蓄電デバイスおよび蓄電システム
【課題】本発明は、実質的に利用できる蓄電容量およびエネルギー容量が大きく、かつ充放電サイクルにおける信頼性が高い蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】炭素質活物質を含有する正極および負極、オニウム塩を含有する非水電解液、並びにセパレータを備え、前記正極における電気化学的充電過程が、遷移電圧を境にして、この遷移電圧より低電圧領域における前記オニウム塩のアニオンの吸着過程と、前記遷移電圧より高電圧領域における前記オニウム塩のアニオンのインターカレーション過程との逐次充電過程を示す蓄電デバイス。
【解決手段】炭素質活物質を含有する正極および負極、オニウム塩を含有する非水電解液、並びにセパレータを備え、前記正極における電気化学的充電過程が、遷移電圧を境にして、この遷移電圧より低電圧領域における前記オニウム塩のアニオンの吸着過程と、前記遷移電圧より高電圧領域における前記オニウム塩のアニオンのインターカレーション過程との逐次充電過程を示す蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電圧が高く、容量が大きく、かつ充放電サイクルにおける信頼性の高い蓄電デバイス、蓄電システム、およびそれを用いた電子機器、動力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液を使用する蓄電デバイスとして知られているものにはリチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなどがある。
【0003】
リチウムイオン二次電池は正極にリチウム含有遷移金属酸化物が使用され、負極にはリチウムがインターカレート可能な黒鉛系炭素化合物が好適に使用されており、電解液としてはリチウム塩を含む非水電解液が利用されている。
【0004】
リチウムイオン二次電池では通常、正極にリチウム含有遷移金属酸化物を使用しているために、リチウムイオン二次電池は高い電圧による充放電を実現でき、結果として高容量な電池と認識される一方で、正負極活物質自体にリチウムイオンを吸蔵・脱離するために充放電サイクルの劣化が早期に起こってしまう。
【0005】
一方、電気二重層キャパシタは、正極、負極共に活性炭を主体とする分極性電極にて構成されているために容量は低いながらも、急速な充放電を可能にし、かつ充放電サイクルにおける高い信頼性を確保出来ている。
【0006】
しかしながら、分極性電極と電解液の界面に形成される電気二重層を利用することで安定した電源を構成する電気二重層キャパシタの電気エネルギーは1/2CV2で表されることから、より高い電圧で作動させる電気化学系が求められている。ここで、Cは静電容量[ファラッド]、Vは電圧[ボルト]である。
【0007】
電気二重層キャパシタの蓄電システムにおける容量向上の為に近年研究されたシステムとしては、正極にPFPT(ポリ−p−フルオロフェニルチオフェン)を使用し、負極に活性炭を使用するものが提案されている。また、正極に活性炭を使用し、負極にチタン酸リチウムを使用するもの、あるいは、正極に活性炭を使用し、負極が黒鉛系炭素というものが提案されている。しかしながら、これら提案の蓄電システムにおいては、充放電サイクル初期の劣化、急速充放電による容量低下、黒鉛系炭素へのリチウムイオンの挿入脱離の繰り返しによる構造の劣化の可能性が報告されている。例えば、特許文献1には、電気二重層キャパシタの電極材料となる特殊な炭素材、及びその製造方法について提案されている。
【0008】
特許文献2には、(002)ピークのX線回折での半値幅が0.5〜5.0°である黒鉛系炭素材料を正極及び負極の両電極の主成分として含む電気二重層キャパシタについて提案されているが、実施例に示されているように、電気二重層キャパシタを作製した後に水蒸気賦活処理の代わりに、20分〜5時間、3.8Vの高電圧を印加して使用することを特徴としている。
【0009】
さらに、特許文献3には、正極の炭素材料として、ホウ素またはホウ素化合物を含有する炭素材料を熱処理して得られるホウ素含有黒鉛を使用し、負極の炭素材料として活性炭を使用した電気二重層キャパシタが提案されている。特許文献3では、正極おけるアニオンのインターカレーション反応を推定しているが、充放電過程の詳細は明らかにされていない。またホウ素含有黒鉛の比表面積等の物理的性質に関する詳細も明らかにされていない。
【0010】
さらに特許文献4にも、正極活物質として黒鉛を使用し、負極の活物質として黒鉛または活性炭を使用する電気二重層キャパシタが提案されているが、キャパシタ容量が正極および負極でのイオンの吸脱着によって発現するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−199767号公報
【特許文献2】特開2002−151364号公報
【特許文献3】特開2004−134658号公報
【特許文献4】特開2005−294780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、従来正極として黒鉛や活性炭を使用した非水系の電気二重層キャパシタの提案はあったが、実際に使用できる蓄電容量およびエネルギー容量が十分ではなく、また充放電過程の適正な制御がされていないためにサイクル特性が不十分であった。
【0013】
本発明は従来の鉛電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、電気二重層キャパシタ等を代替することが可能で、実質的に利用できる蓄電容量およびエネルギー容量が大きく、かつ充放電サイクルにおける信頼性が高い、蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の事項に関する。
【0015】
1. 炭素質活物質を含有する正極および負極、オニウム塩を含有する非水電解液、並びにセパレータを備えた蓄電デバイスであって、
前記正極における電気化学的充電過程が、遷移電圧を境にして、低電圧側領域における前記オニウム塩のアニオンの吸着過程と、高電圧側領域における前記オニウム塩のアニオンのインターカレーション過程との2段階逐次充電過程を示すことを特徴とする蓄電デバイス。
【0016】
2. 使用時の充放電領域として、前記オニウム塩のアニオンがインターカレーションしている電圧領域のみが利用されることを特徴とする上記1記載の蓄電デバイス。
【0017】
3. 前記遷移電圧が、1.5V〜2.5Vの範囲に設定されることを特徴とする上記1または2記載の蓄電デバイス。
【0018】
4. 前記正極の活物質として黒鉛質材料が使用され、
前記負極の活物質として、正極の活物質として使用される黒鉛質材料より比表面積の大きい炭素質材料が使用されることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【0019】
5. 前記正極の活物質として使用される黒鉛質材料のd(002)層間距離が0.340nm以下であり、比表面積が10m2/g未満であることを特徴とする上記4記載の蓄電デバイス。
【0020】
6. 前記正極の活物質として使用される黒鉛質材料が、菱面体構造を含有しないことを特徴とする上記5記載の蓄電デバイス。
【0021】
7. 前記オニウム塩のアニオンが、PF6−およびBF4−の少なくとも1つを含むことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【0022】
8. 上記1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、前記オニウム塩のアニオンがインターカレーションしている電圧領域のみを使用することを特徴とする蓄電システム。
【0023】
9. 前記オニウム塩のアニオンがインターカレーションしている電圧領域のみを使用時の電圧として制御する電圧制御機構を有する上記8記載の蓄電システム。
【0024】
10. 上記1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、
正極の活物質が黒鉛質材料であり、
蓄電デバイスとしての使用時の充電時に、正極容量が47mAh/g〜31mAh/gの範囲となるように、且つ黒鉛質材料の層間距離が0.434nm〜0.337nmの範囲になるように充電電圧を制御することを特徴とする蓄電システム。
【0025】
11. 上記10記載の蓄電システム、または上記1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、
蓄電デバイスとしての使用時において、充電時の正極電位が対Li+/Li電極基準で、5.2V以下の範囲で制御することを特徴とする蓄電システム。
【0026】
12. 上記10または11記載の蓄電システム、または上記1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、
蓄電デバイスとしての使用時において、充電電圧3.2V以下の範囲で使用されることを特徴とする蓄電システム。
【0027】
13. 充電前の黒鉛質材料の層間距離が0.336nm以下であることを特徴とする上記10〜12のいずれかに記載の蓄電システム。
【0028】
14. 充電曲線の1.8Vから3V間において、前記黒鉛質材料の静電容量が390F/g以上であることを特徴とする上記10〜13のいずれかに記載の蓄電システム。
【0029】
15. 上記1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスまたは上記8〜14のいずれかに記載の蓄電システムを備えた電子機器。
【0030】
16. 上記1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスまたは上記8〜14のいずれかに記載の蓄電システムを備えた動力システム。
【0031】
17. 上記1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスの電解液分解開始電圧を制御する方法であって、この分解開始電圧の制御を、前記遷移電圧を変更することにより行うことを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、非水系の電気二重層キャパシタに特徴的な高速充放電という性質を保持したまま、従来の電気二重層キャパシタに比べて高電圧で利用可能で、実質的に利用できる蓄電容量およびエネルギー容量が大きく、充放電サイクルにおける信頼性が高い蓄電デバイスを提供することができる。
【0033】
本発明の蓄電デバイスでは、充放電過程が正極活物質へのアニオンの可逆的吸着と可逆的インターカレーションの2段階過程を示すために、電解液の分解反応を抑制しつつ、インターカレーション領域を使用して高容量、特に高エネルギー容量の蓄電デバイスを実現できる。本発明の蓄電デバイスは、分極性電極に電解質が吸着して容量が発現する電気二重層キャパシタの範疇には入らないが、従来の電池に比べて急速な充放電が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1A】本発明の蓄電デバイスの充放電容量と電圧の関係を示すグラフ(クロノポテンショグラム)である。
【図1B】従来の電気二重層キャパシタの充放電容量と電圧の関係を示すグラフ(クロノポテンショグラム)である。
【図2】実施例1の充放電容量と電圧の関係を示すグラフ(クロノポテンショグラム)である。
【図3】実施例1のクロノポテンショグラムに基づいて、充放電容量の電圧微分を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図4】実施例1のデバイスの充電時の各電圧において測定したX線回折パターンを示す図である。
【図5】実施例1のデバイスの放電時の各電圧において測定したX線回折パターンを示す図である。
【図6】実施例2の充放電容量と電圧の関係を示すグラフ(クロノポテンショグラム)である。
【図7】実施例2のクロノポテンショグラムに基づいて、充放電容量の電圧微分を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図8】参考例の充放電容量と電圧の関係を示すグラフ(クロノポテンショグラム)である。
【図9】Li金属を対極兼、基準極とする黒鉛へのアニオンインターカレーションのサイクリックボルタングラムである。
【図10】充電前と、対Li+/Li電極5.2V充電の黒鉛のX線回折パターンを示す図である。
【図11】サイクル特性を示すグラフである。
【図12】三極式セルを用いた正極、負極の電圧変化を示すグラフである。
【図13】正極の電圧変化を示すグラフである。
【図14】負極の電圧変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1Aに、本発明の蓄電デバイスの代表的な充放電特性を示す。また、図1Bに、従来の電気二重層キャパシタとして正極負極に活性炭を使用したデバイスの充放電特性を、図1Aに示した本発明のデバイスの特性と合わせて示す。これらの充電容量−電圧特性曲線(クロノポテンショグラム)のグラフでは、横軸が充放電容量を表し、縦軸が電圧を表す。例えば定電流充電を行ったとすると、横軸は充電容量を表すと共に充電時間にも対応する。
【0036】
本発明の蓄電デバイスでは、図1Aに示すように、充電時に電圧Vtを境にして充電容量−電圧特性曲線の傾斜が大きく変化する。即ち、後述する実施例で示すように、電圧Vtまでは正極活物質にオニウム塩のアニオンが吸着し、電圧Vt以上でアニオンが正極活物質にインターカレーションしている。本出願では、充電過程が吸着からインターカレーションに変わる電圧Vtを、遷移電圧と定義する。
【0037】
遷移電圧Vtまでの吸着による充電では、比表面積の小さな正極活物質に吸着されるアニオン量は少ないので充電容量は小さく、充電容量−電圧特性曲線には、大きな傾斜が観察される。その後のインターカレーションによる充電過程では、比較的電圧の変化が小さく、大きな電荷を取り込むことができるので、大きな蓄電容量を発現することができる。
【0038】
さらにインターカレーションを詳細に検討すると、遷移電圧Vt付近で、正極活物質表面に吸着したアニオンが急速にインターカレーションする過程と、その後の通常の本格的なインターカレーション過程に分けられる。遷移電圧Vt付近での吸着アニオンのインターカレーションによる反応電流は小さいが、狭い電圧域で起きるため単位電圧当たりの容量変化量を調べると、この電圧域において反応電流は極大値またはショルダーとして検出される。ただし、正極に用いる黒鉛質材料の比表面積が小さい場合、インターカレートする吸着アニオン量が少ないために、明確にピークとして検出され難いこともある。また、この蓄電デバイスを遷移電圧以上の電圧領域のみで利用するシステムでは、その充放電の際には当然ながら見かけ上は遷移電圧Vtが観察されない。
【0039】
放電時には、放電量の増加(残存容量の減少)と共に、脱インターカレーションにより緩やかに電圧が減少し、ほとんどのアニオンが脱インターカレーションしたところで急激に電圧が低下する。しかし、充電時とは異なり、脱インターカレーション過程と脱着過程が、互いに明瞭に区別される2段階逐次過程としては発現しないために、クロノポテンショグラム上には明確な遷移電圧は観察されない。
【0040】
本発明の蓄電デバイスでは、使用時の充放電領域として、インターカレーションした状態にて、使用されることが好ましい。図1Aでは、放電時に遷移電圧Vt以下の1.5Vまで使用可能であることを示しているが、この状態でもインターカレーションしたアニオンが残っており、ここから再充電を始めた場合には、吸着過程を経ることなく遷移電圧Vt以上から充電が開始される。充電時の遷移電圧Vtと放電時にインターカレーション状態にあって利用できる電圧の差は、充放電時の電流と内部抵抗等の影響も受け、通常0.5V程度である。
【0041】
本発明の蓄電デバイスでは、このように放電時において高い電圧を保ちながら放電していくので、電子機器に必要とされる電圧領域において実際に利用できる蓄電容量が大きい。また、取り出せるエネルギー容量は、クロノポテンショグラムの積分に対応するが、本発明のデバイスは、高い電圧で放電するために、エネルギー容量が大きいことも特徴である。
【0042】
一方、従来の正極および負極に活性炭を使用した電気二重層キャパシタでは、図1Bに示すように、充放電のクロノポテンショグラムがなだらかである。これは、低電圧にても充電される容量が大きいことを示しており、本発明の蓄電デバイスに比べて、この例では1.5V以下の範囲で利用できる容量が大きい。しかし、蓄電デバイスを、1.5V以上で動作する電子機器に搭載したときに、1.5V以下の範囲で充電容量が大きいことは何ら意味がない。即ち、本発明の蓄電デバイスは、実際に使用する比較的高電圧の範囲での充電容量、特にエネルギー容量が大きいことが特徴である。
【0043】
本発明の蓄電デバイスの遷移電圧Vtは、従って、実際の電子機器で使用される電圧を考慮して定められることが好ましく、通常1.5V以上に設定されることが好ましい。
【0044】
遷移電圧Vtは、正極活物質の容量(capacity)と負極活物質の容量(capacity)、特にその比に依存することから、両者の組み合わせで遷移電圧Vtを調節することができる。正極活物質の容量が大きい場合、遷移電圧Vtは低くなり、負極活物質の容量が大きい場合には、遷移電圧Vtは高くなる。
【0045】
さらに、本発明の蓄電デバイスでは、例えば正極活物質および負極活物質の容量を調整し、即ち、遷移電圧Vtを調節することで、充電時(即ち正極活物質へのインターカレーション時)に、正極における電解液の分解反応を抑制し、サイクル特性を改善することもできる。本発明者は、従来の正極に黒鉛を用いた電気二重層キャパシタでは、正極上で電解液(溶媒)の分解が起こり、これに伴う分解生成物の有機質が負極側に移動して負極表面を被覆する結果、負極表面の有効な電気二重層がサイクル毎に減少し、これが容量維持率の減少、すなわちサイクル特性低下をもたらすことを見出した。電解液の分解の開始電圧は種々の要因に依存するが、活性炭の種類や表面積、正極と負極の容量比等に依存する。この例の本発明の蓄電デバイスでは、3.2V程度(図1A)、一方、従来の電気二重層キャパシタでは、2.3V程度(図1B)からそれぞれ分解反応電流が観察されている。
【0046】
正極上で電解液(溶媒)の分解を抑制するための方法の1つとして、充電の間に正極側の電位が分解電位を超えないようにすることが有効である。本発明の蓄電デバイスでは、例えば負極と正極の容量比を大きくして、遷移電圧を高く設定すると、充電容量が増大していく間に、正極電位の上昇が小さく、負極電位の絶対値の大きい範囲まで充電が可能になる。その結果、デバイス電圧で見た分解電圧が上昇する。そのために、蓄電デバイスの使用可能な電圧が高くなることに加え、電解液分解反応が十分に抑制された電圧範囲で使用することができる。負極上への有機物沈積が抑制され蓄電デバイスの容量低下が改良される結果、サイクル特性が向上する。
【0047】
サイクル特性を改善するためには、遷移電圧Vtを1.5V〜2.5Vに設定することが好ましく、特に好ましくは1.7V〜2.3Vである。遷移電圧が1.5Vより低いと蓄電容量は大きいが、正極での電解液分解を抑制できずサイクル特性は低下する傾向が強い。遷移電圧が2.5Vを超える場合、正極での電解液の分解は完全に抑制されサイクル特性は良好になるが、蓄電容量が小さい。
【0048】
具体的には、図1Aおよび図1Bで、正極活物質と負極活物質の重量比を1/1とした場合、2200m2/g以上の高表面積を有する活性炭を両極の活物質として用いた電気二重層キャパシタの3.5Vからの0Vまでの放電容量は本発明の蓄電デバイスを上回る。しかし、充電時に2.3Vで反応電流が認められるため、充電電圧は2.3Vまでに限定される。一方、本発明の蓄電デバイスでは、3.2V程度まで充電できる。従って、実際に利用する電圧範囲を、例えば1.5V以上とすると、本発明の蓄電デバイスで利用できる充放電容量は3.2V〜1.5Vの範囲であるために、2.3V〜1.5Vの範囲しか利用できない電気二重層キャパシタの充放電容量を上回る。さらに放電エネルギーで比較すると本発明の蓄電デバイスのそれは電気二重層キャパシタの3倍以上となる。
【0049】
以上のように、正極活物質における充電が、吸着とインターカレーションの2段階過程を示すことにより、特にその遷移電圧Vtを比較的高め、例えば1.5V〜2.5Vの範囲に設定することにより、本発明の蓄電デバイスは、利用できる放電容量および放電エネルギーを大きくとることができる。さらに電解液の分解も考慮すると、実装置で利用できる放電容量および放電エネルギー、並びにサイクル特性の点で本発明の蓄電デバイスは極めて優れている。
【0050】
本発明の蓄電デバイスは3V以上の高電圧でも作動し、高容量で充放電が可能であることから、高エネルギーを蓄電することが可能である。その用途はパソコンのバックアップ電源、携帯電話、携帯用モバイル機器、デジタルカメラの電源などに用いることが可能である。また、本発明の蓄電デバイスは電気自動車やHEVの動力システムにも適用することができる。
【0051】
特に高電圧を必要とする動力系で用いられる場合、本蓄電デバイスの放電電圧は1.5V以上、望ましくは2V以上でカットすることが好ましい。
【0052】
従って本発明の蓄電デバイスを使用する蓄電システムでは、デバイスとしての実使用時に、充放電領域がインターカレーションの領域のみとなるように使用することが好ましい。ここで、蓄電システムとは、本発明の蓄電デバイスに加えて、蓄電デバイスが使用時に機能するための周辺部材を含むものであり、例えば蓄電デバイスの正極と負極間の電圧を検知する手段等を備える。本発明の蓄電システムでは、蓄電デバイスの充放電がインターカレーションの領域のみとなるように、所定電圧まで低下したときにシャットダウンするような、公知の電圧制御手段を備えることが好ましい。
【0053】
<本発明の蓄電システムの実施形態>
次に、本発明の蓄電デバイスを使用する蓄電システムの中でも、特にサイクル特性が改良されるように、条件および使用方法等が設定される実施形態について説明する。
【0054】
本実施形態の蓄電システムは、正極の活物質が黒鉛質材料であり、蓄電デバイスとしての正極容量が47mAh/g〜31mAh/gの範囲であり、蓄電デバイスとしての使用時の充電時に、黒鉛質材料の層間距離が0.434nm〜0.337nmの範囲になるように充電電圧を制御する。
【0055】
正極の黒鉛質材料の層間距離は、アニオンのインターカレーションにより変化する。充放電に伴うインターカレーションとデインターカレーションは可逆的な反応であるため、充電によって拡大した黒鉛層間距離の放電によってもとの層間距離に戻る。しかし充電電位が高くなり、イオン半径の大きなアニオンのインターカレーション量が増えると、インターカレーションとデインターカレーションの繰り返しにより黒鉛が歪み、黒鉛層間から抜け出ないアニオンが増加したり、放電後の黒鉛層間距離は充電前の層間距離に戻らない現象が認められる。本発明者の検討では、アニオンが黒鉛層間にインターカレーションしたステージ数で表すと第4ステージ、つまり黒鉛グラフェン4層毎に1層のアニオンがインターカレーションした層が存在する状態である第4ステージがサイクル特性を良好に保ちつつアニオンがインターカレーション出来る上限である。第4ステージの電位は、ほぼ5.2V(対Li+/Li電位基準)であり、第4ステージのアニオン黒鉛層間化合物の理論容量は47mAh/gである。尚、黒鉛に対して、多段階インターカレーションが起こることは、インターカレーション電位の測定によりJ.A.Seel and J.R. Dahn J. Electrochem. Soc.,
147, 899,(2000)によって示されている。
【0056】
さらにインターカレーションが進んだステージ構造(第3〜第1ステージ)になると、可逆的なインターカレーションは出来なくなり、かつ電解液の分解も併進するため、次第に容量劣化、つまりサイクル劣化を引き起こす。本発明のデバイスで第4ステージのインターカレーションが起きる充電電圧は正極と負極の容量比によって異なるが、ほぼ3.2V〜3.5Vである。第4ステージのインターカレーションとデインターカレーションを利用することで、本発明の蓄電デバイスの正極容量を47mAh/g〜31mAh/gの範囲に制御する。
【0057】
黒鉛層間距離の増大はX線回折(XRD)により確認できる。BF4−をアニオンに用いた場合、充電電位5.2V(対Li+/Li電位基準)では黒鉛の層間距離は0.434nmに増加する。この場合のステージ数は4である。従って、良好なサイクル特性を維持できる範囲としては、デバイスとしての実際の使用時において、フル充電されたときでも、黒鉛質材料の層間距離が0.434nm以下の範囲で使用されるように充電電圧を制御することが好ましい。但し、インターカレーションのためには黒鉛質材料の層間距離が広がる必要があるので、0.434nm〜0.337nmの範囲となるように充電電圧を制御して使用することが好ましい。本システムで、さらに好ましくは、層間距離が、0.429nm〜0.337nmの範囲となるように制御する。
【0058】
サイクル特性は、上述のような黒鉛材料の歪みの他に、電解液の分解反応にも起因するため、使用時の正極側のフル充電時の電位は、電解液の酸化分解電位によっても制限される。電解液に使用される溶媒にもよるが、例えば充電電圧5.5V(対Li+/Li電位基準)以上では分解反応が顕著に観察できる。したがって、充電電圧は5.5V(対Li+/Li電位基準)以下、さらに5.2V(対Li+/Li電位基準)以下とすることが好ましい。さらには5.0V(対Li+/Li電位基準)以下とすることが好ましい。これらの条件は、本実施形態に限られず、本発明の他の蓄電システムにおいても好ましい。この最適充電電位はLi+/Li電位でサイクリックボルタンメトリー(CV法)を行うことで決定できる。
【0059】
電解液の分解は、正極側での電解液の酸化分解反応に加え、負極側では電解液の還元電位を超えることによっても生じる。溶媒分解の起きない電位の範囲で正極と負極の容量バランスをとることが必要である。例えば負極容量を大きくすることによって正極電位が増大し、1から2ステージ構造をとる結果、重量当たりの容量は186から93mAh/gと大きくなるが、正極容量に対して負極容量が所定の容量を超えると正極電位の増大に起因する電解液の分解を招くこととなり、サイクル特性は著しく低下する。
【0060】
そこで、充電電圧を最適化し、かつ正極活物質と負極活物質の容量バランスを調整することにより、デバイス容量を確保し、かつ高電圧動作とサイクル特性を具備したデバイスを設計することが出来る。例えば充電電圧を3.2Vとし、ステージ数を4以下(即ち、4ステージ、5ステージ、6ステージ等)とすることで、正極容量としては47mAh/g以下かつ31mAh/g以上程度に保ったまま、高容量と高電圧と高サイクル特性を有するデバイスとすることが可能である。尚、充電電圧が3.2V以下という条件は、本実施形態に限られず、本発明の他の蓄電システムにおいても好ましい。
【0061】
ここで、使用時の蓄電デバイスにおける正極容量は、負極の容量で制御できる。正極でのアニオンインターカレーション容量に比べ負極のカチオン吸着容量は小さいため、現実にはアニオンのインターカレーション量は負極側で分極したカチオン量で決定されるからである。
【0062】
本実施形態の蓄電システムでは、蓄電デバイスとしての正極容量が47mAh/g以下31mAh/g以上の範囲となるまで充電した際に、正−負極間の端子間電圧が所定の電圧(例えば3.2V)となるような負極活物質の容量を選択することで、正極の充電電位を好ましい範囲に保ちながら充電が可能になるため、高容量と高電圧と高サイクル特性が満足される。
【0063】
そこで、このような条件を満たすために、例えば次のようにして正極、負極のパラメータを決めていくことができる。
【0064】
まず、正極の静電容量を設定する。負極の容量に支配されない正極の容量は充放電容量と充放電電圧が直線関係にある時の電圧変化を測定することで推測できる。正極活物質と負極活物質のそれぞれの重量をWc、Wa、それぞれの静電容量をFc、Faそれぞれの充電に伴う電圧変化をVc、Vaとした時、Wc×Fc×Vc=Wa×Fa×Vaが成り立つ。本発明に用いられる活物質の容量比較を容易にするために、三極式セルで測定を行い、かつWc=Waを仮定すると、通常Vc/Va=1/3から1/12となる。すなわちFcはFaの約3から12倍である。本発明で負極活物質として用いられる活性炭の静電容量は130〜160F/g程度なので、黒鉛の静電容量に相当する電圧変化分に対する容量は390〜1900F/gとなる。従って、この実施形態では、黒鉛としてインターカレーションしたときに390F/g以上の静電容量を発現するような材料を選ぶことが好ましい。特に、充電時に1.8V〜3Vの範囲で、390F/g以上の静電容量が発現することが好ましい。特に好ましくは450〜1300F/gである。また、通常の黒鉛では、一般的には、2000F/g以下であり、通常は1600F/g程度あれば十分に実用的である。
【0065】
次に、負極側の電位を決めることによって充電電圧を決定する。前述のとおり、負極の電位を下げ過ぎると、言い換えると過度の充電を行うと、負極側で溶媒の還元分解が起きる。本発明の蓄電デバイスの充放電を参照電極を用いた三極式セルで観察すると、充電電圧変化は殆ど負極側の電位変化であり、前述の如く、正極の電位変化は僅かであることが分かる。このことは正極黒鉛のインターカレーションに伴う反応容量が負極に用いる活性炭の吸着静電容量に比べはるかに大きいことに由来する。単位電圧変化に対する容量変化の割合を静電容量と定義すると、三極式セルを用いた充放電試験の結果から、正極活物質の静電容量は負極活物質のそれに比べてはるかに大きい。
【0066】
そこで正極の静電容量をFc、正極での溶媒分解電位をPc、インターカレーションを開始する電位をPtとするといずれもこの値はリチウム対極の充放電試験と三極式充放電試験で求められている値である。また負極材料とする活性炭の静電容量をFa、負極での溶媒分解電位をPaとすると、これらの値は既知である。ここで、本発明の蓄電デバイスの充電電圧を3.2Vとしたとき、充電時のインターカレーションによる単位重量の正極電圧の変化をVcとすると、負極電圧の変化Vaは
Va=Fc×Vc/Fa
Vc < Pc−Pt ・・・(1)
Vc+Pt−Pa < 3.2 ・・・(2)
Vcは(1)と(2)を同時に満足する必要があるから、これらを満たすようにVc決定する。
【0067】
Vcが決まれば、Fcは前述のとおり、390F/g以上が好ましいので、必要な正極材料の容量Fc×Vcが決まり、これと等しい負極材料の容量Fa×Vaが設定できる。実際のデバイスでは、このように設定した負極の容量と充電電圧により、正極の容量と充電電位が決まっていく。ここでは、正極の重量Wcおよび負極の重量Waに関して、Wc=Waとしたが、重量比を多少変更することで正極と負極の容量のバランスをとってもよい。
【0068】
このような設計により、正極と負極のバランスをとり、正極容量としては47mAh/g以下31mAh/g以上程度に保ったまま、充電時の正極を所定の電位の範囲内、例えば充電電圧を3.2V以下とすることができる。その結果、フル充電時に黒鉛質材料の層間距離が0.434nm以下かつ0.337nm以上の範囲での動作が可能になる。
【0069】
<各材料の説明>
次に、本発明の蓄電デバイスに使用される具体的材料等を説明する。本発明の蓄電デバイスには、正極活物質、負極活物質、バインダー、導電材、集電体、セパレータ、および電解液などの材料が使用される。蓄電デバイスの形状としては捲回式、スタック式、葛折などが挙げられる。また、電気容量取り出しのシステムとしてはEcaSS(商標)などの従来の技術をいずれも好適に転用することができる。
【0070】
本出願において、黒鉛とは、炭素原子がSP2混成軌道による六角網平面を構成しており、この2次元格子構造が規則的に積層したものを基本構造単位(結晶子)にしているものをいい、強い異方性を持っている。黒鉛質材料とは、黒鉛質が十分に発達しており一般に「黒鉛」として認識される範囲の材料であり、本出願においては、黒鉛を含む。
【0071】
本発明では、正極および負極の両方に炭素材料を活物質として使用する。正極の活物質として、前述の逐次的2段階過程を示す材料としては、黒鉛質材料が挙げられる。正極の活物質として用いられる黒鉛質材料は、天然黒鉛、人造黒鉛いずれでもよく、より高容量を得ようとした場合、高結晶性の黒鉛を用いることが望ましい。良好なインターカレーションを実現するためには、黒鉛質材料のd(002)層間距離が、0.340nm以下が好ましく、より好ましくは0.339nm以下である。また、黒鉛質材料のd(002)層間距離は、好ましくは0.335nm以上である。また、通常はホウ素を含有しない方が好ましい。
【0072】
尚、特にサイクル特性を向上させた特定の実施形態においては、特に良好なインターカレーションを実現するためには黒鉛質材料の層間距離が0.336nm以下が好ましく、より好ましくは0.3355nm以下である。
【0073】
または黒鉛質材料の結晶構造には、六方晶構造(ABAB・・積層周期)と菱面体構造(ABCABC・・積層周期)がある。多くの場合、菱面体構造は粉砕によって導入されるが、インターカレーションによる高容量を得るためには、菱面体構造を有さない黒鉛であることが好ましい。
【0074】
また、インターカレーションを急速に行うためには黒鉛質材料の粒子の外表面積は大きいほど好ましい(即ち、黒鉛粒子は小さいほど好ましい)が、粉砕時に菱面体構造が導入され、黒鉛質材料の結晶性が損なわれることが多い。したがって好ましい黒鉛質材料の平均粒子径は3〜40μmであり、さらに好ましくは6〜25μmである。
【0075】
黒鉛質材料の比表面積については、例えばジェットミル等を用いて、菱面体構造が導入されないようにして黒鉛質材料の結晶性を維持したままで粉砕すると、比表面積1〜20m2/gに調整することが可能であるが、正極表面での溶媒の分解速度を下げるためには10m2/g以下、更に好ましくは2〜5m2/gであることが好ましい。
【0076】
さらに、蓄電デバイスの単位体積当たりの蓄電容量を増加させるためには黒鉛質材料を圧密化処理したり、黒鉛質材料から微細粒子を除去したりすることも有効である。圧密化処理された黒鉛のタップ密度は0.8〜1.4g/cc、真密度は2.22g/cc以上が好ましい。また実質的に1μm以下の黒鉛質材料の割合を10%以下とすることによっても黒鉛の嵩密度の低下が抑制されかつ表面積の増大が抑制される。
【0077】
負極の活物質として使用される炭素系材料としては、充放電の際にイオンの吸着のみ、即ちインターカレーションが生じないような材料が選ばれることが好ましく、活性炭または黒鉛質材料が挙げられる。正極の活物質材料より、比表面積の大きな材料が好ましい。黒鉛質材料を使用する場合には、正極の活物質の材料と異なるものが好ましく、特に正極に使用される黒鉛質材料より比表面積の大きなものが選ばれる。活性炭としては、公知のキャパシタ用活性炭を使用することができる。例えば薬品賦活した椰子殻活性炭をはじめ、水蒸気賦活した椰子殻活性炭、フェノール樹脂活性炭およびピッチ活性炭、またはアルカリ賦活したフェノール樹脂活性炭およびメソフェースピッチ活性炭を用いることができる。通常の活性炭のほかに、高表面積化した黒鉛質材料、CVD処理した活性炭または黒鉛質材料等を用いることもできる。負極の活物質として使用される炭素系材料は、比表面積が300m2/g以上であることが好ましく、特に450m2/g〜2000m2/gの高表面積を有することが好ましい。通常は、負極活物質として活性炭を使用することが好ましいが、容積あたりの蓄電容量の高密度化を求める場合には、高表面積黒鉛質材料は圧密化して嵩密度を高めることができるので好適である。
【0078】
バインダーについても特に限定はなく、PVDF、PTFE、ポリエチレンおよびゴム系のバインダー等を用いることができる。
【0079】
例えばゴム系のバインダー成分としては、EPT、EPDM,ブチルゴム、プロピレンゴム、天然ゴムなどの脂肪族に代表されるゴム、またはスチレンブタジエンゴム等の芳香族ゴムを含有したゴムが挙げられる。これらのゴムの構造にはニトリル、アクリル、カルボニル等のヘテロ含有基質またはシリコンを含んでいても良く、さらには直鎖や分枝を制限するものではない。なおこれらを単独または複数の混合で用いても良好なバインダーとなり得る。
【0080】
また、必要に応じてカーボンブラック、ケッチェンブラック等の導電材を添加してもよい。
【0081】
集電体としては一般に純アルミ箔が用いられるが、純アルミであっても銅、マンガン、シリコン、マグネシウム、亜鉛などの金属を単独または複数添加したアルミニウムであっても良い。またステンレス、ニッケル、チタンなどでも同様に用いられる。また導電性の増幅と強度確保のために上記混合物やその他の元素を添加したものでも使用できる。この時これらの基質の表面にエッチングなどで凹凸を付与したり、導電性の金属やカーボンを基質に埋め込むか、またはコートしても良い。これらの集電体は箔でもメッシュ状でも用いられる。
【0082】
セパレータとしてセルロース紙、ガラス繊維紙のほかに、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド微多孔膜やそれらが層状に構成された多層膜が用いられる。またこれらのセパレータ表面にPVDFやシリコン樹脂、ゴム系樹脂などをコーティングすることでも代用可能であるし、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウムなどの金属酸化物の粒子が埋包してあっても良い。もちろんこれらのセパレータは正負極間に一枚であってもそれ以上あっても問題なく、2種類以上のセパレータを任意に選択して使用しても良い。
【0083】
電解液として用いる有機溶媒は、プロピレンカーボネート等の環状炭酸エステル、γ―ブチロラクトンなどの環状エステル、N−メチルピロリドンなどの複素環状化合物、アセトニトリルなどのニトリル類、その他スルホランやスルホキシド等の極性溶媒が利用出来る。
具体的には以下の化合物である。
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ―ブチロラクトン、δ―バレロラクトン、N―メチルピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、リン酸トリメチル。
これらの溶媒は単独であっても2種類以上の混合であっても使用出来る。
【0084】
非水電解液中に含有される電解質としては、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ピペリジニウム塩、イミダゾリウム塩、ホスホニウム塩などのオニウム塩が好ましく、これらの塩のアニオンとしてはホウフッ化物イオン(BF4−)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6−)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等のフッ素化合物が好ましい。
具体的には以下の化合物である。
ホウフッ化テトラメチルアンモニウム、ホウフッ化エチルトリメチルアンモニウム、ホウフッ化ジエチルジメチルアンモニウム、ホウフッ化トリエチルメチルアンモニウム、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラプロピルアンモニウム、ホウフッ化トリブチルメチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、ホウフッ化テトラヘキシルアンモニウム、ホウフッ化プロピルトリメチルアンモニウム、ホウフッ化ブチルトリメチルアンモニウム、ホウフッ化ヘプチルトリメチルアンモニウム、ホウフッ化(4−ペンテニル)トリメチルアンモニウム、ホウフッ化テトラデシルトリメチルアンモニウム、ホウフッ化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ホウフッ化ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、ホウフッ化オクタデシルトリメチルアンモニウム、1,1’−ジフルオロ−2,2’−ビピリジニウム ビステトラフルオロボレート、ホウフッ化N,N−ジメチルピロリジニウム、ホウフッ化N−エチル−N−メチルピロリジニウム、ホウフッ化N,N−ジエチルピロリジニウム、ホウフッ化N,N−ジメチルピペリジニウム、ホウフッ化N−エチル−N−メチルピペリジニウム、ホウフッ化N,N−ジエチルピペリジニウム、ホウフッ化1,1−テトラメチレンピロリジニウム、ホウフッ化1,1−ペンタメチレンピペリジニウム、ホウフッ化N−エチル−N−メチルモルフォリニウム、ホウフッ化アンモニウム、ホウフッ化テトラメチルホスホニウム、ホウフッ化テトラエチルホスホニウム、ホウフッ化テトラプロピルホスホニウム、ホウフッ化テトラブチルホスホニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルトリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ビニルトリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ドデシルトリメチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロヒ酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸テトラエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドテトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラエチルホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラブチルホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、ホウフッ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、トリフルオロメタンスルホン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、ヘキサフルオロリン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、ホウフッ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、トリフルオロメタンスルホン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、ヘキサフルオロリン酸1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、ホウフッ化1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、トリフルオロメタンスルホン酸1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、ヘキサフルオロリン酸1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、ホウフッ化1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、ホウフッ化1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、トリフルオロメタンスルホン酸1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、ホウフッ化1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、トリフルオロメタンスルホン酸1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、ヘキサフルオロリン酸1−ブチルピリジニウム、ホウフッ化1−ブチルピリジニウム、トリフルオロメタンスルホン酸1−ブチルピリジニウム、ヘキサフルオロリン酸1−ヘキシルピリジニウム、ホウフッ化1−ヘキシルピリジニウム、トリフルオロメタンスルホン酸1−ヘキシルピリジニウム、ヘキサフルオロリン酸1−ブチル−4−メチルピリジニウム、ホウフッ化1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−フルオロピリジニウムピリジン ヘプタフルオロジボレート、ホウフッ化1−フルオロピリジニウム。
これらの電解質は単独であっても2種類以上の混合であっても使用出来る。
【実施例】
【0085】
以下に本発明の実施例を説明する。ただし以下に示す実施例は例示であって、これらに限定されるものではない。
【0086】
<実施例1>
正極活物質として菱面体構造を含まないTIMCAL社製黒鉛ティムレックスSFG44(d(002)層間距離0.3354nm、平均粒子径24μm、表面積5m2/g)84部に対し電気化学社製アセチレンブラック8部を粉体混合後、呉羽化学社製PVDF8部のNMP溶液でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚み100ミクロンの電極を調製した。負極活物質としてクラレケミカル社製活性炭RP−20、平均粒子径2μm、表面積1800m2/gの84部に対しアセチレンブラック8部を粉体混合後、PVDF8部のNMP溶液でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚み100ミクロンの電極を調製した。
【0087】
両電極の乾燥後目付け比、正極活物質/負極活物質は1/1であった。両電極を4cm2に切り出し、乾燥空気中で、アルミラミネート製袋にワットマン製ガラスろ紙を介して両電極の塗工面を向き合わせて設置し、1.5モル/リッター濃度のTEMABF4塩(トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート)のPC溶液を注入後、アルミラミネート製袋の外側から両極を加圧してデバイスを作成した。
【0088】
クロノポテンショメトリーで充放電容量を測定した充放電容量と電圧の関係を図2に示す。1.75Vまでの充電容量は1.5mAh/gと僅かであり、これは負極では電解質カチオンの吸着、正極では電解質アニオンの吸着に由来する容量である。1.75V以上に大きな充電容量61.5mAh/gが観察された。正極活物質重量ベースの放電容量は49.8mAh/gであり、初回の充放電の効率は79%であった。また3.5Vから1.5Vまでの放電容量は全放電容量の98%であった。容量変化量を電圧変化量で除してdQ/dVを算出し、サイクリックボルタンメトリー法に相当するデバイスの電気化学的特性を調べた。その結果を図3に示す。デバイスを3.5Vまで充電した場合、1.75Vに吸着からインターカレーションに急速に変化する際の電流がショルダーとして認められ、そのあと(高電圧側で)大きな充電容量を発現する反応電流が認められた。
【0089】
デバイスの充放電容量発現の原因を調査するために、黒鉛の構造と電圧との関係を調べた。ポリエチレン製袋を用いた他は同様の方法でデバイスを調製した後、1mAで3.5Vまで充電し、所定電圧に達した後ポリエチレン袋の上からリガク社製XRD装置を用いin−situでデバイスの正極活物質である黒鉛の002回折線を測定した。測定は以下の条件で行った。管球:Cu、出力:50kV―150mA、走査速度:10°/分、スリット:0.5°―0.15mm―0.5°、単色化:湾曲モノクロメーター。
【0090】
充電電圧と黒鉛X線回折パターンとの関係を図4、放電電圧と黒鉛X線回折パターンとの関係を図5に示す。図4の充電では、2Vで黒鉛002回折ピークは充電前の26.5°の位置より低角側に新たに回折線を生じ、充電電圧が高くなるに伴い、低角側の回折線強度が大きくなり、回折線のピークはさらに低角側にシフトする。充電電圧が2.5Vを超えると、充電前の26.5°の回折線は消失する。図5の放電では全く逆の現象が観察され、放電による電圧の低下に伴い黒鉛002回折ピークは高角側にシフトし、放電後の黒鉛の002回折ピークは充電前の回折線の位置と同一の26.5°に現れる。このように充電に伴い黒鉛層間距離は拡大し、放電によりもとの層間距離に可逆的に戻ることが明らかとなった。この充放電に伴う黒鉛層間距離の変化は黒鉛層間距離へのアニオンのインターカレーションを示している。
【0091】
<実施例2>
正極活物質として菱面体構造を含まない日本黒鉛社製天然黒鉛(d(002)層間距離0.3354nm、平均粒子径20.0μm、表面積3.4m2/g)84部に対し電気化学社製アセチレンブラック8部を粉体混合後、呉羽化学社製PVDF8部のNMP溶液でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚み100ミクロンの電極を調製した。負極活物質として日本黒鉛社製黒鉛SP−450(d(002)層間距離3.371nm、平均粒子径1.5μm、表面積403m2/g)の95部に対し電気化学社製アセチレンブラック8部を粉体混合後、ダイセル社製CMC2270を1部、三井―デュポン社製のPTFE4部でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚みの異なる電極を調製した。
【0092】
両電極を4cm2に切り出し、乾燥空気中で、ポリエチレン製袋にワットマン製ガラスろ紙を介して両電極の塗工面を向き合わせて設置し、1.5モル/リッター濃度のTEMAPF6塩のPC溶液を注入後、ポリエチレン製袋の外側から両極を加圧して正極活物質重量/負極活物質重量=1/1.2なるデバイスを作成した。実施例1と同様の方法で充放電容量を測定した結果を図6および図7に示す。正極重量ベースの放電容量は36.3mAh/gであり、1.5V以上の放電容量は34.1mAh/gであり、全放電容量の94%であった。この場合も2V以上でアニオンのインターカレーションによる回折角の低角度へのシフト、すなわち層間距離の拡大が観察できた。
【0093】
<参考例>
TIMCAL社製黒鉛ティムレックスKS6(菱面体構造を含む、d(002)層間距離0.3357nm、平均粒子径24μm、表面積は20m2/g)84部に対し電気化学社製アセチレンブラック8部を粉体混合後、呉羽化学社製PVDF8部のNMP溶液でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚み100ミクロンの電極を調製した。負極活物質としてクラレケミカル社製活性炭RP−20、平均粒子径2μm、表面積1800m2/gの84部に対しアセチレンブラック8部を粉体混合後、PVDF8部のNMP溶液でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚み100ミクロンの電極を調製した。
【0094】
両電極を4cm2に切り出し、乾燥空気中で、ポリエチレン製袋にワットマン製ガラスろ紙を介して両電極の塗工面を向き合わせて設置し、1.5モル/リッター濃度のTEMAPF6塩(トリエチルメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート)のPC溶液を注入後、ポリエチレン製袋の外側から両極を加圧して正極活物質重量/負極活物質重量=1/1.2なるデバイスを作成した。実施例1と同様の方法で充放電容量を測定した結果を図8に示す。正極重量ベースの放電容量は33.3mAh/gであり、1.5V以上の放電容量は28.8mAh/g、全放電容量の86.5%であった。初回の充放電効率は42.6%であった。この場合も1.75V以上でアニオンのインターカレーションによる回折角の低角度へのシフト、すなわち層間距離の拡大が観察できた。
【0095】
<実施例3>
正極活物質としてTIMCAL社製黒鉛ティムレックスKS6(002層間距離0.3357nm、平均粒子径3.4μm、表面積20m2/g)84部に対し電気化学社製アセチレンブラック8部を粉体混合後、呉羽化学社製PVDF8部のNMP溶液でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚み100ミクロンの電極を調製した。
【0096】
負極に金属リチウム、正極に黒鉛電極、セパレーターにガラスろ紙をセットし、1.5モル/リッター濃度のLiBF4塩(リチウムテトラフルオロボレート)のPC溶液を注入してデバイス(ハーフセル)を組み立てた。このデバイスはLi+/Li基準で0Vから6Vまでの電圧でCV法(サイクリックボルタンメトリー)で充放電を行った。
【0097】
サイクリックボルタンメトリーで5.2V(対Li+/Li電位基準)まで充放電した結果を図9に示す。図9より、僅かな容量低下が認められるもの、サイクル劣化の原因となる溶媒の分解等の大きな反応電流は観察されない。また5.2V(対Li+/Li電位基準)充電状態のデバイスをアルゴン雰囲気下で分解して正極を取り出し、正極を乾燥したジメチルカーボネートで洗浄後、流動パラフィンで電極表面をコーティング後、ポリエチレンの袋に挿入して密閉し、ポリエチレン袋の上からリガク社製XRD装置を用い、正極黒鉛のXRD分析を行った。XRD分析は以下の条件で行った。管球:Cu、出力:50kV―150mA、走査速度:10°/分、スリット:0.5°―0.15mm―0.5°、単色化:湾曲モノクロメーター。
【0098】
充電状態の黒鉛のXRDプロファイルを図10に示す。図10のピーク1はステージ4の黒鉛とBF4−のインターカレーション化合物であり、その層間距離は0.4293nmである。ピーク2はステージ5の同インターカレーション化合物であり、その層間距離は0.3447nmである。ピーク3はピーク2の2次回折線ピークである。この結果から5.2V(対Li+/Li電位基準)充電状態にある正極黒鉛は、主としてBF4−アニオンとの第4ステージのインターカレーション化合物と第5ステージのインターカレーション化合物を形成していることがわかる。
【0099】
<実施例4>
負極活物質としてクラレケミカル社製活性炭RP−20、平均粒子径2μm、表面積1800m2/gの84部に対しアセチレンブラック8部を粉体混合後、PVDF8部のNMP溶液でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚み100ミクロンの負極を調製した。実施例1で作成した正極と組み合わせ、実施例1と同じセパレータ、電解液を用い、正極/負極目付け比1/1、電極面積2cm2の金属リチウムを参照極とする三極式蓄電デバイスを作製した。充電電圧を3.2V,3.3V、3.5Vと変えて、充放電を行い、それぞれの初回正極電位は5.13V(対Li+/Li電位基準)、5.18V(対Li+/Li電位基準)、5.267V(対Li+/Li電位基準)であることを確認した。またそれぞれの正極基準の放電容量は42.8mAh/g、44.7mAh/g、47.0mAh/gであった。
【0100】
この三極セルに上記の正極と負極をセットし、参照極としてAg/AgCl/飽和KCl電極を用いて、10万回のサイクル試験を行った。充放電電流値は20mA/cm2、放電電圧は2.0Vカットとした。この結果を図11に示す。図11より充電電圧3.2Vでは良好なサイクル特性を示すが、充電電圧を3.5Vとするとサイクル劣化が起きることが示される。
【0101】
同様に、前記の三極セルに上記の正極と負極をセットし、Ag/AgCl/KCl参照電極を用い、充放電試験を行った。図12に10サイクル目の充放電曲線を示す。図13に正極の電圧変化、図14に負極の電圧変化を拡大して示した。これらの図より1.8V〜3.2V間の電圧変化を正極と負極で計測し、正極と負極の単極静電容量比を算出した。その結果、
正極静電容量/負極静電容量=負極の電圧変化/正極の電圧変化
が示され、
正極静電容量/負極静電容量=1.03/0.19=5.42
と求められた。
【0102】
正極、負極とも本試験に用いた活性炭を用いて構成したキャパシタの1.8V〜2.3V間の静電容量から求めた単極容量が145F/gであったので、正極の静電容量は785F/gと見積もられる。正極の活物質として用いた黒鉛の静電容量が表面積に基づくものであれば、静電容量≒7.5×μF/cm2であるので、黒鉛の表面積は10450m2/g程度と見積もられる。しかし黒鉛の表面積は20m2/gである。したがって黒鉛の静電容量は表面積以外の要因、すなわちインターカレーションによって発現すると結論付けられる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の蓄電デバイスは、従来の鉛電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、電気二重層キャパシタ等の代替として利用可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は電圧が高く、容量が大きく、かつ充放電サイクルにおける信頼性の高い蓄電デバイス、蓄電システム、およびそれを用いた電子機器、動力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液を使用する蓄電デバイスとして知られているものにはリチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなどがある。
【0003】
リチウムイオン二次電池は正極にリチウム含有遷移金属酸化物が使用され、負極にはリチウムがインターカレート可能な黒鉛系炭素化合物が好適に使用されており、電解液としてはリチウム塩を含む非水電解液が利用されている。
【0004】
リチウムイオン二次電池では通常、正極にリチウム含有遷移金属酸化物を使用しているために、リチウムイオン二次電池は高い電圧による充放電を実現でき、結果として高容量な電池と認識される一方で、正負極活物質自体にリチウムイオンを吸蔵・脱離するために充放電サイクルの劣化が早期に起こってしまう。
【0005】
一方、電気二重層キャパシタは、正極、負極共に活性炭を主体とする分極性電極にて構成されているために容量は低いながらも、急速な充放電を可能にし、かつ充放電サイクルにおける高い信頼性を確保出来ている。
【0006】
しかしながら、分極性電極と電解液の界面に形成される電気二重層を利用することで安定した電源を構成する電気二重層キャパシタの電気エネルギーは1/2CV2で表されることから、より高い電圧で作動させる電気化学系が求められている。ここで、Cは静電容量[ファラッド]、Vは電圧[ボルト]である。
【0007】
電気二重層キャパシタの蓄電システムにおける容量向上の為に近年研究されたシステムとしては、正極にPFPT(ポリ−p−フルオロフェニルチオフェン)を使用し、負極に活性炭を使用するものが提案されている。また、正極に活性炭を使用し、負極にチタン酸リチウムを使用するもの、あるいは、正極に活性炭を使用し、負極が黒鉛系炭素というものが提案されている。しかしながら、これら提案の蓄電システムにおいては、充放電サイクル初期の劣化、急速充放電による容量低下、黒鉛系炭素へのリチウムイオンの挿入脱離の繰り返しによる構造の劣化の可能性が報告されている。例えば、特許文献1には、電気二重層キャパシタの電極材料となる特殊な炭素材、及びその製造方法について提案されている。
【0008】
特許文献2には、(002)ピークのX線回折での半値幅が0.5〜5.0°である黒鉛系炭素材料を正極及び負極の両電極の主成分として含む電気二重層キャパシタについて提案されているが、実施例に示されているように、電気二重層キャパシタを作製した後に水蒸気賦活処理の代わりに、20分〜5時間、3.8Vの高電圧を印加して使用することを特徴としている。
【0009】
さらに、特許文献3には、正極の炭素材料として、ホウ素またはホウ素化合物を含有する炭素材料を熱処理して得られるホウ素含有黒鉛を使用し、負極の炭素材料として活性炭を使用した電気二重層キャパシタが提案されている。特許文献3では、正極おけるアニオンのインターカレーション反応を推定しているが、充放電過程の詳細は明らかにされていない。またホウ素含有黒鉛の比表面積等の物理的性質に関する詳細も明らかにされていない。
【0010】
さらに特許文献4にも、正極活物質として黒鉛を使用し、負極の活物質として黒鉛または活性炭を使用する電気二重層キャパシタが提案されているが、キャパシタ容量が正極および負極でのイオンの吸脱着によって発現するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−199767号公報
【特許文献2】特開2002−151364号公報
【特許文献3】特開2004−134658号公報
【特許文献4】特開2005−294780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、従来正極として黒鉛や活性炭を使用した非水系の電気二重層キャパシタの提案はあったが、実際に使用できる蓄電容量およびエネルギー容量が十分ではなく、また充放電過程の適正な制御がされていないためにサイクル特性が不十分であった。
【0013】
本発明は従来の鉛電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、電気二重層キャパシタ等を代替することが可能で、実質的に利用できる蓄電容量およびエネルギー容量が大きく、かつ充放電サイクルにおける信頼性が高い、蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の事項に関する。
【0015】
1. 炭素質活物質を含有する正極および負極、オニウム塩を含有する非水電解液、並びにセパレータを備えた蓄電デバイスであって、
前記正極における電気化学的充電過程が、遷移電圧を境にして、低電圧側領域における前記オニウム塩のアニオンの吸着過程と、高電圧側領域における前記オニウム塩のアニオンのインターカレーション過程との2段階逐次充電過程を示すことを特徴とする蓄電デバイス。
【0016】
2. 使用時の充放電領域として、前記オニウム塩のアニオンがインターカレーションしている電圧領域のみが利用されることを特徴とする上記1記載の蓄電デバイス。
【0017】
3. 前記遷移電圧が、1.5V〜2.5Vの範囲に設定されることを特徴とする上記1または2記載の蓄電デバイス。
【0018】
4. 前記正極の活物質として黒鉛質材料が使用され、
前記負極の活物質として、正極の活物質として使用される黒鉛質材料より比表面積の大きい炭素質材料が使用されることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【0019】
5. 前記正極の活物質として使用される黒鉛質材料のd(002)層間距離が0.340nm以下であり、比表面積が10m2/g未満であることを特徴とする上記4記載の蓄電デバイス。
【0020】
6. 前記正極の活物質として使用される黒鉛質材料が、菱面体構造を含有しないことを特徴とする上記5記載の蓄電デバイス。
【0021】
7. 前記オニウム塩のアニオンが、PF6−およびBF4−の少なくとも1つを含むことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【0022】
8. 上記1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、前記オニウム塩のアニオンがインターカレーションしている電圧領域のみを使用することを特徴とする蓄電システム。
【0023】
9. 前記オニウム塩のアニオンがインターカレーションしている電圧領域のみを使用時の電圧として制御する電圧制御機構を有する上記8記載の蓄電システム。
【0024】
10. 上記1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、
正極の活物質が黒鉛質材料であり、
蓄電デバイスとしての使用時の充電時に、正極容量が47mAh/g〜31mAh/gの範囲となるように、且つ黒鉛質材料の層間距離が0.434nm〜0.337nmの範囲になるように充電電圧を制御することを特徴とする蓄電システム。
【0025】
11. 上記10記載の蓄電システム、または上記1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、
蓄電デバイスとしての使用時において、充電時の正極電位が対Li+/Li電極基準で、5.2V以下の範囲で制御することを特徴とする蓄電システム。
【0026】
12. 上記10または11記載の蓄電システム、または上記1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、
蓄電デバイスとしての使用時において、充電電圧3.2V以下の範囲で使用されることを特徴とする蓄電システム。
【0027】
13. 充電前の黒鉛質材料の層間距離が0.336nm以下であることを特徴とする上記10〜12のいずれかに記載の蓄電システム。
【0028】
14. 充電曲線の1.8Vから3V間において、前記黒鉛質材料の静電容量が390F/g以上であることを特徴とする上記10〜13のいずれかに記載の蓄電システム。
【0029】
15. 上記1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスまたは上記8〜14のいずれかに記載の蓄電システムを備えた電子機器。
【0030】
16. 上記1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスまたは上記8〜14のいずれかに記載の蓄電システムを備えた動力システム。
【0031】
17. 上記1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスの電解液分解開始電圧を制御する方法であって、この分解開始電圧の制御を、前記遷移電圧を変更することにより行うことを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、非水系の電気二重層キャパシタに特徴的な高速充放電という性質を保持したまま、従来の電気二重層キャパシタに比べて高電圧で利用可能で、実質的に利用できる蓄電容量およびエネルギー容量が大きく、充放電サイクルにおける信頼性が高い蓄電デバイスを提供することができる。
【0033】
本発明の蓄電デバイスでは、充放電過程が正極活物質へのアニオンの可逆的吸着と可逆的インターカレーションの2段階過程を示すために、電解液の分解反応を抑制しつつ、インターカレーション領域を使用して高容量、特に高エネルギー容量の蓄電デバイスを実現できる。本発明の蓄電デバイスは、分極性電極に電解質が吸着して容量が発現する電気二重層キャパシタの範疇には入らないが、従来の電池に比べて急速な充放電が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1A】本発明の蓄電デバイスの充放電容量と電圧の関係を示すグラフ(クロノポテンショグラム)である。
【図1B】従来の電気二重層キャパシタの充放電容量と電圧の関係を示すグラフ(クロノポテンショグラム)である。
【図2】実施例1の充放電容量と電圧の関係を示すグラフ(クロノポテンショグラム)である。
【図3】実施例1のクロノポテンショグラムに基づいて、充放電容量の電圧微分を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図4】実施例1のデバイスの充電時の各電圧において測定したX線回折パターンを示す図である。
【図5】実施例1のデバイスの放電時の各電圧において測定したX線回折パターンを示す図である。
【図6】実施例2の充放電容量と電圧の関係を示すグラフ(クロノポテンショグラム)である。
【図7】実施例2のクロノポテンショグラムに基づいて、充放電容量の電圧微分を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図8】参考例の充放電容量と電圧の関係を示すグラフ(クロノポテンショグラム)である。
【図9】Li金属を対極兼、基準極とする黒鉛へのアニオンインターカレーションのサイクリックボルタングラムである。
【図10】充電前と、対Li+/Li電極5.2V充電の黒鉛のX線回折パターンを示す図である。
【図11】サイクル特性を示すグラフである。
【図12】三極式セルを用いた正極、負極の電圧変化を示すグラフである。
【図13】正極の電圧変化を示すグラフである。
【図14】負極の電圧変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1Aに、本発明の蓄電デバイスの代表的な充放電特性を示す。また、図1Bに、従来の電気二重層キャパシタとして正極負極に活性炭を使用したデバイスの充放電特性を、図1Aに示した本発明のデバイスの特性と合わせて示す。これらの充電容量−電圧特性曲線(クロノポテンショグラム)のグラフでは、横軸が充放電容量を表し、縦軸が電圧を表す。例えば定電流充電を行ったとすると、横軸は充電容量を表すと共に充電時間にも対応する。
【0036】
本発明の蓄電デバイスでは、図1Aに示すように、充電時に電圧Vtを境にして充電容量−電圧特性曲線の傾斜が大きく変化する。即ち、後述する実施例で示すように、電圧Vtまでは正極活物質にオニウム塩のアニオンが吸着し、電圧Vt以上でアニオンが正極活物質にインターカレーションしている。本出願では、充電過程が吸着からインターカレーションに変わる電圧Vtを、遷移電圧と定義する。
【0037】
遷移電圧Vtまでの吸着による充電では、比表面積の小さな正極活物質に吸着されるアニオン量は少ないので充電容量は小さく、充電容量−電圧特性曲線には、大きな傾斜が観察される。その後のインターカレーションによる充電過程では、比較的電圧の変化が小さく、大きな電荷を取り込むことができるので、大きな蓄電容量を発現することができる。
【0038】
さらにインターカレーションを詳細に検討すると、遷移電圧Vt付近で、正極活物質表面に吸着したアニオンが急速にインターカレーションする過程と、その後の通常の本格的なインターカレーション過程に分けられる。遷移電圧Vt付近での吸着アニオンのインターカレーションによる反応電流は小さいが、狭い電圧域で起きるため単位電圧当たりの容量変化量を調べると、この電圧域において反応電流は極大値またはショルダーとして検出される。ただし、正極に用いる黒鉛質材料の比表面積が小さい場合、インターカレートする吸着アニオン量が少ないために、明確にピークとして検出され難いこともある。また、この蓄電デバイスを遷移電圧以上の電圧領域のみで利用するシステムでは、その充放電の際には当然ながら見かけ上は遷移電圧Vtが観察されない。
【0039】
放電時には、放電量の増加(残存容量の減少)と共に、脱インターカレーションにより緩やかに電圧が減少し、ほとんどのアニオンが脱インターカレーションしたところで急激に電圧が低下する。しかし、充電時とは異なり、脱インターカレーション過程と脱着過程が、互いに明瞭に区別される2段階逐次過程としては発現しないために、クロノポテンショグラム上には明確な遷移電圧は観察されない。
【0040】
本発明の蓄電デバイスでは、使用時の充放電領域として、インターカレーションした状態にて、使用されることが好ましい。図1Aでは、放電時に遷移電圧Vt以下の1.5Vまで使用可能であることを示しているが、この状態でもインターカレーションしたアニオンが残っており、ここから再充電を始めた場合には、吸着過程を経ることなく遷移電圧Vt以上から充電が開始される。充電時の遷移電圧Vtと放電時にインターカレーション状態にあって利用できる電圧の差は、充放電時の電流と内部抵抗等の影響も受け、通常0.5V程度である。
【0041】
本発明の蓄電デバイスでは、このように放電時において高い電圧を保ちながら放電していくので、電子機器に必要とされる電圧領域において実際に利用できる蓄電容量が大きい。また、取り出せるエネルギー容量は、クロノポテンショグラムの積分に対応するが、本発明のデバイスは、高い電圧で放電するために、エネルギー容量が大きいことも特徴である。
【0042】
一方、従来の正極および負極に活性炭を使用した電気二重層キャパシタでは、図1Bに示すように、充放電のクロノポテンショグラムがなだらかである。これは、低電圧にても充電される容量が大きいことを示しており、本発明の蓄電デバイスに比べて、この例では1.5V以下の範囲で利用できる容量が大きい。しかし、蓄電デバイスを、1.5V以上で動作する電子機器に搭載したときに、1.5V以下の範囲で充電容量が大きいことは何ら意味がない。即ち、本発明の蓄電デバイスは、実際に使用する比較的高電圧の範囲での充電容量、特にエネルギー容量が大きいことが特徴である。
【0043】
本発明の蓄電デバイスの遷移電圧Vtは、従って、実際の電子機器で使用される電圧を考慮して定められることが好ましく、通常1.5V以上に設定されることが好ましい。
【0044】
遷移電圧Vtは、正極活物質の容量(capacity)と負極活物質の容量(capacity)、特にその比に依存することから、両者の組み合わせで遷移電圧Vtを調節することができる。正極活物質の容量が大きい場合、遷移電圧Vtは低くなり、負極活物質の容量が大きい場合には、遷移電圧Vtは高くなる。
【0045】
さらに、本発明の蓄電デバイスでは、例えば正極活物質および負極活物質の容量を調整し、即ち、遷移電圧Vtを調節することで、充電時(即ち正極活物質へのインターカレーション時)に、正極における電解液の分解反応を抑制し、サイクル特性を改善することもできる。本発明者は、従来の正極に黒鉛を用いた電気二重層キャパシタでは、正極上で電解液(溶媒)の分解が起こり、これに伴う分解生成物の有機質が負極側に移動して負極表面を被覆する結果、負極表面の有効な電気二重層がサイクル毎に減少し、これが容量維持率の減少、すなわちサイクル特性低下をもたらすことを見出した。電解液の分解の開始電圧は種々の要因に依存するが、活性炭の種類や表面積、正極と負極の容量比等に依存する。この例の本発明の蓄電デバイスでは、3.2V程度(図1A)、一方、従来の電気二重層キャパシタでは、2.3V程度(図1B)からそれぞれ分解反応電流が観察されている。
【0046】
正極上で電解液(溶媒)の分解を抑制するための方法の1つとして、充電の間に正極側の電位が分解電位を超えないようにすることが有効である。本発明の蓄電デバイスでは、例えば負極と正極の容量比を大きくして、遷移電圧を高く設定すると、充電容量が増大していく間に、正極電位の上昇が小さく、負極電位の絶対値の大きい範囲まで充電が可能になる。その結果、デバイス電圧で見た分解電圧が上昇する。そのために、蓄電デバイスの使用可能な電圧が高くなることに加え、電解液分解反応が十分に抑制された電圧範囲で使用することができる。負極上への有機物沈積が抑制され蓄電デバイスの容量低下が改良される結果、サイクル特性が向上する。
【0047】
サイクル特性を改善するためには、遷移電圧Vtを1.5V〜2.5Vに設定することが好ましく、特に好ましくは1.7V〜2.3Vである。遷移電圧が1.5Vより低いと蓄電容量は大きいが、正極での電解液分解を抑制できずサイクル特性は低下する傾向が強い。遷移電圧が2.5Vを超える場合、正極での電解液の分解は完全に抑制されサイクル特性は良好になるが、蓄電容量が小さい。
【0048】
具体的には、図1Aおよび図1Bで、正極活物質と負極活物質の重量比を1/1とした場合、2200m2/g以上の高表面積を有する活性炭を両極の活物質として用いた電気二重層キャパシタの3.5Vからの0Vまでの放電容量は本発明の蓄電デバイスを上回る。しかし、充電時に2.3Vで反応電流が認められるため、充電電圧は2.3Vまでに限定される。一方、本発明の蓄電デバイスでは、3.2V程度まで充電できる。従って、実際に利用する電圧範囲を、例えば1.5V以上とすると、本発明の蓄電デバイスで利用できる充放電容量は3.2V〜1.5Vの範囲であるために、2.3V〜1.5Vの範囲しか利用できない電気二重層キャパシタの充放電容量を上回る。さらに放電エネルギーで比較すると本発明の蓄電デバイスのそれは電気二重層キャパシタの3倍以上となる。
【0049】
以上のように、正極活物質における充電が、吸着とインターカレーションの2段階過程を示すことにより、特にその遷移電圧Vtを比較的高め、例えば1.5V〜2.5Vの範囲に設定することにより、本発明の蓄電デバイスは、利用できる放電容量および放電エネルギーを大きくとることができる。さらに電解液の分解も考慮すると、実装置で利用できる放電容量および放電エネルギー、並びにサイクル特性の点で本発明の蓄電デバイスは極めて優れている。
【0050】
本発明の蓄電デバイスは3V以上の高電圧でも作動し、高容量で充放電が可能であることから、高エネルギーを蓄電することが可能である。その用途はパソコンのバックアップ電源、携帯電話、携帯用モバイル機器、デジタルカメラの電源などに用いることが可能である。また、本発明の蓄電デバイスは電気自動車やHEVの動力システムにも適用することができる。
【0051】
特に高電圧を必要とする動力系で用いられる場合、本蓄電デバイスの放電電圧は1.5V以上、望ましくは2V以上でカットすることが好ましい。
【0052】
従って本発明の蓄電デバイスを使用する蓄電システムでは、デバイスとしての実使用時に、充放電領域がインターカレーションの領域のみとなるように使用することが好ましい。ここで、蓄電システムとは、本発明の蓄電デバイスに加えて、蓄電デバイスが使用時に機能するための周辺部材を含むものであり、例えば蓄電デバイスの正極と負極間の電圧を検知する手段等を備える。本発明の蓄電システムでは、蓄電デバイスの充放電がインターカレーションの領域のみとなるように、所定電圧まで低下したときにシャットダウンするような、公知の電圧制御手段を備えることが好ましい。
【0053】
<本発明の蓄電システムの実施形態>
次に、本発明の蓄電デバイスを使用する蓄電システムの中でも、特にサイクル特性が改良されるように、条件および使用方法等が設定される実施形態について説明する。
【0054】
本実施形態の蓄電システムは、正極の活物質が黒鉛質材料であり、蓄電デバイスとしての正極容量が47mAh/g〜31mAh/gの範囲であり、蓄電デバイスとしての使用時の充電時に、黒鉛質材料の層間距離が0.434nm〜0.337nmの範囲になるように充電電圧を制御する。
【0055】
正極の黒鉛質材料の層間距離は、アニオンのインターカレーションにより変化する。充放電に伴うインターカレーションとデインターカレーションは可逆的な反応であるため、充電によって拡大した黒鉛層間距離の放電によってもとの層間距離に戻る。しかし充電電位が高くなり、イオン半径の大きなアニオンのインターカレーション量が増えると、インターカレーションとデインターカレーションの繰り返しにより黒鉛が歪み、黒鉛層間から抜け出ないアニオンが増加したり、放電後の黒鉛層間距離は充電前の層間距離に戻らない現象が認められる。本発明者の検討では、アニオンが黒鉛層間にインターカレーションしたステージ数で表すと第4ステージ、つまり黒鉛グラフェン4層毎に1層のアニオンがインターカレーションした層が存在する状態である第4ステージがサイクル特性を良好に保ちつつアニオンがインターカレーション出来る上限である。第4ステージの電位は、ほぼ5.2V(対Li+/Li電位基準)であり、第4ステージのアニオン黒鉛層間化合物の理論容量は47mAh/gである。尚、黒鉛に対して、多段階インターカレーションが起こることは、インターカレーション電位の測定によりJ.A.Seel and J.R. Dahn J. Electrochem. Soc.,
147, 899,(2000)によって示されている。
【0056】
さらにインターカレーションが進んだステージ構造(第3〜第1ステージ)になると、可逆的なインターカレーションは出来なくなり、かつ電解液の分解も併進するため、次第に容量劣化、つまりサイクル劣化を引き起こす。本発明のデバイスで第4ステージのインターカレーションが起きる充電電圧は正極と負極の容量比によって異なるが、ほぼ3.2V〜3.5Vである。第4ステージのインターカレーションとデインターカレーションを利用することで、本発明の蓄電デバイスの正極容量を47mAh/g〜31mAh/gの範囲に制御する。
【0057】
黒鉛層間距離の増大はX線回折(XRD)により確認できる。BF4−をアニオンに用いた場合、充電電位5.2V(対Li+/Li電位基準)では黒鉛の層間距離は0.434nmに増加する。この場合のステージ数は4である。従って、良好なサイクル特性を維持できる範囲としては、デバイスとしての実際の使用時において、フル充電されたときでも、黒鉛質材料の層間距離が0.434nm以下の範囲で使用されるように充電電圧を制御することが好ましい。但し、インターカレーションのためには黒鉛質材料の層間距離が広がる必要があるので、0.434nm〜0.337nmの範囲となるように充電電圧を制御して使用することが好ましい。本システムで、さらに好ましくは、層間距離が、0.429nm〜0.337nmの範囲となるように制御する。
【0058】
サイクル特性は、上述のような黒鉛材料の歪みの他に、電解液の分解反応にも起因するため、使用時の正極側のフル充電時の電位は、電解液の酸化分解電位によっても制限される。電解液に使用される溶媒にもよるが、例えば充電電圧5.5V(対Li+/Li電位基準)以上では分解反応が顕著に観察できる。したがって、充電電圧は5.5V(対Li+/Li電位基準)以下、さらに5.2V(対Li+/Li電位基準)以下とすることが好ましい。さらには5.0V(対Li+/Li電位基準)以下とすることが好ましい。これらの条件は、本実施形態に限られず、本発明の他の蓄電システムにおいても好ましい。この最適充電電位はLi+/Li電位でサイクリックボルタンメトリー(CV法)を行うことで決定できる。
【0059】
電解液の分解は、正極側での電解液の酸化分解反応に加え、負極側では電解液の還元電位を超えることによっても生じる。溶媒分解の起きない電位の範囲で正極と負極の容量バランスをとることが必要である。例えば負極容量を大きくすることによって正極電位が増大し、1から2ステージ構造をとる結果、重量当たりの容量は186から93mAh/gと大きくなるが、正極容量に対して負極容量が所定の容量を超えると正極電位の増大に起因する電解液の分解を招くこととなり、サイクル特性は著しく低下する。
【0060】
そこで、充電電圧を最適化し、かつ正極活物質と負極活物質の容量バランスを調整することにより、デバイス容量を確保し、かつ高電圧動作とサイクル特性を具備したデバイスを設計することが出来る。例えば充電電圧を3.2Vとし、ステージ数を4以下(即ち、4ステージ、5ステージ、6ステージ等)とすることで、正極容量としては47mAh/g以下かつ31mAh/g以上程度に保ったまま、高容量と高電圧と高サイクル特性を有するデバイスとすることが可能である。尚、充電電圧が3.2V以下という条件は、本実施形態に限られず、本発明の他の蓄電システムにおいても好ましい。
【0061】
ここで、使用時の蓄電デバイスにおける正極容量は、負極の容量で制御できる。正極でのアニオンインターカレーション容量に比べ負極のカチオン吸着容量は小さいため、現実にはアニオンのインターカレーション量は負極側で分極したカチオン量で決定されるからである。
【0062】
本実施形態の蓄電システムでは、蓄電デバイスとしての正極容量が47mAh/g以下31mAh/g以上の範囲となるまで充電した際に、正−負極間の端子間電圧が所定の電圧(例えば3.2V)となるような負極活物質の容量を選択することで、正極の充電電位を好ましい範囲に保ちながら充電が可能になるため、高容量と高電圧と高サイクル特性が満足される。
【0063】
そこで、このような条件を満たすために、例えば次のようにして正極、負極のパラメータを決めていくことができる。
【0064】
まず、正極の静電容量を設定する。負極の容量に支配されない正極の容量は充放電容量と充放電電圧が直線関係にある時の電圧変化を測定することで推測できる。正極活物質と負極活物質のそれぞれの重量をWc、Wa、それぞれの静電容量をFc、Faそれぞれの充電に伴う電圧変化をVc、Vaとした時、Wc×Fc×Vc=Wa×Fa×Vaが成り立つ。本発明に用いられる活物質の容量比較を容易にするために、三極式セルで測定を行い、かつWc=Waを仮定すると、通常Vc/Va=1/3から1/12となる。すなわちFcはFaの約3から12倍である。本発明で負極活物質として用いられる活性炭の静電容量は130〜160F/g程度なので、黒鉛の静電容量に相当する電圧変化分に対する容量は390〜1900F/gとなる。従って、この実施形態では、黒鉛としてインターカレーションしたときに390F/g以上の静電容量を発現するような材料を選ぶことが好ましい。特に、充電時に1.8V〜3Vの範囲で、390F/g以上の静電容量が発現することが好ましい。特に好ましくは450〜1300F/gである。また、通常の黒鉛では、一般的には、2000F/g以下であり、通常は1600F/g程度あれば十分に実用的である。
【0065】
次に、負極側の電位を決めることによって充電電圧を決定する。前述のとおり、負極の電位を下げ過ぎると、言い換えると過度の充電を行うと、負極側で溶媒の還元分解が起きる。本発明の蓄電デバイスの充放電を参照電極を用いた三極式セルで観察すると、充電電圧変化は殆ど負極側の電位変化であり、前述の如く、正極の電位変化は僅かであることが分かる。このことは正極黒鉛のインターカレーションに伴う反応容量が負極に用いる活性炭の吸着静電容量に比べはるかに大きいことに由来する。単位電圧変化に対する容量変化の割合を静電容量と定義すると、三極式セルを用いた充放電試験の結果から、正極活物質の静電容量は負極活物質のそれに比べてはるかに大きい。
【0066】
そこで正極の静電容量をFc、正極での溶媒分解電位をPc、インターカレーションを開始する電位をPtとするといずれもこの値はリチウム対極の充放電試験と三極式充放電試験で求められている値である。また負極材料とする活性炭の静電容量をFa、負極での溶媒分解電位をPaとすると、これらの値は既知である。ここで、本発明の蓄電デバイスの充電電圧を3.2Vとしたとき、充電時のインターカレーションによる単位重量の正極電圧の変化をVcとすると、負極電圧の変化Vaは
Va=Fc×Vc/Fa
Vc < Pc−Pt ・・・(1)
Vc+Pt−Pa < 3.2 ・・・(2)
Vcは(1)と(2)を同時に満足する必要があるから、これらを満たすようにVc決定する。
【0067】
Vcが決まれば、Fcは前述のとおり、390F/g以上が好ましいので、必要な正極材料の容量Fc×Vcが決まり、これと等しい負極材料の容量Fa×Vaが設定できる。実際のデバイスでは、このように設定した負極の容量と充電電圧により、正極の容量と充電電位が決まっていく。ここでは、正極の重量Wcおよび負極の重量Waに関して、Wc=Waとしたが、重量比を多少変更することで正極と負極の容量のバランスをとってもよい。
【0068】
このような設計により、正極と負極のバランスをとり、正極容量としては47mAh/g以下31mAh/g以上程度に保ったまま、充電時の正極を所定の電位の範囲内、例えば充電電圧を3.2V以下とすることができる。その結果、フル充電時に黒鉛質材料の層間距離が0.434nm以下かつ0.337nm以上の範囲での動作が可能になる。
【0069】
<各材料の説明>
次に、本発明の蓄電デバイスに使用される具体的材料等を説明する。本発明の蓄電デバイスには、正極活物質、負極活物質、バインダー、導電材、集電体、セパレータ、および電解液などの材料が使用される。蓄電デバイスの形状としては捲回式、スタック式、葛折などが挙げられる。また、電気容量取り出しのシステムとしてはEcaSS(商標)などの従来の技術をいずれも好適に転用することができる。
【0070】
本出願において、黒鉛とは、炭素原子がSP2混成軌道による六角網平面を構成しており、この2次元格子構造が規則的に積層したものを基本構造単位(結晶子)にしているものをいい、強い異方性を持っている。黒鉛質材料とは、黒鉛質が十分に発達しており一般に「黒鉛」として認識される範囲の材料であり、本出願においては、黒鉛を含む。
【0071】
本発明では、正極および負極の両方に炭素材料を活物質として使用する。正極の活物質として、前述の逐次的2段階過程を示す材料としては、黒鉛質材料が挙げられる。正極の活物質として用いられる黒鉛質材料は、天然黒鉛、人造黒鉛いずれでもよく、より高容量を得ようとした場合、高結晶性の黒鉛を用いることが望ましい。良好なインターカレーションを実現するためには、黒鉛質材料のd(002)層間距離が、0.340nm以下が好ましく、より好ましくは0.339nm以下である。また、黒鉛質材料のd(002)層間距離は、好ましくは0.335nm以上である。また、通常はホウ素を含有しない方が好ましい。
【0072】
尚、特にサイクル特性を向上させた特定の実施形態においては、特に良好なインターカレーションを実現するためには黒鉛質材料の層間距離が0.336nm以下が好ましく、より好ましくは0.3355nm以下である。
【0073】
または黒鉛質材料の結晶構造には、六方晶構造(ABAB・・積層周期)と菱面体構造(ABCABC・・積層周期)がある。多くの場合、菱面体構造は粉砕によって導入されるが、インターカレーションによる高容量を得るためには、菱面体構造を有さない黒鉛であることが好ましい。
【0074】
また、インターカレーションを急速に行うためには黒鉛質材料の粒子の外表面積は大きいほど好ましい(即ち、黒鉛粒子は小さいほど好ましい)が、粉砕時に菱面体構造が導入され、黒鉛質材料の結晶性が損なわれることが多い。したがって好ましい黒鉛質材料の平均粒子径は3〜40μmであり、さらに好ましくは6〜25μmである。
【0075】
黒鉛質材料の比表面積については、例えばジェットミル等を用いて、菱面体構造が導入されないようにして黒鉛質材料の結晶性を維持したままで粉砕すると、比表面積1〜20m2/gに調整することが可能であるが、正極表面での溶媒の分解速度を下げるためには10m2/g以下、更に好ましくは2〜5m2/gであることが好ましい。
【0076】
さらに、蓄電デバイスの単位体積当たりの蓄電容量を増加させるためには黒鉛質材料を圧密化処理したり、黒鉛質材料から微細粒子を除去したりすることも有効である。圧密化処理された黒鉛のタップ密度は0.8〜1.4g/cc、真密度は2.22g/cc以上が好ましい。また実質的に1μm以下の黒鉛質材料の割合を10%以下とすることによっても黒鉛の嵩密度の低下が抑制されかつ表面積の増大が抑制される。
【0077】
負極の活物質として使用される炭素系材料としては、充放電の際にイオンの吸着のみ、即ちインターカレーションが生じないような材料が選ばれることが好ましく、活性炭または黒鉛質材料が挙げられる。正極の活物質材料より、比表面積の大きな材料が好ましい。黒鉛質材料を使用する場合には、正極の活物質の材料と異なるものが好ましく、特に正極に使用される黒鉛質材料より比表面積の大きなものが選ばれる。活性炭としては、公知のキャパシタ用活性炭を使用することができる。例えば薬品賦活した椰子殻活性炭をはじめ、水蒸気賦活した椰子殻活性炭、フェノール樹脂活性炭およびピッチ活性炭、またはアルカリ賦活したフェノール樹脂活性炭およびメソフェースピッチ活性炭を用いることができる。通常の活性炭のほかに、高表面積化した黒鉛質材料、CVD処理した活性炭または黒鉛質材料等を用いることもできる。負極の活物質として使用される炭素系材料は、比表面積が300m2/g以上であることが好ましく、特に450m2/g〜2000m2/gの高表面積を有することが好ましい。通常は、負極活物質として活性炭を使用することが好ましいが、容積あたりの蓄電容量の高密度化を求める場合には、高表面積黒鉛質材料は圧密化して嵩密度を高めることができるので好適である。
【0078】
バインダーについても特に限定はなく、PVDF、PTFE、ポリエチレンおよびゴム系のバインダー等を用いることができる。
【0079】
例えばゴム系のバインダー成分としては、EPT、EPDM,ブチルゴム、プロピレンゴム、天然ゴムなどの脂肪族に代表されるゴム、またはスチレンブタジエンゴム等の芳香族ゴムを含有したゴムが挙げられる。これらのゴムの構造にはニトリル、アクリル、カルボニル等のヘテロ含有基質またはシリコンを含んでいても良く、さらには直鎖や分枝を制限するものではない。なおこれらを単独または複数の混合で用いても良好なバインダーとなり得る。
【0080】
また、必要に応じてカーボンブラック、ケッチェンブラック等の導電材を添加してもよい。
【0081】
集電体としては一般に純アルミ箔が用いられるが、純アルミであっても銅、マンガン、シリコン、マグネシウム、亜鉛などの金属を単独または複数添加したアルミニウムであっても良い。またステンレス、ニッケル、チタンなどでも同様に用いられる。また導電性の増幅と強度確保のために上記混合物やその他の元素を添加したものでも使用できる。この時これらの基質の表面にエッチングなどで凹凸を付与したり、導電性の金属やカーボンを基質に埋め込むか、またはコートしても良い。これらの集電体は箔でもメッシュ状でも用いられる。
【0082】
セパレータとしてセルロース紙、ガラス繊維紙のほかに、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド微多孔膜やそれらが層状に構成された多層膜が用いられる。またこれらのセパレータ表面にPVDFやシリコン樹脂、ゴム系樹脂などをコーティングすることでも代用可能であるし、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウムなどの金属酸化物の粒子が埋包してあっても良い。もちろんこれらのセパレータは正負極間に一枚であってもそれ以上あっても問題なく、2種類以上のセパレータを任意に選択して使用しても良い。
【0083】
電解液として用いる有機溶媒は、プロピレンカーボネート等の環状炭酸エステル、γ―ブチロラクトンなどの環状エステル、N−メチルピロリドンなどの複素環状化合物、アセトニトリルなどのニトリル類、その他スルホランやスルホキシド等の極性溶媒が利用出来る。
具体的には以下の化合物である。
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ―ブチロラクトン、δ―バレロラクトン、N―メチルピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、リン酸トリメチル。
これらの溶媒は単独であっても2種類以上の混合であっても使用出来る。
【0084】
非水電解液中に含有される電解質としては、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ピペリジニウム塩、イミダゾリウム塩、ホスホニウム塩などのオニウム塩が好ましく、これらの塩のアニオンとしてはホウフッ化物イオン(BF4−)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6−)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等のフッ素化合物が好ましい。
具体的には以下の化合物である。
ホウフッ化テトラメチルアンモニウム、ホウフッ化エチルトリメチルアンモニウム、ホウフッ化ジエチルジメチルアンモニウム、ホウフッ化トリエチルメチルアンモニウム、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラプロピルアンモニウム、ホウフッ化トリブチルメチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、ホウフッ化テトラヘキシルアンモニウム、ホウフッ化プロピルトリメチルアンモニウム、ホウフッ化ブチルトリメチルアンモニウム、ホウフッ化ヘプチルトリメチルアンモニウム、ホウフッ化(4−ペンテニル)トリメチルアンモニウム、ホウフッ化テトラデシルトリメチルアンモニウム、ホウフッ化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ホウフッ化ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、ホウフッ化オクタデシルトリメチルアンモニウム、1,1’−ジフルオロ−2,2’−ビピリジニウム ビステトラフルオロボレート、ホウフッ化N,N−ジメチルピロリジニウム、ホウフッ化N−エチル−N−メチルピロリジニウム、ホウフッ化N,N−ジエチルピロリジニウム、ホウフッ化N,N−ジメチルピペリジニウム、ホウフッ化N−エチル−N−メチルピペリジニウム、ホウフッ化N,N−ジエチルピペリジニウム、ホウフッ化1,1−テトラメチレンピロリジニウム、ホウフッ化1,1−ペンタメチレンピペリジニウム、ホウフッ化N−エチル−N−メチルモルフォリニウム、ホウフッ化アンモニウム、ホウフッ化テトラメチルホスホニウム、ホウフッ化テトラエチルホスホニウム、ホウフッ化テトラプロピルホスホニウム、ホウフッ化テトラブチルホスホニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルトリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ビニルトリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ドデシルトリメチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロヒ酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸テトラエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドテトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラエチルホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラブチルホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、ホウフッ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、トリフルオロメタンスルホン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、ヘキサフルオロリン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、ホウフッ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、トリフルオロメタンスルホン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、ヘキサフルオロリン酸1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、ホウフッ化1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、トリフルオロメタンスルホン酸1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、ヘキサフルオロリン酸1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、ホウフッ化1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、ホウフッ化1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、トリフルオロメタンスルホン酸1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、ホウフッ化1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、トリフルオロメタンスルホン酸1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、ヘキサフルオロリン酸1−ブチルピリジニウム、ホウフッ化1−ブチルピリジニウム、トリフルオロメタンスルホン酸1−ブチルピリジニウム、ヘキサフルオロリン酸1−ヘキシルピリジニウム、ホウフッ化1−ヘキシルピリジニウム、トリフルオロメタンスルホン酸1−ヘキシルピリジニウム、ヘキサフルオロリン酸1−ブチル−4−メチルピリジニウム、ホウフッ化1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−フルオロピリジニウムピリジン ヘプタフルオロジボレート、ホウフッ化1−フルオロピリジニウム。
これらの電解質は単独であっても2種類以上の混合であっても使用出来る。
【実施例】
【0085】
以下に本発明の実施例を説明する。ただし以下に示す実施例は例示であって、これらに限定されるものではない。
【0086】
<実施例1>
正極活物質として菱面体構造を含まないTIMCAL社製黒鉛ティムレックスSFG44(d(002)層間距離0.3354nm、平均粒子径24μm、表面積5m2/g)84部に対し電気化学社製アセチレンブラック8部を粉体混合後、呉羽化学社製PVDF8部のNMP溶液でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚み100ミクロンの電極を調製した。負極活物質としてクラレケミカル社製活性炭RP−20、平均粒子径2μm、表面積1800m2/gの84部に対しアセチレンブラック8部を粉体混合後、PVDF8部のNMP溶液でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚み100ミクロンの電極を調製した。
【0087】
両電極の乾燥後目付け比、正極活物質/負極活物質は1/1であった。両電極を4cm2に切り出し、乾燥空気中で、アルミラミネート製袋にワットマン製ガラスろ紙を介して両電極の塗工面を向き合わせて設置し、1.5モル/リッター濃度のTEMABF4塩(トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート)のPC溶液を注入後、アルミラミネート製袋の外側から両極を加圧してデバイスを作成した。
【0088】
クロノポテンショメトリーで充放電容量を測定した充放電容量と電圧の関係を図2に示す。1.75Vまでの充電容量は1.5mAh/gと僅かであり、これは負極では電解質カチオンの吸着、正極では電解質アニオンの吸着に由来する容量である。1.75V以上に大きな充電容量61.5mAh/gが観察された。正極活物質重量ベースの放電容量は49.8mAh/gであり、初回の充放電の効率は79%であった。また3.5Vから1.5Vまでの放電容量は全放電容量の98%であった。容量変化量を電圧変化量で除してdQ/dVを算出し、サイクリックボルタンメトリー法に相当するデバイスの電気化学的特性を調べた。その結果を図3に示す。デバイスを3.5Vまで充電した場合、1.75Vに吸着からインターカレーションに急速に変化する際の電流がショルダーとして認められ、そのあと(高電圧側で)大きな充電容量を発現する反応電流が認められた。
【0089】
デバイスの充放電容量発現の原因を調査するために、黒鉛の構造と電圧との関係を調べた。ポリエチレン製袋を用いた他は同様の方法でデバイスを調製した後、1mAで3.5Vまで充電し、所定電圧に達した後ポリエチレン袋の上からリガク社製XRD装置を用いin−situでデバイスの正極活物質である黒鉛の002回折線を測定した。測定は以下の条件で行った。管球:Cu、出力:50kV―150mA、走査速度:10°/分、スリット:0.5°―0.15mm―0.5°、単色化:湾曲モノクロメーター。
【0090】
充電電圧と黒鉛X線回折パターンとの関係を図4、放電電圧と黒鉛X線回折パターンとの関係を図5に示す。図4の充電では、2Vで黒鉛002回折ピークは充電前の26.5°の位置より低角側に新たに回折線を生じ、充電電圧が高くなるに伴い、低角側の回折線強度が大きくなり、回折線のピークはさらに低角側にシフトする。充電電圧が2.5Vを超えると、充電前の26.5°の回折線は消失する。図5の放電では全く逆の現象が観察され、放電による電圧の低下に伴い黒鉛002回折ピークは高角側にシフトし、放電後の黒鉛の002回折ピークは充電前の回折線の位置と同一の26.5°に現れる。このように充電に伴い黒鉛層間距離は拡大し、放電によりもとの層間距離に可逆的に戻ることが明らかとなった。この充放電に伴う黒鉛層間距離の変化は黒鉛層間距離へのアニオンのインターカレーションを示している。
【0091】
<実施例2>
正極活物質として菱面体構造を含まない日本黒鉛社製天然黒鉛(d(002)層間距離0.3354nm、平均粒子径20.0μm、表面積3.4m2/g)84部に対し電気化学社製アセチレンブラック8部を粉体混合後、呉羽化学社製PVDF8部のNMP溶液でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚み100ミクロンの電極を調製した。負極活物質として日本黒鉛社製黒鉛SP−450(d(002)層間距離3.371nm、平均粒子径1.5μm、表面積403m2/g)の95部に対し電気化学社製アセチレンブラック8部を粉体混合後、ダイセル社製CMC2270を1部、三井―デュポン社製のPTFE4部でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚みの異なる電極を調製した。
【0092】
両電極を4cm2に切り出し、乾燥空気中で、ポリエチレン製袋にワットマン製ガラスろ紙を介して両電極の塗工面を向き合わせて設置し、1.5モル/リッター濃度のTEMAPF6塩のPC溶液を注入後、ポリエチレン製袋の外側から両極を加圧して正極活物質重量/負極活物質重量=1/1.2なるデバイスを作成した。実施例1と同様の方法で充放電容量を測定した結果を図6および図7に示す。正極重量ベースの放電容量は36.3mAh/gであり、1.5V以上の放電容量は34.1mAh/gであり、全放電容量の94%であった。この場合も2V以上でアニオンのインターカレーションによる回折角の低角度へのシフト、すなわち層間距離の拡大が観察できた。
【0093】
<参考例>
TIMCAL社製黒鉛ティムレックスKS6(菱面体構造を含む、d(002)層間距離0.3357nm、平均粒子径24μm、表面積は20m2/g)84部に対し電気化学社製アセチレンブラック8部を粉体混合後、呉羽化学社製PVDF8部のNMP溶液でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚み100ミクロンの電極を調製した。負極活物質としてクラレケミカル社製活性炭RP−20、平均粒子径2μm、表面積1800m2/gの84部に対しアセチレンブラック8部を粉体混合後、PVDF8部のNMP溶液でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚み100ミクロンの電極を調製した。
【0094】
両電極を4cm2に切り出し、乾燥空気中で、ポリエチレン製袋にワットマン製ガラスろ紙を介して両電極の塗工面を向き合わせて設置し、1.5モル/リッター濃度のTEMAPF6塩(トリエチルメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート)のPC溶液を注入後、ポリエチレン製袋の外側から両極を加圧して正極活物質重量/負極活物質重量=1/1.2なるデバイスを作成した。実施例1と同様の方法で充放電容量を測定した結果を図8に示す。正極重量ベースの放電容量は33.3mAh/gであり、1.5V以上の放電容量は28.8mAh/g、全放電容量の86.5%であった。初回の充放電効率は42.6%であった。この場合も1.75V以上でアニオンのインターカレーションによる回折角の低角度へのシフト、すなわち層間距離の拡大が観察できた。
【0095】
<実施例3>
正極活物質としてTIMCAL社製黒鉛ティムレックスKS6(002層間距離0.3357nm、平均粒子径3.4μm、表面積20m2/g)84部に対し電気化学社製アセチレンブラック8部を粉体混合後、呉羽化学社製PVDF8部のNMP溶液でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚み100ミクロンの電極を調製した。
【0096】
負極に金属リチウム、正極に黒鉛電極、セパレーターにガラスろ紙をセットし、1.5モル/リッター濃度のLiBF4塩(リチウムテトラフルオロボレート)のPC溶液を注入してデバイス(ハーフセル)を組み立てた。このデバイスはLi+/Li基準で0Vから6Vまでの電圧でCV法(サイクリックボルタンメトリー)で充放電を行った。
【0097】
サイクリックボルタンメトリーで5.2V(対Li+/Li電位基準)まで充放電した結果を図9に示す。図9より、僅かな容量低下が認められるもの、サイクル劣化の原因となる溶媒の分解等の大きな反応電流は観察されない。また5.2V(対Li+/Li電位基準)充電状態のデバイスをアルゴン雰囲気下で分解して正極を取り出し、正極を乾燥したジメチルカーボネートで洗浄後、流動パラフィンで電極表面をコーティング後、ポリエチレンの袋に挿入して密閉し、ポリエチレン袋の上からリガク社製XRD装置を用い、正極黒鉛のXRD分析を行った。XRD分析は以下の条件で行った。管球:Cu、出力:50kV―150mA、走査速度:10°/分、スリット:0.5°―0.15mm―0.5°、単色化:湾曲モノクロメーター。
【0098】
充電状態の黒鉛のXRDプロファイルを図10に示す。図10のピーク1はステージ4の黒鉛とBF4−のインターカレーション化合物であり、その層間距離は0.4293nmである。ピーク2はステージ5の同インターカレーション化合物であり、その層間距離は0.3447nmである。ピーク3はピーク2の2次回折線ピークである。この結果から5.2V(対Li+/Li電位基準)充電状態にある正極黒鉛は、主としてBF4−アニオンとの第4ステージのインターカレーション化合物と第5ステージのインターカレーション化合物を形成していることがわかる。
【0099】
<実施例4>
負極活物質としてクラレケミカル社製活性炭RP−20、平均粒子径2μm、表面積1800m2/gの84部に対しアセチレンブラック8部を粉体混合後、PVDF8部のNMP溶液でスラリーを調製し、アルミ箔上に厚み100ミクロンの負極を調製した。実施例1で作成した正極と組み合わせ、実施例1と同じセパレータ、電解液を用い、正極/負極目付け比1/1、電極面積2cm2の金属リチウムを参照極とする三極式蓄電デバイスを作製した。充電電圧を3.2V,3.3V、3.5Vと変えて、充放電を行い、それぞれの初回正極電位は5.13V(対Li+/Li電位基準)、5.18V(対Li+/Li電位基準)、5.267V(対Li+/Li電位基準)であることを確認した。またそれぞれの正極基準の放電容量は42.8mAh/g、44.7mAh/g、47.0mAh/gであった。
【0100】
この三極セルに上記の正極と負極をセットし、参照極としてAg/AgCl/飽和KCl電極を用いて、10万回のサイクル試験を行った。充放電電流値は20mA/cm2、放電電圧は2.0Vカットとした。この結果を図11に示す。図11より充電電圧3.2Vでは良好なサイクル特性を示すが、充電電圧を3.5Vとするとサイクル劣化が起きることが示される。
【0101】
同様に、前記の三極セルに上記の正極と負極をセットし、Ag/AgCl/KCl参照電極を用い、充放電試験を行った。図12に10サイクル目の充放電曲線を示す。図13に正極の電圧変化、図14に負極の電圧変化を拡大して示した。これらの図より1.8V〜3.2V間の電圧変化を正極と負極で計測し、正極と負極の単極静電容量比を算出した。その結果、
正極静電容量/負極静電容量=負極の電圧変化/正極の電圧変化
が示され、
正極静電容量/負極静電容量=1.03/0.19=5.42
と求められた。
【0102】
正極、負極とも本試験に用いた活性炭を用いて構成したキャパシタの1.8V〜2.3V間の静電容量から求めた単極容量が145F/gであったので、正極の静電容量は785F/gと見積もられる。正極の活物質として用いた黒鉛の静電容量が表面積に基づくものであれば、静電容量≒7.5×μF/cm2であるので、黒鉛の表面積は10450m2/g程度と見積もられる。しかし黒鉛の表面積は20m2/gである。したがって黒鉛の静電容量は表面積以外の要因、すなわちインターカレーションによって発現すると結論付けられる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の蓄電デバイスは、従来の鉛電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、電気二重層キャパシタ等の代替として利用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質活物質を含有する正極および負極、オニウム塩を含有する非水電解液、並びにセパレータを備えた蓄電デバイスであって、
前記正極における電気化学的充電過程が、遷移電圧を境にして、低電圧側領域における前記オニウム塩のアニオンの吸着過程と、高電圧側領域における前記オニウム塩のアニオンのインターカレーション過程との2段階逐次充電過程を示すことを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
使用時の充放電領域として、前記オニウム塩のアニオンがインターカレーションしている電圧領域のみが利用されることを特徴とする請求項1記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記遷移電圧が、1.5V〜2.5Vの範囲に設定されることを特徴とする請求項1または2記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記正極の活物質として黒鉛質材料が使用され、
前記負極の活物質として、正極の活物質として使用される黒鉛質材料より比表面積の大きい炭素質材料が使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記正極の活物質として使用される黒鉛質材料のd(002)層間距離が0.340nm以下であり、比表面積が10m2/g未満であることを特徴とする請求項4記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記正極の活物質として使用される黒鉛質材料が、菱面体構造を含有しないことを特徴とする請求項5記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
前記オニウム塩のアニオンが、PF6−およびBF4−の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、前記オニウム塩のアニオンがインターカレーションしている電圧領域のみを使用することを特徴とする蓄電システム。
【請求項9】
前記オニウム塩のアニオンがインターカレーションしている電圧領域のみを使用時の電圧として制御する電圧制御機構を有する請求項8記載の蓄電システム。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、
正極の活物質が黒鉛質材料であり、
蓄電デバイスとしての使用時の充電時に、正極容量が47mAh/g〜31mAh/gの範囲になるように、且つ黒鉛質材料の層間距離が0.434nm〜0.337nmの範囲になるように充電電圧を制御することを特徴とする蓄電システム。
【請求項11】
請求項10記載の蓄電システム、または請求項1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、
蓄電デバイスとしての使用時において、充電時の正極電位が対Li+/Li電極基準で、5.2V以下の範囲で制御することを特徴とする蓄電システム。
【請求項12】
請求項10または11記載の蓄電システム、または請求項1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、
蓄電デバイスとしての使用時において、充電電圧3.2V以下の範囲で使用されることを特徴とする蓄電システム。
【請求項13】
充電前の黒鉛質材料の層間距離が0.336nm以下であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の蓄電システム。
【請求項14】
充電曲線の1.8Vから3V間において、前記黒鉛質材料の静電容量が390F/g以上であることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の蓄電システム。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスまたは請求項8〜14のいずれかに記載の蓄電システムを備えた電子機器。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスまたは請求項8〜14のいずれかに記載の蓄電システムを備えた動力システム。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスの電解液分解開始電圧を制御する方法であって、この分解開始電圧の制御を、前記遷移電圧を変更することにより行うことを特徴とする方法。
【請求項1】
炭素質活物質を含有する正極および負極、オニウム塩を含有する非水電解液、並びにセパレータを備えた蓄電デバイスであって、
前記正極における電気化学的充電過程が、遷移電圧を境にして、低電圧側領域における前記オニウム塩のアニオンの吸着過程と、高電圧側領域における前記オニウム塩のアニオンのインターカレーション過程との2段階逐次充電過程を示すことを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
使用時の充放電領域として、前記オニウム塩のアニオンがインターカレーションしている電圧領域のみが利用されることを特徴とする請求項1記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記遷移電圧が、1.5V〜2.5Vの範囲に設定されることを特徴とする請求項1または2記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記正極の活物質として黒鉛質材料が使用され、
前記負極の活物質として、正極の活物質として使用される黒鉛質材料より比表面積の大きい炭素質材料が使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記正極の活物質として使用される黒鉛質材料のd(002)層間距離が0.340nm以下であり、比表面積が10m2/g未満であることを特徴とする請求項4記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記正極の活物質として使用される黒鉛質材料が、菱面体構造を含有しないことを特徴とする請求項5記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
前記オニウム塩のアニオンが、PF6−およびBF4−の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、前記オニウム塩のアニオンがインターカレーションしている電圧領域のみを使用することを特徴とする蓄電システム。
【請求項9】
前記オニウム塩のアニオンがインターカレーションしている電圧領域のみを使用時の電圧として制御する電圧制御機構を有する請求項8記載の蓄電システム。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、
正極の活物質が黒鉛質材料であり、
蓄電デバイスとしての使用時の充電時に、正極容量が47mAh/g〜31mAh/gの範囲になるように、且つ黒鉛質材料の層間距離が0.434nm〜0.337nmの範囲になるように充電電圧を制御することを特徴とする蓄電システム。
【請求項11】
請求項10記載の蓄電システム、または請求項1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、
蓄電デバイスとしての使用時において、充電時の正極電位が対Li+/Li電極基準で、5.2V以下の範囲で制御することを特徴とする蓄電システム。
【請求項12】
請求項10または11記載の蓄電システム、または請求項1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスを備える蓄電システムであって、
蓄電デバイスとしての使用時において、充電電圧3.2V以下の範囲で使用されることを特徴とする蓄電システム。
【請求項13】
充電前の黒鉛質材料の層間距離が0.336nm以下であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の蓄電システム。
【請求項14】
充電曲線の1.8Vから3V間において、前記黒鉛質材料の静電容量が390F/g以上であることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の蓄電システム。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスまたは請求項8〜14のいずれかに記載の蓄電システムを備えた電子機器。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスまたは請求項8〜14のいずれかに記載の蓄電システムを備えた動力システム。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれかに記載の蓄電デバイスの電解液分解開始電圧を制御する方法であって、この分解開始電圧の制御を、前記遷移電圧を変更することにより行うことを特徴とする方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−49142(P2012−49142A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230152(P2011−230152)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【分割の表示】特願2008−515592(P2008−515592)の分割
【原出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【分割の表示】特願2008−515592(P2008−515592)の分割
【原出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】
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