説明

蒸着用マスク、蒸着用基板ホルダ、および蒸着状態判定方法

【課題】基板を移動させながら成膜する際でも、正確、かつ、効率よく膜厚を測定することのできる蒸着用マスク、蒸着用基板ホルダ、および蒸着状態判定方法を提供すること。
【解決手段】成膜時に基板とともに移動する蒸着用マスク19にモニター用の水晶振動子16を保持させ、水晶振動子16によって成膜状態を監視する。このため、蒸着室11を改造しなくても、蒸着速度や膜厚を正確かつ効率よく求めることができる。また、蒸着用マスク19において、蒸着源12に対向する側とは反対の面側に水晶振動子16に対する端子16cが露出しているので、成膜後、蒸着用マスク19において、蒸着源12に対向する側とは反対の面側にプローブ21を当てるだけで水晶振動子16の共振周波数を計測できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着あるいはスパッタ蒸着などといった蒸着法に用いられる蒸着用マスク、蒸着用基板ホルダ、および蒸着状態判定方法に関するものである。さらに詳しくは、基板を移動させながら成膜する際の蒸着状態判定技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空蒸着あるいはスパッタ蒸着などといった蒸着装置においては、成膜室内において、蒸着源(蒸発源やターゲット)と基板とによって挟まれた空間の側方にモニター用の水晶振動子を配置しておき、成膜後、水晶振動子の共振周波数を測定することにより、蒸着速度や膜厚を求める方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005‐206896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、基板を回転させながら蒸着を行う回転式蒸着装置や基板を面内方向に移動させながら蒸着を行うインライン式蒸着装置に特許文献1に開示の方法を採用すると、基板は移動するが、モニター用の水晶振動子は移動しないため、基板と水晶振動子とでは、成膜条件が相違し、蒸着速度や膜厚を正確に求めることができなという問題点がある。
【0004】
このような問題の解決案としては、基板上に小片のガラス基板を貼り付けた状態で成膜を行い、成膜後、この小片のガラス基板を基板より取り外し、ガラス基板に形成された薄膜の膜厚をエリプソメータや段差計などを用いて測定するという方法が考えられる。しかしなら、この方法では、測定精度を確保するために、薄膜の膜厚をある程度、厚くする必要があるため、例えば、蒸着レートの低いドーパント材料を含むように成膜する際には、成膜に長い時間を要し、かつ、膜厚測定にも長い時間がかかってしまうという問題点がある。
【0005】
また、別の解決案としては、モニター用の水晶振動子に対して駆動機構を設け、水晶振動子を基板とともに移動させる方法が考えられる。しかしながら、この方法では、蒸着室内に水晶振動子に対する駆動機構を設けた分、蒸着室内の構成が複雑化するとともに、駆動機構からの発塵により、成膜した薄膜の膜質が低下するおそれがあり、好ましくない。
【0006】
以上の問題に鑑みて、本発明の課題は、基板を移動させながら成膜する際でも、正確、かつ、効率よく膜厚を測定することのできる蒸着用マスク、蒸着用基板ホルダ、および蒸着状態判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、蒸着法あるいはスパッタ法により基板に成膜するパターンに対応する開口部を備え、成膜時に当該基板に対して蒸着源が位置する側に配置される蒸着用マスクであって、前記蒸着源に対向する面側に、成膜モニター用の水晶振動子を保持していることを特徴とする。
【0008】
本発明では、成膜時に基板とともに移動する蒸着用マスクにモニター用の水晶振動子を保持させたので、水晶振動子には基板と同一の条件で成膜される。それ故、基板を回転させながら蒸着を行う回転式蒸着装置や基板を面内方向に移動させながら蒸着を行うインライン式蒸着装置において、蒸着室を改造しなくても、蒸着速度や膜厚を正確かつ効率よくに求めることができる。
【0009】
本発明に係る蒸着用マスクにおいて、前記蒸着源に対向する側とは反対の面側に前記水晶振動子に対する端子を備えていることが好ましい。このように構成すると、成膜後、蒸着用マスクにおいて、蒸着源に対向する側とは反対の面側にプローブを当てるだけで水晶振動子の共振周波数を計測できる。
【0010】
本発明に係る蒸着用マスクにおいて、前記蒸着源に対向する面側と、当該蒸着源に対向する側とは反対の面側とを貫通させる貫通穴内に前記水晶振動子を着脱可能に保持していることが好ましい。このように構成すると、水晶振動子を容易に交換できるとともに、蒸着用マスクにおいて、蒸着源に対向する側とは反対の面側に水晶振動子に対する端子を設けることができる。
【0011】
本発明の別の形態では、基板に蒸着法あるいはスパッタ法により成膜を行う際、蒸着源に対して前記基板を移動させる蒸着用基板ホルダであって、前記蒸着源に対向する面側に、モニター用の水晶振動子を保持していることを特徴とする。
【0012】
本発明では、成膜時に基板とともに移動する蒸着用基板ホルダにモニター用の水晶振動子を保持させたので、水晶振動子には基板と同一の条件で成膜される。それ故、基板を回転させながら蒸着を行う回転式蒸着装置や基板を面内方向に移動させながら蒸着を行うインライン式蒸着装置において、蒸着室を改造しなくても、蒸着速度や膜厚を正確かつ効率よくに求めることができる。
【0013】
本発明に係る蒸着用基板ホルダにおいて、前記蒸着源に対向する側とは反対の面側に前記水晶振動子に対する端子を備えていることが好ましい。このように構成すると、成膜後、蒸着用基板ホルダにおいて、蒸着源に対向する側とは反対の面側にプローブを当てるだけで水晶振動子の共振周波数を計測できる。
【0014】
本発明に係る蒸着用基板ホルダにおいて、前記蒸着源に対向する面側と、当該蒸着源に対向する側とは反対の面側とを貫通させる貫通穴内に前記水晶振動子を着脱可能に保持していることが好ましい。このように構成すると、水晶振動子を容易に交換できるとともに、蒸着用基板ホルダにおいて、蒸着源に対向する側とは反対の面側に水晶振動子に対する端子を設けることができる。
【0015】
本発明では、基板を蒸着源に対して移動させながら蒸着法により当該基板に成膜を行うにあたって、前記基板を保持して移動させる蒸着用基板ホルダ、あるいは当該蒸着用基板ホルダに保持される移動部材において前記蒸着源が位置する側に成膜モニター用の水晶振動子を保持させた状態で成膜を行い、当該水晶振動子の共振特性を測定して、成膜された薄膜の厚さを測定することを特徴とする。
【0016】
本発明において、前記蒸着用基板ホルダあるいは前記移動部材において前記蒸着源が位置する側に前記水晶振動子を複数、保持させた状態で成膜を行い、当該複数の水晶振動子の共振特性を測定し、膜厚分布を測定してもよい。
【0017】
本発明において、前記移動部材は、例えば、前記基板に成膜するパターンに対応する開口部を備えた蒸着用マスクである。また、前記移動部材は、例えば、ダミーの基板であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本発明を適用した膜厚測定方法、および蒸着装置について説明する。なお、各図においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせてある。また、以下の実施の形態では、本発明の蒸着装置が用いられる対象として有機EL装置の一例であるラインヘッドを例示する。
【0019】
[第1の実施の形態]
(有機EL装置の構成例)
図1(a)、(b)は各々、本発明の蒸着装置を用いて作製される有機EL装置の一例であるラインヘッドの要部断面図、および平面図である。図2(a)、(b)、(c)は各々、図1に示す素子基板を製造する際に用いた大型基板の平面図、この大型基板の要部を拡大して示す平面図、および素子基板の平面図である。
【0020】
図1(a)、(b)に示す有機EL装置1は、電子写真方式を利用したプリンタに使用されるラインヘッドであり、複数の有機EL素子3を配列してなる発光素子列(発光部ライン)3Aを1列または複数列、例えば、3列備えている。このようなラインヘッドでは、発光素子列3Aに含まれる有機EL素子3のうち、所定の有機EL素子3を点灯させて感光ドラム上に照射することにより、感光ドラム上に電荷による像(潜像)を形成する。ここで、有機EL装置1は細長い矩形形状を有しており、通常は、図2(a)、(b)に示すように、1枚の大型基板2A上に有機EL素子3などを形成した後、図2(c)に示すような単品サイズの複数枚の素子基板2に切り出され、ボトムエミッション方式の場合には、素子基板2に封止基板2Bが貼られる。
【0021】
再び図1(a)において、有機EL装置1が、発光層7で発光した光を画素電極4側から出射するボトムエミッション方式の場合には、素子基板2側から発光光を取り出す。このため、素子基板2としては透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特にガラス基板が好適に用いられる。また、素子基板2上には、画素電極4に電気的に接続された駆動用トランジスタ5a(薄膜トランジスタ)などを含む回路部5が、発光素子列3Aに沿って形成されており、その上層側に有機EL素子3が形成されている。有機EL素子3は、陽極として機能する画素電極4と、この画素電極4からの正孔を注入/輸送する正孔輸送層6と、有機EL物質からなる発光層7(有機機能層)と、電子を注入/輸送する電子注入層8と、陰極9とがこの順に積層された構造になっている。素子基板2の回路部5には、図2(a)、(b)に示すように、外部接続端子5bが接続されており、各有機EL素子3を外部より制御可能となっている。
【0022】
(有機EL装置1の製造方法)
図1および図2を参照して説明した有機EL装置1を製造するには、素子基板2に対して成膜工程、レジストマスクを用いてのパターニング工程などといった半導体プロセスを利用して各層が形成されるが、正孔輸送層6、発光層7、電子注入層8などの有機機能層は、水分や酸素により劣化しやすい。このため、発光層7などの有機機能層を形成する際、さらには、陰極9を形成する際、レジストマスクを用いてのパターニング工程を行うと、レジストマスクをエッチング液や酸素プラズマなどで除去する際に有機機能層が水分や酸素により劣化してしまう。
【0023】
そこで、本形態では、発光層7などの有機機能層を形成する際、さらには陰極9を形成する際には、マスク蒸着法を利用して、素子基板2に所定形状の薄膜を形成し、レジストマスクを用いてのパターニング工程を行わない。このマスク蒸着法では、後述する蒸着室内で、大型基板2A(素子基板2/被処理基板)の所定位置に蒸着用マスクを重ねた状態で蒸着を行う。発光層7を形成する場合には、低分子有機EL材料を加熱、蒸発させ、蒸着用マスクの開口部を介して大型基板2Aの下面に発光層7をストライプ状に形成する。正孔輸送層6、電子注入層8、陰極9などの形成も略同様に行う。また、ホスト材料に蛍光色素をドープした発光層7を形成する際にも本発明を適用することができる。
【0024】
(蒸着装置の構造)
図3は、本発明を適用した蒸着装置の構成を示す概略構成図である。
【0025】
図3において、蒸着装置10は、蒸着室11内の上方位置に、大型基板2A(素子基板2)を保持する蒸着用基板ホルダ18が配置されており、この蒸着用基板ホルダ18には、マスクホルダを介して蒸着用マスク19も保持されている。蒸着室11内の下方位置には、大型基板2Aに向けて蒸着分子や蒸着原子を供給する蒸着源12が構成されている。
【0026】
ここで、蒸着装置10が回転式であれば、蒸着用基板ホルダ18が回転し、それに伴って、大型基板2Aおよび蒸着用マスク19も回転する。一方、蒸着装置10がインライン式であれば、大型基板2Aおよび蒸着用マスク19を保持した蒸着用基板ホルダ18が順次、蒸着室11を通過していく。いずれの蒸着装置10においても、蒸着源12は固定であるが、大型基板2Aは移動しながら成膜されることになる。
【0027】
(蒸着用マスクの構造)
図4(a)、(b)は各々、本発明を適用した蒸着用マスクの斜視図、およびその拡大断面図である。本形態において、蒸着用マスク19は、図4(a)、(b)に示すように、素子基板2に対する成膜パターンに対応する複数の開口部19aが、並行かつ一定間隔に形成されている。本形態において、開口部19aの幅寸法は例えば約1〜3mm、長さ寸法は200〜300mm、ピッチPは例えば約12mmとなっている。
【0028】
ここで、蒸着用マスク19は、例えば、開口部19aが形成されたマスク部材と、このマスク部材を支持する支持基板とから構成されており、マスク部材は、厚さが約0.25〜0.5mmの金属製(例えばステンレス、インバー、42アロイ、ニッケル合金等)の薄板などからなる。なお、蒸着用マスク19を構成するにあたっては、金属材料の他、ガラス、セラミックス、シリコンなどを用いてもよい。また、蒸着用マスク19を構成するにあたっては、SUS430などの磁性の材質を用い、蒸着時に磁石により吸着されて固定されるようにしてもよい。
【0029】
このように構成した蒸着用マスク19において、本形態では、蒸着用マスク19の周辺部には、基板側に向かって開口が拡大する貫通穴190が形成されている。例えば、貫通穴190は、蒸着源側から基板側に向かって、環状の第1の段部190aおよび第2の段部190bが、この順で形成された構造になっている。また、蒸着用マスク19において、貫通穴190のうち、第1の段部190aを利用して水晶振動子16が搭載されており、水晶振動子16は、一方の面16aの縁部が第1の段部190aと当接し、他方の面16bの縁部が、留め具25によって保持されている。このように配置することにより、水晶振動子16は、蒸着用マスク19において蒸着源側の面で露出した状態で保持され、かつ、蒸着用マスク19において蒸着源側とは反対側の面では、水晶振動子16の端子16cが露出した状態にある。
【0030】
(成膜動作および膜厚測定動作)
図3および図4を参照して、本発明を適用した蒸着装置での成膜動作を説明する。本形態の蒸着装置10を用いて成膜を行う場合には、まず、成膜を行う前に、図4(b)に示すように、蒸着用マスク19に搭載した水晶振動子16の端子16cにプローブ21の端子21aを接触させて、水晶振動子16の共振周波数を測定しておく。
【0031】
次に、図3に示すように、蒸着用マスク19および大型基板2Aを蒸着用基板ホルダ18に保持させた状態で、蒸着室11で蒸着を行う。その際、蒸着用基板ホルダ18が回転し、あるいは、蒸着室11を通過していき、大型基板2Aは移動しながら成膜されることになる。その結果、水晶振動子16において蒸着源12と対向する面側にも成膜が行われる。
【0032】
大型基板2Aに対する成膜終了後、蒸着用マスク19に搭載した水晶振動子16の端子16cにプローブ21の端子21aを接触させて、水晶振動子16の共振周波数を測定し、成膜前後の共振周波数の変化により、水晶振動子16に形成された薄膜の膜厚を算出し、これを大型基板2Aに形成された薄膜の膜厚とする。
【0033】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の蒸着装置10では、成膜時に基板とともに移動する蒸着用マスク19(移動部材)にモニター用の水晶振動子16を保持させたので、水晶振動子16には基板と同一の条件で成膜される。それ故、基板を回転させながら蒸着を行う回転式蒸着装置や基板を面内方向に移動させながら蒸着を行うインライン式蒸着装置において、蒸着室11を改造しなくても、蒸着速度や膜厚を正確かつ効率よく求めることができる。
【0034】
また、蒸着用マスク19に付着する蒸着材料の付着具合を管理することができるため、蒸着用マスク19の洗浄の要不要を管理することができる。
【0035】
さらに、蒸着用マスク19において、蒸着源12に対向する側とは反対の面側に水晶振動子16に対する端子16cが露出しているので、成膜後、蒸着用マスク19において、蒸着源12に対向する側とは反対の面側にプローブ21を当てるだけで水晶振動子16の共振周波数を計測できる。それ故、測定時に蒸着用マスク19から水晶振動子16を取り外す必要がないので、測定を効率よく行うことができる。
【0036】
さらにまた、蒸着用マスク19において、貫通穴190内に水晶振動子16が保持されているので、蒸着用マスク19において、蒸着源12に対向する側とは反対の面側に水晶振動子16に対する端子16cを設けることができる。また、留め具25を外すだけで水晶振動子16を容易に交換することもできる。
【0037】
しかも、本形態の蒸着装置10では、蒸着室11内に、水晶振動子を備えたレートモニタのような装置を設ける必要がない。したがって、蒸着室11内の構成を簡素化することができる。
【0038】
また、本形態の蒸着装置10では、成膜前と成膜後における水晶振動子16の共振周波数の変化により、素子基板2に形成される薄膜の膜厚を算出するため、エリプソメータや段差計を用いて膜厚を測定する方法と比べて、膜厚測定に必要な膜厚を薄くすることができるため測定精度も向上する。特に、本形態の蒸着装置10では、蒸着レートが非常に低いドーパント材料を素子基板に蒸着させ、これによって形成された薄膜の膜厚を測定する際に有効である。
【0039】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、素子基板2に形成される薄膜の膜厚を、蒸着用マスク19に配置されたモニター用の水晶振動子16により測定する形態を示したが、第2の実施の形態では、複数の水晶振動子16を蒸着用基板ホルダ18に配置し、この蒸着用基板ホルダ18に配置された複数の水晶振動子16を用いて素子基板2に作製される薄膜の膜厚を測定する形態を示す。
【0040】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る蒸着用基板ホルダの平面図である。図5に示すように、本形態の蒸着用基板ホルダ18には、基板側に向かって開口が拡大する複数の貫通穴180が形成されている。例えば、複数の貫通穴180は各々、蒸着源側から基板側に向かって、環状の第1の段部180aおよび第2の段部180bが、この順で形成された構造になっている。また、蒸着用基板ホルダ18において、貫通穴180のうち、第1の段部180aを利用して水晶振動子16が搭載されており、水晶振動子16は、一方の面16aの縁部が第1の段部180aと当接し、他方の面16bの縁部が、留め具25によって保持されている。このように配置することにより、複数の水晶振動子16は、蒸着用基板ホルダ18において蒸着源側の面で露出した状態で保持され、かつ、蒸着用基板ホルダ18において蒸着源側とは反対側の面では、複数の水晶振動子16の各端子16cが露出した状態にある。
【0041】
本形態の蒸着装置10では、まず、図5(b)に示すように、蒸着用基板ホルダ18に搭載した水晶振動子16の端子16cにプローブ21の端子21aを接触させて、水晶振動子16の共振周波数を測定しておく。
【0042】
次に、基板に対する成膜を行う前に、蒸着用マスク19および大型基板2Aを保持しない蒸着用基板ホルダ18に対して蒸着室11で蒸着を行う。その際、蒸着用基板ホルダ18が回転し、あるいは、蒸着室11を通過していき、大型基板2Aを成膜するときと同一の条件で蒸着用基板ホルダ18に成膜が行われる。その結果、水晶振動子16において蒸着源12と対向する面側にも成膜が行われる。
【0043】
蒸着用基板ホルダ18に対する成膜終了後、蒸着用基板ホルダ18に搭載した水晶振動子16の端子16cにプローブ21の端子21aを接触させて、水晶振動子16の共振周波数を測定し、成膜前後の共振周波数の変化により、水晶振動子16に形成された薄膜の膜厚を算出し、これを大型基板2Aに形成される薄膜の膜厚とする。その結果を、以降行う基板への成膜にフィードバックする。
【0044】
以上説明したように、本形態の蒸着装置10では、成膜時に基板とともに移動する蒸着用基板ホルダ18にモニター用の水晶振動子16を保持させたので、水晶振動子16には基板と同一の条件で成膜される。それ故、基板を回転させながら蒸着を行う回転式蒸着装置や基板を面内方向に移動させながら蒸着を行うインライン式蒸着装置において、蒸着室11を改造しなくても、蒸着速度や膜厚、さらには膜厚分布を正確かつ効率よく求めることができる。
【0045】
また、蒸着用基板ホルダ18において、蒸着源12に対向する側とは反対の面側に水晶振動子16に対する端子16cが露出しているので、成膜後、蒸着用基板ホルダ18において、蒸着源12に対向する側とは反対の面側にプローブ21を当てるだけで水晶振動子16の共振周波数を計測できる。それ故、測定時に蒸着用基板ホルダ18から水晶振動子16を取り外す必要がないので、測定を効率よく行うことができる。
【0046】
さらにまた、蒸着用基板ホルダ18において、貫通穴180内に水晶振動子16が保持されているので、蒸着用基板ホルダ18において、蒸着源12に対向する側とは反対の面側に水晶振動子16に対する端子16cを設けることができる。また、留め具25を外すだけで水晶振動子16を容易に交換することもできる。
【0047】
しかも、本形態の蒸着装置10では、蒸着室11内に、水晶振動子を備えたレートモニタのような装置を設ける必要がない。したがって、蒸着室11内の構成を簡素化することができる。
【0048】
さらにまた、本形態の蒸着装置10では、成膜前と成膜後における水晶振動子16の共振周波数の変化により、素子基板2に形成される薄膜の膜厚を算出するため、エリプソメータや段差計を用いて膜厚を測定する方法と比べて、膜厚測定に必要な膜厚を薄くすることができるため測定精度も向上する。特に、本形態の蒸着装置10では、蒸着レートが非常に低いドーパント材料を素子基板に蒸着させ、これによって形成された薄膜の膜厚分布を測定する際に有効である。
【0049】
[その他の実施の形態]
上記形態では、基板と同一の条件で移動する蒸着用マスク19あるいは蒸着用基板ホルダ18にモニター用の水晶振動子16を保持させたが、ダミー基板にモニター用の水晶振動子16を保持させるとともに、ダミー基板を蒸着用基板ホルダ18に保持させて、ダミー基板に対する成膜を行い、成膜状態を測定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)、(b)は各々、有機EL装置の一例であるラインヘッドの要部断面図、および平面図である。
【図2】(a)、(b)、(c)は各々、図1に示す素子基板を製造する際に用いた大型基板の平面図、この大型基板の要部を拡大して示す平面図、および素子基板の平面図である。
【図3】本発明を適用した蒸着装置の構成を示す概略構成図である。
【図4】(a)、(b)は各々、本発明の第1の実施の形態に係る蒸着用マスクの斜視図、およびその拡大断面図である。
【図5】(a)、(b)は各々、本発明の第2の実施の形態に係る蒸着用基板ホルダの平面図、およびその拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1・・有機EL装置、2・・素子基板、2A・・大型基板、3・・有機EL素子、7・・発光層、10・・蒸着装置、11・・蒸着室、12・・蒸着源、16・・水晶振動子、18・・蒸着用基板ホルダ、19・・蒸着用マスク、21・・プローブ、25・・留め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着法あるいはスパッタ法により基板に成膜するパターンに対応する開口部を備え、成膜時に当該基板に対して蒸着源が位置する側に配置される蒸着用マスクであって、
前記蒸着源に対向する面側にモニター用の水晶振動子を保持していることを特徴とする蒸着用マスク。
【請求項2】
前記蒸着源に対向する側とは反対側に前記水晶振動子に対する端子を備えていることを特徴とする請求項1に記載の蒸着用マスク。
【請求項3】
前記蒸着源に対向する面側と、当該蒸着源に対向する側とは反対の面側とを貫通させる貫通穴内に前記水晶振動子を着脱可能に保持していることを特徴とする請求項2に記載の蒸着用マスク。
【請求項4】
基板に蒸着法により成膜を行う際、蒸着源に対して前記基板を保持して移動させる蒸着用基板ホルダであって、
前記蒸着源に対向する面側にモニター用の水晶振動子を保持していることを特徴とする蒸着用基板ホルダ。
【請求項5】
前記蒸着源に対向する側とは反対の面側に前記水晶振動子に対する端子を備えていることを特徴とする請求項4に記載の蒸着用基板ホルダ。
【請求項6】
前記蒸着源に対向する面側と、当該蒸着源に対向する側とは反対の面側とを貫通させる貫通穴内に前記水晶振動子を着脱可能に保持していることを特徴とする請求項5に記載の蒸着用基板ホルダ。
【請求項7】
基板を蒸着源に対して移動させながら蒸着法あるいはスパッタ法により当該基板に成膜を行うにあたって、
前記基板を保持して移動させる蒸着用基板ホルダ、あるいは当該蒸着用基板ホルダに保持される移動部材において前記蒸着源が位置する側に成膜モニター用の水晶振動子を保持させた状態で成膜を行い、当該水晶振動子の共振特性を測定して成膜された薄膜の厚さを測定することを特徴とする蒸着状態判定方法。
【請求項8】
前記蒸着用基板ホルダあるいは前記移動部材において前記蒸着源が位置する側に前記水晶振動子を複数、保持させた状態で成膜を行い、当該複数の水晶振動子の共振特性を測定して膜厚分布を測定することを特徴とする請求項7に記載の蒸着状態判定方法。
【請求項9】
前記移動部材は、前記基板に成膜するパターンに対応する開口部を備えた蒸着用マスクであることを特徴とする請求項7又は8に記載の蒸着状態判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−88466(P2008−88466A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267868(P2006−267868)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】