説明

蓄光性フレーク体の製造方法と樹脂成型品への応用

【課題】暗闇の中で樹脂全体に斑点模様的で均一な意匠性と高いデザイン性・優美に発光する外観を特徴とした樹脂成型品およびそれに適した蓄光性フレークを提供する。
【解決手段】厚みが5μ〜100μ、サイズ一片が10μ〜9000μの基材に蓄光性蛍光体を樹脂コーティングし皮覆したことを特徴とする蓄光性フレーク体。少なくとも一方の面に蓄光性蛍光体を有する前記蓄光性フレーク体を熱可塑性樹脂全体に対し蓄光性フレーク体0.1〜10%を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の厚みが5μ〜100μで、一辺の長さが10μ〜9,000μの基材に蓄光性蛍光体を樹脂により皮覆コーティングしたことを特徴とした蛍光性フレーク体であり、少なくとも一方の面に蓄光性蛍光体を有する上記の基材などからなる蓄光性フレーク体と熱可塑性樹脂全体に対し蓄光性フレーク体0.1〜30%を添加すると均一な意匠性や高いデザイン性を特徴とした樹脂成型品にかかわるものである。
【背景技術】
【0002】
従来からある樹脂成型品には、蓄光性蛍光体そのものが樹脂全体に添加使用され、樹脂全体が発光して見える外観の物を消費者に提供していた。
【特許文献1】特開平7−11250
【非特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これら従来の蓄光性蛍光体では樹脂成型品に添加しても、ベタッと隠ぺいされ、暗闇の中で樹脂全体が発光するだけであった。
【0004】
つまり、一般的に使用される蓄光性蛍光体は粒子が10μ〜75μと細かいため隠ぺいされ、斑点模様的で均一な意匠性と高いデザイン性・優美に発光する外観を演出することが出来なかった。
【0005】
さらに蓄光性蛍光体は硬質な為、成型時の諸条件、特にシリンダー内、射出時の負荷によって金属部分が削られ成型の状態によっては成型品が黒く濁る為、均一な意匠性と高いデザイン性・優美に発行する外観を特徴とした樹脂成型品で満足行くものがなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
「請求項1」の樹脂成型品は基材の厚みが5μ〜100μで、一辺の長さが10μ〜9,000μの基材に蓄光性蛍光体を配合されたことを特徴とする。
【0007】
「請求項2」の樹脂成型品は「請求項1」に記載の基材の表面に蓄光性蛍光体を樹脂による皮覆コーティング膜が形成されていることを特徴とする。
【0008】
「請求項3」の樹脂成型品は「請求項1」及び「請求項2」に記載の蓄光性フレークを樹脂全体に重量比0.1〜30%添加し、暗闇の中で斑点模様で均一な意匠性と高いデザイン性・優美に発光する外観を特徴とする。
【0009】
「請求項4」の蓄光性フレーク体は基材の厚みが5μ〜100μで、一辺の長さが10μ〜9,000μの基材を加工など施す工程を含んでいることを特徴とする。
【0010】
「請求項5」の蓄光性フレーク体は「請求項4」に記載の基材の表面には、蓄光性蛍光体を樹脂による皮覆コーティング膜が形成を施す工程を含んでいることを特徴とする。
【0011】
前記の少なくとも一方の面・さらには両面上に蓄光性蛍光体と共に樹脂コーティング皮覆膜が形成されている構造とすると良い。
【0012】
以上のようにして構成された蓄光性フレーク体を樹脂全体に対し0.1〜30%を配合すると暗闇の中で斑点模様的で均一な意匠性と高いデザイン性・優美に発行する外観を特徴とした樹脂成型品が得られる。
【0013】
特に蓄光性フレーク体の配合量によって上記効果が樹脂成型品のさらに広い範囲で得られる。
【発明の効果】
【0014】
このようにして、本発明によれば基材と蓄光性蛍光体を樹脂コーティングし、被覆したことを特徴とした蓄光性フレーク体。
【0015】
少なくとも一方の面に蓄光性蛍光体を有する上記基材などからなる蓄光性フレーク体と熱可塑性樹脂全体に対し蓄光性フレーク体0.1〜30%を添加すると暗闇の中で樹脂全体に斑点模様的で均一な意匠性や高いデザイン性・優美に発光する外観を特徴とした樹脂成型品を提供する事ができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明にかかわる蓄光性フレーク体の製造方法及び樹脂成型品の製法を、その実施の形態を示した図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は実施形態の樹脂成型品に配合されている蓄光性フレーク体の断面図である。1はコーティング処理された蓄光性フレーク体の基材であり、この基材1の表面の一部または全体に2の樹脂コーティング皮膜が形成されている。この樹脂コーティング皮膜2に用いる樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びその他の樹脂等である。この樹脂コーティング皮膜によって、薬品や溶剤による劣化が防止される。
【0018】
このように樹脂コーティングされた蓄光性フレーク体は、例えば、一片が90μ〜2000μ程度にすると最もよい。又、樹脂コーティング皮膜を形成するとき蓄光性蛍光体とは別にコーティング材に染料又は顔料等の着色剤混入してもよい。例えば、コーティング材に染料または顔料を0.01〜50%添加混入する事も可能である。特にコーティング材に対し染料または顔料を0.01〜10%添加混入したものが効果的だった。
【0019】
その他に、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の安定剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤等を添加することができ、図2に示したように、樹脂コーティング皮膜を基材の片面に形成してもよい。
【0020】
形状としては四角形、六角形、多角形、ひし形、長方形、ランダム状、その他の形状が可能である。
【0021】
図3に示すように、樹脂成型品において斑点状の模様観を出すためには図1で示したような一片が90μ〜2000μの蓄光性フレーク体1を添加するのが最も効果的であった。
【0022】
本発明の蓄光性フレーク体の形状・サイズ・厚みは株式会社キーエンス社製、商品名「デジタルHDマイクロスコープVH−7000」の電子顕微鏡を用い測定した。比重は、株式会社エー・アンド・ディー社製、商品名「DE−120T」と比重計を用いて測定した。嵩比重は、日本工業規格 JIS Z 8807−1976「固体比重測定方法」に基づき測定した。メッシュサイズは、株式会社タナカテック社製、商品名「R−1型」振動篩い器 JIS Z8801−82 100g×5分テストを用い測定した。
【0023】
蓄光性フレーク体の混入割合は、熱可塑性樹脂に対し、蓄光性フレーク体0.1〜30%が好ましく、中でも0.3〜3%添加混入した物が効果的であった。樹脂に対し、蓄光性フレーク体の重量比で10%を超える時、入射光の干渉作用によって光を蓄積する。特に太陽光や白色光のように、複数の異なる波長を含んだ光を照射すると、さらに光を蓄積し暗闇の中でも斑点状の模様観で均一な意匠性と高いデザイン性・優美に発光する外観を特徴とした成型品が得られる。この範囲での物性強度などの低下は、ほとんど見られない。
【0024】
本発明において使用した熱可塑性樹脂はたとえばアクリル樹脂・スチレン系樹脂・塩化ビニル系樹脂・メチルペンテン系樹脂・ポリカーボネイト樹脂・共重合ポリエステル・共重合ポリアミド・ABS等の樹脂に混合されていてもよい。
【0025】
さらに本発明の樹脂成型品は、射出成型に限らず押し出し成型、射出圧縮成型などの成型法でもよい。熱可塑性樹脂と加飾材は予め樹脂を溶融させて混合した組成物、例えばペレットとして使用するよりも、ナチュラルペレットに加飾材をダイレクトに添加して成型する方が蓄光性フレーク体が破損せず均一に分散しすばらしい模様観が得られ好ましい。以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0026】
ABS樹脂 99.0容量%
蓄光性フレーク体 1.0容量%
上記の材料を用い下記の成型条件にて射出成型した。
成型条件
材料乾燥 75〜 80℃ 2時間
シリンダー温度 200〜270℃
金型温度 40〜 70℃
射出圧力 60〜130MPa
【実施例2】
【0027】
PS樹脂 97.0容量%
蓄光性フレーク体 3.0容量%
上記の材料を用い下記の成型条件にて射出成型した。
成型条件
シリンダー温度 180〜230℃
金型温度 10〜 60℃
射出圧力 30〜46MPa
得られた成型品は、実施例1に同様優れた外観を有している。
【産業上の利用可能性】
【0028】
基材に蓄光性蛍光体を樹脂コーティングし皮覆した事を特徴とする蓄光性フレーク体。少なくとも一方の面に蓄光性蛍光体を有する上記基材などからなる蓄光性フレーク体0.1%〜3%を添加すると暗闇の中で樹脂全体に斑点模様的で均一な意匠性と高いデザイン性・優美に発光する外観を特徴とした樹脂成型品。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明における蓄光性フレーク体の断面図である。
【図2】別の実施の蓄光性フレーク体の断面図である。
【図3】本発明における樹脂成型品の断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 蓄光性フレークの基材
2 樹脂コーティング皮膜
3 蓄光性蛍光体
4 樹脂成型品の断面
5 蓄光性フレーク体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、セルロース、アクリル、アラミド、レーヨン、等の樹脂フィルム及びマイカー等の結晶体を裁断又は粉砕したもので、以下「基材」という)の厚みが5μ〜100μで、一辺の長さが10μ〜9,000μの蓄光性フレーク体を配合された事を特徴とする樹脂成型品。
【請求項2】
基材の表面に蓄光性蛍光体(MAlで表される化合物でMはカルシュウム、ストロンチュウム、バリウムから成る群れの少なくとも1つ以上の金属元素を含む化合物を母結晶に持ち、ユウロピウムを賦活剤とし、共賦活剤としてセリウム、ブラセオジウム、ネオジウム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムから成る群れの少なくとも1つ以上の元素を含みMで表す化合物であり、金属元素に対するモル%で0.002%以上、20%以下を添加したもので、以下「蓄光性蛍光体」という)を樹脂による皮覆コーティング膜が形成されていることを特徴とする「請求項1」に記載の樹脂成型品。
【請求項3】
蓄光性フレークを樹脂全体に0.1〜30%添加すると暗闇の中で斑点模様的で均一な意匠性と高いデザイン性・優美に発光する外観を演出することを特長とする「請求項1」及び「請求項2」に記載の樹脂成型品。
【請求項4】
厚みが5μ〜100μで、一辺の長さが10μ〜9000μの基材を加工など施す工程を含んでいることを特徴とする蓄光性フレーク体。
【請求項5】
基材の表面には、蓄光性蛍光体を樹脂による皮覆コーティング膜が形成を施す工程を含んでいることを特徴とする「請求項4」に記載の蓄光性フレーク体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−169479(P2006−169479A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367850(P2004−367850)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(599113361)ダイヤ工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】