説明

薄板に同等の特性を得るための成形;冷却素子を有する摩擦攪拌接合装置

複数の金属薄板(802、804)を溶接して複数の溶接ナゲット(918)を有する素板を形成し、型部分とカバー部分の間に素板を配置し、型部分を加熱して素板に熱を加え、カバー部分と型部分の間に加圧気体を導入して素板を型部分の鋳型にプレスして構造部品を成形することによって、構成部品が形成される。複数の溶接ナゲット(918)は、複数の金属薄板(802、804)と形成された構成部品が複数の実質的に同じ特性を有するように、約1.1〜約1.25の範囲の所望の厚さ比を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して金属片の溶接に関し、具体的にはチタン薄板の溶接に関するものである。またさらに具体的には、本発明は摩擦攪拌接合を使用したチタン薄板の溶接に関する。
【背景技術】
【0002】
成形は、例えば金属、プラスチック、及び/又は他の好適な材料等の材料から構成部品を加工するのに使用される工程である。構造部品は、例えば航空機の部品又はアセンブリの構造部品であってよい。超塑性成形は、材料が超塑性を有するように材料を加熱する一種の成形工程である。超塑性とは、材料が材料の長さの約100%を超えて均一に伸びる能力である。材料のこの均一な伸張により、不均一な伸張と比べて材料のくびれ量が低減される。
【0003】
くびれは、材料の一部において大きな引張り量が偏って局所化が起こりかねないほど材料が変形する時に起きる。この結果、材料のこの部分が変形によって材料の他の部分よりも厚さが狭まる可能性がある。これらの実施例では、変形は伸張である。くびれは例えば材料の割れ目及び/又は他の種類の不一致性等の不一致につながり得る。
【0004】
金属に関しては、超塑性成形には型部分とカバー部分の間に金属薄板を配置することが含まれる。この金属薄板はまた、素板と呼ばれる場合もある。現在使用されている種類の型部分は、一つの金属薄板では構造部品を加工するのに十分な大きさではない可能性がある。これらの種類の型部分を使用して、複数の金属薄板を互いに溶接して素板を形成することができる。複数の金属薄板は摩擦攪拌接合を使用して溶接することができる。
【0005】
摩擦攪拌接合によって2つの金属薄板の縁部を互いに突き合わせることができる。熱及び機械エネルギーを金属薄板に印加して、金属薄板を縁部で接合させる。熱及び機械エネルギーにより、金属薄板の一部が2つの金属薄板を接合する連続金属領域を形成する。この領域は溶接ナゲットであってよい。この種の溶接では、金属の溶解は起こらず溶解に伴う熱変形が回避される。
【0006】
通常、型部分は構造部品の形状を有する。素板は、加圧気体を使用して型部分の形状となるように形成される。加圧気体はカバー部分を通じて導入することができる。型部分は金属と、素板の溶接された部分の機械特性、疲労性能、及び/又は他の性質に影響を与える温度にまで加熱することができる。
【0007】
したがって、上述した一又は複数の問題と、他の可能性のある問題を考慮した方法及び装置を有することが有利である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の有利な実施形態では、複数の金属薄板を溶接して複数の溶接ナゲットを有する素板を形成し、型部分及びカバー部分の間に素板を配置し、型部分を加熱して素板を加熱し、カバー部分及び型部分の間に加圧気体を導入して、型部分の鋳型に素板をプレスして構造部品を形成することによって、構造物品が形成される。複数の溶接ナゲットは、構造部品が形成された後に、複数の金属薄板と形成された構成部品が複数の実質的に同じ特性を有するように、約1.1〜1.25の範囲の所望の厚さ比を有する。
【0009】
本発明の有利な実施形態は、アンビル、ピンツール、及び冷却素子を含む溶接機であり、ピンツールは軸周囲を回転し、軸に直角の方向に移動し、シムと突き合わせ継手に下向きの力を加えて、第1金属片及び第2金属片を互いに溶接して溶接ナゲットを形成し、溶接ナゲットは超塑性成形工程の後に約1.1〜1.25の範囲の所望の厚さ比を有し、第1金属片、第2金属片、及び溶接ナゲットは、超塑性成形工程後に複数の実質的に同じ性質を有する。
【0010】
本発明の別の有利な実施形態は構造部品の加工方法であり、本方法は、所望の温度で金属薄板を互いに摩擦攪拌接合させて、溶接ナゲットを有する素板を形成し;超塑性成形工程を使用して素板から構造部品を形成することを含み、溶接ナゲットは超塑性成形工程の後に約1.1〜1.25の範囲の所望の厚さ比を有し、摩擦攪拌接合された溶接ナゲットと金属薄板は、約1×10−2〜5×10−6インチ/インチ/秒の範囲の実質的に一定の引張速度を有し、溶接された金属薄板と溶接ナゲットは、超塑性成形工程後に複数の実質的に同じ性質を有する。
【0011】
本発明の別の有利な実施形態は加工方法であり、本方法は、複数のチタン薄板を溶接して多数の溶接ナゲットを有する素板を形成し;型部分とカバー部分の間に素板を配置し、ここで型部分に熱を加えて素板を加熱し;カバー部分と型部分の間に加圧気体を導入して、型部分の鋳型に素板をプレスして構造部品を形成することを含み、ここで複数の溶接ナゲットは、複数のチタン薄板と形成された構造部品が複数の実質的に同じ性質を有するように、約1.1〜1.25の範囲の所望の厚さ比を有する。
【0012】
本発明の別の有利な実施形態は、チタン構造物を加工する方法であり、本方法は、複数のチタン片を互いに摩擦攪拌接合して所望の超塑性を有する溶接ナゲットを有する素板を形成し;素板からチタン構造物を形成することを含み、ここで溶接ナゲットは、チタン構造物の形成中に素板の他の部分よりも約1〜25%小さく伸ばされる。
【0013】
特徴、機能及び利点は、本発明の様々な実施形態において個別に達成することができる、または下記の説明及び図面を参照することによってさらに詳細を理解することができる更に別の実施形態と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は有利な実施形態による成形及び攪拌接合を用いた製造環境の図である。
【図2】図2は有利な実施形態による航空機の図である。
【図3】図3は有利な実施形態によるジェットエンジンの分解組立図である。
【図4】図4は有利な実施形態による製造環境の図である。
【図5】図5は有利な実施形態による製造環境の図である。
【図6】図6は有利な実施形態による型部分とカバー部分の間に位置づけされた素板の断面図である。
【図7】図7は有利な実施形態による型部分の鋳型にプレスされた素板の断面図である。
【図8】図8は有利な実施形態によるシムを有する突き合わせ継手の図である。
【図9】図9は有利な実施形態による溶接機の図である。
【図10】図10は有利な実施形態による溶接の断面図である。
【図11】図11は有利な実施形態によるテスト片である。
【図12】図12は有利な実施形態によるテスト片である。
【図13】図13は有利な実施形態によるテスト片である。
【図14】図14は有利な実施形態による厚さ比のグラフである。
【図15】図15は有利な実施形態によるテスト片についての、擬熱比対厚さ比を表すグラフである。
【図16】図16は有利な実施形態による構造部品を加工する工程のフロー図である。
【図17】図17は有利な実施形態によるテスト片に試験を行う工程のフロー図である。
【図18】図18は有利な実施形態による摩擦攪拌接合工程のパラメータを同定する工程の図である。
【図19】図19は有利な実施形態による摩擦攪拌接合工程の図である。
【図20】図20は有利な実施形態による仕上げ作業を実施する工程のフロー図である。
【図21】図21は有利な実施形態による試験結果の表を示す。
【図22】図22は有利な実施形態による試験結果の表を示す。
【図23】図23は有利な実施形態による試験結果の表を示す。
【図24】図24は有利な実施形態による試験結果の表を示す。
【図25】図25は有利な実施形態による試験結果の表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、有利な実施形態による製造環境が図示されている図1を参照する。この実施例では、製造環境100を使用して、例えば非限定的に、パーツ、アセンブリ、航空機のパーツ、ヒンジ、外板パネル、スパー、リブ、及び/又は他の好適な構造部品等の構造部品を製造する。装置サプライヤ110は装置を提供し、材料サプライヤ112は製造環境100で使用される材料を提供する。この実施例では、装置サプライヤ110は薄板加工114、素板加工116、及び構造部品加工118で使用される装置を提供する。材料サプライヤ112は、薄板加工114で使用される、例えば金属等の材料を提供する。
【0016】
薄板加工114では、材料サプライヤ112から提供された金属から金属薄板を形成する。この金属薄板は次に素板加工116で使用される。この実施例では、素板加工116では、薄板加工114で形成された複数の金属薄板を使用して素板を形成する。例えば、素板加工116には、素板を形成するための摩擦攪拌接合が含まれ得る。「複数の」が物品に対して使われる際は、一又は複数の物品を意味する。例えば、複数の装置の実施形態は一又は複数の装置の実施形態であってよい。
【0017】
構造部品加工118では素板を使用して構造部品を形成する。ある実施例として、構造部品は航空機の外板パネルであってよい。構造部品を使用して、アセンブリ加工120において航空機のアセンブリを形成することができる。アセンブリは例えば、航空機の機体であってよい。アセンブリはシステム統合122において使用される。例えば、システムが航空機である場合、システム統合122においてアセンブリを航空機に組み込むことができる。システムは次に就航124において利用開始される。
【0018】
ある実施例においては、構造部品加工118において形成された構造部品を整備及び保守作業126及び/又は再製造作業128において使用可能である。
【0019】
ここで、有利な実施形態による航空機を示す図2を参照する。この実施例では、航空機200はジェット航空機202の形態である。ジェット航空機202は、図1の製造環境100を使用して構造部品を製造することができるプラットフォームの実施例である。例えば、ジェット航空機202のジェットエンジンのハウジング204と、ジェットエンジンのハウジング206の構造部品は製造環境100で加工することができる。これらのハウジングは、ジェットエンジン204のナセル208及びジェットエンジン206のナセル210の形態である。
【0020】
ここで、有利な実施形態によるジェットエンジンの分解組立図を示す図3に注目する。この実施例では、図3のジェットエンジン204はナセル208とともに図示されている。図示したように、ナセル208はリップスキン300を有する。リップスキン300はナセル208の先端縁部である。この実施例では、リップスキン300は金属製である。リップスキン300は、図1の製造環境100における構造部品加工118で形成可能な構造部品の一例である。
【0021】
異なる有利な実施形態は、複数の異なる検討事項を認識し考慮に入れている。異なる有利な実施形態は、複数片から形成された構造部品が、単一片から形成された構造部品と比べて性能が低い場合があることを認識し、考慮に入れている。例えば、いくつかの現在入手可能なナセルに関しては、これらのナセルのリップスキンは留め具で互いに固定された複数のアルミ片でできている。これらの留め具及び固定された複数片の継ぎ目により、リップスキンの表面がでこぼこになる可能性がある。このでこぼこの表面は、航空機が飛行中にリップスキンの上の空気流が乱れるという好ましくない結果を招きかねない。この好ましくない乱気流により抵抗が生じ、この抵抗により今度は航空機の燃料効率が低減する可能性がある。
【0022】
異なる有利な実施形態は、単一片から形成されたリップスキンにより、複数片から形成されたリップスキンの場合よりも空気がさらにほぼ層流となる可能性があることを認識し考慮している。さらに、異なる有利な実施形態は、単一のアルミ片を使用してリップスキンを形成することができることを認識し考慮している。しかしながら、異なる有利な実施形態は、チタンがアルミニウムに比べてより高い温度に耐える能力を有し得ることを認識し考慮している。
【0023】
さらに、チタンはまた、例えば所望の重量、所望の強度、耐食性、複合材との適合性、所望の熱膨張係数、及び成形工程を使用して成形可能であること等の、エアロスペース・プラットフォームに望ましい特性も有する。異なる有利な実施形態はまた、チタンを使用した大きい構造部品の加工は、現在入手可能なチタン薄板の寸法により制限される場合があることも認識し考慮している。現在、チタン薄板は約1.2m×約3.6mの寸法まで入手可能である。具体例として、あるリップスキンの直径は約10mを超える。異なる有利な実施形態は、単一のチタン薄板を使用してこの種のリップスキンを形成することはできないことを認識し考慮に入れている。
【0024】
この種のリップスキンについては、2枚以上のチタン薄板からできた素板を使用することができる。
【0025】
さらに、異なる有利な実施形態は、複数の金属薄板でできた構造部品の性能は、複数の金属薄板の溶接結果に依存し得ることを認識し考慮に入れている。例えば、複数の金属薄板の溶接が溶接された領域の特性に影響を与え得る。
【0026】
異なる有利な実施形態は、素板を形成するのに使用される超塑性材の溶接により、素板が超塑性成形工程で使用される時に望ましくない結果が引き起こされる可能性があることを認識し考慮に入れている。例えば、超塑性金属の融解溶接により、溶接ナゲットと比べて、溶接ナゲットに隣接した母材により強い超塑性引張応力が引き起こされる可能性がある。母材のこの超塑性引張応力のために素板に早期くびれが起こる場合がある。
【0027】
異なる有利な実施形態はまた、金属薄板を溶接して素板を形成した後に、素板の母材金属と素板の溶接ナゲットの複数の性質が溶接後及び/又は超塑性成形工程後に実質的に同じでない場合があることも認識し、考慮している。例えば、現在利用可能な摩擦攪拌接合工程に関して言えば、溶接ナゲットが素板の母材と比べて強度が弱い可能性がある。さらに、溶接ナゲットは母材と比べて望ましくない疲労特性を有し得る。
【0028】
またさらに、異なる有利な実施形態は、溶接ナゲットが母材とは異なる粒子組成を有し得ることを認識し考慮に入れている。この粒子組成の違いにより、超塑性成形工程を使用して素板から形成された構造部品に望ましくない性質が引き起こされる可能性がある。異なる有利な実施形態は、超塑性成形工程の前後に互いに溶接された金属薄板と実質的に同じ複数の性質を有する構造部品を有することは好ましい場合があることを認識する。
【0029】
したがって、異なる有利な実施形態は、チタンから素板を形成する方法及び装置を提供する。本発明の有利な実施形態では、複数の金属薄板を溶接して複数の溶接ナゲットを有する素板を形成し、素板を型部分及びカバー部分の間に配置し、型部分に熱を加えて素板を加熱し、カバー部分と型部分の間に加圧気体を導入して素板を型部分の鋳型にプレスして構造部品を形成することによって構造部品が形成される。複数の溶接ナゲットは、複数の金属薄板と形成された構造部品が複数の実質的に同じ性質を有するように、約1.1〜1.25の範囲の所望の厚さ比を有する。
【0030】
ここで、有利な実施形態による製造環境を示す図4を参照する。この実施例は、製造環境400は、薄板加工114、素板加工116、及び構造部品加工118で使用される図1の製造環境100の一部の一実行形態の例であってよい。さらに、製造環境400は、図2の航空機200等のプラットフォームの構造部品を加工するのに使用可能である。具体的には、製造環境400は図3のナセル208のリップスキン300を加工するのに使用可能である。
【0031】
製造環境は、材料402、複数の機械404、及びコンピュータシステム406を含む。この実施例では、材料402はチタン408、ピン410、アンビル材412、仕上げ材414、及び/又は他の好適な材料を含む。ピン410は例えば、摩擦攪拌接合装置で使用される攪拌ピンであってよい。これらの実施例では、材料402は図1の材料サプライヤ112によって供給され得る。チタン408は、チタン408の複数の薄板416を形成するのに使用される。攪拌接合ピン410、アンビル材412、及び仕上げ材414は、複数の薄板416から素板418を形成するのに使用される。
【0032】
他の有利な実施形態では、チタン408以外の金属を使用することができる。例えば、材料402は非限定的に、貴金属合金、アルミニウム、チタン、マグネシウム、スチール、アルミ合金、チタン合金、マグネシウム−アルミ合金、アルミ−リチウム合金、ニッケル−クロム−鉄合金、ニッケル−スチール合金、超合金、及び/又は他の好適な種類の金属のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0033】
これらの実施例では、複数の薄板416及び素板418は、複数の機械404を使用して材料402から形成される。複数の機械404はまた、素板418を使用して構造部品419を形成するのにも使用される。構造部品419は例えば、図3のリップスキン300であってよい。他の実施例では、構造部品419は、外板パネル、スパー、リブ、又は何らかの他の好適な種類の構造部品の形態を取ることができる。
【0034】
複数の機械404は、例えば非限定的に、溶接機420、成形機422、仕上げツール424、及び試験装置426を含むことができる。複数の機械404は、図1の装置サプライヤ110によって供給され得る装置の例である。これらの実施例で示すように、複数の機械404はコンピュータシステム406によって制御される。
【0035】
この実施例では、コンピュータシステム406は複数のコンピュータを含むことができる。さらに、コンピュータシステム406は、ソフトウェア428及びデータベース430を含む。ソフトウェア428は、溶接設計ソフト432、溶接制御ソフト434、仕上げソフト436、成形形状生成ソフト438、成形制御ソフト439、及び試験ソフト440を含む。溶接設計ソフト432及び溶接制御ソフト434は、溶接機420によって複数の薄板416に実施される溶接作業を制御するためにコンピュータシステム406で実行される。
【0036】
ここに示す実施例では、仕上げソフト436は仕上げツール424によって素板418に行われる仕上げ作業を制御するために実行される。成形形状生成ソフト438及び成形制御ソフト439は、素板418から構造部品419を成形する成形機422を制御するために実行される。試験ソフト440は、試験機426によって素板418及び構造部品419の試験を制御するために実行される。
【0037】
この実施例では、データベース430は複数の機械404を制御するためにソフトウェア428によって使用される情報が記憶される。この情報は例えば非限定的に、データ、コマンド、メッセージ、複数の機械404のパラメータ、安全指針、及び/又は他の好適な種類の情報であってよい。複数の機械404のパラメータは例えば非限定的に、複数の薄板416の厚さ、チタン408の粒子サイズ、溶接機420のスピンドル速度(毎分回転数)、溶接機420の送り速度、及び/又は他の好適なパラメータを含むことができる。
【0038】
図4の製造環境400の図は、物理的制限及びアーキテクチャ制限を暗示するものではなく、異なる有利な実施形態が実行可能である。図示した構造部品に加えて及び/又はその代わりに他の構造部品を使用することができる。いくつかの構造部品はいくつかの有利な実施形態では必要でない場合がある。また、ブロックはいくつかの機能性構造部品を図示するために記載されている。これらの一又は複数のブロックは、異なる有利な実施形態において実行される時に、組み合わせて及び/又は異なるブロックに分割することができる。
【0039】
ここで、有利な実施形態による製造環境を示す図5を参照する。この実施例では、製造環境500は図4の製造環境400の一実施例である。製造環境500においては、成形工程を使用して、図3のリップスキン300等のリップスキンが形成される。成形工程は超塑性成形工程であってよい。
【0040】
この実施例では、製造環境500はレールシステム502、型部分504、及びカバー部分506を含む。型部分504はベース507と、形状510を有する鋳型508を有する。形状510は、形成されるリップスキンの形状であってよい。この実施例で示すように、チャネル508は素板512を受け入れる。素板512は複数のチタン薄板を含む。これらのチタン薄板は、チタン薄板514、チタン薄板516、チタン薄板518、チタン薄板520、チタン薄板522、チタン薄板524、チタン薄板526、及びチタン薄板528を含む。他の実施例では、素板512は異なる数のチタン薄板からできていてよい。
【0041】
図示するように、チタン薄板514〜528はカスタマイズされた形状を有する。言い換えると、チタン薄板514〜528は、互いに相対的に位置づけされた時に、チタン薄板514〜528がドーナツ状の形状になり素板512を形成するように構成されている。これらの実施例では、チタン薄板514〜528のカスタマイズされた形状を、複数のチタン薄板の少なくとも約75%が各チタン薄板514〜528に使用されるように、複数のチタン薄板から切り出すことができる。
【0042】
素板512は型部分504の上に配置される。型部分504は、型部分504の車輪システム530を使用して、カバー部分506に向かってレールシステム502上を移動する。型部分504は、素板512がカバー部分506の下に位置づけされるまで移動する。カバー部分506は、油圧ジョイスト532、534、536、及び538を使用して素板512の上に下げることができる。この実施例では、プレス機540が素板512と係合するように、カバー部分506を下げることができる。プレス機540が素板512と係合した時に、素板512が型部分502の鋳型508にプレスされるように、プレス機540を介して加圧気体を導入することができる。素板512は、素板512が形成されるリップスキンの形状510に成形されるように、鋳型508にプレスされる。
【0043】
ここで、有利な実施形態による、型部分及びカバー部分の間に位置づけされた素板の断面を示す図6を参照する。この実施例では、素板512は型部分504のベース507上に置かれている。プレス機540は素板512の上に位置づけされ、素板512の最上部に置かれている。さらに、プレス機540は、台600、602、604、及び606を使用して素板512の上に停止する。
【0044】
この実施例では、加圧気体はチャネル608を通してプレス機540を介して導入することができる。加圧気体はプレス機540のポート610及びポート612を通って素板512に到達することができる。加圧気体は型部分504の鋳型508に素板512をプレスするのに使用することができる。
【0045】
ここで、有利な実施形態による、型部分の鋳型にプレスされている素板の断面を示す図7を参照する。この実施例では、型部分504を加熱することができる。型部分504から放射される熱と加圧気体はポート610及び612を介して進入し、型部分504の鋳型508に素板512をプレスすることができる。図示したように、素板512はリップスキン700を形成するために鋳型508にプレスすることができる。
【0046】
ここで、有利な実施形態による突き合わせ継手を示す図8を参照する。この実施例では、突き合わせ継手800はアンビル806の上でチタン薄板802及びチタン薄板804を接合させることによって形成される。チタン薄板802及びチタン薄板804のこの接合は、レーザ溶接工程を使用して行うことができる。さらに、シム808をレーザ溶接工程を使用して突き合わせ継手800に接合させることもできる。
【0047】
ここで、有利な実施形態による、溶接機を示す図9を参照する。この実施例では、溶接機900を使用して突き合わせ継手800の接合部902が形成される。この実施例では、摩擦攪拌接合を使用して溶接機900により接合部902が形成される。溶接機900は、溶接ツール904と攪拌ピン906を含む。
【0048】
この実施例に示すように、溶接機900は矢印908の方向に突き合わせ継手800とともに移動する。さらに、攪拌ピン906は、溶接機900が移動する時に矢印910の方向に回転する。溶接機900が移動し、攪拌ピン906が回転すると、溶接機900から力912が働く。
【0049】
溶接機900により、チタン薄板802とチタン薄板804がシム808とともに溶接されると、溶接ナゲット914が形成される。溶接ナゲット914は、溶接機900が突き合わせ継手800上に押し下げられることで、チタン薄板802とチタン薄板804の一部が変位することで形成される。溶接ナゲット914が形成される時に、接合部902の表面918にマーキング916が形成される。図示したように、マーキング916は攪拌ピン906の回転に起因して、円形状を有することができる。
【0050】
突き合わせ継手800にレーザ溶接されたシム808により、突き合わせ継手800に沿って溶接が行われた後に、溶接ナゲット914が溶接されていないチタン薄板802とチタン薄板804の一部と実質的に同じ厚さを有するようになる。
【0051】
ここで、有利な実施形態による接合部の断面を示す図10を参照する。この実施例では、溶接機900の攪拌ピン906の先端部1000により、チタン薄板802とチタン薄板804の一部が変位して溶接ナゲット914を形成する。
【0052】
攪拌ピン906の先端部1000と、チタン薄板802及びチタン薄板804の一部との間の接触により、攪拌ピン906が回転し、溶接機900が力912で下方向に押し下げるときに摩擦熱が生じる。この摩擦熱により、攪拌ピン906の先端部1000近くのチタン薄板802とチタン薄板804の一部が軟化する。この軟化により、溶接ナゲット914の形成が可能になる。この実施例では、溶接ナゲット914の温度はチタン薄板802とチタン薄板804の融点を超えることはない。このように、溶接ナゲット914の多孔性及び/又は熱分解を低減することができる又は回避することができる。
【0053】
ここで、有利な実施形態によるテスト片を示す図11〜13を参照する。これらの実施例では、テスト片は摩擦攪拌接合工程を使用して2つのチタン片を溶接することにより形成される。摩擦攪拌接合工程では、各テスト片に溶接ナゲットが形成される。摩擦攪拌接合工程のために選択された一連のパラメータが、溶接ナゲットの超塑性を決める。各テスト片は超塑性成形工程を使用して伸ばされて、テスト片に発生する超塑性引張り量が決まる。テスト片の母材と比較して、溶接ナゲットに発生する超塑性引張り量は、下記式:
厚さ比 = (e)/(e
を使用して厚さ比を計算することによって決定することができ、この式では、eは母材の超塑性伸張後の母材の厚さであり、eは溶接ナゲットの超塑性伸張後の溶接ナゲットの厚さである。
【0054】
まず図11を見てみると、テスト片1100は溶接ナゲット1102、部分1104、及び部分1106を有する。部分1104及び部分1106は、この実施例ではチタンである、テスト片1100の母材を含むテスト片1100の部分である。
【0055】
溶接ナゲット1102を形成するために選択された一連のパラメータは、溶接ナゲット1102が、部分1104及び部分1106と比べて厚さがより薄くなるようなパラメータである。言い換えると、部分1104及び部分1106に比べて、溶接ナゲット1102にはより大きな超塑性引張応力が発生する。
【0056】
ここで図12を見てみると、テスト片1200は溶接ナゲット1202、部分1204、及び部分1206を有する。部分1204及び部分1206はこの実施例ではチタンである、テスト片1200の母材を含む。
【0057】
溶接ナゲット1202を形成した摩擦攪拌接合工程のために選択されたパラメータは、部分1204及び部分1206が、溶接ナゲット1202と比べて厚さがより増加するようなパラメータである。言い換えると、溶接ナゲット1202に比べて、部分1204及び部分1206にはより大きな超塑性引張応力が発生する。
【0058】
ここで図13を見てみると、テスト片1300は溶接ナゲット1302、部分1304、及び部分1306を有する。部分1304及び部分1306はこの実施例ではチタンである、テスト片1200の母材を含む。
【0059】
溶接ナゲット1302を形成した摩擦攪拌接合工程のために選択されたパラメータは、溶接ナゲット1302、部分1304及び部分1306の厚さが実質的に同じになるようなパラメータである。言い換えると、溶接ナゲット1302、部分1304及び部分1306には実質的に同じ量の超塑性引張応力が発生する。さらに、溶接ナゲット1302、部分1304、及び部分1306は、部分1304及び1306が実質的に先細りにならないように、テスト片1300全体で均一に伸ばされる。
【0060】
この実施例では、約1.0の厚さ比が計算可能である。約1.00の厚さ比は、テスト片1300の母材及び溶接ナゲット1302の伸張後の厚さが実質的に同じであることを示す。
【0061】
成形工程で素板を使用している時は、約1.1〜1.25の厚さ比が望ましい。厚さ比が約1.1〜1.25であると、伸張後の溶接ナゲットの厚さは母材よりも約1%〜25%厚くなり得る。この厚さにより、伸張後に溶接ナゲットと母材が実質的に同じ複数の性質を有することが可能になる。これらの性質は、例えば非限定的に、強度、疲労特性、破壊靱性性能、耐食性、衝撃損傷許容性、粒子構成、及び/又は他の好適な性質を含むことができる。
【0062】
材料の粒子構成は、下記:粒子サイズ、粒子配向、材料内部の粒子密度、及び/又は他の好適な粒子の性質のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0063】
異なる有利な実施形態では、溶接ナゲットの超塑性引張応力は、溶接ナゲットを形成するのに使用される溶接工程によって決定することができる。例えば、摩擦攪拌接合工程では、溶接ナゲットの超塑性引張応力は摩擦攪拌接合装置のスピンドル速度及び送り速度が上がるにつれて、溶接ナゲットの超塑性引張応力が低減され得る。異なる有利な実施形態では、素板の超塑性引張応力は約1×10−2〜5×10−6インチ/インチ/秒の範囲である。
【0064】
摩擦攪拌接合工程は溶接ナゲットの望ましい超塑性引張応力を得るために調節することが可能である。この調節は、摩擦攪拌接合工程中に溶接ナゲット全体に発生する相対温度に基づくものであってよい。さらに調節を行うために擬熱比を使用することができる。擬熱比は下記式:
擬熱比 = (N)/(fr)
を使用して計算され、この式では、Nは毎分回転数(rpm)で表されるスピンドル速度であり、frは毎分ミリメートル(mm/秒)で表される送り速度である。
【0065】
これらの実施例では、擬熱比について計算された値を使用して、摩擦攪拌接合工程中に発達した摩擦量に起因して発生する熱量が示される。擬熱比の計算値はデータ表示用にスケーリングすることができる。スピンドル速度の変化は、送り速度の変化に比べて、摩擦攪拌接合中に発達する熱エネルギー量により大きく影響する可能性がある。
【0066】
ここで、有利な実施形態による厚さ比のグラフを示す図14を参照する。この実施例では、グラフ1400によりテスト片の母材の、テスト片の溶接ナゲットに対する厚さ比が表示される。この実施例では、母材は5083−SPアルミ合金であってよい。さらに、溶接ナゲットは摩擦攪拌接合工程を使用して形成することができる。
【0067】
グラフ1400は、テスト片の長さに沿ったテスト片の厚さ比を示す。横軸1402は溶接ナゲットを形成した溶接工程開始からの間隔である。縦軸1404は厚さ比である。表示1406は約150mm/秒の一定の送り速度と変動スピンドル速度を表す。
【0068】
表示1406は各々、溶接工程開始から約75mm、約125mm、及び約175mmの間隔において測定された3つの試験ポイントである。
【0069】
約1の厚さ比により、溶接ナゲットの望ましい超塑性引張応力が得られる。グラフ1400を使用して、約1の厚さ比が得られるスピンドル速度と送り速度を決定することができる。約1の厚さ比は、約150mm/秒の送り速度、及び約420rpmのスピンドル速度で得ることができる。
【0070】
グラフ1400に示すように、スピンドル速度が増加すると、溶接ナゲットの超塑性引張応力が低下する。スピンドル速度が増加すると、摩擦攪拌接合工程において発生する熱量により溶接ナゲット内部の温度が上昇する可能性がある。この温度の上昇により、溶接ナゲットの超塑性が低減する可能性がある。
【0071】
ここで、有利な実施形態による、テスト片の擬熱比対厚さ比のグラフを示す図15を参照する。この実施例では、グラフ1500は横軸1502と縦軸1504を有する。横軸1502は擬熱比であり、縦軸1504は厚さ比である。この厚さ比は厚さ比として計算する。
【0072】
この実施例では、曲線1506はグラフ1500の表示ポイント1508に最も適合する曲線である。ポイント1510で示すように、約30の擬熱比により約1の望ましい厚さ比を得ることができる。約30の擬熱比を使用して、スピンドル速度及び送り速度のパラメータの複数の値を計算することができる。これらの値は、溶接ナゲット内部の望ましい超塑性引張応力を得るために摩擦攪拌接合工程を調節するのに使用することができる。
【0073】
異なる有利な実施形態では、溶接ナゲットの望ましい超塑性引張応力は約1×10−2〜5×10−6インチ/インチ/秒の範囲である。この種の超塑性を有する溶接ナゲットの厚さは、超塑性成形工程後は母材よりも約1〜25%厚くなる。溶接ナゲットのこの追加的な厚さにより、超塑性成形工程中に溶接ナゲットが薄くならないようにすることができる。
【0074】
さらに、異なる有利な実施形態では、溶接ナゲットと母材が実質的に同じ粒子構成を有するように摩擦攪拌接合工程を調節することができる。例えば、微粒子チタンを使用して素板を形成する時に、形成される溶接ナゲットがチタン母材と実質的に同じ粒子構成を有するように摩擦攪拌接合工程を調節することができる。溶接ナゲットの粒子構成をチタン母材の粒子構成と一致させることで、素板の望ましい超塑性を得ることができる。
【0075】
さらに、溶接ナゲットと母材がいずれも同じような粒子構成を有すれば、素板を形成するために使用される超塑性成形工程を約1425〜1450度(華氏)の範囲の温度で行うことができる。ある有利な実施形態では、成形工程を約1300〜1750度(華氏)の範囲の温度で行うことができる。
【0076】
ここで、有利な実施形態による構成部品を加工する工程のフロー図を示す図16を参照する。図16に示す工程は、図4の製造環境400において実行可能である。
【0077】
この工程は、複数のチタン薄板を溶接して複数の溶接ナゲットを有する素板を形成することによって開始される(作業1600)。溶接ナゲットは、溶接作業によって互いに接合されたチタン薄板の部分に形成され得る。この工程では次に、素板を型部分及びカバー部分の間に配置する(作業1602)。型部分は、型部分に熱を加えて、その熱で素板を約1300〜1750度(華氏)の範囲の温度にまで加熱するものであってよい。
【0078】
その後にこの工程では、カバー部分及び型部分の間に加圧気体を導入して素板を型部分の鋳型にプレスして構成部品を形成する(作業1604)。作業1602及び1604は超塑性成形工程を含むことができる。作業1604では、素板が超塑性引張応力によって伸ばされるように素板を鋳型にプレスすることができる。
【0079】
さらに、作業1600の溶接作業は、超塑性成形工程に応じて素板の厚さ比が約1.1〜1.25の範囲で計算されるように行うことができる。これらの実施例では、厚さ比は母材の厚さの、溶接ナゲットの厚さに対する比である。
【0080】
ここで、有利な実施形態による、テスト部品に試験を行う工程のフロー図を示す図17を参照する。図17に示すこの工程は、製造環境400において図4の試験装置426を使用して実行可能である。
【0081】
この工程は、超塑性成形工程の複数のパラメータを入力することによって開始する(作業1700)。これらのパラメータは、素板を形成するときに超塑性成形工程を調節することができるように、テスト片に対して試験を行うことができる。このパラメータは例えば非限定的に、厚さ、粒子サイズ、鋳造荷重、スピンドル速度、送り速度、攪拌ピンの摩耗、水流、及び/又は他の好適なパラメータを含むことができる。このプロセスでは次に、テスト片用の突き合わせ継手を形成する(作業1702)。その後に、この工程では突き合わせ継手を摩擦攪拌接合して溶接ナゲットを形成する(作業1704)。この工程では次に、テスト片を伸ばして溶接ナゲットとテスト片の母材に超塑性引張応力を発生させることによって試験を行う(作業1706)。
【0082】
この工程では、試験結果を記録する(作業1708)。この工程では次に、結果に基づいてパラメータを調節すべきか否かの決定を行う(作業1710)。パラメータを調節しない場合、この工程ではデータを表示して(作業1712)、その後工程は終了する。そうでない場合、この工程は作業1700へ戻る。
【0083】
ここで、有利な実施形態による、摩擦攪拌接合工程のためのパラメータを同定する工程を示す図18を参照する。この実施例では、この図18に示す工程を図4の製造環境400において実行することが可能である。
【0084】
この工程は、摩擦攪拌接合工程のための複数のパラメータを入力することによって開始される(作業1800)。これらのパラメータは例えば非限定的に、厚さ、粒子サイズ、及び/又は他の好適なパラメータを含むことができる。この工程は次に、シムを使用すべきか否かの決定を行う(作業1802)。シムを使用する場合、この工程では次に、シムのための複数のパラメータを入力する(作業1804)。これらのパラメータは例えば非限定的に、厚さ及び粒子サイズを含む。
【0085】
この工程では次に、入力されたパラメータを基に厚さ比(作業1806)及び擬熱比(作業1808)を計算する。作業1806及び1808は値のデータベースにアクセスすることによって実施可能である。その後、この工程では次に、所望の厚さ比と所望の擬熱指数に基づいて所望のスピンドル速度及び所望の送り速度を同定する(作業1810)。所望のスピンドル速度及び所望の送り速度を次に使用して、摩擦攪拌接合工程のスピンドル速度及び送り速度を同定し(作業1812)、その後工程は終了する。
【0086】
再び作業1802を参照すると、シムが使用されない場合、工程は上述したように作業1806に続く。
【0087】
ここで、有利な実施形態による摩擦攪拌接合工程を示す図19を参照する。図19に示す工程は、図4の製造環境400で実行可能である。
【0088】
この工程は、2つの金属片を共に位置づけすることによって開始する(作業1900)。この工程は次に、2つの金属片をレーザ溶接して突き合わせ継手を形成する(作業1902)。この工程では、シムを突き合わせ継手の最上部に溶接する(作業1904)。その後で、この工程では摩擦攪拌接合工程のための複数のパラメータを入力する(作業1906)。これらのパラメータは、毎分回転数のスピンドル速度、送り速度、ピンの摩耗、力、及び/又は他の好適なパラメータを含むことができる。この工程は次に、突き合わせ継手を摩擦攪拌接合し(作業1908)、その後工程は終了する。
【0089】
ここで、有利な実施形態による仕上げ作業を行う工程のフロー図を示す図20を参照する。図20に示す工程は、図4の製造環境400において実行可能である。
【0090】
この工程は、摩擦攪拌接合された素板に鋳ばりがあるか否かの決定を行うことによって開始する(作業2000)。鋳ばりがある場合は、この工程では鋳ばりを研磨で取り除く(作業2002)。この工程は次に、溶接ナゲットの表面にマーキングがあるか否かの決定を行う(作業2004)。マーキングがない場合は、工程は終了する。そうでなくマーキングがある場合は、工程ではマーキングを機械加工で取り除き(作業2006)、その後工程は終了する。再び作業2000を参照すると、鋳ばりがない場合には工程は上述したように作業2004に続く。
【0091】
ここで、有利な実施形態によるテスト結果の表を示す図21〜25を参照する。これらの実施例では、表は作業1706で試験を行うことによって得ることができる結果の例であり、その後図17の作業1708において記録される。
【0092】
ここで、有利な実施形態による表2100を示す図21にまず注目する。次に、有利な実施形態による表2200を示す図22に注目する。次に、有利な実施形態による表2300を示す図23に注目する。次に、有利な実施形態による表2400を示す図24に注目する。次に、有利な実施形態による表2500を示す図25に注目する。
【0093】
異なる有利な実施形態の記載は、図示及び説明の目的のために提示されたものであり、包括的、又は開示された形の実施形態に限定するように意図されたものではない。当業者には多数の修正及び変形例が明らかである。
【0094】
航空機についての異なる有利な実施形態を説明したが、異なる有利な実施形態はまた、いくつかの有利な実施形態を、他の種類のプラットフォームにも適用することができることを認識する。例えば非限定的に、他の有利な実施形態はまた、いくつかの有利な実施形態を可動プラットフォーム、固定プラットフォーム、陸上構造物、水上構造物、宇宙ベースの構造物及び/又は何らかの他の好適な物体に適用可能であることも認識する。さらに具体的には、異なる有利な実施形態は例えば非限定的に、潜水艦、バス、人員運搬車、タンク、列車、自動車、宇宙船、宇宙ステーション、衛星、水上艦、パワープラント、ダム、製造施設、建物、及び/又は何らかの他の好適な物体に適用することができる。
【0095】
さらに、他の有利な実施形態と比較して、異なる有利な実施形態により異なる利点を得ることが可能である。選択された一又は複数の実施形態は、実施形態及び実際の応用形態の原理を最適に説明するため、また、当業者が、考えられる特定の使用に好適である様々な修正を施した様々な実施形態の開示を理解できるように選択され記載されたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工方法であって、
複数の金属薄板を溶接して、複数の溶接ナゲットを有する素板を形成することと、
素板を型部分とカバー部分の間に配置し、素板を加熱するために型部分を加熱することと、
カバー部分と型部分の間に加圧気体を導入することにより素板を型部分の鋳型にプレスして構造部品を形成することであって、複数の金属薄板と形成された構造部品とが複数の実質的に同じ性質を有するように、複数の溶接ナゲットが構造部品の形成後に約1.1〜1.25の範囲の所望の厚さ比を有することと
を含む方法。
【請求項2】
複数の性質が、強度、疲労特性、破壊靱性性能、耐食性、衝撃損傷許容性、及び粒子構成の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属薄板がチタン薄板であり、さらに、型部分によって素板が加熱される時に、約1300〜1750度(華氏)の範囲の素板温度に到達するように素板の加熱及び冷却のうちの少なくとも一つを行うことを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
構造物を形成中の素板の引張速度が、約1×10−2〜5×10−6インチ/インチ/秒の範囲にある、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
複数の溶接ナゲットの部分ではない素板の部分が金属薄板の母材金属であり、構造部品の形成中に、母材金属が複数の溶接ナゲットよりも約1〜25%長く伸ばされる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
素板の母材金属と複数の溶接ナゲットとが構造物形成後に複数の実質的に同じ性質を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
金属薄板の金属が、貴金属合金、アルミニウム、チタン、マグネシウム、スチール、アルミ合金、チタン合金、マグネシウム−アルミ合金、アルミ−リチウム合金、ニッケル−クロム−鉄合金、ニッケル−スチール合金、及び超合金のうちの少なくとも一つから選択される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第1金属片と、
第2金属片であって、第1金属片と接合されて突き合わせ継手を形成する第2金属片と、
突き合わせ継手に取り付けられたシムと、
アンビル、ピンツール、及び冷却素子を含む摩擦攪拌接合機であって、ピンツールが軸周囲を回転し、軸に対して直角方向に移動し、且つシム及び突き合わせ継手に下向きの力を加えて2つの金属片を互いに溶接して溶接ナゲットを形成し、溶接ナゲットが超塑性成形工程後に約1.1〜1.25の範囲の所望の厚さ比を有し、第1金属片、第2金属片及び溶接ナゲットが超塑性成形工程後に複数の実質的に同じ性質を有する摩擦攪拌接合機と
を含む装置。
【請求項9】
複数の性質が、強度、疲労特性、破壊靱性性能、耐食性、衝撃損傷許容性、及び粒子構成の群から選択される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
溶接された第1金属片及び第2金属片が溶接ナゲットを有する素板を形成する、請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
第1金属片及び第2金属片がチタン片であり、素板が超塑性成形工程中に約1300〜1750度(華氏)の範囲の温度に加熱される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
超塑性成形工程での素板の引張速度が、約1×10−2〜5×10−6インチ/インチ/秒の範囲である、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
複数の溶接ナゲットの一部ではない素板の部分が金属薄板の母材金属であり、超塑性成形工程において、母材金属が複数の溶接ナゲットよりも約1〜25%長く伸ばされる、請求項10乃至12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
第1金属片と第2金属片とが、貴金属合金、アルミニウム、チタン、マグネシウム、スチール、アルミ合金、チタン合金、マグネシウム−アルミ合金、アルミ−リチウム合金、ニッケル−クロム−鉄合金、ニッケル−スチール合金、及び超合金のうちの少なくとも一つから選択される、請求項8乃至13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
構造部品を加工する方法であって、
所望の温度で金属薄板を互いに摩擦攪拌接合することにより、溶接ナゲットを有する素板を形成することと、
超塑性成形工程を使用して素板から構造部品を形成することであって、溶接ナゲットが超塑性成形工程後に約1.1〜1.25の範囲の所望の厚さ比を有し、摩擦攪拌接合された溶接ナゲットと金属薄板とが約1×10−2〜5×10−6インチ/インチ/秒の範囲の引張速度を有し、溶接された金属薄板と溶接ナゲットとが超塑性成形工程後に複数の実質的に同じ性質を有することと
を含む方法。
【請求項16】
溶接ナゲットの一部ではない素板の部分が母材金属であり、超塑性成形工程において、母材金属が溶接ナゲットよりも約1〜25%長く伸ばされる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
複数の性質が、強度、疲労特性、破壊靱性性能、耐食性、衝撃損傷許容性、及び粒子構成から選択される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
金属薄板がチタン薄板である、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
構造部品がジェットエンジンのナセル用のリップスキンである、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
長方形又は正方形ではなく、少なくとも一次元の寸法が大きい形状のうちの少なくとも一つを有するように素板が選択される、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
複数のチタン薄板を溶接して、複数の溶接ナゲットを有する素板を形成することと、
素板を型部分とカバー部分の間に配置し、素板を加熱するために型部分を加熱することと、
カバー部分と型部分の間に加圧気体を導入することにより素板を型部分の鋳型にプレスして構造部品を形成することであって、複数のチタン薄板と形成された構造部品とが複数の実質的に同じ性質を有するように、複数の溶接ナゲットが約1.1〜1.25の範囲の所望の厚さ比を有することと
を含む加工方法。
【請求項22】
チタン構造物を加工する方法であって、
複数のチタン片を互いに摩擦攪拌接合して、所望の超塑性を有する溶接ナゲットを有する素板を形成することと、
素板からチタン構造物を形成することであって、チタン構造物の形成中に溶接ナゲットが素板の他の部分よりも約1〜25%小さく伸ばされることと
を含む方法。
【請求項23】
チタン構造物が航空機のエンジン用ナセルのリップスキンであり、前記リップスキンの少なくとも一次元の寸法が約1.2メートルよりも大きい、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
チタン構造物を形成するステップが、超塑性成形工程及び高温クリープ成形工程のうちの一つから選択される工程を使用して行われる、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
複数のチタン片がカスタマイズされた形状を有する、請求項22乃至24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
一枚薄板の少なくとも約75%がセグメントを含むように、複数のチタン片を一枚薄板から切り出す、請求項22乃至25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
素板が、母材チタン薄板の厚さよりも約1〜25%薄い超塑性厚さを有する複数の超塑性接合部を有するドーナツ形状を有する、請求項22乃至26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
空力特性を向上させるようにナセルの吸入口を処理して飛行中の抗力を低減することをさらに含む、請求項22乃至27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記処理ステップが、吸入口の外表面を研削、研磨、又はそうでなければ艶出しすることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記処理ステップが、2つの接合された薄板と、気体チューブポータルとを含む密封パックを使用して、吸入口の内表面にアルファケースが実質的に形成されないようにすることにより、真空化すること及び不活性気体を充満させることによって薄板間の空気を不活性気体と入れ替えることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
形成されたリップスキン内部に分離隔壁を取り付けて、除氷用加熱空気をナセルの前方先端部に集中させることをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
チタン構造物を形成するステップが、突き合わせ継手を摩擦攪拌接合する前に、突き合わせ継手の上面にシムを融接し、次に、超塑性成形又は高温クリープ成形前に、突き合わせ継手の接合部がはじめに母材金属薄板とほぼ同じ厚さ及びほぼ同じ表面粗さを有するように、突き合わせ継手の接合部の上面から過剰分を機械加工で取り除くことを含む、請求項22乃至31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
チタン構造物が、航空機の前縁部、又は翼、尾部、又は制御面用構造部品の構造部材の素板である、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
素板のセグメントを局所的に厚くして、厚みの大きな部分を形成することにより、留め具の要件を満たすか、又は余分な厚さを必要としない他の領域よりも大きい局所応力を分解する、請求項22乃至33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
素板のセグメントを摩擦攪拌接合前に局所的にレーザ溶接して、摩擦攪拌接合及び超塑性成形後に突き合わせ継手の底部での接合部の未貫通を防止する、請求項22乃至34のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2012−508651(P2012−508651A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536524(P2011−536524)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/064417
【国際公開番号】WO2010/057012
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】