説明

蓄電モジュール及び作業機械

【課題】 一定の圧縮力を印加したときに、蓄電セルの合計の厚さのばらつきを低減させる技術が望まれている。
【解決手段】 平板状の複数の蓄電セルが厚さ方向に積み重ねられている。加圧機構が、蓄電セルに、積み重ね方向の圧縮力を印加する。蓄電セルの各々は、セパレータを介して交互に積み重ねられた正極板及び負極板を含む蓄電積層体を含む。さらに、最も外側に配置された正極板、及び最も外側に配置された負極板の少なくとも一方よりも外側に絶縁性の厚さ調整シートが配置されている。蓄電容器が、蓄電積層体、厚さ調整シート、及び電解液を収容する。蓄電積層体の積層方向に関して、厚さ調整シートの合計の厚さが、少なくとも2つの蓄電セルで異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電セルを積み重ねた蓄電モジュール、及びそれを搭載した作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械等に用いられる蓄電装置として、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等が注目されている。これらのキャパシタは、例えば、電極板と、多孔質のセパレータとが交互に積層された構造を有する。電極板の表面には、活性炭等の分極性電極が塗布されており、セパレータには、電解液が含浸されている。電極板とセパレータとの積層体が、ラミネートフィルム容器や金属容器内に収容される。容器内に収容された積層体が、1つの蓄電セルを構成する。
【0003】
電気二重層キャパシタの内部抵抗を低くするために、積層体に、積層方向の圧縮力が印加される。電気二重層キャパシタに限らず、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電セルにおいても、通常、蓄電セルの位置を固定するために圧縮力が印加される。金属ケースを用いた蓄電セルにおいて、分極性電極の厚さがばらついても、圧縮力を適正かつ均等にするために、セパレータを、ポリエチレン等の架橋性プラスチックフィルムと、弾性を有する有機材料とで構成する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−311837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラミネートフィルム容器を用いる場合には、蓄電セルを積み重ねて圧縮力を印加すると、圧縮力によって各蓄電セルが薄くなる。分極性電極の厚さがばらついている場合、一定の圧縮力を印加したときに、積層された蓄電セルの合計の厚さもばらついてしまう。
【0006】
一定の圧縮力を印加したときに、蓄電セルの合計の厚さのばらつきを低減させる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
厚さ方向に積み重ねられた平板状の複数の蓄電セルと、
前記蓄電セルに、積み重ね方向の圧縮力を印加する加圧機構と
を有し、
前記蓄電セルの各々は、
セパレータを介して交互に積み重ねられた正極板及び負極板を含む蓄電積層体と、
最も外側に配置された前記正極板、及び最も外側に配置された前記負極板の少なくとも一方よりも外側に配置された絶縁性の厚さ調整シートと、
前記蓄電積層体、前記厚さ調整シート、及び電解液を収容する蓄電容器と
を有し、
前記蓄電積層体の積層方向に関して、前記厚さ調整シートの合計の厚さが、少なくとも2つの前記蓄電セルで異なっている蓄電モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0008】
厚さ調節シートの合計の厚さを変えることにより、蓄電積層体の厚さのばらつきを補償し、蓄電セルの厚さのばらつきを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(1A)は、実施例による蓄電モジュールで用いられる蓄電セルの平面図であり、(1B)は(1A)の一点鎖線1B−1Bにおける断面図であり、(1C)は、蓄電積層体の断面図であり、(1D)は(1A)の一点鎖線1D−1Dにおける断面図である。
【図2】(2A)は、実施例による蓄電モジュールの断面図であり、(2B)は、(2A)の一点鎖線2B−2Bにおける断面図である。
【図3】(3A)〜(3D)は、実施例の変形例による蓄電積層体及び厚さ調整シートの断面図である。
【図4】実施例による蓄電セルの製造方法を示すフローチャートである。
【図5】(5A)及び(5B)は、実施例の変形例による蓄電モジュールの断面図である。
【図6】実施例による蓄電モジュールを搭載した作業機械の平面図である。
【図7】実施例による蓄電モジュールを搭載した作業機械の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1Aに、実施例による蓄電モジュールに用いられる蓄電セル35の平面図を示す。蓄電容器10内に、蓄電積層体11が収容されている。蓄電容器10の平面形状は、例えば、頂点がやや丸みを帯びた長方形である。蓄電積層体11は、第1の集電極21、第2の集電極22、セパレータ(電解質層)25、第1の分極性電極27、及び第2の分極性電極28を含む。第1の集電極21と第2の集電極22とは、大部分の領域において相互に重なっている。両者が重なった部分に、第1の分極性電極27及び第2の分極性電極28が配置されている。
【0011】
第1の分極性電極27と第2の分極性電極28とは、平面視においてほぼ同一の領域に配置される。第1の分極性電極27及び第2の分極性電極28が配置されている領域を「電極領域」29ということとする。電極領域29よりも外側で、蓄電容器10の外周よりも内側の領域を、「額縁領域」30ということとする。
【0012】
第1の集電極21及び第2の集電極22は、電極領域29から相互に反対向き(図1Aにおいて、上向き及び下向き)に伸びた延伸部分21A、22Aを有する。セパレータ25の外周線は、第1の集電極21と第2の集電極22とが重なっている領域よりも外側に位置する。延伸部分21A、22Aは、セパレータ25の外周よりも外側まで導出されている。
【0013】
第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13が、それぞれ蓄電容器10の内側から、蓄電容器10の相互に平行な縁と交差して、蓄電容器10の外側まで引き出されている。第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13は、それぞれ第1の集電極21の延伸部分21A及び第2の集電極22の延伸部分22Aと重なり、第1の集電極21及び第2の集電極22に電気的に接続されている。第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13は、相互に逆極性の電極として作用する。
【0014】
蓄電容器10の額縁領域30に、ガス抜き孔14が形成されている。ガス抜き孔14は、例えば第1の集電極21の延伸部分21Aと重なる位置に配置される。ガス抜き構造物15が、ガス抜き孔14に重なる位置に配置される。
【0015】
図1Bに、図1Aの一点鎖線1B−1Bにおける断面図を示す。蓄電容器10は、2枚のアルミラミネートフィルム10A、10Bを含む。アルミラミネートフィルム10A、10Bは、蓄電積層体11を挟み、蓄電積層体11を密封する。一方のラミネートフィルム10Bは、ほぼ平坦であり、他方のラミネートフィルム10Aは、蓄電積層体11の形状を反映して変形している。額縁領域30は電極領域29よりも薄い。図1Bでは、セパレータ25、第1の分極性電極27、及び第2の分極性電極28の記載を省略している。蓄電積層体11の上面及び底面に、厚さ調整シート26が配置されている。なお、厚さ調整シート26は、上面にのみ、または底面にのみ配置してもよい。
【0016】
図1Cに蓄電積層体11の断面図を示す。第1の集電極21の両面に、第1の分極性電極27が形成されており、第2の集電極22の両面に、第2の分極性電極28が形成されている。第1の集電極21及び第2の集電極22には、例えばアルミニウム箔が用いられる。第1の分極性電極27は、例えば、活性炭粒子が混錬されたバインダを含むスラリーを、第1の集電極21の表面に塗布した後、加熱して定着させることにより形成することができる。第2の分極性電極28も同様の方法で形成することができる。
【0017】
両面に第1の分極性電極27が形成された第1の集電極21と、両面に第2の分極性電極28が形成された第2の集電極22とが交互に積層されている。第1の分極性電極27と第2の分極性電極28との間に、セパレータ25が配置されている。セパレータ25には、例えばセルロース紙が用いられる。このセルロール紙に、電解液が含浸されている。電解液の溶媒には、例えば分極性有機溶剤、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート等が用いられる。電解質(支持塩)として、4級アンモニウム塩、例えばSBPB(スピロビピロリジニウムテトラフルオロボレート)が用いられる。セパレータ25は、第1の分極性電極27と第2の分極性電極28との短絡、及び第1の集電極21と第2の集電極22との短絡を防止する。
【0018】
第1の集電極21と、その両面に形成された第1の分極性電極27との積層構造、及び第2の集電極22と、その両面に形成された第2の分極性電極28との積層構造のうち、一方が正極板となり、他方が負極板となる。正極板と負極板とをまとめて「電極板」という。図1Bに示した厚さ調整シート26は、最も外側に配置された電極板の少なくとも一方よりも外側に配置される。
【0019】
なお、最も外側に配置された第1の集電極21及び第2の集電極22の外側の表面には、それぞれ第1の分極性電極27及び第2の分極性電極28を形成しなくてもよい。この場合、厚さ調整シート26は、第1の集電極21または第2の集電極22に接する。
【0020】
図1Bに戻って説明を続ける。複数の第1の集電極21の延伸部分21Aが重ね合わされ、第1の集電極タブ12に超音波溶接されている。複数の第2の集電極22の延伸部分22Aが重ね合わされ、第2の集電極タブ13に超音波溶接されている。第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13には、例えばアルミニウム板が用いられる。
【0021】
第1の集電極21の延伸部分21Aが積層された領域には、第2の集電極22、第1の分極性電極27、第2の分極性電極28、及びセパレータ25が配置されていない。このため、延伸部分21Aが積層された部分は、電極領域29より薄い。同様に、第2の集電極22の延伸部分22Aが積層された部分も、電極領域29より薄い。厚さ調整シート26は、延伸部分21Aとガス抜き構造物15との間まで延伸している。
【0022】
第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13は、ラミネートフィルム10Aとラミネートフィルム10Bとの間を通って、蓄電容器10の外側まで導出されている。第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13は、導出箇所において、ラミネートフィルム10Aとラミネートフィルム10Bとに熱融着されている。なお、第1の集電極タブ12とラミネートフィルム10A、10Bとの間、及び第2の集電極タブ13とラミネートフィルム10A、10Bとの間に、タブフィルムを挟んでもよい。タブフィルムは、シール強度を向上させる。
【0023】
第1の集電極21の延伸部分21Aと、ラミネートフィルム10Aとの間に、ガス抜き構造物15が配置されている。ガス抜き構造物15は、ガス抜き孔14を塞ぐように配置され、ラミネートフィルム10Aに熱融着されている。ガス抜き構造物15は、蓄電容器10内のガスを外部に排出するが、外部から蓄電容器10内への水分等の侵入を禁止する。
【0024】
蓄電容器10内は、真空排気されている。このため、ラミネートフィルム10A、10Bは、大気圧により、蓄電積層体11及びガス抜き構造物15の外形に沿うように、変形している。
【0025】
図1Dに、図1Aの一点鎖線1D−1Dにおける断面図を示す。蓄電積層体11の積層構造は、図1B及び図1Cに示したものと同一である。蓄電積層体11よりも外側の領域において、ラミネートフィルム10Aと10Bとが相互に熱融着されている。図1Dに示した断面においては、第1の集電極21及び第2の集電極22に、延伸部分が設けられていない。
【0026】
厚さ調整シート26が、蓄電積層体11に巻きつけられている。図1Dでは、蓄電積層体11の厚さ方向の中間の位置を始点とし、上面及び他方の端面を覆い、さらに底面を覆い、ほぼ始点の位置まで戻るように、蓄電積層体11をほぼ1周している。蓄電積層体11の上面及び底面に、それぞれ1枚分の厚さの厚さ調整シート26が配置される。従って、蓄電積層体11に厚さ調整シート26を1周巻きつけることは、蓄電積層体11の厚さ方向に関して、厚さ調整シート26の重ね枚数を2枚にしたことと等価である。
【0027】
図2Aに、実施例による蓄電モジュールの断面図を示す。理解を容易にするために、xyz直交座標系を定義する。
【0028】
平板状の複数の蓄電セル35と、伝熱板36とが、その厚さ方向(z方向)に交互に積層されている。蓄電セル35の各々は、図1A〜図1Dに示したものと同一の構造を有する。最も外側の蓄電セル35に、それぞれ押さえ板42、43が密着している。複数のタイロッド41が、一方の押さえ板42から他方の押さえ板43まで貫通し、蓄電セル35と伝熱板36とに、積層方向(z方向)の圧縮力を加えている。
【0029】
蓄電セル35は、積層方向の圧縮力を印加されることにより、押さえ板42、43の間に保持される。押さえ板42、43、及びタイロッド41が、蓄電セル35に圧縮力を印加するための加圧機構40を構成する。なお、加圧機構40として、タイロッド41等の他に、蓄電セル35に圧縮力を印加することが可能な他の手段を用いてもよい。
【0030】
複数の蓄電セル35が直列に接続されるように、相互に隣り合う蓄電セル35の第1の集電極タブ12同士が接続され、第2の集電極タブ13同士が接続されている。すべての蓄電セル35は、電極領域29の中心から見て、第1の集電極タブ12がx軸の正の方向に配置される姿勢、すなわちガス抜き孔14(図1A)がx軸の正の方向に配置される姿勢で保持されている。
【0031】
伝熱板36には、例えばアルミニウムが用いられ、タイロッド41及び押さえ板42、43には、例えばステンレス鋼が用いられる。x方向に関して保持機構40の両側に、一対の壁板44、45が配置されている。壁板44及び45の各々は、ボルトで押さえ板42、43に固定されている。
【0032】
図2Bに、図2Aの一点鎖線2B−2Bにおける断面図を示す。図2Bの一点鎖線2A−2Aにおける断面図が、図2Aに相当する。蓄電セル35及び伝熱板36の平面形状は、ほぼ長方形である。蓄電セル35の、相互に反対側の辺(図2Bにおいて、上辺及び下辺)から、第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13が導出されている。伝熱板36は、平面視において、蓄電セル35の縁よりも外側まで張り出している。タイロッド41は、蓄電セル35、伝熱版36、第1の集電極タブ12、及び第2の集電極タブ13のいずれからも離間した位置に配置されている。
【0033】
y方向に関して伝熱板36の両側に、一対の壁板46、47が配置されている。壁板46、47は、伝熱板36の端面に接触している。これにより、伝熱板36が、壁板46、47に熱的に結合する。壁板46及び47の各々は、壁板44及び45に、ボルトで固定されている。壁板46及び47の内部に、冷却媒体を流すための流路48が形成されている。
【0034】
蓄電セル35の間に伝熱板36を挿入しなくても十分な冷却性能が得られる場合には、伝熱板36を配置することなく、複数の蓄電セル35のみを積層してもよい。
【0035】
図3A〜図3Dに、実施例の変形例による蓄電セルの蓄電積層体11及び厚さ調整シート26の断面図を示す。上記実施例では、図1Dに示したように厚さ調整シート26が蓄電積層体11をほぼ1周していた。図3A及び図3Bに示した変形例は、それぞれ厚さ調整シート26が、約1.5周、及び2周している。図3A及び図3Bに示した変形例では、それぞれ、厚さ調整シート26の重ね枚数が3枚及び4枚になる。
【0036】
いずれの変形例においても、厚さ調整シート26の縁は、蓄電積層体11の上面及び底面と重ならない位置、すなわち端面の側方に配置されている。
【0037】
厚さ調整シート26の縁が蓄電積層体11の上面または底面と重なる位置に配置されると、蓄電積層体11に圧縮力を印加したときに、蓄電積層体11に加わる圧力が縁の両側で異なってしまう。厚さ調整シート26の縁を、蓄電積層体11の上面及び底面と重ならない位置に配置することにより、蓄電積層体11に加わる圧力が不均一になることを防止することができる。図1Bに示した断面においては、厚さ調整シート26の縁が、電極領域29とは重ならず、額縁領域30と重なっている。このため、電極領域29内において、圧力が不均一になることを防止することができる。
【0038】
図3Cに示した変形例では、蓄電積層体11の上面と底面に、別々の厚さ調整シート26が1枚ずつ配置されている。図3Dに示した変形例では、蓄電積層体11の上面と底面に、別々の厚さ調整シート26が2枚ずつ配置されている。すなわち、蓄電積層体11の上面に配置された厚さ調整シート26と、底面に配置された厚さ調整シート26とは、相互に分離されている。このように、蓄電積層体11に厚さ調整シート26を巻き付ける代わりに、複数枚の厚さ調整シート26を重ねてもよい。
【0039】
図1Cに示した第1の分極性電極27及び第2の分極性電極28は、製造工程のばらつきに起因して、ロットごとに厚さがばらつきやすい。このため、蓄電積層体11の厚さにもばらつきが生じる。蓄電セル35ごとに、または少なくとも2つの蓄電セル35で、厚さ調整シート26の重ね枚数を変えることにより、蓄電積層体11の厚さの差を補正することができる。これにより、蓄電セル35の厚さのばらつきを小さくすることができる。具体的には、蓄電セル35のうち、蓄電積層体11の厚さが相対的に薄い蓄電セル35の、厚さ調整シート26の重ね枚数は、蓄電積層体11の厚さが相対的に厚い蓄電セル35の、厚さ調整シート26の重ね枚数よりも多くすればよい。
【0040】
厚さ調整シート26には、絶縁材料、例えばポリプロピレン等を用いることができる。この場合、厚さ調整シート26が、アルミラミネートフィルム10A、10B(図1B、図1D)を補強する機能を持つ。
【0041】
厚さ調整シート26に、セパレータ25の素材と同じ素材のシートを用いてもよい。この場合、厚さ調整シート26に電解液が含浸される。図1Bに示したガス抜き構造物15に接触する電解液が、厚さ調整シート26に含浸されるため、ガス抜き構造物15に液状の電解液が付着することを軽減することができる。
【0042】
上記実施例では、厚さ調整シート26の重ね枚数を変えることにより、蓄電積層体11の厚さの差を補正した。その変形例として、厚さ調整シート26の重ね枚数を変える代わりに、または重ね枚数を変えるとともに、厚さ調整シート26の厚さを異ならせてもよい。例えば、蓄電セル35のうち、蓄電積層体11の厚さが相対的に薄い蓄電セル35の、厚さ調整シート26の厚さを、蓄電積層体11の厚さが相対的に厚い蓄電セル35の、厚さ調整シート26の厚さより厚くすればよい。
【0043】
上記実施例及びその変形例で示したように、蓄電積層体11に重ねられた厚さ調整シート26の、重ね方向に関する合計の厚さを、少なくとも2つの蓄電セル35で異なるようにすればよい。蓄電積層体11の厚さが相対的に薄い蓄電セル35において、厚さ調整シート26の、重ね方向に関する合計の厚さを、相対的に厚くすればよい。これにより、蓄電セル35の厚さのばらつきを小さくすることができる。
【0044】
図4に、実施例による蓄電モジュールの製造方法のフローチャートを示す。まず、ステップS1において、図1C等に示した第1の集電極21の両面に第1の分極性電極27を形成し、第2の集電極22の両面に第2の分極性電極28を形成する。これにより、複数の電極板が得られる。
【0045】
ステップS2において、電極板の各々の厚さを測定する。ステップS3において、1つの蓄電セルに収容される電極板の合計の厚さを算出する。ステップS4において、算出された厚さと、目標厚さとを比較し、補償すべき厚さを算出する。ステップS5において、補償すべき厚さから、厚さ調整シート26の重ね枚数を算出する。この「重ね枚数」は、蓄電積層体11に厚さ調整シート26を巻き付けたときの合計の厚さと、目標厚さとの差が最小になるように決定される。
【0046】
ステップS6において、電極板とセパレータとを積層して蓄電積層体11を形成した後、ステップS5で算出された重ね枚数になるように、厚さ調整シート26を巻き付ける。なお、図3C及び図3Dに示す変形例の場合には、重ね枚数分の厚さ調整シート26を蓄電積層体11に重ねる。ステップS7において、蓄電積層体11及び厚さ調整シート26を蓄電容器10内に装填した後、蓄電容器10内に電解液を充填する。その後、蓄電容器10を封止する。
【0047】
実施例による方法で作製された蓄電セル35は、厚さのばらつきが小さい。このため、図2Aに示した蓄電モジュールの積み重ね方向(z方向)の寸法のばらつきを小さくすることができる。
【0048】
図5Aに、実施例の変形例による蓄電モジュールの水平断面図を示す。交互に積み重ねられた蓄電セル35と伝熱板36、押さえ板42、43、及びタイロッド41により、1つの蓄電モジュール50が構成されている。これらの構成は、図2Aに示した蓄電セル35、伝熱板36、押さえ板42、43、及びタイロッド41の構成と同一である。複数、例えば3個の蓄電モジュール50が、積み重ね方向(z方向)と直交する方向(y方向)に配列されている。
【0049】
相互に隣り合う蓄電モジュール50の間に隔壁53が配置されている。両側の蓄電モジュール50の外側に、それぞれ側板51、52が配置されている。側板51、52及び隔壁53は、図2Bに示した壁板46、47と同様に、伝熱板36の端面に接している。
【0050】
図5Bに、図5Aの一点鎖線5B−5Bにおける断面図を示す。図5Bの一点鎖線5A−5Aにおける断面図が図5Aに相当する。隔壁53及び側板51、52に、冷却媒体を流すための流路57が形成されている。
【0051】
天板54及び底板55が、蓄電モジュール50、隔壁53、及び側板51、52を上下から挟む。天板54及び底板55は、それぞれ図2Bに示した壁板44、45に対応する。天板54及び底板55は、ボルト60により隔壁53及び側板51、52に固定されている。さらに、図5Aに示したように、天板54及び底板55は、ボルト61により押さえ板42、43にも固定されている。
【0052】
実施例による蓄電セル35を用いることにより、蓄電セル35の積み重ね方向(z方向)に関する蓄電モジュール50の寸法のばらつきを小さくすることができる。蓄電モジュール50のz方向の寸法のばらつきが大きい場合には、天板54及び底板55に形成されているボルト61用の貫通孔の位置がばらついてしまう。このため、予め、特定の位置に貫通孔を形成しておくことが困難である。または、蓄電モジュール50のz方向の寸法のばらつきを吸収するように、ボルト61用の貫通孔を長穴にしておく必要がある。
【0053】
実施例による蓄電セル35を用いることにより、天板54及び底板55の特定の位置に、ボルト61用の貫通孔を予め形成しておくことができる。また、貫通孔を長穴にする必要はない。
【0054】
図6に、上記実施例による蓄電モジュールを搭載した作業機械の例として、ハイブリッド型ショベルの概略平面図を示す。旋回体70に、旋回軸受け73を介して、走行装置71が取り付けられている。旋回体70に、エンジン74、油圧ポンプ75、旋回用電動モータ76、油タンク77、冷却ファン78、座席79、蓄電モジュール80、及び電動発電機83が搭載されている。エンジン74は、燃料の燃焼により動力を発生する。エンジン74、油圧ポンプ75、及び電動発電機83が、トルク伝達機構81を介して相互にトルクの送受を行う。油圧ポンプ75は、ブーム82等の油圧シリンダに圧油を供給する。
【0055】
電動発電機83は、エンジン74の動力によって駆動され、発電を行う(発電運転)。発電された電力は、蓄電モジュール80に供給され、蓄電モジュール80が充電される。また、電動発電機83は、蓄電モジュール80からの電力によって駆動され、エンジン74をアシストするための動力を発生する(アシスト運転)。油タンク77は、油圧回路の油を貯蔵する。冷却ファン78は、油圧回路の油温の上昇を抑制する。操作者は、座席79に着座して、ハイブリッド型ショベルを操作する。
【0056】
図7に、ハイブリッド型ショベルの側面図を示す。下部走行体71に、旋回軸受け73を介して上部旋回体70が搭載されている。上部旋回体70は、旋回用電動モータ76(図11)からの駆動力により、下部走行体71に対して、時計回り、または反時計周りに旋回する。上部旋回体70に、ブーム82が取り付けられている。ブーム82は、油圧駆動されるブームシリンダ87により、上部旋回体70に対して上下方向に揺動する。ブーム82の先端に、アーム85が取り付けられている。アーム85は、油圧駆動されるアームシリンダ88により、ブーム82に対して前後方向に揺動する。アーム85の先端にバケット86が取り付けられている。バケット86は、油圧駆動されるバケットシリンダ89により、アーム85に対して上下方向に揺動する。
【0057】
蓄電モジュール80が、蓄電モジュール用マウント90及びダンパ(防振装置)91を介して、上部旋回体70に搭載されている。蓄電モジュール80には、図2A、図2Bに示された実施例、または図4A、図4Bに示された実施例による蓄電モジュールが用いられる。蓄電モジュール80から供給される電力によって、旋回用電動モータ76(図6)が駆動される。旋回用電動モータ76が駆動されることにより、駆動対象である旋回体70が旋回する。また、旋回用電動モータ76は、運動エネルギを電気エネルギに変換することによって回生電力を発生する。発生した回生電力によって、蓄電モジュール80が充電される。
【0058】
図6及び図7には、作業機械の例としてハイブリッド型ショベルを示したが、上記実施例による蓄電モジュールは、その他のハイブリッド型作業機械、例えばハイブリッド型ホイルローダ、ハイブリッド型ブルドーザに適用することも可能である。さらに、上記実施例による蓄電モジュールは、電動作業機械、例えば電動ショベル、電動ホイルローダ、電動ブルドーザ等にも適用することが可能である。
【0059】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0060】
10 蓄電容器
10A、10B ラミネートフィルム
11 蓄電積層体
12 第1の集電極タブ
13 第2の集電極タブ
14 ガス抜き孔
15 ガス抜き構造物
21 第1の集電極
21A 延伸部分
22 第2の集電極
22A 延伸部分
25 セパレータ
26 厚さ調整シート
27 第1の分極性電極
28 第2の分極性電極
29 電極領域
30 額縁領域
35 蓄電セル
40 加圧機構
41 タイロッド
42、43 押さえ板
44、45、46、47 壁板
48 流路
50 蓄電モジュール
51、52 側板
53 隔壁
54 天板
55 底板
57 流路
60、61 ボルト
70 旋回体(駆動対象)
71 走行装置
73 旋回軸受け
74 エンジン
75 油圧ポンプ
76 旋回モータ
77 油タンク
78 冷却ファン
79 座席
80 蓄電モジュール
81 トルク伝達機構
82 ブーム
83 電動発電機
85 アーム
86 バケット
87 ブームシリンダ
88 アームシリンダ
89 バケットシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に積み重ねられた平板状の複数の蓄電セルと、
前記蓄電セルに、積み重ね方向の圧縮力を印加する加圧機構と
を有し、
前記蓄電セルの各々は、
セパレータを介して交互に積み重ねられた正極板及び負極板を含む蓄電積層体と、
最も外側に配置された前記正極板、及び最も外側に配置された前記負極板の少なくとも一方よりも外側に配置された絶縁性の厚さ調整シートと、
前記蓄電積層体、前記厚さ調整シート、及び電解液を収容する蓄電容器と
を有し、
前記蓄電積層体の積層方向に関して、前記厚さ調整シートの合計の厚さが、少なくとも2つの前記蓄電セルで異なっている蓄電モジュール。
【請求項2】
前記蓄電セルの積層方向に関して、前記厚さ調整シートの重ね枚数を、少なくとも2つの前記蓄電セルで異ならせることにより、前記厚さ調整シートの合計の厚さを異ならせている請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記蓄電セルのうち、前記蓄電積層体の厚さが相対的に薄い蓄電セルの、前記厚さ調整シートの重ね枚数は、前記蓄電積層体の厚さが相対的に厚い蓄電セルの、前記厚さ調整シートの重ね枚数よりも多い請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記厚さ調整シートは、前記蓄電積層体に巻かれており、前記蓄電セルごとに巻き数を変えることにより、前記厚さ調整シートの重ね枚数を変えている請求項2または3に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記厚さ調整シートは、前記蓄電積層体の一方の面に配置される厚さ調整シートと他方の面に配置される厚さ調整シートとが相互に分離されたシートである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
前記厚さ調整シートに、前記電解液が含浸されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項7】
蓄電モジュールを搭載した作業機械であって、
前記蓄電ミジュールは、
厚さ方向に積み重ねられた平板状の複数の蓄電セルと、
前記蓄電セルに、積み重ね方向の圧縮力を印加する圧縮機構と
を有し、
前記蓄電セルの各々は、
セパレータを介して交互に積み重ねられた正極板及び負極板を含む蓄電積層体と、
最も外側に配置された前記正極板、及び最も外側に配置された前記負極板の少なくとも一方よりも外側に配置された絶縁性の厚さ調整シートと、
前記蓄電積層体、前記厚さ調整シート、及び電解液を収容する蓄電容器と
を有し、
前記蓄電積層体の積層方向に関して、前記厚さ調整シートの合計の厚さが、少なくとも2つの前記蓄電セルで異なっている作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−204356(P2012−204356A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64314(P2011−64314)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】