25とは逆方向に流れ落ちる。容器2は、最下部に濃縮物を回収する回収容器24を含む。回収容器はポンプ28に接続されており、ポンプ28は回収容器24内の濃縮物を蒸留塔1から送り出す。
【0054】
注入口4をさらに詳細に説明すると、注入口4は注入開口部13と排出開口部14を有し、排出開口部14は容器2の下部フロア8に近接して実質的に平行に配置されている。注入口4は分離された構成要素として示されており、付属品3を介して容器2内を通過し、内部領域5へと延びている。注入口4は直線部分と屈曲部分とを含み、排出開口部14の中心軸19が容器2の中心軸62と一致するように排出開口部14が位置するように設計されている。注入口4の内部には、排出開口部14に向かって部分18全体に配置されたフローインフルエンサーが設けられている。フローインフルエンサー15は複数のバッフル16を含み、注入口4の内部で重合性材料の流れを平衡させるための流路17を確保している。中心軸19あるいは中心軸62と中心が一致した状態で、円錐状の流れ分配器20が先端部21が排出開口部14と最も近接するように配置されている。図1において矢印(流れ方向25)で示すように、流れ分配器20を容器2の内部領域5に配置することによって流入材料の偏向が生じる。また、容器8はガイド表面61が容器2内における材料の均一な分布を維持するように設計されている。更に、図示する流れ分配器20の配置によって、流入材料が回収容器24に蓄積された濃縮物と直接混合されないように流れ分配器20が保護的な機能も有するという利点も得られる。
【0055】
注入口4には、内部領域5から断熱するための複数の手段が設けられ、これらの手段は容器2の内部領域5と接触する注入口4の外部領域6全体にわたって延在する部分領域9内に配置されている。注入口4は二重壁パイプとして形成され、互いに同軸に配置された2つのジャケット10を含む。2つのジャケット10の間には断熱層11が真空として存在し、ジャケット10の内部表面12が互いに反映される(mirrored)。
【0056】
特に、重合性材料の流体成分が内部空間5を定める表面に蓄積および/または付着することを防ぐ為に、注入口4の外部表面6全体、ジャケット表面全体および/または流れ分配器22の先端部21および容器2の内部壁には鋼に比べて流体に対する滑り性が向上されたコーティング22が施されている。
【0057】
図2は、カバープレート41と、付属品31と、フロアプレート29と、キャリア44とを含む分離フロア23の概略断面図を示す。
【0058】
流体60がカバープレート41とフロアプレート29との間に配置されている。気体状態の重合性材料はフロアプレート29の開口部30を介して流れ方向25で流体60と接触し、異なる境界層がフロアプレート29とカバープレート41との間に形成される。このようにして、気泡59が実質的に存在しない流体層36が形成される。流体層36の上方には、蒸気気泡層57および/または気泡層が配置されている。この層は流体60と気体との間に存在する境界層である。カバープレート41と蒸気気泡層57との間には液滴層58がさらに配置され、液滴層58は実質的に蒸留される材料の気体状態の特徴を有し、カバープレート41から落ちる流滴26が充満している。気体材料が(図示する)流れ方向25に下から上に移動する間に、流体60は重力55に従って下部フロア8(図示なし)に向かって逆方向(向流原理)に流れ落ちる。
【0059】
ここで、カバープレート41は必ずしも1つの部品で構成される必要はなく、2以上の部品で構成されてもよい。カバープレート41はパッケージに積層され、その間に(好ましくは非直線状の)流路を形成する複数の構造板および/または塑性要素を含むことが好ましい。板および/または塑性要素は、実質的に重力方向と平行であり、特にフロアプレート29から100〜200mmの範囲の距離42に配置することが好ましい。板および/または塑性要素は、カバープレート41またはパッケージの厚みが約100〜200nmとなるように設けることが好ましい。
【0060】
フロアプレート29は複数の開口部30を含み、開口部30は付属品31を使用して2以上のグループ32(図3を参照)に分割されている。ただし、付属品31は、開口部33内を流体および/または液体60が流れることができ、矢印54の方向に(すなわち、実質的にフロアプレート29と平行および/または実質的に材料の流れ方向25と垂直に)互いに隣接する開口部30からの流体交換が行われるように設計されている。付属品31には鋼に比べて流体に対する滑り性が向上されたコーティング22が施されている。同時に、付属品31は2つの板29および41に対する分離リミッターおよび/または支持壁として機能する。このようにして、カバープレート41はフロアプレート29から所定の距離42に好ましくはフロアプレート29と平行に配置される。開口部33の大きさおよび/または高さ34を考慮に入れると、開口部は流体層56よりも実質的に幾分小さく形成され、それ故に蒸気気泡層57付近に配置された流体層56の上層部では流れが妨げられ、フロアプレート29付近では流体が比較的妨げられることなく矢印54方向に移動することができる。また、カバープレート41も整流器64として形成することができ、特に流体が内部を流れることができる複数の流路を有するハニカム構造68として形成することができる。
【0061】
付属品31の反対側45に、キャリア44がホルダーとして設けられている。キャリア44はT字型に形成され、フロアプレート29と実質的に平行に配置され、寸法50を有するフット49と、実質的にフットと垂直なキャリア下部とを含む。凹部47が、フロアプレート29と実質的に垂直なT字型キャリア44のキャリア部分に設けられている。図示する実施形態では、凹部47は3mm未満の間隔51で配置されている。このようにして複数の液滴端部63が形成され、排出流体(点線で示す)が液滴26を形成し、表面から重力方向55に流れ落ちる。この効果を支持するために、フロアプレート29とキャリア44には、特にテフロン(登録商標)を含むコーティング22が施されている。
【0062】
図3は、本発明に係る分離フロア23の別の実施形態を示す概略上面図である。図3に示すように、分離フロア23は蒸留塔1または容器2の内部領域5全体に及ぶ。しかし、この種の複数の分離フロア(好ましくは四角)を1つのプラットフォームに結合し、蒸留塔1の内部領域5全体に及ぶ大きさとすることもできる。図示する円形の分離フロア23の実施形態は複数の開口部30を含み、開口部30は付属品31により数個のグループ32に分割されている。付属品31は複数のバー35を含み、バー35は接合技術により相互に規則的に接合されている。このように設計された付属品31は、開口部30の各グループ32を有するフロアプレート29のセクター40を形成する。付属品31は、矢印54の方向に隣接するセクター40からの液体または流体の交換がなされるように設計されている。また、コーティング22が施されたフロアプレート29の下側45にはキャリア44が点線で示されている。キャリアは蒸留塔1に直接接続されており、フロアプレート29の安定性を高める役割を果たす。
【0063】
図4は、本発明に係る分離フロア23の変形を示す断面図である。図4に示すように、分離フロア23のホルダ43にキャリア44が設けられており、キャリア44は突出部53によって蒸留塔1の容器2に接続され、蒸留塔1の内部領域5内で分離フロア23を実質的に水平に位置させることができる。突出部53は簡略化して示されている。実際は、内部領域5内で分離フロア23を正確に水平に位置させるために複数の調節手段を設けることができる。キャリア44は大きさ46を有し、T字型である。フロアプレート29に対して実質的に垂直に位置するキャリア部分に加えて、フロアプレート29の支持プレートとしての役割を果たすフット49を含む。垂直のキャリア部分では、複数の凹部47がフット49に直接取り付けられており、凹部47は半円形をなしている。半円設計47は必須ではないが、丸い輪郭のために剛性の点で利点を有する。これらの凹部47はエクステンション48で示すことができ、エクステンション48はフロアプレート29および/またはフット49に実質的に平行になるように決定する。凹部47は、エクステンション48の合計が大きさ46の少なくとも80%〜30%であり、より好ましくは70%〜40%であり、特に好ましくは60%〜65%であるように好ましくは設計する。
【0064】
図4では、フロアプレート29の上方にバー35の形態の付属品31が示されている。バー35は容器2に近いフロアプレート29の縁部においてスペーサ38によって固定されている。このようなスペーサ38を設けることによって、バー35とフロアプレート29との間にギャップが生じ、上述した流体の流れに有利な作用を及ぼすことができる。図4では、個々のバー37を有するバー35の特定の実施形態を示す。バー37および/またはスペーサ38は幅39を有し、幅39の合計はバー35の長さ36よりもかなり小さくなっている(例えば50%未満)。前述の割合に関して、好ましくは幅39を有するスペーサ38および/またはバー37のみがフロアプレート29と直接接触する(すなわち、流体層全体の流れを実際に妨げる)。バー37および/またはスペーサ33によって開口部33が形成され、開口部のフロアプレート29からの高さ34は1〜100mm、好ましくは5〜50mm、特に好ましくは10〜30mmの範囲である。
【0065】
図5は整流器64の異なる実施形態を概略的に示しており、整流器64は分離フロア23に向かう蒸気重合性材料の流れを改善する役割を担う。このような整流器64は、少なくとも1つの分離フロア23へ向かう重合性材料の均一な流れを達成する機能を実現する。この場合、均一とは、好ましくは、分離フロア近傍における蒸留塔1の内部領域の断面での流速および流れ方向の少なくとも1つが20%未満、特に10%未満、有利には5%未満の範囲の偏差を有することを意味する。例えば、2〜5m/s[毎秒メートル]の蒸気材料の所定の流速において、1m/s[2m/sの50%]〜7.5m/s[5m/sの150%]の整流器の上流における偏差が存在することを意味する。流れ方向25に関しては、少なくとも1つの分離フロア23に垂直に突き当たる流れ(垂直流れ方向)から、最大180度、好ましくは120度、特に好ましくは72度、有利には45度、特に好ましくは20度の垂直流れ方向に対する許容差が存在する。この点に関しては、垂直流れ方向に対する許容差が対称的に設けられているものとする。
【0066】
整流器64は、平らに設計され、少なくとも1つの分離フロア23と実質的に平行であり、および/または蒸留塔1の内部領域5に固定されていることが好ましい。整流器64は耐食性および高温耐性を有する材料で少なくとも部分的に形成され、流体が内部を流れることができることが好ましい。そのため、好ましくは速度および/または方向に関して流れのプロファイルに影響を与えながら、開口部の遮断または閉鎖を防止する開口部が設けられている。整流器54は、蒸留塔1の内部領域5全体に広がっていることが好ましい。
【0067】
従って、整流器64は以下の要素の少なくとも1つを含む:少なくとも1つの格子構造67、少なくとも1つのハニカム構造68、少なくとも1つの開口板69またはいわゆるパッケージ。これらの要素は、分離フロア23に直接的または間接的に接続することができ、特に分離フロア23の一部とすることができる。格子構造67は2以上の長手方向の繊維状構造を含み、繊維状構造は無秩序または網目のように相互に接続されている。長手方向の繊維状構造としては、例えば被覆金属ワイヤーが好適である。ハニカム構造68は1つまたは複数の構成要素から形成することができる。図示する実施形態は、ハニカム構造68を形成するために接続された2以上の平滑な構造プレート層を含む。開口板69は、実施形態に示す丸い形状以外にも、正方形、楕円形、複数の角部を有する形状またはその他の形状に設計することができる。穴の数は、開口板69の全面積の30%を超えることが好ましい。
【0068】
図6は、鋼に比べて流体の付着性が低いコーティング22を有するフロアプレート29を含む分離フロア23の実施形態の詳細を示す。図6に示すように、コーティング22は層の厚み71、表面粗さ72、開孔率73などのパラメータで特徴付けることができる。好ましくはポリテトラフルオロエチレンを含むコーティング22を接触面70に塗布する。コーティング22を設けない場合には、接触面70は重合性材料と直接接触することになる。このようにして材料の蓄積および重合を防止することができる。
【0069】
図7は、プロピレンからアクロレインへの酸化を行う第1の気相酸化反応器76と、反応器76に接続され、アクロレインをアクリル酸に酸化させる気相酸化反応器77とを含むアクリル酸製造装置を概略的に示す。反応器77で得られたアクリル酸ガス混合物は、本発明に係る蒸留塔1に間接的または直接的に接続された冷却装置78に供給される。本発明に係る蒸留塔には、1以上の精製装置79を接続することができる。精製装置79としては、例えば、洗浄カラム、抽出器または共沸蒸留器に接続された層クリスタライザ、懸濁クリスタライザのような結晶化装置が挙げられる。精製装置79は、高純度のアクリル酸を回収する蒸留塔1の一部に配置されるのが好ましく、蒸留塔頂80であることが好ましい。上述したアクリル酸製造装置の設計によって、ほぼ99.8%を超える非常に高い純度でアクリル酸が得られる。アクリル酸以外の他の重合性材料に対しても同様な装置設計が考えられる。
【0070】
図8は材料気相の密度分布を測定する実験装置の構造を概略的に示す。容器2および第1の分離フロア23を点線で示す。分離フロア23の下には、部分85と共に、材料気相の等方密度分布の測定が行われる仮想水平面81が示されている。図示する例では、水平面81には容器2の他の構成要素または内部に配置された構成要素が存在しない。水平面81の両側の領域には、放射線発生源82および入射放射線量を測定するための対応する検出器が設けられている。発生源82は容器2の断面に実質的に相当する水平面81の中心点87を通過するように光線を照射する。更に、発生源および検出器の別の位置を点線で示し、(II)で表す。位置(I)および(II)は順番に生じると共に方向変化86によって互いにオフセットされており、測定処理がそれぞれ行われる。この処理では、検出器83が入射インパルス放射線をカウントする。
【0071】
図8に、計測結果を2つの棒グラフで概略的に示す。測定は、所定の期間にわたって一定の光線幅88で行った。検出器83は光線幅88でのカウントインパルス(n)の分布を示す各グラフをそれぞれ生成した。図では、第1の測定(位置I)および第2の測定(位置II)の最高値をnおよびnIIで示す。光線幅88でのカウントインパルス(n)の積分をAおよびAIIでそれぞれ示す。各積分またはカウントインパルス値の値または形状は、光線が通過した媒体または材料気相の密度に特有である。積分の棒グラフまたはカウントインパルスの高い値は、発生源82から放射された放射線の大部分が検出器83に達したことを示す。逆に、カウントインパルスの非常に低い値またはグラフのシャープな形状は少なくとも放射線の一部が通過しなかった密度の濃い媒体を示すものである。
【0072】
この種の測定を前述の装置、特に本発明の装置に対して1箇所以上(I,II,…)で行うと、注入口4と第1の分離フロア23との間の水平面81内の等方性密度の最大偏差は最大でも15%である。図示する実施形態では、n値がnIIの少なくとも70%であることを意味する。検出されたインパルスの数は光線が通過した材料気相の密度に特有であるため、密度の基準としてこのパラメータを使用できる。従って、このようにして本発明に係る等方性密度分布が存在していることを立証することができる。
【0073】
図9は分離フロアの波状フロアプレート29の形状の詳細を概略的に示す。特に以下の特性を有するこのようなフロアプレート29は複数の穴30を有し、説明する実施形態の変形と組み合わせるだけではなく、個別に使用することによっても特に有利である。波状のフロアプレート29の利点は、下面に付着した流体の滴26が谷90へと流れ落ち、局所的に互いに混じり合うことである。これにより、重合が発生する可能性が更に減少する。同時に、流体が蓄積することによって最終的な分離にも繋がる。フロアプレート29が波状であれば、例えば図2と図3に示した付属品31は不要となる。なぜなら、波形であることで分離が行われ、望ましくない流体の流れを妨げるからである。蒸留塔1の2以上または全ての分離フロア23が波状のフロアプレート29であることが好ましい。この場合、互いに隣接するフロアプレート23が波形状の配置および/または方向に関して互いにオフセットするように配置され、特にフロアプレート29の波のピーク89または波の谷90がそれぞれ90度の角度となるような形状であることが好ましい。
【0074】
フロアプレート29が、0.5〜5.0cmの範囲、特に1.2〜1.7cmの範囲の波高92を有する形状であることが特に好ましい。この場合の波高92とは、波のピーク89と波の谷90との間の平均垂直距離を意味する。ここでは、波のピーク89は隣接する波の谷90から(波長91に相当)約3.0〜10cm水平方向に離れて位置し、特に波長91は4.0〜6.0cmの範囲である。
【0075】
重合性材料と接触する蒸留塔1の表面の特別な形状により、重合傾向を更に減少させることが可能となる。これは、特に分離フロア23、流れ分配器20,注入口4、整流器64または容器2の少なくとも一部に該当する。
【0076】
変形によれば、少なくとも前述の表面の1つまたはそのコーティングがそれぞれ少なくとも部分的に特に低い平均粗さ値(R)を有する。平均粗さ値は、中央位置93と実際の形状94の距離96の絶対量の(参考経路95における)算術平均である。ここでは、平均粗さ値は2.0μm(マイクロメータ)、特に0.5〜1.0μmの範囲であることが好ましい。このような平均粗さ値であれば、流体で濡れた表面に流体が付着する傾向が減少し、流体はより素早く流れ落ちる。図9では、フロアプレート29の表面に関する例と図示により平均粗さ値を示している。
【0077】
上述した領域の少なくとも1つに(代替または累積的に)自己洗浄式表面および/またはコーティングを少なくとも部分的に設けることもできる。自己洗浄式表面は人工の少なくとも部分的に疎水性の凸凹表面形状を有し、凹凸がキャリアにより表面に固定された粒子で形成されていることが好ましい。これは、粒子がナノメートルの範囲で(ナノ構造97を図9に概略的に示す)凸部および/または凹部を有するギザギザ構造を含むことにより、有利に特徴付けられる。凸部は20〜500nm(ナノメートル)、特に好ましくは50〜200nmの平均高さを有することが好ましい。粒子上の凸部または凹部の間隔は、500nm未満、最も好ましくは200nm未満であることが好ましい。ナノメートルの範囲の凸部および/または凹部を有するギザギザ構造は、例えば、くぼみ、孔、切り込み線、ピークおよび/またはスパイクなどで形成される。粒子は、50μm(マイクロメートル)未満、好ましくは30μm未満、最も好ましくは20μm未満の平均サイズを有する。粒子は50〜600m/g(1グラム当たりの平方メートル)のBET表面積を有することが好ましい。粒子は50〜200m/gのBET表面積を有することが最も好ましい。「BET表面積」とは、BRUNAUER、EMMET、TELLERの有名な方法による比表面積の測定を意味する。
【0078】
構造形成粒子として、多くの化学分野の様々な化合物を使用することができる。ここでは無機粒子が好ましい。ケイ酸塩、ドープケイ酸塩、鉱物、金属酸化物、ケイ酸、重合体およびケイ酸でコーティングされた金属粉末から選択される少なくとも1つの材料を含む粒子が好ましい。好ましくは1μm(マイクロメータ)の粒子を有する発熱ケイ酸または沈降ケイ酸、特にエアロジール(aerosils)、Al、SiO、TiO、ZrO、エアロゾールR974被覆の亜鉛粉末、、例えば極低温で粉砕または噴霧乾燥させたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの粉末重合体、過フッ素化共重合体、テトラフルオロエチレンとの各共重合体を含む粒子が好ましい。この種の粒子および自己洗浄式表面を生成するためのコーティングは、DEGUSSA AGから入手可能である。
【0079】
測定方法
【0080】
材料気相の等方性密度(「方向に依存しない(direction−independent)」密度分布)および偏差をそれぞれ、例えば、ドイツのZwingenbergにあるIngenieurbfuro Bulander & Esper GmbHによる方法で測定する。放射線発生源により、有向光線(所定の幅、例えば5cm)を検出器に向かって照射する。発生源と検出器は、光線が蒸留塔内を実質的に水平に進むように蒸留塔の両側に位置している。発生源として、例えば、0.3〜3.7GBqの放射能を有するコバルト(Co60)およびセシウム(Cs137)を使用する。
【0081】
蒸留塔の運転中に放射された光線を、単位時間当たりのインパルスとしてシンチレーション検出器で有利に計測し、分析または表示装置に転送する。複数の検出器および/または発生源を設け、必要に応じて蒸留塔の外周に分散配置することもできる。後者の構成では、異なる方向での比較測定において同じ実験的構造を維持し、容易に他の発生源および/または検出器を使用し、誤った設置の結果として生じる測定の不正確さを避けることができるという利点がある。
【0082】
実験装置の構造に関しては、図8の詳細を参照する。
【0083】
このような放射線ビームを材料気相内に所定の時間にわたって放射している間に、検出器のカウンターが入射放射線を認識して、インパルスをカウントする。単位時間当たりのインパルス数は発生源と検出器の間に位置する材料の密度の尺度である。高い値は密度が低いことを意味する。これは、放射された放射線の大部分が検出器に到達するためである。従って、カウントされたインパルスの値が低い場合、密度がより高いことになる。
【0084】
材料気相の均一な流れは、例えば、断面において流体および気体成分が均一に分布していることによって得られる。これにより、分離フロアが局所的に閉鎖されていること(わずかな流体のみが材料気相に存在し、密度が低い)、または、例えば、気体流が減少した領域が存在する(対向圧力が減少して流体流の増加および密度の増加が観察される)ことが分かる。
【0085】
等方性を測定するために、まず第一の運転フロアより下方の水平面において第一の方向で測定を行い、所定の時間(t;例えば5mm)(n)にわたって放射線を検出する。蒸留塔の運転の変化の影響を減少させる為に測定を複数回行うことができ、時間(t)にわたって値(n)を記録する。その後、平均値(N)を算出して、等方性の基準として使用する。放射線ビームが一定の幅(例えば5cm)で放出され、検出器はこの幅において測定値の識別を可能にする分解能を有する。次に、平均値またはグラフの下位面積(積分)を上記幅におけるインパルスの割合を表す基準として計算する。
【0086】
検出された放射線の特性値または特定の積分を記録した後、前述の手順を同じ水平面で異なる方向において繰り返す。2つの方向は、好ましくは30度、特に40度を超える角度をなす。このようにして、異なる方向で少なくとも2回の測定、特に少なくとも3回の測定を行う。
【0087】
材料気相を通過する自由放射線の長さが等しくなり、それにより検出された放射線の値をぞれぞれ比較できるように、蒸留塔の直径に沿った方向を選択する。これは、放射線が同じ体積の材料気相を通過するために可能となる。当然、異なる放射線の経路を選択することも可能であり、各測定で同じ長さとすればよい。
【0088】
水平面は蒸留塔内で任意に設定してもよく、少なくとも1つの分離フロアと実質的に平行であることが好ましい。流れの均一性を確認する為に、分離フロア、蒸留液または材料気相を通過する方向放射線を調べる。第一の分離フロアへの流れの特性を分析するために、水平面は第一の分離フロアの下方の200mm未満の領域内で選択することが好ましい。特に、水平面は、第一の分離フロアの下方の100〜10mmの範囲内であることが好ましい。
【0089】
本発明の意味において、密度の等方性は、特に記録した測定値(nおよび/またはN)の偏差が最大でも15%の場合に存在する。偏差を測定するために測定値の算術平均(M)を測定する。算術平均は、方向測定(X)の所定の数について、方向当たりの測定値の合計(nおよび/またはN)と測定値(X)の数からの商として定義される。例えば、5%の最大偏差は、インパルスの割合の最高測定値と最低測定値が0.95〜1.05Mの範囲に存在することを意味する。ここで与えられる偏差により、宇宙環境放射線による測定偏差(通常3秒の測定持続時間および約50mmの測定帯域幅での約+/−50カウントインパルス)を考慮に入れていることが好ましい。
【0090】
図10は、フローインフルエンサーの特定の形態としての流れ混合器を有する注入口4の別の実施形態を示す概略斜視図である。図示する注入口4は、重合性材料を偏向させる屈曲部99を含む。重合性材料がフローインフルエンサーなしで注入口4を自由に流れると、屈曲部99によって注入口4の断面において流れの不均一な速度分布が生じることになる。これは、屈曲部99の領域での乱流および逆流のためである。この現象を回避する為に、屈曲部99に近接(好ましくは直接前)して上流に流れ混合器98を設けることができる。このような流れ混合器98は流れてくる重合性材料を2以上のフィラメント100に分け、フィラメント100が屈曲部99を通って実質的に同じ経路を進むように流れを偏向させる。重合性材料を少なくとも部分的に回転させることが好ましい。それにより脈動または逆混合のない統一した流れが生じ、注入口4の断面を均一に流れ、屈曲部99を過ぎてから、重合性材料が例えば流れ分配器20に当たり、均一に分配される。フローインフルエンサーおよび/または流れ混合器98は、注入口4の2以上の屈曲部99に設けることができる。
【0091】
図11は噴霧装置101を有する容器2の部分断面を示し、図12は図11に示す噴霧装置101の上面図である。容器2は分離フロア23を有し、分離フロアの下面105は(特に蒸留塔1の運転時に)噴霧装置101で洗浄される。複数の分離フロア23が上下に配置されている場合には、少なくとも容器2の最下部の分離フロア23に対してこのような噴霧装置101を設けることが好ましい。この分離フロア23を介して一定の組成を有する重合性材料の流体が流れ、例えば容器2の回収容器24に回収される。有利には、噴霧装置101の供給装置104を介してこの流体を供給し、分離フロア23の下面105を洗浄する。この流体を使用すると、最下部の分離フロア23内での蒸留に対して大きな影響が生じないという利点がある。この噴霧装置101によって、分離フロア23の下面105に付着している重合性材料の成分(場合によりすでに部分的に重合している)が効果的に取り除かれる。
【0092】
噴霧装置101は、複数のノズル102を含むことができる。ノズルは、断面全体で分離フロア23を実質的に均一に洗浄できるように設計されている。この場合、ノズルの配置および/または種類はそれに応じて選択される。図12は、実質的に均一な噴霧領域103を含む、均一に分散されたノズル102を有する噴霧装置101の実施形態を概略的に示す。このような噴霧装置101の設計は技術的および経済的にシンプルだが、必ずしも必要ではない。ノズル102は噴霧領域103が実質的に重ならないように配置されているが、これも必須ではない。ノズル102として、噴霧装置101および別のノズル構成要素(好ましい)内の簡易な開口部が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】重合性材料の注入口を有する蒸留塔の構造を示す概略斜視図である。
【図2】分離フロアの設計の概略断面図である。
【図3】分離フロアの別の実施形態の概略図である。
【図4】分離フロアの別の実施形態の概略断面図である。
【図5】整流器の異なる実施形態を示す簡略化概略図である。
【図6】分離フロアのコーティングされたフロアプレートの実施形態の概略詳細図である。
【図7】アクリル酸製造装置の概略図である。
【図8】密度分布を測定するための実験装置の構造の概略図である。
【図9】分離フロアの波状フロアプレートの概略斜視図である。
【図10】流れ混合器を有する注入口の別の実施形態の概略斜視図である。
【図11】噴霧装置を有する容器の部分断面図である。
【図12】図11に示す噴霧装置の上面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 蒸留塔
2 容器
3 接続部
4 注入口
5 内部領域
6 外部領域
7 部分
8 下部フロア
9 部分領域
10 ジャケット
11 層
12 内部領域
13 注入開口部
14 排出開口部
15 フローインフルエンサー
16 バッフル
17 流路
18 部分
19 中心軸
20 流れ分配器
21 先端
22 コーティング
23 分離フロア
24 回収容器
25 流れ方向
26 液滴
27 ヒータ
28 ポンプ
29 フロアプレート
30 開口部
31 付属品
32 グループ
33 開口部
34 高さ
35 バー
36 長さ
37 ロッド
38 スペーサ
39 幅
40 セクター
41 カバープレート
42 距離
43 ホルダ
44 キャリア
45 面
46 大きさ
47 凹部
48 エクステンション
49 フット
50 大きさ
51 距離
52 幅
53 突出部
54 矢印
55 重力
56 液体層
57 蒸気気泡層
58 液滴層
59 気泡
60 流体
61 バッフル
62 中心軸
63 液滴端部
64 整流器
65 接続部材
66 ジャケット領域
67 格子構造
68 ハニカム構造
69 開口板
70 接触領域
71 層密度
72 表面粗さ
73 開孔率
74 距離
75 液面
76 第1の気相酸化反応器
77 気相酸化反応器
78 冷却装置
79 精製装置
80 塔頂
81 水平面
82 発生源
83 検出器
84 経路
85 部分
86 方向変化
87 中心点
88 ビーム幅
89 波のピーク
90 波の谷
91 波長
92 波高
93 中央位置
94 実際の形状
95 参照経路
96 距離
97 ナノ構造
98 流れ混合器
99 屈曲部
100 流れフィラメント
101 噴霧装置
102 ノズル
103 噴霧領域
104 供給装置
105 下面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性材料を蒸留するための蒸留塔(1)であって、下部フロア(8)を有する容器(2)と、前記蒸留塔(1)の内部領域(5)に至る前記重合性材料のための少なくとも1つの注入口(4)と、を含み、前記容器(2)内で前記材料を均一に分布させる手段が設けられていることを特徴とする蒸留塔(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの注入口(4)が注入開口部(13)および排出開口部(14)を有し、前記排出開口部(14)が前記注入開口部(13)よりも前記蒸留塔(1)の前記下部フロア(8)に近接して配置されている、請求項1に記載の蒸留塔(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの注入口(4)が前記下部フロア(8)と実質的に平行に配置された排出開口部(14)を有している、前記請求項のいずれか1項に記載の蒸留塔(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの注入口(4)が排出口開口部(14)を有し、前記少なくとも1つの注入口(4)の部分(18)を介して好ましくは少なくとも前記排出開口部(14)の近くに、少なくとも1つのフローインフルエンサー(15)が配置されている、前記請求項のいずれか1項に記載の蒸留塔(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのフローインフルエンサー(15)は少なくとも1つのバッフル(16)を含み、複数のチャネル(17)が前記注入口(4)の前記部分(18)に形成されている、請求項4に記載の蒸留塔(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの注入口(4)が排出開口部(14)を有し、少なくとも1つの流れ分配器(20)が、前記蒸留塔(1)の前記内部領域(5)に、特に前記排出開口部(14)の中心軸(19)と中心合わせして配置されている、前記請求項のいずれか1項に記載の蒸留塔(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの流れ分配器(20)が少なくとも部分的にテーパー状であり、前記流れ分配器(20)の先端(21)が前記排出開口部(14)の先端(21)と最も近くなるように前記排出開口部(14)の前記中心軸(19)上に配置されている、請求項6に記載の蒸留塔(1)。
【請求項8】
前記容器(2)が少なくとも1つのガイド表面(61)を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の蒸留塔(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの注入口(4)が前記内部領域(5)との断熱手段を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の蒸留塔(1)。
【請求項10】
前記断熱手段が前記蒸留塔(1)の前記内部領域(5)へと延びる前記注入口(4)の少なくとも一部分(9)に配置されている、請求項9に記載の蒸留塔(1)。
【請求項11】
前記注入口(4)内の前記断熱手段が少なくとも部分的に断熱材料により形成されている、請求項9または10に記載の蒸留塔(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの注入口(4)が2以上のジャケット(10)を有し、好ましくは少なくとも2つのジャケットの間に断熱層(11)が設けられている、請求項9〜11のいずれか1項に記載の蒸留塔(1)。
【請求項13】
前記断熱層(11)は真空であり、好ましくは前記2以上のジャケットの少なくとも1つの内部表面(12)が反映されている、請求項12に記載の蒸留塔(1)。
【請求項14】
少なくとも1つの部分(7)における前記少なくとも1つの注入口(4)が鋼に比べて流体に対する付着性が低いコーティング(22)を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の蒸留塔(1)。
【請求項15】
前記少なくとも1つの注入口(4)が前記下部フロア(8)および分離フロア(23)の間に配置されている、前記請求項のいずれか1項に記載の蒸留塔(1)。
【請求項16】
前記容器(2)が複数の分離フロア(23)を含み、少なくとも1つの噴霧装置(101)が設けられ、前記噴霧装置により少なくとも1つの分離フロア(23)の下面(105)に前記重合性材料を噴霧することができる、前記請求項のいずれか1項に記載の蒸留塔(1)。
【請求項17】
重合性材料を精製するための方法であって、前記重合性材料を、材料流体として注入口(4)を介して請求項1〜16のいずれか1項に記載の蒸留塔(1)内に導入し、内部領域(5)において材料気相に変化させる方法。
【請求項18】
前記材料気相が、前記注入口(4)の上方に配置された第一の分離フロア(23)に向かって等方性密度を有して流れ、前記注入口(4)と前記第一の分離フロア(23)との間の水平面内での前記等方性密度の平均値からの最大偏差が15%以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記重合性材料が(メタ)アクリル酸である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記内部領域を減圧する、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記材料流体を過熱する、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
重合性材料を製造するための方法であって、前記重合性材料を反応器内で少なくとも一つの試薬から合成し、請求項17〜21のいずれか1項に記載の精製方法を前記重合性材料に対して行うことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項1〜6または9〜14のいずれか1項に記載の蒸留塔の注入口(4)の重合性材料の蒸留のための使用。
【請求項24】
請求項22に記載の方法によって得られる重合性材料。
【請求項25】
請求項24に記載の重合性材料の、成形品、繊維、シート、吸収性ポリマー、革・織物処理のためのポリマー、水処理のためのポリマーまたは石けん製造のためのポリマーにおける出発材料としての使用。
【請求項26】
請求項24に記載の重合性材料から少なくとも部分的になる成形品、繊維、シート、吸収性ポリマー、革・織物処理のためのポリマー、水処理のためのポリマーまたは石けん製造のためのポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−530274(P2007−530274A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505483(P2007−505483)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003272
【国際公開番号】WO2005/092463
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(504341139)ストックハウゼン ゲーエムベーハー (35)
【Fターム(参考)】