説明

蓄電デバイス

【課題】蓄電デバイスに電圧を発生させるタイミングを自在に設定することにより、蓄電デバイスを取り扱う際の安全性を向上させる。
【解決手段】外装容器13内には正極12と負極11とを積層した電極積層ユニット14が配置される。また、電極積層ユニット14の上方にはリチウムイオン供給源16が負極11に対向して配置される。負極11とリチウムイオン供給源16との間にはセパレータ20が設けられ、負極11とリチウムイオン供給源16との絶縁状態が保たれている。リチウムイオン供給源16に対向する負極集電体11aには多数の突起部21が形成され、外装容器13の外側から圧力を加えることにより、突起部21によってセパレータ20を貫くことが可能となる。これにより、負極11とリチウムイオン供給源16とを短絡させることができるため、任意のタイミングで負極11にリチウムイオンを担持させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極と正極との少なくともいずれか一方にイオンを担持させるようにした蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題がクローズアップされる中、電気自動車やハイブリッド自動車の開発が盛んに行われており、これらの自動車に搭載される蓄電デバイスの開発についても積極的に取り組まれている。電気自動車やハイブリッド自動車用の蓄電デバイスとしては、高エネルギ密度や高出力密度が要求されることから、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタ等が候補として挙げられている。しかしながら、リチウムイオン二次電池にあっては、エネルギ密度は高いものの出力密度が低いという課題を有しており、電気二重層キャパシタにあっては、出力密度は高いもののエネルギ密度が低いという課題を有している。
【0003】
そこで、エネルギ密度と出力密度との双方を満足させるため、リチウムイオン二次電池と電気二重層キャパシタの蓄電原理を組み合わせたハイブリッドキャパシタとも呼ばれる蓄電デバイスが提案されている。このハイブリッドキャパシタは、正極に電気二重層キャパシタの活性炭を採用することにより、正極では電気二重層を利用して電荷を蓄積する一方、負極にリチウムイオン二次電池の炭素材料を採用することにより、負極では炭素材料にリチウムイオンをドープさせることによって電荷を蓄積している。このような蓄電機構を採用することにより、電気二重層キャパシタの高出力密度とリチウムイオン二次電池の高エネルギ密度とを兼ね備えることが可能となっている。
【0004】
また、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタにおいて、負極の炭素材料に予めリチウムイオンを担持(ドープ)させるようにした蓄電デバイスも提案されている。負極に対してリチウムイオンを担持させることにより、負極電位を低下させて出力電圧を上昇させることができるため、蓄電デバイスのエネルギ密度を大幅に上昇させることが可能となっている(たとえば、特許文献1参照)。さらに、蓄電デバイス内の負極に対して一様にリチウムイオンを担持させるとともに担持に必要な時間を短縮させるため、対向する負極と金属リチウムとを電気化学的に接触させる方法が提案されている。この方法においては、正極集電体や負極集電体にリチウムイオンが通過する貫通孔を形成することにより、積層される電極間においてスムーズにリチウムイオンを移動させるようにしている(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−107048号公報
【特許文献2】国際公開第98/33227号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2に記載された蓄電デバイスにあっては、負極にリチウムイオンを担持させるため、金属リチウムを負極に接触させた状態で配置するようにしている。つまり、負極と金属リチウムとが既に短絡した状態であるため、ラミネートパック内に電解液を注入した時点からリチウムイオンの移動が可能となり、負極に対するリチウムイオンの担持が開始されることになる。このように、電解液の注入に伴ってリチウムイオンの担持が開始されると、負極に電荷が蓄積されて蓄電デバイスに電圧が発生することになるため、完成後の蓄電デバイスを取り扱う各種工程においては、感電等に対する安全対策を講じることが求められていた。
【0006】
つまり、蓄電デバイスを取り扱う際の安全性を確保するためには、感電等を回避するための製造設備を設ける必要や、作業者に対して安全教育等を施す必要があるが、これらは蓄電デバイスが組み込まれる機器の製造コストを引き上げる要因になっていた。また、感電等の事故リスクを軽減するためには、蓄電デバイスの出力電圧を引き下げる必要があるが、このように出力電圧を引き下げることは蓄電デバイスのエネルギ密度を低下させる要因となる。
【0007】
本発明の目的は、負極と正極との少なくともいずれか一方にイオンを担持させるタイミング、つまり蓄電デバイスに電圧を発生させるタイミングを自在に設定することにより、蓄電デバイスを取り扱う際の安全性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蓄電デバイスは、負極と、正極と、イオン供給源と、イオンを移送可能な電解質系とを有する蓄電デバイスであって、前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方と前記イオン供給源との間に絶縁要素を組み付け、外装容器の外側からエネルギを加えることにより、前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方と前記イオン供給源とを短絡させ、前記イオン供給源からイオンを放出させることを特徴とする。
【0009】
本発明の蓄電デバイスは、前記外装容器に加えられるエネルギは圧力エネルギであることを特徴とする。
【0010】
本発明の蓄電デバイスは、前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方に前記絶縁要素に対向する突起部を形成し、前記突起部によって前記絶縁要素を貫くことにより、前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方と前記イオン供給源とを短絡させることを特徴とする。
【0011】
本発明の蓄電デバイスは、前記イオン供給源はイオン供給金属とこれに接続される金属部材とを備え、前記負極と前記正極と前記金属部材との少なくとも何れか一つに前記絶縁要素に対向する突起部を形成し、前記突起部によって前記絶縁要素を貫くことにより、前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方と前記金属部材とを短絡させることを特徴とする。
【0012】
本発明の蓄電デバイスは、前記負極と前記正極とが積層される積層領域に前記突起部を形成することを特徴とする。
【0013】
本発明の蓄電デバイスは、複数の前記負極または複数の前記正極が接合される接合領域に前記突起部を形成することを特徴とする。
【0014】
本発明の蓄電デバイスは、前記外装容器に加えられるエネルギは熱エネルギであることを特徴とする。
【0015】
本発明の蓄電デバイスは、前記絶縁要素は熱エネルギによって収縮する熱収縮材であることを特徴とする。
【0016】
本発明の蓄電デバイスは、前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方と前記イオン供給源とを、熱エネルギによって導通状態となる熱感応素子を介して接続することを特徴とする。
【0017】
本発明の蓄電デバイスは、前記イオン供給源はイオン供給金属とこれに接続される金属部材とを備え、前記熱収縮材は前記金属部材に対向して配置され、前記熱収縮材を収縮させることにより、前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方と前記金属部材とを短絡させることを特徴とする。
【0018】
本発明の蓄電デバイスは、前記イオン供給源はイオン供給金属とこれに接続される金属部材とを備え、前記熱感応素子は前記金属部材に接続され、前記熱感応素子を導通状態とすることにより、前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方と前記金属部材とを短絡させることを特徴とする。
【0019】
本発明の蓄電デバイスは、前記熱収縮材は多孔質材料によって形成されることを特徴とする。
【0020】
本発明の蓄電デバイスは、前記熱感応素子はバイメタルまたはサーミスタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、負極と正極との少なくとも何れか一方とイオン供給源との間に絶縁要素を組み付け、外装容器の外側からエネルギを加えることにより、負極と正極との少なくとも何れか一方とイオン供給源とを短絡させるようにしたので、負極と正極との少なくとも何れか一方に対してイオンを担持させるタイミングを自在に設定することが可能となる。つまり、蓄電デバイスに電圧を発生させるタイミングを自在に設定することができるため、製造工程等において蓄電デバイスを取り扱う際の安全性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の一実施の形態である蓄電デバイス10の内部構造を示す斜視図であり、図2(A)および(B)は蓄電デバイス10の内部構造を示す断面図である。なお、図2(A)には負極11に対するリチウムイオン担持前の状態が示され、図2(B)には負極11に対するリチウムイオン担持中の状態が示されている。
【0023】
図1に示すように、蓄電デバイス10の外装容器13を構成するラミネートフィルム13a,13bの内側には電極積層ユニット14が配置されており、この電極積層ユニット14はセパレータ15を介して交互に積層される正極12と負極11とによって構成されている。また、電極積層ユニット14の上方にはリチウムイオン供給源(イオン供給源)16が負極11に対向するように配置されており、電極積層ユニット14とリチウムイオン供給源16とによって三極積層ユニット17が構成されている。なお、熱溶着等によって封止されるラミネートフィルム13a,13b内には、リチウムイオンを移送可能な電解液(電解質系)が注入されている。
【0024】
図2(A)に示すように、正極12は、多数の貫通孔を備える正極集電体12aと、この正極集電体12aに一体に設けられる正極活物質層12bとを備えている。また、負極11は、多数の貫通孔を備える負極集電体11aと、この負極集電体11aに一体に設けられる負極活物質層11bとを備えている。正極12と負極11との間にはセパレータ15が設けられており、このセパレータ15によって正極12と負極11との絶縁状態が保たれている。また、複数の正極集電体12aは接合部12cにおいて相互に接続されており、この接合部12cには正極端子18が接続されている。同様に、複数の負極集電体11aは接合部11cにおいて相互に接続されており、この接合部11cには負極端子19が接続されている。なお、ラミネートフィルム13a,13bを封止して外装容器13を形成する際には、正極端子18と負極端子19とを挟み込んだ状態でラミネートフィルム13a,13bを溶着させることにより、正極端子18と負極端子19との先端部を蓄電デバイス10の外部に突出させるようにしている。
【0025】
図示する蓄電デバイス10は、正極12の正極活物質層12bにリチウムイオンやアニオンを可逆的に担持可能な正極活物質を含有させることにより、電気二重層を利用して正極12に電荷を蓄積させる一方、負極11の負極活物質層11bにリチウムイオンを可逆的に担持可能な負極活物質を含有させることにより、リチウムイオンを可逆的に担持させることによって負極11に電荷を蓄積させるようにしたキャパシタとなっている。また、負極11に対して予めリチウムイオンを担持(ドープ)させ、負極11の電位を低下させるとともに負極11の容量を高めることにより、従来の電気二重層キャパシタに比べてエネルギ密度を大幅に向上させることが可能となっている。
【0026】
前述したように、負極11に対して予めリチウムイオンを担持させるため、蓄電デバイス10内にはリチウムイオン供給源16が設けられており、このリチウムイオン供給源16は、多数の貫通孔を備えるリチウム極集電体16aと、これに一体となる金属リチウム16bとによって構成されている。また、負極11とリチウムイオン供給源16との間には絶縁要素としてのセパレータ20が挟み込まれており、このセパレータ20によって負極11とリチウムイオン供給源16との絶縁状態が保たれている。このように、負極11とリチウムイオン供給源16との絶縁状態を保つ構造を採用することにより、ラミネートフィルム13a,13b内に電解液が注入された場合であっても、金属リチウム16bからイオン化してリチウムイオンが電解液中に放出されることはなく、負極11に対するリチウムイオンの担持を進行させない構造となっている。つまり、蓄電デバイス10が完成したとしても、負極11に対してリチウムイオンが担持されていないことから、負極11の電位が低下して蓄電デバイス10に電圧が発生してしまうことはなく、その後の組み付け工程等において安全に蓄電デバイス10を取り扱うことが可能となる。
【0027】
続いて、蓄電デバイス10を電源として機能させるために、負極11に対してリチウムイオンを担持させるための構造および手順について説明する。図3(A)は図2(A)におけるリチウムイオン供給源16の近傍を示す拡大断面図であり、図3(B)は図2(B)におけるリチウムイオン供給源16の近傍を示す拡大断面図である。図3(A)に示すように、セパレータ20を介してリチウムイオン供給源16に対向する負極11は、負極集電体11aの一方面にのみ負極活物質層11bを備える構造を有しており、負極活物質層11bが形成されていない負極集電体11aの他方面、つまりリチウムイオン供給源16との対向面には多数の突起部21が形成されている。そして、負極11に対してリチウムイオンを担持させる際には、図2(B)および図3(B)に示すように、ラミネートフィルム13a,13bの外側からエネルギとして所定の圧力(圧力エネルギ)を加えることにより、負極11とリチウムイオン供給源16とを絶縁するセパレータ20を突起部21によって突き破ることができ、負極11とリチウムイオン供給源16とを短絡(電気的に接触)させることが可能となる。
【0028】
このように、電解液中において負極11とリチウムイオン供給源16とを短絡させると、電荷移動に伴ってリチウムイオン供給源16からリチウムイオンが溶出し、リチウムイオンは電解液を介して負極11に担持されることになる。これにより、負極11の電位を低下させて蓄電デバイス10に電圧を生じさせることができるため、蓄電デバイス10を電源として機能させることが可能となる。なお、負極集電体11aや正極集電体12aには多数の図示しない貫通孔が形成されており、この貫通孔を介してリチウムイオンは各極間を自在に移動することができるため、積層される全ての負極活物質層11bに対して満遍なくリチウムイオンを担持させることが可能となる。また、金属リチウム16bはリチウムイオンを放出しながら減少し、最終的には全量が負極11に対して担持されることになるが、金属リチウム16bを多めに配置して一部を蓄電デバイス10内に残存させるようにしても良い。
【0029】
これまで説明したように、本発明の一実施の形態である蓄電デバイス10にあっては、負極集電体11aとリチウムイオン供給源16との間にセパレータ20を組み付け、リチウムイオン供給源16に対向する負極集電体11aに対して突起部21を形成するようにしたので、完成した蓄電デバイス10の外部から圧力を加えることにより、負極11とリチウムイオン供給源16とを電気的に接触させることが可能となる。これにより、負極11に対してリチウムイオンを担持させるタイミング、つまり蓄電デバイス10に電圧を発生させるタイミングを自在に設定することができるため、蓄電デバイス10を取り扱う際の安全性を向上させることが可能となる。また、電圧を発生させることなく蓄電デバイス10を完成させることができるため、蓄電デバイス10を取り扱う工程の設備等を簡素化することができ、蓄電デバイス10が組み込まれた機器の低コスト化を図ることが可能となる。さらに、安全性を高めるために蓄電デバイス10の出力電圧を引き下げる必要がないため、たとえば複数の蓄電デバイス10を接続して高電圧パックを製造する場合には、高電圧パックの電圧を維持しながら蓄電デバイス10の個数を削減することができ、高電圧パックの体積効率を向上させることが可能となる。
【0030】
続いて、前述した蓄電デバイス10について下記の順に詳細に説明する。[A]負極、[B]正極、[C]正極集電体および負極集電体、[D]イオン供給源、[E]絶縁要素、[F]電解液、[G]外装容器、[H]蓄電デバイスの製造方法。なお、蓄電デバイス10に関してその構造や製造方法を説明するが、これらの構造や製造方法については後述する蓄電デバイス30〜100に適用することも可能である。
【0031】
[A]負極
本発明の蓄電デバイス10において、負極11は、負極集電体11aとこれに一体となる負極活物質層11bとを有しており、負極活物質層11bにはリチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープすることが可能な負極活物質が含有されている。負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に担持できるものであれば特に限定されることはなく、例えばグラファイト、種々の炭素材料、ポリアセン系物質、錫酸化物、珪素酸化物等を挙げることができる。特に、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であり、水素原子/炭素原子の原子数比(H/C)が0.50〜0.05であるポリアセン系有機半導体(PAS)は負極活物質として好適である。このPASはアモルファス構造を有することから、リチウムイオンのドープ・脱ドープに対して膨潤・収縮といった構造変化がないためサイクル特性に優れており、リチウムイオンのドープ・脱ドープに対して等方的な分子構造であるため急速充電や急速放電にも優れた特性を有している。
【0032】
前述したPAS等の負極活物質は粉末状、粒状、短繊維状等に形成され、この負極活物質をバインダと混合してスラリーが形成される。そして、負極活物質を含有するスラリーを負極集電体11aに塗工して乾燥させることにより、負極集電体11a上に負極活物質層11bが形成される。なお、負極活物質と混合されるバインダとしては、例えばSBR等のゴム系バインダや、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いることができ、これらの中でもフッ素系バインダを用いることが好ましい。また、負極活物質層11bに対して、アセチレンブラック、グラファイト、金属粉末等の導電性材料を適宜加えるようにしても良い。なお、本発明において、負極集電体の片面及び/又は両面に負極活物質層が塗布されている電極を負極11とする。
【0033】
[B]正極
本発明の蓄電デバイス10において、正極12は、正極集電体12aとこれに一体となる正極活物質層12bとを有しており、正極活物質層12bにはリチウムイオンやアニオン(例えばテトラフルオロボレート等)を可逆的に担持することが可能な正極活物質が含有されている。正極活物質としては、リチウムイオンやアニオンを可逆的に担持できるものであれば特に限定されることはなく、例えば活性炭や導電性高分子、ポリアセン系物質等を挙げることができる。また、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であり、H/Cが0.50〜0.05であるPASを正極活物質として用いた場合には、高容量化を図ることができるために好適である。
【0034】
前述したPAS等の正極活物質は粉末状、粒状、短繊維状等に形成され、この正極活物質をバインダと混合してスラリーが形成される。そして、正極活物質を含有するスラリーを正極集電体12aに塗工して乾燥させることにより、正極集電体12a上に正極活物質層12bが形成される。なお、正極活物質と混合されるバインダとしては、例えばSBR等のゴム系バインダやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。また、正極活物質層12bに対して、アセチレンブラック、グラファイト、金属粉末等の導電性材料を適宜加えるようにしても良い。なお、本発明において、正極集電体の片面及び/又は両面に正極活物質層が塗布されている電極を正極12とする。
【0035】
[C]正極集電体および負極集電体
本発明の蓄電デバイス10に用いられる正極集電体12aおよび負極集電体11aとしては、表裏面を貫く貫通孔を備えているものが好適であり、例えばエキスパンドメタル、パンチングメタル、網、発泡体等を挙げることができる。貫通孔の形状や個数等については、特に限定されることはなく、リチウムイオンの移動を阻害しないものであれば適宜設定することが可能である。また、正極集電体12aおよび負極集電体11aの材質としては、一般に有機電解質電池に提案されている種々の材質を用いることが可能である。たとえば、正極集電体12aの材質として、アルミニウム、ステンレス鋼等を用いることができ、負極集電体11aの材質として、ステンレス鋼、銅、ニッケル等を用いることができる。
【0036】
また、負極11とイオン供給源16とを短絡させて電気化学的に接触させるため、負極集電体11aの1つには多数の突起部21が形成されているが、図示する突起部21の形状や個数等に限られることはなく、加えられる圧力の大きさやセパレータ20の種類等に応じて適宜設定されることになる。例えば、突起部21の形状としては、図示する円錐形状に限られることはなく、三角錐形状、円柱形状、半球状等、凹凸を有する形状であれば適宜設定することが可能である。また、負極集電体11aに対して突起部21を形成する際には、プレス加工によって突起部21を形成しても良く、サンドブラスト加工やエッチング加工等によって突起部21を形成しても良い。さらに、負極集電体11aの表面に金属粒子を析出させることにより、負極集電体11aに対して突起部21を形成するようにしても良い。さらに、負極集電体11aとしてパンチングメタル等を使用する場合には、貫通孔を形成する際に生じるバリを突起部21として用いることも可能である。
【0037】
[D]イオン供給源
本発明の蓄電デバイス10にはリチウムイオン供給源16が設けられており、このリチウムイオン供給源16は、ステンレスメッシュ等の導電性多孔体からなるリチウム極集電体16aと、これに貼り付けられた金属リチウム16bとによって構成されている。また、リチウムイオン供給源16を構成する金属リチウム16bに代えて、リチウム−アルミニウム合金のように、リチウムイオンを供給することが可能な合金等を用いるようにしても良い。なお、金属リチウム16bをリチウム極集電体16aによって支持するとともに、リチウムイオンを担持させる際に負極集電体11aとリチウム極集電体16aとを接触させることにより、金属リチウム16bの消失に伴って電極間に生じる隙間を少なくすることができ、リチウムイオンを負極11に対してスムーズに担持させることが可能となる。また、リチウム極集電体16aの厚さは10〜200μm程度が好ましく、金属リチウム16bの厚さは負極活物質量にもよるが50〜300μm程度が好ましい。なお、リチウム極集電体16aを負極集電体11aや正極集電体12aと同じ材料によって形成することも可能である。
【0038】
[E]絶縁要素
本発明の蓄電デバイス10に使用されるセパレータ15,20としては、電解液、正極活物質、負極活物質等に対して耐久性があり、連通気孔を有する電気伝導性のない多孔質体等を用いることができる。このセパレータ15,20の材質としては、セルロース(紙)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの既知のものを使用することが可能である。また、負極11とリチウムイオン供給源16との間に配置されるセパレータ20としては、前述した材質に限られることはなく、負極集電体11aやリチウム極集電体16aの表面に絶縁被膜を形成することにより、この絶縁被膜をセパレータ20として機能させることも可能である。
【0039】
[F]電解液
本発明の蓄電デバイス10には、リチウムイオンを移送可能な電解液が用いられる。この電解液としては、高電圧でも電気分解を起こさないという点、リチウムイオンが安定に存在できるという点から、リチウム塩を含む非プロトン性有機溶媒を用いることが好ましい。非プロトン性有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン等を単独あるいは混合した溶媒が挙げられる。また、リチウム塩としては、例えばLiI、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF等が挙げられる。また、電解液中の電解質濃度は、電解液による内部抵抗を小さくするため、少なくとも0.1モル/l以上とすることが好ましく、0.5〜1.5モル/lの範囲内とすることが更に好ましい。なお、ゲル状の電解液(電解質系)を用いるようにしても良く、固体電解質(電解質系)を用いるようにしても良い。
【0040】
[G]外装容器
本発明の蓄電デバイス10に使用される外装容器13としては、一般に電池に用いられている種々の材質を用いることができ、鉄やアルミニウム等の金属材料を使用しても良く、フィルム材料等を使用しても良い。また、外装容器13の形状についても特に限定されることはなく、円筒型や角型など用途に応じて適宜選択することが可能であるが、蓄電デバイス10の小型化や軽量化の観点からは、アルミニウムのラミネートフィルム13a,13bを用いたフィルム型の外装容器13を用いることが好ましい。一般的には、外側にナイロンフィルム、中心にアルミニウム箔、内側に変性ポリプロピレン等の接着層を有した3層ラミネートフィルム13a,13bが用いられている。また、ラミネートフィルム13a,13bは、中に入る電極等のサイズに合わせて深絞りされているのが一般的であり、深絞りされるラミネートフィルム13a,13b内に電極積層ユニット14を設置して電解液を注入した後、ラミネートフィルム13a,13bの外周部は熱溶着等によって封止される構成となっている。
【0041】
[H]蓄電デバイスの製造方法
以下、本発明における蓄電デバイスの製造方法の一例を示す。
【0042】
(負極の製造方法)
ポリフッ化ビニリデン粉末10重量部をN−メチルピロリドン80重量部に溶解した溶液に、PAS粉末100重量部を十分に混合することにより、負極活物質層11bを形成するためのスラリーを得た。続いて、厚さ32μmの銅製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製)の両面に、スラリーをダイコーターによって塗工して乾燥させることにより、プレス後における負極全体の厚みが148μmとなる負極11を得た。また、厚さ32μmの銅製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製)の片面に、スラリーをダイコーターによって塗工して乾燥させることにより、プレス後における負極全体の厚みが148μmとなる負極11を得た。
【0043】
(正極の製造方法)
ポリフッ化ビニリデン粉末10重量部をN−メチルピロリドン100重量部に溶解した溶液に、市販の比表面積が1950m/gとなる活性炭粉末100重量部を十分に混合することにより、正極活物質層12bを形成するためのスラリーを得た。続いて、厚さ35μmのアルミニウム製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製)の両面に、非水系のカーボン系導電塗料(日本アチソン株式会社製EB−815)をスプレー方式でコーティングし、これを乾燥させることにより導電層が形成された正極集電体12aを得た。この正極集電体12aの厚み(集電体厚みと導電層厚みの合計)は52μmであり、正極集電体12aに形成される貫通孔は導電塗料によってほぼ閉塞された。そして、導電層が形成された正極集電体12aの両面に、スラリーをロールコーターによって塗工して乾燥させることにより、プレス後における正極全体の厚みが182μmとなる正極12を得た。
【0044】
(電極積層ユニットの製造方法)
負極11を6.0cm×7.5cm(接合部11cを除く)のサイズに切り出し、正極12を5.8cm×7.3cm(接合部12cを除く)のサイズに切り出した。続いて、セパレータ15としてのセルロース/レーヨン混合不織布(厚さ35μm)を間に挟み込むとともに、正極12と負極11との接合部11c,12cをそれぞれ反対側に向けながら、正極12と負極11とを交互に積層した。そして、正極集電体12aの接合部(3枚)12cとアルミ二ウム製の正極端子18(幅50mm、厚さ0.2mm)とを超音波溶接し、負極集電体11aの接合部(3枚)11cと銅製の負極端子19(幅50mm、厚さ0.2mm)とを超音波溶接することにより電極積層ユニット14を得た。なお、電極積層ユニット14は、一対の正極12および負極11からなる電極対を5層有しているが、電極対の層数は図示する層数に限定されることはなく、1層の電極対によって電極積層ユニットを構成しても良く、2層以上の電極対によって電極積層ユニットを構成しても良い。
【0045】
(蓄電デバイスの組立方法)
続いて、電極積層ユニット14の上方に、セパレータ20を介して負極11に対向するリチウムイオン供給源16を配置し、正極12、負極11、リチウムイオン供給源16からなる三極積層ユニット17を得た。リチウムイオン供給源16としては、ステンレス網(厚さ80μm)に対して金属リチウム箔(厚さ82μm、サイズ6.0cm×7.5cm)を圧着したものを用いた。また、外装容器13との短絡を回避するため三極積層ユニット17にセパレータ22を巻き付けた後に、この三極積層ユニット17を6.5mm深絞りしたラミネートフィルム13a,13bの内部へ配置し、ラミネートフィルム13a,13bの三辺を溶着した。次いで、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートおよびプロピレンカーボネートを重量比で3:4:1とした混合溶媒に、1モル/Lの濃度のLiPF6を溶解した電解液をラミネートフィルム13a,13b内に真空含浸させた。そして、ラミネートフィルム13a,13bの残り1辺を溶着することにより、フィルム型の蓄電デバイス10を組み立てた。
【0046】
このように、蓄電デバイス10が組み立てられた状態では、負極11に対してリチウムイオンが担持されていないため、蓄電デバイス10に電圧が発生していない状態となっている。そこで、負極11とリチウムイオン供給源16とを接触させて負極11にリチウムイオンを担持させるため、組み立てられた蓄電デバイス10に加圧装置を用いて1気圧(ゲージ圧)を10日間に渡って加圧し続けた。その後、蓄電デバイス10を分解したところ、蓄電デバイス10内の金属リチウム16bが完全に消失していたことから、負極11に対してリチウムイオンが担持されたと判断した。
【0047】
なお、前述の説明では、負極11に対してリチウムイオンを担持させるようにしているが、これに限られることはなく、正極12とリチウムイオン供給源16とを接触させることにより、正極12に対してリチウムイオンを担持させるようにしても良い。また、複数のリチウムイオン供給源16を組み込むことにより、負極11と正極12とのそれぞれをリチウムイオン供給源16に接触させることにより、負極11および正極12のそれぞれに対してリチウムイオンを担持させるようにしても良い。また、負極11と正極12とのいずれか一方にリチウムイオンを担持させる場合であっても、複数のリチウムイオン供給源16を組み込むことにより、複数回に分けてリチウムイオンを担持させるようにしても良い。このような構造を採用することにより、蓄電デバイス10の劣化状態に応じてリチウムイオンを担持させることが可能となり、必要に応じて蓄電デバイス10の能力回復を図ることが可能となる。ただし、例えば正極12に活性炭を用いた場合、リチウムイオンの担持量が多くなり正極電位が低くなると、リチウムイオンを不可逆に消費してしまい、セルの容量が低下してしまうなどの不具合が生じる場合があるので、負極11と正極12とに供給するリチウムイオンの量は不具合が生じないように適宜制御することが必要である。
【0048】
これまで説明したように、リチウムイオン供給源16に対向する負極集電体11aに対して突起部21を形成するようにしたので、完成した蓄電デバイス10の外部から圧力を加えることにより、セパレータ20を突起部21によって貫くことができ、負極11とリチウムイオン供給源16とを短絡させることが可能となる。これにより、負極11に対してリチウムイオンを担持させるタイミング、つまり蓄電デバイス10に電圧を発生させるタイミングを自在に設定することができるため、蓄電デバイス10を取り扱う際の安全性を向上させることが可能となる。
【0049】
続いて、本発明の他の実施の形態について説明する。図4は本発明の他の実施の形態である蓄電デバイス30の内部構造を示す斜視図であり、図5(A)および(B)は蓄電デバイス30の内部構造を示す断面図である。また、図5(A)には負極11に対するリチウムイオン担持前の状態が示され、図5(B)には負極11に対するリチウムイオン担持中の状態が示されている。なお、図1および図2に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図4および図5(A)に示すように、電極積層ユニット14の上方に配置されるリチウムイオン供給源(イオン供給源)31は、金属板(金属部材)31aとこれに一体となる金属リチウム31bとによって構成されており、セパレータ20を介して負極11に対向するようになっている。また、リチウムイオン供給源16を構成する金属板31aは、金属リチウム31bが取り付けられる支持板部32と、複数の突起部33が形成される接続板部34とによって構成されている。さらに、セパレータ15を介して接続板部34に対向する負極集電体11aの対向面には複数の突起部35が形成されている。
【0051】
このように、負極11とリチウムイオン供給源31との間にセパレータ20を組み付けるとともに、リチウムイオン供給源31を構成する金属板31aに突起部33を形成し、金属板31aに対向する負極集電体11aに突起部35を形成するようにしたので、外装容器13の外側から接続板部34上に圧力を加えることにより、図5(B)に示すように、負極11とリチウムイオン供給源31とを短絡させて負極11にリチウムイオンを担持させることが可能となる。つまり、負極11とリチウムイオン供給源31とを接続する際に、金属板31aと負極集電体11aとを接続するようにしたので、リチウムイオンの放出に伴って金属リチウム31bが減少する場合であっても、負極11とリチウムイオン供給源31との接続状態を確実に保持することができ、負極11に対してリチウムイオンを確実に担持させることが可能となる。なお、図示する場合には、金属板31aに突起部33を形成するとともに、負極集電体11aに突起部35を形成しているが、これに限られることはなく、金属板31aだけに突起部33を形成しても良く、負極集電体11aだけに突起部35を形成しても良い。
【0052】
続いて、本発明の他の実施の形態について説明する。図6は本発明の他の実施の形態である蓄電デバイス40の内部構造を示す斜視図であり、図7(A)および(B)は蓄電デバイス40の内部構造を示す断面図である。また、図7(A)には負極11に対するリチウムイオン担持前の状態が示され、図7(B)には負極11に対するリチウムイオン担持中の状態が示されている。なお、図1および図2に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0053】
図6および図7(A)に示すように、電極積層ユニット14の上方に配置されるリチウムイオン供給源(イオン供給源)41は、セパレータ(絶縁要素)42を介して負極11に対向するとともに、その端部が負極11の接合部11cまで延びるように形成されている。また、リチウムイオン供給源41は、多数の貫通孔を備えるリチウム極集電体41aと、これに一体に設けられる金属リチウム41bとによって構成されており、リチウム極集電体41aは接合部11cに対向するように設けられている。さらに、リチウム極集電体41aに対する接合部11cの対向面には複数の突起部43が形成されている。
【0054】
このように、接合部11c上にセパレータ42を介してリチウムイオン供給源41を配置するとともに、接合領域である接合部11cに複数の突起部43を形成するようにしたので、外装容器13の外側から接合部11c上に圧力を加えることにより、図7(B)に示すように、負極11とリチウムイオン供給源41とを短絡させて負極11にリチウムイオンを担持させることが可能となる。つまり、正極12および負極11の積層領域から外れた領域に圧力を加えることにより、大きな圧力を加える場合であっても電極積層ユニット14に影響を及ぼすことなく、負極11に対してリチウムイオンを担持させることが可能となる。
【0055】
続いて、本発明の他の実施の形態について説明する。図8は本発明の他の実施の形態である蓄電デバイス50の内部構造を示す斜視図であり、図9(A)および(B)は蓄電デバイス50の内部構造を示す断面図である。また、図9(A)には負極11に対するリチウムイオン担持前の状態が示され、図9(B)には負極11に対するリチウムイオン担持中の状態が示されている。なお、図1および図2に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図8および図9(A)に示すように、電極積層ユニット14の上方に配置されるリチウムイオン供給源(イオン供給源)51は、セパレータ(絶縁要素)52を介して負極11に対向するとともに、その端部が負極11の接合部11cまで延びるように形成されている。また、リチウムイオン供給源51は、接合部11cに対向する金属板51aと、負極11に対向する金属リチウム51bとによって構成されており、金属板51aと金属リチウム51bとは一体に接合されている。さらに、セパレータ52を介して相互に対向する金属板51aと接合部11cとには複数の突起部53,54が形成されている。
【0057】
このように、接合部11c上にセパレータ52を介してリチウムイオン供給源51を配置するとともに、金属板51aおよび接合部11cに複数の突起部53,54を形成するようにしたので、外装容器13の外側から接合領域である接合部11c上に圧力を加えることにより、図8(B)に示すように、負極11とリチウムイオン供給源51とを短絡させて負極11にリチウムイオンを担持させることが可能となる。つまり、正極12および負極11の積層領域から外れた領域に圧力を加えることにより、大きな圧力を加える場合であっても電極積層ユニット14に影響を及ぼすことなく、負極11に対してリチウムイオンを担持させることが可能となる。また、負極11とリチウムイオン供給源51とを接続する際には、金属板51aと接合部11cとを短絡させるようにしたので、リチウムイオンの放出に伴って金属リチウム51bが減少する場合であっても、負極11とリチウムイオン供給源51との接続状態を確実に保持することができ、負極11に対してリチウムイオンを確実に担持させることが可能となる。なお、図示する場合には、金属板51aに突起部53を形成するとともに、接合部11cに突起部54を形成しているが、これに限られることはなく、金属板51aだけに突起部53を形成しても良く、接合部11cだけに突起部54を形成しても良い。
【0058】
続いて、本発明の他の実施の形態について説明する。図10(A)および(B)は本発明の他の実施の形態である蓄電デバイス60の内部構造を示す断面図であり、図11(A)および(B)は蓄電デバイス60に用いられる負極集電体61の製造手順を示す説明図である。また、図10(A)には負極11に対するリチウムイオン担持前の状態が示され、図10(B)には負極11に対するリチウムイオン担持中の状態が示されている。なお、図1および図2に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
まず、図10(A)に示すように、リチウムイオン供給源16に対向する負極集電体61はエキスパンドメタルによって形成されており、このエキスパンドメタルの凹凸がセパレータ15を貫くための突起部62として機能するようになっている。図11(A)および(B)に示すように、エキスパンドメタルは複数のスリットが形成された金属箔を長手方向に引っ張ることによって製造され、完成したエキスパンドメタルには厚み方向に複数の凹凸が形成される。このようなエキスパンドメタルを負極集電体61として組み付けることにより、図10(B)に示すように、外装容器13の外側から圧力を加えることによって、負極11とリチウムイオン供給源16とを接続させて負極11にリチウムイオンを担持させることが可能となる。このように、エキスパンドメタルを使用することにより、負極集電体61に突起部62を形成するための製造工程を削減することができるため、蓄電デバイス60の低コスト化を達成することが可能となる。
【0060】
続いて、本発明の他の実施の形態について説明する。図12は本発明の他の実施の形態である蓄電デバイス70の内部構造を示す斜視図であり、図13(A)および(B)は蓄電デバイス70の内部構造を示す断面図である。また、図13(A)には負極11に対するリチウムイオン担持前の状態が示され、図13(B)には負極11に対するリチウムイオン担持中の状態が示されている。なお、図1および図2に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図12および図13(A)に示すように、電極積層ユニット14の上方に配置されるリチウムイオン供給源(イオン供給源)71は、セパレータ(絶縁要素)72を介して負極11に対向するとともに、その端部が負極11の接合部11cまで延びるように形成されている。また、リチウムイオン供給源71は、多数の貫通孔を備えるリチウム極集電体71aと、これに一体に設けられる金属リチウム71bとによって構成されており、リチウム極集電体71aは接合部11cに対向するように設けられている。さらに、接合部11cとリチウム極集電体71aとの間には、セパレータ(絶縁要素)として、熱エネルギによって収縮する熱収縮材73が設けられている。この熱収縮材73としては、例えばポリオレフィン等のフィルムが挙げられるが、熱エネルギによって収縮する絶縁材料であれば他の材料によって形成される熱収縮材を用いるようにしても良い。
【0062】
このように、熱収縮材73を介して負極11とリチウムイオン供給源71との絶縁状態を保つようにしたので、外装容器13の外側からエネルギとして熱(熱エネルギ)を加えて熱収縮材73を収縮させることにより、図13(B)に示すように、負極11とリチウムイオン供給源71とを短絡させて負極11にリチウムイオンを担持させることが可能となる。このように、外部から熱を加えることにより、負極11に対してリチウムイオンを担持させる場合であっても、リチウムイオンを担持させるタイミング、つまり蓄電デバイス70に電圧を発生させるタイミングを自在に設定することができるため、蓄電デバイス70を取り扱う際の安全性を向上させることが可能となる。なお、外装容器13内はほぼ真空状態に保たれるため、熱収縮材73を収縮させることにより、大気圧によって負極11とリチウムイオン供給源71とを短絡させることが可能となっている。
【0063】
続いて、本発明の他の実施の形態について説明する。図14は本発明の他の実施の形態である蓄電デバイス80の内部構造を示す斜視図であり、図15(A)および(B)は蓄電デバイス80の内部構造を示す断面図である。また、図15(A)には負極11に対するリチウムイオン担持前の状態が示され、図15(B)には負極11に対するリチウムイオン担持中の状態が示されている。なお、図1および図2に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図14および図15(A)に示すように、電極積層ユニット14の上方に配置されるリチウムイオン供給源(イオン供給源)81は、絶縁要素として機能する熱収縮材82を介して負極11に対向するとともに、その端部が負極11の接合部11cまで延びるように形成されている。また、リチウムイオン供給源81は、多数の貫通孔を備えるリチウム極集電体81aと、これに一体となる金属リチウム81bとによって構成されている。なお、熱エネルギによって収縮する熱収縮材82は、多孔質材料によって形成されるとともに厚み方向に貫通する多数の貫通孔を備えている。
【0065】
このように、熱収縮材82を介して負極11とリチウムイオン供給源81との絶縁状態を保つようにしたので、外装容器13の外側から熱を加えて熱収縮材を収縮させることにより、図15(B)に示すように、負極11とリチウムイオン供給源81とを短絡させることができ、負極11に対してリチウムイオンを担持させることが可能となる。また、熱収縮材82を多孔質材料によって形成するようにしたので、熱収縮材82の貫通孔を介してリチウムイオンを移動させることができるため、リチウムイオンを満遍なく負極11に対して担持させることが可能となる。さらに、負極11とリチウムイオン供給源81との間の絶縁要素を1種類にすることができるため、図12に示す蓄電デバイス70に比べて、蓄電デバイス80の低コスト化を達成することも可能となる。
【0066】
続いて、本発明の他の実施の形態について説明する。図16は本発明の他の実施の形態である蓄電デバイス90の内部構造を示す斜視図であり、図17(A)および(B)は蓄電デバイス90の内部構造を示す断面図である。また、図17(A)には負極11に対するリチウムイオン担持前の状態が示され、図17(B)には負極11に対するリチウムイオン担持中の状態が示されている。なお、図1および図2に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図16および図17(A)に示すように、電極積層ユニット14の上方に配置されるリチウムイオン供給源(イオン供給源)91は、セパレータ20を介して負極11に対向するように設けられている。また、リチウムイオン供給源91は、セパレータ20を介して負極集電体11aに対向する金属リチウム91bと、この金属リチウム91bを支持するリチウム極集電体91aとによって構成されている。そして、リチウム極集電体91aと接合部11cとの間には、熱感応素子であるバイメタル92が設けられている。このバイメタル92は熱膨張率の異なる金属片を貼り合わせた構造を有しており、温度に応じて導通状態と切断状態とに切り換えることが可能となっている。
【0068】
このように、バイメタル92を介して負極11とリチウムイオン供給源91とを接続するようにしたので、外装容器13の外側からエネルギとして熱(熱エネルギ)を加えてバイメタル92を導通状態に切り換えることにより、図17(B)に示すように、負極11とリチウムイオン供給源91とを接続することができ、負極11に対してリチウムイオンを担持させることが可能となる。また、熱感応素子としてはバイメタル92に限られることはなく、熱感応素子として温度変化によって端子間抵抗が大きく変化するサーミスタを組み付けるようにしても良い。
【0069】
続いて、本発明の他の実施の形態について説明する。図18(A)は本発明の他の実施の形態である蓄電デバイス100の内部構造を示す断面図であり、図18(B)および(C)は符号αの範囲で蓄電デバイス100の内部構造を示す拡大断面図である。また、図18(B)には負極101に対するリチウムイオン担持前の状態が示され、図18(C)には負極101に対するリチウムイオン担持中の状態が示されている。
【0070】
まず、図18(A)に示すように、図示する蓄電デバイス100は、電極捲回ユニット102を外装容器としての金属缶103に収容した捲回型の蓄電デバイス100である。この蓄電デバイス100が備える電極捲回ユニット102は、正極104、負極101、セパレータ105を重ね合わせて巻くことによって形成されている。また、電極捲回ユニット102と金属缶103との間にはリチウムイオン供給源(イオン供給源)106が配置されており、リチウムイオン供給源106と負極101との間には絶縁要素としてのセパレータ107が設けられている。さらに、蓄電デバイス100は、金属缶103から突出する棒状の正極端子108と負極端子109とを備えており、正極端子108には正極104の端部が接続される一方、負極端子109には負極101の端部が接続されている。なお、金属缶103内にはリチウムイオンを移送可能な電解液(電解質系)が注入されている。
【0071】
図18(B)に示すように、正極104は、多数の貫通孔を備える正極集電体104aと、この正極集電体104aに一体に設けられる正極活物質層104bとを備えている。また、負極101は、多数の貫通孔を備える負極集電体101aと、この負極集電体101aに一体に設けられる負極活物質層101bとを備えている。正極104と負極101との間にはセパレータ105が設けられており、このセパレータ105によって正極104と負極101との絶縁状態が保たれている。また、セパレータ107を介して負極101に対向するリチウムイオン供給源106は、多数の貫通孔を備えるリチウム極集電体106aと、これに一体に設けられる金属リチウム106bとによって構成されている。さらに、リチウムイオン供給源106に対向する負極101は、負極集電体101aの一方面にのみ負極活物質層101bを備える構造を有しており、負極活物質層101bが形成されていない負極集電体101aの他方面、つまりリチウムイオン供給源106との対向面には多数の突起部110が形成されている。そして、負極101に対してリチウムイオンを担持させる際には、図18(C)に示すように、金属缶103の外側からエネルギとして所定の圧力(圧力エネルギ)を加えることにより、負極101とリチウムイオン供給源106との間のセパレータ107を突起部110によって突き破ることができ、負極101とリチウムイオン供給源106とを電気的に接触させることが可能となっている。
【0072】
このように、捲回型の蓄電デバイス100であっても、負極集電体101aとリチウムイオン供給源106との間にセパレータ107を組み付け、リチウムイオン供給源106に対向する負極集電体101aに対して突起部110を形成するようにしたので、完成した蓄電デバイス100の外部から圧力を加えることにより、負極101とリチウムイオン供給源106とを電気的に接触させることが可能となる。これにより、負極101に対してリチウムイオンを担持させるタイミング、つまり蓄電デバイス100に電圧を発生させるタイミングを自在に設定することができるため、蓄電デバイス100を取り扱う際の安全性を向上させることが可能となる。
【0073】
なお、図示する場合には、負極集電体101aや正極集電体104aにリチウムイオンを通過させるための貫通孔が形成されるため、電極捲回ユニット102の一方の側面にのみリチウムイオン供給源106を配置するようにしている。しかしながら、貫通孔が形成されていない負極集電体や正極集電体を使用する場合には、負極101と正極104との間に挟み込むようにリチウムイオン供給源106を配置することが必要である。また、図示する場合には、負極集電体101aに突起部110を形成しているが、これに限られることはなく、蓄電デバイス100に対して熱を加えてリチウムイオンを担持させる場合には、負極101とリチウムイオン供給源106との間に熱収縮材を組み込んでも良く、負極101とリチウムイオン供給源106とを熱感応素子を介して接続しても良い。
【0074】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、蓄電デバイスとしてはキャパシタに限られることはなく、蓄電デバイスとしてのリチウムイオン二次電池に対して本発明を適用するようにしても良い。また、前述の説明では、イオン供給源としてリチウムイオンを放出するリチウムイオン供給源を配置するようにしているが、マグネシウムイオンやナトリウムイオン等を放出するイオン供給源を用いるようにしても良い。
【0075】
また、熱の供給によってリチウムイオンを担持させるようにした蓄電デバイス70,80,90にあっては、充放電持に発生する熱を利用することにより、負極11とリチウムイオン供給源71,81,91とを短絡させるようにしても良い。つまり、蓄電デバイス70,80,90にあっては、外部から電気エネルギを加えることにより、リチウムイオンの担持を開始させることが可能となっている。たとえば、検査工程等において実行される充放電を利用した場合には、蓄電デバイス70,80,90の加熱工程を省略することができるため、蓄電デバイス70,80,90の製造コストを引き下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施の形態である蓄電デバイスの内部構造を示す斜視図である。
【図2】(A)および(B)は蓄電デバイスの内部構造を示す断面図である。
【図3】(A)は図2(A)に示すリチウムイオン供給源の近傍を示す拡大断面図であり、(B)は図2(B)に示すリチウムイオン供給源の近傍を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態である蓄電デバイスの内部構造を示す斜視図である。
【図5】(A)および(B)は蓄電デバイスの内部構造を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態である蓄電デバイスの内部構造を示す斜視図である。
【図7】(A)および(B)は蓄電デバイスの内部構造を示す断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態である蓄電デバイスの内部構造を示す斜視図である。
【図9】(A)および(B)は蓄電デバイスの内部構造を示す断面図である。
【図10】(A)および(B)は本発明の他の実施の形態である蓄電デバイスの内部構造を示す断面図である。
【図11】(A)および(B)は蓄電デバイスに用いられる負極集電体の製造手順を示す説明図である。
【図12】本発明の他の実施の形態である蓄電デバイスの内部構造を示す斜視図である。
【図13】(A)および(B)は蓄電デバイスの内部構造を示す断面図である。
【図14】本発明の他の実施の形態である蓄電デバイスの内部構造を示す斜視図である。
【図15】(A)および(B)は蓄電デバイスの内部構造を示す断面図である。
【図16】本発明の他の実施の形態である蓄電デバイスの内部構造を示す斜視図である。
【図17】(A)および(B)は蓄電デバイスの内部構造を示す断面図である。
【図18】(A)は本発明の他の実施の形態である蓄電デバイスの内部構造を示す断面図であり、(B)および(C)は符号αの範囲で蓄電デバイスの内部構造を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0077】
10 蓄電デバイス
11 負極
12 正極
13 外装容器
16 リチウムイオン供給源(イオン供給源)
20 セパレータ(絶縁要素)
21 突起部
30 蓄電デバイス
31 リチウムイオン供給源(イオン供給源)
31a 金属板(金属部材)
33 突起部
35 突起部
40 蓄電デバイス
41 リチウムイオン供給源(イオン供給源)
42 セパレータ(絶縁要素)
43 突起部
50 蓄電デバイス
51 リチウムイオン供給源(イオン供給源)
51a 金属板(金属部材)
52 セパレータ(絶縁要素)
53,54 突起部
60 蓄電デバイス
62 突起部
70 蓄電デバイス
71 リチウムイオン供給源(イオン供給源)
72 セパレータ(絶縁要素)
73 熱収縮材(絶縁要素)
80 蓄電デバイス
81 リチウムイオン供給源(イオン供給源)
82 熱収縮材(絶縁要素)
90 蓄電デバイス
91 リチウムイオン供給源(イオン供給源)
92 バイメタル(熱感応素子)
100 蓄電デバイス
101 負極
103 金属缶(外装容器)
104 正極
106 リチウムイオン供給源(イオン供給源)
107 セパレータ(絶縁要素)
110 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極と、正極と、イオン供給源と、イオンを移送可能な電解質系とを有する蓄電デバイスであって、
前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方と前記イオン供給源との間に絶縁要素を組み付け、
外装容器の外側からエネルギを加えることにより、前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方と前記イオン供給源とを短絡させ、前記イオン供給源からイオンを放出させることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の蓄電デバイスにおいて、
前記外装容器に加えられるエネルギは圧力エネルギであることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項2記載の蓄電デバイスにおいて、
前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方に前記絶縁要素に対向する突起部を形成し、
前記突起部によって前記絶縁要素を貫くことにより、前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方と前記イオン供給源とを短絡させることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項4】
請求項2記載の蓄電デバイスにおいて、
前記イオン供給源はイオン供給金属とこれに接続される金属部材とを備え、
前記負極と前記正極と前記金属部材との少なくとも何れか一つに前記絶縁要素に対向する突起部を形成し、
前記突起部によって前記絶縁要素を貫くことにより、前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方と前記金属部材とを短絡させることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項5】
請求項3または4記載の蓄電デバイスにおいて、
前記負極と前記正極とが積層される積層領域に前記突起部を形成することを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項6】
請求項3または4記載の蓄電デバイスにおいて、
複数の前記負極または複数の前記正極が接合される接合領域に前記突起部を形成することを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項7】
請求項1記載の蓄電デバイスにおいて、
前記外装容器に加えられるエネルギは熱エネルギであることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項8】
請求項7記載の蓄電デバイスにおいて、
前記絶縁要素は熱エネルギによって収縮する熱収縮材であることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項9】
請求項7記載の蓄電デバイスにおいて、
前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方と前記イオン供給源とを、熱エネルギによって導通状態となる熱感応素子を介して接続することを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項10】
請求項8記載の蓄電デバイスにおいて、
前記イオン供給源はイオン供給金属とこれに接続される金属部材とを備え、前記熱収縮材は前記金属部材に対向して配置され、
前記熱収縮材を収縮させることにより、前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方と前記金属部材とを短絡させることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項11】
請求項9記載の蓄電デバイスにおいて、
前記イオン供給源はイオン供給金属とこれに接続される金属部材とを備え、前記熱感応素子は前記金属部材に接続され、
前記熱感応素子を導通状態とすることにより、前記負極と前記正極との少なくとも何れか一方と前記金属部材とを短絡させることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項12】
請求項8または10記載の蓄電デバイスにおいて、
前記熱収縮材は多孔質材料によって形成されることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項13】
請求項9または11記載の蓄電デバイスにおいて、
前記熱感応素子はバイメタルまたはサーミスタであることを特徴とする蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−97991(P2008−97991A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278498(P2006−278498)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】