説明

蓋材

【課題】1工程のシールで密封が可能で、転倒しても内容物がこぼれ出ることがなく、かつ、耐内容物性を有する通気層とバリア層に分離が可能な蓋材を提供すること。
【解決手段】フランジ付きプラスチック成形容器の開口部を覆い、成形容器周縁に設けられたフランジ部分と密封シールされる蓋材において、容器外側より、基材フィルム(11)、バリア層(12)、緩衝層(13)、接着層(14)、シーラント層(15)が順次積層された複合フィルム(10)からなり、前記緩衝層(13)とシーラント層(15)の間の接着層(14)は、溶融押し出し法によるポリエチレン樹脂により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香剤、吸湿剤等の容器の蓋材に関するものであり、特に使用する際に、基材フィルムを容器より剥離して、シーラント層側を容器蓋材として残すことのできる分離可能な蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレ等の屋内で消臭用等の目的で使用されている芳香剤は、除湿剤、香料等の内容物を最内層がポリエチレン系樹脂からなるフランジ付きプラスチック成形容器に収納し、その開口部をヒートシール性の不織布、有孔フィルム、あるいはヒートシールニスを処理した紙等から構成される通気性蓋材で覆うことにより、内容物がこぼれず、かつ、水分あるいは芳香成分が該通気性蓋材を通過し得るようにしてある。また、使用時まで前記通気性蓋材による通気性を封印するため、この通気性蓋材をさらにポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエチレン(PE)/アルミニウム箔(Al)/PE、PETフィルムに珪素酸化物、またはアルミニウム酸化物の透明蒸着薄膜層を形成させた蒸着フィルム(VMPET)/ヒートシールニス、延伸ナイロン(ONy)/ポリ塩化ビニリデン(PVDC)/ONy/PEのような層構成からなるバリア性蓋材で覆うというようなことが行われている。
【0003】
しかしながら、この方法は、通気性蓋材とバリア性蓋材の2種類の蓋材をヒートシール等のシール方法を用いて容器に密封シールすることになり、シールを2工程行わなければならず加工賃が高い、2種類の蓋材を使用することによる蓋材のコスト高、内容物が液体の場合、転倒させると内蓋を通して内容物がこぼれてしまう等の問題がある。
【0004】
発明者らは、このような問題を解決する方法として、1工程のシールで密封が可能で、転倒しても内容物がこぼれ出ない、通気層とバリア層に分離が可能な蓋材を開発した(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしこの発明においては、通気層とバリア層の間に香料がたまり易いため、通気層とバリア層の間で剥離現象が生じ易いという新たな問題が生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−120858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、最内層がPE樹脂からなるフランジ付き芳香剤容器の蓋材に関する以上のような問題点に着目してなされた特開2002−120858号を改良したもので、1工程のシールで密封が可能で、転倒しても内容物がこぼれ出るとがなく、かつ、耐内容物性を有する通気層とバリア層に分離が可能な蓋材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1の発明は、フランジ付きプラスチック成形容器の開口部を覆い、成形容器周縁に設けられたフランジ部分と密封シールされる蓋材において、
容器外側より、基材フィルム、バリア層、緩衝層、接着層、シーラント層が順次積層された複合フィルムからなり、前記緩衝層とシーラント層の間の接着層は、溶融押し出し法によるポリエチレン樹脂により形成されていることを特徴とする蓋材である。
【0009】
このように、請求項1記載の発明によれば、蓋材の層構成が、基材フィルム、バリア層、緩衝層、接着層、シーラント層が順次積層された複合フィルムからなり、緩衝層とシーラント層の間の接着層は、溶融押し出し法によるポリエチレン樹脂により形成されているので、バリア層手前の基材フィルム、バリア層、緩衝層からなる香料アタック部と接着層、シーラント層からなる剥離層を分離することにより蓋材の内容物耐性を向上させることができる。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記緩衝層は、単層又は多層の未延伸ポリプロピレン樹脂、二軸延伸ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂のいずれかからなるフィルム基材であることを特徴とする蓋材である。
【0011】
このように、請求項2記載の発明によれば、緩衝層が、単層又は多層の未延伸ポリプロピレン樹脂、二軸延伸ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂のいずれかからなるフィルム基材であるので、腰がかたく、融点の高い樹脂層であり、容器とシールする際、ポリエチレン逃げ、ポリエチレン引き、ポリエチレンだまり等を回避することができる。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記シーラント層は、ポリエチレン樹脂系の未延伸フィルムからなることを特徴とする蓋材である。
【0013】
このように、請求項3記載の発明によれば、シーラント層は、ポリエチレン樹脂系の未延伸フィルムからなるので、最内層がポリエチレン樹脂系のプラスチック成形樹脂との密封シール性が良い。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1、2又は3の発明において、前記蓋材と成形容器とは、線状シールバーにより密封シールされていることを特徴とする蓋材である。
【0015】
このように、請求項4記載の発明によれば、蓋材と成形容器とは、線状シールバーにより密封シールされているので、蓋材と成形容器とは容易に剥離可能となる。
【発明の効果】
【0016】
上記のように、本発明の蓋材は、バリア層とシーラント層の間に緩衝層を設けることにより、蓋材の内容物耐性を向上させることができる。
【0017】
また、緩衝層としてポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等腰がかたく、融点の高い樹脂層を配置することにより、ポリエチレンだまり、ポリエチレン引き、ポリエチレン逃げ等を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の蓋材の一実施例を示す、断面説明図である。
【図2】本発明の蓋材をプラスチック成形容器に被せて密封シールした後、開封しようとしている状態の一実施例を示す、断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の蓋材を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
【0020】
本発明の蓋材は、例えば、図1、図2に示すように、基材フィルム(11)、バリア層(12)、緩衝層(13)、接着層(14)、シーラント層(15)が順次積層された複合フィルム(10)からなる構造を有する。
【0021】
基材フィルム(11)は、特に規定はしないが、PETフィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、ONyフィルム等が好ましく使用できる。
【0022】
また、基材フィルムは、単層でも、上述したプラスチックフィルムや紙等を適宜に組み合わせて複合した多層構成であっても良い。
【0023】
さらに基材フィルム(11)には、必要に応じて印刷層(図示せず)を設けても良い。
【0024】
バリア層(12)には、Al、VMPETフィルム等のガスバリア性に優れたプラスチックフィルムや金属箔が好ましく使用できる。
【0025】
緩衝層(13)には、単層又は複層の未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、OPPフィルム、PETフィルム等が好ましく使用できる。
【0026】
緩衝層(13)を設けることにより、バリア層(12)と後記する接着層(14)を隣接して積層する構成と比較してバリア層(12)手前に香料が集中的にたまり、剥離することを回避し、最も香料のたまり易いバリア層と接着層、シーラント層の低バリア層の境界部分と剥離部分を分別することによりデラミを回避できる。
【0027】
緩衝層(13)と後記するシーラント層(15)の間の接着層(14)は、溶融押し出し法によるポリエチレン樹脂により形成されていることが好ましく、必要に応じて、緩衝層の接着層(14)と接する面にはオゾン処理、コロナ放電処理を施すことができる。
【0028】
接着層(14)が溶融押し出し法によるポリエチレン樹脂により形成されることにより、ドライラミネート法等の接着剤を使用する接着法と比較し、分子量の高い樹脂層を接着層に用いることで香料による接着層の劣化を回避でき、香料保存時の接着強度および剥離強度の安定が得られる。
【0029】
シーラント層(15)は、プラスチック成形容器(20)のフランジ(21)と密封シールされるため、成形容器の最外層と同じ系統の樹脂とすることが好ましく、ポリエチレン樹脂系の未延伸フィルムが好ましく使用できる。
【0030】
基材フィルム(11)とバリア層(12)、あるいはバリア層(12)と緩衝層(13)を積層させる方法は、ドライラミネート法、ノンソルラミネート法、押し出しラミネート法等の一般的に公知のラミネート法を用いる。その際、ドライラミネート法、ノンソルラミネート法においては接着剤が、また、押し出しラミネート法においては、溶融押し出し樹脂が接着層(図示せず)となる。
【0031】
このようにして作製された複合フィルム(10)を適宜の大きさに裁断して出来上がった蓋材(10)は、図2に示すように、ゲル状芳香剤等の内容物の入ったプラスチック成形容器(20)の開口部に載置され、容器周縁に設けられたフランジ(21)と線状のシールバーにより密封シールされる。
【0032】
プラスチック成形容器(20)は、例えば、〔容器外側〕PP/エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)/PP/PE〔容器内側〕、〔容器外側〕未延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂(APET)/線状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)〔容器内側〕、〔容器外側〕APET/エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)/LLDPE〔容器内側〕等の構成からなるドライラミネート法により作製した複合シートをシート成形した成形トレーが好ましく使用できる。
【0033】
いずれの場合においても、プラスチック成形容器の最内面は、蓋材のシーラント層と同材質構成であることが必要である。
【0034】
密封シールは、蓋材のシーラント層とプラスチック成形容器の最内面を融着して行われるが、密封シールの方法は、ヒートシール法、インパルスシール法、超音波シール法等の一般的に公知のシール法を用いれば良い。
【0035】
なお、蓋材にはあらかじめ摘まみ片等を設けておくと使用時に便利である。
【実施例】
【0036】
以下実施例により本発明を詳細に説明する。
【0037】
<実施例1>
基材フィルム(11)として厚さ12μmのPETフィルムを、バリア層(12)として厚さ7μmのAlを、緩衝層(13)として厚さ70μmのCPPフィルムであるRXC−18(東セロ株式会社製)を、シーラント層(15)として厚さ70μmのLLDPEフィルムを、それぞれ準備した。
【0038】
つぎに、基材フィルム(11)である厚さ12μmのPETフィルムと、バリア層(12)である厚さ7μmのAlをドライラミネート法により貼り合わせ、PET(12μm)/Al(7μm)構成の複合第1フィルムとした。
【0039】
この複合第1フィルムのAl面と、緩衝層(13)である厚さ70μmのCPPフィルムをドライラミネート法により貼り合わせ、PET(12μm)/Al(7μm)/CPP(70μm)構成の複合第2フィルムとした。
【0040】
最後に、この複合第2フィルムのCPP面に、シーラント層(15)である厚さ70μmのLLDPEフィルムを、接着層(14)となるPE(25μm)を介して押し出しラミネート法により貼り合わせ、PET(12μm)/Al(7μm)/CPP(70μm)/LDPE(25μm)/LLDPE(70μm)構成の実施例1の蓋材を作製した。
【0041】
<実施例2>
緩衝層(13)として厚さ50μmのCPPフィルムにPP(20μm)を押し出しミネート法により貼り合わせた複合第3フィルムを用いた以外は実施例1と同じ材料、方法を用いて、PET(12μm)/Al(7μm)/CPP(50μm)/PP(20μm)/LDPE(25μm)/LLDPE(70μm)構成の実施例2の蓋材を作製した。
【0042】
<実施例3>
緩衝層(13)として厚さ25μmのOPPフィルムを用いた以外は実施例1と同じ材料、方法を用いて、PET(12μm)/Al(7μm)/OPP(25μm)/LDPE(25μm)/LLDPE(70μm)構成の実施例3の蓋材を作製した。
【0043】
<実施例4>
緩衝層(13)として厚さ38μmのPETフィルムを用いた以外は実施例1と同じ材料、方法を用いて、PET(12μm)/Al(7μm)/PET(38μm)/LDPE(25μm)/LLDPE(70μm)構成の実施例4の蓋材を作製した。
【0044】
<比較例1>
実施例1の層構成から緩衝層(13)を除いた層構成の複合フィルムを作製し、比較例
1の蓋材とした。
【0045】
すなわち、PET(12μm)/Al(7μm)/LDPE(25μm)/LLDPE(70μm)構成からなる蓋材である。
【0046】
<比較例2>
接着層としてエチレン−メタアクリル酸共重合体樹脂(EMAA)(25μm)/LDPE(25μm)からなる複合層を用いた以外は比較例1と同じ層構成の複合フィルムを作製し、比較例2の蓋材とした。
【0047】
すなわち、PET(12μm)/Al(7μm)/EMAA(25μm)/LDPE(25μm)/LLDPE(70μm)構成からなる蓋材である。
【0048】
このようにして作製した実施例4種類、比較例2種類、合計6種類の蓋材を、ゲル状芳香剤(30)を適量入れた、A;APET(300μm)/LLDPE(30μm)、B;APET(300μm)/EVOH(30μm)2種類の材質構成の複合シートからなるフランジ付きプラスチック成形容器の開口部に被せて、ヒートシーラーにより、シール幅1mmの線シールバーを用い、温度;150°C、圧力;2×105Pa、時間;1.0秒の条件で密封シールした。
【0049】
そして、A、B2種類の容器から蓋材を剥がす際の剥離面の状態、剥離強度、および保存状態を下記する方法により観察、測定した。その結果を表1に示す。
【0050】
剥離面の状態‥剥離痕跡、ポリエチレン溜まり等を目視観察
剥離強度‥定速伸長型引張試験機を使用し、300mm/min.の速度で、90°と180°の2条件で蓋材を接着層と緩衝層間(比較例はバリア層と接着層間)で剥がした時の剥離強さを測定、単位はN/15mm
保存評価‥密封シールして、60°Cの恒温層に放置し、6時間、12時間、18時間、24時間後の蓋材の状態を目視観察
【0051】
【表1】

表1から分かるように、緩衝層を設けることにより、蓋材の耐内容物性が向上する。また、シーラント層とバリア層とは比較的弱い力で分離することができる。
【符号の説明】
【0052】
10‥‥複合フィルム、蓋材
11‥‥基材フィルム
12‥‥バリア層
13‥‥緩衝層
14‥‥接着層
15‥‥シーラント層
20‥‥プラスチック成形容器
21‥‥フランジ
30‥‥内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ付きプラスチック成形容器の開口部を覆い、成形容器周縁に設けられたフランジ部分と密封シールされる蓋材において、
容器外側より、基材フィルム、バリア層、緩衝層、接着層、シーラント層が順次積層された複合フィルムからなり、前記緩衝層とシーラント層の間の接着層は、溶融押し出し法によるポリエチレン樹脂により形成されていることを特徴とする蓋材。
【請求項2】
前記緩衝層は、単層又は多層の未延伸ポリプロピレン樹脂、二軸延伸ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂のいずれかからなるフィルム基材であることを特徴とする請求項1記載の蓋材。
【請求項3】
前記シーラント層は、ポリエチレン樹脂系の未延伸フィルムからなることを特徴とする請求項1又は2記載の蓋材。
【請求項4】
前記蓋材と成形容器とは、線状シールバーにより密封シールされていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の蓋材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−20744(P2011−20744A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186997(P2010−186997)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【分割の表示】特願2002−310827(P2002−310827)の分割
【原出願日】平成14年10月25日(2002.10.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】