説明

蒸留水製造装置、及びその不凝縮ガス抽気方法

【課題】 不凝縮ガスを効果的に抽気することができ、蒸留性能及び運転効率を向上させることができる蒸留水製造装置、及びその不凝縮ガス抽気方法を提供すること。
【解決手段】
蒸留装置20と凝縮器40とを備え、蒸留装置20において最上段蒸発器21に原料水124を導入し加熱して、発生した水蒸気102と濃縮した濃縮原料水103を第2蒸発器22に導き、熱交換器22aを介して水蒸気102と濃縮原料水103の間で熱交換を行い、蒸留水104を作成し、水蒸気105を発生させると共に該濃縮原料水103を濃縮し、凝縮器40に最下段蒸発器23で発生した水蒸気107を導入し凝縮して蒸留水111を作成するように構成した蒸留水製造装置において、最上段蒸発器21で発生した水蒸気を凝縮させる第2蒸発器22凝縮面下流から抽気するエジェクタ51を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重効用的に配列された複数の蒸発器を具備する蒸留装置と凝縮器とを具備する蒸留水製造装置、及びその不凝縮ガス抽気方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は従来の蒸留水製造装置(真空蒸発式蒸留水製造装置)の構成例を示す図である。同図に示すように、この蒸留水製造装置は、複数の蒸発器を多段配列することで多重効用的に接続して構成した蒸発装置20と、凝縮器40とを備えて構成されている。
【0003】
脱気器10内に導入された原料水100は、熱交換器10aにより熱源媒体101との間で熱交換が行なわれ、加熱脱気される。脱気された原料水100は、蒸発装置20の最上段に設置された第1蒸発器21に導かれ、該第1蒸発器21の熱交換器21aにより熱源媒体101との間で熱交換が行なわれ、水蒸気102が発生すると共に、原料水100は濃縮原料水103となる。濃縮原料水103は第2蒸発器22内に導かれると共に、水蒸気102は該第2蒸発器22内の熱交換器22aに導かれ、濃縮原料水103と水蒸気102の間で熱交換が行なわれ、水蒸気102は凝縮されて蒸留水104になると共に、濃縮原料水103から水蒸気105が発生して該濃縮原料水103は更に濃縮された濃縮原料水106となる。
【0004】
上記のような水蒸気の発生、凝縮、原料水の濃縮を繰り返し、濃縮原料水106は最下段蒸発器23内に導かれると共に、水蒸気105は該最下段蒸発器23内の熱交換器23aに導かれ、該濃縮原料水106と水蒸気105との間で熱交換が行なわれ、水蒸気107が発生すると共に、濃縮原料水106が更に濃縮され濃縮水109となる。水蒸気107は凝縮器40の熱交換器40aに導入され、該凝縮器40内に導入された冷却媒体110との間で熱交換が行なわれ凝縮して蒸留水111となる。
【0005】
ところで、この蒸留水製造装置においては、原料水100に、溶存空気等の不凝縮ガスが溶け込んでいる。不凝縮ガスが溶け込んでいると、原料水100の伝熱性能の低下や沸点の上昇などが起こり、蒸留水製造装置の蒸留性能が著しく低下する原因となるため、不凝縮ガスを抽気する必要がある。
【0006】
蒸留水製造装置内の不凝縮ガスは装置内に均一に分布するのではなく、蒸留水製造装置内の水蒸気流に乗って、水蒸気が凝縮する凝縮面やその近傍の水蒸気流の滞留部に高濃度で滞留する傾向を有する。したがって、凝縮面近傍の水蒸気流の滞留部から抽気を行うことが効果的である。そこで、従来は、不凝縮ガスが高濃度で滞留する凝縮器40の凝縮面(凝縮伝熱面)の近傍から抽気を行っていた。即ち、図1に示すように、凝縮器40に連通管41及び気液分離タンク42を介して真空ポンプ(真空装置)43が接続されており、該真空ポンプ43で凝縮器40内の水蒸気113を抽気して該水蒸気内の不凝縮ガス114を回収している(特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
一方、真空ポンプ43は高温水蒸気の抽気には不適であるため、蒸発装置20の手前に脱気器10を設置して、原料水100を蒸発装置20に導入する前に脱気器10で加熱することによって溶存する不凝縮ガスを脱気し、この脱気した不凝縮ガスを含む水蒸気112を凝縮器40へ導いている。このように、脱気器10と凝縮器40を連通して不凝縮ガスの蒸発装置20への流入量を減らすようにしていたが、この手段では、熱交換を行う低温の凝縮器40に伝熱性能を悪化させる原因となる不凝縮ガスを導入せざるを得ないという問題があった。
【0008】
また、脱気器10内では、不凝縮ガス分圧が水蒸気分圧に比べて低く、脱気器10内のガスには不凝縮ガス以外に大量の水蒸気が含まれている。この大量の水蒸気を不凝縮ガスと共に凝縮器40に導いているため、真空ポンプ43で凝縮器40から抽気する際には、不凝縮ガスと共にこの多量の水蒸気を抽気することになる。ところが、上記した真空ポンプ43として用いるいわゆる油回転式の真空ポンプでは、水分を多量に含む気体を抽気すると、その油槽(潤滑油槽)中に水分が混入してしまい、潤滑不良が発生する原因となってしまう。
【0009】
そこで、特許文献3に示すように、真空ポンプの油槽からの水分の分離・除去機構として、該真空ポンプの停止中に油槽内の潤滑油に混入した水分を、これら潤滑油と水分との比重差によって分離させ、油槽の下部に溜まった水分を外部に排出する機構を備えた真空ポンプが用いられている。
【0010】
しかし、上記特許文献3に記載の真空ポンプは、長時間の運転により徐々にその油槽に水分が混入し堆積するため、油槽内の水分の混入量が潤滑不良を引き起こす混入量となる前に、真空ポンプの運転を停止して、上記した水分分離機構によって水分を分離して除去する必要がある。この水分の分離・除去処理を行っている間は、真空ポンプの運転が行えず、蒸留水製造装置の抽気ができなかった。そのため、装置の連続運転時間を短くしたり、複数の真空ポンプを設置してこれらを交代で運転するなどする必要があり、蒸留水製造装置の運転効率が悪化したり、コストアップや蒸留性能の低下につながる等の問題があった。
【特許文献1】特開2002−254066号公報
【特許文献2】特開2001−570560号公報
【特許文献3】特開2002−242868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、不凝縮ガスを効果的に抽気することができ、蒸留性能及び運転効率を向上させることができる蒸留水製造装置、及びその不凝縮ガス抽気方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の請求項1に記載の発明は、多段配列された蒸発器を具備する蒸留装置と凝縮器とを備え、蒸留装置において最上段蒸発器に原料水を導入し加熱して、発生した水蒸気と濃縮した濃縮原料水を次段の蒸発器に導き、該次段の蒸発器の熱交換器を介して該水蒸気と濃縮原料水の間で熱交換を行い、前記水蒸気を凝縮して蒸留水を作成し、前記濃縮原料水を加熱して水蒸気を発生させると共に該濃縮原料水を濃縮させ、該水蒸気と該濃縮原料水を次段の蒸発器に導入し、該蒸発器で蒸留水の作成、水蒸気の発生、濃縮原料水の濃縮を行い、この動作を最下段蒸発器まで繰り返し、凝縮器に最下段蒸発器で発生した水蒸気を導入し凝縮して蒸留水を作成するように構成した蒸留水製造装置において、最上段蒸発器で発生した水蒸気を凝縮させる次段の蒸発器内の凝縮面下流から抽気する真空装置を設けたことを特徴とする。
【0013】
本願の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の蒸留水製造装置において、真空装置は、凝縮器の凝縮面下流からも抽気することを特徴とする。
【0014】
本願請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の蒸留水製造装置において、真空装置は、エジェクタであることを特徴とする。
【0015】
本願請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の蒸留水製造装置において、エジェクタの駆動流体として、蒸留装置に導入する前の原料水、又は該蒸留装置から排出した濃縮原料水又は蒸留水を利用することを特徴とする。
【0016】
本願請求項5に記載の発明は、多段配列された蒸発器を具備する蒸留装置と凝縮器とを備え、蒸留装置において最上段蒸発器に原料水を導入し加熱して、発生した水蒸気と濃縮した濃縮原料水を次段の蒸発器に導き、該次段の蒸発器の熱交換器を介して該水蒸気と濃縮原料水の間で熱交換を行い、前記水蒸気を凝縮して蒸留水を作成し、前記濃縮原料水を加熱して水蒸気を発生させると共に該濃縮原料水を濃縮させ、該水蒸気と該濃縮原料水を次段の蒸発器に導入し、該蒸発器で蒸留水の作成、水蒸気の発生、濃縮原料水の濃縮を行い、この動作を最下段蒸発器まで繰り返し、凝縮器に最下段蒸発器で発生した水蒸気を導入し凝縮し蒸留水を作成するように構成した蒸留水製造装置の不凝縮ガス抽気方法において、最上段蒸発器で発生した水蒸気を凝縮させる次段の蒸発器内の凝縮面下流から抽気することを特徴とする。
【0017】
本願請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の蒸留水製造装置の不凝縮ガス抽気方法において、凝縮器の凝縮面下流からも抽気することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本願請求項1に記載の発明によれば、多段配列された蒸発器を具備する蒸留装置と凝縮器とを備え、蒸留装置において最上段蒸発器に原料水を導入し加熱して、発生した水蒸気と濃縮した濃縮原料水を次段の蒸発器に導き、該次段の蒸発器の熱交換器を介して該水蒸気と濃縮原料水の間で熱交換を行い、前記水蒸気を凝縮して蒸留水を作成し、前記濃縮原料水を加熱して水蒸気を発生させると共に該濃縮原料水を濃縮させ、該水蒸気と該濃縮原料水を次段の蒸発器に導入し、該蒸発器で蒸留水の作成、水蒸気の発生、濃縮原料水の濃縮を行い、この動作を最下段蒸発器まで繰り返し、凝縮器に最下段蒸発器で発生した水蒸気を導入し凝縮して蒸留水を作成するように構成した蒸留水製造装置において、最上段蒸発器で発生した水蒸気を凝縮させる次段の蒸発器内の凝縮面下流から抽気する真空装置を設けたので、蒸留水製造装置内の不凝縮ガスが多く含まれる水蒸気を抽気することで、蒸留水製造装置から効率的に不凝縮ガスを抽気して取り除くことができる。また、抽気を行う蒸発器より下段の蒸発器や凝縮器へ流入する不凝縮ガスの量を減らすことができ、伝熱性能を悪化させる不凝縮ガスの蒸留水製造装置への影響を低減させることができる。これらにより、蒸留水製造装置の蒸留性能が向上する。
【0019】
本願請求項2に記載の発明によれば、真空装置は、凝縮器の凝縮面下流からも抽気することで、蒸留水製造装置から効率的に不凝縮ガスを抽気して取り除くことができる。また、凝縮器内の不凝縮ガスを抽気して取り除くことができるので、凝縮器における伝熱性能の悪化を防止することができる。これらにより、蒸留水製造装置の蒸留性能が向上する。
【0020】
本願請求項3に記載の発明によれば、真空装置は、エジェクタであるので、高温の蒸発器からの抽気を行うことが可能となる。
【0021】
本願請求項4に記載の発明によれば、エジェクタの駆動流体として、蒸留装置に導入する前の原料水、又は該蒸留装置から排出した濃縮原料水又は蒸留水を利用するので、外部からエジェクタを駆動する駆動媒体を供給する必要がなくなり、効率良くエジェクタを駆動することができる。
【0022】
本願請求項5に記載の発明によれば、多段配列された蒸発器を具備する蒸留装置と凝縮器とを備え、前記蒸留装置において最上段蒸発器に原料水を導入し加熱して、発生した水蒸気と濃縮した濃縮原料水を次段の蒸発器に導き、該次段の蒸発器の熱交換器を介して該水蒸気と濃縮原料水の間で熱交換を行い、前記水蒸気を凝縮して蒸留水を作成し、前記濃縮原料水を加熱して水蒸気を発生させると共に該濃縮原料水を濃縮させ、該水蒸気と該濃縮原料水を次段の蒸発器に導入し、該蒸発器で蒸留水の作成、水蒸気の発生、濃縮原料水の濃縮を行い、この動作を最下段蒸発器まで繰り返し、前記凝縮器に前記最下段蒸発器で発生した水蒸気を導入し凝縮し蒸留水を作成するように構成した蒸留水製造装置の不凝縮ガス抽気方法において、最上段蒸発器で発生した水蒸気を凝縮させる次段の蒸発器内の凝縮面下流から抽気するので、蒸留水製造装置内の不凝縮ガスが多く含まれる水蒸気を抽気することで、蒸留水製造装置から効率的に不凝縮ガスを抽気して取り除くことができる。また、抽気を行う蒸発器より下段の蒸発器や凝縮器へ流入する不凝縮ガスの量を減らすことができ、伝熱性能を悪化させる不凝縮ガスの蒸留水製造装置への影響を低減させることができる。これらにより、蒸留水製造装置の蒸留性能が向上する。
【0023】
本願の請求項6に記載の発明によれば、凝縮器の凝縮面下流からも抽気することで、蒸留水製造装置から効率的に不凝縮ガスを抽気して取り除くことができる。また、凝縮器内の不凝縮ガスを抽気して取り除くことができるので、凝縮器における伝熱性能の悪化を防止することができる。これらにより、蒸留水製造装置の蒸留性能が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図2は、本発明にかかる蒸留水製造装置の構成例を示す概略図である。なお、同図において図1に示す蒸留水製造装置と共通する部分には同一の符号を付す。
【0026】
多段配列された蒸発装置20は、最上段の第1蒸発器21、次段の第2蒸発器22、及び必要に応じてさらに多段に蒸発器が設けられ、最下段蒸発器23まで複数段に蒸発器が設けられて構成されている点は図1の蒸発装置20と同一である。第1蒸発器21の熱交換器21aに導入する熱源媒体101は、ボイラ、ガスタービン、ガスエンジン、電気ヒーター、燃料電池、太陽熱、地熱等の熱源で作られた温水や蒸気などの熱源媒体を用いることができる。なお、熱源媒体101は液体に限られず、ボイラ、ガスタービン、ガスエンジン等燃焼機器からの排気ガス、その他の気体等の媒体でもよい。一例として、85℃程度に加熱された温水を用いると好適である。
【0027】
第1蒸発器21に導入された原料水118は、第1蒸発器21の熱交換器21aで熱源媒体101との間で熱交換が行われて、水蒸気102が発生すると共に、濃縮されて濃縮原料水103となる。第1蒸発器21と次段の第2蒸発器22とはその途中に図示しない減圧装置を備えた連通管24で接続され、第1蒸発器21内で濃縮された濃縮原料水103は連通管24を通って第2蒸発器22に導入される。一方、第1蒸発器21と第2蒸発器22の間には別の連通管25が接続されており、第1蒸発器21から出た水蒸気102は、該連通管25を通って第2蒸発器22の熱交換器22aに導かれる。第2蒸発器22では、熱交換器22aにより第1蒸発器21で発生した水蒸気102と濃縮原料水103との間で熱交換が行われ、水蒸気102が凝縮されて蒸留水104になると共に、濃縮原料水103が加熱されて水蒸気105を発生し、該濃縮原料水103は更に濃縮された濃縮原料水106となる。このようにして、原料水は最下段蒸発器23まで水蒸気を発生させることで徐々に濃縮されながら流れてゆく。
【0028】
最下段蒸発器23内の濃縮水109は、図示しないポンプ等の昇圧手段を介して外部に排出される。あるいは、最下段蒸発器23内の濃縮水109は、一度、図示しない濃縮水タンクに蓄えられてから外部に排出されるように構成してもよい。また、ポンプ等の昇圧手段を用いない場合は、最下段蒸発器23あるいは濃縮水タンクあるいは蒸留装置の全体を大気圧程度まで加圧することで、濃縮水109を外部に排出するように構成することもできる。
【0029】
あるいは、第2蒸発器22、及びその下段に設置した蒸発器で水蒸気と濃縮原料水との間で熱交換が行なわれて凝縮した蒸留水は、各蒸発器に個別に設けたポンプ等の昇圧装置を介して外部に排出するように構成することもできる。または、各蒸発器に個別に設けた貯留容器に貯留してから外部に排出するようにしてもよい。その際、蒸発器の熱交換器、貯留装置、あるいは蒸留水製造装置全体を大気圧程度まで加圧することで蒸留水を外部に排出することもできる。
【0030】
あるいは、各蒸発器で凝縮した蒸留水を、減圧装置を通過させることで減圧した後、一つまたは複数の蒸発器から排出された蒸留水を一つまたは複数の貯留装置に集めてから、ポンプ等の昇圧装置を介して外部に排出してもよい。この場合も、それぞれの熱交換器内、貯留装置、あるいは蒸留水製造装置全体を大気圧程度まで加圧することで蒸留水を外部に排出してもよい。
【0031】
最下段蒸発器23は、凝縮器40と連通管26で連通されており、最下段蒸発器23で発生した水蒸気107はこの連通管26を通って凝縮器40に導入される。凝縮器40に導入された水蒸気107は、熱交換器40aによって図示しない外部冷熱源から導かれた冷却媒体110との間で熱交換が行われて冷却されて凝縮し、蒸留水111となる。この点も図1に示す蒸留水製造装置と同一である。この凝縮器40に導入される冷却媒体110としては、冷却塔、その他の冷熱源で冷却された冷却水、冷却空気、その他の冷却媒体や、河川から導かれた水や、井戸水、海洋水などを用いることができる。なお、冷却媒体は液体に限られず、外気(自然通風、強制通風)等の気体でもよい。一例として冷却塔で冷却された32℃程度の冷却水を用いると好適である。
【0032】
ここで、上記構成の蒸留水製造装置を用いて原料水の蒸留を行う場合において、不凝縮ガスの抽気を行う必要性について、具体例を挙げて説明する。蒸留水製造装置に供給される原料水中には、空気その他の気体が溶存している。一般に、25℃の水1L中には、0.17L(0℃、1気圧換算)の空気が溶存している。このような液体中に溶存している気体は、蒸留水製造装置内で気化して不凝縮ガスとなる。不凝縮ガスは、蒸留水製造装置内の圧力(全圧)を上昇させたり、原料水の沸点を上昇させたりするので、原料水を加熱する熱源媒体の温度を高くする必要が生じる。一例では、露点40℃(水蒸気分圧7.37kPa)の水蒸気中に不凝縮ガス分圧が0.8kPa混入すると、約2℃沸点が上昇する。また、原料水中に不凝縮ガスが溶存すると、凝縮伝熱面に不凝縮ガスが滞留し、伝熱を阻害する等、蒸留水製造装置の蒸留性能の悪化を招く原因となる。以上のような理由から、蒸留水製造装置内に入った不凝縮ガスは蒸留水製造装置外に排出(抽気)する必要がある。
【0033】
そこで、この蒸留水製造装置には抽気装置50が設置されている。該抽気装置50は、第2蒸発器22の水蒸気流路の下流端22bに、連通管52を介して真空手段であるエジェクタ51が接続されて構成されており、該エジェクタ51を用いて、第2蒸発器22内の凝縮面下流から抽気を行うものである。エジェクタ51で抽気された不凝縮ガスが含まれた水蒸気116は、タンク53に導かれ、該タンク53から水蒸気に含まれていた不凝縮ガス117が外部に排出される。一方、タンク53には原料水118が導入される原料水配管54が接続され、ここから蒸発装置20に導入される前の原料水118がタンク53に導入され貯留される。また、タンク53には、内部に貯留された原料水118をエジェクタ51に導く連通管55が設けられると共に、該連通管55には原料水118を送水するポンプ56が設置されている。このタンク53からエジェクタ51に導入される原料水118は、エジェクタ51の駆動流体として用いられる。さらに、タンク53と第1蒸発器21を連通する連通管57が設けられており、タンク53に貯留した原料水118は、この連通管57によって第1蒸発器21に導入される。
【0034】
抽気装置50では、上記のように水蒸気を抽気する真空装置としてエジェクタ51を用いている。エジェクタ51は、真空ポンプと比較して高温のガスや水蒸気を吸気するのに適しているため、抽気装置50は、高温部(例えば80℃程度の水蒸気が存在する部分)から水蒸気の抽気を行うことができる。したがって、第2蒸発器22等、高温の部分からの抽気が可能となる。
【0035】
抽気装置50は、上記のように、最上段の第1蒸発器21で発生した水蒸気が凝縮する第2蒸発器22で不凝縮ガスを含む水蒸気116を抽気するので、次段以降の蒸発器や凝縮器40などへ流入する不凝縮ガスの量を減らすことができ、蒸留水製造装置への不凝縮ガスの影響を低減させることができる。また、最上段の第1蒸発器21は圧力が高いので(一例として、水蒸気の温度を80℃とすると、47kPaとなる)、該第1蒸発器21からの水蒸気が導入される第2蒸発器22は、器内と器外の圧力差が小さい。そのため、エジェクタ51の排気速度も大きくなる。
【実施例2】
【0036】
図3は、本発明にかかる蒸留水製造装置(実施例2)の構成例を示す概略図である。なお、同図において図2に示す蒸留水製造装置と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。図3に示す蒸留水製造装置が図2に示す蒸留水製造装置と異なるのは、抽気装置50に代えて抽気装置60を設置した点である。
【0037】
抽気装置60は、第2蒸発器22の水蒸気流路の下流端22bに連通管63を接続し、該連通管63の下流側に低圧タンク64を設置している。また、低圧タンク64には連通管66を介して高圧エジェクタ65を接続し、該高圧エジェクタ65により、第2蒸発器22内の凝縮面の下流から抽気を行うように構成している(高圧段抽気経路)。この第2蒸発器22から抽気された不凝縮ガスが含まれた水蒸気120は、まず低圧タンク64に導かれる。
【0038】
一方、凝縮器40の水蒸気流路の下流端40bには、連通管62を介して低圧エジェクタ61が接続されており、該低圧エジェクタ61を用いて、凝縮器40内の凝縮面の下流から抽気が行われる(低圧段抽気経路)。この低圧エジェクタ61で抽気された不凝縮ガスが含まれた水蒸気121は、低圧タンク64に導かれる。
【0039】
上記した高圧段抽気経路及び低圧段抽気経路から抽気されて低圧タンク64に導かれた不凝縮ガスを含む水蒸気120及び121は、高圧エジェクタ65によって抽気される。この高圧エジェクタ65で抽気された不凝縮ガスを含む水蒸気122は、高圧タンク67に導かれ、該高圧タンク67から水蒸気に含まれていた不凝縮ガス123が外部に排出される。一方、高圧タンク67には原料水124が導入される原料水配管74が接続され、蒸留水製造装置に導入される前の原料水124が高圧タンク67に導入され貯留される。また、高圧タンク67には、高圧タンク67に貯留された原料水124を高圧エジェクタ65に導く連通管68が設けられると共に、該連通管68には原料水124を送水するポンプ69が設置されている。この高圧タンク67から高圧エジェクタ65に導入される原料水124は、高圧エジェクタ65の駆動流体として用いられる。さらに、高圧タンク67と第1蒸発器21を連通する連通管70が設けられており、高圧タンク67に貯留した原料水124は、この連通管70によって第1蒸発器21に導入される。
【0040】
一方、低圧タンク64には、貯留された蒸留水125を低圧エジェクタ61に導く連通管71が設けられると共に、該連通管71には蒸留水125を送水するポンプ72が設置されている。この低圧タンク64から低圧エジェクタ61に導入される蒸留水125は、低圧エジェクタ61の駆動流体として用いられる。あるいは図3に示すように、いずれかの蒸発器(図では最下段蒸発器23)と低圧エジェクタ61とを連通する連通管73を設け、蒸発器から濃縮原料水126を低圧エジェクタ61に導入し、これを駆動流体として用いることもできる。また、図示は省略するが、いずれかの蒸発器から排出された蒸留水を直接低圧エジェクタ61に導入し、これを駆動流体として用いることも可能である。このように、濃縮原料水を他の用途に利用する場合等は、エジェクタの駆動流体として蒸留水等を使用することができる。
【0041】
抽気装置60は、上記のように、第1蒸発器21で発生した水蒸気102が凝縮する第2蒸発器22から不凝縮ガスを含む水蒸気120を抽気するので、最上段の第1蒸発器21で発生した水蒸気102から不凝縮ガスを抽気する(高圧段抽気)こととなり、次段以降の蒸発器や凝縮器40などへ流入する不凝縮ガスの量を減らすことができる。これにより、蒸留水製造装置への不凝縮ガスの影響を低減させることができる。また、凝縮器40の凝縮面の下流から抽気する(低圧段抽気)ことによって、高圧段抽気で抽気しきれなかった不凝縮ガスを抽気することができる。また、凝縮器40内の不凝縮ガスを抽気して取り除くので、凝縮器40における伝熱性能の悪化を防止することができる。これらにより、蒸留水製造装置の蒸留性能が向上する。
【0042】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、蒸留水製造装置は上記した構成に限定される訳ではなく、例えば蒸発器を設ける段数等は蒸留水製造装置に求められる性能に応じて適宜変更することが可能である。また、抽気装置50、60の構成は上記に限られるのではなく、例えば、図3に示す抽気装置60で、高圧エジェクタ65を駆動する駆動流体として蒸発器からの濃縮原料水や、蒸留水等を用いるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来の蒸留水製造装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明にかかる蒸留水製造装置の構成例(実施例1)を示す図である。
【図3】本発明にかかる蒸留水製造装置の構成例(実施例2)を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
10 脱気器
10a 熱交換器
20 蒸発装置
21 第1蒸発器
21a 熱交換器
22b 下流端
22b 最下流端
22 第2蒸発器
22a 熱交換器
23 最下段蒸発器
23 蒸発器
23a 熱交換器
24 連通管
25 連通管
26 連通管
40 凝縮器
40a 熱交換器
40b 下流端
41 連通管
42 気液分離タンク
43 真空ポンプ
50 抽気装置
51 エジェクタ
52 連通管
53 タンク
54 原料水配管
55 連通管
56 ポンプ
57 連通管
60 抽気装置
61 低圧エジェクタ
62 連通管
63 連通管
64 低圧タンク
65 高圧エジェクタ
66 連通管
67 高圧タンク
68 連通管
69 ポンプ
70 連通管
71 連通管
72 ポンプ
73 連通管
74 原料水配管
100 原料水
101 熱源媒体
102 水蒸気
103 熱源媒体
103 濃縮原料水
104 蒸留水
105 水蒸気
106 濃縮原料水
107 水蒸気
109 濃縮水
110 冷却媒体
111 蒸留水
112 水蒸気
116 水蒸気
117 不凝縮ガス
118 原料水
120 水蒸気
121 水蒸気
122 水蒸気
123 不凝縮ガス
124 原料水
125 蒸留水
126 濃縮原料水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段配列された蒸発器を具備する蒸留装置と凝縮器とを備え、前記蒸留装置において最上段蒸発器に原料水を導入し加熱して、発生した水蒸気と濃縮した濃縮原料水を次段の蒸発器に導き、該次段の蒸発器の熱交換器を介して該水蒸気と濃縮原料水の間で熱交換を行い、前記水蒸気を凝縮して蒸留水を作成し、前記濃縮原料水を加熱して水蒸気を発生させると共に該濃縮原料水を濃縮させ、該水蒸気と該濃縮原料水を次段の蒸発器に導入し、該蒸発器で蒸留水の作成、水蒸気の発生、濃縮原料水の濃縮を行い、この動作を最下段蒸発器まで繰り返し、前記凝縮器に前記最下段蒸発器で発生した水蒸気を導入し凝縮して蒸留水を作成するように構成した蒸留水製造装置において、
前記最上段蒸発器で発生した水蒸気を凝縮させる前記次段の蒸発器内の凝縮面下流から抽気する真空装置を設けたことを特徴とする蒸留水製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸留水製造装置において、
前記真空装置は、前記凝縮器の凝縮面下流からも抽気することを特徴とする蒸留水製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蒸留水製造装置において、
前記真空装置は、エジェクタであることを特徴とする蒸留水製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の蒸留水製造装置において、
前記エジェクタの駆動流体として、前記蒸留装置に導入する前の原料水、又は該蒸留装置から排出した濃縮原料水又は蒸留水を利用することを特徴とする蒸留水製造装置。
【請求項5】
多段配列された蒸発器を具備する蒸留装置と凝縮器とを備え、前記蒸留装置において最上段蒸発器に原料水を導入し加熱して、発生した水蒸気と濃縮した濃縮原料水を次段の蒸発器に導き、該次段の蒸発器の熱交換器を介して該水蒸気と濃縮原料水の間で熱交換を行い、前記水蒸気を凝縮して蒸留水を作成し、前記濃縮原料水を加熱して水蒸気を発生させると共に該濃縮原料水を濃縮させ、該水蒸気と該濃縮原料水を次段の蒸発器に導入し、該蒸発器で蒸留水の作成、水蒸気の発生、濃縮原料水の濃縮を行い、この動作を最下段蒸発器まで繰り返し、前記凝縮器に前記最下段蒸発器で発生した水蒸気を導入し凝縮して蒸留水を作成するように構成した蒸留水製造装置の不凝縮ガス抽気方法において、
前記最上段蒸発器で発生した水蒸気を凝縮させる前記次段の蒸発器内の凝縮面下流から抽気することを特徴とする蒸留水製造装置の不凝縮ガス抽気方法。
【請求項6】
請求項5に記載の蒸留水製造装置の不凝縮ガス抽気方法において、
前記凝縮器の凝縮面下流からも抽気することを特徴とする蒸留水製造装置の不凝縮ガス抽気方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−130380(P2006−130380A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319600(P2004−319600)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】