説明

薄膜厚さ測定方法、薄膜の品質評価方法、薄膜厚さ測定装置、および薄膜の品質管理システム

【課題】反射光干渉法では、波長に対する反射率を示す分光曲線について、スペクトル全体のフィッティングを実施するために測定時間が長くなったり、干渉次数に起因して膜厚の算出に関する処理負荷が大きくなったりしていた。また、干渉光の変化を検出できる光量を得るために、膜厚の測定対象領域の面積を狭くすることができず、平面積の小さい薄膜形状部分については、膜厚の測定が不可能であった。
【解決手段】定在波波長検出部30は、基準領域および測定対象領域について、カメラ3から出力されるR,G,Bの各画素データから、色相を取得する。そして取得した色相に対応する波長を、それぞれ基準領域および測定対象領域における定在波の波長として検出する。膜厚算定部40は、検出された基準領域と測定対象領域における定在波の波長、および、既知である基準領域の膜厚とを用いて、所定の演算を行って測定対象領域の膜厚を算定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜厚さ測定方法、薄膜の品質評価方法、薄膜厚さ測定装置、および薄膜の品質管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶や有機エレクトロルミネッセンス素子などを表示素子とした表示装置では、表示素子とともに、この表示素子を駆動するための駆動素子が、半導体プロセス等によって所定の材料を薄膜形成して形成される。そして、このような薄膜材料によって形成される駆動素子として、TFT(Thin Film Transistor)が広く採用されている。
【0003】
TFTとしては、オフ電流値を抑制する効果があるLDD(Lightly Doped Drain)構造を有するTFTと、ホットキャリア現象の抑制効果があるGOLD(Gate-Drain Overlapped LDD)構造を有するTFTとが、広く知られている。そして、これらの構造を有するTFTの製造方法として、レジストの膜厚差を利用して形成する方法が、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された技術のように、レジストの膜厚の違いを利用してTFTなどの駆動素子を形成する場合は、例えば半導体層上に形成されたレジストの膜厚が、所定の厚さになっているか否かを測定する必要がある。そこで、このような薄膜の膜厚を測定する方法として、例えば特許文献2に示すように、反射光の干渉現象を利用した反射光干渉法が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−54424号公報
【特許文献2】特開平8−338709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、反射光干渉法では、波長(または周波数)に対する反射率を示す分光曲線について、スペクトル全体のフィッティングを実施するために測定時間が長くなったり、干渉次数に起因して膜厚の算出に関する処理負荷が大きくなったりしていた。また、干渉光の変化を検出できる光量を得るために、膜厚の測定対象領域の面積を狭くすることができず、平面積の小さい微細な薄膜形状部分については、膜厚の測定が不可能であった。あるいは、露光光の反射防止を行うためにレジストに染料を入れて着色する場合は、反射率が下がるために干渉光の変化を検出できる光量が得られないことも生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]基板に形成された薄膜に対して、波長帯域幅を有する帯域光を照射する照射工程と、照射された前記帯域光が前記薄膜内において反射することによって前記薄膜内に生じ、前記薄膜から射出される定在波の波長を検出する定在波検出工程と、前記検出した定在波の波長を用いて、前記薄膜の厚さを算定する算定工程と、を含むことを特徴とする薄膜厚さ測定方法。
【0009】
帯域光が薄膜内において反射することによって生じる定在波は、平面積が小さい部分であっても発生する。また、発生する定在波の波長は膜厚に依存する。従って、このような定在波の波長を用いる測定方法によれば、平面積の小さい薄膜部分であっても、発生する定在波の波長が異なるため、この定在波を検出することによって容易に膜厚を測定することができる。
【0010】
[適用例2]上記薄膜厚さ測定方法であって、前記定在波検出工程は、前記基板に形成された薄膜のうち基準となる薄膜部分に発生する定在波の波長を検出し、前記算定工程は、前記基準となる薄膜部分に発生する定在波の波長と、膜厚の測定対象となる薄膜部分に発生する定在波の波長とを用いて、前記膜厚の測定対象となる薄膜部分の厚さを算定することを特徴とする。
【0011】
こうすれば、例えば、予め膜厚が既知の薄膜部分を基準となる薄膜部分とすることによって、検出された基準部分において発生する定在波の波長と、同じく検出された測定対象となる薄膜部分に発生する定在波の波長とを用いることによって、測定対象となる薄膜部分の膜厚を容易に算定することができる。
【0012】
[適用例3]上記薄膜厚さ測定方法であって、前記定在波検出工程は、前記薄膜に対して垂直方向に射出される定在波の波長を検出することを特徴とする。
【0013】
こうすれば、薄膜に対して垂直方向に射出する定在波の波長を検出するので、薄膜の垂直方向の膜厚を算定することになる。この結果、膜厚を正しく測定することができる。
【0014】
[適用例4]上記薄膜厚さ測定方法であって、前記帯域光は、白色を呈する波長帯域幅を有する光であることを特徴とする。
【0015】
こうすれば、白色光は波長帯域が広いので、測定対象となる薄膜の膜厚範囲を広くすることができる。
【0016】
[適用例5]上記薄膜厚さ測定方法であって、前記照射工程は、前記帯域光を前記薄膜が形成された面と反対側の基板面から、前記薄膜に対して照射する工程であることを特徴とする。
【0017】
こうすれば、反射による帯域光成分が少なくなるので、薄膜から射出する定在波の波長成分が多い光を用いて測定対象となる薄膜部分に発生する定在波の波長を検出することができる。この結果、測定対象となる薄膜の膜厚を正しく算定することができる。
【0018】
[適用例6]上記薄膜厚さ測定方法によって算定された前記薄膜の厚さが、前記基板に形成されるべき薄膜の厚さに対して閾値の範囲内か否かを判定する判定工程を更に含むことを特徴とする薄膜の品質評価方法。
【0019】
この品質評価方法によれば、薄膜が所望する範囲内の厚さに形成されているか否かを判定することができるので、薄膜の品質管理が可能である。
【0020】
[適用例7]基板に形成された薄膜に対して、波長帯域幅を有する帯域光を照射する照射手段と、照射された前記帯域光が前記薄膜内において反射することによって前記薄膜内に生じ、前記薄膜から射出される定在波の波長を検出する定在波検出手段と、前記検出した定在波の波長を用いて、前記薄膜の厚さを算定する算定手段と、を備えることを特徴とする薄膜厚さ測定装置。
【0021】
帯域光が薄膜内において反射することによって生じる定在波は、平面積が小さい部分であっても発生する。また、発生する定在波の波長は膜厚に依存する。従って、このような定在波の波長を用いる測定装置によれば、平面積の小さい薄膜部分であっても、容易に膜厚を測定することができる。
【0022】
[適用例8]上記薄膜厚さ測定装置であって、前記定在波検出手段は、前記基板に形成された薄膜のうち基準となる薄膜部分に発生する定在波の波長を検出し、前記算定手段は、前記基準となる薄膜部分に発生する定在波の波長と、膜厚の測定対象となる薄膜部分に発生する定在波の波長とを用いて、前記膜厚の測定対象となる薄膜部分の厚さを算定することを特徴とする。
【0023】
こうすれば、例えば、予め膜厚が既知の薄膜部分を基準となる薄膜部分とすることによって、検出された基準部分において発生する定在波の波長と、同じく検出された測定対象となる薄膜部分に発生する定在波の波長とを用いることによって、測定対象となる薄膜部分の膜厚を容易に算定することができる。
【0024】
[適用例9]上記薄膜厚さ測定装置と、前記薄膜厚さ側定装置によって測定した前記薄膜の厚さが、前記基板に形成されるべき薄膜の厚さに対して閾値の範囲内か否かを判定することによって、前記基板に形成されるべき薄膜の厚さか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする薄膜の品質管理システム。
【0025】
この品質管理システムによれば、薄膜が所望する範囲内の厚さに形成されているか否かを判定することができるので、薄膜の品質管理が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。図1は、本実施例の薄膜厚さ測定装置100の概要構成を示す模式図である。薄膜厚さ測定装置(以降、単に「測定装置」と呼ぶ)100は、照射器1、カメラ3、照射制御部10、検出領域特定部20、定在波波長検出部30、膜厚算定部40を備えている。
【0027】
照射器1は、白色を呈する波長帯域幅を有する光を照射する照射ランプを内蔵している。そして、照射制御部10によって点灯制御されることによって、基板上に形成された半導体層の領域であって、膜厚の測定対象領域となるレジスト部分を含む所定の領域に、白色光を照射する。
【0028】
カメラ3は、CCD(Charge-Coupled Device)素子など、複数の画素によって構成された撮像素子を内蔵し、白色光が照射された所定の領域から射出される定在波を含む入射光によって画像を撮像する。そして、撮像した画像を、各画素についてR,G,B各8ビットで表される階調データによって構成される画素データとして出力する。なお、カメラ3の光軸は、基板に対して垂直方向にセットされ、カメラ3の光軸に対して平行な入射光が、撮像素子上に結像するようにレンズ系が構成されている。
【0029】
検出領域特定部20は、半導体層上に形成されたレジスト薄膜のうち基準領域と測定対象領域を特定する。本実施例では、レジストの膜厚が予め判明している領域つまりハーフエッチングされない領域を基準領域とする。また、基準領域および測定対象領域は、カメラ3がセットされた状態において、撮影素子の画素位置として特定されるものとする。従って、本実施例では、膜厚の測定に際しては、カメラ3は基板に対して常に同じ位置になるようにセットされる。
【0030】
定在波波長検出部30は、基準領域および測定対象領域について、カメラ3から出力される撮像素子の画素1つ1つに対応するR,G,Bの各画素データから、色相データを取得する。そして取得した色相データに対応する波長を、所定の対応テーブルを用いて、それぞれ基準領域および測定対象領域における定在波の波長として検出する。
【0031】
膜厚算定部40は、検出された基準領域と測定対象領域における定在波の波長、および、既知である基準領域の膜厚とを用いて、所定の演算を行って測定対象領域の膜厚を算定する。その後、必要に応じて算定した膜厚を、図示しない表示手段に表示する。
【0032】
上述した照射制御部10、検出領域特定部20、定在波波長検出部30、膜厚算定部40は、測定装置100内に設けられた図示しない回路基板に組み込まれたCPUやRAM、ROMによって構成される。すなわち、CPUが、RAMをワーキングメモリーとして随時使用しながら、ROMに格納されたプログラムに従って所定の処理を行うことによって、照射制御部10、検出領域特定部20、定在波波長検出部30、膜厚算定部40として機能するのである。
【0033】
次に、各部が行う処理を説明する前に、本実施例の測定装置100による膜厚の測定方法の概要について、図2を用いて説明する。図2は、半導体層上に形成されたレジストに白色光を斜め方向から照射した様子を示した模式図である。
【0034】
図示するように、レジストは、すでにその膜厚が厚さ「Dk」と既知である基準領域と、その両側に、この基準領域よりも膜厚の厚さが薄い測定対象領域とを有している。基準領域はTFTのチャネル領域に当たる。また、2つの測定対象領域は、それぞれソース領域、ドレイン領域に当たり、ハーフトーンマスクなどを用いてエッチング形成されたものである。従って、2つの測定対象領域のレジストの膜厚が適切でないと、ドープ量が変化して所望するTFTの性能が得られないことになるのである。
【0035】
さて、基準領域ではレジスト薄膜に照射された白色光のうち、レジストの表面(図面上側)にて反射する反射光が存在する一方、レジスト内に入射する入射光も存在する。そして、入射光は、レジスト内において、半導体層との界面において反射する。この結果、周知のように、入射光がレジスト内で反射を繰り返すことによって、レジスト内には波長λk=2Dkの光が共振する。このため、基準領域において波長λk=2Dkの光が定在波として発生し、レジスト表面から射出される。
【0036】
同様に、測定対象領域でもレジスト薄膜に照射された白色光のうち、レジストの表面(図面上側)にて反射する反射光が存在する一方、レジスト内に入射する入射光も存在する。そして、入射光は、レジスト内において、半導体層との界面において反射する。この結果、測定対象領域のレジストの膜厚をDsとすると、入射光がレジスト内で反射を繰り返すことによって、レジスト内では波長λs=2Dsの光が共振する。このため、測定対象領域においては、波長λs=2Dsの光が定在波として発生し、レジスト表面から射出される。
【0037】
従って、白色光がレジスト表面において反射する反射光には、それぞれの領域に依存した波長を有する定在波λk,λsの成分が多く含まれるため、それぞれの領域から射出される光の波長スペクトルが異なることになる。言い換えれば、それぞれの領域において色相が異なることになる。そこで、本実施例の測定装置100は、基準領域あるいは測定対象領域について、それぞれの色相を取得し、取得した色相に対応する波長を、定在波の波長として検出する。そして、検出された定在波の波長から、測定領域の膜厚を算定するものである。
【0038】
それでは、本実施例の測定装置100にて行う膜厚の測定処理について、図3のフローチャートに従って説明する。この処理は、図1において、測定者が測定装置100に設けられた図示しないボタンを押すことによって開始される。
【0039】
測定処理が開始されると、まず、ステップS101にて、カメラ3を所定位置にセット処理する。CPUは図1において図示しない駆動手段によってカメラ3を、所定位置に移動する。
【0040】
次に、ステップS102にて帯域光を照射処理する。本実施例では、帯域光は凡そ400nm〜760nmの可視光領域の波長帯域を総て有する白色光であるものとする。これは、定在波として発生する波長の範囲を広げることによって、測定対象領域の薄膜厚さについて測定できる膜厚の範囲をできるだけ広げるためである。
【0041】
次に、ステップS103にて、基準領域を撮像する撮像素子の画素データを取得処理する。CPUは、カメラ3から出力される基準領域を撮像した撮像素子の各画素のR、G、Bの各8ビットの階調データを取得する。次いで、ステップS104にて、基準領域に発生する定在波の波長を検出処理する。
【0042】
次に、ステップS105にて、測定対象領域を撮像する撮像素子の画素データを取得処理する。CPUは、カメラ3から出力される測定対象領域を撮像した撮像素子の各画素のR、G、Bの各8ビットの階調データを取得する。次いで、ステップS106にて、測定対象領域に発生する定在波の波長を検出処理する。
【0043】
ステップS103およびステップS105における処理について、図4を用いて説明する。図4は、ハーフエッチングされたレジストの領域であって、膜厚の測定対象となる領域を含む領域R2と、半導体層上に形成されたレジスト膜がエッチングされずにそのまま残っており、従ってレジストの膜厚が既知である基準領域R1とを、基板の上側からみた平面状態を示した模式平面図である。そして、二点鎖線で囲んだ領域3Fは、カメラ3に内蔵した撮像素子の撮像領域を示している。カメラ3は、前述したように常に同じレジストの領域部分である領域3Fを撮像するように、基板に対して常に同じ位置にセットされるように構成されている。
【0044】
カメラ3が、レジストの領域3Fを撮像したとき、撮像素子を構成する各画素は、図4下側に示したように画素データを出力する。本実施例では、基準領域R1を撮像する画素は、画素G13〜G16および画素G23〜G26の8画素であり、予めこの8画素の画素データが基準領域R1の画素データであるという画素情報がROMに記憶されている。また、領域R2のうち測定対象となる測定対象領域を撮像する画素は、画素G11,G12,G21,G22の4画素と、画素G17,G18,G27,G28の4画素であり、予めこれらの計8画素の画素データが測定対象領域の画素データであるという画素情報がROMに記憶されている。なお、本実施例では、撮像素子を構成する各画素を、説明の都合上大きく誇張して表示しているため、撮像素子を構成する画素数が少ない状態で図示しているが、実際は数百万個程度の画素によって構成されていることは勿論である。
【0045】
そこで、ステップS103では、CPUはROMに記憶された画素情報に基づいて、カメラ3から出力される基準領域R1を撮像した画素G13〜G16および画素G23〜G26の計8画素の画素データを取得する。また、ステップS105では、CPUはROMに記憶された画素情報に基づいて、カメラ3から出力される測定対象領域を撮像した画素G11,G12,G21,G22と画素G17,G18,G27,G28の計8画素の画素データを取得する。
【0046】
次に、ステップS104およびステップS106において行われる定在波の波長の検出処理について説明する。CPUは、1つの画素データについて、画素データを構成するR、G、Bの各階調データから、ROMに格納された変換式を用いて色相(H)データを算出する。変換式は広く知られており、例えば、「R」の階調データが最も大きく「B」の階調データが最も小さい場合は、変換式は、H=60×(G−B)/(R−B)である。こうして、各画素について色相データが算出される。なお色相データは角度データであり、例えば、赤色の場合は0度、緑色の場合は120度、青色の場合は240度である。
【0047】
続いて、CPUは算出した色相データを用いて、予めROMに格納された色相と波長とを対応させた対応テーブルを参照して、色相データに対応する波長を検出する。対応テーブルは、色相データの各角度に対応する波長を規定したものであり、図5にこの対応テーブルの一例を示した。対応テーブルは、図示するように可視光の分光スペクトルを表したもので、広く知られたものである。ちなみに、色相データが240度であれば、青色を呈し、これに対応する波長は450nmとなる。
【0048】
こうして、ステップS104とステップS106において、基準領域および測定対象領域のそれぞれについて計8つの色相データが算出されることになる。なお、本実施例では、算出されたこれらの8つの色相データの平均値を計算し、計算した平均値の色相データに対応する波長を、それぞれ基準領域および測定対象領域における定在波の波長として検出する。もとより、8つの色相データのうち、最大もしくは最小の角度の色相データに対応する波長を、それぞれ基準領域および測定対象領域における定在波の波長として検出することとしても差し支えない。要は、膜厚の品質管理方法に応じて、基準領域および測定対象領域における色相データを算出すればよい。
【0049】
図3に戻り、次いで、ステップS107にて、測定対象領域の膜厚を算定処理する。CPUは、基準領域について既知の膜厚として予めROMに格納された膜厚の値「Dk」を読み出し、測定対象領域の薄膜厚さ「Ds」を算定する。前述したように、レジストの膜厚は、発生する定在波の波長に比例するため、基準領域のレジスト厚さと測定対象領域のレジスト厚さとの比と、基準領域に発生する定在波と測定対象領域に発生する定在波の比とは等しくなる。そこで、本実施例では、ステップS104にて検出された基準領域に発生する定在波の波長を「λK」、ステップS106にて検出された測定対象領域に発生する定在波の波長を「λS」とすると、演算式Ds=Dk×λS/λKによって、測定対象領域のレジスト厚さ「Ds」を算定する。こうして、本実施例の測定装置100は、算定した値「Ds」を、測定対象領域のレジスト厚さとして測定するのである。
【0050】
なお、上述したように、基準領域においては波長λk=2Dkの光が定在波として発生するが、この定在波以外に、照射した白色光の反射光も撮像素子に入射することから、撮像素子が撮像する画像は、定在波の波長λkが呈する色相からずれた色相となる。このため、ステップS104にて検出される基準領域に発生する定在波の波長は「λk」とは異なる確率が高く、従って、本実施例ではこれを「λK」と標記した。同様に、ステップS106にて検出される測定対象領域に発生する定在波の波長は「λs」とは異なる確率が高く、従って、本実施例ではこれを「λS」と標記した。
【0051】
上述したように、定在波は、平面積が小さい部分であっても薄膜内において反射することによって生じる。そこで、本実施例は、この定在波を含む反射光を画素データとして取得し、画素データから色相データに変換したのち、その色相データに対応する波長を検出する。このとき、予めレジスト膜の厚さが判明している基準領域部分に発生し検出された定在波の波長と、測定対象となるレジスト膜部分に発生し検出された定在波の波長とを用いることによって、測定対象となるレジスト膜部分の膜厚を容易に算定することができる。従って、撮像素子の各画素によって撮像が可能な領域であれば、平面積の小さいレジスト膜部分であっても容易に膜厚を算定することができるのである。このように、本実施例の測定装置100は、測定対象領域のレジスト膜の厚さに相当する定在波の波長を検出し、検出した波長を用いてレジスト膜の厚さを算定することによって、測定対象領域のレジスト膜の厚さを測定することを可能とする装置である。
【0052】
その後、測定装置100は、算定されたレジスト膜部分の膜厚を、図示しない表示手段等を用いて表示することが好ましい。こうすることで、測定者は、表示された膜厚を視認して、測定対象領域のレジストの厚さが、所望する厚さか否かを判断することができることになる。
【0053】
以上、本発明について、実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下変形例を挙げて説明する。
【0054】
(第1変形例)
上記実施例における測定装置100は、図1に示したように、照射器1を基板に対して半導体層側に位置し、レジストに対して図面上側から白色光を照射することとしたが、これに限るものでないことは勿論である。例えば、基板や半導体層が、光透過性を有する材料(例えばガラスや透明有機材料)で形成されている場合は、測定装置100において、照射器1を基板に対して半導体層が形成されている側と反対側、つまり基板裏側に配置し、基板の裏側から白色光を照射することとしてもよい。
【0055】
図6は、本変形例による測定装置100aの概略構成を示す模式図である。図示するように、照射器1は、基板の下側に配置され、基板を裏面から照射する。この場合、レジストおよび半導体層において反射する反射光が原理的にカメラ3に入射しないので、撮像素子に入射する光は、総て透過光になる。従って、上記実施例とは異なり、撮像素子に入射する光は、白色光の波長成分が抑えられ、定在波の波長成分が多く存在する光となる。この結果、画素データは、定在波の波長が主たる成分の光によって生成されるために、その後算出される色相データは、基準領域または測定対象領域に発生する定在波が呈する色を示す色相データに近づくか、若しくは一致することが期待できる。従って、測定対象領域のレジストの厚さを、より正しく測定することが期待できる。
【0056】
また、本変形例によれば、反射光ではなく透過光を用いるので、露光光の反射防止を行うためにレジストに染料を入れて着色する場合であっても、定在波を検出できる光量が得られないという不具合は発生しない。
【0057】
なお、照射器1から照射される白色光は、基板に対して垂直方向に照射することが好ましい。こうすれば、レジストの膜厚方向に発生する定在波の光強度を高めることができるので、画素データを構成するR、B、Gの各階調データ値が大きくなり、データの信頼性が高まる結果、検出される定在波の波長の信頼性も向上する。
【0058】
(第2変形例)
上記実施例の測定装置100では、測定者が、算定した測定対象領域のレジストの厚さを測定装置100から入手し、測定対象領域のレジストの厚さが、所望する厚さか否かを判断するものとしたが、本変形例として、測定装置100において、算定された膜厚が所望する膜厚か否かを自動的に判定することとしてもよい。
【0059】
図7は、本変形例の測定装置100bの概要構成を示す模式図である。測定装置100bは、図1に示した測定装置100に対して、判定部50と表示手段7とを追加して備えたものである。従って、他の構成は総て上記実施例の測定装置100と同じであるので、これらの説明は省略し、判定部50と表示手段7とについて説明する。
【0060】
判定部50は、上記実施例と同様に、CPUが、RAMをワーキングメモリーとして随時使用しながら、ROMに格納されたプログラムに従って所定の処理を行うことによって機能する。そして、算定された測定対象領域における膜厚が、所定の閾値の範囲に存在するか否かを判定する。その後、判定した結果を、表示データとして表示手段7に出力する。
【0061】
表示手段7は、液晶パネルなどを表示体とし、判定部50が出力した表示データを表示体に表示することによって、判定結果を通知する。
【0062】
本変形例の測定装置100bにて行う膜厚の測定処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図3におけるステップS101からステップS107までの処理に引き続き、ステップS108以降の処理を追加したものである。従って、ステップS101〜ステップS107までの説明は省略し、ステップS108以降について処理内容を説明する。
【0063】
まず、ステップS108では、算定された膜厚と閾値とを比較処理する。CPUは、ROMに格納された閾値を読み出して、ステップS107にて算定した薄膜厚さと比較する。本変形例では、レジストの膜厚として許容される最大と最小の膜厚を有する領域を予め基板上に形成し、形成された最大と最小の膜厚を有する領域において、ステップS101からステップS107までの処理を行うことによって算定される膜厚を求めておく。そして、この求めた2つの膜厚の値をそれぞれ上限下限とする範囲が、予め閾値としてROMに格納されているのである。
【0064】
次に、ステップS110にて、算定された膜厚が閾値の範囲内か否かを判定処理する。判定の結果、閾値の範囲内であれば(YES)、ステップS111に進み、レジストの膜厚は適切である旨を通知する。一方、判定の結果、閾値の範囲内でなければ(NO)、ステップS112に進み、レジストの膜厚は適切でない旨を通知する。
【0065】
通知方法は、表示手段7に所定の文言を表示したり、所定の色を表示したりする。CPUは、判定結果に応じて予めROMに格納された文言を読み出し、例えば、ステップS112の処理であれば、「レジスト厚さは適切ではありません」という文言を表示したり、「赤色」を表示したりする。この結果、検査者は、表示された内容によって、レジスト厚さが所望する厚さか否かを容易に確認できる。
【0066】
本変形例によれば、測定装置100に対してさらに判定部50を備えることによって、ハーフエッチング等によって形成されたレジスト厚さについて、所望する厚さか否かを評価する所謂品質評価システムを提供することができる。
【0067】
(その他の変形例)
上記実施例では、基準領域について発生する定在波の波長を検出したが、必ずしもこれに限らず、基準領域について発生する定在波の波長を算定せず、測定領域について発生する定在波の波長のみ検出することとしてもよい。この場合は、予め厚さが判明しているレジスト部分において、画素データから変換された色相データを、種々の厚さに対して求めておく。そして求めた色相データとレジスト厚さとから、図5に示した対応テーブルを作成しておき、この対応テーブルを用いて、測定対象領域において取得された色相データに対応するレジストの厚さを、測定領域のレジストの膜厚として算定すればよい。
【0068】
また、上記実施例では、基準領域をレジストの膜厚が既知である領域としたが、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば、測定対象領域の膜厚が、基準領域の膜厚に対する割合で品質管理される場合は、基準領域は、レジストの膜厚が既知でなくても差し支えない。もとより、この場合は、測定対象領域の膜厚は、基準領域の膜厚に対する割合で算定される。
【0069】
また、上記実施例では、カメラ3の光軸を、基板に対して垂直な方向としたが、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば、基板に対して斜め方向であっても差し支えない。この場合、カメラ3に入射する光に含まれる定在波は、レジストの厚さ方向に対して斜めの方向に射出するものであるため、レジストの厚さを正しく示すものではないが、基準領域と測定対象領域について、同じ傾き条件で撮像するので、同様にレジストの膜厚の算定が可能である。つまり、カメラ3に入射する光に含まれる定在波の波長は変化するものの、基準領域について検出される定在波の波長と、測定対象領域について検出される定在波の波長との比率は変化しないためである。
【0070】
また、上記実施例では、照射光として白色光を照射することとした。これは、定在波として発生する波長の範囲を広げることによって、測定対象領域の薄膜厚さについて測定できる膜厚の範囲をできるだけ広げるためであったが、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば、500nm〜700nmというように、所定の波長帯域幅を有する帯域光であっても差し支えない。この場合、少なくとも基準領域と測定対象領域における薄膜において、許容範囲内の膜厚が形成された場合において理論的に発生する定在波の波長が含まれるように、波長帯域幅を設定することが好ましい。
【0071】
また、上記実施例では、薄膜の厚さとしてレジストの厚さを測定するものとして説明したが、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば、透明薄膜電極層の厚さを測定することとしてもよい。要は、平面積の小さい領域を有する薄膜の厚さを測定するものであって、膜内で定在波が発生するものであれば、どのような薄膜であっても、膜厚の測定対象とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施例の薄膜厚さ測定装置の概要構成を示す模式図。
【図2】半導体層上に形成されたレジストに白色光を照射した様子を示した模式図。
【図3】本実施例の測定装置にて行う膜厚の測定処理についてのフローチャート。
【図4】レジストパターン領域R1,R2を、基板面上からみた模式平面図。
【図5】対応テーブルの一例を示す説明図。
【図6】第1変形例による測定装置の概略構成を示す模式図
【図7】第2変形例による測定装置の概要構成を示す模式図。
【図8】第2変形例の測定装置にて行う膜厚の測定処理についてのフローチャート。
【符号の説明】
【0073】
1…照射器、3…カメラ、7…表示手段、10…照射制御部、20…検出領域特定部、30…定在波波長検出部、40…膜厚算定部、50…判定部、100…測定装置、100a…測定装置、100b…測定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された薄膜に対して、波長帯域幅を有する帯域光を照射する照射工程と、
照射された前記帯域光が前記薄膜内において反射することによって前記薄膜内に生じ、前記薄膜から射出される定在波の波長を検出する定在波検出工程と、
前記検出した定在波の波長を用いて、前記薄膜の厚さを算定する算定工程と、
を含むことを特徴とする薄膜厚さ測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の薄膜厚さ測定方法であって、
前記定在波検出工程は、前記基板に形成された薄膜のうち基準となる薄膜部分に発生する定在波の波長を検出し、
前記算定工程は、前記基準となる薄膜部分に発生する定在波の波長と、膜厚の測定対象となる薄膜部分に発生する定在波の波長とを用いて、前記膜厚の測定対象となる薄膜部分の厚さを算定することを特徴とする薄膜厚さ測定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の薄膜厚さ測定方法であって、
前記定在波検出工程は、前記薄膜に対して垂直方向に射出される定在波の波長を検出することを特徴とする薄膜厚さ測定方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の薄膜厚さ測定方法であって、
前記帯域光は、白色を呈する波長帯域幅を有する光であることを特徴とする薄膜厚さ測定方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の薄膜厚さ測定方法であって、
前記照射工程は、前記帯域光を前記薄膜が形成された面と反対側の基板面から、前記薄膜に対して照射する工程であることを特徴とする薄膜厚さ測定方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の薄膜厚さ測定方法によって算定された前記薄膜の厚さが、前記基板に形成されるべき薄膜の厚さに対して閾値の範囲内か否かを判定する判定工程を更に含むことを特徴とする薄膜の品質評価方法。
【請求項7】
基板に形成された薄膜に対して、波長帯域幅を有する帯域光を照射する照射手段と、
照射された前記帯域光が前記薄膜内において反射することによって前記薄膜内に生じ、前記薄膜から射出される定在波の波長を検出する定在波検出手段と、
前記検出した定在波の波長を用いて、前記薄膜の厚さを算定する算定手段と、
を備えることを特徴とする薄膜厚さ測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の薄膜厚さ測定装置であって、
前記定在波検出手段は、前記基板に形成された薄膜のうち基準となる薄膜部分に発生する定在波の波長を検出し、
前記算定手段は、前記基準となる薄膜部分に発生する定在波の波長と、膜厚の測定対象となる薄膜部分に発生する定在波の波長とを用いて、前記膜厚の測定対象となる薄膜部分の厚さを算定することを特徴とする薄膜厚さ測定装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の薄膜厚さ測定装置と、
前記薄膜厚さ側定装置によって測定した前記薄膜の厚さが、前記基板に形成されるべき薄膜の厚さに対して閾値の範囲内か否かを判定することによって、前記基板に形成されるべき薄膜の厚さか否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする薄膜の品質管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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