説明

薄膜剥離装置

【課題】薄膜剥離における残渣の完全な除去と位置精度の高い薄膜の剥離を実現すること
が可能な剥離方法を備えた薄膜剥離装置を提供する。
【解決手段】接触部位7と除去部位8とを有したユニット4が、ステージ6或いはユニッ
ト可動部位5の移動によって基板1上に形成された薄膜の内の除去される薄膜2aに対応
する剥離位置に移動し、薄膜の内の除去される薄膜2aだけを剥離し、残渣受口9により
残渣を完全に除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜剥離装置に関し、特に剥離した残渣の除去に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機膜の剥離方法としては、ウエットエッチング法やドライエッチング法があり
、それぞれ薬剤やプラズマによって剥離している。また、低温液体中での超音波を使用し
た剥離方法も提供されている(例えば、特開平4−28219)。
【0003】
【特許文献1】特開平4−28219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の剥離方法のウエットエッチング法では、必要な有機膜まで腐食さ
れる問題があり、ドライエッチング法では、残渣の問題や基板へのダメージを与える恐れ
がある。また、低温液体中での超音波を使用した剥離方法が提供されているが、基板への
ダメージを与える恐れがある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みなされたもので、薄膜剥離における残渣の完全な除去と位
置精度の高い剥離が可能な薄膜剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の薄膜剥離装置は、ステージと、前記ステージ上に載置され、表面に薄膜が形成
された基板と、前記薄膜に物理的に接触し、前記薄膜を剥離する接触部位および前記薄膜
が剥離されて生じた残渣を除去する部位を有するユニットとを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の薄膜剥離装置によれば、接触部位と除去部位からなるユニットが、剥離しよう
とする薄膜に物理的に接触することで、剥離しようとする箇所の薄膜部分のみを剥離し、
残渣を除去部位により、吸引や溶媒を使用して除去することが可能となる。よって、残渣
の完全な除去と必要な薄膜部分にダメージを与えずに薄膜を剥離することが可能となる。
【0008】
また、前記ユニットを、前記基板に対して移動させる可動部位を有することが望ましい

【0009】
また、前記ステージが、前記ユニットに対して移動することが望ましい。
【0010】
また、前記接触部位が、前記薄膜の剥離を行う前記基板面に対して水平方向に移動する
機能と、前記接触部位が、前記薄膜の剥離を行う前記基板面に対して、前記接触部位に備
えられた軸を中心に回転する機能と、前記接触部位が、前記薄膜の剥離を行う前記基板面
に対して、鉛直方向に移動する機能とを備え、前記三つの機能のうち、少なくとも1つの
機能を有していることが望ましい。
【0011】
前述のようにすれば、ユニット或いはステージが可動であることで、基板と接触部位と
が相対的に移動し、不必要な箇所の薄膜を擦り取ることが可能となり、さらに確実な剥離
を行うことができる。
【0012】
また、前記ユニットは、前記薄膜を剥離する際に生じた残渣を吸引して除去する機能を
有することが望ましい。
【0013】
また、前記ユニットは、前記薄膜を剥離する際に生じた残渣を前記薄膜を溶解させる溶
媒を滴下して除去する機能を有することが望ましい。
【0014】
また、前記接触部位は、前記薄膜を溶解させる溶媒を滴下する機能を有することが望ま
しい。
【0015】
前述のようにすれば、薄膜剥離における残渣の完全な除去を行うことが可能となる。
【0016】
また、前記ユニットは、前記薄膜を剥離する際に生じた残渣を、前記薄膜を溶解させる
溶媒を滴下して除去する機能を有し、且つ、前記接触部位は、前記薄膜を溶解させる溶媒
を滴下する機能を有することとしてもよい。
【0017】
また、前記薄膜が、少なくとも1層の発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素
子を構成する有機薄膜であることとしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の薄膜剥離装置にかかる実施例を図面を用いて説明する。本発明の薄膜剥
離装置は、剥離部位および剥離が必要な薄膜の位置に精度良く薄膜剥離部位を移送させる
ステージを有するユニットがあり、確実な剥離を行うための薄膜に接触する接触部位と残
渣を除去する除去部位を持ち合わせている。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例について、以下図により説明する。図1は、本発明の薄膜剥離装置の構
成図である。1は、基板、2aは、除去される薄膜、2bは、除去されない薄膜、3は基
板サイズに対応した駆動や位置の制御装置、4は、制御装置3内の可動部位により移送さ
れる薄膜を剥離および除去するユニット、5は、ユニット4を移送させる制御装置3内に
備えた可動部位、6は、基板1を移送させるステージである。
【0020】
図2(a)および図2(b)は、薄膜を剥離および除去するユニットの断面図および底
面図である。7は薄膜に接触する接触部位であり、8は除去部位である。9は除去部位か
らの残渣を受ける残渣受口になっており、14のフィルタを備えている。
【0021】
図3はユニット内の接触部位の断面図である。
10は接触部位を回転させる機能および鉛直方向へ稼動させる機能を有する回転可動軸
であり、11は接触部位を水平方向へ稼動させる可動軸である。
【0022】
ここで薄膜の除去方法について基板1に薄膜形成された除去される薄膜2aの除去を一
例として説明する。
ユニット4が、可動部位5またはステージ6によって、基板1に薄膜形成された除去さ
れる薄膜2aに対するようにその上部に移送される。なお、本例では、ユニット4の移送
は、可動部位5で行なわれる例で説明する。可動部位5によって、移送されたユニット4
は、回転可動軸10または可動軸11によって稼動(揺動)された接触部位7によって、
除去される薄膜2aが剥離される。剥離の際の残渣は、除去部位8によって除去され、残
渣受口9に溜まる。
【0023】
図4は、剥離の際、溶媒を用いた時のユニット4の断面図である。
12は残渣除去の際の溶媒噴出ノズル、13は剥離する際の溶媒噴出ノズルである。必
要に応じて、除去される薄膜2aを剥離する際に溶媒が溶媒噴出ノズル13から噴出し、
接触部位7による剥離を助長する。また必要に応じて、残渣除去の際に溶媒が溶媒噴出ノ
ズル12から噴出し、除去部位8による除去を助長する。
【0024】
なお、本例では、ノズルは2本用意したが、同溶媒を使用する場合など、状況に応じて
、1本での剥離および除去が可能であり、3本以上であってもよい。
【0025】
前述した実施例の薄膜剥離装置を用い、超音波洗浄したガラス基板上の全面に50nm
のPEDOT膜が形成された基板の場合を例として説明する。
ステージ6上にガラス基板上の全面に50nmのPEDOT膜2が形成された基板1を
設置し、薄膜が形成された面の面積の半分を剥離する狙いで、ステージ6および可動部位
5により基板1を移送する。接触部位7を薄膜2aへ接触させ、回転軸10により接触部
位7が回転し、薄膜2aを剥離し、同時に除去部位8により剥離した薄膜2aを除去する
。除去された薄膜2aはユニット4に設けられた残渣受口9内のフィルタ14によって捕
らえられる。
【0026】
薄膜2aが剥離された基板1を、段差計により膜厚測定を行う。基板1上の剥離されて
いない薄膜2bの膜厚は50nmであり、剥離された薄膜2aの残渣は3nmであった。
段差計の精度が5nmなので、薄膜2aは本装置によって、完全に剥離されている。
また、基板1上の剥離された領域の面積は、基板1の面積の半分であり、剥離位置精度
も高い。剥離したガラス基板1をAFMで観察すると、平均表面粗さは剥離前後で変化は
なく、また透過率も変化がなかったため、基板へのダメージはないと判断できる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の薄膜剥離装置では、薄膜剥離プロセスを有する様々な分野での利用が考えられ
る。例えば、有機ELパネル製造においても、電極コンタクト部分の不要な有機膜の剥離
に利用できる。剥離後の残渣を吸引によって除去することで、地球環境に悪い影響を与え
る薬剤を使用しなくてよく、プロセス簡略化・地球環境・コストの面から優位である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の薄膜剥離装置の構成図。
【図2】薄膜を剥離および除去するユニットの断面図および底面図。
【図3】ユニット内の接触部位の断面図。
【図4】剥離の際、溶媒を用いた時のユニットの断面図。
【符号の説明】
【0029】
1…基板、2a…剥離が必要な薄膜、2b…剥離が不必要な薄膜、3…制御装置、4…
ユニット、5…ユニット可動部位、6…ステージ、7…接触部位、8…除去部位、9…残
渣受口、10…接触部位可動軸、11…可動軸、12…残渣除去用溶媒噴射ノズル、13
…剥離用溶媒噴射ノズル、14…フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージと、
前記ステージ上に載置され、表面に薄膜が形成された基板と、
前記薄膜に物理的に接触し、前記薄膜を剥離する接触部位および前記薄膜が剥離されて
生じた残渣を除去する部位を有するユニットとを有することを特徴とする薄膜剥離装置。
【請求項2】
前記ユニットを、前記基板に対して移動させる可動部位を有することを特徴とする請求
項1記載の薄膜剥離装置。
【請求項3】
前記ステージが、前記ユニットに対して移動することを特徴とする請求項1記載の薄膜
剥離装置。
【請求項4】
前記接触部位が、前記薄膜の剥離を行う前記基板面に対して水平方向に移動する機能と
、前記接触部位が、前記薄膜の剥離を行う前記基板面に対して、前記接触部位に備えられ
た軸を中心に回転する機能と、前記接触部位が、前記薄膜の剥離を行う前記基板面に対し
て、鉛直方向に移動する機能とを備え、前記三つの機能のうち、少なくとも1つの機能を
有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄膜剥離装置。
【請求項5】
前記ユニットは、前記薄膜を剥離する際に生じた残渣を吸引して除去する機能を有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の薄膜剥離装置。
【請求項6】
前記ユニットは、前記薄膜を剥離する際に生じた残渣を前記薄膜を溶解させる溶媒を滴
下して除去する機能を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の薄膜
剥離装置。
【請求項7】
前記接触部位は、前記薄膜を溶解させる溶媒を滴下する機能を有することを特徴とする
請求項1〜6のいずれか一項に記載の薄膜剥離装置。
【請求項8】
前記ユニットは、前記薄膜を剥離する際に生じた残渣を、前記薄膜を溶解させる溶媒を
滴下して除去する機能を有し、且つ、前記接触部位は、前記薄膜を溶解させる溶媒を滴下
する機能を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の薄膜剥離装置。
【請求項9】
前記薄膜が、少なくとも1層の発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を構
成する有機薄膜であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の薄膜剥離装
置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−280621(P2007−280621A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101645(P2006−101645)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】