説明

薄膜光センサを備えるタイタプレート

本発明は、タイタプレート(2)における反応室/ウェル(3)のアレイと、薄膜光センサ素子(12)の2次元アレイ(10)とを備えるサンプリング装置(1)に関する。センサアレイ(10)の感光素子(12)の各々は、化学反応および/または生体反応を検出するため、個々の反応室(3)の直下に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイタプレートにおける反応室/ウェルのアレイと、光センサ素子の2次元アレイとを備えるサンプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の特性を評価する手段として、例えばタイタプレートを含む多くの機器が用いられ、試料はスキャナによって評価される。
【0003】
こうしたスキャナは可動式ないし移動式スキャナシステムを用いているので、試料は定位置に固定でもいいし、あるいはスキャナに対して可動でもよい。
【0004】
どちらの場合にも多少複雑な機構が用いられるが、検査対象である試料アレイの表面積が大きいほど機構は複雑になり、コストも高くなる。
【0005】
欧州特許第1027591号明細書には、大規模な並列測定が可能であって、動的測定時でも試料の処理能力(サンプル・スループット)が大幅に増加した光学アレイシステムおよびマイクロタイタプレート読み取り装置が開示されている。検出用の検出器アレイは、例えばCCDアレイとして設けられ、全体をカバーする従来の光学系が、各反応部位を横切るレンズアレイと組み合わせられている。その結果、全検出対象範囲の画像が、マイクロタイタプレートの個々のウェル領域と同様に、正確な大きさで得られる。露光装置を設けることにより、光学素子を簡単に2つの用途に用いることができる。個々の画像領域(ウェル)は、望遠読み取り装置で取得され、CCDアレイに転送される。その他、マイクロタイタプレートとミニレンズアレイとを相対運動させて全体の測定値を読み取る不連続スキャン装置を用いることもできる。例えば、384個のウェルを持つマイクロタイタプレートを4箇所で順次スキャンするなどである。
【0006】
特開平6−324054号公報もまた、タイタプレートの読み取り装置を開示する。この装置では、光源から放出される光は、光ファイバを通してタイタプレートの一行の室に送られる。光ファイバからの放射光は、反応室を透過して、その背面に位置する検出システムで取得・分析される。行状に配置された光ファイバの端部は、ある一つの室の行を基準に位置付けられる。こうして発光素子を反応室の各行の上に位置合せする度毎に読み取り動作を繰り返すことによって、タイタプレート全体がスキャンされる。
【0007】
これら従来の装置においては、読み取り装置とタイタプレートとは別体であり、読み取り装置の光検出器が反応室から所定距離だけ離れて配置されるために、散乱損失が生じると共に室同士が影響を及ぼし合う可能性があった。また、読み取り装置は、正確に配置されなければならず、設置する光学系も厳密に制御される必要があった。そのうえ、放射強度を測定するために、さらに別の装置が必要とされ、その使用に際して読み取り装置を汚染する危険性があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、試料評価のための移動機構を必要とせずに、試料アレイ面の大きさが限られてしまうという問題を回避し、より有効な試料評価を引き出すことが可能なサンプリング装置を提供することにある。本発明のもう一つの目的は、常に再現可能な結果を検出できるように、評価プロセスを単純化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係るサンプリング装置は、タイタプレートにおける反応室/ウェルのアレイ、および、薄膜光センサ素子の2次元アレイを備え、2次元アレイの感光素子の各々は、化学反応および/または生体反応を検出するため、個々の反応室の直下に配置される。
【0010】
本発明によれば、上述のスキャナでは必要とされたような、試料を評価するための移動手段を全く用いる必要がなくなる。
【0011】
このような試験方法や他の光学装置に関する具体的な利点は、試験面、すなわちタイタプレートの面積に関する制限が一切ないということにある。
【0012】
タイタプレート中の各室に直接割り当てられる感光素子の数は、反応室の数によって決まるので、試験面を2次元的に拡張することは、少なくとも制限を強いるという点には関連しない。
【0013】
ただし、さらに重要な利点がもう一つある。
【0014】
感光素子を直接割り当てること、つまり、感光素子をそれぞれの反応室の直下に配置することは、さもなければ装置に固有の光学系によって反応室とセンサとの間で必然的に生じるであろう、そしてそのための余裕を見込んでおかなければならない光学損失が全くないことを意味する。
【0015】
薄膜光センサ素子は、2つの電極層に挟まれた有機半導体を基礎とする光活性層からなる。
【0016】
光電子アレイは、能動的ないし受動的マトリクスアレイを構成する複数の行と列からなる。
【0017】
このマトリクスアレイは、好ましくは、ピクセル、行、または列に基づいて読み出される。
【0018】
本発明の一実施形態では、サンプリング装置は、2次元アレイ状に構成された光源を具備している。この光源は、ピクセル、あるいは行ないし列に基づいて、反応室/ウェルの面全体を照らすことができる。
【0019】
サンプリング装置はまた、薄膜光センサ素子の2次元アレイおよび/または光源を制御する制御部を備えていてもよい。
【0020】
なお、制御部が有線または無線で、コンピュータ、PDA、携帯電話、またはこれらに相当する装置とデータのやり取りを行うことができるようにすれば、特に有利である。
【0021】
薄膜光センサ素子の直線状配置は、2次元センサアレイの特殊な配列の例である。直線状配置においては、必要な電気的配線のせいで利用可能なスペースが制限されてしまうということがなく、センサ素子を極めて高度に集積化できるという特別な利点がある。
【0022】
タイタプレートは、通常は、規則正しい幾何学的構造をとるように反応室ないしウェルが配置された平坦な支持層によって形成されていることが好ましい。反応室の深さは、支持層の厚みよりも浅く、その結果として、第2の平坦面上には反応物質を反応室内に導入するために開口が設けられ、これに対向する第1の平坦面は、殆どが平滑な、連続した一面である。ここで、請求項に記載されたように、光電子センサアレイの感光素子をタイタプレートの第1の平坦面上に配置すれば、反応室、特に反応室の底部と感光素子との距離が短いことから、感光素子は確実に電磁波に強力に接する。この距離が短いということにより、室内で生じる、または室を透過してくる電磁波は、可能な限り感光素子に直接作用し、タイタプレートの媒体との接合部分で起きる回折や反射によって、または外部機器によって、測定結果が弱められたり歪んだりしないで済む。光電子センサアレイは、各反応室が光電子センサアレイの感光素子の1つと正確に対応して協働するように設計されているため、非常に高速で、信頼性の高い室の反応性評価が可能となる。
【0023】
タイタプレートは、反応室と光センサ素子との間の部分において、少なくとも室内の化学反応によって放出される光のスペクトル領域に対応するスペクトル領域で透明または半透明となっている。このスペクトル領域は、可視域だけでなく赤外および紫外域を含んでいてもよい。いずれにしろ、感光素子は、室内の反応によって放出される電磁波を可能な限り効率よく検出し、電気信号ないし各種の電気的特性変数に変換するものでなければならない。これは、反応室を透過して室内の反応によって弱められる光に対しても同様である。
【0024】
光電子センサアレイの感光素子が、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトレジスタからなる群より選ばれた素子で構成されると、非常に有利な実施例が得られる。これは、感光素子のスペクトル効率が、検出対象の電磁波に対し、全体として選択的に最適化できるからであり、特に有機半導体材料からなる場合は、例えばバンドギャップ技術によって最適化される。半導体からなる光電子感光素子を用いる利点は、極めて小さなエネルギーで入射電磁波が検出できること、またバイアス電圧を供給する必要なしに入射電磁波によって電気的出力信号が発生するように駆動部分が構成されていることである。
【0025】
とりわけ、有機半導体は、使用に際しエネルギー効率が良く、環境に優しいという別の利点を持つ。具体的には、有機半導体部品の製造には、例えば高温処理や高圧チャンバなどのエネルギーを大量に消費する工程が不要である。さらに、例えばフォトリソグラフィのような材料除去工程を含んだ複雑な工程が一切必要ない。具体的には、有機半導体部品は、アディティブ工程、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、テンプレート印刷、またはスタンプ印刷などの印刷方法によって製造され、厚みがサブミクロン単位の薄膜であるために試薬が極めて少量で済む。
【0026】
廃棄処理に関しては、有機半導体部品には、複雑な廃棄処理が不要であるという利点がある。従って、有機半導体部品を含んだ装置は、製造および廃棄のコスト、そして環境問題の面から、使い捨て用品としての使用に適している。これにより、本発明における生物的または化学的反応検査用のサンプリング装置は、問題なく廃棄できる安価なサンプリング装置を提供するという重要な利点をもち、本発明における新規で汚染されていないサンプリング装置は、あらゆる測定に利用され得る。
【0027】
しかしながら、請求項の記載は、有機半導体材料からなる感光素子だけに限定されない。具体的には、無機半導体材料や、これらの複合材料からなる感光素子も含まれる。
【0028】
その他の実施形態では、光源は、複数の発光素子により構成される。光源は、タイタプレートの試料用開口の上部に配置されることが好ましく、各素子は、電磁波を主に室方向に放射し、それにより測定に歪みをもたらす隣接室への望ましくない照射が防止される。
【0029】
その他の実施形態では、発光素子は、発光ダイオードである。この種の半導体部品は、放射光スペクトルを光センサのスペクトル感度や、反応室で予想される反応に対して最適に適合できるという利点がある。請求項に記載されたサンプリング装置の一形態では、室内における反応強度または反応経過は、室を透過した後の光の減衰を評価することにより測定される。透過光を測定する利点は、明確な基準値を用いることができるように、サンプリング装置が反応開始前に調整できることにある。
【0030】
2次元アレイの特殊な例では、光源が線形に配置された発光素子で構成される。
【0031】
好ましい実施形態では、発光ダイオードは有機半導体材料からなる。
【0032】
その他の実施形態では、少なくともタイタプレートの所定の部分は、ガラスまたは樹脂材料からなる群より選択される材料からなる。樹脂材料としては、例えば、PMMA,PC,PP,PS,PET、PDMS,COCなどが含まれる。この場合、タイタプレートをとりわけ安価に形成できることに加えて、廃棄しても環境問題を引き起こさないという利点がある。また、一実施形態では、タイタプレートは透明または半透明である。この場合の透明性は、必ずしも可視であるスペクトル帯域を含んでいる必要はなく、基本的に、反応室内の物理化学的ないし生物学的反応に関連する光学スペクトル範囲さえ透過対象とされていればよい。透明ないし半透明のタイタプレート、少なくともその電磁波が通過する部分は、光センサを、反応室内の物質や反応自体によって損害を被る危険を伴うことなく、反応室近傍に配置できるというさらなる利点を持つ。ユーザが容易に反応室内の反応を制御し、モニタできるというのもまた、透明ないし半透明のタイタプレートの利点である。
【0033】
第1の電極アレイの電極が透明または半透明であることも、設計上の利点である。感光素子は、光量子に反応する材料で形成され、2つの電極層、つまり第1および第2の電極アレイの間に配置されている。光は、タイタプレート、具体的には試料室の直下の部分を一旦通過すれば、光量子反応材料に作用できるように、第1の電極アレイも通過するはずである。例えば、光量子反応層の外へ電荷担体を移動させるには、できるだけ表面積が広い電極を用いるのが有利である。また、放射線の透過が妨げられないようにするには、電極が、少なくとも関連するスペクトル範囲において透明または半透明であれば有利である。電極は、金属薄膜層で形成されてもよいし、例えば有機材料からなるTCO(透明導電性電極)を用いることもできる。
【0034】
以下、添付図面に示される実施例を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図面の簡単な概略を以下に示す。
【0036】
【図1】a)−d)本発明で提示されるサンプリング装置の詳細を表す図である。 a)一実施形態における本装置の概略構成図である。 b)本発明で提示される装置の詳細を表す図である。 c)反応室と感光素子の詳細を表す図である。 d)図1c)に示される切断線における切断面を表す図である。
【図2】本発明により提示されるサンプリング装置の他の実施の形態を表す図である。
【図3】発光および吸収測定により反応室内の反応強度を測定する評価装置を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
まず、同一の構成要件は、異なる実施形態においても同一の符号を付して同一の名称で示され、説明全体にわたる開示内容は、同一符号・同一名称を持つ同一の構成要件を意味するものに関しては、相互に入れ換えることができる。また、上部、下部、側部などの説明上選択される位置は、当該参照図面に関連づけられており、別の位置が説明される際には新しい位置を意味するものとして置き換えることができる。図示され説明された相異なる実施形態における個々の特徴または特徴の組み合わせは、その権利において独立の発明的解決策または発明が提案する解決策であると解される。
【0038】
具体的説明のうち、数値による限定範囲は全て、いかなる部分的範囲も包含するものである。例えば、1から10までの範囲とは、下限である1から始まって10を上限とする部分的範囲の全てを含むことを意味する。すなわち、1またはそれより大きな数値を下限として始まり、10またはそれ未満の数値で終わる、例えば、1から1.7、3.2から8.1、あるいは、5.5から10などの全ての部分的範囲を意味するものと解される。
【0039】
図1aは、本発明におけるサンプリング装置1の概略構成を示す。サンプリング装置1は、タイタプレート2、幾何学的に配列された複数の反応室3、および複数の電極4を備えている。
【0040】
図1bは、本発明におけるサンプリング装置1の詳細を示す。タイタプレート2は、幾何学的に配列されることが望ましい複数の反応室3ないしウェルを構成し、反応室は、第2の平面5上の開口により外部と通じている。また、第2の平面5と対向する第1の平面の上には、感光素子からなる光電センサアレイが配列される。薄膜光センサ素子は、第1の電極アレイ6と第2の電極アレイ7の2つの電極層に挟まれた光活性層、具体的には、光量子に反応する材料によって形成される。光活性層は、ポリフルオレン、全てのPPV(ポリ(p−フェニレンビニレン))類、フタロシアニン、全てのP3XT類(Xはヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル)、PPP(ポリ−p−フェニレン)、ラダー型PPP類、ポリピロールからなる群から選択した材料により形成することができるが、この一群に限定されるものではない。第1および第2の電極アレイ6、7の電極8、9は、ストリップ形状に配置され、反応室領域において長手方向が相対的に、好ましくは90度、回転した位置関係にある。このように配置することで、第1および第2電極アレイの電極が交差する部分が格子状に配列され、光活性層、具体的には光量子に反応する材料は、少なくともこの電極同士の交差位置に配される。第1および第2電極アレイの電極は、いわゆる行電極と列電極とを構成し、選択的に駆動された1つの行電極と1つの列電極とによって、反応室の直下の感光素子の1つが正確に読み出される。従って、全ての交差位置を水平走査すると、光電子センサアレイ10の全ての感光素子が走査できる。
【0041】
光電子センサアレイ10の感光素子は、能動的マトリクスアレイとして構成されていることが好ましい。受動的マトリクス方式の場合、素子を読み取る駆動回路がセンサアレイの外側に設置されるため、各感光素子が必要とする空間は少なくて済み、素子密度を高くすることができるが、読み出し時に電極間のクロストークが起きて信号が歪むおそれがある。
【0042】
能動的マトリクスアレイ方式の場合、感光素子毎に1つ以上のトランジスタが配設されており、これらが選択的に駆動されて、十分大きな信号を読出し電極、または読出し線に送出することで、クロストークの危険性が低減される。能動的マトリクスアレイは、感光素子を小さくすることによる高解像度化、ピクセル数の増大化の双方に関して最適化を図ることができる。
【0043】
本実施形態では、全ての行電極及び列電極は、端子領域11に向かって延び、端子領域11において評価装置と接続されている。一実施形態においては、制御部も設けてよい。制御部は、タイタプレート2の表面または内部に配設され、行電極及び列電極を駆動制御して光センサ素子の読み出しを行うと共に、反応に比例した測定値を出力端に送るように構成されている。
【0044】
図1cは、図1bの詳細を示す。感光素子12は、反応室3の直下、第1の平面上に配設され、第1の電極アレイ6の電極8と第2の電極アレイ7の電極9との間に光量子反応材料13が挟まれた構造をしている。光量子反応材料は、各反応室の一部の直下にのみ設けられてもよいし、光活性層として、第1および第2の電極アレイ間に、タイタプレートの全面にわたって設けられてもよい。光活性層は、一実施形態においては、光が照射される部分においてのみ電気的に導通する、ないし、光が照射された部分にのみ電気的反応を誘起するという利点がある。そのため、光活性層は、電極アレイ間に、電気的分離手段を必要とすることなく設けることができる。光活性層への入射光は、光活性層13および電極8、9で構成された感光素子の電気抵抗を変化させ、例えば伝導率ないし出力信号の急峻な変化をもたらす。特性変数におけるこの変化は、評価装置によって検出され、個々の反応室における反応強度に対する測定結果が引き出される。
【0045】
図1dは、図1cに示した詳細図の断面を表している。反応室3は、タイタプレート2の中に設けられ、その内部は、第2の平面5の開口により外部と通じている。タイタプレートの第1の平面14上には、第1の電極アレイ6の電極8、光量子反応材料13、および、第2の電極アレイ7の電極9によって構成される感光素子12が配設されている。そして、反応材料または試料15が反応室3の内部に取り入れられ、室内で生化学的反応が起きる。タイタプレートを用いて生化学的反応を引き起こす方法については、当業者にとって周知であり、ここでは詳述しない。
【0046】
反応室3での反応によって、いくつかの効果がもたらされるが、それらは、電磁波の放出、または反応室を透過する電磁波の減衰によって特徴づけられる。電磁波は、光学的可視域、この場合は通常、光と呼ばれるスペクトル範囲にあることが望ましい。しかし、実際には、例えば赤外線や紫外線などの可視域外の光学範囲もまた包含される。反応室3内で反応が起きて光16が放出されると、この光は、感光素子12の方向を含む空間的に全方向に放散される。ただし、反応室3の周縁に対する設計上の特徴により、この光は隣接室での測定を阻害しないよう保証されている。電磁波16が光量子反応材料13を透過するには、タイタプレート2と第1の電極アレイ7の電極8とが、少なくとも光16の焦点範囲で、また、少なくとも所望のスペクトル範囲内において、透明ないし半透明でなければならない。タイタプレート2ないしタイタプレートのうち焦点範囲に位置する部分は、例えばPMMA、PC、PP、PS、PET、PDMS、COCのような透明な樹脂から形成されるが、その他、ガラスを用いることもできる。第1の電極アレイの電極は、金属薄膜層、例えば半透明で良導体である厚み30nmの金薄膜として形成される。また、電極は、TCO(透明導電膜)として構成されることが好ましく、その場合は容易に安価に製造できるという利点がある。TCOからなる電極は、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、スタンプ印刷などの印刷工程によって製造され、そのため、エネルギー多消費型の製造工程を必要としない。光量子反応材料は、好ましくは有機半導体材料からなり、第1の電極アレイ7の電極にも有機材料が用いられることから、光電子センサアレイの各感光素子12は、印刷工程によって、容易に安価に製造することができる。従って、光電子センサアレイは、プレート面上に印刷することでタイタプレート2に付設することが可能である。有機材料の製造中、使用中、および廃棄時における利点については、上記のように様々な点について概説されている。
【0047】
タイタプレート2、具体的には第2の平面14の材料は、電気的導電性を持たないため、第1の電極アレイ6の電極8は、絶縁物を付加する必要がなく、第1の平面14上に直接付設することができる。また、感光材料13は、光だけに活性化された部分の電気的特性変数を変化させるので、第1の電極アレイ6に直接付設されてよい。光量子反応材料13の上に第2の電極アレイ7を付設する場合もまた同様である。このような実施形態では、光電子アレイをタイタプレートに容易に安価に付設することができ、その結果、反応室内部での生化学的反応を検出するサンプリング装置は、高集積化され、信頼性が高く、特に使い捨てするのに適したものとなる。インクジェット印刷やスクリーン印刷のような従来より知られた印刷方法は、感光素子の製造に特に適しており、センサアレイは、例えば連続印刷工程によって、タイタプレート上に容易に安価に印刷することができる。
【0048】
電磁放射の測定は、発光測定の原理に基づいて行われ、ここでは、本発明のサンプリング装置が化学ルミネッセンスによる反応強度の測定に用いられる。このような測定方法においては、試料15と感光素子12との間の距離が短いことは、格別の利点である。とりわけ、低濃度の化学ルミネッセンス測定においては、光はわずかな量しか生起しないので、発生する光量子をできるだけ高い比率でセンサへ入射させることが極めて重要である。本発明のアレイによれば、化学ルミネッセンスの測定を最高の感度で行うことが可能であるから、この比率は最大限上げられる。
【0049】
一実施形態において、試料は、反応室を透過する電磁波の吸収測定による反応室内の反応強度の検出にも用いられる。この目的のため、光源は、第2の平面5の上に設置される。光源は複数の発光素子で構成され、各素子が反応室の上にそれぞれ配置されている。この構成に基づく実施例を、図3に示す。
【0050】
とりわけ個々の素子について、遮られることなく反応室と通じるように、また汚損のおそれがないように、光源は、タイタプレート2の上に配置されてもよいし、タイタプレートと一体化されてもよい。個々の素子は、電磁波を殆ど反応室3の内部に向けて放出するので、隣接室への影響が防止される。また、光源は、例えば個々の反応室を選択的に照らすことができるように、タイタプレートがその内部に設けられている装置、ないし、タイタプレート上に設けられている装置の内部に設けられていてもよい。
【0051】
図2は、本発明のサンプリング装置1のもう一つの実施形態を示している。この実施形態では、タイタプレート2は直線状に配列された反応室3を有し、感光素子も反応室の直下に直線状に配置されている。また、感光素子を駆動して読み取りを行うために、行電極6と複数の列電極である第2の電極アレイ7とから構成された、一次元電極アレイが設けられている。感光素子は、第1の電極アレイが第2の電極アレイと交差する位置に配置され、感光材料または光量子反応材料が2つの電極層に挟まれて構成されている。光量子反応材料は、電極が交差している領域のうちの特定部分に設けられてもよいし、2つの電極層間においてほぼ全面に配設されてもよい。電極は、端子領域11に接続される。また、制御部も設けられており、電極を駆動し、反応に比例する処理信号を出力端に送出するように構成されている。
【0052】
図3は、タイタプレートの室内の反応を評価する装置の一例を示している。サンプリング装置は、複数の反応室3を備えるタイタプレート2を含んで構成されている。本実施形態では、制御部17が設けられ、感光素子の駆動制御と、端子領域18にあるインターフェイスに送出される反応強度に比例する信号の供給が行われる。端子領域18は、電気エネルギーを送信するインターフェイスを具備することもできるが、ここでは、端子領域18に結合装置19を結合して、サンプリング装置をデータ処理装置20に接続している。ただし、本発明におけるサンプリング装置、具体的には制御部17は、無線でデータ処理装置20に接続されることも可能である。データ処理装置20は、パーソナルコンピュータ、PDA、あるいは遠隔送信を行うデータ通信装置であってもよい。
【0053】
発光測定に加えて吸収測定を行うことも必要な場合は、光源21が反応室3の上に配置される。光源は、いくつもの発光素子からなるアレイから構成されることが好ましく、その場合に、各発光素子は、電磁波が殆ど反応室方向、つまり、その後方の感光素子の方向に放射されるように、開口または反応室の上に配置される。一例として、発光素子もまた制御部に駆動される。同図には、光源21のレイアウトの概略しか示されてないが、光源は、生成される電磁波が殆ど反応室の方向に放射されるように、タイタプレート上に配置されても一体化されてもよい。
【0054】
例示した実施形態は、サンプリング装置の種々の変形例を表しており、本発明は、具体的に説明されたこれらの変形例に特に限定されるものではなく、変形例同士を組み合わせて用いることも可能であり、当該技術分野における当業者が開示内容を参照して成し得る範囲で変形可能である。従って、記載し図示した変形例の個々の要素を組み合わせて得られる全ての変形例が実施可能であり、このような想到し得る変形例は全て、本発明の範囲内に包含される。
【0055】
図2は、サンプリング装置自体の単独の実施形態であって、他の実施形態を説明しているが、図1a−図1dと同一の構成要件には同一の符号を付している。説明の重複を避けるため、より詳細な説明は、上述の図1a−図1dに関する記載を参照されたい。
【0056】
なお、サンプリング装置の構成をより明確に理解するため、本装置とその構成要素は、ある程度本来の縮尺から外れたり、拡大・縮小されたりして図示されている。
【0057】
本発明の目的は、本発明独自の解決手段に内在されており、明細書の記載中に見い出すことができる。
【0058】
とりわけ、図1から図3に示した発明の対象に関する各実施形態は、それ自体が本発明独自の解決手段を構成する。本発明の目的とこれに関連する解決手段は、これらの添付図面に対する詳細な説明において見い出される。
【符号の説明】
【0059】
1 サンプリング装置
2 タイタプレート
3 反応室
4 電極
5 第2の平面
6 第1の電極アレイ
7 第2の電極アレイ
8 電極
9 電極
10 光電子センサアレイ
11 端子領域
12 感光素子
13 光量子反応材料、感光材料
14 第1の平面
15 反応材料、試料
16 電磁波
17 制御部
18 端子領域
19 結合装置
20 データ処理装置
21 光源
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイタプレート(2)における反応室/ウェル(3)のアレイ、および、
薄膜光センサ素子(12)の2次元アレイ(10)を備え、
前記センサアレイ(10)の感光素子(12)の各々は、化学反応および/または生体反応を検出するため、個々の前記反応室(3)の直下に配置される、サンプリング装置。
【請求項2】
前記薄膜光センサ素子(12)は、2つの電極層(6、7)間に挟まれた有機半導体を基礎とする光活性層(13)を含むことを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項3】
この光電子アレイ(10)は、能動的マトリクスアレイを表す行および列から構成されることを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項4】
この光電子アレイ(10)は、受動的マトリクスアレイを表す行および列から構成されることを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項5】
このマトリクスアレイ(10)は、ピクセル、行、または列に基づいて読み出されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項6】
前記反応室/ウェル(3)を、その全面、行、列、およびピクセルに基づいて照射することが可能なように構成される2次元アレイ形状の光源(21)を具備する
ことを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項7】
前記薄膜光センサ素子の2次元アレイ(10)および/または前記光源(21)を制御する制御部(17)を備えることを特徴とする請求項6に記載のサンプリング装置。
【請求項8】
前記制御部(17)は、有線または無線による接続を通じてコンピュータ、PDA、携帯電話、または、これらに相当する装置とデータ交換を行うことを特徴とする請求項7に記載のサンプリング装置。
【請求項9】
前記センサアレイ(10)は、前記薄膜光センサ素子(12)が直線配列する形状に設けられることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のサンプリング装置。
【請求項10】
前記センサアレイ(10)の薄膜感光素子(12)は、前記タイタプレート(2)の第1の平面(14)上に配設されることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のサンプリング装置。
【請求項11】
前記薄膜感光素子(12)は、フォトダイオード、フォトトランジスタ、およびフォトレジスタからなる群より選択される
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のサンプリング装置。
【請求項12】
前記光源(21)は、複数の発光素子により構成されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のサンプリング装置。
【請求項13】
前記発光素子は、発光ダイオードからなることを特徴とする請求項12に記載のサンプリング装置。
【請求項14】
前記タイタプレート(2)は、少なくとも所定の部分が、ガラスおよび樹脂材料からなる群より選択される材料で形成されることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のサンプリング装置。
【請求項15】
前記第1の電極アレイ(6)の電極(8)は、透明または半透明であることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のサンプリング装置。

【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−509577(P2010−509577A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535627(P2009−535627)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009682
【国際公開番号】WO2008/055680
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(509130170)ナノアイデント テクノロジーズ アクチェンゲゼルシャフト (8)
【Fターム(参考)】