説明

薄片状の金属エフェクト顔料で着色された水性被覆剤、その製造法及び多層塗膜を製造するためのその使用

本発明は、以下:A)バインダーとしての、物理硬化性、熱自己架橋性及び/又は熱外部架橋性の、飽和、不飽和の、及び/又はオレフィン系不飽和化合物でグラフトされた、イオンにより及び/又はイオンによらずに安定化されたポリウレタンからなる群から選択された少なくとも1のポリウレタン、B)少なくとも1の薄片状の金属エフェクト顔料、及びC)層状ケイ酸塩の群から選択された少なくとも1の無機増粘剤C1)、及び、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレート−コポリマー増粘剤及びポリウレタン増粘剤の群から選択された少なくとも1の有機増粘剤C2)を含む、熱硬化性及び/又は物理硬化性の水性被覆剤組成物であって、i)該被覆剤組成物の全バインダー含分に対するB)の含分が>15質量%であり、ii)該被覆剤組成物に対する全固形分が≧12.5質量%であり、iii)該被覆組成物の全バインダー含分に対するC1)及びC2)からの増粘剤の全含分が<12質量%であり、かつiv)C1)に対するC2)の質量比が>0.4である、熱硬化性及び/又は物理硬化性の水性被覆剤組成物に関する。さらに、本発明は該組成物の製造法、並びに該被覆剤組成物の使用、多層塗膜の製造法及び多層塗膜に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料で着色された水性被覆剤、その製造及び多層塗膜を製造するためのその使用、並びに多層塗膜の製造法、及び前記方法により得られる多層塗膜に関する。
【0002】
久しい以前から公知である、水性又は溶剤含有塗料、特にいわゆるベースコート、及びこれを用いて製造された効果を付与する多層塗膜は、本質的に良好な応用技術的特性を有している。
【0003】
しかしながら、市場、特に自動車メーカー及びその顧客による技術的、及び特に審美的な要求は増大の一途をたどっており、そのため従来達成されている技術的及び審美的水準の恒常的なさらなる向上が求められている。顕著な丸みを伴う現代的な車体設計は、高いフリップフロップ効果を有する塗膜と極めて良好に調和する。メタリック様の効果を生じさせるという要望は、例えばEP0826745A2に記載されているように、極めて薄いナノメートル範囲のアルミニウムフレークの使用により実現可能である。
【0004】
特に極めて顕著な明暗挙動を示すベース塗膜の製造を可能にする、新規の被覆剤が特に求められている。しかしながらこの場合、公知のベースコート及びこれから製造されたベース塗膜によって達成された利点が失われることなく、少なくとも同じ、有利にはより高い程度で保持されることが望ましい。
【0005】
従って、相応する効果及び場合により色をも付与するベース塗膜は特に良好な曇り度を有していることが望ましく、即ち光沢の曇りがなく、良好な均展性並びに極めて良好な光学的全体印象(外観)を有していることが望ましい。さらに、該ベース塗膜は、明暗の色むら(曇り)や斑点といった塗装欠陥を有していないことが望ましい。さらに、生じる被覆は光学的な欠陥箇所を有しておらず、かつクリヤーコートに対して満足のいく付着性を有することが望ましい。
【0006】
さらに、該被覆剤は貯蔵安定性が傑出して良好であることが望ましく、即ち、該被覆剤を40℃で(28日間)貯蔵した場合でも、該被覆剤のみならず、貯蔵された該被覆剤から製造された被覆にも特性の著しい劣化が生じないことが望ましい。例えば、該被覆剤のレオロジー特性の著しい劣化、特に著しい粘度上昇や斑点形成、及びメタリックフロップの著しい劣化が生じないことが望ましい。
【0007】
従来技術の通例の水性ベースコートは製造が容易であり、貯蔵安定でかつ輸送可能である。該水性ベースコートは、塗布、技術特性(付着性、長期耐候性)、貯蔵安定性及び環状導管安定性並びに外観に関して、自動車用塗膜における通常の要求を満たしている。
【0008】
EP1591492A1には、例えば水性であっても溶剤ベースであってもよく、かつ比較的高い金属顔料割合 −全バインダー含分に対して有利には12〜20質量%− を有する金属顔料含有ベースコートが記載されている。しかしながら、EP1591492A1では、可能な限り湿分に対して安定な系を提供することに焦点が当てられている。
【0009】
WO2006/017197A1には、バインダー量及び固形分が比較的高く、比較的低い割合の薄片状の金属顔料を効果塗料の製造に用い、その際、この薄片状の金属顔料に加えて少なくとも1の他の付加的な特殊なエフェクト顔料を塗料に配合するという、特殊効果塗膜の製造法が開示されている。
【0010】
しかしながら、エフェクト顔料を含有する水性ベースコートを使用した場合には、例えばリム塗装に使用されるような溶剤ベースのベースコートの金属の明暗挙動(フロップ、メタリックフロップ又はフリップフロップと称される)の達成はほぼ困難である。
【0011】
可能な限り良好なフリップフロップ効果を達成するために、従来技術ではメタリック塗料製造における顔料としてとりわけPVDアルミニウムフレークが使用されており、その際、水性塗料系においては、他の成分の含分の厳密な調整が極めて重要である。例えば、WO2008/141768A1から、容易に製造可能であり、かつ目下の車両用水性塗料の多くの要求を満たし、その上さらに顕著なフリップフロップ効果を示す、物理硬化性、熱硬化性、及び、物理硬化性でかつ熱硬化性の金属硬化顔料含有水性組成物が公知である。
【0012】
このWO2008/141768A1に記載されている塗料は、多層塗膜の、効果を付与する、又は色及び効果を付与するベース塗膜を製造するための水性ベースコートとして好適であり、かつ良好な塗布挙動並びに卓越した均展性を示す。該塗膜は、層が薄くても、また金属エフェクト顔料濃度が比較的低くても、高い隠蔽力、良好な中間層付着性、特に高い耐結露性、等方的な顔料分布、極めて特に非常に顕著な明暗挙動並びに極めて高いメタリックの光輝性及び極めて高い光沢を示す。このWO2008/141768A1に開示されている塗膜は、明暗の色むら(曇り)や斑点といった塗装欠陥を実質的に有していない。さらに、該塗料はクロム様のミラー効果を示し、かつ該塗料が着色されている場合には、スパークル効果(グリッター効果)がわずかな特に洗練された印象的な色効果を示す。
【0013】
しかしながら、特定の適用に関して、例えば被覆の汚染がミラー効果によって増強されて見え得るような極めて汚染され易い環境においては、該被覆のあまりにも顕著なミラー効果は欠点となり得る。さらに、結露水を生じる一定の気候下での試験における負荷後であっても卓越した付着強度を有し、膨れの形成傾向になく、かつ可能な限り高い光沢維持を示す水性塗料が求められている。特に、単一成分クリヤーコート(1Kクリヤーコート)に対する卓越した付着性があり、かつ隠蔽力が最適化されることが望ましい。本発明により克服すべきもう1つの従来技術の欠点は、下地隠蔽力が不十分な点である。OEM製造ライン用塗料としての適性に関しては、サンディング斑点、サンディング傷及び研磨斑点、又はコンベヤーベルトないし回転装置による把持部跡といった下地欠陥を十分に隠蔽することが極めて重要である。
【0014】
上述の要求は、以下:
A)バインダーとしての、物理硬化性、熱自己架橋性及び/又は熱外部架橋性の、飽和、不飽和の、及び/又はオレフィン系不飽和化合物でグラフトされた、イオンにより及び/又はイオンによらずに安定化されたポリウレタンからなる群から選択された少なくとも1のポリウレタン、
B)少なくとも1の薄片状の、PVD法によらずに製造された金属エフェクト顔料、及び
C)層状ケイ酸塩の群から選択された少なくとも1の無機増粘剤C1)、及び、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレート−コポリマー増粘剤及びポリウレタン増粘剤の群から選択された少なくとも1の有機増粘剤C2)
を含む、熱硬化性及び/又は物理硬化性の水性被覆剤組成物であって、
i)該被覆剤組成物のバインダー含分に対するB)の含分が、>9質量%、有利には>11質量%、特に有利には>13質量%であり、
ii)該被覆剤組成物に対する全固形分が、≧12.5質量%、有利には>13.5質量%、特に有利には>15質量%であり、
iii)該被覆組成物のバインダー含分に対するC1)及びC2)からの増粘剤の全含分が、<12.5質量%、有利には<11質量%、特に有利には<9.5質量%であり、かつ
iv)C1)に対するC2)の質量比が、>0.4、有利には>0.5である、
熱硬化性及び/又は物理硬化性の水性被覆剤組成物を提供することによって満たされることが見出された。
【0015】
「バインダー」とは、ここではDIN EN ISO 4818から逸脱して、顔料、充填材及び増粘剤C1)及びC2)を除いた該被覆剤組成物の不揮発分のみを指す。不揮発分とは、120℃で60分間の期間にわたる蒸発後に残留する塊状残滓である。不揮発分から、秤量による顔料、充填材及び増粘剤C1)及びC2)の質量分が差し引かれる。
【0016】
(メタ)アクリル酸ないし(メタ)アクリレートとの概念には、本願明細書中では、メタクリル酸及びアクリル酸ないしメタクリレート及びアクリレートが含まれる。
【0017】
本発明による被覆剤組成物を、以下で「本発明による組成物」とも表記する。
【0018】
本発明の他の対象は本発明による被覆剤組成物の製造法であり、その際、被覆剤成分を混合し、かつ生じる混合物を均質化する。この方法を以下で「本発明による方法」と表記する。
【0019】
とりわけ、本発明の他の対象は、塗料としての、特にコーティングとしての、有利にはベースコートとしての、本発明による組成物、及び本発明による方法により製造された本発明による組成物の使用である。この使用を「本発明による使用」と表記する。
【0020】
他の本発明の対象は本願明細書の記載から明らかであり、特に多層塗膜の製造法並びに該方法により製造された多層塗膜を含む。
【0021】
従来技術に鑑み、本発明の基礎を成していた課題を、本発明による組成物、本発明による方法、本発明による使用、及び特に本発明による多層塗膜により解決できたことは意想外であり、また当業者にとって予見不可能であった。
【0022】
特に、本発明による組成物が著しい温度変化の際にも貯蔵安定であり、かつ輸送可能であることは意想外であった。その際、結果的にガスも発生しない。長期の剪断後であっても、該組成物は金属エフェクト顔料又は他の成分の脱離を示さなかった。
【0023】
該塗料は、多層塗膜の、効果を付与する、又は色及び効果を付与するベース塗膜を製造するための水性ベースコートとして抜群に好適である。ここで、該塗料は卓越した塗布挙動(静電塗装法(例えばESTA)を用いた場合であっても)及び抜群の均展性を示す。
【0024】
効果を付与する、及び色及び効果を付与するベース塗膜は、層が比較的薄くても、また金属エフェクト顔料濃度が比較的低くても、高い隠蔽力、卓越した中間層付着性、特に単一成分系クリヤーコートに対する高い付着性、特に高い耐結露性、等方的な顔料分布、極めて特に非常に顕著な明暗挙動(メタリックフロップ)、極めて高いメタリックの光輝性及び極めて高い光沢を示す。ここで、該ベース塗膜は、明暗の色むら(曇り)や斑点といった塗装欠陥を有しない。全般的に、該ベース塗膜はその上さらにクロム様のミラー効果を示し、かつ該ベース塗膜が着色されている場合には、スパークル効果(グリッター効果)がわずかである特に洗練された印象的な色効果を有する。
【0025】
本発明による組成物は、少なくとも1のポリウレタン(A)をバインダーとして含む。
【0026】
ポリウレタン(A)は、物理硬化性、熱自己架橋性及び/又は熱外部架橋性の、飽和、不飽和の、及び/又はオレフィン系不飽和化合物でグラフトされた、イオンにより及び/又はイオンによらずに安定化されたポリウレタン樹脂からなる群から選択されている。
【0027】
「物理硬化性」、「熱自己架橋性」及び「熱外部架橋性」といった特性、並びにこれらの特性のベースとなる物質的な条件に関しては、独国特許出願DE10010416A1、第3頁、第11行〜第30行、及び第5頁、第33行〜第41行、及び第5頁、第47行〜第8頁、第6行を参照のこと。そこで(メタ)アクリレート(コ)ポリマーに関連して説明されていることが、ここで適宜当てはまる。
【0028】
従って「物理硬化性」とは、硬化の際に架橋剤は不要であり、硬化が塗布された層からの溶剤の放出によって行われることを意味する。この場合、通常はポリマー分子間の環形成によって結合が行われ、この場合該ポリマー分子の分子量は不変である。物理硬化は、しばしば分散液について当てはまるように、バインダー粒子の融合によっても生じ得る(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, 第274頁及び第275頁: "Haertung"を参照のこと)。
【0029】
また、バインダーは「熱自己架橋性」及び/又は「熱外部架橋性」で硬化可能であってもよい。本発明の範囲内で、「自己架橋性」との概念はバインダーが自身と架橋反応するというバインダーの特性を指す。このための条件は、バインダー中にすでに、架橋に必要な相補的な反応官能基の双方の種が含まれていることである。それに対して「外部架橋性」とは、相補的な反応性官能基の一方の種がバインダー中に存在しており、かつもう一方の種が硬化剤、又は −存在する場合に併用される− 架橋剤中に存在している塗料を指す。補足的に、これに関してRoempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, "Haertung", 第274頁〜第276頁、特に第275頁下方を参照のこと。
【0030】
有利には、ポリウレタン(A)は熱外部架橋性である。熱的な架橋又は硬化は、ポリウレタン(A)の物理的硬化によりさらに促進され得る。
【0031】
ポリウレタン(A)は、オレフィン系不飽和化合物でグラフトされていてもよい。そのようなグラフトされたポリウレタンの製造には、特に有利にはグラフトベースとして不飽和、有利にはオレフィン系不飽和ポリウレタン(A)が使用される。極めて特に有利には、オレフィン系不飽和ポリウレタン(A)は末端及び側方の、特に側方のオレフィン系不飽和基を含む。
【0032】
極めて特に有利には、ポリウレタン(A)はイオンにより、特にアニオンにより安定化されている。とりわけ、そのためにカルボキシレート基が使用される。
【0033】
好適なポリウレタン(A)の例は、以下の各独国特許出願
− DE4009858A1、第6欄、第18行〜第10欄、第23行、
− DE4437535A1、第2頁、第27行〜第6頁、第22行、
− DE19914896A1、第4欄、第26行〜第11欄、第5行、
− DE10043405C1、第5欄、段落[0030]、
− DE19948004A1、第3頁、第14行〜第13頁、第48行、
− DE10053890A、第3欄、段落[0016]〜第18欄、段落[0123]、又は
− DE10223652A1、第3欄、段落[0019]〜第16欄、段落[0101]
から公知である。
【0034】
ポリウレタンバインダー(A)の含分は、有利には、本発明による組成物において、本発明による組成物中のバインダー含分に対する薄片状の金属エフェクト顔料(B)の質量が9.1〜20質量%、有利には11.1〜19.5質量%、特に有利には12.1〜19質量%、極めて特に有利には13〜17.0質量%となるように調節される。
【0035】
必須で含まれるポリウレタンバインダー(A)に加えて、他の樹脂、例えばポリエステル樹脂又はポリ(メタ)アクリレート樹脂が本発明による被覆剤組成物中に含まれていてもよい。本発明による組成物中のバインダー含分は、本発明による組成物の全質量に対して、有利には少なくとも11.0質量%、より有利には少なくとも11.5質量%、特に有利には12.0〜14.5質量%、極めて特に有利には12.2〜13.5質量%である。
【0036】
有利には、(上記の通り、濃稠化剤C1)及びC2)の割合並びに顔料及び充填材を除くものとして定義されている)バインダー含分に対するバインダー(A)の含分は、少なくとも30質量%、特に有利には少なくとも37.5質量%、又はその上42.5質量%を上回る。
【0037】
本発明による組成物は、少なくとも1の薄片状の金属エフェクト顔料(B)を含有する。意想外にも、本発明による組成物における薄片状の金属エフェクト顔料(B)として、WO2008/141768A1のようなPVD法(Physical Vapour Deposition:物理気相成長法)によらずに製造された金属エフェクト顔料が使用される。しかしながらこれは、本発明による組成物の混加成分としての非本質的なPVD顔料の付加的な使用を排除するものではない。PVD法は薄膜製造のための真空被覆法であり、その際、金属、特にアルミニウムが物理的方法により気相に移行され、それにより基材上に析出される(Roempp Online, Georg Thieme Verlag, 2004, "PVD-Verfahren"を参照のこと)。該方法は、他の金属エフェクト顔料の製造と比較してコストがかかる。同様に(B)と区別すべき副次的量の混加物として、いわゆる「コーンフレーク顔料タイプ」を使用することができる。
【0038】
本発明の基礎を成す課題を解決するために、いわゆる銀ドルの形態を有する薄片状の金属エフェクト顔料(B)の使用が特に有利であることが判明した。銀ドルの形態を有する典型的な顔料は、球状の形態を有する特定の金属粒状物から製造され、該金属粒状物は引き続く磨砕の際には単に成形されるのみであって、微粉砕はされない。アルミニウムからの銀ドル顔料は特に有利である。本発明の組成物中で使用可能な典型的な銀ドル顔料として、例えばEckart社から3000タイプとしてHydrolux、Hydrolan又はHydrolac(水性ベースコートのために安定化されたタイプ)の商品名で市販されている顔料が好適である。
【0039】
極めて特に有利には、金属エフェクト顔料(B)として、粒度分布の狭い銀ドルの形態を有するものが使用される。粒度分布は、測定技術的に所定サイズ未満の粒子のパーセンテージをその都度累積カウントした累積通過曲線として表すことができる。
【0040】
累積通過曲線を簡略化して説明するために、3つの値を引き合いに出す:細度に関する尺度としてのD10、顔料細度中央値/メジアンとしてのD50、及び顔料における粗いフラクションの特性決定のためのD90。これらの値は、全ての金属顔料のサイズ分布を十分な精度で表す。D50値は、約5μm〜通常は55μmのウエットフィルム適用に関するものである。本発明において、30μmまでのD50値を有する金属エフェクト顔料(B)が有利である。D10値とD90値との間隔は粒度分布の幅を特徴付ける。D10値とD90値との間隔がわずかであるほど粒度分布は狭くなり、即ち、D90値とD10値とからの比が小さいほど粒度分布は狭くなり、かつ該粒子をより有利に本発明による組成物において使用することができる。
【0041】
10値、D50値及びD90値はレーザー粒度分析により測定される。粒度分布の測定は、散乱角との関連で回折パターンの散乱光強度を評価することにより行われる。ここで、Quantachrome社のレーザー粒度計Cilas 1064が使用される。まず、金属エフェクト顔料(B)1.5gをイソプロパノール10ml中に平刷毛を用いて分散混入させることにより試料を準備する。次いで、合計体積が100mlとなるようにイソプロパノールで満たし、この顔料懸濁液を超音波浴(Bandelin Sonorex TK 52)中でガラスビーカー中で5分間均質化する。超音波処理の終了後、この試料をマグネチックスターラーを用いた撹拌により均質に保つ。粒度パラメータの測定を装置固有のCilasソフトウェアを用いて行い、その際、測定範囲として標準作業手順書(SOP)における「A1」を選択する。洗浄したキュベット中で測定を行い、その際、この顔料分散液を測定キュベットを通過させて循環させる。測定の評価を自動的にレーザー粒度計固有のソフトウェアにより行う。「10%での直径」(D10)、「50%での直径」(D50)及び「90%での直径」(D90)の値が得られる。
【0042】
粒度分布が狭いにもかかわらず十分に良好な隠蔽力が得られたことは、特に意想外であった。
【0043】
有利には、薄片状の金属エフェクト顔料(B)は、4.5未満、特に有利には4未満、極めて特に有利には2〜3の比D90/D10を有する。
【0044】
典型的な薄片状の金属エフェクト顔料(B)は、例えばHydrolux 3590(D10=7μm、D50=12μm及びD90=18μm)又はHydrolan 3560(D10=10μm、D50=15μm及びD90=24μm)である。
【0045】
本発明による組成物中の薄片状の金属エフェクト顔料(B)の含分は、上記の通り特にバインダー含分に依存する。本発明による組成物全体に対して、(B)の含分は有利には0.75〜4.0質量%、特に有利には0.9〜3質量%、極めて特に有利には1.2〜2.3質量%である。
【0046】
金属エフェクト顔料(B)として有利な銀ドルアルミニウム顔料が使用される場合には、該顔料は有利には表面が不動態化されている。このような顔料の表面不動態化は、例えばWO2005/18722(第7頁、第17行〜第29行)に記載されている。この場合、粒度分布、並びにD10値、D50値及びD90値は、すでに表面不動態化ないし表面変性された顔料に関して測定される。
【0047】
増粘剤(C)(濃稠化剤(C)とも称される)として、層状ケイ酸塩の群から選択された少なくとも1の無機増粘剤(C1)が使用される。特に、スメクタイトの部分群の層状ケイ酸塩、特にモンモリロナイト、ヘクトライト及び合成ラポナイトの部分群を伴ったものが好適である。無機増粘剤の典型的な一代表物は、Laponite RD(R)の商品名で得られるナトリウム−マグネシウム−層状ケイ酸塩である。
【0048】
無機層状ケイ酸塩(C1)に加えて、本発明によれば1以上の有機増粘剤(C2)が使用されねばならない。該増粘剤は、有利には(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレート−コポリマー増粘剤、例えば市販製品Viscalex HV30(Ciba, BASF)、及びポリウレタン増粘剤、例えばCognis社の市販製品Nopco(R) DSX 1550からなる群から選択される。
【0049】
アクリル酸及び/又はメタクリル酸に加えて1以上のアクリル酸エステル(即ちアクリレート)及び/又は1以上のメタクリル酸エステル(即ちメタクリレート)も重合導入により含むものが、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレート−コポリマー増粘剤(C2)と称される。(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレート−コポリマー増粘剤は、該増粘剤がアルカリ媒体中で、即ちpH値>7、特に>7.5で、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の塩形成により、即ちカルボキシレート基の形成により強度の粘度上昇を示すという点で共通している。
【0050】
(メタ)アクリル酸及びC1〜C6−アルカノールから形成されている(メタ)アクリル酸エステルを使用した場合には、本質的に非会合型で作用する(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレート−コポリマー増粘剤、例えば上記のViscalex HV30が得られる。本質的に非会合型で作用する(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレート−コポリマー増粘剤は、刊行物においてはASE増粘剤("Alkali Soluble/Swellable Emulsion"、アルカリ可溶性/膨潤性エマルション又は分散液)とも称される。該増粘剤は、本発明において(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレート−コポリマー増粘剤として有利である。しかしながら、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレート−コポリマー増粘剤として、いわゆるHASE増粘剤("Hydrophobically Modified Anionic Soluble Emulsions"、疎水変性アニオン系可溶性エマルション又は分散液)も使用可能である。該増粘剤は、アルカノールとして、C1〜C6−アルカノールの代わりに、又はC1〜C6−アルカノールに対して付加的に、より多くの数の炭素原子、例えば7〜30個又は8〜20個の炭素原子を有するものを使用した場合に得られる。HASE増粘剤は、本質的に会合型の増粘作用を示す。本発明により使用される(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレート−コポリマー増粘剤は、その増粘特性に基づきバインダー樹脂としては好適でないため、バインダー(A)への混和物として許容されるポリ(メタ)アクリレートには属さず、従って本発明による被覆剤組成物において使用可能な他の考えられるいかなるポリ(メタ)アクリレートベースの混和物とも明らかに異なる。
【0051】
ポリウレタン増粘剤(C2)とは、刊行物においてHEUR("Hydrophobically Modified Ethylene Oxide Urethane Rheology Modifiers"、疎水変性エチレンオキシドウレタンレオロジー調整剤)と称される会合型で作用する増粘剤であると理解される。これは、化学的には、ウレタン結合によって互いに結合しており、かつ8〜30個、有利には10〜24個、特に有利には12〜20個の炭素原子を有する末端長鎖アルキル−又はアルキレン基、又は、6〜30個、有利には6〜20個の炭素原子を有するアリール−又はアルキル化アリール基を有する、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖又はポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)鎖からの非イオン性の分岐又は非分岐のブロックコポリマーである。典型的なアルキル基は、例えばドデシル基又はステアリル基であり、典型的なアルキレン基は例えばオレイル基であり、典型的なアリール基はフェニル基であり、かつ典型的なアルキル化アリール基は例えばノニルフェニル基である。本発明により使用可能なポリウレタン増粘剤は、その増粘特性及び構造に基づき、バインダー樹脂として、特にバインダー(A)としては好適でない。従って該増粘剤は、本発明による被覆剤組成物において使用可能な他の考えられるいかなるポリウレタンとも明らかに異なる。
【0052】
極めて特に有利には、有機増粘剤(C2)として、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレート−コポリマー増粘剤とポリウレタン増粘剤とからの組合せが使用される。特別な一実施態様において、ASE増粘剤はHEUR増粘剤と併用される。
【0053】
本発明による組成物は水性であり、即ち該組成物は水を含有しており、その中に上記成分(A)、(B)及び(C)が分散、乳化及び/又は溶解されている。しかしながら、水の他に、液体の主要分散媒として水性塗料における慣用の量の有機溶剤が含まれていてもよい。しかしながら、有機溶剤の含分は本発明による組成物の全質量に対して可能な限り25質量%を上回らないことが望ましい。有利には、本発明による組成物の全質量に対する有機溶剤の含分は最大で23質量%、特に有利には22〜10質量%の範囲内、極めて特に有利には21〜12質量%である。
【0054】
全ての不揮発成分の全固形分は、本発明による組成物の全質量に対してそれぞれ少なくとも12.5質量%、特に有利には12.6〜17.0質量%、極めて特に有利には13.0〜16.5質量%である。全固形分は、該組成物を120℃で1時間乾燥することにより測定可能である。
【0055】
本発明による組成物は、さらに少なくとも1の他の成分(D)を含有することができる。外部架橋性ポリウレタン(A)を使用する場合には、(D)は架橋剤である。しかしながら(D)には、他の場合によりポリウレタンバインダー(A)の他に含まれるポリウレタン不含バインダー、例えばポリエステル樹脂又はポリ(メタ)アクリル酸樹脂又はポリ(メタ)アクリレート樹脂も含まれる。
【0056】
好適な架橋剤(D)の例は、独国特許出願DE19948004A1、第14頁、第32行〜第16頁、第14行から公知である。有利には、該架橋剤は該刊行物に記載されている量で使用される。架橋剤として、ブロックされていないか又はブロックされたポリイソシアネート、アミノプラスト樹脂、例えば特にメラミン−ホルムアルデヒド−架橋剤又はTACTも使用可能である。
【0057】
とりわけ、本発明による組成物はさらに少なくとも1の典型的な塗料添加剤を有効量で添加剤(E)として含有することができる。好適な塗料添加剤(E)の例は、独国特許出願DE19948004A1、第16頁、第15行〜第17頁、第5行から公知である。他の添加物(E)には、例えば有機種又は無機種の着色剤又は着色顔料も含まれる。しかしながらここでは、成分(A)、(B)、(C)及び(D)に属し得る成分とは異なるもののみが添加物(E)であると理解される。
【0058】
従って、成分(E)は成分(B)とは異なるエフェクト顔料を含むこともできる。しかしながら、可能な限り高いメタリックフロップの目的達成には他のエフェクト顔料の含分は必須ではなく、それどころかこれを妨害することもあり得るため、成分(B)以外に他のエフェクト顔料を含まない本発明による組成物が有利である。他の応用技術的なパラメータを考慮せずにフロップのみをさらに向上させたい場合には、わずかな割合のPVD金属エフェクト顔料の混和がフロップのさらなる増大に寄与し得る。
【0059】
本発明による組成物の製造は、有利には本発明による方法により行われる。この場合、上記成分(A)、(B)及び(C)並びに場合により(D)及び/又は(E)は、水性媒体中、特に水中に分散され、その後、生じる混合物が均質化される。本発明による方法は、方法的な観点では特徴を有しておらず、慣用かつ公知の混合法及び混合装置、例えば撹拌槽、溶解機、撹拌ミル、混練機、スタティックミキサー又は押出機を用いて実施可能である。
【0060】
本発明による組成物、及び本発明による方法を用いて製造された組成物、特に本発明による方法により製造された本発明による組成物の多数の特別な利点のために、該組成物を多数の使用目的に供することができる。
【0061】
該組成物は有利には、単層及び有利には多層の効果を付与する被覆を製造するための塗料として使用される。この場合特に有利には、該組成物は多層塗膜、有利には自動車、特に高価な自動車のための多層塗膜内の、効果を付与する、並びに色及び効果を付与するベース塗膜を製造するための水性ベースコートとして使用される。
【0062】
極めて特に有利には、多層塗膜は以下の方法により製造され、その際、
(1)下塗りされたか又は下塗りされていない基材に少なくとも1の本発明による水性ベースコートを塗布し、それにより少なくとも1の水性ベースコート層(1)が生じ、
(2)該水性ベースコート層(1)上に少なくとも1のクリヤーコートを塗布し、それにより少なくとも1のクリヤーコート層(2)が生じ、かつ
(3)少なくとも該水性ベースコート層(1)及び該クリヤーコート層(2)を一緒に硬化させ、それによりベース塗膜(1)及びクリヤー塗膜(2)が生じる。
【0063】
本発明による多層塗膜の製造法において、個々の塗料層の施与は有利にはいわゆるウェット・オン・ウェット法で行われる。そのようなウェット・オン・ウェット法の例は、独国特許出願DE19948004A1、第17頁、第37行〜第19頁、第22行から公知である。
【0064】
特に有利な一実施態様において、前出の工程(1)において使用される下塗りされた基材がプライマーで下塗りされた基材であり、その際、該プライマーを静電塗装法(ESTA塗装)で施与することにより多層塗膜が得られる。有利には、2つのプライマー層が連続でESTAにより施与される。プライマー層は有利にはその都度10〜25μmの乾燥膜厚を有する。有利に2つのプライマー層が施与された場合には、そのうち有利にはどちらも10〜25μmの乾燥膜厚を有し、特に有利にはどちらも15〜20μmの乾燥膜厚を有する。
【0065】
多層塗膜のこの有利な実施態様において、引き続き本発明による被覆剤組成物は、1回、有利には2回、それぞれ4〜9μm、特に有利には5〜8μmの乾燥膜厚で施与される。この場合、この施与はESTAにより、又は空気式で可能である。施与が2回行われる場合には、この施与は2回空気式で、2回ESTAにより、又は1回ESTAによりかつ1回空気式で行われてよい。最後のケースでは、通常はまず施与はESTAで行われ、かつ後続の第二の施与は空気式で実施される。本発明による被覆剤をESTAでも施与することができ、かつこの場合に所望の特性が生じることは、特に有利かつ意想外である。
【0066】
有利な実施態様の工程(2)において施与されるクリヤーコートは、有利には単層で、特に有利にはESTAにより、有利には25〜60μm、特に有利には30〜45μm、極めて特に有利には35〜40μmの乾燥膜厚で施与される。
【0067】
それに応じて、そのようにして製造された有利な本発明による多層塗膜は、1つ又は2つの、有利には2つの、それぞれ10〜25μm、特に有利にはそれぞれ15〜20μmの乾燥膜厚を有するプライマー層、並びに、唯一又は最後のプライマー層の上に施与された、それぞれ8〜18μm、特に有利にはそれぞれ10〜16μmの全乾燥膜厚を有する本発明による被覆剤組成物の、1つ又は2つの、有利には2つの塗料層、及び最後に、有利には25〜60μm、特に有利には30〜45μm、極めて特に有利には35〜40μmの乾燥膜厚のクリヤーコートカバー層を有する。使用されるクリヤーコートは、2成分系クリヤーコート(2Kクリヤーコート)又は1成分系クリヤーコート(1Kクリヤーコート)であり、特に有利には1Kクリヤーコートである。従来の塗膜と比較して、この特に有利な多層塗膜は、卓越した特性はそのままに、明らかに膜厚が低い。さらに、この膜厚は少ない作業工程で得ることができ、かつ塗料の消費に関してより有利である。
【0068】
有利には、生じる本発明による効果を付与する、及び色及び効果を付与する被覆、特に本発明による多層塗膜は、それぞれX-Rite社の式:
【数1】

により算出される15又はそれより高いフロップインデックスFLX-Riteを有する。
【0069】
意想外にも、当該の本発明による色及び効果を付与する被覆、特に本発明による多層塗膜は、溶剤ベースの塗膜と比較して明暗の色むら(曇り)をもはや示さない。
【0070】
総括的に、本発明による効果を付与する被覆、特に本発明による多層塗膜は卓越した応用技術的特性プロファイルを有し、機械的特性、光学的特性、耐腐食性、中間層付着性及びクリヤーコート付着性並びに基材付着性に関して抜群に均衡がとれている。ここで、卓越した光学的全体印象(外観)及び、塗装欠陥のない本発明によるベース塗膜に起因し得る、観察角度に応じた特に極めて顕著な明暗挙動(メタリックフロップ)を指摘することができる。さらに、色及び効果を付与する本発明による被覆、特に本発明による多層塗膜は、スパークル効果(グリッター効果)がわずかな、審美学的に特に魅力的な洗練された印象的な高い印象的な色効果を示す。
【0071】
本発明による組成物に関して、全バインダー含分、ポリウレタンバインダー(A)の含分、全固形分、薄片状の金属顔料(B)の含分、溶剤含分、及び特に全バインダー含分に対する(B)の質量比、並びに有機増粘剤(C2)に対する無機増粘剤(C1)の比、及び全バインダー含分に対する増粘剤(C)の全含分に関する、有利な、かつ/又は特に有利な上記範囲を維持した場合に、最良の結果が得られる。
【0072】
従って、典型的な特に有利な本発明による組成物は、例えば以下:
・バインダー含分に対して9.1〜20質量%、及び/又は、本発明による組成物の全質量に対して0.75〜4質量%の割合の、薄片状の金属エフェクト顔料(B)
・本発明による組成物の全質量に対して12〜14.5質量%の全含分のバインダー
を含有し、かつ場合により1以上の以下の基準、例えば:
・全バインダー含分に対して少なくとも30質量%のポリウレタンバインダー(B)の含分
・12.6〜17質量%の全固形分
・>0.5の、無機増粘剤(C1)に対する有機増粘剤(C2)の質量比
・<12.5質量%の、全バインダー含分に対する増粘剤(C)の全含分、及び
・該組成物の全質量に対する12〜21質量%の有機溶剤の含分
を満たす。
【0073】
特に有利な典型的な組成物において挙げられたそれぞれの範囲は、当然のことながら本発明による範囲内で拡張又は縮小されてよい。挙げられた範囲のそれぞれを、本願明細書中に挙げられた本発明による他の範囲と置き換えるか、又は挙げられた上限又は下限を含めて縮小することができるが、但しこれにより本発明の本質が変化するものではない。しかしながら、特に有利な範囲を維持した場合には、特に該被覆のメタリックフロップ、並びに、特に種々の負荷試験(SKK試験及びWOM試験)後の付着特性及び光沢維持に関して最良の結果を見込むことができる。
【実施例】
【0074】
塗料系E(本発明による)及びV(比較)の製造
水性ベースコートE(本発明による):
撹拌容器中に、濃稠化剤(ナトリウム−マグネシウム−層状ケイ酸塩、Laponite(R) RDのペースト、水中で3パーセント)25質量部を装入した。これに、独国特許出願DE4009858A1、第16欄、第10行〜第35行、"C. Herstellung einer waessrigen Polyurethanharzdispersion"によるポリウレタン分散液19.80質量部を、撹拌下に添加した。生じる混合物に、撹拌下に市販の湿潤剤Surfynol(R) 100(ブチルグリコール中で50パーセント)0.94質量部及び脱イオン水4.2質量部を添加した。次いで、市販の水希釈可能なメラミンホルムアルデヒド樹脂(Cymel(R) 327)3.33質量部と、独国特許出願DE4009858A1、第16欄、第37行〜第59行、"D. Herstellung einer waessrigen Polyesterharzdispersion"によるポリエステル樹脂水性分散液1.00質量部とからの混合物、ブチルグリコール2.1質量部、市販の湿潤剤Surfynol(R) 100(ブチルグリコール中で50パーセント)0.94質量部、及びジエメチルエタノールアミン(脱イオン水中で10パーセント)0.2質量部を、撹拌下に添加した。生じる混合物を、独国特許出願DE4437535A1、第7頁、第55行〜第8頁、第23行、"D. Herstellung des erfindungsgemaessen polyurethanmodifizierten Polyacrylates"によるポリウレタン変性ポリアクリレート樹脂3.12質量部と混合した。生じる混合物に、撹拌下に、市販の湿潤剤Surfynol(R) 100(ブチルグリコール中で50パーセント)0.94質量部、ブチルグリコール中の市販の会合型ポリウレタン増粘剤Nopco(R) DSX 1550の50パーセント溶液1.24質量部、及び市販の非会合型で作用する増粘剤Viscalex(R) HV30((C1〜C6)−アルキル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸をベースとするメタクリレートコポリマー)0.52質量部、並びに、少量ずつ水18.72質量部を添加した。生じる混合物に、Eckart社のHydrolan 3560 0.75質量部、Hydrolux 3590 2.22質量部、プロポキシプロパノール2.98質量部、ブチルグリコール2.98質量部及びWO2006/040284A1(第14頁、第17行−第27行)の混合塗料5.9質量部からのアルミニウムエフェクト顔料エフェクトペーストを、撹拌下に添加し、次いでさらにイソプロナール3.12を添加した。
【0075】
生じる混合物を均質化した。
【0076】
塗布のために、該水性ベースコートEを、10%ジメチルエタノールアミン水溶液及び脱イオン水を用いて、pH値7.8〜8.2、23℃での塗布粘度65〜75mPas、及び剪断速度1000s-1となるように調節した。
【0077】
Eの不揮発分(1h 120℃)は14.6%である。
【0078】
水性ベースコートV(WO2008/141768A1による比較):
撹拌容器中に、濃稠化剤(ナトリウム−マグネシウム−層状ケイ酸塩、Laponite(R) RDのペースト、水中で3パーセント)26質量部を装入した。これに、独国特許出願DE4009858A1、第16欄、第10行〜第35行、"C. Herstellung einer waessrigen Polyurethanharzdispersion"によるポリウレタン分散液10質量部を、撹拌下に添加した。生じる混合物に、撹拌下に、市販の湿潤剤Surfynol(R) 100(ブチルグリコール中で50パーセント)1.0質量部を添加した。次いで、市販の水希釈可能なメラミンホルムアルデヒド樹脂(Cymel(R) 327)1.7質量部と、独国特許出願DE4009858A1、第16欄、第37行〜第59行、"D. Herstellung einer waessrigen Polyesterharzdispersion"によるポリエステル樹脂水性分散液2.0質量部とからの混合物、ブチルグリコール1.0質量部、市販の湿潤剤Surfynol(R) 100(ブチルグリコール中で50パーセント)1.0質量部、及びジエメチルエタノールアミン(脱イオン水中で10パーセント)0.1質量部を、撹拌下に添加した。生じる混合物を、独国特許出願DE4437535A1、第7頁、第55行〜第8頁、第23行、"D. Herstellung des erfindungsgemaessen polyurethanmodifizierten Polyacrylates"によるポリウレタン変性ポリアクリレート樹脂1.6質量部と混合した。生じる混合物に、撹拌下に、市販の湿潤剤Surfynol(R) 100(ブチルグリコール中で50パーセント)1.5質量部、市販のラジカル捕捉剤Tinuvin 123 0.2質量部、ブチルグリコール中の市販の会合型ポリウレタン増粘剤Nopco(R) DSX 1550の50パーセント溶液0.7質量部、及び市販の非会合型で作用する増粘剤Viscalex(R) HV30((C1〜C6)−アルキル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸をベースとするメタクリレートコポリマー)0.3質量部、並びに、少量ずつ水43.3質量部を添加した。生じる混合物を、PVD法により製造された薄片状のアルミニウムエフェクト顔料(B)(Eckart社のAlu-Hydroshine(R) WS3001)3.7質量部と、独国特許出願DE10240972A1、第7頁、段落[0053]による混合物(Viscalex(R) HV30、有機アミン、Surfynol(R) 100、Cognis社の非イオン性界面活性剤Hydropalat(R) 3037及び水からの混合物)3.7質量部とからのペーストと混合した。
【0079】
生じる混合物を均質化し、それにより水性ベースコートVが生じた。
【0080】
塗布のために、該水性ベースコートVを、10%ジメチルエタノールアミン水溶液及び脱イオン水を用いて、pH値7.8〜8.2、23℃での塗布粘度30〜40mPas、及び剪断速度1000s-1となるように調節した。
【0081】
以下の一覧表は、組成物E及びVを発明の本質的な相違に関して相互に対比したものである。
【0082】
【表1】

【0083】
多層塗膜の製造
多層塗膜の製造のために、ベースコートE(本発明による)及びV(比較)を使用した。
【0084】
本発明による多層塗膜 E−MSL−EP−2K及びE−MSL−EP−1K
慣用かつ公知の、カソードで析出させ、かつ焼付けを行った電着浸漬塗膜で被覆されている寸法30×70cmの車体板金に市販のBASF Coatings AG社の水性サーフェイサーを塗布し、その後、生じるサーフェイサー層を、20℃、相対空気湿度65%で5分間フラッシュオフし、かつ空気循環炉中で160℃で20分間焼付けた。この車体板金を20℃に冷却した後、水性ベースコートEを、それぞれ2つの吹付け工程で60:40の施与比で塗布した。第一の施与を、静電高速回転によりDuerr社のECO Bell 2(距離:0.25m;塗料吐出量:150ml/分;回転数:45000rpm;電圧:65kV)を用いて行った。次いで、20℃、相対空気湿度65%で30秒間フラッシュオフした。第二の施与を、空気式で(距離:0.3m;塗料吐出量:200ml/分;噴霧装置空気量:240Nl/分;噴霧装置空気圧:4.8バール;ホーン空気量:310Nl/分;ホーン空気圧:5.2バール)行った。12μmの乾燥膜厚が生じた。次いで、この水性ベースコート層を、室温で10分間、及び80℃で10分間予備乾燥させた。この車体板金を20℃に冷却した後、この水性ベースコート層に、市販のBASF Coatings AG社の2成分系クリヤーコート(本発明による多層塗膜E−MSL−EP−2Kが生じる)、又は、市販の単一成分系クリヤーコート(本発明による多層塗膜E−MSL−EP−1Kが生じる)を、乾燥膜厚40μmに相応して上塗りした。その後、これらのサーフェイサー層、水性ベースコート層及びクリヤーコート層を、140℃で30分間(2成分系クリヤーコート)ないし130℃で30分間(単一成分系クリヤーコート)焼付けた。
【0085】
比較の多層塗膜 V−MSL−PP−2K、V−MSL−PP−1K、V−MSL−EP−2K及びV−MSL−EP−1K
慣用かつ公知の、カソードで析出させ、かつ焼付けを行った電着浸漬塗膜で被覆されている寸法30×70cmの車体板金に市販のBASF Coatings AG社の水性サーフェイサーを塗布し、その後、生じるサーフェイサー層を、20℃、相対空気湿度65%で5分間フラッシュオフし、かつ空気循環炉中で160℃で20分間焼付けた。この車体板金を20℃に冷却した後、水性ベースコートVをそれぞれ2つの吹付け工程で塗布した。第一の施与を、空気式で(距離:0.5m;塗料吐出量:300Nl/分;噴霧装置空気量:320Nl/分;噴霧装置空気圧:4.8バール;ホーン空気量:380Nl/分;ホーン空気圧:5.2バール)、乾燥膜厚2〜3μmに相応して行った。次いで、20℃、相対空気湿度65%で2分間フラッシュオフした。第二の施与を、同様に空気式で上記の条件下に乾燥膜厚2〜3μmに相応して行った。次いで、この水性ベースコート層を80℃で10分間予備乾燥させた。この車体板金を20℃に冷却した後、この水性ベースコート層に、市販のBASF Coatings AG社の2成分系クリヤーコート(比較の多層塗膜V−MSL−PP−2Kが生じる)、又は、市販の単一成分系クリヤーコート(比較の多層塗膜V−MSL−PP−1Kが生じる)を、乾燥膜厚40μmに相応して上塗りした。その後、これらのサーフェイサー層、水性ベースコート層及びクリヤーコート層を、140℃で30分間(2成分系クリヤーコート)及び130℃で30分間(単一成分系クリヤーコート)焼付けた。
【0086】
第二の試験では、比較例も、本発明による実施例と同様に、ESTA/空気式で(比較の多層塗膜V−MSL−EP−2K(2Kクリヤーコートを有する)ないしV−MSL−EP−1K(1Kクリヤーコートを有する)が生じる)塗装した。吐出速度を固形分に相応して適合させた。6μmのベースコート膜厚が生じた。
【0087】
本発明による多層塗膜と比較の多層塗膜との比較
全ての多層塗膜を、X-Rite社のスペクトル光度計(MA 8 Multi-Angle Spectrophotometer)を用いて測定した。この多層塗膜をもとに求められた観察角度15゜、45°及び110°に関する明度値から、式
【数2】

による、X-Riteによるいわゆるフロップインデックスを算出することができる。
【0088】
比較の水性ベースコートに関して専ら空気式でのみ塗布された、PVD−アルミニウム顔料をベースとする水性ベースコートの比較例V−MSL−PP−2Kは、FLX-Rite=26を達成した。
【0089】
PVD−アルミニウム顔料をベースとする水性ベースコートをESTAと空気式とを組み合わせて施与した場合には(比較例:V−MSL−EP−2K)、この値はFLX-Rite=20に低下した。
【0090】
Byk Gardner社の測定装置BYKmacを用いて、粒子感を測定した。粗さを目視により検知するためには、15°での観察角が特に重要である。メタリック塗装において、スパークル面と強度とから算出されるSG−15°値は、均質性、即ち塗膜のノンスパークル挙動(散乱)を表す。これに関する全ての測定を、Byk-Gardner社の装置BYKmacを用いて、該装置のドキュメントから得られる方法により行った。
【0091】
第1表に、得られたX-Riteによるフロップインデックスの値、及び明暗の色むら(曇り)の形成に関して重要な明度値L*15゜、並びに粒子感及びSG−15°値に関する一覧を示す。
【0092】
【表2】

【0093】
本発明による多層塗膜E−MSL−EP−2Kは、PVD金属エフェクト顔料をベースとする比較の多層塗膜V−MSL−EP−2Kと類似の良好な効果を示しており、この効果は、細度(SG−15°値により特徴付けられる均質性)又は目視による評価、明度(L*15゜)及びフロップインデックス(FLX-Rite)の組合せの点で、従来技術(Ford, BMW)の銀色の多層塗膜ではほとんど達成されない。
【0094】
さらに、第一の試験における多層塗膜E−MSL−EP−2K及びV−MSL−EP−2Kについて、4000時間にわたってAtlas Material Testing Technology LLC社の耐候試験機を用いてWeather-OMeter(R)耐候試験(SAE J 2527−04によるWOM耐候試験)を行い、引き続く工程において、72時間にわたって結露水を生じる一定の気候下での試験(SKK試験;DIN EN ISO 6270−2による)を行った。WOM耐候試験の前、WOM耐候試験の直後、及びSKK試験の直後に、付着強度をDIN EN ISO 2409によるクロスカット試験で測定し、20゜の角度での光沢度並びに膨れ度合いをDIN EN ISO 4628−2により測定した。結果を第2表にまとめる。
【0095】
【表3】

【0096】
第3表及び第4表において、1K−クリヤーコートで被覆された本発明による多層塗膜、及び1K−クリヤーコートで被覆された比較の多層塗膜について、すでに上記した試験法(但し、異なる期間にわたって)を実施する。
【0097】
【表4】

【0098】
光沢度測定はDIN 67530により行った。
【0099】
耐チッピング性はDIN EN ISO 20567−1(方法A)により測定した。この値が高いほど、耐チッピング性は低い。
【0100】
【表5】

【0101】
第3表及び第4表に示されている測定結果から見て取れるように、特に、SKK試験の後、ないしWOM試験とSKK試験とからの組合せの後の、単一成分系クリヤーコートを使用した場合の本発明による被覆剤の(クロスカット試験における)付着強度及び(20゜での)光沢度は明らかにより高い。さらに、本発明による多層塗膜は膨れの形成傾向を示さない。
【0102】
Audi社の試験規定No.4.7.3によるサンドペーパー(粒度800)を用いたサンディング斑点及びサンディング傷のマスキングに関する試験
【表6】

【0103】
評価を、「学校評点」原理(1=目視不可能〜6=明らかに目視可能)により行った。
【0104】
試験した全ての本発明による塗料は、良好な環状導管安定性及び放置安定性を示していた。自動車塗装ラインにおいて塗料に課される曇り傾向及びワキ形成に関する全ての要求も満たされている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
A)バインダーとしての、物理硬化性、熱自己架橋性及び/又は熱外部架橋性の、飽和、不飽和の、及び/又はオレフィン系不飽和化合物でグラフトされた、イオンにより及び/又はイオンによらずに安定化されたポリウレタンからなる群から選択された少なくとも1のポリウレタン、
B)少なくとも1の薄片状の金属エフェクト顔料、及び
C)層状ケイ酸塩の群から選択された少なくとも1の無機増粘剤C1)、及び、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレート−コポリマー増粘剤及びポリウレタン増粘剤の群から選択された少なくとも1の有機増粘剤C2)
を含む、熱硬化性及び/又は物理硬化性の水性被覆剤組成物であって、
i)該被覆剤組成物の全バインダー含分に対するB)の含分が>15質量%であり、
ii)該被覆剤組成物に対する全固形分が≧12.5質量%であり、
iii)該被覆組成物の全バインダー含分に対するC1)及びC2)からの増粘剤の全含分が<12質量%であり、かつ
iv)C1)に対するC2)の質量比が>0.4である、
熱硬化性及び/又は物理硬化性の水性被覆剤組成物。
【請求項2】
薄片状の金属エフェクト顔料(B)が、銀ドルの形態を有するアルミニウムエフェクト顔料である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
薄片状の金属エフェクト顔料(B)が、D90/D10<5により特徴付けられる粒度分布を有している、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
薄片状の金属エフェクト顔料(B)が、5〜30μmの平均顔料細度D50を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
無機層状ケイ酸塩C1)がラポナイトである、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
増粘剤C2)として、
(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレート−コポリマー増粘剤が使用されており、ここで、(メタ)アクリレートとして、(メタ)アクリル酸及びC1〜C6−アルカノール及び/又はC7〜C30−アルカノールから形成されている(メタ)アクリレートが重合導入されており、
かつ/又は、
増粘剤C2)として、
疎水変性されたエチレンオキシド−ウレタン(HEUR)が使用されており、その際、エチレンオキシド単位に加えて、又はエチレンオキシド単位の代わりに、プロピレンオキシド単位が含まれていてもよい、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
有機増粘剤C2)が、(メタ)アクリレートコポリマーとポリウレタンとの混合物である、請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物の製造法において、少なくとも1のポリウレタン(A)及び少なくとも1の薄片状の金属エフェクト顔料(B)並びに増粘剤(C)を水性媒体中に分散させ、かつ生じる混合物を均質化することを特徴とする方法。
【請求項9】
塗料としての、及び被覆の製造のための、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物、及び請求項8記載の方法により製造された組成物の使用。
【請求項10】
塗料を、単層及び多層の、効果を付与する、又は色及び効果を付与する被覆の製造に使用する、請求項9記載の使用。
【請求項11】
以下:
(1)下塗りされたか又は下塗りされていない基材に少なくとも1の水性ベースコートを塗布し、それにより少なくとも1の水性ベースコート層(1)が生じ、
(2)該水性ベースコート層(1)上に少なくとも1のクリヤーコートを塗布し、それにより少なくとも1のクリヤーコート層(2)が生じ、かつ
(3)少なくとも該水性ベースコート層(1)及び該クリヤーコート層(2)を一緒に硬化させ、それによりベース塗膜(1)及びクリヤー塗膜(2)が生じる
ことによる、多層塗膜の製造法において、
該水性ベースコート層(1)を製造するための水性ベースコートとして、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物、又は請求項8記載の方法により製造された組成物を使用することを特徴とする方法。
【請求項12】
少なくとも1の水性ベースコート層(1)をESTAにより施与する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法により得ることができる多層塗膜。

【公表番号】特表2013−519772(P2013−519772A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553335(P2012−553335)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052466
【国際公開番号】WO2011/101455
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】