説明

蓄光性ゴム板とその蓄光性ゴム板を用いたマット及び蓄光性ゴム板の製造方法

【課題】 蓄光材の含有量を少量として製造コストの低減を図り、さらに発光性能を高く維持すると共に耐久性に優れ長期間の使用を可能とした蓄光性ゴム板とその蓄光性ゴム板を用いたマット及び蓄光性ゴム板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 蓄光性ゴム板1は、天然ゴム又は合成ゴムを主成分とする架橋圧縮成形前の未架橋のゴム板2と、所定の形状で蓄光性機能を有する蓄光シート3とを備え、
ゴム板2の上に配置した蓄光シート3は、ゴム板2の架橋圧縮成形時の圧縮によって、ゴム板2と一体化していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性に優れている蓄光性ゴム板とその蓄光性ゴム板を用いたマット及び蓄光性ゴム板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
夜間や停電時などの暗闇の中、人を安全に誘導するために、また物の位置を認識できるように、人の通る床面や壁面に設置する蓄光材の発光現象を利用した各種の発光表示体が提案されている。特に足元において、暗闇の中では、段差等に躓いたり足を引っ掛けてしまうことがあるため、位置を簡単に認識できるマットやフロアシート等が提案されている。
【0003】
しかし、マットやフロアシートの表面に、蓄光材によって文字、図形の印刷等を直接表示させると、人が歩行することによって磨耗し、表示が消えてしまうという問題がある。
【0004】
このため、特許文献1には、マット表面の全部又は一部を、蓄光顔料を含む材料により形成して発光させるマットとして、パイル糸に蓄光顔料を含ませて形成するマットと、ゴム基材に蓄光材を含ませて形成するマットの開示がされている。
【特許文献1】特開平9−299313
【特許文献2】特開2004−163621
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発光性マットにおいて、特に蓄光材をゴム材料と混ぜて架橋して形成したものは耐久性が得られているが、発光性能を発揮させるためには大量の蓄光材を混ぜ込むことが必要であり、蓄光材は高価な材料であるためにコストが高くなってしまう。
【0006】
ここで、特許文献2には、表示面の発光部分に蓄光フィルムを貼り付けその表示面を覆うように透光性シートを形成して蓄光表示面を保護し、床に敷いてフロアマットとして使用する床面付着シートが開示されている。この床面付着シートによれば、発光させる蓄光部分としてシート状のフィルムを使用しているため、高価な蓄光材の含有量を少量として形成することができ、さらに透光性シートによって蓄光表示面を保護して磨耗等で表示が消えてしまうことを防いでいる。しかし、この技術を足用マットに実施した場合には、蓄光表示面を保護するための透光性シートが、足で踏まれたりこすられることや、接着層に水を含むことが通常の使用状態で発生することが考えられる。このため、接着剤が短時間で劣化して剥がれてしまい、それによる磨耗等の理由から蓄光による表示が消えてしまい、マットに実施することが難しい問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を鑑みて為されたものであり、蓄光材の含有量を少量として製造コストの低減を図り、さらに発光性能を高く維持すると共に耐久性に優れ、長期間の使用を可能とした蓄光性ゴム板とその蓄光性ゴム板を用いたマット及び蓄光性ゴム板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の蓄光性ゴム板は、
天然ゴム又は合成ゴムを主成分とする架橋圧縮成形前の未架橋のゴム板と、所定の形状で蓄光性機能を有する蓄光シートとを備え、
ゴム板の上に配置した蓄光シートは、ゴム板の架橋圧縮成形時の圧縮によって、ゴム板と一体化していることを特徴とする。
【0009】
本発明の蓄光性ゴム板によれば、未架橋のゴム板を架橋圧縮成形する際の圧縮によって、密着するゴム板と蓄光シートとの分子同士が圧着接合するため、蓄光シートをゴム板に接着させるための接着剤を必要とせず、また、ゴム板と蓄光シートとが1枚のゴム板のように一体化しているため接合面から分離することはなく、蓄光シートが剥がれてしまうことを防ぐ。また、蓄光材を含有した蓄光シートをゴム板の表面に接合して形成するため、その蓄光シートの形状に発光させることができ、さらにゴム板全体に蓄光材を含有して形成する場合に比べて蓄光材の使用量を少なくすることができる。そして、蓄光シート自体の発光輝度をそのまま維持してゴム板に接着して形成するため、優れた発光特性を発揮する蓄光性ゴム板とすることができる。
【0010】
また、天然ゴム又は合成ゴムを主成分とする架橋圧縮成形前の未架橋のゴム板と、所定の形状で蓄光性機能を有する蓄光シートと、その蓄光シートよりも面積の大きい保護シートとを備え、
ゴム板の上に配置した蓄光シートと、ゴム板と蓄光シートとの上に配置した保護シートは、ゴム板の架橋圧縮成形時の圧縮によって、ゴム板と一体化していることを特徴とする。このように蓄光シート表面上を保護シートで覆うことによって、床などに敷設した際に、人々の歩行等の踏みつけによる摩擦によって蓄光シートによる表示が消えてしまうことを防ぐ。また、人々の歩行等の踏みつけによる摩擦によって、まず保護シートの磨耗から始まり、その後に蓄光シートが磨耗することになるため、厚さの薄い蓄光シートを使用しても長期間に渡って蓄光機能を維持して使用することが可能となる。
【0011】
ここで、蓄光シートは、樹脂フィルムからなるものとすることができる。このように蓄光シートを樹脂フィルムで形成することによって、ゴム板の架橋と同時に、密着するゴム板と蓄光シートとを圧縮によって接合させることができる。
【0012】
また、蓄光シートは、天然ゴム又は合成ゴムからなるもので形成することも可能である。天然ゴム又は合成ゴムに蓄光材粉末を配合し薄く延ばしてシート状に形成したものを使用することによって、未架橋状態のゴム板を架橋すると同時に天然ゴム又は合成ゴムからなる蓄光シートを接合することができる。
【0013】
次に、本発明の蓄光性ゴム板を用いたマットは、
基布にパイル糸を植毛し、基布の裏面にマット基材が接合されて構成しているマットにおいて、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の蓄光性ゴム板を用いてマット基材とし、
マット基材の周端部は基布の周端部から外方に張り出して縁部を形成しており、該縁部の全部あるいは一部に蓄光層が形成されてなることを特徴とする。
【0014】
このような蓄光性ゴム板を用いたマットによれば、足用に使用するマットにおいてマット表面の周端の縁部に蓄光層が形成されることによって、その蓄光層部分が暗闇の中で発光するため、停電時等の暗所でもマットの外形の全部又は一部を簡単に認識できて位置を確認することができ、マット上を歩く人が躓いたり引っ掛けたりすることを防ぐ。そして、マット基材において、ゴム板と蓄光シートとが接着剤を介することなく圧縮によって接合して蓄光層を形成しているため、接着剤の劣化等によって蓄光層が剥がれてしまうことはなく、さらに水などに対する耐久性に優れたマットととすることができる。
【0015】
また、パイル糸が植毛されている基布の一部をくりぬいてまたは切断してマット基材の一部が剥き出しとなる状態で接合し、
その剥き出しとされたマット基材の全部あるいは一部に蓄光層が形成されるとすることができる。これによって、マット基材に形成される蓄光層やパイル糸を用いてデザイン的なマットを形成することができる。
【0016】
次に、本発明の蓄光性ゴム板の製造方法は、
未架橋のゴム板と、前記未架橋のゴム板の上面の少なくとも一部表面上に合成樹脂または合成ゴムからなる蓄光シートとを積層状に重ね合わせ、架橋圧縮成形を施すことにより未架橋のゴム板を架橋すると同時に、圧縮によってゴム板と蓄光シートとを一体化することを特徴とする。
【0017】
このような製造方法によれば、ゴム板と蓄光シートとの接着を、架橋圧縮成形時の圧縮によって接合することができるため、容易に蓄光性を有するゴム板を製造することができる。
【0018】
また、未架橋のゴム板の上面に重ねられた蓄光シートの表面に、さらに保護シートを積層状に重ね合わせ、架橋圧縮成形を施すことにより未架橋のゴム板を架橋すると同時に、圧縮によってゴム板と蓄光シートと保護シートとを一体化して製造することも可能である。これによって、保護シートもゴム板の架橋圧縮成形と同時に圧縮によって接合させることができる。
【0019】
また、架橋圧縮成形時に、0.1〜20MPaの圧力で、50℃〜250℃の加熱によって、所定時間処理することによって圧着させて一体化することができる。これによって、蓄光シートを最適な状態でゴム板と接着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る蓄光性ゴム板の構成を簡略化して示す断面図である。蓄光性ゴム板1は、ゴム板2と、蓄光シート3と、保護シート4からなるものである。
【0021】
ゴム板2のゴム材料としては、用途目的に応じて適宜選択されるが、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、ブチルゴム(IIR)、ポリイソプレンゴム(IR)、シリコンゴム(Q)等が用いられる。
【0022】
蓄光シート3は、蓄光剤を含む蓄光材含有層3aと反射層3bの2層構造となっており、樹脂フィルムによって形成されている。この樹脂フィルムの種類として、塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン、アクリル等が挙げられる。蓄光材含有層3aは、樹脂フィルムに蓄光材を混合して形成されている。反射層3bは、蓄光材含有層3aから発せられる光を反射して効率的に発光させる機能を有するものであり、樹脂フィルムに白色顔料等を混合したものが用いられる。
【0023】
また、蓄光シート3は、蓄光材を含む天然ゴム又は合成ゴムからなるものを用いることも可能である。すなわち、蓄光材粉末を配合した天然ゴム又は合成ゴムを薄く延ばしてシート状に形成したものである。蓄光材を含む天然ゴム又は合成ゴムは、架橋されたものだけでなく、未架橋のものであっても良い。
【0024】
蓄光材とは、太陽光や蛍光灯などの光の刺激を受けてエネルギーを吸収し、吸収したエネルギーを可視光に変換して、刺激停止後も光を徐々に放出しながら、ある時間発光し続ける材料で、これを永く反復する機能を持つものである。例えば、硫化亜鉛に銅を加えたものやアルミン酸ストロンチウム(SrAl)を結晶母体として、ユウロピウム(Eu)やジスプロシウム(Dy)などの希土類元素を添加したものなどが知られているが、蓄光材の種類は特に限定されず、従来公知の蓄光材を適用することができる。
【0025】
保護シート4は、蓄光シート3を保護するためのもので、透明の樹脂フィルムからなるものであり、この樹脂フィルムとしては、塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、スチレンブタジエンスチレン、又は種種の熱可塑性エラストマー(TPE)等が挙げられる。
【0026】
図2の本発明に係る蓄光性ゴム板の製造方法を説明する図に示すように、2枚の金板6a、6bを用いて架橋圧縮成形を行う。
【0027】
まず、下板6b上に未架橋状態のゴム板2’を配置する。そして、この未架橋状態のゴム板2’の上面の表面に蓄光シート3を積層状に重ね合わせて配置する。次に、架橋圧縮成形金板6の上板6aと下板6bとによって、圧力を0.1〜20MPa、温度を50℃〜250℃の条件で、所定時間プレス成形操作を行う。これによって、未架橋状態のゴム板2’を架橋すると同時に、蓄光シート3をゴム板2’に圧着させる。蓄光シート3が樹脂フィルムからなる場合、この樹脂フィルムには可塑剤が含有されているため熱によって溶融し、密着するゴム板と蓄光シートとの表面の分子同士が結合して接着する。また、蓄光シート3が蓄光材を含む天然ゴム又は合成ゴムからなる場合、未架橋状態のゴム板2’を架橋すると同時に積層一体化して形成している。このようにして、蓄光層5を有する蓄光性ゴム板1を得る。
【0028】
なお、ゴム板2の表面の一部のみに蓄光層を設けたい場合には、当該部分のみに蓄光シート3を配置して架橋圧縮成形を行うことが可能である。
【0029】
また、未架橋状態のゴム板2’の上面に重ねられた蓄光シート3の表面に、さらに保護シート4を積層状に重ね合わせて、上記の方法で架橋圧縮成形することによって、保護シート4の溶着によって積層一体形成される。これによって、より耐久性に優れた蓄光性ゴム板1となり、床材用途に好適に使用可能なものとすることができる。
【0030】
本発明の蓄光性ゴム板は、例えば、駅構内、地下街、公共施設、ビル内などのフロアマットとして使用することができる。すなわち、蓄光層5(図1)を、図3に示すように、矢印の形状に形成して蓄光層51として蓄光性ゴム板1の適宜の箇所に配置して形成する。この矢印の蓄光層51の先端がビル等の非常口や階段方向に向くように床に敷設する。そして、災害発生時等の非常時において停電が発生し、周囲が暗くなった場合に、フロアマット11の蓄光層51が発光し、人々を蓄光層51の矢印の方向に誘導することが可能となる。なお、蓄光層51の形状は、矢印に限定されるものではなく、図4の(a)に示すように線52や丸53等の形状に形成することで、ビル等の廊下の幅などを表示することが可能である。また、図4の(b)に示すように、文字54等を形成して、暗闇時に文字54を表示させることも可能である。
【0031】
フロアマット等の床材として使用する場合、本発明の蓄光性ゴム板は、圧着によりゴム板2と蓄光シート3とが強固に相互固着されて形成されているため、接着剤等の経時劣化等によって蓄光シート3が剥がれてしまうおそれはない。また、さらに保護シート4を重ねて形成することによって、人々の歩行等の摩擦によって蓄光シート3による表示が消えてしまうことを防ぐ。
【0032】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
飲食店などの業務用厨房内では、調理によって水や食用油が飛散するため、油吸収マットを床に敷設している。この油吸収マットとして、油や水に対して補足性が高くかつ吸収性が高いマット本体を、ゴム板上に係着させて使用されているものがある。
【0034】
すなわち、図5の本発明の第2の実施形態に係る蓄光性ゴム板に示すように、蓄光性ゴム板1に油吸収シート70を係着させて油吸収マット71を構成している。蓄光性ゴム板1には、両端に沿って蓄光層55として矢印が形成され、さらに油吸収シート70を係着させるためのマジックテープ(登録商標)などとも呼ばれる面状ファスナーテープ72が貼り付けられている。油吸収マット71は、不織布からなる表面シート間に油水吸収体が挟まれて構成されており、蓄光性ゴム板1の面状ファスナーテープ72によって蓄光性ゴム板1に係着する。これによって、油吸収シート70を蓄光性ゴム板1に固定することができ、油吸収シート70が一定の位置からずれてしまうことを防ぐことができる。また、油吸収シート70が油や水を充分に吸収し、吸収機能を発揮できなくなったとき、油吸収シート70を蓄光性ゴム板1から剥がして取り外し、新たな油吸収シート70に容易に交換できる。
【0035】
このような油吸収マット71においても、蓄光性ゴム板1は油吸収シート70の位置ずれを防ぐ機能を果たしつつ、油吸収シート70の周縁部に張り出している蓄光性ゴム板1の周端部に設けられている蓄光層55によって、停電時等の暗闇時において、人々を出口等に誘導可能なものとなる。
【0036】
次に、蓄光性ゴム板を用いたマットについて説明する。
図6、図7に示すように、マット12は、基布8にパイル糸9を植毛し、基布8の裏面にマット基材21が接合されて構成している。そして、マット基材21は、蓄光性ゴム板が用いられており、マット基材21の周端部は基布8の周端部から外方に張り出して縁部21aを形成しており、該縁部21aの全部あるいは一部に蓄光層56が形成されている。基布8は、マット基材21の縁部21aを除いた表面全面を覆うように接合されている。
【0037】
基布8は、合繊不織布または平織物が使用されている。素材は、ポリプロピレンあるいはポリエステル等の合成繊維によって形成されているが、ウールや綿等の天然繊維でも可能である。
【0038】
パイル糸9として、一般的なマットに使用されている糸と同様に、ウール、アクリル、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ビニロン等を素材とした繊維よりなるパイル糸を使用している。
【0039】
マット基材21の縁部21aには、短冊状に形成した蓄光層56を、マット12の周端に沿って間隔を置いて配置している。このようにマット12に蓄光層56を形成して、暗所で発光するようにしているため、停電時等の暗所でもマットの外形の全部又は一部を簡単に認識できて位置を確認することができ、マット12上を歩く人が躓いたり引っ掛けたりすることを防ぐ。
【0040】
また、足用のマットは、家の玄関やお店などの入り口等に敷かれ、靴底の汚れを落とすために踏みつけられて使用されるため、汚れやすいものである。特に、定期的に交換して使用されるレンタル用の足用マットは、頻繁に交換されてクリーニングが行われる。このクリーニングは、業者によって行われるものであり、例えば、pH4からpH5の酸性やpH9からpH13の強アルカリ性に調整され、温度が40℃から80℃とされた洗浄液によって約1時間洗濯された後に、80〜130℃の温度で1時間乾燥する、といった過酷な条件でクリーニングが行われる。
【0041】
従来の発光性のマットであると、このようなクリーニングを行うことによって、蓄光材によってプリントされている表示が剥げ落ちて発光性能が落ちてしまい、耐用年数が短いものとなってしまう。しかし、本発明の蓄光性ゴム板を用いたマット12によれば、過酷な条件で頻繁に行われるクリーニングによっても蓄光層56の表示が剥げ落ちることはなく、発光性能が低下しないマットとなる。
【0042】
図8に、蓄光性ゴム板を用いたマットの他の実施例を示す。図6の構成では、基布8がマット基材21の縁部21aを除いた表面全面を覆うように形成しているが、パイル糸9が植毛されている基布8の一部をくりぬいてまたは切断してマット基材21の一部が剥き出しとなる状態でマット基材21に接合してマット13を形成することが可能である。そして、剥き出しとされたマット基材21の全部あるいは一部に蓄光層56が設けられている。
【0043】
この構成によれば、停電時等の暗所でもマットの外形の全部又は一部を簡単に認識できて位置を確認することができるだけでなく、マットを蓄光層やパイル糸によってデザイン的に形成することができる。図8(a)の構成では、基布8を円形にくりぬいてその円形のマット基材21に蓄光層56を設けているが、例えば、図8(b)に示すように基布8を十字に切断し4分割して形成し、その切断線上のマット基材21に蓄光層56を形成することも可能である。
【0044】
本発明の蓄光性ゴム板の実施形態として、フロアマットや、パイル糸を植毛して足用マットと使用する等、床に敷くものとしての実施形態を例示したが、その他種種の用途に使用することが可能である。
例えば、ゴム板2上にデザイン的に蓄光層5を形成して、居酒屋やバーなどのカウンター上に敷設し、カクテルグラスやお酒のボトルを並べるなど、テーブルマットとして使用することができる。この場合、ゴムによって形成されているために、カクテルグラスやお酒のボトルが滑ることを防ぎ、また、水などがこぼれても蓄光層5の表示が消えることはない。そして、蓄光層5の光によって、幻想的な空間を作り出すことができる。
【0045】
また、ゴム板に着色層を設けて着色を施し、さらに蓄光層を設けて蓄光性ゴム板とすることも可能である。すなわち、図9に示すように、ゴム板2の上面に着色層25を重ね、その表面に蓄光シート3を重ね、さらに保護シート4を積層状に重ね合わせて架橋圧縮成形することによって、積層一体形成される。着色層25は、着色材を含有した樹脂フィルムによって形成される。この樹脂フィルムとして、塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン、アクリル等が用いられる。このように着色層25を設けて蓄光性ゴム板を形成することにより、着色層25の色によってより蓄光層5を目立たせたものとすることができ、またデザイン的な蓄光性ゴム板を形成することができる。また、着色層25は、蓄光層、保護シートと同様に、溶着してゴム板2に圧着するため、使用することによって磨耗、または剥がれてしまうおそれもない。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの形式に限定されるものではなく、これらに具現された発明と同一性の範囲内において適宜変更して実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る蓄光性ゴム板の構成を簡略化して示す断面図。
【図2】本発明に係る蓄光性ゴム板の製造方法を説明する図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る蓄光性ゴム板の斜視図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る蓄光性ゴム板の変形例を示す斜視図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る蓄光性ゴム板の斜視図。
【図6】本発明に係る蓄光性ゴム板を用いたマットの斜視図。
【図7】本発明に係る蓄光性ゴム板を用いたマット構成を簡略化して示す断面図。
【図8】本発明に係る蓄光性ゴム板を用いたマットの変形例を示す斜視図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る蓄光性ゴム板の構成を簡略化して示す断面図。
【符号の説明】
【0048】
1 蓄光性ゴム板
2 ゴム板
3 蓄光シート
4 保護シート
5 蓄光層
6 架橋圧縮成形金板
8 基布
9 パイル糸
11 フロアマット
12 マット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム又は合成ゴムを主成分とする架橋圧縮成形前の未架橋のゴム板と、所定の形状で蓄光性機能を有する蓄光シートとを備え、
前記ゴム板の上に配置した前記蓄光シートは、前記ゴム板の架橋圧縮成形時の圧縮によって、前記ゴム板と一体化していることを特徴とする蓄光性ゴム板。
【請求項2】
天然ゴム又は合成ゴムを主成分とする架橋圧縮成形前の未架橋のゴム板と、所定の形状で蓄光性機能を有する蓄光シートと、その蓄光シートよりも面積の大きい保護シートとを備え、
前記ゴム板の上に配置した前記蓄光シートと、前記ゴム板と前記蓄光シートとの上に配置した前記保護シートは、前記ゴム板の架橋圧縮成形時の圧縮によって、前記ゴム板と一体化していることを特徴とする蓄光性ゴム板。
【請求項3】
前記蓄光シートは、樹脂フィルムからなる請求項1又は請求項2に記載の蓄光性ゴム板。
【請求項4】
前記蓄光シートは、天然ゴム又は合成ゴムからなる請求項1又は請求項2に記載の蓄光性ゴム板。
【請求項5】
基布にパイル糸を植毛し、基布の裏面にマット基材が接合されて構成しているマットにおいて、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の蓄光性ゴム板を用いて前記マット基材とし、
前記マット基材の周端部は基布の周端部から外方に張り出して縁部を形成しており、該縁部の全部あるいは一部に蓄光層が形成されてなることを特徴とする蓄光性ゴム板を用いたマット。
【請求項6】
前記パイル糸が植毛されている前記基布の一部をくりぬいてまたは切断して前記マット基材の一部が剥き出しとなる状態で接合し、
その剥き出しとされた前記マット基材の全部あるいは一部に蓄光層が形成される請求項5に記載の蓄光性ゴム板を用いたマット。
【請求項7】
未架橋のゴム板と、前記未架橋のゴム板の上面の少なくとも一部表面上に合成樹脂または合成ゴムからなる蓄光シートとを積層状に重ね合わせ、架橋圧縮成形を施すことにより前記未架橋のゴム板を架橋すると同時に、圧縮によって前記ゴム板と前記蓄光シートとを一体化することを特徴とする蓄光性ゴム板の製造方法。
【請求項8】
前記未架橋のゴム板の上面に重ねられた前記蓄光シートの表面に、さらに保護シートを積層状に重ね合わせ、架橋圧縮成形を施すことにより前記未架橋のゴム板を架橋すると同時に、圧縮によって前記ゴム板と前記蓄光シートと前記保護シートとを一体化する請求項7に記載の蓄光性ゴム板の製造方法。
【請求項9】
架橋圧縮成形時に、0.1〜20MPaの圧力で、50℃〜250℃の加熱によって、所定時間処理することによって圧着させて一体化する請求項7又は請求項8に記載の蓄光性ゴム板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−168521(P2008−168521A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4358(P2007−4358)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(390006194)日之出株式会社 (1)
【Fターム(参考)】