説明

薄膜組織インターフェイスデバイスを使用する生物学的膜のミクロポレーションのための装置、およびそのための方法

【課題】薄膜組織インターフェイスを備える新規なミクロポレーションデバイスを提供する。
【解決手段】
本発明は、動物(例えば、ヒト)の生物学的膜を横切る物質の輸送に関する。詳細には、本発明は、処置適用のために生物学的膜を通じて動物中に物質を送達するため、あるいはモニタリング適用または他の診断適用のために生物学的膜を通じて動物から物質を抽出するために、生物学的膜において開口部を形成するためならびに膜貫通フラックスの増加のための、改良されたデバイスを提供する。そしてまた、本発明は、そのための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、本明細書中にその開示全体が参考として援用される、米国特許仮出願第60/138,050号(1999年6月8日出願)の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、生物学的膜(例えば、皮膚の外層または粘膜の内層)における小さい孔またはパーフォレーションまたはミクロポアの形成、これらのミクロポアを通る薬物もしくは他の浸透体の送達、これらのミクロポアを通した生物学的流体の抽出、この抽出された生物学的流体中の選択される検体についてのアッセイのデバイスおよび方法ヘの組込み、ならびに圧力調節、ミクロポアを有する(micropored)組織および近接する組織の機械的操作または機械的な湾曲、電気輸送、電気浸透、イオン導入法および音波エネルギーのうち1つ以上によるこれらのミクロポアを通るフラックスの増加のためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
角質層は、皮膚の障壁特性を主に担う。従って、薬物または他の分子の体内への経皮フラックスおよび身体からの検体の経皮フラックスに対する最大の障壁を示すのが、この層である。角質層(皮膚の外部の角質層)は、脂質ドメインにより分離される緻密な角化細胞残存物の複雑な構造である。口腔粘膜または胃粘膜と比較して、角質層は、身体の外部または内部のいずれかの分子に対して非常に低い浸透性である。角質層は、ケラチノサイトから形成され、このケラチノサイトは、核を失って角質細胞になった表皮細胞の大部分を含む。これらの死んだ細胞は、角質層を構成し、この層はわずか約10〜30ミクロンの厚さであり、そして上記のように、身体を外部の物質による侵入ならびに流体および溶解した分子の外部ヘの移動から身体を保護する非常に抵抗性の防水膜である。角質層は、剥離(desquamination)の間に角質細胞を落とし、そして角質形成プロセスによる新しい角質細胞の形成により連続的に再生される。
【0004】
歴史的には、薬物は、注射により皮膚を横切って送達されてきた。しかし、この投与方法は、不便かつ不快であり、そして一般大衆の一員による自己投与には適さない。さらに、使用された針は、使用後に危険を与え続ける。従って、身体ヘの経皮薬物送達が、特に所望される。
【0005】
経皮薬物送達およびモニタリング適用について当該分野で公知の多くの技術が存在する。生物学的膜のより少ない痛みの穿刺についての当該分野における必要性の1つの周知例は、糖尿病モニタリングの分野である。糖尿病の患者のための現在の標準的なケアは、患者らの血中グルコースレベルを患者らにモニタリングさせるために、1日あたり3〜5回の痛みを伴う指を突刺す血液引抜きの推奨を含む。最近数年間でランセットの相対寸法が減少した以外は、ランセットの使用、および結果として生じる指の感度および痛みは、長年変化していない。
【0006】
経皮薬物送達を増大させるために、薬物に対する皮膚の浸透性を増加させるための公知の方法が存在する。例えば、特許文献1は、生物学的膜に1つ以上のミクロポアを形成するための熱的ミクロポレーション(microporation)技術およびデバイス、ならびに身体から外部ヘのフラックス、または身体内への薬物の送達を選択的に増大させるための方法に関する。特許文献2(2000年1月27日公開)は、人工的開口部形成のための方法および装置に関し、この方法および装置は、生物学的膜の選択された領域に、制御された様式で爆発を誘発されて、その結果微小爆発が生物学的膜において人工的開口部を所望の深さおよび直径に生成する、火工(pyrotechnic)エレメントを使用する。特許文献3(1998年7月9日公開)は、ミクロポレーションおよびエンハンサー(例えば、音波エネルギー、電磁気エネルギー、機械的エネルギー、熱エネルギーまたは化学的エンハンサー)を使用して、生物学的膜(例えば、動物の皮膚)の浸透性を増大する方法を開示する。ミクロポレーションを使用する送達またはモニタリングのための方法および装置はまた、特許文献4(1999年9月10日公開);特許文献5;特許文献6(1999年9月10日公開);特許文献7(1999年9月10日公開);特許文献8(1999年9月10日公開);特許文献9(2000年2月3日公開);特許文献10(2000年2月3日公開);および特許文献11(2000年3月23日公開)に記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,885,211号明細書
【特許文献2】国際公開第WO00/03758号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO98/29134号パンフレット
【特許文献4】国際公開第WO99/44637号パンフレット
【特許文献5】米国特許第6,022,316号号明細書
【特許文献6】国際公開第WO99/44508号パンフレット
【特許文献7】国際公開第WO99/44507号パンフレット
【特許文献8】国際公開第WO99/44638号パンフレット
【特許文献9】国際公開第WO00/04832号パンフレット
【特許文献10】国際公開第WO00/04821号パンフレット
【特許文献11】国際公開第WO00/15102号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
薬物のような因子の経皮送達および血液成分のような検体のモニタリングのための改善された方法およびデバイスへの必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、動物(例えば、ヒト)の生物学的膜を横切る物質の輸送に関し、詳細には、処置適用のために生物学的膜を通って動物(ヒトを含む)内に物質を送達するため、またはモニタリングもしくは他の診断適用のために生物学的膜を通して動物から物質を抽出するために、生物学的膜に開口部を形成するためのデバイスおよび方法に関する。
【0010】
本発明はデバイスに関し、このデバイスは、皮膚または他の組織の表面の浸透性を穏かに増加させるための機構、この表面を横切る浸透体もしくは生物学的流体のフラックスを制御するための機構、浸透体を貯蔵および放出する機構、ならびに必要に応じてまた代わりに組織から抽出されて収集された生物学的流体中のいくつかの検体を定量するための機構、ならびにアナライザーにより検出された検体の定量値に基づいて浸透体の送達を制御する機構を組込む。
【0011】
本発明の目的は、ミクロポレーションデバイスを提供することであり、このデバイスは、少なくとも1つのレザーバー、および少なくとも1つのミクロポレーターおよび基材を備える組織インターフェースを備え、ここでミクロポレーターが基材上または基材内に位置する。本発明の実施形態において、ミクロポレーターは、以下からなる群から選択される:生物学的膜への直接接触を介して熱エネルギーを伝導的に送達してミクロポアを形成するに十分な深さの膜のいくらかの部分の切除を引き起こし得る、加熱されるプローブエレメント;電気機械的アクチュエーター;微小ランセット;微小針または微小ランセットのアレイ;音波エネルギーアブレーター;レーザー切除システム;および高圧流体ジェットパンクチャラー(puncturer)。
【0012】
本発明の目的は、ミクロポレーションデバイスの製造方法であり、この方法は、基材を得る工程、およびこの基材上に伝導性ネットワークを形成する工程、を包含し、ここで伝導性ネットワークがミクロポレーターへの電気的接続を提供する。
【0013】
本発明の目的は、生物学的膜に開口部を形成する方法であり、この方法は、生物学的膜に近接してミクロポレーションデバイスを配置する工程、およびこのミクロポレーションデバイスが生物学的膜において少なくとも1つの開口部を形成するのを誘発する工程を包含し、このミクロポレーションデバイスは、少なくとも1つのレザーバーおよび少なくとも1つのミクロポレーターおよび基材を備える組織インターフェイスを備え、ここでこのミクロポレーターは、基材上または基材内に位置する。
【0014】
本発明の目的は、生物学的膜(例えば、皮膚)を横切るフラックスを増加させるためのデバイスおよび方法を提供することである。詳細には、1つ以上のミクロポアが、生物学的膜において形成され、そして圧力調節および組織の機械的操作がこのミクロポアにおいて、かつミクロポアの周りに加えられ、経皮フラックスを増加する。本発明のデバイスおよび方法は、薬物または他の化合物を生物学的膜を横切って送達するために使用され得るか、またはこのデバイスおよび方法は、生物由来の生物学的サンプル(例えば、間質液サンプル)を得るために使用され得る。
【0015】
本発明の別の目的は、フラックス増大デバイスを提供することであり、このデバイスは、セルキャビティ−を規定する外壁;ならびに内側キャビティ−および出口を備えるレザーバーを備え、ここでレザーバーは、セルキャビティー中に移動可能に収容される。
より特定すれば、本発明は以下の項目に関し得る。
(特許請求の範囲)
(項目1)
ミクロポレーションデバイスであって、以下:
少なくとも1つのレザーバー、ならびに
少なくとも1つのミクロポレーターおよび基材を備える、組織インターフェイス
を備え、上記ミクロポレーターが上記基材上または上記基材内に位置する、デバイス。
(項目2)
項目1に記載のデバイスであって、上記基材が、織られた材料、フィルム、支持層およびシートからなる群より選択される、デバイス。
(項目3)
項目2に記載のデバイスであって、上記基材がパーフォレーションを備える、デバイス。(項目4)
項目1に記載のデバイスであって、上記ミクロポレーターが、生物学的膜への直接接触を介して熱エネルギーを伝導的に送達してミクロポアを形成するに十分な深さの上記膜のいくらかの部分の切除を引き起こし得るプローブエレメント、電気機械的アクチュエーター、微小ランセット、微小針または微小ランセットのアレイ、音波エネルギーアブレーター、レーザー切除システム、および高圧流体ジェットパンクチャラーからなる群より選択され;そして
さらに上記プローブエレメントが、生物学的膜を切除し得る電気的に加熱される抵抗エレメント、光学的に加熱される局所色素アブソーバー層および光学的に加熱される局所色素層からなる群より選択される、デバイス。
(項目5)
項目4に記載のデバイスであって、上記プローブエレメントが、予備形成されたワイヤ導体、付着した伝導性材料、機械加工された伝導性材料、レーザー切断された伝導性材料、接着性フォイル、電気めっきされた材料、スクリーン印刷された材料およびエッチングされた伝導性材料からなる群より選択される、デバイス。
(項目6)
項目4に記載のデバイスであって、上記生物学的膜を切除する間に上記プローブエレメントが破壊される、デバイス。
(項目7)
項目1に記載のデバイスであって、上記少なくとも1つのミクロポレーターが複数のミクロポレーターを含む、デバイス。
(項目8)
項目7に記載のデバイスであって、上記複数のミクロポレーターがプローブエレメントである、デバイス。
(項目9)
項目8に記載のデバイスであって、上記プローブエレメントを活性化するために使用される電気回路を分離するためのダイオードをさらに備える、デバイス。
(項目10)
項目8に記載のデバイスであって、上記プローブエレメントのうちの2つ以上が、並列回路構成または直列回路構成あるいはそれらの組み合わせで接続されている、デバイス。
(項目11)
項目1に記載のデバイスであって、上記ミクロポレーター付近に材料をさらに備え、
上記材料が発熱反応または吸熱反応を生成し得る、デバイス。
(項目12)
項目1に記載のデバイスであって、ミクロアクチュエーターをさらに備える、デバイス。(項目13)
項目12に記載のデバイスであって、上記ミクロアクチュエーターが、静電ミクロアクチュエーター、熱バイモルフミクロアクチュエーター、圧電ミクロアクチュエーター、電磁ミクロアクチュエーター、磁歪ミクロアクチュエーターおよび形状記憶合金ミクロアクチュエーターからなる群より選択される、デバイス。
(項目14)
項目1に記載のデバイスであって、電子結合サーキットリーおよび電源をさらに備える、デバイス。
(項目15)
項目4に記載のデバイスであって、上記プローブエレメントが伝導性ワイヤを備え、そして上記基材が非伝導性ファブリックを備える、デバイス。
(項目16)
項目15に記載のデバイスであって、上記伝導性ワイヤが上記非伝導性ファブリック中に織られている、デバイス。
(項目17)
項目3に記載のデバイスであって、上記パーフォレーション上にプラグ材料をさらに備える、デバイス。
(項目18)
項目17に記載のデバイスであって、上記プラグ材料が揮発性材料を含む、デバイス。
(項目19)
項目1に記載のデバイスであって、上記基材がエンボス加工されている、デバイス。
(項目20)
項目1に記載のデバイスであって、上記生物学的膜を横切る流体の膜貫通輸送を増大するためのエンハンサー材料をさらに備える、デバイス。
(項目21)
項目1に記載のデバイスであって、上記少なくとも1つのレザーバーが複数のチャンバーを含む、デバイス。
(項目22)
項目21に記載のデバイスであって、上記複数のチャンバーが少なくとも第1のチャンバーおよび第2のチャンバーを含み、上記第1のチャンバーが第1の物質を含みかつ上記第2のチャンバーが第2の物質を含む、デバイス。
(項目23)
項目22に記載のデバイスであって、上記第1の物質および第2の物質が、第1の生物学的に活性な因子および第2の生物学的に活性な因子である、デバイス。
(項目24)
項目21に記載のデバイスであって、上記デバイスは、上記第1のチャンバー中の物質の経皮送達または上記第2のチャンバー中への検体の経皮的回収をすることができる、デバイス。
(項目25)
項目21に記載のデバイスであって、上記デバイスは、上記第1のチャンバー中の物質の経皮送達および上記第2のチャンバー中への検体の経皮的回収を同時にすることができる、デバイス。
(項目26)
項目25に記載のデバイスであって、上記検体を検出または定量するためのアナライザーをさらに備える、デバイス。
(項目27)
項目26に記載のデバイスであって、上記アナライザーにより検出された上記検体の定量値に基づいて、上記物質の送達を制御するための制御モジュールをさらに備える、デバイス。
(項目28)
項目26に記載のデバイスであって、上記物質がインスリンでありかつ上記検体がグルコースである、デバイス。
(項目29)
項目22に記載のデバイスであって、上記第1のチャンバーと第2のチャンバーとの間に配置されたディバイダーまたはバルブをさらに備え、上記ディバイダーまたはバルブは、上記ディバイダーが取り除かれるかまたは上記バルブが開かれるまで、上記第1の物質および第2の物質の混合を妨げる、デバイス。
(項目30)
項目29に記載のデバイスであって、上記ディバイダーが膜である、デバイス。
(項目31)
項目30に記載のデバイスであって、上記第1の物質が薬学的に活性な因子でありかつ上記第2の物質が薬学的に受容可能なキャリアである、デバイス。
(項目32)
項目21に記載のデバイスであって、上記複数のチャンバーが異なる物質を含む、デバイス。
(項目33)
項目32に記載のデバイスであって、上記物質のうちの1つ以上が、生物活性ペプチドまたはタンパク質、治療薬物、ワクチン、鎮痛薬物、浸透エンハンサーおよびpH安定剤からなる群より選択される、デバイス。
(項目34)
項目32に記載のデバイスであって、上記異なる物質が調整された量で上記デバイスにより送達される、デバイス。
(項目35)
項目34に記載のデバイスであって、上記異なる物質のうちの少なくとも1つが上記生物学的膜中に受動的に拡散する、デバイス。
(項目36)
項目34に記載のデバイスであって、上記物質が同時にか、連続的にか、交互にか、またはそれらの任意の組み合わせで送達される、デバイス。
(項目37)
項目1に記載のデバイスであって、フラックス増大デバイスをさらに備え、上記フラックス増大デバイスは上記生物学的膜への物質のフラックス速度を増大する、デバイス。
(項目38)
項目37に記載のデバイスであって、上記フラックス増デバイスが、イオン導入法、エレクトロポレーション、電気浸透、ソノフォレシス、および加圧からなる群より選択される技術により、上記生物学的膜への物質のフラックス速度を増大する、デバイス。
(項目39)
項目21に記載のデバイスであって、上記複数のチャンバーのうちの少なくとも1つが、上記デバイスの単回使用の後に使い捨てられる、デバイス。
(項目40)
項目1に記載のデバイスであって、上記デバイスは単回使用用であり、上記使用後に上記デバイスは廃棄される、デバイス。
(項目41)
項目1に記載のデバイスであって、ディスポーザブル構成要素をさらに備える、デバイス。
(項目42)
項目41に記載のデバイスであって、上記ディスポーザブル構成要素が、上記生物学的膜から回収される生物学的流体と反応する試薬で処理されており、上記生物学的流体内の検体の量と予測可能に関連するシグナルまたは特性の測定可能な変化を生成する、デバイス。
(項目43)
項目41に記載のデバイスであって、上記ディスポーザブル構成要素が、界面活性剤、疎水性化合物または親水性化合物のうちの1つまたはそれらの任意の組み合わせで処理されている、デバイス。
(項目44)
項目41に記載のデバイスであって、上記ディスポーザブル構成要素が、抗菌化合物または抗凝固化合物またはプロテアーゼインヒビター化合物で処理されている、デバイス。
(項目45)
項目41に記載のデバイスであって、上記ディスポーザブル構成要素が、熱的刺激、化学的刺激または電気的刺激により放出される材料を含む刺激応答性ポリマー性ゲル部分を備える、デバイス。
(項目46)
項目41に記載のデバイスであって、上記ディスポーザブル構成要素が、加熱された場合に化合物を放出する材料を含む、デバイス。
(項目47)
項目1に記載のデバイスであって、上記基材上または上記基材内に位置するミキサーをさらに備え、上記ミキサーは上記生物学的膜への物質の経皮送達の前に物質を混合し得る、デバイス。
(項目48)
項目31に記載のデバイスであって、上記第1の物質が乾燥調合物の薬学的に受容可能な因子であり、そして上記第2の物質が、上記乾燥調合物を薬学的に受容可能な液体またはゲル調合物へと再構成するための希釈剤である、デバイス。
(項目49)
項目32に記載のデバイスであって、上記デバイスによって、上記異なる物質が、上記生物学的膜中の近接する位置にある生物中に、一旦上記異なる物質が上記生物の組織基質内にあると合わせられそして混合され得るように送達される、デバイス。
(項目50)
項目2に記載のデバイスであって、上記織られた材料が伝導性繊維および非伝導性繊維を含む、デバイス。
(項目51)
ミクロポレーションデバイスを製造する方法であって、以下:
基材を得る工程;および
上記基材上に伝導性ネットワークを形成する工程、
を包含し、上記伝導性ネットワークがミクロポレーターへの電気的接続を提供する、方法。
(項目52)
項目51に記載の方法であって、上記ミクロポレーターが、生物学的膜への直接接触を介して熱エネルギーを伝導的に送達してミクロポアを形成するに十分な深さの上記膜のいくらかの部分の切除を引き起こし得るプローブエレメント、電気機械的アクチュエーター、微小ランセット、微小針または微小ランセットのアレイ、音波エネルギーアブレーターおよびレーザー切除システムからなる群より選択される、方法。
(項目53)
項目51に記載の方法であって、上記基材が、織られた材料、フィルム、支持層およびシートからなる群より選択される、方法。
(項目54)
項目53に記載の方法であって、上記基材がパーフォレーションを備える、方法。
(項目55)
項目52に記載の方法であって、上記プローブエレメントが、予備形成されたワイヤ導体、付着した伝導性材料、機械加工された伝導性材料、レーザー切断された伝導性材料、接着性フォイル、電気めっきされた材料、スクリーン印刷された材料およびエッチングされた伝導性材料からなる群より選択される、方法。
(項目56)
項目52に記載の方法であって、上記プローブエレメントが、生物学的膜を切除し得る電気的に加熱される抵抗エレメント、光学的に加熱される局所色素アブソーバー層および光学的に加熱される局所色素層からなる群より選択される、方法。
(項目57)
項目53に記載の方法であって、上記織られた材料が伝導性繊維および非伝導性繊維を含む、方法。
(項目58)
項目51に記載の方法であって、上記伝導性ネットワーク上に接着層を結合する工程をさらに包含する、方法。
(項目59)
項目54に記載の方法であって、上記パーフォレーション上に非伝導性プラグを形成する工程をさらに包含する、方法。
(項目60)
項目51に記載の方法であって、上記伝導性ネットワークをレザーバーに結合する工程をさらに包含する、方法。
(項目61)
生物学的膜に開口部を形成するための方法であって、以下:
上記生物学的膜に接近させてミクロポレーションデバイスを配置する工程、および
上記ミクロポレーションデバイスが上記生物学的膜において少なくとも1つの開口部を形成するのを誘発する工程、
を包含し、
上記ミクロポレーションデバイスが以下:
少なくとも1つのレザーバー、ならびに少なくとも1つのミクロポレーターおよび基材を備える、組織インターフェイス
を備え、上記ミクロポレーターが上記基材上または上記基材内に位置する、方法。
(項目62)
項目61に記載の方法であって、上記誘発する工程が上記生物学的膜に熱を伝達する、方法。
(項目63)
項目61に記載の方法であって、上記少なくとも1つの開口部が直径1〜1,000ミクロンを有する、方法。
(項目64)
項目61に記載の方法であって、上記開口部にエンハンサーを適用する工程をさらに包含する、方法。
(項目65)
項目61に記載の方法であって、上記開口部に浸透体を適用する工程をさらに包含する、方法。
(項目66)
項目61に記載の方法であって、上記開口部から流体を収集する工程をさらに包含する、方法。
(項目67)
項目66に記載の方法であって、上記流体中の検体をモニタリングする工程をさらに包含する、方法。
(項目68)
項目61に記載の方法であって、上記生物学的膜に物質を送達する工程をさらに包含する、方法。
(項目69)
項目68に記載の方法であって、上記生物学的膜への物質の送達の前に物質を混合する工程をさらに包含する、方法。
(項目70)
項目61に記載の方法であって、上記生物学的膜に物質を送達する工程および上記生物学的膜から流体を収集する工程をさらに包含する、方法。
(項目71)
項目61に記載の方法であって、上記ミクロポレーターが、生物学的膜への直接接触を介して熱エネルギーを伝導的に送達してミクロポアを形成するに十分な深さの上記膜のいくらかの部分の切除を引き起こし得るプローブエレメント、電気機械的アクチュエーター、微小ランセット、微小針または微小ランセットのアレイ、音波エネルギーアブレーター、レーザー切除システム、および高圧流体ジェットパンクチャラーからなる群より選択される、方法。
(項目72)
項目71に記載の方法であって、上記プローブエレメントが、生物学的膜を切除し得る電気的に加熱される抵抗エレメント、光学的に加熱される局所色素アブソーバー層および光学的に加熱される局所色素層からなる群より選択される、方法。
(項目73)
生物学的膜を通じて下にある組織基質に化合物を投与するための方法であって、以下:
a)生物学的膜とフラックス増大セルを接触させる工程であって、
i)上記生物学的膜は上記組織基質と密接している内側表面と、外側表面とを有し、上記生物学的膜は静止状態、加圧された状態および解放された状態を有し、上記加圧された状態において、上記膜の外側表面は上記静止状態と比較して実質的に凹状の形態になるように押されておりかつ上記下にある組織基質は圧迫されており、上記解放された状態において、上記膜の外側表面は実質的に凸形状であるように偏りかつ上記下にある組織基質は減圧に供されており、そして
ii)上記フラックス増大セルはセルキャビティーを規定する外側壁および上記セルキャビティー中に移動可能に収容されるレザーバーを備え、上記レザーバーは内側キャビティーおよび出口を備え、上記内側キャビティーは浸透体を収容する、工程;
b)上記外側壁と上記膜との間にシールを形成する工程であって、上記レザーバーの出口が上記膜中の人工的ポアと連絡している、工程;
c)上記レザーバーの上記内側キャビティーに陽圧を適用する工程;
d)上記レザーバーを上記膜の方に偏らせ、それにより上記膜の上記圧迫された状態を生成する工程;ならびに
e)上記膜から離れるように上記レザーバーを偏らせ、それにより上記解放された状態を生成する工程、
を包含する、方法。
(項目74)
項目73に記載の方法であって、以下:
f)上記レザーバーを上記膜の方へ偏らせ、それにより上記膜の上記圧迫された状態を生成する工程;および
g)上記膜から離れるように上記レザーバーを偏らせ、それにより上記解放された状態を生成する工程、
をさらに包含する、方法。
(項目75)
項目73に記載の方法であって、上記レザーバーがしなやかな膜により上記外側壁に移動可能に連結されている、方法。
(項目76)
生物学的膜を通じて下にある組織基質に化合物を投与するための方法であって、以下:
a)生物学的膜とフラックスセルを接触させる工程であって、
i)上記生物学的膜は上記組織基質と密接している内側表面と、外側表面とを有し、上記生物学的膜は静止状態、加圧された状態および解放された状態を有し、上記加圧された状態において、上記膜の外側表面は上記静止状態と比較して実質的に凹状の形態になるように押されておりかつ上記下にある組織基質は圧迫されており、上記解放された状態において、上記膜の外側表面は実質的に凸形状であるように偏りかつ上記下にある組織基質は減圧に供されており、そして
ii)上記フラックスセルはセルキャビティーを規定する外側壁、上記セルキャビティー中に移動可能に収容されるレザーバー、ならびにミクロポレーションエレメントを備え、上記レザーバーは内側キャビティーおよび出口を備え、上記内側キャビティーは浸透体を収容する、
工程;
b)上記外側壁と上記膜との間にシールを形成する工程;
c)上記膜中に人工的ポアを形成する工程であって、上記レザーバーの出口が上記人工的ポアと連絡している、工程
d)上記レザーバーの上記内側キャビティーに陽圧を適用する工程;
e)上記レザーバーを上記膜の方に偏らせ、それにより上記膜の上記圧迫された状態を生成する工程;ならびに
f)上記膜から離れるように上記レザーバーを偏らせ、それにより上記解放された状態を生成する工程、
を包含する、方法。
(項目77)
項目76に記載の方法であって、以下:
g)上記レザーバーを上記膜の方へ偏らせ、それにより上記膜の上記圧迫された状態を生成する工程;および
h)上記膜から離れるように上記レザーバーを偏らせ、それにより上記解放された状態を生成する工程、
をさらに包含する、方法。
(項目78)
項目76に記載の方法であって、上記人工的ポアが、局所加熱、機械的穿刺、音波エネルギー、液圧穿刺、およびエレクトロポレーションからなる群より選択される方法により形成される、方法。
(項目79)
項目73に記載の方法であって、上記レザーバーがしなやかな膜によって上記外側壁に移動可能に連結されている、方法。
(項目80)
生物学的膜の下にある組織基質から生物学的流体サンプルを得るための方法であって、以下:
a)生物学的膜とフラックス増大セルを接触させる工程であって、
i)上記生物学的膜は上記組織基質と密接している内側表面と、外側表面とを有し、上記生物学的膜は静止状態、加圧された状態および解放された状態を有し、上記加圧された状態において、上記膜の外側表面は上記静止状態と比較して実質的に凹状の形態になるように押されておりかつ上記下にある組織基質は圧迫されており、上記解放された状態において、上記膜の外側表面は実質的に凸形状であるように偏りかつ上記下にある組織基質は減圧に供されており、そして
ii)上記フラックス増大セルはセルキャビティーを規定する外側壁および上記セルキャビティー中に移動可能に収容されるレザーバーを備え、上記レザーバーは内側キャビティーおよび出口を備える、
工程;
b)上記外側壁と上記膜との間にシールを形成する工程であって、上記レザーバーの出口が上記膜中の人工的ポアと連絡している、工程;
c)上記レザーバーの上記内側キャビティーに減圧を適用する工程;
d)上記レザーバーを上記膜の方に偏らせ、それにより上記膜の上記圧迫された状態を生成する工程;ならびに
e)上記膜から離れるように上記レザーバーを偏らせ、それにより上記解放された状態を生成する工程、
を包含する、方法。
(項目81)
生物学的膜の下にある組織基質から生物学的流体サンプルを得るための方法であって、以下:
a)生物学的膜とフラックスセルを接触させる工程であって、
i)上記生物学的膜は上記組織基質と密接している内側表面と、外側表面とを有し、上記生物学的膜は静止状態、加圧された状態および解放された状態を有し、上記加圧された状態において、上記膜の外側表面は上記静止状態と比較して実質的に凹状の形態になるように押されておりかつ上記下にある組織基質は圧迫されており、上記解放された状態において、上記膜の外側表面は実質的に凸形状であるように偏りかつ上記下にある組織基質は減圧に供されており、そして
ii)上記フラックスセルはセルキャビティーを規定する外側壁、上記セルキャビティー中に移動可能に収容されるレザーバー、ならびにミクロポレーションエレメントを備え、上記レザーバーは内側キャビティーおよび出口を備え、上記内側キャビティーは浸透体を収容する、
工程;
b)上記外側壁と上記膜との間にシールを形成する工程;
c)上記膜中に人工的ポアを形成する工程であって、上記レザーバーの出口が上記人工的ポアと連絡している、工程
d)上記レザーバーの上記内側キャビティーに陽圧を適用する工程;
e)上記レザーバーを上記膜の方に偏らせ、それにより上記膜の上記圧迫された状態を生成する工程;ならびに
f)上記膜から離れるように上記レザーバーを偏らせ、それにより上記解放された状態を生成する工程、
を包含する、方法。
(項目82)
フラックス増大デバイスであって、以下:
セルキャビティーを規定する外側壁;ならびに
内側キャビティーおよび出口を備える、レザーバ−、
を備え、上記レザーバーは上記セルキャビティー内に移動可能に収容される、デバイス。(項目83)
項目82に記載のデバイスであって、上記レザーバーがしなやかな膜により上記外側壁に移動可能に取り付けられている、デバイス。
(項目84)
項目82に記載のデバイスであって、ミクロポレーターをさらに備える、デバイス。
(項目85)
項目82に記載のデバイスであって、閉ループ送達およびモニタリングシステムをさらに備え、上記閉ループ送達およびモニタリングシステムは、生物学的膜を通じての物質の経皮送達および上記生物学的膜を通じての検体の経皮的回収をすることができる、デバイス。
(項目86)
項目82に記載のデバイスであって、閉ループ送達およびモニタリングシステムをさらに備え、上記閉ループ送達およびモニタリングシステムは、動物の特性の値に基づいて生物学的膜を通じての物質の経皮送達を調整し得る、デバイス。
(項目87)
項目82に記載のデバイスであって、上記特性が、心拍数、血圧、温度、呼吸および皮膚表面伝導率からなる群より選択される、デバイス。
(項目88)
項目1に記載のデバイスであって、閉ループ送達およびモニタリングシステムをさらに備え、上記閉ループ送達およびモニタリングシステムは、動物の特性の値に基づいて生物学的膜を通じての物質の経皮送達を調整し得る、デバイス。
(項目89)
項目88に記載のデバイスであって、上記特性が、心拍数、血圧、温度、呼吸および皮膚表面伝導率からなる群より選択される、デバイス。
(項目90)
ミクロポレーションデバイスであって、以下:
少なくとも1つのレザーバー、ならびに
少なくとも1つのミクロポレーターおよび基材を備える、組織インターフェイス、
を備え、
上記ミクロポレーターが、生物学的膜への直接接触を介して熱エネルギーを伝導的に送達してミクロポアを形成するに十分な深さの上記膜のいくらかの部分の切除を引き起こし得るプローブエレメント、電気機械的アクチュエーター、微小ランセット、微小針または微小ランセットのアレイ、音波エネルギーアブレーター、レーザー切除システム、および高圧流体ジェットパンクチャラーからなる群より選択され、そして
さらに上記ミクロポレーターが上記基材上または上記基材内に位置する、デバイス。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、薄膜組織インターフェース(TFTI)デバイスの一般的な実施形態であり、単一抵抗エレメントの拡大図を示す。
【図2】図2は、並列伝導性ネットワークおよび抵抗エレメントの例を示す。
【図3】図3は、単一ワイヤエレメントアクチュエーターの操作を図示する。
【図4】図4は、ミクロ機械加工されたエレメントアクチュエーターを示す。
【図5】図5は、例示実施形態の製造のためのベースとして使用されるハイブリッドで織られた材料の拡大図である。
【図6】図6は、ワイヤ導体に沿って抵抗エレメントを形成する、スクリーン印刷された伝導性トレース(trace)を有する、図5に示されるものと同じ織られた材料である。
【図7】図7は、例示実施形態を製造するために使用される独特のスクリーン印刷技術を図示する。
【図8】図8は、例示実施例における単一ポレーションエレメントの、製造途中、製造の完了、および作動後が示される、拡大側面図である。
【図9】図9は、例示実施形態において蒸着された、タンタルの並列伝導性ネットワークおよび抵抗エレメントである。
【図10】図10は、製造途中およびその最終形態で示される例示実施形態における単一ポレーションエレメントの拡大側面図である。
【図11】図11は、製造途中およびその最終形態で示される例示実施形態における単一ポレーションエレメントの拡大側面図である。
【図12】図12は、例示実施形態のためのベースである、穿孔したポリカーボネートシートを示す。
【図13】図13は、スクリーン印刷された伝導性トレースを有する、図12の穿孔したシートを示す。
【図14】図14は、スクリーン印刷されたプラグ材料を有する、図13の穿孔したシートおよび伝導性ネットワークを示す。
【図15】図15は、スクリーン印刷された抵抗エレメントを有する図14のデバイスを示す。
【図16】図16は、スクリーン印刷された皮膚シール接着層を有する、例示実施形態の最終形態を示す。
【図17】図17は、統合されたデバイスの1つの実施形態の分解図である。
【図18】図18は、1つの浸透体チャンバーおよび組織インターフェースを有する、統合されたデバイスの1つの実施形態を示す。
【図19】図19は、全体的にディスポーザブルな統合されたデバイスの1つの実施形態を示す。
【図20】図20は、デバイスの一方の構成要素が再使用可能であり、他方の構成要素がディスポーザブルである、統合されたデバイスの1つの実施形態を示す。
【図21】図21は、単一セルフラックス増大デバイスの1つの実施形態を示す。
【図22】図22は、経皮的薬物送達適用または検体モニタリング適用のための、機械的に作動される圧力調節デバイスの実施形態の断面図を示す。
【図23】図23は、ポレーションエレメントの作動前、ならびにポレーションエレメントの作動および圧力調節の作動後の圧力調節デバイスの断面図を示す。
【図24】図24は、作動前の単一圧力調節ミクロセルの詳細図を示す。
【図25】図25は、多機能の能力を備えた閉ループ送達およびモニタリングシステムを有する統合されたデバイスの実施形態を示す。
【図26】図26は、タングステンフィルムの直接レーザー機械加工により製造されたミクロポレーションエレメントの作動された平面アレイの顕微鏡写真を示す。
【図27】図27は、タングステンフィルムの直接レーザー機械加工により製造されるミクロポレーションエレメントの直列/並列相互接続平面アレイの顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(詳細な説明)
(定義)
本明細書中で使用される場合「角質層」とは、皮膚の最も外側の層をいい、この層は、種々の乾燥状態にある約15〜約20層の細胞からなる。この角質層は、身体中から外部環境への水の損失および外部環境から身体の内側への攻撃に対する障壁を提供する。
【0018】
本明細書中で使用される場合「組織」とは、特定の種類の細胞の凝集物をいい、その細胞内物質を含み、これは、構造物質を形成する。その組織の少なくとも1つの表面は、デバイスに接近可能でなければならない。好ましい組織は皮膚である。本発明を用いる使用に適切な他の組織としては、粘膜組織および軟部器官が挙げられる。
【0019】
本明細書中に使用される場合、用語「間質液」は、身体中の細胞間の空間を占める透明な液体である。本明細書中で使用される場合、用語「生物学的流体」とは、生物学的生物を起源とする流体として規定され、血清または全血、ならびに間質液が挙げられる。
【0020】
本明細書中で使用される場合「ポレーション」「ミクロポレーション」または類似する任意のこのような用語は、生物学的膜(例えば、皮膚または粘膜)または生物の外層中にかあるいはこれらを通る小さい穴またはポアの形成を意味し、この形成により、分析のための生物学的流体(例えば、その生物学的膜の下からの検体)の通過あるいは選択された目的のためのその生物学的膜の外からの活性な浸透体もしくは薬物の通過のために、この生物学的膜の障壁特性が弱められる。好ましくは、そのような形成される穴または「ミクロポア」は、直径が約1〜1000ミクロンであり、そしてその下にある組織に有害な影響を与えることなくこの層の障壁特性を破壊するに十分にその生物学的膜中に広がる。用語「ミクロポア」は、単純にするために単数形で使用されるが、本発明のデバイスが複数の人工的開口部を形成し得ることが、理解されるべきである。ポレーションは、選択された目的のため、あるいは特定の医学的手順または外科的手順のために、身体への生物学的膜の障壁特性を減少し得る。
【0021】
「ミクロポレーター」は、ミクロポレーションすることができるミクロポレーションデバイスのための構成要素である。ミクロポレーターの例としては、生物学的膜への直接接触を介して熱エネルギーを伝導的に送達してミクロポアの形成するに十分な深さのその膜のいくらかの部分の切除を引き起こし得る加熱されるプローブエレメント(この加熱されるプローブは、生物学的膜を切除し得る電気的に加熱される抵抗エレメントあるいは光学的に加熱される局所色素/アブソーバー層を含み得る)、電気機械的アクチュエーター、微小ランセット、微小針または微小ランセットのアレイ、音波エネルギーアブレーター、レーザー切除システム、および高圧流体ジェットパンクチャラーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書中に使用される場合「貫入」とは、「火工(pyrotechnic)エレメントが爆発した時に放出される熱および運動エネルギーにより引き起こされる細胞の制御された除去を意味し、これにより、生物学的膜の細胞およびおそらく近接するいくらかの細胞がその部位から「追い払われる」。
【0023】
本明細書中で使用される場合「可溶性」および「ヒューズ」とは、十分な量のエネルギーまたは熱が適用された場合に、それ自身を電気回路から除去し得るエレメントをいい、すなわち、抵抗性の電気的に活性化されるポレーションエレメントが可溶性エレメントであるように設計されている場合、これは、活性化の際、生物学的膜におけるミクロポアの形成の間または後に、そのエレメントが壊れ、そのエレメントを通る電流が停止することを意味する。
【0024】
本明細書中で使用される場合「貫入増大」または「浸透増大」とは、薬物、検体、または他の化学物質分子、化合物、粒子もしくは物質(「浸透体」とも呼ばれる)に対する生物学的膜の浸透性の増加を意味し、すなわち、生物学的膜を通じて外への検体の回収目的のため、あるいは生物学的膜を横切りその下にある組織への薬物の送達目的のため、薬物、検体、または他の化学物質分子、化合物もしくは粒子が生物学的膜に浸透しそしてその生物学的膜を横切るフラックスの増加を促進する速度を増加することを意味する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「エンハンサー」、「化学的エンハンサー」、「貫入エンハンサー」「浸透エンハンサー」などは、浸透体、検体、または他の分子が生物学的膜を横切るフラックスを増加するエンハンサーすべてを含み、そして機能性のよってのみ限定される。換言すると、細胞の膜を乱す化合物および溶媒、ならびに他の化学的増大因子すべてが含まれるよう意図される。さらに、能動的力エンハンサー技術(例えば、音波エネルギーの適用、機械的吸引、圧力、または組織の局所変形、イオン導入法またはエレクトロポレーション)すべてが含まれる。例えば、アンモニアが、本発明のデバイスのためのエンハンサーとして使用され得る。この例において、そのアンモニアは、形成されるミクロポアに近接するかまたはそこからいくらかの距離にわたる組織内の選択された組織構造(例えば、毛細血管壁)の浸透性を増大し得る。1つ以上のエンハンサー技術が、連続的または同時に合わせられ得る。例えば、アンモニアエンハンサーが、まず、その毛細血管壁を浸透性にするために適用され得、ついで、その毛細血管床の周囲およびそれを含む組織へと浸透体を能動的に駆動するために、イオン導入エネルギーまたは音波エネルギーの場が適用され得る。本発明の火工エレメントのデトネーションにより生成される衝撃波は、それ自体が音波浸透エンハンサーである。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「経皮(的)(transdermal)」または「経皮(的)(percutaneous)」とは、浸透体の有効治療血液レベルもしくは局所組織レベルを達成するための生物学的膜中またはその膜を通じての浸透体の通過、あるいは、身体中に存在する分子または流体(「検体」)をその検体分子が身体の外側で収集され得るように通過させることを意味する。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「浸透体」、「薬物」または「薬理学的に活性な因子」あるいは類似する他の任意の用語は、当該分野において以前に公知の方法および/または本発明において教示される方法による経皮投与に適切な、所望の生物学的または薬理学的効果を誘導する、任意の化学的または生物学的な材料もしくは化合物を意味し、このような効果としては以下が挙げられ得るがこれらに限定されない:(1)生物に対して予防効果を有し、所望されない生物学的効果(例えば、感染)を妨げる、(2)疾患により引き起こされる状態を緩和する(例えば、疾患の結果として引き起こされる疼痛または炎症を緩和する)、および/あるいは(3)生物から疾患を緩和、軽減、または完全な除去のいずれかをする。この効果は、局所的(例えば、局所的麻酔効果を提供すること)であってもよいし、またはこの効果は全身的であってもよい。このような物質は、身体中へ通常は送達される(身体表面および膜(皮膚を含む)を通ることを含む)広範な種類の化合物を含む。一般的には、このような物質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:抗感染剤(例えば、抗菌剤および抗ウイルス剤);鎮痛剤および鎮痛剤の組み合わせ;食欲抑制剤;駆虫薬;抗関節炎薬;ぜん息治療薬;鎮痙薬;抗うつ薬;抗糖尿病薬;下痢止め薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症薬;抗片頭痛製剤;制吐薬;抗腫瘍薬;抗パーキンソン病薬(antiparkinsonism drug);かゆみ止め;抗精神病薬;解熱薬;鎮痙薬;抗コリン作用薬;交感神経作用薬;キサンチン誘導体;心臓血管製剤(カリウムおよびカルシウムチャネルブロッカー、βブロッカー、αブロッカー、および抗不整脈剤を含む);抗高血圧薬;利尿薬および抗利尿薬;血管拡張薬(全身血管拡張薬、冠状血管拡張薬、末梢血管拡張薬および脳血管拡張薬を含む);中枢神経系刺激薬;血管収縮薬;咳および感冒の製剤(うっ血除去薬を含む);ホルモン(例えば、エストラジオールおよび他のステロイド(コルチコステロイドを含む));催眠薬;免疫抑制剤;筋弛緩薬;副交感神経遮断薬;精神刺激薬;鎮静薬;ならびに精神安定薬。本発明により、イオン化薬物および非イオン化薬物の両方が送達され得、同様に、高分子量または低分子量いずれかの薬物も送達され得る。さらに、微粒子、DNA、RNA、ウイルス抗原あるいは上記に列挙した浸透体の任意の組み合わせが、本発明の方法により送達され得る。例としては、以下が挙げられる:ポリペプチド(タンパク質およびペプチド(例えば、インスリン)を含む);放出因子(黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)を含む);ならびに糖質(例えば、ヘパリン)。イオン化浸透体および非イオン化浸透体が送達され得、同様に、50ダルトン未満〜1,000,000ダルトンを越える範囲の分子量を有する物質を含む、任意の分子量の浸透体が送達され得る。
【0028】
本明細書中で使用される場合、薬学的に活性な薬剤の「有効」量とは、任意の医学的処置に伴う妥当な利益/危険比で、所望の局所的または全身的な効果および働きを提供する化合物の十分な量を意味する。本明細書中で使用される浸透または化学エンハンサーの「有効」量は、生物学的膜浸透性における所望の増加、貫入の所望の深さ、投与の速度、および送達される薬剤の量を提供するために選択される量を意味する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「火工エレメント」は、適切に爆発された場合に、爆発性の特徴を有する、任意の化学物質、物体あるいは化学物質および/または物体の組み合わせを意味する。本発明の火工エレメントは、熱の生成およびより安定な物質(例えば、気体)の形成(これは、これらが生成される高温で膨張する場合、圧力を及ぼし、これによって、短期間続く高いピーク圧力を有する衝撃波を作り出す)を伴う非常に迅速に分解(例えば、燃焼)を受ける。従って、火工エレメントによって生成されるエネルギーは、高温と高圧の両方を含む。本発明に適切な火工エレメントの1つの例としては、有機溶媒中の懸濁物として化学量論量の混合物100部のうちの1〜5部のニトロセルロース結合剤と合わせた、ジルコニウム粉末および過塩素酸カリウムの化学量論量の混合物を含む。別の例としては、ニトログリセリンのゲル化形態があり、これは、経皮送達適用のための既に認められた薬物であるというさらなる利点を有する。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「火工インク」は、液体形態で適用され、そして引き続いて固体にまたは火工エレメントのゲル化形状へと硬化する任意の火工エレメントを意味する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「生物学的膜」は、生物の1つの領域を別の領域から隔てる構造(例えば、毛細血管壁、腸の管壁)または生物をその外側環境から隔てる生物の外側層(例えば、上皮組織、皮膚、頬粘膜または他の粘膜)を意味する。皮膚の角質層もまた、生物学的膜として含まれ得る。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「動物」または「生物」は、ヒトおよび本発明が適用され得る植物を含む他の生きている生物をいう。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「検体」は、個体が身体の内側の濃度または活性を知ることを欲し得る、本発明において教示される技術または当該分野で以前に公知の技術によって生物学的膜を通過するのに適切な任意の化学的または生物学的な物質または化合物を意味する。グルコースは検体の特定の例である。なぜなら、グルコースは、皮膚の通過に適切な糖であり、そして個体(例えば、糖尿病を有する個体)は、血液グルコースレベルを知りたいと欲し得るからである。検体の他の例としては、ナトリウム、カリウム、ビリルビン、尿素、アンモニア、カルシウム、鉛、鉄、リチウム、サリチル酸塩などのような化合物が挙げられるがこれらには限定されない。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「経皮フラックス速度」は、任意の検体の個体、ヒトまたは動物の皮膚を外へ通過する速度、あるいは生物中へと皮膚を通る任意の浸透体薬物、薬学的に活性な薬剤、色素、または顔料の通過速度である。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「人工的開口部」または「ミクロポア」は、流体を送達または抽出するのに適切な大きさの生物学的膜の任意の物理的な裂け目(ミクロポアを含む)を意味する。従って、「人工的開口部」または「ミクロポア」または任意のこのような類似の用語は、生物学的膜のまたは生物学的膜を通る所望の深さに作られる小さな穴、開口部またはポアをいう。この開口部は、米国特許第5,885,211号に記載されるような熱エネルギーの伝導によって、または機械的プロセスによって、または火工プロセスによって、形成され得る。穴またはポアの大きさは、例えば、直径約1〜1000ミクロンである。用語ミクロポアは単純さにために単数形で使用されるが、このデバイスおよび方法が複数の開口部またはポアを形成し得ることが理解されるべきである。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「使用」または「単回使用」は、例えば、数秒から数日の間続き得るデバイスの単回適用である。適用は、組織へのデバイス組織インターフェースの適用、ポレーションプロセス、送達工程または抽出工程、そして組織からのデバイス組織インターフェースの除去によって示される。この「使用」または「単回使用」は、送達される浸透体、抽出される生物学的流体、および所望のフラックス速度の性質に依存して、数秒、数分、または数日続き得る。
【0037】
「イオン導入法」は、2つ以上の電極の使用による組織表面への外部電場の適用および組織へのイオン輸送(電気浸透)に付随する水フラックスに運ばれるイオン化形態の薬物または非イオン化形態の薬物の送達あるいは生物学的流体または検体の類似の抽出をいう。
【0038】
「エレクトロポレーション」は、ミクロポアよりも数桁小さい細胞壁の開口部の電流による作製をいう。エレクトロポレーションを用いて形成される開口部は、典型的には、どの次元でも数ナノメートルにすぎない。エレクトロポレーションは、生物の外側層の下の標的組織による選択された浸透体の細胞取り込みを、この浸透体がミクロポアを通じてこれらのより深い層の組織へと通った後に促進するのに有用である。
【0039】
「ソノフォレシス」または「ソニフィケーション」は、交流を物質に通すことにより、圧電性結晶または他の電気機械的エレメントを振動させることによって生成される音波エネルギーをいう(超音波として通常記載される周波数を含み得る)。薬物分子に対する皮膚の浸透性を増加させるための音波エネルギーの使用は、ソノフォレシスまたはフォノフォレシスと呼ばれている。
【0040】
「統合されたデバイス」は、組織の人工的開口部を形成するのに適し、かつ1つ以上のさらなる適用(例えば、1つ以上の浸透体を組織に送達すること(好ましくは、その人工的開口部を通る)、そして必要に応じて、組織から生物学的流体を収集すること(好ましくは、その人工的開口部を通る)、そして必要に応じてそれらの特徴を決定するために生物学的流体を分析すること)にさらに適したデバイスを意味する。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「非侵襲性」は、身体の一部への針、カテーテル、または他の侵襲性の医学的装置の侵入を必要としないことを意味する。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「最小の侵襲性」は、下にある組織に対して実質的な損傷を引き起こさないで、小さな穴またはミクロポアを作製するために角質層に侵入する機械的、液圧的、または電気的手段の使用をいう。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に受容可能なキャリア」は、その中に薬学的に受容可能な薬物のような物質が送達のために提供され得るキャリアをいう。薬学的に受容可能なキャリアは、例えば、当該分野において「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」、Mack Publishing Company,Pennsylvania,1995に記載され、その開示は、本明細書において参考として援用される。キャリアには、例えば、水および他の水溶液、糖類、多糖類、緩衝液、賦形剤、および生分解性ポリマー(例えば、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアミノ酸、リポソームおよびこれらの混合物)が挙げられ得る。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「レザーバー」は、生物への生物学的膜の人工的開口部を通じての送達のための浸透体を含むように設計されているか、または生物学的膜の人工的開口部を通じて生物から抽出される生物学的流体サンプルを受容するように設計され得る、デバイス内の指定された領域またはチャンバをいう。レザーバーはまた、別々に含まれた生体活性浸透体の効果を高める賦形化合物を含み得る。さらに、レザーバーは、抽出された生物学的流体における選択された検体の測定または検出を可能にするように設計された反応性酵素または試薬を含み得るかまたはそれらによって処理され得る。レザーバーは、開いた容積空間、ゲル、引き続く放出または反応のために選択された化合物で覆われたかまたは処理された平坦な平面空間、あるいは多孔性ポリマーのような浸透性固体構造から構成され得る。
【0045】
本発明は、ヒト皮膚の角質層に微視的な穴(すなわち、約1〜1000ミクロンのミクロポア)を痛みなく作製するためのデバイスおよび方法を含む。このデバイスは、熱エネルギー供給源または熱プローブを使用し、これは、ミクロポアを作製するために角質層と接触して保持される。熱ミクロポアは、生物学的膜の組織を切除するために、短時間スケール(1マイクロ秒〜50ミリ秒)の、熱エネルギパルスを使用して作製される。このプロセスは、米国特許第5,885,221号に詳細に記載され、本明細書によってその全体が参考として援用される。
【0046】
本発明は、局所的に適用される場合に身体への治療物質の経皮的な輸送を促進するため、または分析のために身体内の検体に接触するために、角質層の障壁機能を排除する迅速かつ痛みのない方法を容易にする。この方法は、角質層または他の選択された生物学的膜の標的領域ヘの小領域の熱供給源の接触適用で始まる手順を利用する。
【0047】
熱供給源は、以下の性質を有する。第1に、熱供給源は、生物学的膜との接触が、小領域、典型的には約1〜1000μmの直径に制限されるような大きさにされなければならない。第2に、周囲の皮膚表面温度レベル(33℃)から123℃より高く(好ましくは、400℃より高い温度)まで接触点の角質層の温度を調節し、次いで、近接する生存可能な組織に対する付随的な損傷および被験体個体への感覚を最小にするために1マイクロ秒〜50ミリ秒の範囲内の合計サイクル時間でほぼ周囲皮膚温度に戻す能力を有さなければならない。この調節は、電気的にか、機械的にか、または化学的に引き起こされ得る。
【0048】
熱供給源が皮膚に接触して配置されると、これは、周囲の皮膚温度の最初の点から123℃を越えるピーク温度へ、そしておよその周囲皮膚温度への一連の1つ以上の温度変化を通してサイクルされる。ミクロポレーションプロセスの被験体による感覚的知覚を最小化または排除するために、これらのパルスは、期間が限定され、そしてパルス間間隔は、約45℃未満の平均温度を達成するために、皮膚の生存可能な組織層(最も詳細には、弱った皮膚組織)の冷却を可能にするのに十分な長さである。これらのパラメーターは、熱プローブと下にある真皮の弱った組織との間に位置する生存可能な上皮組織および皮膚組織の熱時間定数(およそ30〜80ms)に基づく。パルス化された熱エネルギーのこの適用の結果は、以下である:十分なエネルギーが、小さな標的スポット内の角質層に伝導され、この体積の組織の局所的温度が、組織に結合した揮発性成分(例えば、角質層の水および脂質)の蒸発点より十分高く上げられる。温度が100℃より上に上昇されたとき、この局所的スポット内の角質層のこれらの揮発性成分(典型的には、角質層内に5%〜15%含む)が、非常に迅速に蒸発し膨張するように誘導され、この蒸発事象の近位に位置する角質層内の角質細胞の蒸気駆動除去を引き起こす。米国特許第4,775,361号は、角質層温度123℃がこのタイプのフラッシュ蒸発が起こる閾値を表す。熱エネルギーの引き続くパルスが適用されると、ミクロポアが角質層を通って上皮の次の層(淡明層)に形成されるまで、角質層のさらなる層が除去される。上皮の1熱時間定数未満までに熱パルスの持続時間を制限し、そして上皮に伝導されるすべての熱エネルギーを十分長い時間の間、放散させることによって、上皮の生存可能な層の温度における上昇は最小である。これによって、ミクロポレーションプロセス全体が、被検体に対していかなる感覚もなく、かつ下の組織および周りの組織に損傷なく行われ得る。
【0049】
本発明の1つの実施形態は、加熱されるエレメントを通る電流の通過によって生成される熱エネルギーを使用してミクロポアを作製する、実際的な低コスト薄膜組織インターフェース(TFTI)デバイスを作製するのに適した設計および製造技術、ならびにTFTIデバイスの製造および機能的操作の方法に関する。TFTIデバイスは、幅広い範囲の生物学的膜上に1つ以上のミクロポアを作製する。TFTIは、検体モニタリングおよび浸透体(治療薬物またはタトゥー色素のような)の送達の増強のためにヒト皮膚の熱ミクロポレーションを含む適用を有する。
【0050】
TFTIは、生物学的膜の表面にミクロポアのパターンまたはアレイを迅速かつ効率的に作製する能力によって特徴付けられる。このパターンは、0.2平方mmごとに1つのポア程度のポア密度を有するミクロポアの任意の幾何学的間隔であり得、そして数平方ミリメートルから数百平方センチメートルより広い範囲までの合計のポレーションされた面積を覆い得る。TFTIデバイスは、生物学的膜と、統合されたデバイスのコントローラー部分との間にインターフェースを形成する、薄く、可撓性の従順な構造であるように設計される。この統合されたデバイスは、TFTI中の各ポレーションエレメントまたは電極または他の活性な構成要素(圧電変換器のような)に、ポレーションまたはTFTIの他の機能(例えば、限定されないが、イオン導入法、ソノフォレシス、エレクトロポレーション、または接触した組織のインピーダンス測定)を行うのに必要な電気信号を供給する。TFTIは、可撓性であり、標的の生物学的膜の形状に一致し得る。TFTIは、非常に薄く、重量において軽く、そしてレザーバーに統合するように製造され得、そしてまたよりユーザーフレンドリーな構成を可能し得るアンビリカルケーブルを介してコントローラー、電流供給源に接続され得る。1つ以上の制御可能な活性なさらなるフラックス増大特徴が、TFTIに組み込まれ(例えば、限定されないが、圧力モジュレーション、機械的操作、イオン導入法、電気浸透法、ソノフォレシスまたはエレクトロポレーション)、このさらなるフラックス制御特徴の活性化は、予めプログラムされた様式か、コントローラーへのインプットによるユーザー制御様式か、または自動閉ループ様式(ここで、浸透体の注入速度が、生物内の選択された検体、または他の測定可能な特性の測定されたレベルの関数とした調節される。他の測定可能な特性には、心拍数、血圧、温度、呼吸、および皮膚表面伝導性が挙げられ得る。例えば、生物の間質液または血清におけるグルコース濃度のリアルタイム測定に基づいてインスリン注入の速度を制御するのに非常に有用である。あるいは、いくつかの治療化合物、特に、比較的狭い治療域(ネガティブな副作用が非常に耐えられなくなる場合に有効な薬物レベルが対するものを規定する)を有する化合物を用いて、生物内のこの化合物の測定可能なレベルに基づいた注入速度を調整し、これによって、患者のボディーマスまたは代謝にかかわらない、望ましい治療域内の薬物濃度を達成および維持するための非常に正確で自己適合性の方法を可能にすることは望ましくあり得る。TFTIの設計および製造において、TFTIを含む電気伝導性のトレースの多くが、複数の機能を供給するために使用され得る。例えば、熱サイクリングを誘導するための抵抗性ポレーションエレメントへの短いパルスの電流を送達するために使用されるトレースはまた、ミクロホアが形成された後に行われる、イオン導入プロセスまたはエレクトロポレーションプロセスのための必要な電極として使用され得る。
【0051】
本発明は、少なくとも1つのレザーバーと、少なくとも1つのミクロポレーターおよび基材を備える組織インターフェースとを備える、ミクロポレーションデバイスに関し、ここで、このミクロポレーターは、この基材上または基材内に位置する。1つの実施形態において、この基材は、織られた材料、フィルム、支持層およびシートからなる群から選択され得る。この織られた材料は、伝導性繊維および非伝導性繊維を含み得る。別の実施形態において、この基材は、パーフォレーションを含む。
【0052】
このミクロポレーターは、生物学的膜への直接接触を介して熱エネルギーを伝導的に送達してミクロポアを形成するに十分な深さのその膜のいくらかの部分の切除を引き起こし得るプローブエレメント、電気機械的アクチュエーター、微小ランセット、微小針または微小ランセットのアレイ、音波エネルギーアブレーター、レーザー切除システム、および高圧流体ジェットパンクチャラーからなる群より選択され得;そしてこのプローブエレメントが、生物学的膜を切除し得る電気的に加熱される抵抗エレメント、光学的に加熱される局所色素アブソーバー層および光学的に加熱される局所色素層からなる群より選択され得る。
【0053】
本発明のミクロポレーションデバイスのいくつかの実施形態において、そのプローブエレメントは、予備形成されたワイヤ導体、付着した伝導性材料、機械加工された伝導性材料、レーザー切断された伝導性材料、接着性フォイル、電気めっきされた材料、スクリーン印刷された材料およびエッチングされた伝導性材料からなる群より選択され得る。いくつかの実施形態において、そのプローブエレメントは、生物学的膜を切除する間に破壊され得る。
【0054】
本発明の実施形態において、少なくとも1つのミクロポレーターが複数のミクロポレーターを含む。そのミクロポアデバイスの別の実施形態において、その複数のミクロポレーターは、プローブエレメントである。
【0055】
本発明のミクロポレーションデバイスは、プローブエレメントを活性化するために使用される電気回路を分離するためのダイオードをさらに備える。そのミクロポレーションデバイスは、2つ以上のプローブエレメントを備え得、これは、並列回路構成または直列回路構成あるいはそれらの組み合わせで接続されている。
【0056】
そのミクロポレーションデバイスは、そのミクロポレーター付近に材料を備え得、この材料が発熱反応または吸熱反応を生成し得る。そのミクロポレーションデバイスは、ミクロアクチュエーターを備える。そのミクロアクチュエーターは、静電ミクロアクチュエーター、熱バイモルフミクロアクチェーター、圧電ミクロアクチェーター、電磁ミクロアクチェーター、磁歪ミクロアクチェーター、および形状記憶合金ミクロアクチェーターからなる群から選択され得る。
【0057】
そのミクロポレーションデバイスは、電子結合サーキットリー(electronic
circuiry)および電源を備え得る。プローブエレメントは、その伝導性ワイヤを備え得、そしてその基材は、非伝導性ファブリックを備え得る。その伝導性ワイヤは、非伝導性ファブリックで織られ得る。
【0058】
そのミクロポレーションデバイスは、パーフォレーション上にプラグ材料を備え得る。そのプラグ物質は、揮発性材料を含み得る。そのミクロポレーションデバイスの1つの実施形態において、その基材は、エンボス加工され得る。ミクロポレーションデバイスは、生物学的膜を横切る流体の膜貫通輸送を増大するためのエンハンサー材料を含み得る。
【0059】
そのミクロポレーションデバイスは、複数のチャンバーを備え得る。その複数のチャンバーは、異なる物質を含み得る。その複数のチャンバーの少なくとも1つは、ミクロポレーションデバイスの単回使用の後に使い捨てられ得る。複数のチャンバーが少なくとも第1のチャンバーおよび第2のチャンバーを含み、その第1のチャンバーが第1の物質を含みかつその第2のチャンバーが第2の物質を含む。その第1の物質および第2の物質が、第1の生物学的に活性な因子および第2の生物学的に活性な因子であり得る。その第1の物質は乾燥調合物の薬学的に受容可能な因子であり得、そして前記第2の物質は、その乾燥調合物を薬学的に受容可能な液体またはゲル調合物へと再構成するための希釈剤である得る。
【0060】
そのミクロポレーションデバイスは、その第1のチャンバー中の物質の経皮送達またはその第2のチャンバー中への検体の経皮的回収をすることができ得る。そのミクロポレーションデバイスは、その第1のチャンバー中の物質の経皮送達およびその第2のチャンバー中への検体の経皮的回収を同時にすることができ得る。その物質はインスリンであり得、そしてその検体はグルコースであり得る。物質は、生物活性ペプチドまたはタンパク質、治療薬物、ワクチン、鎮痛薬物(pain medication)、浸透エンハンサーおよびpH安定剤からなる群より選択され得る。異なる物質が、調整された量でそのミクロポレーションデバイスによって送達され得る。その異なる物質のうちの少なくとも1つは、生物学的膜中に受動的に拡散し得る。その物質(同じであっても異なっていてもよい)は同時にか、連続的にか、交互にか、またはそれらの任意の組み合わせで送達され得る。その異なる物質は、生物学的膜中の近接する位置にある生物中に、一旦その異なる物質がその生物の組織基質内にあると合わせられそして混合され得るように、そのミクロポレーションデバイスによって送達され得る。
【0061】
そのミクロポレーションデバイスは、検体を検出または定量するためのアナライザーを備え得る。そのミクロポレーションデバイスは、そのアナライザーにより検出されたその検体の定量値に基づいて、上記物質の送達を制御するための制御モジュールを備え得る。
【0062】
そのミクロポレーションデバイスは、その第1のチャンバーと第2のチャンバーとの間に配置されたディバイダーまたはバルブを備え得、そのディバイダーまたはバルブは、そのディバイダーが取り除かれるかまたはそのバルブが開かれるまで、上記第1の物質および第2の物質の混合を妨げる。そのディバイダーは、膜であり得る。その第1の物質は薬学的に活性な因子であり得、そしてその第2の物質は薬学的に受容可能なキャリアであり得る。
【0063】
そのミクロポレーションデバイスは、フラックス増大ミクロポレーションデバイスを備え得、ここで、そのフラックス増大ミクロポレーションデバイスは、生物学的膜への物質のフラックス速度を増大する。そのフラックス増大ミクロポレーションデバイスは、イオン導入法、エレクトロポレーション、電気浸透法、ソノフォレシス、および加圧からなる群から選択される技術により生物学的膜ヘの物質のフラックス速度を増大する。
【0064】
そのミクロポレーションデバイスは、ディスポーザブル構成要素を備えるか、またはそのミクロポレーションデバイスは、単回使用用であり得、その使用後にそのミクロポレーションデバイスは廃棄され得る。そのディスポーザブル構成要素は、生物学的膜から回収される生物学的流体と反応する試薬で処理されて、その生物学的流体内の検体の量と予測可能に関連するシグナルまたは特性の測定可能な変化を生成し得る。そのディスポーザブル構成要素は、界面活性剤、疎水性化合物または親水性化合物のうちの1つまたはそれらの任意の組み合わせで処理され得る。そのディスポーザブル構成要素は、抗菌化合物または抗凝固化合物またはプロテアーゼインヒビター化合物で処理され得る。そのディスポーザブル構成要素が、熱的刺激、化学的刺激または電気的刺激により放出される材料を含む刺激応答性ポリマー性ゲル部分を備え得る。そのディスポーザブル構成要素が、加熱された場合に化合物を放出する材料を含み得る。
【0065】
ミクロポレーションデバイスは、基材の上または内部に位置するミキサーを備え得、このミキサーは、生物学的膜への物質の経皮送達の前に、物質を混合し得る。ミクロポレーションデバイスは、閉ループ送達およびモニタリングシステムを備え得、ここで、この閉ループ送達およびモニタリングシステムは、動物の特性の値に基づいて、生物学的膜を通じての物質の経皮送達を調整し得る。
【0066】
本発明の別の実施形態は、ミクロポレーションデバイスを製造する方法であり、この方法は、基材を得る工程、およびこの基材上に伝導性ネットワークを形成する工程を包含し、ここで、この伝導性ネットワークは、ミクロポレーターへの電気的接続を提供する。この方法は、接着層を、この伝導性ネットワークの上に結合する工程を包含し得る。この方法は、パーフォレーション上に非伝導性プラグを形成する工程を包含し得る。この方法は、伝導性ネットワークをレザーバーに結合する工程を包含し得る。
【0067】
生物学的膜に開口部を形成するための方法の別の実施形態は、ミクロポレーションデバイスを生物学的膜に接近させて配置する工程、およびこのミクロポレーションデバイスが該生物学的膜において少なくとも1つの開口部を形成するのを誘発する工程を包含し、このミクロポレーションデバイスは、少なくとも1つのレザーバーおよび組織インターフェイス(少なくとも1つのミクロポレーターおよび基材を備える)を備え、ここで、このミクロポレーターは、基材の上または内部に位置する。この誘発する工程は、生物学的膜に熱を伝達し得る。その開口部は、直径1〜1,000ミクロンを有し得る。この開口部または人口的ポアは、以下からなる群から選択される方法によって形成され得る:局所加熱、機械的穿刺、音波エネルギー、液圧穿刺、およびエレクトロポレーション。この方法は、以下のいずれか1つ以上を包含し得る:(a)開口部にエンハンサーを適用すること;(b)開口部に浸透体を適用すること;(c)開口部から流体を収集すること;(d)流体中の検体をモニタリングすること;(e)生物学的膜に物質を送達すること;(f)生物学的膜への物質の送達の前に物質を混合すること;および(g)生物学的膜内に物質を送達し、そしてこの生物学的膜から流体を収集すること。
【0068】
本発明の目的は、生物学的膜を通して、下にある組織基質へと化合物を投与するため、または生物学的膜の下にある組織基質から生物学的流体サンプルを得るための方法であり、この方法は、以下:a)フラックス増大セルを生物学的膜と接触させる工程;b)外側壁と膜との間にシールを形成する工程であって、ここで、レザーバーの出口が、この膜の人口的ポアに連絡する、工程;c)このレザーバーの内側キャビティーに陽圧を適用する工程;d)このレザーバーを膜の方に偏らせ、それによりこの膜の圧迫された状態を生成する工程;e)この膜から離れるようにこのレザーバーを偏らせ、それによりその解放された状態を生成する工程、を包含し、;そしてi)この生物学的膜は、組織基質に密接している内側表面と、外側表面とを有し、ここで、この生物学的膜は、静止状態、加圧された状態(膜の外側表面が静止状態と比較して実質的に凹状の形態になるように押されておりかつ下にある組織基質は圧迫されている)および解放された状態(膜の外側表面は実質的に凸形状であるように偏りかつ下にある組織基質は減圧に供されている)を有し、そしてii)ここで、フラックス増大セルが、外側壁を備え、この外側壁は、セルキャビティを規定し、そしてレザーバーが、このキャビティ内に移動可能に収容され、このレザーバーは、内側キャビティおよび出口を備え、この内側キャビティは、浸透体を収容する。生物学的膜を通して下にある組織基質へと化合物を投与するため、または生物学的流体サンプルを生物学的膜の下にある組織基質から得るための方法の、1つの実施形態は、g)レザーバーを膜の方に偏らせ、それによりこの膜の該圧迫された状態を生成する工程;h)膜から離れるようにレザーバーを偏らせる工程、を包含する。
【0069】
本発明の別の目的は、フラックス増大デバイスであって、このデバイスは、セルキャビティを規定する外側壁;ならびに内側キャビティおよび出口を備える、レザーバーを備え、ここで、このレザーバーは、このセルキャビティ内に移動可能に収容される。このレザーバーは、しなやかな膜で、外側壁に移動可能に連結され得る。フラックス増大デバイスは、ミクロポレーターを備え得る。そのミクロポレーションデバイスまたはフラックス増大デバイスは、閉ループ送達およびモニタリングシステムを備え得、ここで、この閉ループ送達およびモニタリングシステムは、生物学的膜を通じての物質の経皮送達および該生物学的膜を通じての検体の経皮的回収をし得る。フラックス増大デバイスは、閉ループ送達およびモニタリングシステムを備え得、ここで、この閉ループ送達およびモニタリングシステムは、動物の特性の値に基づいて生物学的膜を通じての物質の経皮送達を調整し得る。
【0070】
図1は、複数のポレーションエレメント(2)を備える、TFTI(1)の一般的な構成を示す。TFTIデバイスのミクロポレーターは、生物学的膜に直接接触することによって、熱エネルギーを伝導的に送達し得る、加熱されるプローブエレメントであって、これによって、膜のいくらかの部分を、ミクロポアを形成するに十分な深さまで切除する。図1において、ポレーションエレメント(2)は、抵抗エレメントである。
【0071】
抵抗エレメントは、ほぼあらゆる形状を採り得るが、代表的には、高いアスペクト比の、直状の円柱またはバーであり、それぞれ1ミクロン〜150ミクロンの範囲の直径または正方形断面、および100ミクロン〜3000ミクロンの長さを有する。電流パルスが各エレメントに印加される場合に、このパルス化エレメントは、制御可能に迅速に、特定の高温(120℃〜3000℃より高温の範囲(上限は、実際に、抵抗エレメントを構成する材料の融点により設定され、大部分のタングステン合金については、これは、3000℃を超える))となり得、このときに、この熱エネルギーが、接触している組織に送達されて、この組織の熱的ポレーションを実施し得る。
【0072】
抵抗エレメントのパターン化されたアレイが、伝導性ネットワークに接続され、このネットワークが、電気エネルギーを抵抗エレメントの各々に通す。抵抗エレメントのアレイは、個々にか、直列の電気システムとしてか、並列の電気システムとしてか、またはその何らかの組合せのいずれかにおいて、電流パルス源に接続される。TFTIの操作のために必要とされる瞬時電流は、主として、デバイス内の抵抗エレメントの数、ネットワーク構成が並列であるか直列であるか、および抵抗エレメントの大きさに依存する。抵抗エレメントネットワークを通って流れる瞬時電流は、1ミリアンペア〜40アンペアの範囲であり得るが、パルス持続時間は、代表的に、ほんの数ミリ秒の長さであり、そして各エレメントのインピーダンスは非常に低い(実際に、単一のタングステン合金ポレーションエレメントの代表的な抵抗率は、0.1オーム未満であると測定された)ので、平均電力要求量は、非常に低い。例えば、1ミリ秒の持続時間の40ampの電流パルスが0.1オームのエレメントに印加される、極端な場合には、送達される全電力は、以下である:
P=ワット×秒
P=IR/1000=(40×40)×(0.1)×(0.001)、すなわち1つのポレーションエレメントあたりP=160ミリワット。
【0073】
本発明の好ましい実施形態において使用される、実際的なパラメータ(1ampのピーク電流、1ミリ秒のパルス持続時間、0.05オームのポレーションエレメントインピーダンス)に基づく電力消費のより通常の値は、以下である:
P=I(0.05)(0.001)=50マイクロワット(1つのポレーションエレメントあたり)。
【0074】
1つのポレーションエレメントあたりほんの50マイクロワットの電力要求量を有する、100の個々のポレーションエレメントを利用する代表的な送達パッチについては、熱的ポレーションプロセスを実施するための総電力要求量は、なおほんの5ミリワットであり、非常に小さな低費用のバッテリーから容易に送達される出力レベルである。
【0075】
抵抗エレメントは、二次元パターンで配置され、このパターンは、生物学的膜の表面に直接移される。生成されるパターンの型は、適用に依存する。例えば、局所麻酔薬をIV挿入部位へと送達するために設計された1セットのミクロポアは、針挿入部位で始まってこの針の予測される経路に沿って延びる、狭いポアパターンを有し得る。所望のポアの深さもまた、適用に依存する。上記例を使用して、形成されるポアの深さは、針挿入部位においては比較的浅く、そして身体内の針の経路に沿って、より深く設計され得る。
【0076】
図2は、アノード側(4)、カソード側(5)、ポレーションエレメント(2)および支持基材(6)を備える、並列伝導性ネットワーク(3)の1つの実施形態をを示す。各TFTIは、外部電気制御モジュールに接続されて、必要とされる電流およびパルス持続時間のパラメータを有する、電気エネルギーを供給し得る。
【0077】
ミクロポアを形成する機構は、生物学的膜と、抵抗により加熱されたエレメントとの密接な接触の結果である。最も簡単な形態において、TFTIは、移動することなく、ポレーションプロセスの前、間、および後に、皮膚と接触したままである、抵抗エレメントを有する。このことは、作動されない(non−actuated)ポレーションプロセスとして公知であり、ここで、抵抗エレメントは、装置内の同じ位置に受動的に残る。抵抗エレメントと組み合わせられたミクロ作動(micro−actuation)を使用するデバイスは、作動される(actuated)ミクロポレーションまたはポレーションエレメントの作動(actuation)として、公知である。
【0078】
ミクロポアを形成する機構は、生物学的膜と、抵抗により加熱されたエレメントとの密接な接触の結果である。最も簡単な形態において、図2のTFTIは、移動することなく、ポレーションプロセスの前、間、および後に、皮膚と接触したままである、抵抗エレメントを有する。このことは、作動されないポレーションプロセスとして公知であり、ここで、抵抗エレメントは、装置内の同じ位置に受動的に残る。
【0079】
本発明の別の実施形態は、抵抗エレメントと組み合わせられたミクロ作動を使用し、そして作動されるミクロポレーションまたはポレーションエレメントの作動として、公知である。ミクロアクチュエーターは、ポレーションエレメントの機械的作動を生成し、そしてポアの深さにわたってより大きな制御を達成し、一旦、ミクロポアが形成されると、抵抗エレメントをこのミクロポアから取り外すよう作用するか、またはレザーバーを絶縁するバリアを開口するような機能を実行する。作動されるミクロポレーターの例示的な実施形態を、図3に示す。これは、加熱されていない位置(7)および加熱された位置(8)の、ワイヤ抵抗エレメントを示す。
【0080】
図3の作動されるミクロポレーターは、直状のタングステンワイヤエレメントである。図3は、この直状のタングステンワイヤエレメントが、加熱パルスの間に、このワイヤの熱膨張係数の結果として、このワイヤが代表的な熱的ポレーションサイクルの温度の劇的な変化を起こすにつれて、位置(7)から位置(8)へと、長さの有意な増加を起こすことを示す。このワイヤエレメントのアノード側(4)およびカソード側(5)は、不動であり、そしてこのワイヤは、その熱的に誘導される長さの増加に適合するために、そのエレメントの元々の中心線から離れて外向きに屈曲することによって、加熱パルスに反応する。このワイヤの動きの方向は、加熱されていない位置にある場合に、ポレーションエレメントの小さな初期屈曲を形成することによって、基材(6)から離れて方向付けられるように、設計され得る。作動されるTFTIデバイスのこの実施形態において、ミクロポアは、生物学的膜とポレーションエレメントとの間で最初に密接に接触する必要なく、作製され得る。すなわち、ポレーションエレメントが加熱され、そして引き続いて、生物学的組織表面の方へと移動するよう作動される場合に、ポレーションエレメントと生物学的表面との間の必要な接触が、システムの形状および作動の移動の量を、必要とされる物理的接触を保証するよう設計することによって、確実にされ得る。ワイヤエレメントの長さ、初期屈曲およびワイヤの温度の選択を使用して、生物学的膜において得られるポアの深さを同様に制御し得る。また、作動応答が温度に関連すると知ることによって、そしてまた抵抗性ポレーションエレメントのインピーダンスの変化が温度に関連すると知ることによって、ポレーションエレメントの温度と、得られる作動の量の両方を、動力学的にモニタリングし得る。同様に、一旦、標的生物学的膜との接触が確立されると、ポレーションエレメントに送達されたエネルギーの量と熱の変化との間の関係に、検出可能なシフトが生じ、なお別のレベルの動力学的に測定可能なパラメーターをポレーションプロセスに追加し、これを使用して、各ポレーションエレメントにおける制御可能に反復可能なポアの形成を確実にすることを、補助し得る。これらの測定可能なパラメータを制御装置へのフィードバック入力として使用することによって、電流源、製造プロセスの許容範囲により生じ得る個々のポレーションエレメントのバリアンスもまた適合され得、より緩い許容範囲を受容し得ることによって、TFTIの製造プロセスにおけるさらなる費用削減を可能にする。
【0081】
本発明の作動されるミクロポレーターの別の実施形態を、図4に示す。ここで、作動されるエレメントは、タングステンのようなエレメント材料の薄いシート(9)から形成される。エレメント材料のいくらかは、レーザー微細機械加工のようなプロセスを使用して除去されて、図4に示す抵抗エレメントを生成する。このレーザー微細機械加工プロセスの間に、各ポレーションエレメントが形成されるにつれて、これらのエレメントのインピーダンスを動力学的にモニタリングすることが、可能である。この種の動力学的にモニタリングされる作製プロセスを使用することにより、ポレーションエレメントの並列または直列のアレイが形成され得、ここで、送達される電流パルスが、平衡した均一な様式で各個々のエレメントに分布することを、確実にし得る。この抵抗エレメントの形状は、加熱の間にシート材料の平面に対して垂直な方向の移動を生じるように、選択された。この構造の湾曲した部分(10)の物理的膨張は、このエレメントの先端部(11)を強制的に、シート材料の平面から離して持ち上げる。エレメント全体が高温に達するので、先端部(11)は、生物学的膜に押し込まれるにつれて、組織を切除する。得られるポアの深さは、この場合には、湾曲した部分(10)の円弧長さ、先端部領域(11)の長さ、およびエレメントの温度により、制御される。
【0082】
アレイにおける各ポレーションエレメントへの、電流パルスの等しい分布をさらに確実にするために、抵抗性ポレーションエレメントの特定の熱抵抗係数を、個々のエレメントが加熱されるにつれて、その抵抗が増加し、これによって、より少ない電流を並列ネットワーク内のその特定のポレーションエレメントに流すように、そして同時に、より多くの電流を、その同じネットワーク内の他のポレーションエレメントに強制的に流すように、選択または設計し得る。この自然の現象を使用することによって、抵抗エレメントの自己平衡する並列ネットワークは、より容易に設計および製造され得る。このことは、家庭用照明システムの標準的な並列の配線が、いくつかの白熱電球が同じ回路に接続された場合に作動する方法に類似する。
【0083】
本発明の別の実施形態において、形状記憶合金(SMA)材料が、抵抗エレメントの本体のために使用される。SMA材料の使用は、作動されるポレーションの効率および効果を最大にする可能性を有する。
【0084】
広範な種々のミクロアクチュエーターが、作動されるポレーションのために使用され得る。フォトリソグラフィーのような、より進歩したプロセスを使用する作製方法が、より複雑なミクロアクチュエーターを製造し得る。TFTIデバイスに組み込まれ得る、いくつかのミクロ電気機械的システムとしては、静電ミクロアクチュエーター、熱バイモルフミクロアクチュエーター、圧電ミクロアクチュエーター、電磁ミクロアクチュエーターおよびSMAミクロアクチュエーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
可溶性TFTI設計は、作動されるポレーションスキームおよび作動されないポレーションスキームの代替である。可溶性設計の場合には、このエレメントを破壊するに十分な電気エネルギーが抵抗エレメントを通過し、このエレメントを電気回路から除く。このことはまた、ポアの部位からのエレメントの取り外しの機構を提供する。本発明のこの実施形態はまた、支持するエレクトロニクス要件を非常に単純化する可能性を有する。これらの接続を融解も破壊もしない抵抗エレメントの場合には、駆動エレクトロニクスは、感覚管理のために制御された持続時間および振幅のシグナルを発生させることを、要求される。可溶性エレメントの場合には、熱パルス持続時間は、主に、このエレメントの物理的破断特性によって制御され得、そしてこのエレクトロニクスは、キャパシター放電の場合と同様に、制御されていない持続時間で、瞬間的なシグナルを送達することのみを、要求される。十分なエネルギーをポレーションエレメントに単に送達して伝導性トレースの融解または蒸発を引き起こすことは、「ヒューズを溶断する」1つの方法であるが、より好ましい方法は、エレメントを保持する基材を、ポレーションエレメントの作動に起因する温度上昇に供した際に、熱収縮または熱剥離プロセスを起こす仕様にされた材料から作製することであり得る。ポレーションエレメントトレースをこの剥離可能な基材に適切に付着させて、この基材が剥離する場合に、これはまた、このエレメントをも裂き、これによってこの電流経路を破壊し、同時にポレーションエレメントに近接するレザーバーへの経路を開く。この今や接続されたレザーバーが送達のための浸透体を収容する場合には、この浸透体はここで、生物学的膜に形成されたばかりのミクロポア上に直接配置される。この剥離可能な基材のための材料を適切に選択することによって、このプロセスを、単に「ヒューズを溶断する」場合に必要とされ得るよりずっと低い、より生体適合性の温度で起こし得る。この型の所望の熱的特性を有するいくつかの材料は、電気的絶縁において通常使用される、熱収縮性ポリマーおよびビニルである。所望のときおよび位置において、そして指定の温度で剥離するかまたは裂けることを確実にすることを補助するために、この基材を、熱的に誘導される剥離の起点となる小さなエッチング線、エンボス加工された応力点、または「割れ目」を提供するような他の特徴を備えて、形成し得る。この型の熱的に誘導される剥離の他の有意な利点は、薬物またはアッセイを収容するレザーバーにポアを空けることが、最小量の温度のみを非常に短時間にわたって用い、このレザーバーに提供される熱エネルギーおよびピーク温度の量を最小化して、なされ得ることである。この特徴は、このレザーバーが熱脆弱性のペプチド、タンパク質、アッセイ酵素または熱的応力に感受性の他の薬物を収容する場合に、特に重要である。
【0086】
本発明のTFTIデバイスはまた、ある種の物質を、ポレーションエレメントまたはその近くに追加することによって、増強され得る。このアプローチはまた、先に記載したような、可溶性のエレメントを用いる、特定の用途を有する。これらの物質の目的は、ポアの部位において、ポレーションプロセスの間に化学反応を生じさせることである。
【0087】
この化学反応は、種々の機能を実施するようあつらえ得る。一例は、火工材料または発熱反応を起こす他の材料で、エレメントをコーティングすることである。次いで、組織を切除するために使用されるエネルギーは、主として、この発熱反応から生じる。このことは、ポレーションを誘発するために必要とされる電気エネルギーを減少させ、従って統合されたデバイスの全体的な大きさを減少させる、簡単な方法を可能にする。第二の例は、組み合わせられた発熱反応および吸熱反応である。最初の発熱反応がミクロポアを作製し、そしてすぐ引き続いて、吸熱反応がこのポアの部位を冷却し、そして患者が受ける感覚を改善する。
【0088】
ポアの部位における化学反応はまた、この反応の副生成物に起因して、有用であり得る。反応物を適切に選択することによって、副生成物が、フラックスエンハンサー、抗閉塞剤、浸透体、治療剤、反応物の、引き続く反応または他の有利な目的を駆動する機能の全てまたはいくつかを、実施し得る。
【0089】
抵抗エレメントを備えるTFTIを、異なる方法により作製し得る。第一の方法は、予備形成されたワイヤ導体を使用して、抵抗エレメントを作製する。第二の方法によって、抵抗エレメントは、伝導性材料の堆積によって作製される。第三の方法によって、抵抗エレメントは、エレメント材料をエッチングまたは機械加工することによって、形成される。さらに、いくつかの製造方法は、付着(deposition)とエッチングとの両方を使用する。TFTIデバイスの製造を実証し、そして種々の製造方法を示す、TFTI製造プロセスのいくつかの例が、以下に示すように、利用可能である。本発明を、以下の非限定的な実施例に示す。
【実施例】
【0090】
(実施例1:織られた材料のTFTIデバイス)
TFTIデバイスのいくつかの実施形態は、予め製造されたワイヤ導体(例えば、タングステン、タンタル、またはタングステン合金ワイヤ)を、抵抗エレメントとして使用することを包含する。このワイヤ導体をTFTI設計に組み込むための、種々の方法が存在する。これらの方法としては、織布、縫合、結合、鑞付け、スポット溶接、伝導性の接着剤または樹脂での接続、および薄膜または積層構造体への積層が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
織られた材料のTFTIデバイスの基礎は、図5に示すもののような、ハイブリッドの織られたファブリックである。図5は、ハイブリッドの織られたファブリックの断面の拡大であり、そして繰り返し構造として二次元で外向きに延びるとみなされるべきである。このハイブリッドの織られたファブリックは、導電性ではない構成的繊維(10)および(11)(例えば、ポリエステル、ガラス繊維、ナイロン、マイラー、ポリカーボネートなど)と、導電性の繊維またはストランド(12)(例えば、タングステンまたはタンタルのワイヤ、伝導性ポリマー、ガラス繊維または炭素繊維など)の組合せを含む。この実施例において、直径50ミクロンのポリエステル繊維(10)および直径80ミクロンのポリエステル繊維(11)を、直径50ミクロンのタングステンワイヤ(12)と織り合わせる。
【0092】
導電性の繊維またはストランドをファブリックに織り合わせ、そして織り方向の一方のみに延ばし(run)、ポレーションエレメントアレイの所望の密度に依存する特定の数の構成的繊維で間隔を空ける。ここで、2つのタングステンワイヤ間のポリエステル繊維の数は、28であり、これは、約1.4ミリメートルのエレメント間隔を生じる。
【0093】
次いで、この織られた材料を加工して、図6に示すように、片側に伝導性トレースを適用して、所望の伝導性ネットワーク(13)を作製する。ここで、織り込まれた伝導性繊維が、抵抗エレメント(14)を形成する。これらのトレースは、以下を含む、種々の様式で作製され得る:この表面上への、伝導性/自己接着性のフォイルの圧力伝達;トレースを規定するためのシャドウマスクまたはレジストマスクのいずれかを使用する、所望のパターンへの電気めっき;あるいは単に、導電性のインクまたは樹脂を用いるスクリーン印刷および硬化。大部分の伝導性インクは、硬化後に特定の量の可撓性が可能であるように設計され、これは、よりしなやかなTFTIデバイスを生じる。この実施例に関して、図6の伝導性ネットワークは、並列の電気回路として配置されるが、直列または直列と並列との組み合わせの配置が、この設計に適合され得る。銀含浸エポキシを使用して、標準的なスクリーン印刷技術を使用して塗布される伝導性ネットワークを形成する。
【0094】
織られた材料のTFTIデバイスのさらなる利点は、コンダクタースレッドカウントの適切な選択が、TFTIの両側面上に抵抗エレメントを生じることである。これは、ミクロポアの作製と同時に薬物レザーバーを破るかまたは開けるためにTFTIの任意の使用を生じる。次いで、伝導性ネットワークによって変換されないファブリックの領域は、送達可能な物質を薬物レザーバーからTFTIを通してミクロポアに通過させ得る。
【0095】
一旦、織られたファブリックへの伝導性ネットワークの適用が完了されると、TFTIのさらなる統合が起こり得、この統合は、薬物レザーバーへの結合または、TFTIとポレーションされる生物学的膜との間の接触を維持するための接着性層の付加を含み得る。この設計はまた、他の機能的特徴の統合に対して伝導性であり、この特徴としては、イオン導入電極、フラックスエンハンサー放出エレメント、緩衝液放出エレメント、検体アッセイ電極が挙げられる。検体アッセイプロセスはまた、選択された検体の濃度に対する応答における比色分析シフトを探索することによって光学的手段を介して達成され得る。
【0096】
(実施例2:ワイヤオーバーレイTFTIデバイス)
このTFTI設計は、基材上にワイヤをオーバーレイし、次いでワイヤを覆って伝導性トレースを印刷し、伝導性ネットワークと電気的接続を形成しかつワイヤを基材と結合させる工程を包含する独自のスクリーン印刷プロセスを利用する。この実施例の設計はまた、ポレーションエレメントの最適化された作動を生じるための抵抗エレメント材料としてSMAワイヤを使用する。ポレーションエレメントは、ポレーションプロセスの間にその形状を変更しかつポア部位を直接覆った薬物レザーバーを破るように設計される。
【0097】
図7に示されるように、複数長のSMAワイヤ(15)(例えば、ニチノール)は、最終アレイにおいて所望のエレメント密度によって与えられる間隔でフレーム(16)中に実装される。SMAワイヤ間の間隔:1.00mmが、使用される。次いで、このフレームおよび実装されたワイヤを、薄膜基材(17)の上に置き、そして標準スクリーン印刷技術を使用して、伝導性インク(18)をこの基材とSMAワイヤとの組み合わせに電着し、電子ネットワークを生じさせる。この適用のために選択されるSMA材料は、ニチノールのように、高融点を有するべきである。この基材材料は、ポリエステルのように、非伝導性であり、かつ低融点を有しなければならない。良好な候補伝導性インク(例えば、銀/ポリマー伝導性インク)は、それが完全に硬化された後に、高伝導性を有しかつ可撓性であるべきである。
【0098】
製造プロセスにおける次の工程は、ポレーションエレメントの場所の各々においてアレイをエンボス加工することである。図8aは、スクリーン印刷プロセスの後でありエンボス加工が起こる前の単一のポレーションエレメントの拡大側面図を示す。誘電性層または接着性層(19)は、伝導性インクネットワークが皮膚または他の生物学的膜と接触することを妨げる。
【0099】
図8bは、エンボス加工された後のエレメントを示す。エンボス加工プロセスが、SMA材料に、アニールさせないかまたは結晶構造における変化を受けさせないことは、重要である。これは、図8cに示されるように、伝導性ネットワークによって抵抗的に加熱される場合に、SMA材料がその本来の形状(直線)に戻ることを可能にする。エレメントが加熱される場合に、それは、最初に、皮膚の表面との密接な接触に起因して皮膚ポアを生じる。エレメントのさらなる加熱が起こる場合、SMA材料は、その本来の形状に戻りかつ新規に作製されたポアから引っ込み始め、その間に、支持基材のエンボス加工された特徴(20)において開口を同時に形成する。次いで、これは、基材の対向側面上のレザーバーと上記のような微視的ポアとの間の通路を開け得る。
【0100】
TFTIデバイスのいくつかの実施形態は、放電加工(EDM)、スパッタリング、スクリーン印刷、電気めつきおよび化学蒸着(CVD)のようなプロセス(フレキシブル回路および電子産業において一般的である)によって蒸着される抵抗エレメントを含む。以下の章は、上記の蒸着プロセスのいずれかを用いて製造され得るTFTIデバイスを例示する。
【0101】
(実施例3:スパッター蒸着TFTIデバイス)
製造に含まれる第1工程は、適切な基材(例えば、50ミクロンのポリアミド)上に抵抗エレメントおよび伝導性ネットワークを形成するための、材料(例えば、タンタル)のスパッタリングによる蒸着である。図9は、ポリアミド基材(22)上に蒸着されたタンタルトレース(21)のパターンを示す。並列の電気的構成が、例示の目的のために使用されるが、伝導性ネットワークは、直列回路に単一でかまたは並列回路、直列回路、もしくは並列および直列回路の任意の組み合わせで各ポレーションエレメントをアドレス指定するように設計され得る。
【0102】
伝導性ネットワークおよび抵抗エレメントのために使用される材料の特性に依存して、さらなる材料を抵抗エレメントそれ自体を除いたパターンのどこにでも蒸着することが、望ましくあり得る。さらなる材料は、任意の他の型の適合性伝導材料であり得、そして伝導性ネットワークの抵抗性を減少し、従って、抵抗エレメントのアレイを操作するために必要とされるすべての電力を減少し、ならびに切除温度闘値まで循環を受けるTFTIの領域を空間的な意味においてより正確に制限する目的を果たす。図10は、製造プロセスにおける異なる点で、近接伝導性ネットワーク接続(24)を有する単一の抵抗エレメント(23)の拡大側面図を示す。図10aは、最初の蒸着の後のエレメントおよび伝導性ネットワークの上の任意のさらなる層(25)を示す。
【0103】
製造プロセスにおける次の工程は、図10bに示されるように、抵抗エレメントを覆わない、伝導性ネット−ワークの上への接着性層(26)の配置、スクリーニングまたは結合である。接着性層の目的は、生物学的膜(例えば、皮膚)をTHTIに結合しかつ抵抗エレメントとの密接な接触の存在を確実にすることである。TFTIの製造における最終工程は、必要に応じて、図10c中に示されるように、抵抗エレメントの領域においてエンボス加工することである。エンボス加工の目的は、THTIの、生物学的膜に接触する接着性の側面の付近またはふくれ部分に、抵抗エレメントを移動させ、かつ抵抗エレメントとマイクロポレーションされる生物学的膜との間の密接した接触を確実にすることである。エンボス加工プロセスはまた、抵抗エレメントの領域における基材材料を薄くするために役立ち得る。これは、抵抗エレメントがポレーションの間に基材材料を破ることを援助し、従って、物質が薬物送達適用のためのポア部位に導入される機構を提供し得る。任意のTFTI設計のためのエンボス加工の別の可能な利点は、抵抗エレメント材料が、ひずみ硬化を受け、従って、このエレメントの電気的特性および機械的特性を変更するための方法を提供することである。特性のテイラーにおけるさらなる融通性は、エンボス加工プロセスの間に材料の温度を変化させることによって達成される。
【0104】
多くの蒸着技術が、作動されるポレーションの目的のために複雑な抵抗エレメント幾何形状の製造をもたらすことにも留意すべきである。電子的構成要素の大量生産において一般的に使用される幾つかの技術は、0.5ミクロン以下の特徴寸法で構造体を蒸着し得る。
【0105】
TFTIデバイスの幾つかの実施形態は、プロセス(例えば、レーザーミクロ機械加工ならびに実験用MEMSデバイスおよび電子産業に一般的なある種のフォトリソグラフィー技術)によって材料の層またはシートからエッチングまたは機械加工される抵抗エレメントに関する。以下の節は、ミクロ機械加工プロセスを用いて製造され得るTFTIデバイスを例示する。
【0106】
(実施例4:ミクロ機械加工されたTFTIデバイス)
図11は、製造プロセスにおける異なる点での、単一の抵抗エレメントの拡大側面図を示す。製造プロセスにおける第1工程は、30ミクロンシートの抵抗エレメント材料(27)(例えば、タングステン)の薄膜を、50ミクロンシートの支持的または抵抗性テイラー層(例えば、銅)(28)に積層することである。次いで、これらの層を、図11aに示されるように、タングステン側面からレーザーを用いてミクロ機械加工する。レーザー出力、繰り返し数および切断速度は、調節され、その結果、抵抗エレメント(29)および伝導性ネットワーク(30)は、支持的または抵抗性テイラー層を通して切断しないで作製される。また、レーザーミクロ機械加工のプロセスの間に、レーザーエネルギーを使用して、タングステンポレーションエレメントと抵抗性テイラー層との間の電気的結合を有効に形成し得る。
【0107】
図11bに示される次の工程は、図11aの構造のタングステン側面を非伝導性層(例えば、ポリエステル)(31)に結合することである。次いで、この積層された構造体を、銅側面(28)からレーザーミクロ機械加工する。この点において、銅はもはや、構造支持体として必要とされない。このプロセスの結果は、伝導性ネットワークのみの上に銅材料を残し、かつ抵抗エレメントの上を含む他の場所からそれを取り除くことである。非伝導性層(31)を通した切断を避けるためのレーザーパラメータ設定に留意のこと。プロセスにおける次の工程は、伝導性ネットワークの上に接着性層(32)を結合させることであり、生じた構造体は、図11cに示される。製造プロセスにおける最終工程は、図11d中に示されるように、抵抗エレメントの場所において、非伝導性層をエンボス加工することである。
【0108】
(実施例5:単純にスクリーンされたTFTIデバイス)
以下の実施例は、TFTIデバイスを形成するためにほぼ全体的にスクリーン印刷を利用する。20ミクロン厚のポリカーボネートシート(33)が得られ、そして約10〜20ミクロン直径のパーフォレーション(34)は、図12中に示されるように、シート中に作製される。パーフォレーション(34)は、レーザー処理、機械的パンチングまたはシートをパーフォーレーションするための他の方法によって作製され得る。パーフォレーションは、1ミクロン〜数ミリメートルの範囲の任意の形状であり得る。パーフォレーションは、密接した群で作製され、複数の密接な群は、より大きなアレイを形成する。
【0109】
次の工程は、図13中に示されるように、ポリカーボネートシート上にエレメントがない伝導性ネットワーク(35)をスクリーン印刷することである。伝導性ネットワークは、硬化させたキャリアの場合に、銀の伝導性インクを用いて可撓性に形成され、そして硬化され得る。次に、低融点の非伝導性プラグ材料(例えば、ワックス)(36)が、図14中に示されるように、パーフォレーションの上にスクリーンされ、それらに封をする。次いで、さらなる伝導性インク(37)が、図15中に示されるように、スクリーンされて各ワックスプラグの上の伝導性ネットワークの2つの側面を接続する材料の細密な架橋を形成する。これは、ポレーションプロセスの間に加熱される抵抗エレメントである。抵抗ポレーションエレメントを形成するために使用される伝導性インクは、伝導性ネットワークを形成するために使用されるインクと同一であり得るか、またはこの設計の目的のためにより適切な、異なる材料(例えば、炭素伝導性インク)から選択され得る。この設計は、最初にミクロポアを作製することにより機能し、次いで、さらなる加熱は、融解プロセスまたは熱的リッピングもしくは以前に記載された引裂き(tearing)プロセスのいずれかによってプラグ材料を取り除き、そしてミクロポアとレザーバーとの間の通路を開ける。TFTIを製造する際の最終工程は、図16中に示されるように、各抵抗エレメントとポレーションされる生物学的膜との間の密接な接触を確実にしかつ被験体に対するデバイスの主要な取り付け機構として作用することを確実にするための、接着剤(38)をスクリーンすることである。
【0110】
本明細書中で議論されるTFTI設計のいずれかは、個々にアドレス可能な抵抗エレメントを可能にするように設計され得る。伝導性ネットワークへのダイオードの付加は、幾つかのスキームを支持する個々のアレイエレメントの電流方向の単離を可能にし、このスキームによって、個々のエレメントは、「列−行」アドレス指定アプローチで活性化され得、このアプローチは、個々のピクセルが2次元の視覚アレイでトグルされ得る方法に類似する。各ポレーションエレメントについて分離レザーバーを使用する統合されたデバイス設計は、個々にアドレス可能なポレーションエレメントコントロールスキームから利益を受け得る。このアプローチの別の利点は、TFTIを活性化するために必要とされるピーク電力の全体的な減少である。ポレーションを行うために必要とされる最大ピーク電流は、単一のエレメントが1つずつ活性化された場合の電流よりも小さい。また、各セルにポレーションエレメントを含ませ、そしてその付随するミクロレザーバーが本質的に個々の、独立して制御されたシステムであることによって、1度に特定の数のこれらのセルのみを活性化するようにコントローラーシステムをプログラムし得、薬物送達プロフィールのさらなるコントロールを可能にするか、またはセルが検体のアッセイを行うために使用される場合、個々のアッセイは、種々の選択された時点で行われ得る。
【0111】
本発明のTFTI設計の特徴は、技術を徹底的に縮小させる製造プロセスが使用される。フォトリソグラフィーのような技術は、高密度のかなり小さなポレーションエレメントを有するTFTI設計を作製し得る。ポレーションエレメントの寸法を縮小することは、ポレーションに必要とされるエネルギーの減少、改善された皮膚表面治癒および改善された患者感覚のような潜在的利点を有する。
【0112】
本発明のデバイスは、ミクロ電気機械的システム(MEMS)製造技術を使用して製造され得る。ミクロ製造技術は、費用効果的な大量生産に適している。本発明のデバイスの他の実施形態において、TFTIデバイスと一体的でありTFTIデバイスと一緒に動作するミクロ機械があり得る。例えば、ミクロアクチュエーターは、個々のポア微量注入器によって浸透体を送達するように設計され得る。微量注入器は、抵抗エレメントと一体的に作製され得、その結果、微量注入器本体は、熱的に組織を切除し、皮膚層に伸長し、そして短持続性の、高圧流体注入物を微視的レベルで送達する。
【0113】
TFTI設計に適用され得るミクロシステム技術の別の例は、タトゥー除去の領域にある。ミクロ機械のアレイは、皮膚の微視的弁を進行的に持ち上げかつ色素保有組織を取り除くように設計され得る。実際に、閉ループコントロールスキームが使用され、ここで統合されたマイクロセンサーは色素保有組織の位置を検出し、次いでマイクロプロセッサーが作用の最良の方針を決定する。
【0114】
同じTFTIデバイスにおけるセンサーおよびアクチュエーターの使用は、かなり洗練されたマイクロシステムおよびインテリジェントマイクロシステムの作製を可能にする。単一のTFTIデバイスが、構築され得、このデバイスは、ポア部位から間質液を汲み出し、そして特定の検体(例えば、グルコース)についてアッセイし、そしてまた、検体測定の結果に基づいて他のポアを通して物質(例えば、インスリン)を送達した。
【0115】
(実施例6:統合された組織ポレーションおよび薬物送達デバイス)
本発明のミクロポレーションデバイスは、組織における小さな孔もしくはパーフォレーションまたはミクロポアの作製、ミクロポアを通った薬物または他の浸透体の送達、ミクロポアを通った生物学的流体の抽出、および抽出された生物学的流体における検体または送達される浸透体のアッセイのための統合されたデバイスとして使用され得る。
【0116】
統合されたデバイスは、少なくとも1つのミクロポレーターおよび少なくとも1つのレザーバーを含む組織インターフェイス層、1以上の識別可能レザーバー、電力供給体、バッテリー、エレクトロニクス、ディスプレイおよびケースを備えるマルチ構成要素デバイスである。図17は、本発明の単一またはマルチ構成要素デバイスの1つの実施形態を示し、このデバイスの外部本体を形成する薄いキャップ(39)、駆動エレクトロニクスおよびバッテリーを含むコントローラーボード(40)、送達のための浸透体を含むチャンバーの頂部および側面を形成する薄膜頂部プレート(41)およびレザーバー壁(42)を示す。最後に、TFTIデバイス(43)が、浸透チャンバーの底部を形成する。この設計において、頂部プレート(41)、レザーバー壁(42)およびTFTIデバイス(43)は、一緒に結合されて送達のための浸透体を含有するデバイスのディスポーザブル部分を形成する。ディスポーザブル(41〜43)およびコントローラーボード(40)は、薄いキャップ(39)内に完全にはまり、TFTIはこのデバイスの底部表面で露出するように設計される。
【0117】
このデバイスの1つの実施形態は、単一のディスポーザブルユニットである。代替の実施形態は、ディスポーザブル部分に組み込まれる構成要素のサブセットを有する一方で、この構成要素の残りは、再利用可能である。このデバイスは、1を超えるバージョン、例えば、パーソナルバージョンまたは臨床的バージョンで製造され得、わずかに異なるフォーマットであるが類似の機能を有する。より少ない構成要素および減少された機能を有するいくつかのバージョンは、有効である。すべてのバージョンは、別個でかつ小さい(1/2(0.5)〜10(10)立方インチのオーダー)。
【0118】
組織インターフェイス層は、以下のうちのいくつかまたはすべてを含む:組織のポレーションを行うためのエレメント、組織にデバイスを取り付ける接着剤、送達のための浸透体を含むレザーバー、抽出された生物学的流体を保持するためのレザーバー、および検体をアッセイするための試薬。組織インターフェイス層はまた、液体浸透体または収集された生物学的流体の運動を制御するための流体フロー条件剤として作用する親水性表面処理および疎水性表面処理を含み得る。組織インターフェイス層はまた、敗血症を妨げる抗菌剤あるいは浸透体または抽出された生物学的流体の凝集を制御する抗凝血薬(anticlotting)または抗凝固薬(anticoagulent)を組み込み得る。組織インターフェイス層はまた、浸透エンハンサーまたはpH安定化のために使用される緩衝液を用いて処理され得る。組織インターフェイス層は、有益な浸透体で飽和された刺激応答ポリマーゲル区画を含み得、この区画は、熱的、化学的または電気的刺激により誘発されて有益な浸透体を放出し得る。組織インターフェイス層は、要求に応じて例えば、ポレーションエレメントまたは組織インターフェイス層上の他の類似のエレメントによって加熱された場合に有益な浸透体を放出し得る。組織インターフェイス層は、音波エネルギーの組織または送達される浸透体または抽出される生物学的流体への送達のための圧電エレメントを含み得る。組織インターフェイス層は、図18および20中に示されるようなディスポーザブルの一部となることが意図されるか、または図19のような統合されたデバイスに永久的に実装され得る。図18は、統合されたデバイスの1つの実施形態を示し、ポレーションエレメント44、エレメントに対する伝導性トレース45、ポレーションエレメント44の下の孔を有する接着性層46および単一浸透レザーバー47を示す。
【0119】
図19は、統合されたデバイスの1つの実施形態を示し、ここで、デバイス全体が、ディスポーザブルである。この実施形態において、単一の使用に意図されるので、ポレーションエレメント、接着性層および浸透体レザーバー(すべてにおいて、48として表される)は、永久的にこのデバイス中にインストールされる。この実施形態は、ケースの上部表面上の2つのコントロールボタン49を有する。1つのボタンを押すことは、ポレーションプロセスおよび浸透体の基本送達を開始する。他のボタンを押すことは、予め設定された量の浸透体のさらなるを送達する。
【0120】
図20は、再利用可能な構成要素50およびディスポーザブル構成要素51を有する統合されたデバイスの実施形態を示す。再利用可能構成要素50は、浸透体レザーバー53および皮膚インターフェイス52を含む。バッテリーおよび回路は、再利用可能構成要素50中にハウジングされる。単回の使用の後、ディスポーザブル構成要素51は置換され、それによって浸透体、ポレーションエレメント、および接着剤(これらはすべて皮膚インターフェイス52の部分である)を補充する。
【0121】
ポレーションエレメントに加えて、他の伝導性トレースまたはワイヤは、組織インターフェイス層に組み込まれ、エレクトロポレーション、浸透体の組織へのイオン導入法的に増強された送達のための電極または1以上の検体をモニターする目的のために組織からの生物学的流体の抽出を増強するための電極のすべてまたは幾つかとして作用し得る。これらの電極はまた、電流経路のすべてまたは一部を提供するために使用され得、これを介して、電流経路内の選択された組織をエレクトロポレーションする目的のために、電気エネルギーのパルスを組織に送達し得る。これらの電極はまた、ポレーションが起こったことをインピーダンスの低下によって感知するために使用され得る。電気的に伝導性のポレーションエレメントそれ自体は、イオン導入法、またはエレクトロポレーションまたはインピーダンスセンシングのいずれかのための電極の1つとして使用され得る。
【0122】
組織インターフェイス層は、1以上のレザーバーを含み得る。複数のレザーバーの場合において、これらのレザーバーは、異なりかつおそらく非適合性の浸透体の分離を維持するために使用され得る。レザーバーからの浸透体の送達は、同時かまたは連続的であり得る。レザーバー壁は、代表的に「ポレーションされ」てレザーバー膜を破りかつ浸透体の組織への送達を可能にする。レザーバーのこのポレーションは、組織をポレーションするために使用される場合と同じ型のポレーションエレメントで確立される。このレザーバーの破りの前に、レザーバーは、浸透体のための、安定な、密封されかつ無菌の環境を維持し得、統合されたデバイスのディスポーザブル部分の全体が、効率的にかつ経済的に製造かつ包まれることを可能にする。レザーバーの破りは、必要に応じて組織のポレーションの前、これと同時にまたはこの後に起こり得る。さらに、特定のレザーバーから組織への浸透体のフラックス速度は、すべての他の要因(例えば、ミクロポア密度またはイオン導入電流)が同一である場合、生物学的膜にレザーバーを結合させるミクロポアの面積に比例する。レザーバーは、最初空であるかまたは吸収性材料を含み得、抽出された生物学的流体のための貯蔵場所として機能する。生物学的流体中の検体のアッセイのための試薬は、代表的に、抽出された生物学的流体の貯蔵レザーバーに対する入口に位置付けられる。
【0123】
デバイスを制御するための電子機器は、ポレーションプロセスの開始、送達される浸透体のタイミングおよび量の制御、送達メカニズムに対する制限の実施、検体アッセイおよび環境検出のためのデータの処理、圧電素子の制御、ならびにユーザーインターフェイスディスプレイ(それがある場合)の制御に関与する。
【0124】
環境検出は、温度、湿度、および気圧を含み得る。これらの値(特に、温度)は、このデバイスによって実施されるアッセイの結果に影響を与え得る。
【0125】
エレクトロポレーションおよびイオン導入法のためのバッテリー必要量は、組織が穿孔されるときに代表的に生じる抵抗の大きな低下に起因して最小である。平らな、コインセル(coin cell)種類のバッテリーで十分である。それにも関わらず、統合されたデバイスの再利用可能な構成要素がしばしば使用される臨床環境においては、外部電源が使用され得る。
【0126】
いくつかの実施形態は、ユーザーに情報を提供することを必要とするか、またはユーザーに情報を提供することによって容易になる。これらの実施形態においては、ディスプレイはケースの上に提供される。
【0127】
(実施例6A:受動的ワクチン送達デバイス)
このデバイスのこの実施形態は、臨床環境において使用され、ここで患者は、何時間または何日もかけてミクロポアを通って拡散することによりワクチンを送達するディスポーザブルパッチを受容する。この実施形態のためのディスポーザブルは単純であり、小さく、薄くかつ安価である。このディスポーザブルは、底面に熱ポレーションエレメントおよび接着剤ならびに上面に電気接触パッドを有する薄い封着されたレザーバーからなる。接触パッドは、熱ポレーションエレメントを導くトレースに取り付けられる。レザーバーは、送達されるワクチンを含む。このディスポーザブルは、臨床環境におけるデバイスの再利用可能な構成要素に挿入される。デバイス全体は、皮膚の表面に対して配置され、その結果接着剤がこのディスポーザブルを皮膚の表面に固定する。熱ポレーションエレメントは活性化され、皮膚の表面を穿孔し、同時にレザーバーの下方表面に孔をあけて、ワクチンが流れ落ちてミクロポア内に入ることを可能にする。次いで、このデバイスの再利用可能な構成要素は、ディスポーザブル部分から取り外され、皮膚の表面に取り付けられ、そして正確にミクロポアに合わされたディスポーザブル部分を残し、このディスポーザブルが取り外されて捨てられるまでワクチンが皮膚内に受動的に拡散することを可能にする。ワクチン抗原を送達するためのこの方法は、抗原によって最適に標的化されて、最良の抗体応答を誘導する自己免疫系の一部が、ランゲルハンス細胞または樹状細胞であるという点で特に有利である。これらのランゲルハンス細胞または樹状細胞は、表皮内、すなわち、この送達方法が送達される浸透体を配置するこれらの組織内に存在する。
【0128】
(実施例6B:オンデマンド鎮痛薬剤(pain medication)送達)
このデバイスのこの実施形態は、完全にディスポーザブルである。このデバイスは、ヒドロモルホンまたは他の適切な鎮痛剤のためのレザーバー、熱ポレーションプロセスを支持するために必要な回路、ヒドロモルホンのイオン導入的送達を支持するために必要な回路、このデバイスを皮膚の表面に取り付けるための接着剤、熱ポレーションエレメント、送達を開始するためのボタン、および鎮痛投薬を開始するためのボタンを備える。このデバイスは、このデバイスが使用される間に皮膚に接触する少なくとも1つのカウンター電極パッドを有する。ポレーションエレメントは、ポレーション工程の後の送達電極として使用される。このデバイスは、皮膚の表面に対して配置され、その結果接着剤がこのデバイスを皮膚の表面に固定する。開始ボタンが押され、熱ポレーションエレメントを活性化し、皮膚の表面を穿孔し、同時にレザーバーの下方表面に孔をあけて、ヒドロモルホンが流れ落ちてミクロポア内に入ることを可能にする。基底送達速度でのヒドロモルホンのイオン導入的送達を開始する。疼痛を打破するために、患者は、デバイスの表面にある他のボタンを押す。これは、ヒドロモルホンのバーストを送達するためのイオン導入法電流を一時的に増加させる。多くの時間または日の後、デバイス全体が取り外され、そして捨てられる。
【0129】
(実施例6C:複数レザーバーの使用)
統合されたデバイスのこの実施形態は、薬物のためのレザーバー、キャピラリー浸透性エンハンサー(例えば、NH)のための別のレザーバー、およびpH中和化合物のための別のレザーバーを備える。このデバイスは、熱ポレーションエレメント、組織の熱ポレーションを支持するために必要な回路、レザーバー壁の熱ポレーションまたはブリーチングを支持するために必要な回路、およびデバイスを皮膚の表面に取り付けるための接着剤を備える。このデバイスは、少なくとも1つのカウンター電極パッドを有し、これはデバイスが使用されている間、皮膚に接触する。ポレーションエレメントは、ポレーション工程の後の送達電極として使用される。このデバイスは、皮膚の表面に対して配置され、その結果接着剤は、このデバイスを皮膚の表面に固定する。熱ポレーションエレメントは活性化され、皮膚の表面を穿孔し、同時にNHを含むレザーバーの下方表面に孔をあける。さらなるポレーションエレメントがNHレザーバーを加熱するために使用され、気体NHおよび水を生成する。短い待機の後、薬物レザーバーに孔があけられ、薬物がイオン導入的に送達される。電気泳動電流はゆっくりと組織のpHを変化させ、おそらくさらなるイオン導入的送達を妨害し、そして組織を刺激し、その結果、数分間の時間の後、pH中和レザーバーに孔があけられ、少しのpH中和剤が組織に送達されて、細孔インターフェイス領域を生理学的なpHである7.2付近まで戻す。薬物およびpH中和剤の交互の送達は、所望の量の薬物を送達するために必要な場合に続けられる。
【0130】
(実施例7:圧力調節およびフラックスエンハンサー)
本発明のミクロポレーションデバイスは、圧力調節およびフラックスエンハンサーとともに統合されたデバイスとして使用され得る。しかし、圧力調節およびフラックスエンハンサーは、独立型のデバイスとして、または、他の任意のデバイス(好ましくは、医用デバイス)とともに使用され得る。
【0131】
本発明の圧力調節およびフラックスエンハンサーは、圧力調節を使用して膜における1つ以上のミクロポアを通る膜貫通フラックスを増加させる。膜の下にある組織基質の強制圧縮、続いて強制拡張は、外部表面に取り付けられたレザーバー内からの圧力または吸引を用いる協調様式で適用される。
【0132】
本発明の圧力調節およびフラックス増大デバイスの種々の実施形態を使用して、フラックス増大を実施し得る。好ましくは、このデバイスは少なくとも1つのフラックス増大セルを有し、そして特定の好ましい実施形態は、単一のアレイに結合された複数のセルを含む。マルチセルアレイにおいては、例えば個々のアクチュエーターの同時制御または複数のセルに作動するアクチュエーターの使用によって、フラックスセルは同時に作用するように(例えば、「並列」セル機能によって、複数のセルから同時に浸透体を送達する)配置され得る。このようなデバイスを使用して、単一の浸透体(特に、多量の浸透体が必要とされる場合)を投与し得るか、または異なる浸透体(組み合わせ治療が所望される場合)を投与し得る。あるいは、マルチセルデバイスは、種々のセルが非同期的に作動するか、または異なる機能さえ行うように配置され得る。例えば、マルチセルデバイスは、異なるスケジュールで投与される異なる薬物を有するセルを備え得るか、または異なる機能を有するセルを備え得る(例えば、浸透体の送達のためのセルおよび組織基質からの流体のサンプリングのためのセルを備えるデバイス)。
【0133】
本発明のフラックス増大デバイスの単一のセルの実施形態の構造は、図21に示される。一般的に、単一のフラックス増大セルは、セルキャビティ(62)を規定する外壁または外環(61)を有し、このキャビティは、少なくとも1つの端部が開いている。この開いた端部は、このデバイスの使用の間、ミクロポア(73)を有する生物学的膜(74)と接する。外壁は、代表的には、少なくとも1つの開いた端部を有する中空円筒の形状であるが、多角形断面もまた意図される。外壁は、実質的に直立しており、そしてキャビティの境界となる縁(63、「膜インターフェイス縁」)を有する。内部キャビティを規定しているレザーバー(64)または中央部分(65)は、キャビティ内に移動可能に含まれる。浸透体の投与を意図するデバイスにおいては、レザーバーは、浸透体(66)を収容する。このレザーバーは、出口(67)を有し、これはキャビティの開いた(膜インターフェース)端の方を向いている。特定の実施形態においては、しなやかな(compliant)膜(68)は、キャビティの膜インターフェース端にあるレザーバーと外壁との間の間隙を埋める。さらなるしなやかな膜(69)はまた、レザーバー壁、外壁、およびこのしなやかな膜によって規定される圧力チャンバーを形成するように備えられ得る。このしなやかな膜はさらに、接着剤(70)でコートされ、生物学的膜とのシールを促進し得る。他の実施形態においては、外壁の膜インターフェース縁、および出口を有するレザーバーの端部は、接着剤でコーティングされる。このレザーバーおよび外壁はさらに、制御可能な圧力ポート(71、72)を備え得、これを介して、セルキャビティおよび内部キャビティ内の圧力がそれぞれ調節され得る。生物学的膜(74)の下には、細胞基質(75)があり、そして細胞基質(75)の間の空間に生物学的流体(76)がある。
【0134】
本発明のフラックス増大デバイスを操作する方法の原理は、皮膚組織が多孔性スポンジで置き換えられる例えによって説明され得、このスポンジの上に、1つの側面は、これに結合された非多孔性の柔軟な膜を有する。この膜は、皮膚組織のバリア層に相当し、これは、ヒト被験体において、角質層で構成される。この膜に小さな孔が形成される場合、次いで液体レザーバーがこの上に置かれ、この液体のいくらかを確実にスポンジの下に注入する。しかし、一旦、このスポンジが流体で十分に飽和されるようになったら(〜90%含水量のヒトの皮膚の真皮と類似した状態)、この最初のフラックスは停止し、そしてレザーバー内の流体とスポンジ内の流体との間の選択された化合物の濃度差のために、外部からスポンジ内へのさらなる任意の分子フラックスが、拡散のみによって進められる。動物(またはヒト)の皮膚(これは、始めに流体で十分に飽和される)の場合に先に記載されたように、ミクロポアを作製し、そして流体レザーバをその上に置くことは、受動拡散プロセスによって進められる濃度勾配のために、その開口を通るフラックスを制限する。
【0135】
本発明の1つの実施形態においては、フラックス増大デバイスは、図22に連続して示されるように操作される。図22aは、このシステムの圧力制御サイクルの最初の「ニュートラル」段階を示す。図22aは、フラックス増大デバイスの単一のセルを示し、これは単一セルまたは複数セルフラックス増大デバイスであり得る。単一のセルは、接着剤によって生物学的膜の皮膚表面に付着される。
【0136】
図22bは、圧力調節サイクルの白化(blanching)(すなわち、第2)段階を示す。レザーバー中の圧力を徐々に増加させると、ミクロポアの周りの生物学的膜の全領域は、中央部分を押すことによって下にある皮膚組織内に押し下げられる。図22bに示されるように、中央部分を押す力が増加するにつれて、この力は、このデバイスを円錐形を呈するようにさせ、標的組織内に押し込む。このことは、2つの効果を生じる。第1に、生物学的膜の上のデバイスを押すことによって、流体レザーバーと皮膚表面との間のシールがより強力になり、このレザーバー内がより高い圧力で維持されることを可能にして、流体漏出の可能性を最小にする。第2に、皮膚組織の下にある細胞基質が圧縮され、細胞の間の細胞基質内に捕捉される流体のほとんどを、隣接する領域に押し出す。ヒトの皮膚の場合、この第2の効果は、圧力が適用され、次いで急速に除去される場合に、組織の「白化」として容易に観察される。これは、指先を前腕の肉質な裏面にしっかりと押し込み、次いで急速に取り除くことによって容易に実証され得る。直前に圧縮下にあった部位は、ヒト被験体の周りの皮膚よりも明らかに白い。
【0137】
図22cは、圧力調節サイクルの組織拡張(すなわち、第3)段階を示す。ここで、デバイスの中央部分は、皮膚組織表面から離れて引っ張られるが、しなやかな環状部分は、適切な接着剤、穏やかな空気吸引もしくは減圧、またはこれらの方法のいくつかの組み合わせによって、皮膚の表面に付着されたままである。同時に、レザーバー内の圧力は、周囲のレベルまで低下し、薬物の有効荷重を保持している中央レザーバーから漏出が形成されないことを確実にする。このときに、ミクロポアの直下にある直前に白化された皮膚細胞組織基質の圧縮状態は、流体を薬物レザーバーから誘導して、穿孔された表面の下にあるこれらの皮膚組織に孔を通して流す。
【0138】
図22dは、圧力調節サイクルのニュートラル(すなわち、第4)段階への回復を示す。ミクロポアの周りのデバイスの中央部分は、ここでニュートラル位置に戻るが、漏出が起こらないことを確実にするように、同時にレザーバー内の圧力をわずかに増加させる。この時点で、先の工程においてミクロポアの直下にある細胞基質内に流れた浸透体は、ここで、侵入地点からさらに離れて周りのより大きな容積の組織内に流れるように誘導され、そして最終的には毛細管と接触し、その結果、所望の場合は、血流内に吸収され得る。このサイクルを繰り返すことによって、ますます流体が組織内に汲み取られることを可能にする。
【0139】
皮膚表面への付着のための適切な接着剤は、現在生産されているバンデージ、包帯、および経皮パッチで使用される、多数存在する医療等級の接着剤の任意の1つを含み得る。多くの製造業者(例えば、3M、Avery、Specialty Adhesivesなど)は、この種類の適用のために特別に設計された接着剤を作製する。好ましくは、選択される接着剤は、その有用な適用の限度(これは、数分から数日にわたる)の間、組織表面にデバイスを取り付けるための十分な粘着力を有し、なおかつこのシステムが消耗した場合に痛みのない取り外しを可能にする。この付着プロセスを補助するために、制御された吸引の適用を組み合わせることによって、より侵襲的でなく、かつより人々にやさしい接着剤が使用され得る。付着プロセスを補助するために吸引が使用される場合、接着剤の粘着特性はより重要ではなくなるが、空気シールを形成するその能力は、吸引を含むためにより重要になる。臨床的研究は、接着剤とともに吸引が使用される場合、非常に低性能の接着剤(例えば、3M製品「Post−Its」に使用される接着剤)でさえも効果的に使用され得、所望の場合はいつでも、完全に痛みがなく、非外傷的なこのシステムの取り外しを補助する。
【0140】
組織表面に界面を接し、そして組織表面に付着するように設計されたこのデバイスのしなやかな部分は、以下のような化合物から形成され得るが、これらに限定されない:シリコーンゴム、ラテックス、ビニール、ポリウレタン、プラスチック、ポリエチレンなど。このデバイスのより可撓性ではないかまたは堅い部分は、任意の適切な成形可能な材料(例えば、金属、プラスチック、セラミックなど)から作製される。好ましくは、成形され得る材料がいくつかの製造上の利点を有し、従って最終製品コストも同様に有利である。いくつかの場合においては、シリコーンゴム、ラテックス、ビニール、ポリウレタン、プラスチック、ポリエチレンなどのような材料を用いると、このシステムの可撓性な部分およびより堅い部分の両方は、種々の部分の構造の寸法を、必要な所に必要な柔軟性を、同様に必要な所に求められる堅さを可能にするように単に設計することによって、同じ材料から作製され得る。この同じ一般的な様式において、類似であるが、わずかに異なる化合物を型に連続的に導入する層状プロセスを使用して、ある領域ではより柔軟性を、そして他の領域ではより堅さを与え、さらに、異なる「混合物」の界面での良好な継ぎ目のない結合を提供する。張力特性におけるこの型の選択的変形はまた、異なる割合および量で、構造全体の異なる部分に硬化エネルギーを選択的に適用することによって、製造プロセスの間に影響され得る。例えば、γ線または紫外光を照射することによって、ポリマー化合物中により多数の架橋を形成し得、単一の小片として最初に形成された同じ材料の小片にわたって、その材料の特性を劇的に変化させる。シリコーンの単一の小片の1つの面では非常にしなやかで粘着性の性質を示し、かつ他方の面では非常に堅く、非接着性の特性を示す単純な構造の市販されている1つの例は、「Dr.Scholls」からフットケア製品として製造および販売される「Corn Pads」である。
【0141】
このシステムの動作を調整するために、予めプログラムされたコントローラは、所望される限り多くの回数、これらの異なる工程を介してこのシステムを繰り返すための、制御信号の適切な配列を発生する。このコントロラーは、制御シグナルの適切な配列を発生するマイクロプロセッサを備え、所望の配列でこのシステムの異なる機能を可能にし得る。小さなポンプ(例えば、小さなダイヤフラムまたは蠕動ポンプ)は、吸引または圧力を発生させることが必要な場合に連動され得る。あるいは、小さな圧力レザーバー(例えば、金属シリンダーもしくはプラスチックシリンダーまたは圧縮ガスの袋)、または閉じたチャンバー内の液体の電気分解(気体を発生する)を介して生じた圧力は、圧力を供給するために使用され得る。必要に応じて、このシステムの運動のすべての局面にわたる制御は、単純な弁機構を用いて容易に達成され得、マイクロプロセッサにレザーバー圧力/吸引および制御可能なアクチュエーターの作用の協調された制御を提供し、圧縮/減圧サイクルの間のこの構造の外部部分に対して中央レザーバーの必要な動作を提供する。さらなる適切な弁およびシールを用いて、抑圧/引出し(皮膚表面からの中央部分の作用)を提供するための吸引および圧力源を使用し得る。この様式において、1つ以上の回路を有する単一の蠕動ポンプ機構は、順方向または逆方向のいずれかで連動して、異なるポンプ回路の掃引領域の適切な設計とともに、必要な場合に圧力または吸引のいずれかを発生し、そして必要に応じて、適切な大きさの圧力ブリードポートおよび一方向弁、必要とされる協調した一連の吸引、圧力および機械的変換はすべて、単一の蠕動ポンプに基づく移動部品を有するシステムによって行われ得る。蠕動ポンプは本来、容積式機構であるので、これらは非常に効率的である。あるいは、これらの原動力は、このデバイスサイクルに対する動きを協調するための適切な連結を有する、マイクロプロセッサ制御下の小さなモーターまたはアクチュエーターによって容易に提供され得る。
【0142】
適切に強力な接着剤を使用してこのシステムを組織表面に付着させる場合、組織圧縮−拡張の全段階は、このデバイスおよび付着した組織の機械的変形のみを利用して達成され得、大気圧は、送達レザーバー/抽出チャンバー内の圧力のみを提供する。この場合において、圧縮サイクルを使用して、組織基質内に非常に高い内部圧力を生成させて周囲の大気圧を超え、それによって検体(例えば、間質液)の流出物を孔を通して抽出チャンバー内に誘導する。
【0143】
生物体から検体を抽出するためのこの概念を使用するために、基本的な同じ一連の工程を適用することのみを必要とするが、一方で孔を通してサンプルチャンバー内に間質液の留出物を誘導するために、減圧レベルでレザーバーを維持する。従って、皮膚が減圧状態に膨張される場合、細胞基質は間質液で満たされ、次いでサイクルの内向きの圧縮部分が生じた場合に、この流体を捕捉したマトリックスは、抵抗が最小の経路(そのうちの1つは、ミクロポアである)で組織の外に押し出され、サンプルチャンバー内に導かれる。抽出適用の改良は、含まれる領域の外側の範囲から始めることにより、下向きの圧力が適用される場合になされ得、次いで孔に向かって内向きに圧力がもたらされ得る。圧力のこの定方向の増加は、流体を周りの組織基質内に逃させるのではなく、より多くの流体をミクロポアに向かって押し出す傾向にある。同様に、この容易に適用される圧力パターンの逆転は、先に記載される送達様式を増強させるために使用され得る。
【0144】
収集または送達のためのプロセスを最適化するために、このプロセスの異なる段階の相対的なタイミングおよび持続時間を変化させることが有利である。例えば、所定の被験体については、間質液で十分に満たされるために、減圧サイクルにおける皮膚組織基質の所定のピーク膨張に対して特定の量の時間をかける。この時間は、被験体の水分補給のレベル、それらの個々の皮膚組織の構成、それらの間質液の粘度、および他のより明確ではない因子(例えば、組織基質の局所的水分浸透性、被験体の血圧など)に依存する。
【0145】
同様に、送達のための最適化は、先に記載された収集する配列からの半径方向に方向付けられた圧力の変化を反転させる工程を包含し、その結果、送達の後に、レザーバーがミクロポアおよび下にある組織へのその流体の有効荷重の一部を放棄することを可能にし、下向きの圧力がこのデバイスの中央から連続的に適用され得る場合、その圧力は、流体を周りの組織基質内へ、そしてミクロポアから離れて、蠕動様式で流し出す傾向にある。このデバイスはまた、ミクロポアを下降させ、カバーし、そしてそれによって密封するように設計されたプランジャー機構を使用し得、この方向性の力をなおさらに明確にする。これらの特徴のすべては、低コストのディスポーザブルシステムに容易に含まれ得る。
【0146】
本発明のフラックス増大デバイスの完全な組み立てられたシステムの製造は、プラスチックまたはシリコーンなどの成形された単一の構成要素を経る。同様に、このシステムの大きさまたは縮尺は、幅ほんの数百ミクロンの小さなアセンブリ内に図21に示される有効な要素のすべてを含み得るシステムから、これらの同じ機能の構成要素が幅10cmまでの領域を占め得るスケールアップしたバージョンまで、広範囲にわたって変化し得る。より小さなバージョンのためには、単一の統合されたシステム内に複数のフラックス増大セルを組み込むことは非常に有用であり得、各々のミクロ圧力調整システムは、皮膚を通る選択された数の孔の上に配置される。図23aおよび23bは、マルチチャンバー(熱ポレーションエレメントをまた各ミクロセルの皮膚接触点で組み込むミクロセルアレイ)の断面概略図を示す。このマルチチャンバー(ミクロセルアレイ)は、図22(a〜d)に示される方法および原理によって作動し得る。
【0147】
図24は、図23のマルチチャンバー、ミクロセルアレイの単一のミクロセルの拡大図を示す。圧力調整活性化リンク(a)は、人工的開口部付近に中心部分を連結して示され、そしてリンクの別個の対は、セルの外環に連結する。外側リンクに対して中心リンクを下に押すことにより、サイクルの白化期または圧縮期が達成される。逆に、外側リンクを被験体の皮膚に向かって下に押しつけながら、これらの中心リンクを引き戻すことにより、徐圧期が生成される。浸透体レザーバー(b)はパッチのしなやかな成形本体内で形成され、このチャンバー内の圧力は、皮膚変形サイクルが終了すると、周囲材料の相対変形により設定される。あるいは、これらのチャンバーの各々への入口は、パッチ本体に成形されて、このレザーバー内の圧力の作動的かつ独立した制御を容易にし得る。この入口はまた、レザーバーを選択された浸透体(単数または複数)で充填するために、製造プロセスにおいて使用され得る。薄膜バッキング(c)および伝導性トレースの皮膚側に配置された接着剤は、皮膚表面への必要な付着を提供し得る。鋳型ベース(d)の製造技術を使用することによって、パッチ様システムが確立され、これはほんの数mm厚であるが、1〜20平方cmの範囲の皮膚の領域を覆うように作製され得る。このことにより、全システムのフラックス容量が、選択された治療化合物の各々について量られ得る。また、複数のミクロレザーバーを備えるシステム(これらのレザーバーの各々は、互いに分離され得る)は、複数の異なる薬物を、異なり、さらに制御可能/プログラム可能なフラックス速度で送達し得る、針無し送達システムである。フラックス速度は、以下を包含するいくつかの手段によって、制御または選択され得る:各薬物について、ミクロ圧力調整セルの数を設定する工程、異なる薬物を含む種々のセルの作動の速度および深さの両方を変化させる工程、各セルによりアクセス可能なポアの数を変化させる工程など。
【0148】
このシステムの設計、および記載されるように存在する様々な構造はまた、それ自体、さらなるフラックス増大技術が使用され、そして基本的な圧力調整/機械操作システム(例えば、電子輸送、エレクトロポレーション、ソノフォレシス(sonophoresis)、化学的エンハンサーなど)と組み合わされ得るのを助ける。例えば、成形パッチの本体が、電気伝導性ポリマーを含む選択された部分を用いて形成される場合、レザーバー内の薬物/浸透体と直接接触するこの材料は、送達電極として使用され得、一方、このパッチの別個の近接し、伝導性であるが電気的に分離された部分は、電子輸送の増強された送達様式で、対電極として働き得る。適切なドーピングを、この成形材料に組み込み、生体適合性イオンを有するイオン交換樹脂の機能性を提供することによって、電子輸送プロセスは、不必要な分子が皮膚に送達される心配なく、進行し得る。これらの同一の伝導性エレメントは、人工的開口部により皮膚表面に形成される電流コンジットを介してアクセス可能な組織をエレクトロポレーションするために使用され得る。エレクトロポレーションを熱ミクロポアと組み合わせる基本的な考えは、米国特許第6,022,316号(これは、その全体が本明細書中で援用される)に詳細に記載される。同様に、パッチの皮膚インターフェース層上に存在する伝導性トレースを用いて、これらはまた、電子輸送、エレクトロポレーション、またはポア間のインピーダンスセンシング(閉ループを容易にするために有用であることが示されている技術)のための電極、各ポアが皮膚の組織基質への所望の深度まで形成されたか否かを確認するための動的方法として使用され得る。最後に、パッチの頂部に結合した音波源(例えば、圧電作動性または磁歪材料のシートまたは層)を備えることによって、音波はレザーバーに向かい、そしてレザーバーを通過し、ポアを通過して皮膚に向かうより高い薬物/浸透体のフラックス速度を引き起こし得る。亜音波から超音波の全ての周波数で使用され得る音波エネルギーを用いて、パッチ材料の選択、およびレザーバーの内部形状、ならびにパッチの他の特徴は、音波エネルギーを所望のように非常に効率的に焦点を合わせそして/または方向付けるために使用され得る。例えば、図24に示される湾曲した円錐形のレザーバー(b)は、その図の上から皮膚表面へ伝播する横音波を焦点合わせする効果を有する。曲率補正して、レザーバーに入る音波エネルギーを、底部に形成されるポアと同時に、小さな点に直接焦点合わせし得る。同様に、図24に示される機械連結構造体(a)は、音響インピーダンス不整合を生成し、それにより音波をポアに向かって、この境界における反射により方向付けるために使用される。このタイプの音波エネルギー集束は、50cm/秒程度も高い局所的流速を有し、そして非常に小さい平均音波電力レベルで、全てがポアを通過し、皮膚に向かって方向付けられる、動的「アコースティックストリーミング」効果を引き起こし得る。
【0149】
アコースティックストリーミングを引き起こす音波エネルギーのモードの、経皮フラックス増大方法としての使用は、この目的のための音波エネルギーに起因する従来のメカニズムとは有意に異なる。音波および超音波エネルギーは、選択された小〜中分子量化合物の経皮送達を増強するために、何十年もの間、臨床的に実験さられそして使用されきたが、フラックス増大の実際のメカニズムを考える科学団体の間の一般の一致点は、超音波エネルギーは、様々な膜および無処置の角質層中の脂質二重層に微視的な小胞開口部を生じるキャビテーションを引き起こすこと、またはこの音波エネルギーは、特に、温度が約37℃の角質層中の固相脂質相の相変化点を超える場合、角質層および他の皮膚組織の浸透性を増加することが周知である局所低体温状態を誘導すること、のいずれかである。現存のミクロポアと共に、ほとんどかまたは全く耐水圧性を有さない開口チャネルが、薬物調合物の迅速な流入を可能にするためにここで提供される。アコースティックストリーミング効果は、これらのチャネルを表皮へと下方に方向付けるための高い局所的速度および流体圧を可能にする。ミクロポアへ方向付けされた流体の速度および圧力のこのタイプは、以下の理由のため、単に送達レザーバー内の静水圧を増加しただけより、よりいっそう有利であることに注目すべきである。送達レザーバー内の圧力を単に上げただけの場合、この圧力を保持し、かつパッチと皮膚表面との間の接着剤ベースの接合における漏出を引き起こさないためには、使用される接着剤が非常に強力でなければならない。パッチがシアノアクリレート「強力接着」接着剤で被験体に付着される臨床試験において、ほんの1psi未満の非常に低い陽圧の連続的な適用は、数分以内に生成する漏出を引き起こす。これらの実験を行なったときに発明者が行なったように、この種類の「強力接着剤」と一緒に指を不注意にも接着した人が、この驚くべきことを見出し得る。しかし、漏出が実際にはどこで生成されるかをより精密に調べると、正確な位置が明らかになる。以下の実施例で説明する。
【0150】
(実施例7A:定圧送達)
1平方インチの全レザーバー皮膚領域の中程度にサイズ決めされたパッチを適用し、硬皮のない領域(例えば、掌側の前腕または腹)上の清潔な乾いた健康なヒト皮膚に接着剤を介して貼り付けた。試験パッチは、レザーバー、およびパッチの1/4インチ幅の外周を占める密閉表面の連続した視覚観察を可能にする、透明なプラスチックから形成された。このレザーバーは、水性浸透体で満たされ、この実験のための浸透体は、チャンバーからの任意の漏出の検出を助けるために、深青色に着色される。使用される接着剤は、シアノアクリル酸無酸素性「強力接着剤」調合物であり、これは、塗布され、そして中程度であるが安定した圧力下で5分間保持される。接着インターフェースにより皮膚に与えられる明瞭な表示により、付着の質および均一性についての優れた目視検査が可能になる。パッチと皮膚との間の接着結合が良好なようであることを確認した後、着色された浸透体溶液を注入ポートを介して送達レザーバー(圧力を全く生成することなく、レザーバーを充填し得るように開放されたままの流出ポートを備える)に充填する。漏出がないことを確認した後、この流出ポートを閉め、そしてここで注入ポートを使用して、1psiの送達レザーバーの一定の陽圧を徐々に付与する。このレベルの圧力は、非常に低く、膨らまされた場合の子供のパーティー用の風船内に典型的に存在する圧力より小さい。圧力水頭の最初の付与の際、レザーバーの下の皮膚はわずかに伸び、そして被験体の体内に向かって下に湾曲される。平衡状態は、それ自体迅速に達成されることが期待され、ここで皮膚の膨張は、この量の力のもとで、その最大限に達し、そしてそれ以上伸びないが、この研究の複数の反復実験において観察されたことは、ヒト皮膚は、これらの条件下で非常に弾性であり、そして次の数分間にわたって、圧力が1psiで一定に保たれると、レザーバーの下の皮膚の膨張が続くということである。この結果は、接着剤付着の内部表面における皮膚インターフェースは、ここで、パッチ本体からほとんど垂直に引っ張られるということである。この点において、この様式で、緩やかであるが一定の皮膚を引っ張る力を用いて起こり始めることは、角質層自体が剥離し始めることである。角質層の最も外側の層は、この組織にわずかに浸透する「強力接着剤」の網目構造を強化することにより、一緒に保持されるが、この浸透が止まると、角質層を一緒に保持する結合力は、単に、ケラチノサイトの「レンガ」の間の「モルタル」として作用している身体の本来の脂質ベースの接着に起因し、そして、崩壊し始めそしてそのままにされるのはこの接着である。皮膚を接着剤インターフェースの平面から下向きに伸ばすことにより、接着の破壊に対する抵抗力は、より広い領域に広がるよりもむしろ、角質層内の非常にわずかな細胞に集中される。圧力は一定に保たれているため、一旦、角質層がこの様式で分裂し始めると、漏出経路がパッチの外側まで確立されるまで、この分裂は続く。これが意味することは、ヒト被験体にこの種類のパッチを付着するために、どれほど優れた接着剤が使用されるかに関係なく、定圧がパッチ内に付与された場合、すぐ上で記載された組織の分裂現象を止めるのはほとんど不可能であるということである。
【0151】
(実施例7B:定圧送達)
実施例7Aの同じ基本的な手順を繰り返すが、特定の寸法は、ここで以下のように変える。送達し得るミクロポアについて、ミクロポアの実用密度は、1ミリメートル中心上にポアを形成しなければならない。1平方インチの全パッチ領域について、これは25×25のマトリクス中の625個のポアに等しい。従って、本発明者らの実験により、中〜高分子量の薬物のフラックスは、ポアの間の破壊されていない皮膚を通って本質的に起こらず、領域全体を覆うレザーバーを構築することが無駄なようであるということが示された。代わりに、このことにより、各個のポアが直接このポア上に位置する非常に小さいミクロレザーバーを有する様式でこのパッチが構築されることを、より良く理解し得る。好ましくは、パッチの底面が、皮膚への接着剤の接着が、角質層内に角質層を通って形成されたポアの端部まで縦貫するように形成される場合、これは、皮膚への接着剤の接着の最大の全面積を提供し、同時に付与される付近の定圧に曝される皮膚の全面積を最小化する。形成される各ポアの直径が100ミクロン(0.0039インチ)である場合、圧力水頭に暴露される皮膚の全面積は、625×3.142×(0.002)=0.0076平方インチである。この数を以前の実験により示される面積である、1.0平方インチと比較して、この面積を130:1の係数により縮小する。各ミクロポア/ミクロレザーバーについて、圧力水頭が同じ1psiまで戻される場合、各ポア部位における皮膚上の最大力は、わずか0.000012ポンドであり、一方、第1の実施例において、皮膚は1ポンドの全力(最大力の80,000倍)に供された。これらの条件下で、中間の定陽圧力水頭を使用して、約20分までの制限された時間の間、ミクロポアを通る流体フラックスを誘導することが可能であることが見出された。しかし、実施例7Aにおいてでさえ、一旦、接着剤インターフェースの任意の剥離が起こり始めると、なだれ効果が作用し始め、ここで皮膚に与えられる最大圧力は、暴露される面積が増加するほど幾何的に増加し始め、そして漏出の失敗が起こったことが確認される。従って、接着面積を最小にすることおよびレザーバーおよびこのレザーバー内の圧力水頭に曝されるポレーションしていない皮膚の量を減少することに特に注意して、皮膚に対するパッチインターフェースの構造を単に再設計することにより、システムは構築され得、このシステムは、多くの適用のために十分な時間の間、ミクロポアを介する制御された送達プロフィールを誘導する一定の圧力勾配の使用を可能にする。
【0152】
(実施例7C:調整された圧力送達)
上記の実施例7Aおよび7Bに記載される実験結果に基づいて、圧力付与の可能な全持続時間を増加するための方法が示唆された。基本的に、皮膚組織の粘弾特性を試験した後、図7Bに示されるパッチ設計が、循環圧力の調整が用いられるべきである時間にわたって定常圧力水頭を保持するよりもむしろ、使用されたか否かが決定された。この圧力を周期的にゼロまで下げることにより、2つの明らかな利点が認められる。第1に、皮膚組織の連続的な伸びは、パルス性の伸びプロセスより皮膚組織に対するストレスが多い。単に比較的短いパルスの圧力を与えることにより、皮膚組織自体、より詳細には接着剤インターフェースは、分裂点を圧迫しない。第2に、圧力はミクロポアを通り下の生存組織基質へ至る流体フローを誘導するため、周期的に圧力を低下させることにより、これらの組織内に灌流された流体はより大きな面積に広がり得、このことは次の圧力送達サイクルにおいて、より「多孔性」の組織基質が存在することを意味する。ヒト皮膚に関して、この種類の圧力調整の時間経過が最適化され得るいくつかの本来の共振周波数が存在する。これらの共振モードにおいて明らかな被験体間の分散があるものの、本発明者らの実験研究は、0.1〜10秒間にわたって圧力サイクルを変動させることは、試験されたほとんどの被験体において功を奏することを示した。この圧力サイクルの期間は、非対称な衝撃係数と共に短くなるため、これらの条件下で確認可能なピーク圧力は劇的に上昇し始め、時間が1秒未満に保たれ、そして少なくとも30%未満の衝撃係数で実行する場合、皮膚/接着剤インターフェースが分裂することなく、10psiより大きいピーク圧力が確認され得ることにもまた留意すべきである。
【0153】
(実施例7D:調整された圧力送達)
実施例7A、7Bおよび7Cに記載される全ての実施形態に加えて、音波フラックスの増大、より詳細には、アコースティックストリーミング、および焦点合わせした音波エネルギーを取り込むことによって、改良されたミクロポアベースのパッチ送達システムが実現される。この改良された送達システムは、形成される各ポア上の複数の小さなミクロレザーバーチャンバーを使用し、ここで、流体フローおよび圧力はこれらのポアの方に方向付けられるが、定常圧はレザーバー自体の中では生成されない。これらのポア上に焦点合わせした音波エネルギーを、高いピーク電力(0.1〜100ワット/cm)、比較的小さ繰返し数(0.1〜50Hz)での短い持続時間(0.001〜0.1秒)のバースト、数気圧の短寿命の過渡的圧力波でパルスすることによって、放射圧流体移動、および浸透流体をポアを通り被験体の体内に至るように方向付けるアコースティックストリーミング効果の両方を引き起こす。また、圧力を流体にこの様式で付与することによって、レザーバー内に保持され、パッチと皮膚との間の接着剤付着を破壊するように働く正味の定圧は存在しない。さらに、音波エネルギーのピーク電力は焦点において100ワット/cm程度も高くあり得るが、使用される低い衝撃係数(典型的に1%以下)は、この点において、このレベルをわずか1ワット/cmの平均電力まで下げ、そして実際に送達されているほんの100マイクロワットの全平均音波電力レベルについて、焦点の実際の面積はほんの100マイクロワット幅、または0.0001cm未満であることとの兼ね合いで、非常に低いコストのエネルギー効率システムが構築され得る。
【0154】
異なる活性フラックス増大技術のこれらの相乗的な組み合わせの全ては、この同じ発明者の引用した特許付与された特許および同時係属中の特許に詳細に記載されている。
【0155】
(実施例8:送達とモニタリングを併用するデバイス)
図25は、ミクロポア法を適用して、被験体への浸透体の送達、および次いで選択された浸透体のレベルについて分析されるこの被験体からの生物学的流体サンプルの抽出の両方を同時に行うためのデバイスの概略図を示す。この図に示される特定の例は、閉ループインスリン送達/グルコースモニタリング適用についてである。ディスポーザブルパッチは2つの別個の部分を含み、1つはインスリンの送達にあてられ、本明細書中に記載される様々なミクロポアベースの送達方法および装置の所望の特徴の全てを備え、そして第2の部分はこれらのミクロポアを使用して、グルコースレベルが測定され得る間質液サンプルの抽出を可能にする。制御モジュールは、被験体のグルコースレベルを80〜100mg/dlの正常範囲内に安定化する所望の臨床的目的で、測定されるグルコースレベルに応答する様式でインスリン送達速度を調整するように設計されたアルゴリズムでプログラム化され得る。送達アルゴリズムは、グルコースレベルの測定に専ら依存することに加えて、今日の最新のインスリンポンプシステムのように、基本の注入速度および均一な予備食餌ボーラス送達サイクルを容易に取込み得る。このディスポーザブルパッチは、数時間から数日もつように設計され得、実用的な限度は、グルコースセンサの有効寿命および送達レザーバー内に輸送されるインスリンの量により作動される。インスリン送達の被験体のグルコースレベルに対する薬力学的効果の直接測定を可能にすることによって、本物の外部人工膵臓が実現されている。送達および抽出コンジットの両方を確立するためのミクロポアを使用することによって、システムはまた、皮膚の皮下層への物理的に侵襲性のカニューレ導入、およびグルコースレベルを評価するランセットベースの血液吸引を必要とするインスリンポンプと比較して、非侵襲性である。この実施例はインスリン注入およびグルコースのモニタリングに集中しているが、同じ基本概念が、特定の薬物動態学的/薬力学的特徴を達成しそして維持するように設計された動力学的に制御された送達速度から利益を受け得る広範な治療的化合物に適用され得る。この種類の閉ループで調整された送達システムのためのいくつかの優れた候補は以下である:使用されている多くの化学治療であって、この化学治療は最適な治療効果が達成される場合と陰性の副作用が被験体を圧迫するようになる場合との間の狭い領域を有する;発作を制御するために使用されるいくつかの精神活性薬;慢性疼痛の処置のためのアヘン剤ベースの化合物を使用するオンデマンドの患者管理無痛法におけるモニターとして(ここで、患者が不注意に過剰投与し得ない安全な閾置レベルが設定され得る)。
【0156】
(実施例9:ポレーションエレメントの平面アレイの直接レーザー機械加工)
図26および27は、ポレーションエレメントの機能性平面アレイが本明細書中に記載される直接レーザー機械加工法を使用して製造され得る方法の2つの異なる設計の例を示す。図26において、ポレーションエレメント(82)は、よじれたループの形状で製造されたように理解され得る。この形状は、このループに電流パルスを通過させることにより加熱された場合、このエレメントを支持基材からポレーションされる生物学的膜に向かって上に曲げる。導電性トレース(80および81)により、電流源は並列様式でポレーションエレメント(82)に送達され得、この図に示される3つのエレメントに同時に接続される。
【0157】
図27は、平面ポレーションエレメント(93)の同様のアレイを示すが、作動した設計ではない。伝導性トレース(90、91および92)は、一連の並列回路においてこのアレイ内のポレーションエレメントを連結する。この様式において、8個全てのポレーションエレメント(93)が、伝導性トレース90から伝導性トレース92へ電流パルスを通過させることによって達成され得る。あるいは、中心伝導性トレース(91)に連結する4個のエレメントの8グループが、トレース(90)と(91)との間、または(91)と(92)との間のいずれかに電流を選択的に印可することによって、4個のグループとして作動され得る。これらのデバイス設計のこれらの顕微鏡写真に示される両方の例は、50ミクロン厚のタングステン合金の薄膜を用いて出発することにより製造され、これは次いで、直接レーザ機械加工プロセスにより示される最終寸法に切断された。個々のポレーションエレメントはそれぞれ、50ミクロンの名目幅を有する。これらのデバイスに使用されるタングステン合金について、50ミクロン×50ミクロンのほぼ正方形の断面積を有するポレーションエレメントは、1アンペアの振幅および0.001〜0.003秒の持続時間を有する方形波電流パルスをこの正方形に通過させることによって、1000℃より高くまで熱的に循環され得る。
本明細書中で参照される全ての刊行物、特許および特許明細書は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【符号の説明】
【0158】
1 薄膜組織インターフェース(TFTI)
2 ポレーションエレメント
3 並列熱伝導性ネットワーク
4 アノード側
5 カソード側
6 支持基材
7 ワイヤエレメント位置
8 ワイヤエレメント位置
9 シート
10 湾曲部分
11 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図21に記載のミクロポーレーションデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図3】
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【図7】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−158554(P2010−158554A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76330(P2010−76330)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【分割の表示】特願2009−41516(P2009−41516)の分割
【原出願日】平成12年6月8日(2000.6.8)
【出願人】(500415759)アルテア セラピューティクス コーポレイション (11)
【Fターム(参考)】