説明

蓄電池制御装置、蓄電池制御方法、電力貯蔵システム及び電気自動車の駆動システム

【課題】複数の蓄電池ユニットが並列的に接続されたシステムにおいて、システム全体の電池寿命の長期化を図ることのできる蓄電池制御装置、蓄電池制御方法、電力貯蔵システム及び電気自動車の駆動システムを提供すること。
【解決手段】蓄電池制御装置(20,40)は、並列的に接続された複数の蓄電池ユニット(10)の充電および放電を制御する。蓄電池制御装置(20,40)は、複数の蓄電池ユニット(10)の各々の劣化度を検出する劣化度検出部(22)と、検出された劣化度に応じた蓄電池ユニットの休止時間を算出する休止時間算出部(21)と、充電と放電との切り替わりの際、算出された休止時間に対応させて複数の蓄電池ユニットの充電または放電の開始時間を個別にずらす充放電制御部(40)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電池ユニットの充電および放電を制御する蓄電池制御装置、蓄電池制御方法、電力貯蔵システム及び電気自動車の駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の蓄電池パックが並列に接続された構成を有する電力貯蔵システムとして、電気自動車の蓄電池システムまたは家庭用電源を供給する蓄電池システムなどがある。蓄電池パックを多並列に接続することで、電気自動車では航続距離を長くすることができ、家庭用の蓄電池システムでは停電時のバックアップ期間を長くすることができる。
【0003】
また、本願発明に関連する従来技術として、特許文献1には、蓄電池パックが多並列に接続された装置において、各蓄電池パックの放電を停止させる放電レベルを、各蓄電池パックの劣化状態に応じてそれぞれ設定可能にした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−244854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電池は、充放電を繰り返すことで劣化し、電池容量および電池電圧が低下していく。この蓄電池の劣化スピードは、上限SOC(State of Charge:充電状態)、DOD(Depth of Discharge:放電深度)及び環境温度などによって変化する。また、複数の蓄電池パックを有するシステムでは、各蓄電池パックの配置の違いに基づく環境温度の差または個体差等により、蓄電池パックごとに劣化スピードが異なってくる。
【0006】
複数の蓄電池パックが並列に接続されたシステムにおいては、個々の蓄電池パックの寿命を延ばすことが、システム全体の電池寿命を延ばすことにつながる。従って、システム全体の電池寿命を延ばすには、劣化が進んだ蓄電池パックに対して劣化スピードを遅くして個々の寿命を延ばす制御を行うことが有用となる。
【0007】
本発明の目的は、複数の蓄電池ユニット(例えば上記の蓄電池パック)が並列的に接続されたシステムにおいて、システム全体の電池寿命の長期化を図ることのできる蓄電池制御装置、蓄電池制御方法、電力貯蔵システム及び電気自動車の駆動システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る蓄電池制御装置は、並列的に接続された複数の蓄電池ユニットの充電および放電を制御する蓄電池制御装置であって、前記複数の蓄電池ユニットの各々の劣化度を検出する劣化度検出部と、検出された劣化度に応じた前記蓄電池ユニットの休止時間を算出する休止時間算出部と、充電と放電との切り替わりの際、算出された前記休止時間に対応させて前記複数の蓄電池ユニットの充電または放電の開始時間を個別にずらす充放電制御部と、を具備する構成を採る。
【0009】
本発明の一態様に係る蓄電池制御方法は、並列的に接続された複数の蓄電池ユニットの充電および放電を制御する蓄電池制御方法であって、前記複数の蓄電池ユニットの各々の劣化度を検出するステップと、検出された劣化度に応じた前記蓄電池ユニットの休止時間を算出するステップと、充電と放電との切り替わりの際、算出された前記休止時間に対応させて前記複数の蓄電池ユニットの充電または放電の開始時間を個別にずらすステップと、を含む構成を採る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蓄電池が充電状態と放電状態とに切り替わる際、蓄電池ユニットの休止時間が個別に調整される。蓄電池は、充放電を行わない適度な長さの休止期間を設けた方が、蓄電池の劣化スピードが遅くなる。従って、本発明によれば、各蓄電池ユニットの寿命を延ばすことができる。その結果、システム全体の電池寿命の長期化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の電力貯蔵システムおよび電気自動車の駆動システムを示す図
【図2】蓄電池の容量劣化と充放電間の休止時間との関係を示すグラフ
【図3】各電池制御部により実行される劣化判定処理の手順を表わすフローチャート
【図4】長寿命化充電開始制御処理の手順を表わすフローチャート
【図5】休止時間の算出例を表わす図表
【図6】長寿命化放電開始制御処理の手順を表わすフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態の電力貯蔵システムおよび電気自動車の駆動システムを示す図である。
【0014】
本実施の形態の電気自動車の駆動システムは、走行用の電動モータ111と、外部電源が接続される電源入力部112と、外部電源が接続された際に電源入力部112から電力を取り込んで蓄積するとともに走行時に電動モータ111へ電力を供給する電力貯蔵システム100と、から主に構成される。
【0015】
電力貯蔵システム100は、互いに並列に接続された複数(N個)の蓄電池パック10と、これら複数の蓄電池パック10の充電および放電の制御を行う充放電制御部40と、から主に構成される。
【0016】
各蓄電池パック10には、直列に接続された複数(M個)の蓄電池セル11と、電力変換装置18と、蓄電池セル11の温度を検出する温度検出素子(例えばサーミスタ)12と、複数の蓄電池セル11に流れる電流を検出する電流検出素子(例えば電流検出抵抗)13と、が設けられている。また、各蓄電池パック10には、複数の蓄電池セル11の各端子電圧を入力して各蓄電池セル11の電池電圧を計測する電圧計測部14と、温度検出素子12の出力に基づき温度を計測する温度計測部15と、電流検出素子13の出力に基づき電池電流を計測する電流計測部16と、が設けられている。
【0017】
また、蓄電池パック10には、複数の蓄電池セル11の状態監視を行う電池制御部20が設けられ、この電池制御部20には、休止時間算出部および電池交換検知部として機能する制御部21と、複数の蓄電池セル11の劣化状態を判定する劣化状態判定部22とが含まれている。
【0018】
上記の構成のうち、各蓄電池パック10に備わる複数の蓄電池セル11が蓄電池ユニットの一実施形態である。また、充放電制御部40と複数の蓄電池パック10の各電池制御部20とが、蓄電池制御装置の一実施形態である。
【0019】
電力変換装置18は、複数の蓄電池セル11の電流経路上に設けられ、充放電制御部40の制御に基づき電力変換を行う。そして、電力変換装置18は、蓄電池セル11から外部の負荷(例えば電動モータ111)へ電力を出力し、また、電源入力部112から複数の蓄電池セル11へ電力を入力する。電力変換装置18は、直流電圧の変換を行うスイッチング電源回路を備え、外部からの制御によってスイッチング電源回路の動作を切り替えることで、電力の出力、入力および入出力の停止の切り替えを行う。
【0020】
電池制御部20の制御部21は、電圧計測部14、温度計測部15、電流計測部16からそれぞれ計測データを入力する。制御部21は、これらの計測データを劣化状態判定部22へ送って、複数の蓄電池セル11の劣化状態を判定させる。また、制御部21は、充放電制御部40と通信を行い、充放電制御部40からの指令に基づいて蓄電池セル11の劣化状態に応じた休止時間の算出を行う。また、制御部21は、充放電制御部40と新規に接続された場合に、蓄電池パックの交換により、当該制御部21を含む蓄電池パックが電力貯蔵システム100に追加されたことを検知する(電池交換検知部)。
【0021】
劣化状態判定部22は、例えば定期的など適宜なタイミングに、後述の劣化判定処理を実行する。また、劣化状態判定部22は、制御部21が電池交換を検知した場合に、後述の劣化判定処理を速やかに実行する。この劣化状態判定部22には、劣化判定フラグの記憶部が設けられ、複数の蓄電池セル11の中に所定以上劣化している蓄電池セル11がある場合に、この劣化判定フラグをオンにする。
【0022】
充放電制御部40は、複数の電池パック10の各電池制御部20と接続されて通信を行う。また、充放電制御部40は、複数の電池パック10の各電力変換装置18の動作を切り替える制御を行うとともに、各電力変換装置18から入出力電圧および電流の情報を入力する。充放電制御部40は、これらの入力情報に基づいて、電源入力部112からの入力電源の有無、および、供給電力が需要電力を下回ったことなどを判別することができる。なお、充放電制御部40は、電源入力部112から外部電源が接続された検知信号を入力する構成としてもよい。また、充放電制御部40は、電動モータ111の制御部から需要電力の情報を入力する構成としてもよい。
【0023】
複数の蓄電池セル11は、リチウムイオン電池またはニッケル水素蓄電池から構成される。これらの蓄電池の正極活物質には、コバルト系、マンガン系、またはニッケル系など複数の種類があるが、本実施の形態の複数の蓄電池セル11には、正極活物質がニッケル系の蓄電池が適用されている。ニッケル系の正極活物質は、容量密度が高く、充電状態での金属溶出が少ないという特徴を有する。
【0024】
図2は、蓄電池の容量劣化と充放電間の休止時間との関係を示すグラフである。このグラフの縦軸は、容量劣化が進んで初期容量から75パーセントの容量になったときの充放電サイクル数を表わす。横軸は、各充放電サイクルにおいて充電と放電との間に設けた休止時間を表わす。また、3つのグラフ線は蓄電池の環境温度が0℃、25℃、40℃の場合をそれぞれ示す。
【0025】
リチウムイオン電池とニッケル水素蓄電池とは、図2のグラフに示すように、各充放電サイクルの間(充電と放電との間)に適度な休止時間(例えば、1日より短い数時間の長さ)を設けると、劣化スピードが遅くなり寿命が延びるという性質を有する。また、本実施の形態の蓄電池セル11のように、正極活物質がニッケル系の蓄電池では、休止時間により劣化スピードが遅くなるという作用が顕著に現れる。劣化スピードは次のメカニズムにより遅くなると考えられる。すなわち、電池は充放電を連続で行うと電解液の偏在等が発生し、電池内の電極の反応が阻害されて劣化を加速する。電解液の偏在等を解消させるためには、所定時間休止期間を設けることが必要である。適切な休止時間により極板の劣化を抑制でき蓄電池の長寿命化が図れる。
【0026】
次に、上記構成の電力貯蔵システムの動作について説明する。
【0027】
図3は、各電池制御部20により実行される劣化判定処理のフローチャートである。
【0028】
電池制御部20は、蓄電池パック10の交換が検知された場合には、その後、速やかに、それ以外の場合には周期的に、図3の劣化判定処理を実行する。この劣化判定処理が開始されると、制御部21は、電流計測部16、電圧計測部14及び温度計測部15から、それぞれ蓄電池セル11の充放電電流値Id、複数の蓄電池セル11の各端子電圧Vt、蓄電池セル11の周囲の温度Tを取得する(ステップS1)。次に、制御部21は、充放電電流値Idと各端子電圧Vtとから各蓄電池セル11の内部抵抗値Rを算出する(ステップS2)。続いて、制御部21は、複数の蓄電池セル11の各々について、現在の内部抵抗値Rと内部抵抗の初期値Riとの比を劣化度D1として算出する(ステップS3)。なお、劣化度の算出方法としては、後述するように公知の様々な手法を適用してもよい。
【0029】
各蓄電池セル11の各劣化度D1が算出されたら、これらの算出データが劣化状態判定部22に送られて、蓄電池パック10の劣化判定が行われる(ステップS4〜S8)。すなわち、劣化状態判定部22は、先ず、複数の蓄電池セル11をそれぞれ識別するインデックス番号iを初期化する(ステップS4)。そして、劣化状態判定部22は、インデックス番号iの蓄電池セル11の劣化度D1が閾値γを超えていないか判別する(ステップS5)。そして、劣化度D1が閾値γを超えていなければ、劣化状態判定部22は、ステップS5〜S7のループ処理を繰り返して、蓄電池セル11の全個数M分の判別を行う。
【0030】
ステップS5〜S7のループ処理中、劣化度D1が閾値γを超えた蓄電池セル11があれば、劣化状態判定部22は、劣化判定フラグをオンにして(ステップS8)、1回の劣化判定処理を終了する。また、劣化度D1が閾値γを超える蓄電池セル11がなければ、劣化状態判定部22は劣化判定フラグをオフとしたまま、この劣化判定処理を終了する。
【0031】
図4には、充放電制御部40と電池制御部10とで実行される長寿命化充電開始制御処理のフローチャートを示す。
【0032】
この充電開始制御処理は、例えば、電気自動車の走行が終了して外部電源が電力入力部112に接続された際など、複数の蓄電池パック10が放電状態から充電可能な状態へ切り替えられた際に開始される。また、図4の充電開始制御処理は、複数の蓄電池パック10に対してそれぞれ個別に且つ並列的に実行される。
【0033】
この充電開始制御処理が開始されると、充放電制御部40は、蓄電池パック10の電池制御部20から劣化判定フラグの値を読み出して、この値がオンであるか判別する(ステップS11)。その結果、値がオンでなければ、該当の蓄電池パック10の電力変換装置18に充電動作を開始させる(ステップS17)。これらの処理が、複数の蓄電池パック10に対してそれぞれ並列的に実行されることで、先ず、劣化判定フラグがオンになっていない1つ又は複数の蓄電池パック10の充電がすぐに開始される。
【0034】
一方、劣化判定フラグがオンであれば、制御部21は、充放電制御部40の指令に基づいて、蓄電池パック10の劣化度(複数の蓄電池セル11の総合的な劣化度)と現在の温度Tとを取得する(ステップS12)。蓄電池パック10の劣化度は、図3のステップS3で算出された各蓄電池セル11の劣化度D1から所定の算出式(例えば重み付けをした総和など)に従って算出される。
【0035】
続いて、制御部21は、蓄電池パック10の劣化度と現在の温度Tとから、この蓄電池パック10に適した休止時間β1を算出する(ステップS13)。
【0036】
図5は、休止時間の算出例を表わす図表である。この図表は、複数の行に複数の劣化度をそれぞれ表わし、複数の列に複数の温度を表わし、行列の交差する各欄に劣化度と温度に応じた休止時間β1を表わしている。劣化度の値「0、25、50」は数値が大きいほど劣化が進んでいることを表わし、休止時間β1の値は時間を間接的に表わす係数値であり、値が大きいほど長い時間を表わす。
【0037】
ステップS13の休止時間β1の算出処理では、図5の図表のように、劣化度が大きいほど、且つ、温度が低いほど、長い時間となるように休止時間β1が算出される。なお、休止時間β1は、蓄電池セル11の劣化度および温度が何れの場合でも、適宜な時間(例えば400分〜600分)に設定することで、蓄電池セル11の劣化スピードを遅くすることができる。しかしながら、充電できるタイミングに、全ての蓄電池パック10の充電を休止させていたのでは、早めに外部電源の接続が解除された場合に、十分な充電量が得られないという不都合が生じえる。従って、この実施の形態では、劣化度の進んだ蓄電池セル11の劣化度がさらに進んで寿命とならないように、制御部21は、蓄電池パック10の劣化度が大きいほど長い時間になるように休止時間β1を算出する。
【0038】
また、蓄電池セル11は、温度が高いときよりも温度が低いときに、休止時間を長く設定すると劣化スピードがより遅くなる。従って、この実施の形態では、制御部21は、温度が低いほど長い時間になるように休止時間β1を算出する構成としている。
【0039】
なお、休止時間β1は、10分〜10時間程度の長さであれば蓄電池セル11の劣化スピードを遅くすることができるが、例えば、24時間以上など非常に長くなると、劣化スピードを逆に速めてしまう可能性がある。従って、制御部21は、蓄電池セル11の劣化スピードを遅くできる時間の範囲内で、休止時間β1を算出する構成とする。なお、上記の劣化スピードを速めてしまう可能性のある休止時間「24時間」は一例であり、例えば、蓄電池セル11の温度が低いときには、劣化スピードを遅くできる休止時間が24時間以上となる場合もある。
【0040】
制御部21は休止時間β1を算出したら、この値を充放電制御部40へ送る。すると、充放電制御部40は、タイマーの計時を開始して(ステップS14)、このタイマーの計時時間tが休止時間β1を超えたと判別されるまで(ステップS16のYES)、該当の蓄電池パック10の状態の監視を行う(ステップS15)。ここで、充放電制御部40は、制御部21から電圧(V)、電流(I)及び温度(T)を取得して状態の監視を行う。
【0041】
そして、充放電制御部40は、タイマーの計時時間tが休止時間β1を超えたら、該当の蓄電池パック10の電力変換装置18を制御して、この蓄電池パック10の充電を開始する(ステップS17)。このような制御が、複数の蓄電池パック10に対してそれぞれ並列的に実行される。それにより、劣化判定フラグがオンにされた1つ又は複数の蓄電池パック10がある場合に、これらの蓄電池パック10の充電が個別に算出された休止時間β1だけずらされて開始される。
【0042】
なお、ステップS15の状態の監視の結果、例えば、放電深度が深くなりすぎて速やかな充電が必要と判断された場合には、充放電制御部40が、休止時間β1に達していなくても充電を開始させる制御を行ってもよい。
【0043】
充電が開始されると、充放電制御部40は、複数の蓄電池パック10が所定の充電状態まで充電されるか、或いは、外部電源の入力が停止するまで充電制御を行って、その後、充電処理を終了する。
【0044】
図6には、充放電制御部40と電池制御部10とで実行される長寿命化放電開始制御処理のフローチャートを示す。
【0045】
この放電開始制御処理は、例えば、充電の途中で外部電源を外して走行を開始する際など、複数の蓄電池パック10が充電状態から放電を要求される状態へ切り替えられた際に開始される。また、図6の放電開始制御処理は、複数の蓄電池パック10に対してそれぞれ個別に且つ並列的に実行される。
【0046】
この放電開始制御処理が開始されると、充放電制御部40は、蓄電池パック10の電池制御部20から劣化判定フラグの値を読み出して、この値がオンであるか判別する(ステップS21)。その結果、値がオンでなければ、該当の蓄電池パック10の電力変換装置18に放電動作を開始させる(ステップS28)。これらの処理が、複数の蓄電池パック10に対してそれぞれ並列的に実行されることで、先ず、劣化判定フラグがオンになっていない1つ又は複数の蓄電池パック10の放電がすぐに開始される。
【0047】
一方、劣化判定フラグがオンであれば、制御部21は、充放電制御部40の指令に基づき、蓄電池パック10の劣化度と現在の温度Tとを取得する(ステップS22)。そして、制御部21は、これら劣化度と温度Tとから蓄電池パック10に適した休止時間β2を算出する(ステップS23)。なお、この放電開始時の休止時間β2と、充電開始時の休止時間β1とは、劣化度と温度Tとが共に同一であっても、異なる時間になってもよい。但し、劣化度の変化に対する休止時間β2の変化の傾向、ならびに、温度Tの変化に対する休止時間β2の変化の傾向は、休止時間β1と同様になる。また、休止時間β2は、例えば10分〜10時間の範囲など、蓄電池セル11の劣化スピードを遅くすることのできる範囲内に留める必要がある。
【0048】
制御部21は休止時間β2を算出したら、この値を充放電制御部40へ送る。休止時間β2の値が送られると、充放電制御部40は、タイマーの計時を開始して(ステップS24)、ステップS25〜S27の監視処理を繰り返す処理ループへ処理を移行させる。すなわち、充放電制御部40は、該当の蓄電池パック10の状態の監視(ステップS25)、需要電力と供給電力との比較監視(ステップS26)、および、タイマーの計時時間tの監視(ステップS27)を繰り返す。ステップS25の状態の監視は、蓄電池セル11の電圧(V)、電流(I)及び温度(T)を取得して行われる。
【0049】
そして、上記の処理ループ中にタイマーの計時時間tが休止時間β2を超えたら、該当の蓄電池パック10の電力変換装置18を制御して、この蓄電池パック10の放電を開始する(ステップS28)。このような制御が、複数の蓄電池パック10に対してそれぞれ並列的に実行される。それにより、劣化判定フラグがオンにされた1つ又は複数の蓄電池パック10がある場合に、これらの蓄電池パック10の放電が個別に算出された休止時間β2だけずらされて開始される。
【0050】
また、上記の処理ループ中、例えば、電動モータ111のトルクが増して、需要電力が供給電力を上回ると、充放電制御部40がこの状態を検出して(ステップS26のYES)、充放電制御部40は処理ループを抜ける。そして、充放電制御部40は、休止時間β2に達していなくても蓄電池パック10から放電を開始する(ステップS28)。
【0051】
蓄電池パック10の放電が開始された後は、充放電制御部40は、外部の需要電力に応じた放電制御を継続する。需要電力がゼロになった場合には、充放電制御部40は放電を停止させるが、その後、再び需要電力が生じることで速やかに放電を開始させる。そして、その後、外部電源が接続されて充電の制御が開始されるか、或いは、複数の蓄電池パック10の放電深度が所定値まで進んで放電完了となったら、充放電制御部40は、放電処理を終了する。
【0052】
以上、本発明の各実施の形態について説明した。
【0053】
なお、上記実施の形態では、蓄電池パックの劣化度を、各蓄電池セルの内部抵抗に基づき判定する例を示した。しかしながら、本発明に係る蓄電池の制御方法では、蓄電池パックの劣化度を、例えば電池容量に基づき判定するなど、公知の様々な判断手法を用いて判定する構成としてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態では、走行終了後にすぐに充電が開始された場合に図4の長寿命化充電開始制御処理が実行されると説明した。しかし、本発明に係る蓄電池の制御方法では、走行終了後(放電終了後)に数時間を開けて充電が開始された場合にも、長寿命化充電開始制御処理が実行される構成としてもよい。この場合、充放電制御部40は、放電終了から充電が開始されるまでの停止時間を計時しておき、長寿命化充電開始制御処理において蓄電池パック10を休止させる際、算出された休止時間βから上記の停止時間を減算した時間だけ蓄電池パック10を休止させる構成としてもよい。
【0055】
同様に、上記実施の形態では、充電後にすぐに走行が開始される場合に図6の長寿命化放電開始制御処理が実行されると説明した。しかし、本発明に係る蓄電池の制御方法では、充電終了後に数時間を開けて放電が開始された場合にも、長寿命化放電開始制御処理が実行される構成としてもよい。この場合、充放電制御部40は、充電終了から放電が開始されるまでの停止時間を計時しておき、長寿命化放電開始制御処理において蓄電池パック10を休止させる際、算出された休止時間βから上記の停止時間を減算した時間だけ蓄電池パック10を休止させる構成としてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態では、休止時間βは、蓄電池パックの劣化度と温度とに応じて決定すると説明したが、蓄電池パックの劣化度のみに応じて決定されてもよい。また、休止時間βは、蓄電池パックの劣化度と蓄電池パックのSOC(充電状態)に応じて決定されてもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、各蓄電池パック10に電池制御部20を設けた構成を例にとって説明したが、電池制御部は蓄電池パックの外に設けてもよいし、複数の蓄電池パックに対して電池制御部が1つのみ設けられる構成としてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、電力貯蔵システム100に電力を供給する構成として、外部電源を挙げたが、電力を供給する構成は、例えば、太陽光発電装置、風力発電装置、エンジン駆動や回生エネルギーで発電を行う発電装置など、様々な構成が適用できる。
【0059】
また、上記実施の形態では、電気自動車に搭載される電力貯蔵システム100について説明したが、本発明に係る電力貯蔵システムは、例えば、家庭用の電源を供給する蓄電池システムなど、様々なシステムに適用することができる。
【0060】
また、上記実施の形態の説明に用いた制御構成の各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、電気自動車の蓄電システムや家庭用の蓄電システム等に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
10 蓄電池パック
11 蓄電池セル
12 温度検出素子
13 電流検出素子
14 電圧計測部
15 温度計測部
16 電流計測部
18 電力変換装置
20 電池制御部
21 制御部
22 劣化状態判定部
40 充放電制御部
100 電力貯蔵システム
111 電動モータ
112 電源入力部







【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列的に接続された複数の蓄電池ユニットの充電および放電を制御する蓄電池制御装置であって、
前記複数の蓄電池ユニットの各々の劣化度を検出する劣化度検出部と、
検出された劣化度に応じた前記蓄電池ユニットの休止時間を算出する休止時間算出部と、
充電と放電との切り替わりの際、算出された前記休止時間に対応させて前記複数の蓄電池ユニットの充電または放電の開始時間を個別にずらす充放電制御部と、
を具備する蓄電池制御装置。
【請求項2】
前記複数の蓄電池ユニットに対して電力の供給および放出をそれぞれ行う複数の電力変換部をさらに備え、
前記充放電制御部は、前記複数の電力変換部を制御して前記複数の蓄電池ユニットの充電と放電を制御する
請求項1記載の蓄電池制御装置。
【請求項3】
前記休止時間算出部は、
前記検出された劣化度が大きいほど前記休止時間の算出値を長い値にする
請求項1記載の蓄電池制御装置。
【請求項4】
前記複数の蓄電池ユニットの各々の温度を検出する温度検出部をさらに備え、
前記休止時間算出部は、
前記検出された劣化度と前記検出された温度に応じて前記休止時間を算出し、前記温度が低いほど前記休止時間の算出値を長い値にする
請求項1記載の蓄電池制御装置。
【請求項5】
正極活物質がニッケル系材料の蓄電池から構成される前記複数の蓄電池ユニットの充電および放電を制御する、
請求項1記載の蓄電池制御装置。
【請求項6】
前記充放電制御部は、
検出された劣化度が所定値以上である前記蓄電池ユニットに対して前記充電または放電の開始時間を前記算出された休止時間に対応させて遅らせる制御を行う
請求項1記載の蓄電池制御装置。
【請求項7】
並列的に接続された複数の蓄電池ユニットの充電および放電を制御する蓄電池制御方法であって、
前記複数の蓄電池ユニットの各々の劣化度を検出するステップと、
検出された劣化度に応じた前記蓄電池ユニットの休止時間を算出するステップと、
充電と放電との切り替わりの際、算出された前記休止時間に対応させて前記複数の蓄電池ユニットの充電または放電の開始時間を個別にずらすステップと、
を含む蓄電池制御方法。
【請求項8】
並列的に接続された複数の蓄電池ユニットと、
前記複数の蓄電池ユニットの各々の劣化度を検出する劣化度検出部と、
検出された劣化度に応じた前記蓄電池ユニットの休止時間を算出する休止時間算出部と、
充電と放電との切り替わりの際、算出された前記休止時間に対応させて前記複数の蓄電池ユニットの充電または放電の開始時間を個別にずらす充放電制御部と、
を具備する電力貯蔵システム。
【請求項9】
電気自動車の走行用の電動モータと、
放電して前記電動モータへ駆動電力を供給する複数の蓄電池ユニットと、
前記複数の蓄電池ユニットの各々の劣化度を検出する劣化度検出部と、
検出された劣化度に応じた前記蓄電池ユニットの休止時間を算出する休止時間算出部と、
充電と放電との切り替わりの際、算出された前記休止時間に対応させて前記複数の蓄電池ユニットの充電または放電の開始時間を個別にずらす充放電制御部と、
を具備する電気自動車の駆動システム。
【請求項10】
前記充放電制御部は、
前記休止時間に対応させて前記複数の蓄電池ユニットの何れかの放電の開始時間を遅らせているとき、前記電気自動車に要求される放電量が得られない場合に、放電の開始時間を遅らせていた前記蓄電池ユニットの放電を開始させる
請求項9記載の電気自動車の駆動システム。
【請求項11】
前記電気自動車に要求される放電量が得られない場合とは、走行に必要な前記電動モータのトルクを発生できない場合である
請求項10記載の電気自動車の駆動システム。
【請求項12】
前記複数の蓄電池ユニットの少なくとも1つが交換されたことを検知する電池交換検知部をさらに備え、
前記劣化度検出部は、前記蓄電池ユニットの交換の検知があったときに、交換により追加された蓄電池ユニットの劣化度を検出する
請求項1記載の蓄電池制御装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−85386(P2013−85386A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223971(P2011−223971)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】