説明

薄肉ローラ、定着装置及び薄肉ローラの製造方法

【課題】肉厚の薄い素管であってもジャーナル部の根本部分の強度を十分に確保することができる薄肉ローラ、定着装置及び薄肉ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】中空円筒状の胴部2と、該胴部2の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部3と、前記胴部2と前記ジャーナル部3とを連結する連結部4とを備えた薄肉ローラ5において、前記胴部2の両端部近傍内側に、胴部2の内周に設けられたリブ10に固定されたリング状部材9を有し、そして、前記連結部4として、前記リング状部材9に圧接するように前記胴部2の両端部を縮径加工して軸方向と直交する方向に形成した連結部4を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄肉ローラ、定着装置及び薄肉ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録紙上に形成されたトナー像を定着させる方法として、熱と圧力による熱定着方式が用いられており、この熱定着方式の一つとして、ベルト定着方式による定着装置がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
この定着装置は、定着ローラと、加熱手段を内蔵した加熱ローラと、定着ローラと加熱ローラとの間に掛け回される無端状の定着ベルトと、この定着ベルトが掛け回された定着ローラに圧接される加圧ローラとを備えており、定着ベルトが掛け回された定着ローラと加圧ローラとの間を表面にトナー像が形成された記録紙が挿通することにより、加熱及び加圧によりトナー像が記録紙上に定着するものである。
【0004】
この定着装置では、定着ベルトが定着可能な温度に達するまでの立ち上がり時間を短縮して複写機などの省電力化を進めるために、前記加熱ローラの肉厚を薄く形成したり、加熱ローラを小径化して加熱ローラ内部の加熱手段の熱が加熱ローラの外周面に伝達しやすくすることが望まれている。
【0005】
また、この定着装置では、定着ベルトが周回しているときに左右の張力バランスが崩れて定着ベルトが左右のいずれかの方向にずれてしまう斜行現象を防止するために、定着ベルトには寄り止め部材が設けられている(例えば、特許文献2)。
【0006】
図7に示すように、前記加熱ローラ21は、中空円筒状の胴部22と、該胴部22の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部23と、前記胴部22と前記ジャーナル部23とを連結する連結部24とを備えた薄肉ローラ25を有しており、前記胴部22の外周には定着ベルト26が巻回されるとともに胴部22の内部には図示しないハロゲンヒータ等の加熱手段が設けられ、前記ジャーナル部23に嵌合した軸受け27により回転可能に軸支されている。
【0007】
前記胴部22の両側端面である連結部24の外表面24aは、胴部22の外周面22aと垂直になるように形成されており、前記定着ベルト26の両側に加熱ローラ21側に突出して形成された前記寄り止め部28と前記連結部24の外表面24aとが係合するようになっている。
【0008】
また、前記寄り止め部28の先端面28aとジャーナル部の根本部分23aの外周面23bとの間には所定の間隙が形成されており、これにより寄り止め部28がジャーナル部23の根本部分23aと接触して定着ベルト26が加熱ローラ21から外れることを防ぐようになっている。
【0009】
このような加熱ローラ21の薄肉ローラ25を形成するには、図8に示すように、中空円筒状の素管29をコレットチャック30で把持し、素管29に回転を与えた状態で絞りローラ31を素管29の両端部外周面に押し付けて移動させ、前記胴部22となる素管29の両端部を縮径したジャーナル部23を絞り加工により形成する。このジャーナル部23の絞り加工はいわゆるスピニング加工といわれるもので、一回の加工ではジャーナル部23の形状精度を確保することが難しいので、絞りローラ31の押し込み量や位置を調整して数回に分けて加工を行い、所定の形状を作りこむようになっている。
【0010】
その後、ジャーナル部23の外周面を切削加工して軸受け27に合わせた所定の芯金寸法に形成するとともに、胴部22となる素管29の外周面を切削加工して所定の肉厚の胴部22を形成するようになっている。また、前記定着ベルト26の寄り止め部28の先端面28aとジャーナル部23の根本部分23aの外周面23bとの間に所定の間隙を形成するように、ジャーナル部23の根本部分23aの外周面23bと前記連結部24の外表面24aとの間が垂直になるように切削加工するようになっている。
【0011】
その後、胴部22の表面にポリ四フッ化塩化エチレン塗装やアルマイト処理を施すとともに、胴部22の内部に図示しない加熱手段を設けることにより、最終形状としての加熱ローラ21を形成するようになっている。
【0012】
このように、加熱ローラ21の薄肉ローラ25をスピニング加工により形成する場合には、素管29を把持するコレットチャック30の把持力と素管29自体の剛性によってスピニング加工の加工力に対抗しているため、ジャーナル部23から胴部22にかけて角度の急な曲げ加工を行うと、素管29の剛性が負けてしまい、図9に示すように、胴部22とジャーナル部23とを連結する連結部24において、曲げ部分が緩やかなR形状となるいわゆるダレ部A、Bが2箇所発生する。
【0013】
前記ダレ部A、Bのうち前記胴部22と連結部24との間に発生するダレ部Aは、前記したように胴部22の外周面22aを切削加工する際に取り除かれ、胴部22の外周面22aと連結部24の外表面24aとの垂直度は確保される。
【0014】
しかし、前記連結部24とジャーナル部23の根本部分23aとの間に発生するダレ部Bは、前記したように定着ベルト26の寄り止め部28の先端面28aとジャーナル部23の根本部分23aの外周面23bとの間に所定の間隙を形成するように切削加工してジャーナル部23の根本部分23aの外周面23bと連結部24の外表面24aとの垂直度を確保するように形成すると、切削加工後の肉厚x1が薄くなり(図9の二点鎖線が切削加工前の状態を示す)、加熱ローラ21を回転可能に軸支するジャーナル部23の根本部分23aの強度を確保することができないという問題がある。
【0015】
したがって、前記切削加工後のジャーナル部23の根本部分23aの肉厚を確保するには、肉厚の厚い素管29を用いてスピニング加工を行い、切削加工後のダレ部Bの肉厚x1が厚くなるようにする必要がある。
【0016】
例えば、前記したように定着ベルト26が定着可能な温度に達するまでの立ち上がり時間を短縮するために加熱ローラ21を薄肉に形成する場合には、加熱ローラ21の性能として胴部22の肉厚x2が0.4mm必要な場合でも、ジャーナル部23の根本部分23aの強度を確保するために例えば2mmの肉厚の素管29から曲げ加工をしなければならず、曲げ加工後に胴部22では1.6mmもその外周部を切削加工する必要がある。このため、切削加工時の切削パス回数が増え、加工時間が長くなり生産性が低下するという問題があり、また素管29のコストが高くなるという問題がある。
【0017】
また、加熱ローラ21の内部の加熱手段の熱が加熱ローラ21の外周面に伝達しやすくするために加熱ローラ21を小径化する場合には、ジャーナル部23の外径r1は軸受け27との関係で定まっているので、結果として胴部22とジャーナル部23との外径の寸法差が小さくなり、この場合には曲げ量が少ないためにジャーナル部23から胴部22にかけて角度の急な曲げ加工を行うことがより難しくなり、前記した場合と同様に曲げ部分が緩やかなR形状となるいわゆるダレ部が発生する。そして、前記定着ベルト26の寄り止め部28の先端面28aとジャーナル部23の根本部分23aの外周面23bとの間に所定の間隙が形成されるようにこの曲げ部分を切削加工することにより、前記した場合と同様の問題(切削加工後のジャーナル部23の根本部分23aの肉厚が薄くなり、十分な強度を確保できない点)が生じる。
【0018】
また、加熱ローラ21の薄肉ローラ25のジャーナル部23を工具間で圧縮成形するいわゆるスエージ加工により形成する場合もあるが、この場合も図10に示すように、ジャーナル部23の根本部分23aが緩やかなR形状の曲げ部分Cとして形成され、その後この曲げ部分Cを切削加工することにより前記した場合と同様の問題が生ずる。
【特許文献1】特開2000−89593号公報(図1)
【特許文献2】特開2004−109454号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明はかかる問題を解決し、肉厚の薄い素管であってもジャーナル部の根本部分の強度を十分に確保することができる薄肉ローラ、定着装置及び薄肉ローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的達成のために、請求項1に記載された発明は、中空円筒状の胴部と、該胴部の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部と、前記胴部と前記ジャーナル部とを連結する連結部とを備えた薄肉ローラにおいて、前記胴部の両端部近傍内側に、胴部の内周に設けられたリブに固定されたリング状部材を有し、そして、前記連結部として、前記リング状部材に圧接するように前記胴部の両端部を縮径加工して軸方向と直交する方向に形成した連結部を有することを特徴とする。
【0021】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の発明において、前記リング状部材が、前記連結部との接触側端面の内周縁に環状突部を有することを特徴とする。
【0022】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記リング状部材と前記胴部とが同一材料で構成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項4に記載された発明は、中空円筒状の胴部と、該胴部の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部と、前記胴部と前記ジャーナル部とを連結する連結部とを備えた薄肉ローラにおいて、前記連結部として、前記胴部の両端部近傍内側に取り外し可能に固定したリング状部材に圧接するように前記胴部の両端部を縮径加工して軸方向と直交する方向に形成した連結部を有することを特徴とする。
【0024】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薄肉ローラの胴部の内部に加熱手段を設けて加熱ローラとしたことを特徴とする。
【0025】
請求項6に記載された発明は、定着ローラと、加熱ローラと、該加熱ローラと前記定着ローラとの間に掛け回される定着ベルトと、該定着ベルトが掛け回された定着ローラに圧接される加圧ローラとを備えた定着装置において、前記加熱ローラとして請求項5記載の薄肉ローラを有することを特徴とする。
【0026】
請求項7に記載された発明は、中空円筒状の胴部と、該胴部の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部と、前記胴部と前記ジャーナル部とを連結する連結部とを備えた薄肉ローラの製造方法において、中空円筒状の素管の両端部内側にリング状部材を仮置きする第1の工程、前記素管の両端部内周に前記リング状部材を固定するリブを前記素管の外周に溝を形成することにより形成する第2の工程、前記素管の両端部を前記リング状部材に圧接するように縮径加工して前記連結部を軸方向と直交する方向に形成するとともに、前記中空円筒状の胴部及び前記ジャーナル部を形成する第3の工程、及び、前記縮径加工して形成したジャーナル部及び前記胴部の外周面に切削加工を施して所定寸法に形成する第4の工程を順次有することを特徴とする。
【0027】
請求項8に記載された発明は、中空円筒状の胴部と、該胴部の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部と、前記胴部と前記ジャーナル部とを連結する連結部とを備えた薄肉ローラの製造方法において、中空円筒状の素管の一端部内側にリング状部材を固定する第1の工程、前記素管の一端部を前記リング状部材に圧接するように縮径加工して前記一方の連結部を軸方向と直交する方向に形成するとともに、前記中空円筒状の胴部の一端部及び前記一方のジャーナル部を形成する第2の工程、前記リング状部材を前記素管の他端部内側に移動させて固定する第3の工程、前記素管の他端部を前記リング状部材に圧接するように縮径加工して前記他方の連結部を軸方向と直交する方向に形成するとともに、前記胴部の他端部及び前記他方のジャーナル部を形成する第4の工程、前記縮径加工後に前記リング状部材を前記胴部内部から取り除く第5の工程、及び、前記縮径加工して形成したジャーナル部及び前記胴部の外周面に切削加工を施して所定寸法に形成する第6の工程を順次有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に記載された発明によれば、中空円筒状の胴部と、該胴部の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部と、前記胴部と前記ジャーナル部とを連結する連結部とを備えた薄肉ローラにおいて、前記胴部の両端部近傍内側に、胴部の内周に設けられたリブに固定されたリング状部材を有し、そして、前記連結部として、前記リング状部材に圧接するように前記胴部の両端部を縮径加工して軸方向と直交する方向に形成したので、リブによりリング状部材が軸方向に移動しないように固定した状態で連結部をリング状部材に沿って形成することができ、連結部の外表面をジャーナル部の根本部分の外周面及び胴部の外周面とほぼ垂直になるように形成でき、また、ジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分を曲率の小さなR形状とすることができる。
【0029】
このため、連結部の外表面とジャーナル部の根本部分の外周面との垂直度を確保するために、連結部の外表面及びジャーナル部の根本部分の外周面を切削加工した場合でも、その切削量は僅かですみ、切削後のジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができ、ジャーナル部の根本部分の強度を確保することができる。
【0030】
したがって、肉厚の薄い素管を用いて胴部の両端部を縮径加工した場合でも、ジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができ、ジャーナル部の根本部分の強度を確保することができ、肉厚の薄い素管を用いることにより、胴部及びジャーナル部の外周面の切削加工に要する時間を短縮して生産性を向上させることができ、素管のコストを抑えることができる。また、リング状部材により、ジャーナル部の根本部分の強度をより高めることができる。
【0031】
請求項2に記載された発明によれば、前記リング状部材が、前記連結部との接触側端面の内周縁に環状突部を有するので、リング状部材の環状突部がリング状部材に沿って形成される連結部と接触することによりリング状部材と連結部との接触面積がより大きくなり、ジャーナル部の根本部分の強度をより高めることができる。
【0032】
請求項3に記載された発明によれば、前記リング状部材と前記胴部とが同一材料で構成されているので、胴部とリング状部材との熱膨張差によるリング状部材の緩みを防ぐことができ、ジャーナル部の根本部分の経時変化を抑えて、その強度を保持することができる。
【0033】
請求項4に記載された発明によれば、中空円筒状の胴部と、該胴部の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部と、前記胴部と前記ジャーナル部とを連結する連結部とを備えた薄肉ローラにおいて、前記連結部として、前記胴部の両端部近傍内側に取り外し可能に固定したリング状部材に圧接するように前記胴部の両端部を縮径加工して軸方向と直交する方向に形成した連結部を有するので、連結部をリング状部材に沿って形成することができ、連結部の外表面をジャーナル部の根本部分の外周面及び胴部の外周面とほぼ垂直になるように形成でき、また、ジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分を曲率の小さなR形状とすることができる。
【0034】
このため、連結部の外表面とジャーナル部の根本部分の外周面との垂直度を確保するために、連結部の外表面及びジャーナル部の根本部分の外周面を切削加工した場合でも、その切削量は僅かですみ、切削後のジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができ、ジャーナル部の根本部分の強度を確保することができる。
【0035】
したがって、肉厚の薄い素管を用いて胴部の両端部を縮径加工した場合でも、ジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができ、ジャーナル部の根本部分の強度を確保することができ、肉厚の薄い素管を用いることにより、胴部及びジャーナル部の外周面の切削加工に要する時間を短縮して生産性を向上させることができ、素管のコストを抑えることができる。
【0036】
請求項5に記載された発明によれば、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薄肉ローラの胴部の内部に加熱手段を設けて加熱ローラとしたので、加熱ローラの薄肉ローラのジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができ、ジャーナル部の根本部分の強度を確保することができる。
【0037】
このため、ジャーナル部の根本部分の強度を十分に確保しながら加熱ローラを薄肉に、かつ、小径に形成することができ、胴部内部の加熱手段の熱を加熱ローラの外周面に伝達しやすくすることができ、加熱ローラに巻回された定着ベルトが定着可能な温度に達するまでの立ち上がり時間を短縮することができる。
【0038】
請求項6に記載された発明によれば、定着ローラと、加熱ローラと、該加熱ローラと前記定着ローラとの間に掛け回される定着ベルトと、該定着ベルトが掛け回された定着ローラに圧接される加圧ローラとを備えた定着装置において、前記加熱ローラとして請求項5記載の薄肉ローラを有するので、定着装置の加熱ローラのジャーナル部の根本部分の強度を十分に確保しながら加熱ローラを薄肉に、かつ、小径に形成することができ、定着装置が定着可能な温度に達するまでの立ち上がり時間を短縮することができる。
【0039】
請求項7に記載された発明によれば、中空円筒状の胴部と、該胴部の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部と、前記胴部と前記ジャーナル部とを連結する連結部とを備えた薄肉ローラの製造方法において、中空円筒状の素管の両端部内側にリング状部材を仮置きする第1の工程、前記素管の両端部内周に前記リング状部材を固定するリブを前記素管の外周に溝を形成することにより形成する第2の工程、前記素管の両端部を前記リング状部材に圧接するように縮径加工して前記連結部を軸方向と直交する方向に形成するとともに、前記中空円筒状の胴部及び前記ジャーナル部を形成する第3の工程、及び、前記縮径加工して形成したジャーナル部及び前記胴部の外周面に切削加工を施して所定寸法に形成する第4の工程を順次有するので、リブによりリング状部材が軸方向に移動しないように固定した状態で連結部をリング状部材に沿って形成することができ、連結部の外表面をジャーナル部の根本部分の外周面及び胴部の外周面とほぼ垂直になるように形成でき、また、ジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分を曲率の小さなR形状とすることができる。
【0040】
このため、連結部の外表面とジャーナル部の根本部分の外周面との垂直度を確保するために、連結部の外表面及びジャーナル部の根本部分の外周面を切削加工した場合でも、その切削量は僅かですみ、切削後のジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができ、ジャーナル部の根本部分の強度を確保することができる。
【0041】
したがって、肉厚の薄い素管を用いて胴部の両端部を縮径加工した場合でも、ジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができ、ジャーナル部の根本部分の強度を確保することができ、肉厚の薄い素管を用いることにより、胴部及びジャーナル部の外周面の切削加工に要する時間を短縮して生産性を向上させることができ、素管のコストを抑えることができる。また、リング状部材により、ジャーナル部の根本部分の強度をより高めることができる。
【0042】
また、前記リング状部材を固定するリブを前記胴部の外周に溝を形成することにより形成したので、ジャーナル部をスピニング加工により縮径加工する際の絞りローラを利用して、絞りローラを胴部の外周面に押し込むことにより溝を形成して胴部の内周に溝に対応したリブを形成することができ、既存のスピニング加工の絞りローラを使用して簡易にリブを形成することができる。
【0043】
請求項8に記載された発明によれば、中空円筒状の胴部と、該胴部の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部と、前記胴部と前記ジャーナル部とを連結する連結部とを備えた薄肉ローラの製造方法において、中空円筒状の素管の一端部内側にリング状部材を固定する第1の工程、前記素管の一端部を前記リング状部材に圧接するように縮径加工して前記一方の連結部を軸方向と直交する方向に形成するとともに、前記中空円筒状の胴部の一端部及び前記一方のジャーナル部を形成する第2の工程、前記リング状部材を前記素管の他端部内側に移動させて固定する第3の工程、前記素管の他端部を前記リング状部材に圧接するように縮径加工して前記他方の連結部を軸方向と直交する方向に形成するとともに、前記胴部の他端部及び前記他方のジャーナル部を形成する第4の工程、前記縮径加工後に前記リング状部材を前記胴部内部から取り除く第5の工程、及び、前記縮径加工して形成したジャーナル部及び前記胴部の外周面に切削加工を施して所定寸法に形成する第6の工程を順次有するので、連結部をリング状部材に沿って軸方向と直交する方向に形成することができ、連結部の外表面をジャーナル部の根本部分の外周面及び胴部の外周面とほぼ垂直になるように形成でき、また、ジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分を曲率の小さなR形状とすることができる。
【0044】
このため、連結部の外表面とジャーナル部の根本部分の外周面との垂直度を確保するために、連結部の外表面及びジャーナル部の根本部分の外周面を切削加工した場合でも、その切削量は僅かですみ、切削後のジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができ、ジャーナル部の根本部分の強度を確保することができる。
【0045】
したがって、肉厚の薄い素管を用いて胴部の両端部を縮径加工した場合でも、ジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができ、ジャーナル部の根本部分の強度を確保することができ、肉厚の薄い素管を用いることにより、胴部及びジャーナル部の外周面の切削加工に要する時間を短縮して生産性を向上させることができ、素管のコストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
図1は、本発明の一実施形態の薄肉ローラ5を有する加熱ローラ1の断面図である。
加熱ローラ1は、中空円筒状の胴部2と、胴部2の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部3と、胴部2とジャーナル部3とを連結する連結部4とを備えた薄肉ローラ5を有している。加熱ローラ1の内部には、図示しないハロゲンヒータ等からなる加熱手段が設けられており、加熱ローラ1は前記ジャーナル部3に嵌合した軸受け7によって回転可能に軸支されている。
【0047】
この加熱ローラ1は、図2に示すように、定着ローラ11と、定着ローラ11と加熱ローラ1との間に掛け回される無端状の定着ベルト6と、この定着ベルト6が掛け回された定着ローラ11に圧接される加圧ローラ12とを備える定着装置13に用いられており、定着ベルト6が掛け回された定着ローラ11と加圧ローラ12との間を表面にトナー像14が形成された記録紙15が挿通することにより、加熱及び加圧によりトナー像14が記録紙15上に定着するようになっている。
【0048】
前記加熱ローラ1の薄肉ローラ5の胴部2の両端部近傍内側には、胴部2と嵌合するリング状部材9が設けられており、このリング状部材9は、図4に示すような薄い円筒形状を有しており、リング状部材9の端面のうち胴部2の軸方向外側の端面9aが胴部2の軸方向と直交する方向に形成されている。
【0049】
また、図3に示すように、前記リング状部材9の胴部2の軸方向内側端面の外周縁9bが胴部2の内周に形成されたリブ10と係合しており、胴部2の両端部近傍内側に設けられたリング状部材9が胴部2の軸方向内側に移動しないように固定されている。
【0050】
前記胴部2とジャーナル部3とを連結する連結部4は、胴部2の両端部を前記リング状部材9に圧接するように縮径加工して胴部2の軸方向と直交する方向に形成されており、前記連結部4は、前記リング状部材9の端面9aに沿って胴部2の軸方向と直交する方向に形成されて、連結部4の外表面4aが前記ジャーナル部3の根本部分3aの外周面3b及び胴部2の外周面2aとほぼ垂直になるように形成されている。
【0051】
これにより、加熱ローラ1の薄肉ローラ5の胴部2に巻回される定着ベルト6の両側に加熱ローラ1側に突出して形成された寄り止め部8が前記連結部4の外表面4aと係合し、定着ベルト6が周回しているときの斜行現象を防ぐようになっている。また、前記寄り止め部8の先端面8aと前記ジャーナル部3の根本部分3aの外周面3bとの間には、所定の間隙が形成されており、これにより寄り止め部8がジャーナル部3の根本部分3aと接触して定着ベルト6が加熱ローラ1から外れることを防ぐようになっている。
【0052】
本実施形態では、前記加熱ローラ1の薄肉ローラ5は、中空円筒状のアルミニウム合金の素管から形成されており、前記胴部2の外径r2が25mmと小径に、かつ、胴部2の肉厚x2が0.4mmと薄肉に形成されており、また胴部2の内周面は黒色に塗装されている。これにより、加熱ローラ1に内蔵された加熱手段の熱が胴部2の外周面2aに伝達しやすくなり、加熱ローラ1に巻回された定着ベルト6が定着可能な温度に達するまでの立ち上がり時間を短縮することができるようになっている。
【0053】
前記胴部2の両端部のジャーナル部3は、嵌合される軸受け7の規格から外径r1が20mmとされており、ジャーナル部3の強度を確保するために少なくとも1mm以上の肉厚を有するように形成されている。また、前記胴部2の内側に嵌合されたリング状部材9は、好ましくは胴部2と同一材料のアルミニウム合金で形成されており、加熱ローラ1使用時の薄肉ローラ5の胴部2とリング状部材9との熱膨張差によるリング状部材9の緩みを防ぐことができるようになっている。
【0054】
なお、前記胴部2の外周面2aには、巻回される定着ベルト6との接触による摩耗を防ぐために図示しない離型層が形成されており、この離型層はアルマイト処理やポリ四フッ化塩化エチレン塗装により形成されている。
【0055】
本実施形態によれば、図3に示すように、加熱ローラ1の薄肉ローラ5の胴部2とジャーナル部3との間の連結部4は、胴部2の両端部を前記リング状部材9に圧接するように縮径加工して胴部2の軸方向と直交する方向に形成されており、前記連結部4は、前記リング状部材9の端面9aに沿って胴部2の軸方向と直交する方向に形成されている。これにより、前記連結部4の外表面4aを前記ジャーナル部3の根本部分3aの外周面3b及び胴部2の外周面2aとほぼ垂直になるように形成でき、また、ジャーナル部3と胴部2との間の連結部4の曲げ加工部分を曲率の小さなR形状とすることができる。
【0056】
このため、前記連結部4の外表面4aと前記ジャーナル部3の根本部分3aの外周面3bとの垂直度を確保するために、連結部4の外表面4a及びジャーナル部3の根本部分3aの外周面3bを切削加工した場合でも、その切削量は僅かですみ(図3の二点鎖線が切削加工前の状態を示す)、切削後のジャーナル部3と胴部2との間の連結部の曲げ加工部分の肉厚x1を十分に確保することができ、ジャーナル部3の根本部分3aの強度を確保することができる。
【0057】
したがって、肉厚の薄い素管を用いて、加熱ローラ1の薄肉ローラ5の胴部2の両端部を縮径加工した場合でも、ジャーナル部3と胴部2との間の連結部4の曲げ加工部分の肉厚x1を十分に確保することができ、ジャーナル部3の根本部分3aの強度を確保することができ、肉厚の薄い素管を用いることにより、胴部2及びジャーナル部3の外周面の切削加工に要する時間を短縮して生産性を向上させることができ、素管のコストを抑えることができる。また、前記リング状部材9により、ジャーナル部3の根本部分3aの強度をより高めることができる。
【0058】
また、前記リング状部材9の胴部2の軸方向内側端面の外周縁9bが胴部2の内周に形成されたリブ10と係合しているので、薄肉ローラ5の胴部2の両端部近傍内側に設けたリング状部材9を胴部2の軸方向内側に移動しないように固定することができ、胴部2とジャーナル部3との間の連結部4を、胴部2の両端部をリング状部材9に圧接するように縮径加工して胴部2の軸方向と直交する方向に確実に形成することができる。また、前記リング状部材9が前記連結部4と前記リブ10との間に固定されているので、前記ジャーナル部3の根本部分3aの強度をより高めることができる。
【0059】
また、本実施形態による薄肉ローラ5を有する加熱ローラ1によれば、ジャーナル部3の根本部分3aの強度を十分に確保しながら加熱ローラ1を薄肉に、かつ、小径に形成することができ、胴部2内部の加熱手段の熱を加熱ローラ1の外周面に伝達しやすくすることができ、加熱ローラ1に巻回された定着ベルト6が定着可能な温度に達するまでの立ち上がり時間を短縮することができる。
【0060】
また、本実施形態による薄肉ローラ5を有する加熱ローラ1を備える定着装置13によれば、加熱ローラ1のジャーナル部3の根本部分3aの強度を十分に確保しながら加熱ローラ1を薄肉に、かつ、小径に形成することができ、定着装置13が定着可能な温度に達するまでの立ち上がり時間を短縮することができる。
【0061】
次に、本発明の一実施形態の薄肉ローラ5を有する加熱ローラ1の製造方法について説明する。
図5は、中空円筒状の胴部2と、胴部2の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部3と、胴部2とジャーナル部3とを連結する連結部4とを備えた薄肉ローラ5を備えた加熱ローラ1を製造する場合に、薄肉ローラ5の胴部2の両端部をスピニング加工により同時に縮径加工する場合を示すものである。
【0062】
まず、中空円筒状の素管29を用意し(図5(A))、この素管29の両端部内側の所定位置に、素管29と嵌合するリング状部材9を仮置きする(図5(B))。このリング状部材9の仮置きは、例えば、支持部材16の両端部にリング状部材9を保持した状態で、この支持部材16を素管29の内部に挿入することにより行われる。これにより、リング状部材9の端面のうち素管29の軸方向外側の端面9aが素管29の軸方向と直交する方向に形成されたリング状部材9を素管29の両端部内側の所定位置に配置することができる。
【0063】
次に、前記素管29の内周に、前記仮置きされたリング状部材9と係合するリブ10を形成する(図5(C))。このリブ10は、スピニング加工をする際の絞りローラ31を利用して、絞りローラ31を素管29の外周面に押し込むことにより溝17を形成し、素管29の内周に溝17に対応したリブ10を形成するものである。これにより、前記リング状部材9の胴部2の軸方向内側端面の外周縁9bが前記リブ10と係合するようになり、リング状部材9が素管29の軸方向内側に移動しないように固定することができるようになる。
【0064】
次に、前記素管29の両端部に絞りローラ31を押しつけ、素管29の軸方向外側から内側に向けて前記リング状部材9が固定された位置まで絞りローラ31を移動させ、素管29の両端部をリング状部材9に圧接するように縮径加工することにより、中空円筒状の胴部2及びジャーナル部3を形成するとともに、胴部2とジャーナル部3とを連結する連結部4を胴部2の軸方向と直交する方向に形成する。(図5(D))。
【0065】
これにより、素管29の両端部のジャーナル部3と、素管29の中央部の胴部2とを連結する連結部4は、胴部2の両端部をリング状部材9に圧接するように縮径加工して胴部2の軸方向と直交する方向に形成されるようになり、連結部4は、リング状部材9の端面9aに沿って胴部2の軸方向と直交する方向に形成されて、連結部4の外表面4aがジャーナル部3の根本部分3aの外周面3b及び胴部2の外周面2aとほぼ垂直になるように形成されるようになる。また、ジャーナル部3と胴部2との間の連結部の曲げ加工部分が曲率の小さなR形状に形成されるようになる。
【0066】
次に、前記リング状部材9を保持していた支持部材16を素管29から取り出し、NC旋盤18により前記ジャーナル部3のセンタ加工を行う(図5(E))とともに、ジャーナル部3の外周面を切削して(図5(F))、軸受けに合わせた所定の芯金寸法に形成する。また、胴部2となる素管29の外周面を切削して胴部2の肉厚を所定寸法に形成する(図5(G))。
【0067】
そして最後に、塗装ノズル19から胴部2の外周面2aをポリ四フッ化塩化エチレン塗装して定着ベルトとの接触による摩耗を防ぐための図示しない離型層を形成する(図5(H))とともに、胴部2の内部に図示しないハロゲンヒータ等からなる加熱手段を設けることにより、薄肉ローラ5を有する加熱ローラ1が完成する。
【0068】
本実施形態によれば、中空円筒状の素管29から一体に形成される加熱ローラ1の薄肉ローラ5の胴部2の両端部をスピニング加工により同時に縮径加工してジャーナル部3を形成する場合に、リブ10との係合によりリング状部材9が軸方向に移動しないように固定した状態で連結部4が素管29の軸方向と直交する方向に形成されるようになるので、連結部4の外表面4aがジャーナル部3の根本部分3aの外周面3b及び胴部2の外周面2aとほぼ垂直になるように形成され、また、ジャーナル部3と胴部2との間の連結部4の曲げ加工部分が曲率の小さなR形状に形成されるようになる。このため、連結部4の外表面4aとジャーナル部3の根本部分3aの外周面3bとの垂直度を確保するために、連結部4の外表面4a及びジャーナル部3の根本部分3aの外周面3bを切削加工した場合でも、その切削量は僅かですみ、切削後のジャーナル部3と胴部2との間の連結部4の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができる。
【0069】
したがって、肉厚の薄い素管を用いて加熱ローラ1の薄肉ローラ5の胴部2の両端部を縮径加工した場合でも、ジャーナル部3と胴部2との間の連結部4の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができ、ジャーナル部3の根本部分3aの強度を確保することができ、肉厚の薄い素管を用いることにより、切削加工に要する時間を短縮して生産性を向上させることができ、また、素管のコストを抑えることができる。また、前記リング状部材9により、ジャーナル部3の根本部分3aの強度をより高めることができる。
【0070】
また、ジャーナル部3をスピニング加工により縮径加工する際の絞りローラ31を利用して、絞りローラ31を素管29の外周面に押し込むことにより溝17を形成して素管29の内周に溝17に対応したリブ10を形成することができ、既存のスピニング加工の絞りローラ31を使用して簡易にリブ10を形成することができる。
【0071】
図6は、本発明の他の実施形態の薄肉ローラ5を示したもので、図3に示したリング状部材9が前記連結部4との接触側端面の内周縁に環状突部9cを有するものである。
【0072】
本実施形態によれば、リング状部材9の環状突部9cが連結部4と接触することによりリング状部材9と連結部4との接触面積がより大きくなり、ジャーナル部3の根本部分3aの強度をより高めることができる。
【0073】
なお、前記した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形することができる。
【0074】
例えば、前記薄肉ローラにおいて、前記連結部として、前記胴部の両端部近傍内側に取り外し可能に固定したリング状部材に圧接するように前記胴部の両端部を縮径加工して軸方向と直交する方向に形成した連結部を有するように形成することができ、この場合は胴部の内部のリング状部材は連結部を形成した後に取り除かれるようになり、前記実施形態のように縮径加工後の胴部の内部にリング状部材が配設された状態とならない。
【0075】
この場合でも、連結部をリング状部材に沿って形成することができ、連結部の外表面をジャーナル部の根本部分の外周面及び胴部の外周面とほぼ垂直になるように形成でき、また、ジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分を曲率の小さなR形状とすることができる。
【0076】
このため、連結部の外表面とジャーナル部の根本部分の外周面との垂直度を確保するために、連結部の外表面及びジャーナル部の根本部分の外周面を切削加工した場合でも、その切削量は僅かですみ、切削後のジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができ、ジャーナル部の根本部分の強度を確保することができる。
【0077】
したがって、肉厚の薄い素管を用いて胴部の両端部を縮径加工した場合でも、ジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができ、ジャーナル部の根本部分の強度を確保することができ、肉厚の薄い素管を用いることにより、胴部及びジャーナル部の外周面の切削加工に要する時間を短縮して生産性を向上させることができ、素管のコストを抑えることができる。
【0078】
また、前記薄肉ローラの製造方法において、中空円筒状の素管の一端部内側にリング状部材を固定する第1の工程、前記素管の一端部を前記リング状部材に圧接するように縮径加工して前記一方の連結部を軸方向と直交する方向に形成するとともに、前記中空円筒状の胴部の一端部及び前記一方のジャーナル部を形成する第2の工程、前記リング状部材を前記素管の他端部内側に移動させて固定する第3の工程、前記素管の他端部を前記リング状部材に圧接するように縮径加工して前記他方の連結部を軸方向と直交する方向に形成するとともに、前記胴部の他端部及び前記他方のジャーナル部を形成する第4の工程、前記縮径加工後に前記リング状部材を前記胴部内部から取り除く第5の工程、及び、前記縮径加工して形成したジャーナル部及び前記胴部の外周面に切削加工を施して所定寸法に形成する第6の工程を順次有するようにすることができ、この場合でも、連結部をリング状部材に沿って軸方向と直交する方向に形成することができ、連結部の外表面をジャーナル部の根本部分の外周面及び胴部の外周面とほぼ垂直になるように形成でき、また、ジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分を曲率の小さなR形状とすることができる。
【0079】
なお、前記縮径加工後にリング状部材を胴部から取り除く方法としては、リング状部材を縮径加工の加工力に耐えられるように構成しつつ、折りたたみ可能に構成することが考えられる。
【0080】
したがって、連結部をリング状部材に沿って軸方向と直交する方向に形成することができ、連結部の外表面をジャーナル部の根本部分の外周面及び胴部の外周面とほぼ垂直になるように形成できるので、連結部の外表面とジャーナル部の根本部分の外周面との垂直度を確保するために、連結部の外表面及びジャーナル部の根本部分の外周面を切削加工した場合でも、その切削量は僅かですみ、切削後のジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができ、ジャーナル部の根本部分の強度を確保することができる。このため、肉厚の薄い素管を用いて胴部の両端部を縮径加工した場合でも、ジャーナル部と胴部との間の連結部の曲げ加工部分の肉厚を十分に確保することができ、ジャーナル部の根本部分の強度を確保することができ、肉厚の薄い素管を用いることにより、胴部及びジャーナル部の外周面の切削加工に要する時間を短縮して生産性を向上させることができ、素管のコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施形態の薄肉ローラを有する加熱ローラを示す側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の加熱ローラを用いる定着装置を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態の薄肉ローラの胴部とジャーナル部との間の連結部を示す要部側断面図である。
【図4】(A)は本発明の一実施形態の薄肉ローラに用いられるリング状部材の正面図、(B)は前記リング状部材の側断面図である。
【図5】(A)〜(H)は本発明の一実施形態の薄肉ローラを有する加熱ローラの製造方法を説明する概略図である。
【図6】本発明の他の実施形態の薄肉ローラの胴部とジャーナル部との間の連結部を示す要部側断面図である。
【図7】従来の薄肉ローラを有する加熱ローラを示す側断面図である。
【図8】従来の薄肉ローラを有する加熱ローラの製造方法を説明する概略図である。
【図9】従来のスピニング加工により形成した薄肉ローラの胴部とジャーナル部との間の連結部を示す要部側断面図である。
【図10】従来のスエージ加工により形成した薄肉ローラの胴部とジャーナル部との間の連結部を示す要部側断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1、21 加熱ローラ
2、22 胴部
2a、22a 胴部の外周面
3、23 ジャーナル部
3a、23a ジャーナル部の根本部分
3b、23b ジャーナル部の根本部分の外周面
4、24 連結部
4a、24a 連結部の外表面
5、25 薄肉ローラ
6、26 定着ベルト
7、27 軸受け
8、28 寄り止め部
8a、28a 寄り止め部の先端面
9 リング状部材
9a リング状部材の端面
9b リング状部材の外周縁
9c リング状部材の内周縁の環状突部
10 リブ
11 定着ローラ
12 加圧ローラ
13 定着装置
14 トナー像
15 記録紙
16 支持部材
17 溝
18 NC旋盤
19 塗装ノズル
29 素管
30 コレットチャック
31 絞りローラ
A、B ダレ部
x1 連結部の曲げ加工部分の肉厚
x2 胴部の肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒状の胴部と、該胴部の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部と、前記胴部と前記ジャーナル部とを連結する連結部とを備えた薄肉ローラにおいて、
前記胴部の両端部近傍内側に、胴部の内周に設けられたリブに固定されたリング状部材を有し、そして、前記連結部として、前記リング状部材に圧接するように前記胴部の両端部を縮径加工して軸方向と直交する方向に形成した連結部を有することを特徴とする薄肉ローラ。
【請求項2】
前記リング状部材が、前記連結部との接触側端面の内周縁に環状突部を有することを特徴とする請求項1記載の薄肉ローラ。
【請求項3】
前記リング状部材と前記胴部とが同一材料で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄肉ローラ。
【請求項4】
中空円筒状の胴部と、該胴部の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部と、前記胴部と前記ジャーナル部とを連結する連結部とを備えた薄肉ローラにおいて、
前記連結部として、前記胴部の両端部近傍内側に取り外し可能に固定したリング状部材に圧接するように前記胴部の両端部を縮径加工して軸方向と直交する方向に形成した連結部を有することを特徴とする薄肉ローラ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薄肉ローラの胴部の内部に加熱手段を設けて加熱ローラとしたことを特徴とする薄肉ローラ。
【請求項6】
定着ローラと、加熱ローラと、該加熱ローラと前記定着ローラとの間に掛け回される定着ベルトと、該定着ベルトが掛け回された定着ローラに圧接される加圧ローラとを備えた定着装置において、
前記加熱ローラとして請求項5記載の薄肉ローラを有することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
中空円筒状の胴部と、該胴部の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部と、前記胴部と前記ジャーナル部とを連結する連結部とを備えた薄肉ローラの製造方法において、
中空円筒状の素管の両端部内側にリング状部材を仮置きする第1の工程、前記素管の両端部内周に前記リング状部材を固定するリブを前記素管の外周に溝を形成することにより形成する第2の工程、前記素管の両端部を前記リング状部材に圧接するように縮径加工して前記連結部を軸方向と直交する方向に形成するとともに、前記中空円筒状の胴部及び前記ジャーナル部を形成する第3の工程、及び、前記縮径加工して形成したジャーナル部及び前記胴部の外周面に切削加工を施して所定寸法に形成する第4の工程を順次有することを特徴とする薄肉ローラの製造方法。
【請求項8】
中空円筒状の胴部と、該胴部の両端部を縮径加工して形成したジャーナル部と、前記胴部と前記ジャーナル部とを連結する連結部とを備えた薄肉ローラの製造方法において、
中空円筒状の素管の一端部内側にリング状部材を固定する第1の工程、前記素管の一端部を前記リング状部材に圧接するように縮径加工して前記一方の連結部を軸方向と直交する方向に形成するとともに、前記中空円筒状の胴部の一端部及び前記一方のジャーナル部を形成する第2の工程、前記リング状部材を前記素管の他端部内側に移動させて固定する第3の工程、前記素管の他端部を前記リング状部材に圧接するように縮径加工して前記他方の連結部を軸方向と直交する方向に形成するとともに、前記胴部の他端部及び前記他方のジャーナル部を形成する第4の工程、前記縮径加工後に前記リング状部材を前記胴部内部から取り除く第5の工程、及び、前記縮径加工して形成したジャーナル部及び前記胴部の外周面に切削加工を施して所定寸法に形成する第6の工程を順次有することを特徴とする薄肉ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−220783(P2006−220783A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32525(P2005−32525)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】