説明

蓄電システム

【課題】高エネルギー密度を有すると同時に高出力および高速充・放電を行うことができる蓄電システムを提供する。
【解決手段】蓄電システム100は、バッテリ負極板111、バッテリ正極板112、および前記バッテリ負極板と前記バッテリ正極板との間に介在し、これらを電気的に絶縁するバッテリ分離膜113を含むリチウム硫黄バッテリセル110と、前記リチウム硫黄バッテリセルとセル分離膜130を通じて電気的に絶縁するように積層され、キャパシタ負極板121、キャパシタ正極板122、および前記キャパシタ負極板と前記バッテリ正極板との間に介在し、これらを電気的に絶縁するキャパシタ分離膜123を含む電気化学キャパシタセル120と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電システムに係り、より詳しくは、高い出力と高いエネルギ密度を有する蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な自動車は、ガソリンや軽油で作動するエンジンを動力源とする。しかし、環境汚染が世界的な問題として浮び上がっており、電気モータを用いる電気自動車が業界で注目を浴びている。
このような電気自動車の蓄電システムは、化学エネルギと電気エネルギとの間の相互変換が可逆的であるので充電と放電を繰り返すことができる。このような蓄電システムは、正極板と負極板が分離膜(separator)を間に置いて位置する電極集合体(electrode assembly)、電極集合体が収容される空間を有するケース、および前記ケースに結合され、これを密閉するキャッププレートなどを含む。
【0003】
このような蓄電システムのうち、現在、ハイブリッド車両に多く用いられるリチウムイオンバッテリは、理論エネルギ密度が570Wh/kgである。しかし、実質的に実現可能な最大リチウムイオンバッテリのエネルギ密度は250Wh/kgであって、一度の充電で500km以上を走行しなければならない電気自動車に適用するには限界がある。
したがって、電気自動車の高いエネルギ密度を実現するために、理論的に2600Wh/kgの高エネルギー密度を有するリチウム硫黄バッテリが注目を浴びている。また、このようなリチウム硫黄バッテリの実現可能なエネルギ密度を増加させるために多くの研究が行われている。
しかし、このようなリチウム硫黄バッテリは、動作電圧が2.0〜2.5Vで、既存のリチウムイオンバッテリ(3.7V)より低く、出力特性が低いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−522383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、リチウム硫黄バッテリセルに電気化学キャパシタセルを積層し、高エネルギー密度を有すると同時に高出力および高速充・放電を行うことができる蓄電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明に係る蓄電システムは、バッテリ負極板、バッテリ正極板、および前記バッテリ負極板と前記バッテリ正極板との間に介在し、これらを電気的に絶縁するバッテリ分離膜を含むリチウム硫黄バッテリセルと、
前記リチウム硫黄バッテリセルとセル分離膜を通じて電気的に絶縁するように積層され、キャパシタ負極板、キャパシタ正極板、および前記キャパシタ負極板と前記バッテリ正極板との間に介在し、これらを電気的に絶縁するキャパシタ分離膜を含む電気化学キャパシタセルと、を含むことを特徴とする。
【0007】
前記セル分離膜は多孔性分離膜であって、前記リチウム硫黄バッテリセルと前記電気化学キャパシタセルの各電子およびイオンの移動が可能であり、前記リチウム硫黄バッテリセルと前記電気化学キャパシタセルとの間を電気的に分離することを特徴とする。
【0008】
前記リチウム硫黄バッテリセルの前記バッテリ負極板と前記バッテリ分離膜との間と、バッテリ正極板とバッテリ分離膜との間に介在する電解質と、
前記電気化学キャパシタセルの前記キャパシタ負極板と前記キャパシタ分離膜との間と、キャパシタ正極板とキャパシタ分離膜との間に介在する電解質とは同一の電解質であることを特徴とする。
【0009】
前記リチウム硫黄バッテリセルと前記電気化学キャパシタセルは、交互に複数が積層されることを特徴とする
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る蓄電システムは、リチウム硫黄バッテリセルに電気化学キャパシタセルを積層し、高エネルギー密度を有すると同時に高出力および高速充・放電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による蓄電システムを示す構造図である。
【図2】図1のリチウム硫黄バッテリセルを示す構造図である。
【図3】図1の電気化学キャパシタセルを示す構造図である。
【図4】本発明の他の実施形態による蓄電システムを示す構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。
図1に示す通り、蓄電システム100は、リチウム硫黄バッテリセル110と電気化学キャパシタセル120とを含む。
図2に示す通り、リチウム硫黄バッテリセル110は、バッテリ負極板111、バッテリ正極板112と、バッテリ負極板111とバッテリ正極板112との間に介在するバッテリ分離膜113とからなる。
ここで、バッテリ負極板111は、負極集電体と、リチウム、リチウム合金またはリチウムを含む複合材のうちの少なくとも一つの活物質とからなる。
【0013】
バッテリ正極板112は、正極集電体と、硫黄、硫黄合金または硫黄を含む複合材のうちの少なくとも一つを含む活物質からなる。
バッテリ分離膜113は、バッテリ負極板111とバッテリ正極板112との間の接触を防止することにより、バッテリ負極板111とバッテリ正極板112を電気的に絶縁し、充・放電時にリチウムイオンが移動可能な多孔性分離膜である。
リチウム硫黄バッテリセル110では、バッテリ負極板111とバッテリ分離膜113との間と、バッテリ正極板112とバッテリ分離膜113との間に電解質114が介在する。このようなリチウム硫黄バッテリセル110は、理論的に2600Wh/kgの高いエネルギ密度を有する。
【0014】
電気化学キャパシタセル120は、キャパシタ負極板121、キャパシタ正極板122、およびキャパシタ負極板121とキャパシタ正極板122との間に介在するキャパシタ分離膜123からなる。
キャパシタ負極板121とキャパシタ正極板122は各極性集電体を各々含み、各極性集電体とキャパシタ分離膜123との間に介在する各極性に対する活物質と、導電性を付与するための導電体と、活物質と導電体との間に結合能を増加させるためのバインダーとを含む。キャパシタ負極板121の活物質は炭素ナノチューブ(CNT:Carbon Nano Tube)からなり、キャパシタ正極板122の活物質は二酸化マンガン(MnO)からなる。
【0015】
キャパシタ分離膜123は、キャパシタ負極板121とキャパシタ正極板122との間の接触を防止することにより、キャパシタ負極板121とキャパシタ正極板122を電気的に絶縁し、電子および充・放電時に電解質イオンを移動可能にする多孔性分離膜である。
電気化学キャパシタセル120は、キャパシタ負極板121とキャパシタ分離膜123との間と、キャパシタ正極板122とキャパシタ分離膜123との間に電解質124が介在する。また、電気化学キャパシタセル120の電解質124は、リチウム硫黄バッテリセル110の電解質114と同一の電解質からなる。このような電解質は、LiCFSo、LiTFSiおよびDME(dimethoxy ethane)を含む。
【0016】
電気化学キャパシタセル120は、イオンより速度の速い電子がキャパシタ負極板121とキャパシタ正極板122との間を移動することによって電圧を充電または放電するため、短い時間内に高いエネルギを充・放電することができる。
リチウム硫黄バッテリセル110とセル分離膜130を通じて電気的に絶縁するようにリチウム硫黄バッテリセル110に積層される。
このようなセル分離膜130は、リチウム硫黄バッテリセル110のバッテリ正極板112と電気化学キャパシタセル120のキャパシタ負極板121との間に介在し、リチウム硫黄バッテリセル110と電気化学キャパシタセル120を電気的に絶縁したり、その逆に、セル分離膜130は、リチウム硫黄バッテリセル110のバッテリ負極板111と電気化学キャパシタセル120のキャパシタ正極板122との間に介在し、リチウム硫黄バッテリセル110と電気化学キャパシタセル120を電気的に絶縁したりすることができる。
【0017】
すなわち、セル分離膜130は、リチウム硫黄バッテリセル110と電気化学キャパシタセル120との間に介在して、リチウム硫黄バッテリセル110と電気化学キャパシタセル120のそれぞれの極板が接触することを防止し、各セルを電気的に絶縁させる。
セル分離膜130は、リチウム硫黄バッテリセル110のイオンおよび電子と電気化学キャパシタセル120のイオンおよび電子の移動が容易になるように多孔性分離膜からなる。したがって、リチウム硫黄バッテリセル110と電気化学キャパシタセル120はセル分離膜130を通じて電気的に絶縁し、電子およびイオンの移動が可能であるため、充・放電時に互いに相互補完して動作することができる。
【0018】
蓄電システム100は、リチウム硫黄バッテリセル110と電気化学キャパシタセル120が収容されるための空間を有するケース(図示せず)を有し、ケースの内部は電解質(114,124)で全て充填される。
蓄電システム100は、リチウム硫黄バッテリセル110に電気化学キャパシタセル120を積層して、リチウム硫黄バッテリセル110の特性である高エネルギー密度を有し、電気化学キャパシタセル120の特性である高出力および高速充・放電が可能である。すなわち、蓄電システム100は、リチウム硫黄バッテリセル110と電気化学キャパシタセル120を積層し、リチウム硫黄バッテリセル110の短所である出力低下と、電気化学キャパシタセル120の低いエネルギ密度を補完して、高い出力と高いエネルギ密度を有する。
また、蓄電システム200は、図4に示すように、リチウム硫黄バッテリセル110と電気化学キャパシタセル120が交互に積層された複数のセルからなるが、蓄電システム200は、リチウム硫黄バッテリセル110と電気化学キャパシタセル120が不規則に積層された複数のセルからなることも可能である。
【0019】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明は前記実施例に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0020】
100、200 蓄電システム
110 リチウム硫黄バッテリセル
111 バッテリ負極板
112 バッテリ正極板
113 バッテリ分離膜
114,124 電解質
120 電気化学キャパシタセル
121 キャパシタ負極板
122 キャパシタ正極板
123 キャパシタ分離膜
130 セル分離膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ負極板、バッテリ正極板、および前記バッテリ負極板と前記バッテリ正極板との間に介在し、これらを電気的に絶縁するバッテリ分離膜を含むリチウム硫黄バッテリセルと、
前記リチウム硫黄バッテリセルとセル分離膜を通じて電気的に絶縁するように積層され、キャパシタ負極板、キャパシタ正極板、および前記キャパシタ負極板と前記バッテリ正極板との間に介在し、これらを電気的に絶縁するキャパシタ分離膜を含む電気化学キャパシタセルと、
を含むことを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記セル分離膜は多孔性分離膜であって、前記リチウム硫黄バッテリセルと前記電気化学キャパシタセルの各電子およびイオンの移動が可能であり、前記リチウム硫黄バッテリセルと前記電気化学キャパシタセルとの間を電気的に分離することを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記リチウム硫黄バッテリセルの前記バッテリ負極板と前記バッテリ分離膜との間と、バッテリ正極板とバッテリ分離膜との間に介在する電解質と、
前記電気化学キャパシタセルの前記キャパシタ負極板と前記キャパシタ分離膜との間と、キャパシタ正極板とキャパシタ分離膜との間に介在する電解質とは同一の電解質であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記リチウム硫黄バッテリセルと前記電気化学キャパシタセルは、交互に複数が積層されることを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−249298(P2011−249298A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163836(P2010−163836)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】