薄膜製造方法、薄膜付基板および薄膜製造装置
【課題】金属ナノ粒子を用いた印刷方法によって、緻密な薄膜を効率的に生産する方法およびその製造装置を提供する。
【解決手段】粉体とナノ粒子を含むペースト又は分散液を基板の上に塗布して第1の組成層を形成し、仮焼成処理を行う。次に、粉体とナノ粒子を含むペースト又は分散液を第1の組成層の上に塗布して第2の組成層を形成し、仮焼成処理を行う。最後に、加熱処理及び加圧処理を同時に行い、基板の上に薄膜の組成層を形成する。
【解決手段】粉体とナノ粒子を含むペースト又は分散液を基板の上に塗布して第1の組成層を形成し、仮焼成処理を行う。次に、粉体とナノ粒子を含むペースト又は分散液を第1の組成層の上に塗布して第2の組成層を形成し、仮焼成処理を行う。最後に、加熱処理及び加圧処理を同時に行い、基板の上に薄膜の組成層を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜製造方法、薄膜付基板および薄膜製造装置に関し、特に、ナノ粒子を用いた印刷プロセスによって薄膜を形成する方法及び装置、更に薄膜付基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜を形成する技術は、太陽電池の光吸収層、有機ELパネル、液晶パネル、電子ペーパ等の製造分野にて利用されている。ここでは、太陽電池の光吸収層の製造を例として説明する。
【0003】
CIS系太陽電池は二酸化炭素排出抑制などの環境問題にも対応しており、低コストの製造プロセスの開発が行われている。CIS系太陽電池は、光吸収層の材料として、シリコンの代わりに、Cu、In、Ga、Al、Se、S等からなるカルコパイライト系(I-III-VI族)化合物を用いる。これらの化合物のうち、Cu(In,Ga)Se2、Cu(In,Ga)(Se,S)2、及び、CuInS2は、それぞれCIGS、CIGSS、及び、CISと称される。
【0004】
CIS系太陽電池の光吸収層は、従来、スパッタ法によって形成されている。しかしながら、スパッタ法は、真空プロセスでありコスト高となる。そこで、非真空プロセスであるため印刷法が開発されている。これは、複数の金属ナノ粒子を混合したインクを印刷プロセスおよび加熱処理によって薄膜化するものである。
【0005】
しかしながら、印刷法は、膜の緻密化が困難であるという問題がある。金属ナノ粒子を、基板上に形成して、焼成しても、通常、十分な厚さが得られない。特に銀金属ナノ粒子によって形成された配線は、抵抗値が適当な値とならないことがある。そのため、銀金属ナノ粒子に、それよりも大きな銀粉体を混入させて、膜形成を行うことで抵抗値の改善を行っている。更に、膜の緻密化を図るために加熱だけでなく、加圧を併用することも有効である。
【0006】
特許文献1には、低温で導電パターンを形成する方法が記載されている。また、特許文献1には、加圧方法として、複数個のRが付いた金属球体を設けた装置を用いて、試料面を連続的に複数回、圧力印加を行う方法が記載されている。特許文献1には、更に、アルミニウムペーストを100℃で30分加熱させて溶剤成分を除去した後、ローラ型プレス機を用いて加圧配向を行うことが記載されている。
【0007】
特許文献2は、導電性焼結層形成用組成物に有機物で被覆された金属粒子と酸化銀粒子を用いて加熱と加圧を加えることによって接合層を形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−124446号公報
【特許文献2】特開2008−166086号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】化合物薄膜太陽電池の最新技術 pp.62
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に記載された方法は、接合層を形成する方法に関するものである。特許文献1に記載された方法は、複数個のRが付いた金属球体を配置した装置を用いて、試料面を連続的に複数回、圧力印加を行っている。この方法は、例えば、太陽電池用の光吸収層を形成する場合には、加工速度に課題があると考えられる。また、ローラプレス機を用いた方式では、溶剤の乾燥に30分を要しており生産性を高くすることができない。
【0011】
本発明の目的は、金属ナノ粒子を用いた印刷方法によって、緻密な薄膜を効率的に生産する方法およびその製造装置、更に薄膜付基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、粉体とナノ粒子を含むペースト又は分散液を基板の上に塗布して第1の組成層を形成し、仮焼成処理を行う。次に、粉体とナノ粒子を含むペースト又は分散液を第1の組成層の上に塗布して第2の組成層を形成し、仮焼成処理を行う。最後に、加熱処理及び加圧処理を同時に行い、基板の上に薄膜の組成層を形成する。
【0013】
第1の組成層では、ナノ粒子は、粉体より含有量が多い。逆に、第2の組成層では、粉体のほうがナノ粒子より含有量が多い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金属ナノ粒子を用いた印刷方法によって、緻密な薄膜を効率的に生産する方法およびその製造装置、更に薄膜付基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】本発明の薄膜形成方法を説明する図
【図1B】本発明の薄膜形成方法を説明する図
【図1C】本発明の薄膜形成方法を説明する図
【図2】本発明の薄膜形成方法によって製造された薄膜の断面図
【図3A】本発明の薄膜形成方法によって緻密な薄膜を形成する原理を説明する図
【図3B】本発明の薄膜形成方法によって緻密な薄膜を形成する原理を説明する図
【図3C】本発明の薄膜形成方法によって緻密な薄膜を形成する原理を説明する図
【図4A】本発明の薄膜形成方法によって緻密な薄膜を形成する原理を説明する図
【図4B】本発明の薄膜形成方法によって緻密な薄膜を形成する原理を説明する図
【図4C】本発明の薄膜形成方法によって緻密な薄膜を形成する原理を説明する図
【図5】本発明の薄膜製造装置(ロールツーロール装置)の構成を示す図
【図6】本発明の薄膜製造装置によって形成された太陽電池の光吸収層の断面図
【図7A】従来の薄膜形成方法を説明する図
【図7B】従来の薄膜形成方法を説明する図
【図7C】従来の薄膜形成方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1A、図1B及び図1Cを参照して本発明による薄膜製造方法の例を説明する。先ず、図1Aに示すように、基板10の表面に第1のペースト又は分散液を塗布し、第1の組成層20を形成する。次に、第1の仮焼成を行う。第1の組成層20は、第1の金属ナノ粒子24と第1の粉体25と第1の溶剤26の混合物によって形成される。
【0017】
第1の金属ナノ粒子24と第1の粉体25の重量をそれぞれN1、W1とし、混合比をα1とする。混合比α1は次の式によって表される。
α1=N1/W1>1、即ち、N1>W1、 式1
【0018】
即ち、第1の組成層20において、粒子径が比較的大きな粉体25の含有量は、粒子径が比較的小さい金属ナノ粒子24の含有量よりより少ない。
【0019】
第1のペーストは、次のようにして生成する。第1の金属ナノ粒子24に第1の溶剤26を添加し、それに第1の粉体25を混合してペースト又は分散液を生成する。又は、第1の金属ナノ粒子24と第1の粉体25を混合し、それに第1の溶剤26を添加して、ペースト又は分散液を生成する。第1の組成層20に対して仮焼成処理を実行することによって、第1の溶剤が蒸発し、第1の組成層20の表面は乾燥した状態となる。
【0020】
次に、図1Bに示すように、第1の組成層20の上に第2のペースト又は分散液を塗布し、第2の組成層30を形成する。更に、第2の仮焼成を行う。第2の組成層30は、第2の金属ナノ粒子34と第2の粉体35と第2の溶剤36の混合物によって形成される。
【0021】
第2の金属ナノ粒子34と第2の粉体35の重量をそれぞれN2、W2とし、混合比をα2とする。混合比α2は次の式によって表される。
α2=N2/W2<1、即ち、N2<W2 式2
【0022】
即ち、第2の組成層30において、粒子径が比較的大きな粉体35の含有量は、粒子径が比較的小さい金属ナノ粒子34の含有量より多い。第2のペーストは、第1のペースと同様な方法により生成する。第2の金属ナノ粒子34、第2の粉体35及び第2の溶剤36からなるペースト又は分散液を生成する。仮焼成処理を実行することによって、第2の溶剤が蒸発し、第2の組成層30の表面は乾燥した状態となる。
【0023】
最後に、加熱処理と加圧処理を同時に実行する。それによって、図1Cに示すように、基板10の表面に薄膜の組成層40が形成される。組成層40の厚さは、図1Bに示す2つの組成層20、30の合計の厚さの略半分である。
【0024】
組成層40は、粉体45とその周囲の金属層44からなる。粉体45は、第1の組成層20の粉体25と第2の組成層30の粉体35を混合したものである。金属層44は、第1の組成層20の金属ナノ粒子24と第2の組成層30の金属ナノ粒子34が溶解したものである。尚、溶剤26、36は蒸発により消失している。
【0025】
図示のように、粉体45は、元の粉体と比較すると大きく変形しているが、組成層40にて均一に分散している。組成層40の断面を観察すると、粉体45の周囲には金属層44が隙間無く密に充填されている。
【0026】
本発明によると、第1の組成層20を形成して仮焼成を行い、第2の組成層30を形成して仮焼成を行うから、溶剤を効率的に蒸発させることができる。更に、加熱処理と加圧処理によって2つの組成層を1つの組成層に効率的に合成することができる。従って、仮焼成の時間を短縮することができ、且つ、生産性が向上する。
【0027】
図示の例では、基板10上に2つの組成層を形成したが、3つ以上の組成層を形成してもよい。多数の組成層を積層することによって、加熱処理と加圧処理によって、1層あたりの膜厚の減少量を増加させることが可能となる。組成層40によって構成する薄膜は、全面的なベタ膜でもよいが、パターン膜でもよい。
【0028】
組成層40は、第1及び第2の金属ナノ粒子24、34と第1及び第2の粉体25、35の金属を含む。第1の金属ナノ粒子24と第2の金属ナノ粒子34は異なる金属によって構成してもよいが同一の金属によって構成してもよい。第1の粉体25と第2の粉体35は異なる材料によって構成してもよいが、同一の材料によって構成してもよい。金属ナノ粒子24、34と粉体25、35は異なる金属又は材料によって構成してもよいが、金属ナノ粒子24、34のいずれかと粉体25、35のいずれかを同一の金属によって構成してもよい。
【0029】
更に、組成層40を構成する金属ナノ粒子及び粉体を全て同一の金属によって構成してもよい。例えば、第1の組成層20を、銀ナノ粒子と銀粉末によって構成し、第2の組成層30を、銀ナノ粒子と銀粉末によって構成する。この場合、加熱処理及び加圧処理において、銀ナノ粒子と銀粉末が良好に接着する。即ち、銀粉末同士が接合し、その周囲に、銀ナノ粒子が溶解して形成された銀が囲む。そのため、極めて良質の且つ緻密な銀薄膜又は銀薄膜配線パターンが形成される。
【0030】
更に、第1及び第2の金属ナノ粒子24、34は、それぞれ1種類の金属ナノ粒子によって構成してもよいが、複数の種類の金属ナノ粒子の混合物によって構成してもよい。第1及び第2の粉体25、35は、それぞれ、1種類の材料によって構成してもよいが、複数の種類の材料の粉体の混合物によって構成してもよい。
【0031】
第1の組成層20に用いる第1の溶剤26と第2の組成層30に用いる第2の溶剤36は同一であってもよいが、異なってもよい。本発明では、2つの組成層を形成する毎に、仮焼成を行うから、2つの組成層において異なる溶剤を用いることができる。
【0032】
次に、金属ナノ粒子と粉体の選択方法を説明する。金属ナノ粒子の融点はできるだけ低いほうが好ましい。先ず、薄膜の組成層40を構成する複数の種類の金属を選択する。次に、これらの金属のうち、そのナノ粒子の融点が最も低い金属を選択する。こうして選択した金属をナノ粒子として用い、他の金属を粉体として用いる。金属ナノ粒子の融点は、粉体のナノ粒子の融点より低いことが好ましい。
【0033】
尚、このような方法で選択した金属をナノ粒子化することが困難な場合には、他の金属をナノ粒子として用いてもよいが、できるだけ融点が低い金属をナノ粒子として用いる。
【0034】
薄膜の組成層40における金属の組成比は、第1層および第2層の金属ナノ粒子の重量と粉体の重量が既知であれば、金属材料毎の重量の合計値から求められる。逆に、組成層40における金属の組成比が予め設定されている場合には、それを満たすように、N1、W1、α1=N1/W1、N2、W2、及び、α2=N2/W2を設定すればよい。
【0035】
以下に、本発明による薄膜製造方法の例を詳細に説明する。基板10は、金属又はガラスによって形成されてよい。金属基板は、表面が絶縁膜によって覆われたものであってよい。基板10の材料として、金属又はガラスを用いることによって、加熱処理の温度を高く設定することが可能となる。しかしながら、基板10の材料として、金属、ガラス以外の材料を用いてもよい。但し、加熱処理によって変形又は溶解しない必要がある。また、基板10は板材によって構成してもよいが、フィルム状部材によって構成してもよい。
【0036】
仮焼成処理における焼成温度は、溶剤(溶媒)が蒸発することができる温度、即ち、溶剤(溶媒)の蒸発温度より高い温度に設定する。焼成温度は、80〜100℃である。
【0037】
加熱処理における加熱温度は、金属ナノ粒子が溶解する温度以上に設定すればよく、例えば、100℃〜500℃であってよい。ここでは加熱装置は記載されていないが、組成層の上下両方向から、すなわち組成層の両面から加熱を行うことが好ましい。それによって、均一な温度分布が得られる。一方、上側から片面からの加熱であってもよいが、基板表面への効率的な熱伝達は困難である。
【0038】
加圧処理における印加圧力は0.1〜100MPaであってよい。ここでは加圧装置は記載されていないが、組成層の上下両方向から、すなわち両面から加圧を行うことが好ましい。それによって、均一な圧力分布が得られる。
【0039】
第1及び第2の粉体25、35は、金属粉体によって構成されてよい。しかしながら、第1及び第2の粉体は、それぞれ、金属粉体に、金属化合物、金属酸化物、シリコン等の非金属の粉体を添加したものであってもよい。
【0040】
本発明の薄膜製造方法によって、化合物薄膜太陽電池の光吸収膜を生成する場合には、第1及び第2の粉体は、銅、ガリウム、インジウム、イオウ、セレン等の粉体を用いてもよく、更に、これらを組み合わせてもよい。第1及び第2の粉体は、例えば、ガリウムインジウム合金粉末のような化合物粉体および半導体材料を用いてもよい。
【0041】
本発明にて用いる金属ナノ粒子は、粒子径(直径)が1nmから数100nmであり、本発明にて用いる粉体は、粒子径(直径)が0.1μmから100μmである。ここで、粒子径(直径)はピーク値である。従って、実際には、ピーク値ばかりでなく、ピーク値周辺の値が含まれている。金属ナノ粒子は、バルク材料と比較すると、体積比および表面積比が大きく異なる。そのため、金属ナノ粒子は、通常のバルク材の金属の焼結温度および融点より低い焼結温度及び融点を有する。本発明による薄膜製造方法では、金属ナノ粒子の焼結温度及び融点が比較的低いことを利用する。
【0042】
金属ナノ粒子の価格は、一般に、金属粉体の価格と比較すると、高価である。本発明では、金属ナノ粒子と粉体の混合物を用いるため、組成層40の材料費を低減させることができる。
【0043】
尚、金属ナノ粒子は、個々の粒子が凝集しないように、通常、有機物で被覆された状態で入手される。金属ナノ粒子の被膜用の有機物は、金属表面から離脱したときに、低温で分解し易い分子構造であることが好ましく、例えば、カルボン酸類、アルコール類、アミン類が知られている。
【0044】
第1及び第2の溶剤26、36は、仮焼成によって蒸発することができる有機溶剤(溶媒)であればどのようなものであってもよい。このような有機溶剤として、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液、ポリスチレン(PS)トルエン溶液、ポリメチルメタクリレート(PMMA)トルエン溶液、等が知られている。
【0045】
図2を参照して、本発明による薄膜形成方法によって形成された薄膜の例を説明する。本例によると、基板10の上に形成された薄膜の組成層40は、第1の金属粉体25、第2の金属粉体35、及び、金属ナノ粒子が溶解した金属44から構成されている。図示のように、第1の金属粉体25、及び、第2の金属粉体35は様々な粒子径を有するが、粒子径に関係なく薄膜の厚さ方向に均一に分布している。金属粉体25、35は、他の粉体粒子と部分的に粒子表面において強固に結合しており、結合部以外は金属ナノ粒子が溶解した金属44と結合している。
【0046】
尚、図2に示した薄膜の製造方法を簡単に説明する。第1の金属粉体25と金属ナノ粒子を含むペースト又は分散液を基板10の上に塗布して第1の組成層を形成し、仮焼成処理を行う。次に、第2の金属粉体35と金属ナノ粒子を含むペースト又は分散液を第1の組成層の上に塗布して第2の組成層を形成し、仮焼成処理を行う。最後に、加熱処理及び加圧処理を同時に行い、薄膜の組成層40を形成する。
【0047】
従って、第1の金属粉体25は第1の組成層の金属粉体に由来し、第2の金属粉体35は第2の組成層の金属粉体に由来する。
【0048】
本発明による薄膜の組成層の断面の特徴は、複数の粉体又は粒子が略均一に分布しており、粉体又は粒子間が部分的に結合している点にある。更に、各粉体又は粒子の周囲には金属ナノ粒子が溶解して生成された金属が密に分布している点にある。金属ナノ粒子が溶解して生成された金属には空洞又は気泡が生成されていない。なお、粉体が凝集している状態があるが、この凝集体の周囲には、金属ナノ粒子が溶解して生成された金属が分布している。
【0049】
図7A、図7B及び図7Cは従来の薄膜製造方法の例を示す。ここでは、従来の薄膜製造方法を説明しながら、上述の本発明による薄膜製造方法の利点を説明する。従来の薄膜製造方法では、先ず、図7Aに示すように、基板10の表面に組成層20を形成し、仮焼成を行う。組成層20は、金属ナノ粒子24と粉体25と溶剤26の混合物によって形成されたペースト又は分散液である。仮焼成によって溶剤26が蒸発する。
【0050】
緻密化した且つ良好な薄膜を得るためには、組成層20の厚さを比較的大きくする必要がある。組成層20の厚さが比較的大きいと、溶剤26を十分蒸発させるのに長時間を要する。そこで、図7Bに示すように、仮焼成処理中に、粉体25は、ペースト又は分散液中にて、重力により下方に移動する。組成層20の表面付近では、粉体25の濃度が小さくなり、組成層20の底付近、即ち、基板10の表面付近では粉体25の濃度が大きくなる。次に、加熱処理及び加圧処理を実行すると、図7Cに示すように、組成層20は薄膜に変化する。即ち、金属ナノ粒子24は溶解し、金属44となって粉体25の周囲の空間を充填する。しかしながら、金属44には空洞47が生成される。
【0051】
空洞47が生成される原因は、金属ナノ粒子の密度が小さいためであると考えられる。即ち、加圧処理にて、粉体25は組成層20の表面から外力に起因した圧力を受けるが、溶解している金属ナノ粒子からは圧力を受けていないと考えられる。外力に起因した圧力によって、粉体間の接触は可能であるが、粉体間の強固な接続は困難である。その理由は、外力に起因した圧力によっては、粉体粒子は大きく移動することはないが、金属ナノ粒子は、加熱によって流動性を増し、移動するためである。
【0052】
金属44に空洞47が生成される原因は上述のとおりであるが、それは、図7Bに示すように、組成層20において粉体25の濃度が不均化することにある。
【0053】
そこで、本発明によると、複数の組成層を積層することとした。本発明によると、先ず、第1の組成層を形成し、仮焼成を行い、次に、第2の組成層を形成し、仮焼成を行う。最後に、加熱処理及び加圧処理を実行する。従って、本発明の薄膜製造方法では、従来の薄膜製造方法のような比較的厚さが大きい組成層を生成しない。そのため、金属44には空洞47が生成されることはない。
【0054】
更に、本発明によると溶剤を蒸発させる時間を短縮することができる。例えば、図7Aに示す組成層20の厚さをDとし、仮焼成の時間をtとする。一方、本発明によると、厚さD/2の組成層を2層積層するものとする。本発明では、各組成層の仮焼成の時間は、時間tより短いが、2層の組成層の仮焼成の時間の合計時間も、時間tより短い。
【0055】
次に、図3A〜図3C及び図4A〜図4Cを参照して、本発明の薄膜製造方法について、詳細に説明する。本発明によると、第1の組成層では、金属ナノ粒子24の重量を粉体25の重量より多くし、逆に、第2の組成層では、粉体35の重量を金属ナノ粒子34の重量より多くする。この理由を説明する。
【0056】
図3A〜図3Cは基板10の上に2つの組成層を形成し、加熱処理及び加圧処理を行った状態を模式的に示す。粉体は球形であり、その断面は円形であると仮定している。図3Aに示すように、第1の組成層の粉体25と第2の組成層の粉体35は離れている。加熱処理及び加圧処理を実行すると、外力に起因して、第2の粉体35から第1の粉体25に力が加わる。図3Bに示すように、加熱処理及び加圧処理により、2つの粉体25、35が点32にて接触し、そこで、局部的に応力が集中する。接触点32では、熱伝達が起こり、周囲にある金属ナノ粒子を溶解して金属44が生成される。それにより、粉体の表面温度は上昇する。接触点32では、このような熱と応力の集中により、高圧化したボールミル効果によってメカニカルアロイ化する。それにより、図3Cに示すように、2つの粉体は、接触点33において、接合する。
【0057】
図4A〜図4Cは、基板10の上に2つの組成層を形成し、加熱処理及び加圧処理を行った状態を、より詳細に示す。図4Aに示すように、第1の組成層の3つの粉体25a、25b、25cと第2の組成層の粉体35を想定する。本例では、これらの粉体の断面は多角形である。外力に起因して、第2の粉体35から第1の粉体25a、25b、25cに力が加わる。図4Bに示すように、加熱処理及び加圧処理により、第2の粉体35と第1の粉体25aが点42aにて接触し、そこで、局部的に応力が集中する。更に、第1の粉体25aは他の粉体25b、25cと点42b、42cにて接触する。これらの接触点42a、42b、42cにて熱と力が伝達され、周囲にある金属ナノ粒子を溶解して金属44が生成される。図4Cに示すように、これらの接触点43a、43b、43cにて、粉体35、25a、25b、25cは、それぞれ隣接する粉体と接合する。このような現象は組成層の断面の全体にて発生するため、粉体は均一に分散し、周囲の金属44には空隙又は空洞が生じない。これらの現象では、上側の粉体35の寸法が大きいほど、応力の集中が発生し易い。従って、上側の粉体35の粒子径が大きい方が、この現象の効果は大きい。
【0058】
このように粉体同士の粒子間において部分的な応力集中を発生させるために、より効率的な方法として図2の発明に記載した構成を用いることが好ましい。
【0059】
本発明の薄膜製造方法では、基板10に近い組成層、即ち、下側の第1の組成層では、粉体が比較的少なく、外面に近い組成層、即ち、上側の第2の組成層では、粉体が比較的多い。従って、加熱処理及び加圧処理によって、上側の組成層の粉体が下側の組成層の粉体の間に侵入し、粉体同士が接触し、接合する。金属ナノ粒子および粉体の断面形状は、円形であってもよいが、多角形のほうが好ましい。即ち、金属ナノ粒子および粉体の表面に多くの突起が存在するほうが、粒子間で接触した場合に応力の集中が発生し易い。
【0060】
更に、加熱処理及び加圧処理によって、2つの組成層に含まれる粉体は均一に混合することができる。従って、第1の組成層の粉体と第2の組成層の粉体の材料、粒子径、粒子形状が異なる場合であっても、両者は、均一に分散され混合される。
【0061】
図5を参照して本発明による薄膜製造装置の例を説明する。本例の薄膜製造装置は、2つのロール回転車輪111a、111b、第1のノズル113、第1の仮焼成炉115、第2のノズル116、第2の仮焼成炉118、第1の加熱・加圧部121、第2の加熱・加圧部122、及び、2つの表面保護膜回転車輪119a、119bを有する。基板112は、予めロール回転車輪111aに巻きつけられている。基板112が、ロール回転車輪111aから取り出され、ロール回転車輪111bによって巻き取られる間に、基板112上に薄膜が形成される。矢印111Rはロール回転車輪111a、111bの回転方向を示す。2つのロール回転車輪111a、111bの間にて、基板112は水平方向に移動する。本例の薄膜製造装置は、印刷プロセスにより薄膜を形成するが、2つのロール回転車輪111a、111bを有するため、ロールツーロール装置と称される。
【0062】
先ず、第1のノズル113から第1組成ペースト114を吐出し、それを基板112上に塗布し、第1組成層を形成する。次に第1の仮焼成炉115によって仮焼成処理を行い、第1組成層に含まれる溶剤を蒸発させる。溶剤が蒸発すると共に第1組成層の表面が乾燥する。次に、第2のノズル116から第2組成ペースト117を吐出し、それを第1組成層の上に塗布し、第2組成層を形成する。第2の仮焼成炉118によって仮焼成処理を行い、第2組成層に含まれる溶剤を蒸発させる。溶剤が蒸発すると共に第2組成層の表面が乾燥する。次に、第1の加熱・加圧部121によって、所定の条件にて、加熱と同時に加圧を加える。第1の加熱・加圧部121は、好ましくは、加熱ロールを用いる加圧方式によって、加熱と加圧を行う。
【0063】
第2の仮焼成炉118による仮焼成処理を経ても、第2組成層の溶剤は完全に蒸発していない可能性がある。そこで、第1の加熱・加圧部121では、第2組成層がロール表面に溶着又は接着する可能性がある。それを回避するために、本例の薄膜製造装置では、表面保護膜120を、第2組成層とロールの間に挿入するように構成されている。表面保護膜120は、一方の表面保護膜回転車輪119aに巻きつけられており、そこから取り出されて、基板112の上の第2組成層の上に供給される。矢印119Rは表面保護膜回転車輪119a、119bの回転方向を示す。表面保護膜120は、第1の加熱・加圧部121において、基板112の進行速度と同一の進行速度にて移動するように、構成されている。表面保護膜120は、第1の加熱・加圧部121を出ると、基板112の上の第2組成層より引き離されて、第2の表面保護膜回転車輪119bによって巻き取られる。
【0064】
第1の加熱・加圧部121を出た基板112は、第2の加熱・加圧部122によって、所定の条件にて、加熱と加圧が同時に印加される。第2の加熱・加圧部122は、表面形状制御用に設けたものであり、薄膜の膜厚を調整する機能と表面粗さを改善する機能の2つの機能を有する。第2の加熱・加圧部122における加熱温度は、第1の加熱・加圧部121における加熱温度よりも低い温度であってよい。それによって、第2組成層が第1の加熱・加圧部122のロールの表面に接着することが回避される。第2の加熱・加圧部122を出た基板112は、第2のロール回転車輪111bに巻き取られる。尚、適宜、第2の加熱・加圧部22を省略してもよい。
【0065】
第1及び第2の仮焼成炉115、118における仮焼成の温度は、金属ナノ粒子に混合されている溶剤の蒸発温度より高い温度に設定される。例えば、第1及び第2の仮焼成炉115、118における仮焼成処理の条件は、温度80〜100℃、加熱時間1〜3分であってよい。
【0066】
第1の加熱・加圧部121における加熱温度は金属ナノ粒子が溶解する温度以上に設定する。また、基板が金属又はガラスであることを考慮にいれる。従って、第1の加熱・加圧部121における加熱温度は100℃〜500℃であってよい。第1の加熱・加圧部121における印加圧力は0.1〜100MPaであってよい。
【0067】
第1の加熱・加圧部121における加熱方式として、抵抗加熱、赤外線加熱などを用いてよいが、他の加熱方法を用いてもよい。
【0068】
また、第1の加熱・加圧部121に用いる加圧機構として、上下2本のロールを用い、その間に基板を挟むように構成してよい。このような機構は、薄膜の組成層に対して均一な力を与えることが可能である。また、複数個の加圧ロールを配置してもよい。
【0069】
第1の加熱・加圧部121を通過すると、好ましくは、基板上に形成された第1及び第2組成層の合計の膜厚は、半分以下になる。このように膜厚を半分以下に減少させることにより、溶解した金属ナノ粒子と粉体の間の接合性が向上する。
【0070】
表面保護膜120は、テフロンシートであってよい。テフロンシートは、プラスチックシートもしくは樹脂シートと比較して耐熱温度が高く、溶剤に対して耐薬品性を有するためである。尚、表面保護膜120として、耐熱温度が高く、溶剤に対して耐薬品性を有し、テフロンと同等の非接着特性を有するなら、テフロンシート以外を用いてもよい。本例では、表面保護膜120を用いるため、第1の加熱・加圧部121における加圧ロールの汚染を回避させることができるだけでなく、金属ナノ粒子および粉体がロールに付着する現象を抑制することができる。これにより第1の加熱・加圧部121のメンテナンスが容易となる。
【0071】
本発明による薄膜形成方法は、太陽電池の光吸収層、有機ELパネル、液晶パネル、電子ペーパ等の製造分野にて利用可能である。以下に、太陽電池の光吸収層の製造を例として説明する。
【0072】
図6は、本発明による薄膜形成方法を用いて、太陽電池の光吸収層を製造する例を説明する。CIS系太陽電池は、光吸収層の材料として、シリコンの代わりに、Cu、In、Ga、Al、Se、S等からなるカルコパイライト系(I-III-VI族)化合物を用いる。これらの化合物のうち、Cu(In,Ga)Se2、Cu(In,Ga)(Se,S)2、及び、CuInS2は、それぞれCIGS、CIGSS、及び、CISと称される。カルコパイライト系(I-III-VI族)化合物を用いる光吸収層を備えた太陽電池は、カルコパイライト型薄膜太陽電池と称される。
【0073】
図6は、本発明による薄膜形成方法を用いて製造されたカルコパイライト型薄膜太陽電池の光吸収層の例を示す。
【0074】
光吸収層63には、ガリウム粉体66、イオウ粉体65、インジウム粉体64が均一に分散しており、各粉体の周囲には、銅ナノ粒子が溶融して生成された銅67が充填されており、空洞又は間隙は形成されていない。ガリウム粉体66、イオウ粉体65、インジウム粉体64の粒子径は、比較的均一である。しかしながら、粒子径がやや小さいガリウム粉体66a、イオウ粉体65a、インジウム粉体64aも含まれている。
【0075】
次に、この光吸収層の製造方法を説明する。先ず、アルミニウム基板61の表面に、スパッタリングにより、厚さ0.5μmのモリブデン膜62を形成した。次に、その上に、第1の組成層を形成し、仮焼成処理を行い、第2の組成層を形成し、仮焼成処理を行い、最後に、加熱処理と加圧処理を行った。
【0076】
第1及び第2の組成層は、それぞれ、ガリウム粉体66、イオウ粉体65、インジウム粉体64の少なくとも1つを含み、且つ、銅ナノ粒子を含む。ガリウム粉体、イオウ粉体、インジウム粉体の粒子径は0.5μm以下のものを使用した。なお、各粉体はボールミルによって、所定のサイズに粉砕してから使用した。また、上述の式1、2を満たすように各粉体と銅ナノ粒子の重量比を設定した。
【0077】
本発明では、第1組成層と第2組成層において、各粉体と銅ナノ粒子の配合比率を変化させることが可能であり、それによって、最終的に生成される光吸収層の組成を自由に設定することができる。例えば、特定の粉体の配合比率が大きい薄膜を容易に形成することができる。
【0078】
更に、本発明の薄膜製造方法では、複数の組成層を積層しながら仮焼成を行うため、ミリ単位の厚膜を形成することも可能である。
【0079】
以上本発明の例を説明したが本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは、当業者によって容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0080】
10…基板、20…第1の組成層、24…金属ナノ粒子、25、25a、25b、25c…粉体、26…溶剤、27…空洞、30…第2の組成層、34…金属ナノ粒子、35…粉体、36…溶剤、40…薄膜組成層、44…金属ナノ粒子が溶解して生成された金属、45…粉体、61…アルミニウム基板、62…モリブデン膜、63…光吸収層薄膜、64…インジウム粒子、65…イオウ粒子、66…ガリウム粒子、67…銅溶解層、111a、111b…ロール回転車輪、111R…回転方向、112…基板、113…第1ノズル、114…第1組成ペースト、115…第1の仮焼成炉、116…第2ノズル、117…第2組成ペースト、118…第2の仮焼成炉、119a、119b…表面保護膜回転車輪、119R…回転方向、120…表面保護膜、121…加熱・加圧装置、122…加熱・加圧装置
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜製造方法、薄膜付基板および薄膜製造装置に関し、特に、ナノ粒子を用いた印刷プロセスによって薄膜を形成する方法及び装置、更に薄膜付基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜を形成する技術は、太陽電池の光吸収層、有機ELパネル、液晶パネル、電子ペーパ等の製造分野にて利用されている。ここでは、太陽電池の光吸収層の製造を例として説明する。
【0003】
CIS系太陽電池は二酸化炭素排出抑制などの環境問題にも対応しており、低コストの製造プロセスの開発が行われている。CIS系太陽電池は、光吸収層の材料として、シリコンの代わりに、Cu、In、Ga、Al、Se、S等からなるカルコパイライト系(I-III-VI族)化合物を用いる。これらの化合物のうち、Cu(In,Ga)Se2、Cu(In,Ga)(Se,S)2、及び、CuInS2は、それぞれCIGS、CIGSS、及び、CISと称される。
【0004】
CIS系太陽電池の光吸収層は、従来、スパッタ法によって形成されている。しかしながら、スパッタ法は、真空プロセスでありコスト高となる。そこで、非真空プロセスであるため印刷法が開発されている。これは、複数の金属ナノ粒子を混合したインクを印刷プロセスおよび加熱処理によって薄膜化するものである。
【0005】
しかしながら、印刷法は、膜の緻密化が困難であるという問題がある。金属ナノ粒子を、基板上に形成して、焼成しても、通常、十分な厚さが得られない。特に銀金属ナノ粒子によって形成された配線は、抵抗値が適当な値とならないことがある。そのため、銀金属ナノ粒子に、それよりも大きな銀粉体を混入させて、膜形成を行うことで抵抗値の改善を行っている。更に、膜の緻密化を図るために加熱だけでなく、加圧を併用することも有効である。
【0006】
特許文献1には、低温で導電パターンを形成する方法が記載されている。また、特許文献1には、加圧方法として、複数個のRが付いた金属球体を設けた装置を用いて、試料面を連続的に複数回、圧力印加を行う方法が記載されている。特許文献1には、更に、アルミニウムペーストを100℃で30分加熱させて溶剤成分を除去した後、ローラ型プレス機を用いて加圧配向を行うことが記載されている。
【0007】
特許文献2は、導電性焼結層形成用組成物に有機物で被覆された金属粒子と酸化銀粒子を用いて加熱と加圧を加えることによって接合層を形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−124446号公報
【特許文献2】特開2008−166086号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】化合物薄膜太陽電池の最新技術 pp.62
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に記載された方法は、接合層を形成する方法に関するものである。特許文献1に記載された方法は、複数個のRが付いた金属球体を配置した装置を用いて、試料面を連続的に複数回、圧力印加を行っている。この方法は、例えば、太陽電池用の光吸収層を形成する場合には、加工速度に課題があると考えられる。また、ローラプレス機を用いた方式では、溶剤の乾燥に30分を要しており生産性を高くすることができない。
【0011】
本発明の目的は、金属ナノ粒子を用いた印刷方法によって、緻密な薄膜を効率的に生産する方法およびその製造装置、更に薄膜付基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、粉体とナノ粒子を含むペースト又は分散液を基板の上に塗布して第1の組成層を形成し、仮焼成処理を行う。次に、粉体とナノ粒子を含むペースト又は分散液を第1の組成層の上に塗布して第2の組成層を形成し、仮焼成処理を行う。最後に、加熱処理及び加圧処理を同時に行い、基板の上に薄膜の組成層を形成する。
【0013】
第1の組成層では、ナノ粒子は、粉体より含有量が多い。逆に、第2の組成層では、粉体のほうがナノ粒子より含有量が多い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金属ナノ粒子を用いた印刷方法によって、緻密な薄膜を効率的に生産する方法およびその製造装置、更に薄膜付基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】本発明の薄膜形成方法を説明する図
【図1B】本発明の薄膜形成方法を説明する図
【図1C】本発明の薄膜形成方法を説明する図
【図2】本発明の薄膜形成方法によって製造された薄膜の断面図
【図3A】本発明の薄膜形成方法によって緻密な薄膜を形成する原理を説明する図
【図3B】本発明の薄膜形成方法によって緻密な薄膜を形成する原理を説明する図
【図3C】本発明の薄膜形成方法によって緻密な薄膜を形成する原理を説明する図
【図4A】本発明の薄膜形成方法によって緻密な薄膜を形成する原理を説明する図
【図4B】本発明の薄膜形成方法によって緻密な薄膜を形成する原理を説明する図
【図4C】本発明の薄膜形成方法によって緻密な薄膜を形成する原理を説明する図
【図5】本発明の薄膜製造装置(ロールツーロール装置)の構成を示す図
【図6】本発明の薄膜製造装置によって形成された太陽電池の光吸収層の断面図
【図7A】従来の薄膜形成方法を説明する図
【図7B】従来の薄膜形成方法を説明する図
【図7C】従来の薄膜形成方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1A、図1B及び図1Cを参照して本発明による薄膜製造方法の例を説明する。先ず、図1Aに示すように、基板10の表面に第1のペースト又は分散液を塗布し、第1の組成層20を形成する。次に、第1の仮焼成を行う。第1の組成層20は、第1の金属ナノ粒子24と第1の粉体25と第1の溶剤26の混合物によって形成される。
【0017】
第1の金属ナノ粒子24と第1の粉体25の重量をそれぞれN1、W1とし、混合比をα1とする。混合比α1は次の式によって表される。
α1=N1/W1>1、即ち、N1>W1、 式1
【0018】
即ち、第1の組成層20において、粒子径が比較的大きな粉体25の含有量は、粒子径が比較的小さい金属ナノ粒子24の含有量よりより少ない。
【0019】
第1のペーストは、次のようにして生成する。第1の金属ナノ粒子24に第1の溶剤26を添加し、それに第1の粉体25を混合してペースト又は分散液を生成する。又は、第1の金属ナノ粒子24と第1の粉体25を混合し、それに第1の溶剤26を添加して、ペースト又は分散液を生成する。第1の組成層20に対して仮焼成処理を実行することによって、第1の溶剤が蒸発し、第1の組成層20の表面は乾燥した状態となる。
【0020】
次に、図1Bに示すように、第1の組成層20の上に第2のペースト又は分散液を塗布し、第2の組成層30を形成する。更に、第2の仮焼成を行う。第2の組成層30は、第2の金属ナノ粒子34と第2の粉体35と第2の溶剤36の混合物によって形成される。
【0021】
第2の金属ナノ粒子34と第2の粉体35の重量をそれぞれN2、W2とし、混合比をα2とする。混合比α2は次の式によって表される。
α2=N2/W2<1、即ち、N2<W2 式2
【0022】
即ち、第2の組成層30において、粒子径が比較的大きな粉体35の含有量は、粒子径が比較的小さい金属ナノ粒子34の含有量より多い。第2のペーストは、第1のペースと同様な方法により生成する。第2の金属ナノ粒子34、第2の粉体35及び第2の溶剤36からなるペースト又は分散液を生成する。仮焼成処理を実行することによって、第2の溶剤が蒸発し、第2の組成層30の表面は乾燥した状態となる。
【0023】
最後に、加熱処理と加圧処理を同時に実行する。それによって、図1Cに示すように、基板10の表面に薄膜の組成層40が形成される。組成層40の厚さは、図1Bに示す2つの組成層20、30の合計の厚さの略半分である。
【0024】
組成層40は、粉体45とその周囲の金属層44からなる。粉体45は、第1の組成層20の粉体25と第2の組成層30の粉体35を混合したものである。金属層44は、第1の組成層20の金属ナノ粒子24と第2の組成層30の金属ナノ粒子34が溶解したものである。尚、溶剤26、36は蒸発により消失している。
【0025】
図示のように、粉体45は、元の粉体と比較すると大きく変形しているが、組成層40にて均一に分散している。組成層40の断面を観察すると、粉体45の周囲には金属層44が隙間無く密に充填されている。
【0026】
本発明によると、第1の組成層20を形成して仮焼成を行い、第2の組成層30を形成して仮焼成を行うから、溶剤を効率的に蒸発させることができる。更に、加熱処理と加圧処理によって2つの組成層を1つの組成層に効率的に合成することができる。従って、仮焼成の時間を短縮することができ、且つ、生産性が向上する。
【0027】
図示の例では、基板10上に2つの組成層を形成したが、3つ以上の組成層を形成してもよい。多数の組成層を積層することによって、加熱処理と加圧処理によって、1層あたりの膜厚の減少量を増加させることが可能となる。組成層40によって構成する薄膜は、全面的なベタ膜でもよいが、パターン膜でもよい。
【0028】
組成層40は、第1及び第2の金属ナノ粒子24、34と第1及び第2の粉体25、35の金属を含む。第1の金属ナノ粒子24と第2の金属ナノ粒子34は異なる金属によって構成してもよいが同一の金属によって構成してもよい。第1の粉体25と第2の粉体35は異なる材料によって構成してもよいが、同一の材料によって構成してもよい。金属ナノ粒子24、34と粉体25、35は異なる金属又は材料によって構成してもよいが、金属ナノ粒子24、34のいずれかと粉体25、35のいずれかを同一の金属によって構成してもよい。
【0029】
更に、組成層40を構成する金属ナノ粒子及び粉体を全て同一の金属によって構成してもよい。例えば、第1の組成層20を、銀ナノ粒子と銀粉末によって構成し、第2の組成層30を、銀ナノ粒子と銀粉末によって構成する。この場合、加熱処理及び加圧処理において、銀ナノ粒子と銀粉末が良好に接着する。即ち、銀粉末同士が接合し、その周囲に、銀ナノ粒子が溶解して形成された銀が囲む。そのため、極めて良質の且つ緻密な銀薄膜又は銀薄膜配線パターンが形成される。
【0030】
更に、第1及び第2の金属ナノ粒子24、34は、それぞれ1種類の金属ナノ粒子によって構成してもよいが、複数の種類の金属ナノ粒子の混合物によって構成してもよい。第1及び第2の粉体25、35は、それぞれ、1種類の材料によって構成してもよいが、複数の種類の材料の粉体の混合物によって構成してもよい。
【0031】
第1の組成層20に用いる第1の溶剤26と第2の組成層30に用いる第2の溶剤36は同一であってもよいが、異なってもよい。本発明では、2つの組成層を形成する毎に、仮焼成を行うから、2つの組成層において異なる溶剤を用いることができる。
【0032】
次に、金属ナノ粒子と粉体の選択方法を説明する。金属ナノ粒子の融点はできるだけ低いほうが好ましい。先ず、薄膜の組成層40を構成する複数の種類の金属を選択する。次に、これらの金属のうち、そのナノ粒子の融点が最も低い金属を選択する。こうして選択した金属をナノ粒子として用い、他の金属を粉体として用いる。金属ナノ粒子の融点は、粉体のナノ粒子の融点より低いことが好ましい。
【0033】
尚、このような方法で選択した金属をナノ粒子化することが困難な場合には、他の金属をナノ粒子として用いてもよいが、できるだけ融点が低い金属をナノ粒子として用いる。
【0034】
薄膜の組成層40における金属の組成比は、第1層および第2層の金属ナノ粒子の重量と粉体の重量が既知であれば、金属材料毎の重量の合計値から求められる。逆に、組成層40における金属の組成比が予め設定されている場合には、それを満たすように、N1、W1、α1=N1/W1、N2、W2、及び、α2=N2/W2を設定すればよい。
【0035】
以下に、本発明による薄膜製造方法の例を詳細に説明する。基板10は、金属又はガラスによって形成されてよい。金属基板は、表面が絶縁膜によって覆われたものであってよい。基板10の材料として、金属又はガラスを用いることによって、加熱処理の温度を高く設定することが可能となる。しかしながら、基板10の材料として、金属、ガラス以外の材料を用いてもよい。但し、加熱処理によって変形又は溶解しない必要がある。また、基板10は板材によって構成してもよいが、フィルム状部材によって構成してもよい。
【0036】
仮焼成処理における焼成温度は、溶剤(溶媒)が蒸発することができる温度、即ち、溶剤(溶媒)の蒸発温度より高い温度に設定する。焼成温度は、80〜100℃である。
【0037】
加熱処理における加熱温度は、金属ナノ粒子が溶解する温度以上に設定すればよく、例えば、100℃〜500℃であってよい。ここでは加熱装置は記載されていないが、組成層の上下両方向から、すなわち組成層の両面から加熱を行うことが好ましい。それによって、均一な温度分布が得られる。一方、上側から片面からの加熱であってもよいが、基板表面への効率的な熱伝達は困難である。
【0038】
加圧処理における印加圧力は0.1〜100MPaであってよい。ここでは加圧装置は記載されていないが、組成層の上下両方向から、すなわち両面から加圧を行うことが好ましい。それによって、均一な圧力分布が得られる。
【0039】
第1及び第2の粉体25、35は、金属粉体によって構成されてよい。しかしながら、第1及び第2の粉体は、それぞれ、金属粉体に、金属化合物、金属酸化物、シリコン等の非金属の粉体を添加したものであってもよい。
【0040】
本発明の薄膜製造方法によって、化合物薄膜太陽電池の光吸収膜を生成する場合には、第1及び第2の粉体は、銅、ガリウム、インジウム、イオウ、セレン等の粉体を用いてもよく、更に、これらを組み合わせてもよい。第1及び第2の粉体は、例えば、ガリウムインジウム合金粉末のような化合物粉体および半導体材料を用いてもよい。
【0041】
本発明にて用いる金属ナノ粒子は、粒子径(直径)が1nmから数100nmであり、本発明にて用いる粉体は、粒子径(直径)が0.1μmから100μmである。ここで、粒子径(直径)はピーク値である。従って、実際には、ピーク値ばかりでなく、ピーク値周辺の値が含まれている。金属ナノ粒子は、バルク材料と比較すると、体積比および表面積比が大きく異なる。そのため、金属ナノ粒子は、通常のバルク材の金属の焼結温度および融点より低い焼結温度及び融点を有する。本発明による薄膜製造方法では、金属ナノ粒子の焼結温度及び融点が比較的低いことを利用する。
【0042】
金属ナノ粒子の価格は、一般に、金属粉体の価格と比較すると、高価である。本発明では、金属ナノ粒子と粉体の混合物を用いるため、組成層40の材料費を低減させることができる。
【0043】
尚、金属ナノ粒子は、個々の粒子が凝集しないように、通常、有機物で被覆された状態で入手される。金属ナノ粒子の被膜用の有機物は、金属表面から離脱したときに、低温で分解し易い分子構造であることが好ましく、例えば、カルボン酸類、アルコール類、アミン類が知られている。
【0044】
第1及び第2の溶剤26、36は、仮焼成によって蒸発することができる有機溶剤(溶媒)であればどのようなものであってもよい。このような有機溶剤として、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液、ポリスチレン(PS)トルエン溶液、ポリメチルメタクリレート(PMMA)トルエン溶液、等が知られている。
【0045】
図2を参照して、本発明による薄膜形成方法によって形成された薄膜の例を説明する。本例によると、基板10の上に形成された薄膜の組成層40は、第1の金属粉体25、第2の金属粉体35、及び、金属ナノ粒子が溶解した金属44から構成されている。図示のように、第1の金属粉体25、及び、第2の金属粉体35は様々な粒子径を有するが、粒子径に関係なく薄膜の厚さ方向に均一に分布している。金属粉体25、35は、他の粉体粒子と部分的に粒子表面において強固に結合しており、結合部以外は金属ナノ粒子が溶解した金属44と結合している。
【0046】
尚、図2に示した薄膜の製造方法を簡単に説明する。第1の金属粉体25と金属ナノ粒子を含むペースト又は分散液を基板10の上に塗布して第1の組成層を形成し、仮焼成処理を行う。次に、第2の金属粉体35と金属ナノ粒子を含むペースト又は分散液を第1の組成層の上に塗布して第2の組成層を形成し、仮焼成処理を行う。最後に、加熱処理及び加圧処理を同時に行い、薄膜の組成層40を形成する。
【0047】
従って、第1の金属粉体25は第1の組成層の金属粉体に由来し、第2の金属粉体35は第2の組成層の金属粉体に由来する。
【0048】
本発明による薄膜の組成層の断面の特徴は、複数の粉体又は粒子が略均一に分布しており、粉体又は粒子間が部分的に結合している点にある。更に、各粉体又は粒子の周囲には金属ナノ粒子が溶解して生成された金属が密に分布している点にある。金属ナノ粒子が溶解して生成された金属には空洞又は気泡が生成されていない。なお、粉体が凝集している状態があるが、この凝集体の周囲には、金属ナノ粒子が溶解して生成された金属が分布している。
【0049】
図7A、図7B及び図7Cは従来の薄膜製造方法の例を示す。ここでは、従来の薄膜製造方法を説明しながら、上述の本発明による薄膜製造方法の利点を説明する。従来の薄膜製造方法では、先ず、図7Aに示すように、基板10の表面に組成層20を形成し、仮焼成を行う。組成層20は、金属ナノ粒子24と粉体25と溶剤26の混合物によって形成されたペースト又は分散液である。仮焼成によって溶剤26が蒸発する。
【0050】
緻密化した且つ良好な薄膜を得るためには、組成層20の厚さを比較的大きくする必要がある。組成層20の厚さが比較的大きいと、溶剤26を十分蒸発させるのに長時間を要する。そこで、図7Bに示すように、仮焼成処理中に、粉体25は、ペースト又は分散液中にて、重力により下方に移動する。組成層20の表面付近では、粉体25の濃度が小さくなり、組成層20の底付近、即ち、基板10の表面付近では粉体25の濃度が大きくなる。次に、加熱処理及び加圧処理を実行すると、図7Cに示すように、組成層20は薄膜に変化する。即ち、金属ナノ粒子24は溶解し、金属44となって粉体25の周囲の空間を充填する。しかしながら、金属44には空洞47が生成される。
【0051】
空洞47が生成される原因は、金属ナノ粒子の密度が小さいためであると考えられる。即ち、加圧処理にて、粉体25は組成層20の表面から外力に起因した圧力を受けるが、溶解している金属ナノ粒子からは圧力を受けていないと考えられる。外力に起因した圧力によって、粉体間の接触は可能であるが、粉体間の強固な接続は困難である。その理由は、外力に起因した圧力によっては、粉体粒子は大きく移動することはないが、金属ナノ粒子は、加熱によって流動性を増し、移動するためである。
【0052】
金属44に空洞47が生成される原因は上述のとおりであるが、それは、図7Bに示すように、組成層20において粉体25の濃度が不均化することにある。
【0053】
そこで、本発明によると、複数の組成層を積層することとした。本発明によると、先ず、第1の組成層を形成し、仮焼成を行い、次に、第2の組成層を形成し、仮焼成を行う。最後に、加熱処理及び加圧処理を実行する。従って、本発明の薄膜製造方法では、従来の薄膜製造方法のような比較的厚さが大きい組成層を生成しない。そのため、金属44には空洞47が生成されることはない。
【0054】
更に、本発明によると溶剤を蒸発させる時間を短縮することができる。例えば、図7Aに示す組成層20の厚さをDとし、仮焼成の時間をtとする。一方、本発明によると、厚さD/2の組成層を2層積層するものとする。本発明では、各組成層の仮焼成の時間は、時間tより短いが、2層の組成層の仮焼成の時間の合計時間も、時間tより短い。
【0055】
次に、図3A〜図3C及び図4A〜図4Cを参照して、本発明の薄膜製造方法について、詳細に説明する。本発明によると、第1の組成層では、金属ナノ粒子24の重量を粉体25の重量より多くし、逆に、第2の組成層では、粉体35の重量を金属ナノ粒子34の重量より多くする。この理由を説明する。
【0056】
図3A〜図3Cは基板10の上に2つの組成層を形成し、加熱処理及び加圧処理を行った状態を模式的に示す。粉体は球形であり、その断面は円形であると仮定している。図3Aに示すように、第1の組成層の粉体25と第2の組成層の粉体35は離れている。加熱処理及び加圧処理を実行すると、外力に起因して、第2の粉体35から第1の粉体25に力が加わる。図3Bに示すように、加熱処理及び加圧処理により、2つの粉体25、35が点32にて接触し、そこで、局部的に応力が集中する。接触点32では、熱伝達が起こり、周囲にある金属ナノ粒子を溶解して金属44が生成される。それにより、粉体の表面温度は上昇する。接触点32では、このような熱と応力の集中により、高圧化したボールミル効果によってメカニカルアロイ化する。それにより、図3Cに示すように、2つの粉体は、接触点33において、接合する。
【0057】
図4A〜図4Cは、基板10の上に2つの組成層を形成し、加熱処理及び加圧処理を行った状態を、より詳細に示す。図4Aに示すように、第1の組成層の3つの粉体25a、25b、25cと第2の組成層の粉体35を想定する。本例では、これらの粉体の断面は多角形である。外力に起因して、第2の粉体35から第1の粉体25a、25b、25cに力が加わる。図4Bに示すように、加熱処理及び加圧処理により、第2の粉体35と第1の粉体25aが点42aにて接触し、そこで、局部的に応力が集中する。更に、第1の粉体25aは他の粉体25b、25cと点42b、42cにて接触する。これらの接触点42a、42b、42cにて熱と力が伝達され、周囲にある金属ナノ粒子を溶解して金属44が生成される。図4Cに示すように、これらの接触点43a、43b、43cにて、粉体35、25a、25b、25cは、それぞれ隣接する粉体と接合する。このような現象は組成層の断面の全体にて発生するため、粉体は均一に分散し、周囲の金属44には空隙又は空洞が生じない。これらの現象では、上側の粉体35の寸法が大きいほど、応力の集中が発生し易い。従って、上側の粉体35の粒子径が大きい方が、この現象の効果は大きい。
【0058】
このように粉体同士の粒子間において部分的な応力集中を発生させるために、より効率的な方法として図2の発明に記載した構成を用いることが好ましい。
【0059】
本発明の薄膜製造方法では、基板10に近い組成層、即ち、下側の第1の組成層では、粉体が比較的少なく、外面に近い組成層、即ち、上側の第2の組成層では、粉体が比較的多い。従って、加熱処理及び加圧処理によって、上側の組成層の粉体が下側の組成層の粉体の間に侵入し、粉体同士が接触し、接合する。金属ナノ粒子および粉体の断面形状は、円形であってもよいが、多角形のほうが好ましい。即ち、金属ナノ粒子および粉体の表面に多くの突起が存在するほうが、粒子間で接触した場合に応力の集中が発生し易い。
【0060】
更に、加熱処理及び加圧処理によって、2つの組成層に含まれる粉体は均一に混合することができる。従って、第1の組成層の粉体と第2の組成層の粉体の材料、粒子径、粒子形状が異なる場合であっても、両者は、均一に分散され混合される。
【0061】
図5を参照して本発明による薄膜製造装置の例を説明する。本例の薄膜製造装置は、2つのロール回転車輪111a、111b、第1のノズル113、第1の仮焼成炉115、第2のノズル116、第2の仮焼成炉118、第1の加熱・加圧部121、第2の加熱・加圧部122、及び、2つの表面保護膜回転車輪119a、119bを有する。基板112は、予めロール回転車輪111aに巻きつけられている。基板112が、ロール回転車輪111aから取り出され、ロール回転車輪111bによって巻き取られる間に、基板112上に薄膜が形成される。矢印111Rはロール回転車輪111a、111bの回転方向を示す。2つのロール回転車輪111a、111bの間にて、基板112は水平方向に移動する。本例の薄膜製造装置は、印刷プロセスにより薄膜を形成するが、2つのロール回転車輪111a、111bを有するため、ロールツーロール装置と称される。
【0062】
先ず、第1のノズル113から第1組成ペースト114を吐出し、それを基板112上に塗布し、第1組成層を形成する。次に第1の仮焼成炉115によって仮焼成処理を行い、第1組成層に含まれる溶剤を蒸発させる。溶剤が蒸発すると共に第1組成層の表面が乾燥する。次に、第2のノズル116から第2組成ペースト117を吐出し、それを第1組成層の上に塗布し、第2組成層を形成する。第2の仮焼成炉118によって仮焼成処理を行い、第2組成層に含まれる溶剤を蒸発させる。溶剤が蒸発すると共に第2組成層の表面が乾燥する。次に、第1の加熱・加圧部121によって、所定の条件にて、加熱と同時に加圧を加える。第1の加熱・加圧部121は、好ましくは、加熱ロールを用いる加圧方式によって、加熱と加圧を行う。
【0063】
第2の仮焼成炉118による仮焼成処理を経ても、第2組成層の溶剤は完全に蒸発していない可能性がある。そこで、第1の加熱・加圧部121では、第2組成層がロール表面に溶着又は接着する可能性がある。それを回避するために、本例の薄膜製造装置では、表面保護膜120を、第2組成層とロールの間に挿入するように構成されている。表面保護膜120は、一方の表面保護膜回転車輪119aに巻きつけられており、そこから取り出されて、基板112の上の第2組成層の上に供給される。矢印119Rは表面保護膜回転車輪119a、119bの回転方向を示す。表面保護膜120は、第1の加熱・加圧部121において、基板112の進行速度と同一の進行速度にて移動するように、構成されている。表面保護膜120は、第1の加熱・加圧部121を出ると、基板112の上の第2組成層より引き離されて、第2の表面保護膜回転車輪119bによって巻き取られる。
【0064】
第1の加熱・加圧部121を出た基板112は、第2の加熱・加圧部122によって、所定の条件にて、加熱と加圧が同時に印加される。第2の加熱・加圧部122は、表面形状制御用に設けたものであり、薄膜の膜厚を調整する機能と表面粗さを改善する機能の2つの機能を有する。第2の加熱・加圧部122における加熱温度は、第1の加熱・加圧部121における加熱温度よりも低い温度であってよい。それによって、第2組成層が第1の加熱・加圧部122のロールの表面に接着することが回避される。第2の加熱・加圧部122を出た基板112は、第2のロール回転車輪111bに巻き取られる。尚、適宜、第2の加熱・加圧部22を省略してもよい。
【0065】
第1及び第2の仮焼成炉115、118における仮焼成の温度は、金属ナノ粒子に混合されている溶剤の蒸発温度より高い温度に設定される。例えば、第1及び第2の仮焼成炉115、118における仮焼成処理の条件は、温度80〜100℃、加熱時間1〜3分であってよい。
【0066】
第1の加熱・加圧部121における加熱温度は金属ナノ粒子が溶解する温度以上に設定する。また、基板が金属又はガラスであることを考慮にいれる。従って、第1の加熱・加圧部121における加熱温度は100℃〜500℃であってよい。第1の加熱・加圧部121における印加圧力は0.1〜100MPaであってよい。
【0067】
第1の加熱・加圧部121における加熱方式として、抵抗加熱、赤外線加熱などを用いてよいが、他の加熱方法を用いてもよい。
【0068】
また、第1の加熱・加圧部121に用いる加圧機構として、上下2本のロールを用い、その間に基板を挟むように構成してよい。このような機構は、薄膜の組成層に対して均一な力を与えることが可能である。また、複数個の加圧ロールを配置してもよい。
【0069】
第1の加熱・加圧部121を通過すると、好ましくは、基板上に形成された第1及び第2組成層の合計の膜厚は、半分以下になる。このように膜厚を半分以下に減少させることにより、溶解した金属ナノ粒子と粉体の間の接合性が向上する。
【0070】
表面保護膜120は、テフロンシートであってよい。テフロンシートは、プラスチックシートもしくは樹脂シートと比較して耐熱温度が高く、溶剤に対して耐薬品性を有するためである。尚、表面保護膜120として、耐熱温度が高く、溶剤に対して耐薬品性を有し、テフロンと同等の非接着特性を有するなら、テフロンシート以外を用いてもよい。本例では、表面保護膜120を用いるため、第1の加熱・加圧部121における加圧ロールの汚染を回避させることができるだけでなく、金属ナノ粒子および粉体がロールに付着する現象を抑制することができる。これにより第1の加熱・加圧部121のメンテナンスが容易となる。
【0071】
本発明による薄膜形成方法は、太陽電池の光吸収層、有機ELパネル、液晶パネル、電子ペーパ等の製造分野にて利用可能である。以下に、太陽電池の光吸収層の製造を例として説明する。
【0072】
図6は、本発明による薄膜形成方法を用いて、太陽電池の光吸収層を製造する例を説明する。CIS系太陽電池は、光吸収層の材料として、シリコンの代わりに、Cu、In、Ga、Al、Se、S等からなるカルコパイライト系(I-III-VI族)化合物を用いる。これらの化合物のうち、Cu(In,Ga)Se2、Cu(In,Ga)(Se,S)2、及び、CuInS2は、それぞれCIGS、CIGSS、及び、CISと称される。カルコパイライト系(I-III-VI族)化合物を用いる光吸収層を備えた太陽電池は、カルコパイライト型薄膜太陽電池と称される。
【0073】
図6は、本発明による薄膜形成方法を用いて製造されたカルコパイライト型薄膜太陽電池の光吸収層の例を示す。
【0074】
光吸収層63には、ガリウム粉体66、イオウ粉体65、インジウム粉体64が均一に分散しており、各粉体の周囲には、銅ナノ粒子が溶融して生成された銅67が充填されており、空洞又は間隙は形成されていない。ガリウム粉体66、イオウ粉体65、インジウム粉体64の粒子径は、比較的均一である。しかしながら、粒子径がやや小さいガリウム粉体66a、イオウ粉体65a、インジウム粉体64aも含まれている。
【0075】
次に、この光吸収層の製造方法を説明する。先ず、アルミニウム基板61の表面に、スパッタリングにより、厚さ0.5μmのモリブデン膜62を形成した。次に、その上に、第1の組成層を形成し、仮焼成処理を行い、第2の組成層を形成し、仮焼成処理を行い、最後に、加熱処理と加圧処理を行った。
【0076】
第1及び第2の組成層は、それぞれ、ガリウム粉体66、イオウ粉体65、インジウム粉体64の少なくとも1つを含み、且つ、銅ナノ粒子を含む。ガリウム粉体、イオウ粉体、インジウム粉体の粒子径は0.5μm以下のものを使用した。なお、各粉体はボールミルによって、所定のサイズに粉砕してから使用した。また、上述の式1、2を満たすように各粉体と銅ナノ粒子の重量比を設定した。
【0077】
本発明では、第1組成層と第2組成層において、各粉体と銅ナノ粒子の配合比率を変化させることが可能であり、それによって、最終的に生成される光吸収層の組成を自由に設定することができる。例えば、特定の粉体の配合比率が大きい薄膜を容易に形成することができる。
【0078】
更に、本発明の薄膜製造方法では、複数の組成層を積層しながら仮焼成を行うため、ミリ単位の厚膜を形成することも可能である。
【0079】
以上本発明の例を説明したが本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは、当業者によって容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0080】
10…基板、20…第1の組成層、24…金属ナノ粒子、25、25a、25b、25c…粉体、26…溶剤、27…空洞、30…第2の組成層、34…金属ナノ粒子、35…粉体、36…溶剤、40…薄膜組成層、44…金属ナノ粒子が溶解して生成された金属、45…粉体、61…アルミニウム基板、62…モリブデン膜、63…光吸収層薄膜、64…インジウム粒子、65…イオウ粒子、66…ガリウム粒子、67…銅溶解層、111a、111b…ロール回転車輪、111R…回転方向、112…基板、113…第1ノズル、114…第1組成ペースト、115…第1の仮焼成炉、116…第2ノズル、117…第2組成ペースト、118…第2の仮焼成炉、119a、119b…表面保護膜回転車輪、119R…回転方向、120…表面保護膜、121…加熱・加圧装置、122…加熱・加圧装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のナノ粒子と第1の粉体と第1の溶剤を含む第1のペーストを生成する工程と、
前記第1のペーストを基板の上に塗布して前記基板の上に第1の組成層を形成する工程と、
前記第1の組成層を仮焼成処理する工程と、
第2のナノ粒子と第2の粉体と第2の溶剤を含む第2のペーストを生成する工程と、
前記第2のペーストを前記基板の上に形成された前記第1の組成層の上に塗布して第2の組成層を形成する工程と、
前記第2の組成層を仮焼成処理する工程と、
加熱処理及び加圧処理を同時に実行して、前記基板上の前記第1の組成層と前記第2の組成層より薄膜を形成する工程と、
を有する薄膜製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の薄膜製造方法において、
前記第1の組成層において前記第1の粉体の含有量は前記第1のナノ粒子の含有量より少なく、前記第2の組成層において前記第2の粉体の含有量は前記第2のナノ粒子の含有量より多いことを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の薄膜製造方法において、
前記第1及び第2のナノ粒子の融点は、前記第1及び第2の粉体を構成する材料のナノ粒子の融点よりも低いことを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の薄膜製造方法において、
前記薄膜は太陽電池の光吸収層であり、前記第1及び第2の粉体は、ガリウム粉体、イオウ粉体、及び、インジウム粉体を含み、前記第1及び第2のナノ粒子は、銅ナノ粒子を含むことを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の薄膜製造方法において、
前記薄膜は銀薄膜であり、前記第1のナノ粒子と前記第2のナノ粒子は、銀ナノ粒子であり、前記第1の粉体と前記第2の粉体は銀粉末であることを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の薄膜製造方法において、
前記薄膜の厚さは、前記第1の組成層の厚さと前記第2の組成層の厚さの合計の値の略半分であることを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の薄膜製造方法において、
前記ナノ粒子の粒子径は1nm〜100nm、前記粉体の粒子径は0.1μm〜100μmであることを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の薄膜製造方法において、
前記仮焼成処理における焼成温度80〜100℃であり、前記加熱処理及び加圧処理における加熱温度は100℃〜500℃であることを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項9】
基板と該基板の上に形成された薄膜とを有する薄膜付基板において、
前記薄膜は、第1の金属粉体と、第2の金属粉体と、金属ナノ粒子が溶解した金属とを含み、前記第1の金属粉体及び前記第2の金属粉体は、他の粉体粒子と部分的に粒子表面において結合しており、該結合部以外は前記金属ナノ粒子が溶解した金属と密に結合しており、前記薄膜にて均一に分布していることを特徴とする薄膜付基板。
【請求項10】
請求項9記載の薄膜付基板において、
前記薄膜は、請求項1から8のいずれか1項記載の薄膜製造方法によって形成されたことを特徴とする薄膜付基板。
【請求項11】
アルミニウム基板と、該基板の上に形成されたモリブデン膜と、該モリブデン膜の上に形成された光吸収層とを含む光吸収基板を有する太陽電池において、
前記光吸収層は、ガリウム粉体、イオウ粉体、インジウム粉体、及び、銅ナノ粒子の溶融体を含み、前記ガリウム粉体、イオウ粉体、及び、インジウム粉体は、他の粉体粒子と部分的に粒子表面において結合しており、該結合部以外は前記銅ナノ粒子の溶融体と密に結合しており、前記光吸収層にて均一に分布していることを特徴とする太陽電池。
【請求項12】
請求項11記載の太陽電池において、
前記光吸収層は、請求項1から8のいずれか1項記載の薄膜製造方法によって形成されたことを特徴とする太陽電池。
【請求項13】
基板が巻き付けられた第1のロール回転車輪と、前記第1のロール回転車輪より前記基板を巻き取るための第2のロール回転車輪と、前記第1のロール回転車輪から取り出された基板上に、第1のナノ粒子と第1の粉体とを含む第1のペーストを塗布して第1の組成層を形成する第1のノズルと、前記基板上に形成された前記第1の組成層を仮焼成する第1の仮焼成炉と、前記第1の仮焼成炉から出てきた前記基板上に形成された前記第1の組成層の上に、第2のナノ粒子と第2の粉体とを含む第2のペーストを塗布して第2の組成層を形成する第2のノズルと、前記第2の組成層を仮焼成するための第2の仮焼成炉と、前記第2の仮焼成炉から出た前記基板上に形成された前記第1及び第2の組成層に対して加熱処理及び加圧処理を実行して薄膜を形成するための加熱及び加圧装置と、を有する薄膜製造装置。
【請求項14】
請求項13記載の薄膜製造装置において、
前記第1の組成層において前記第1の粉体の含有量は前記第1のナノ粒子の含有量より少なく、前記第2の組成層において前記第2の粉体の含有量は前記第2のナノ粒子の含有量より多いことを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項15】
請求項13記載の薄膜製造装置において、
前記薄膜は太陽電池の光吸収層であり、前記第1及び第2の粉体は、ガリウム粉体、イオウ粉体、及び、インジウム粉体を含み、前記第1及び第2のナノ粒子は、銅ナノ粒子を含むことを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項16】
請求項13記載の薄膜製造装置において、
前記加熱及び加圧装置は加圧用ロールを有し、前記第2の組成層と前記加圧用ロールの間に表面保護膜が挿入されるように構成されていることを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項17】
請求項13記載の薄膜製造装置において、
前記薄膜の厚さは、前記第1の組成層の厚さと前記第2の組成層の厚さの合計の値の略半分であることを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項18】
請求項13記載の薄膜製造装置において、
前記仮焼成処理における焼成温度80〜100℃であり、前記加熱処理及び加圧処理における加熱温度は100℃〜500℃であることを特徴とする薄膜製造装置。
ことを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項19】
アルミニウム基板の表面にモリブデン膜を形成する工程と、
銅ナノ粒子と第1の粉体を含む第1の分散液を、前記モリブデン膜が形成された基板の上に塗布して第1の組成層を形成する工程と、
前記第1の組成層を仮焼成処理する工程と、
銅ナノ粒子と第2の粉体を含む第2の分散液を、前記第1の組成層の上に塗布して第2の組成層を形成する工程と、
前記第2の組成層を仮焼成処理する工程と、
加熱処理及び加圧処理を同時に実行して、前記第1の組成層と前記第2の組成層より太陽電池の光吸収層を形成する工程と、
を有し、
前記第1及び第2の粉体は、ガリウム粉体、イオウ粉体、及び、インジウム粉体を含み、
前記第1の組成層において前記第1の粉体の含有量は前記銅ナノ粒子の含有量より少なく、前記第2の組成層において前記第2の粉体の含有量は前記銅ナノ粒子の含有量より多いことを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項20】
銀ナノ粒子と銀粉末を含む第1の分散液を、基板の上に塗布して第1の組成層を形成する工程と、
前記第1の組成層を仮焼成処理する工程と、
銀ナノ粒子と銀粉末を含む第2の分散液を、前記第1の組成層の上に塗布して第2の組成層を形成する工程と、
前記第2の組成層を仮焼成処理する工程と、
加熱処理及び加圧処理を同時に実行して、前記第1の組成層と前記第2の組成層より銀薄膜を形成する工程と、
を含み、
前記第1の組成層において前記銀粉末の含有量は前記銀ナノ粒子の含有量より少なく、前記第2の組成層において前記銀粉末の含有量は前記銀ナノ粒子の含有量より多いことを特徴とする銀薄膜製造方法。
【請求項1】
第1のナノ粒子と第1の粉体と第1の溶剤を含む第1のペーストを生成する工程と、
前記第1のペーストを基板の上に塗布して前記基板の上に第1の組成層を形成する工程と、
前記第1の組成層を仮焼成処理する工程と、
第2のナノ粒子と第2の粉体と第2の溶剤を含む第2のペーストを生成する工程と、
前記第2のペーストを前記基板の上に形成された前記第1の組成層の上に塗布して第2の組成層を形成する工程と、
前記第2の組成層を仮焼成処理する工程と、
加熱処理及び加圧処理を同時に実行して、前記基板上の前記第1の組成層と前記第2の組成層より薄膜を形成する工程と、
を有する薄膜製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の薄膜製造方法において、
前記第1の組成層において前記第1の粉体の含有量は前記第1のナノ粒子の含有量より少なく、前記第2の組成層において前記第2の粉体の含有量は前記第2のナノ粒子の含有量より多いことを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の薄膜製造方法において、
前記第1及び第2のナノ粒子の融点は、前記第1及び第2の粉体を構成する材料のナノ粒子の融点よりも低いことを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の薄膜製造方法において、
前記薄膜は太陽電池の光吸収層であり、前記第1及び第2の粉体は、ガリウム粉体、イオウ粉体、及び、インジウム粉体を含み、前記第1及び第2のナノ粒子は、銅ナノ粒子を含むことを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の薄膜製造方法において、
前記薄膜は銀薄膜であり、前記第1のナノ粒子と前記第2のナノ粒子は、銀ナノ粒子であり、前記第1の粉体と前記第2の粉体は銀粉末であることを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の薄膜製造方法において、
前記薄膜の厚さは、前記第1の組成層の厚さと前記第2の組成層の厚さの合計の値の略半分であることを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の薄膜製造方法において、
前記ナノ粒子の粒子径は1nm〜100nm、前記粉体の粒子径は0.1μm〜100μmであることを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の薄膜製造方法において、
前記仮焼成処理における焼成温度80〜100℃であり、前記加熱処理及び加圧処理における加熱温度は100℃〜500℃であることを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項9】
基板と該基板の上に形成された薄膜とを有する薄膜付基板において、
前記薄膜は、第1の金属粉体と、第2の金属粉体と、金属ナノ粒子が溶解した金属とを含み、前記第1の金属粉体及び前記第2の金属粉体は、他の粉体粒子と部分的に粒子表面において結合しており、該結合部以外は前記金属ナノ粒子が溶解した金属と密に結合しており、前記薄膜にて均一に分布していることを特徴とする薄膜付基板。
【請求項10】
請求項9記載の薄膜付基板において、
前記薄膜は、請求項1から8のいずれか1項記載の薄膜製造方法によって形成されたことを特徴とする薄膜付基板。
【請求項11】
アルミニウム基板と、該基板の上に形成されたモリブデン膜と、該モリブデン膜の上に形成された光吸収層とを含む光吸収基板を有する太陽電池において、
前記光吸収層は、ガリウム粉体、イオウ粉体、インジウム粉体、及び、銅ナノ粒子の溶融体を含み、前記ガリウム粉体、イオウ粉体、及び、インジウム粉体は、他の粉体粒子と部分的に粒子表面において結合しており、該結合部以外は前記銅ナノ粒子の溶融体と密に結合しており、前記光吸収層にて均一に分布していることを特徴とする太陽電池。
【請求項12】
請求項11記載の太陽電池において、
前記光吸収層は、請求項1から8のいずれか1項記載の薄膜製造方法によって形成されたことを特徴とする太陽電池。
【請求項13】
基板が巻き付けられた第1のロール回転車輪と、前記第1のロール回転車輪より前記基板を巻き取るための第2のロール回転車輪と、前記第1のロール回転車輪から取り出された基板上に、第1のナノ粒子と第1の粉体とを含む第1のペーストを塗布して第1の組成層を形成する第1のノズルと、前記基板上に形成された前記第1の組成層を仮焼成する第1の仮焼成炉と、前記第1の仮焼成炉から出てきた前記基板上に形成された前記第1の組成層の上に、第2のナノ粒子と第2の粉体とを含む第2のペーストを塗布して第2の組成層を形成する第2のノズルと、前記第2の組成層を仮焼成するための第2の仮焼成炉と、前記第2の仮焼成炉から出た前記基板上に形成された前記第1及び第2の組成層に対して加熱処理及び加圧処理を実行して薄膜を形成するための加熱及び加圧装置と、を有する薄膜製造装置。
【請求項14】
請求項13記載の薄膜製造装置において、
前記第1の組成層において前記第1の粉体の含有量は前記第1のナノ粒子の含有量より少なく、前記第2の組成層において前記第2の粉体の含有量は前記第2のナノ粒子の含有量より多いことを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項15】
請求項13記載の薄膜製造装置において、
前記薄膜は太陽電池の光吸収層であり、前記第1及び第2の粉体は、ガリウム粉体、イオウ粉体、及び、インジウム粉体を含み、前記第1及び第2のナノ粒子は、銅ナノ粒子を含むことを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項16】
請求項13記載の薄膜製造装置において、
前記加熱及び加圧装置は加圧用ロールを有し、前記第2の組成層と前記加圧用ロールの間に表面保護膜が挿入されるように構成されていることを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項17】
請求項13記載の薄膜製造装置において、
前記薄膜の厚さは、前記第1の組成層の厚さと前記第2の組成層の厚さの合計の値の略半分であることを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項18】
請求項13記載の薄膜製造装置において、
前記仮焼成処理における焼成温度80〜100℃であり、前記加熱処理及び加圧処理における加熱温度は100℃〜500℃であることを特徴とする薄膜製造装置。
ことを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項19】
アルミニウム基板の表面にモリブデン膜を形成する工程と、
銅ナノ粒子と第1の粉体を含む第1の分散液を、前記モリブデン膜が形成された基板の上に塗布して第1の組成層を形成する工程と、
前記第1の組成層を仮焼成処理する工程と、
銅ナノ粒子と第2の粉体を含む第2の分散液を、前記第1の組成層の上に塗布して第2の組成層を形成する工程と、
前記第2の組成層を仮焼成処理する工程と、
加熱処理及び加圧処理を同時に実行して、前記第1の組成層と前記第2の組成層より太陽電池の光吸収層を形成する工程と、
を有し、
前記第1及び第2の粉体は、ガリウム粉体、イオウ粉体、及び、インジウム粉体を含み、
前記第1の組成層において前記第1の粉体の含有量は前記銅ナノ粒子の含有量より少なく、前記第2の組成層において前記第2の粉体の含有量は前記銅ナノ粒子の含有量より多いことを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項20】
銀ナノ粒子と銀粉末を含む第1の分散液を、基板の上に塗布して第1の組成層を形成する工程と、
前記第1の組成層を仮焼成処理する工程と、
銀ナノ粒子と銀粉末を含む第2の分散液を、前記第1の組成層の上に塗布して第2の組成層を形成する工程と、
前記第2の組成層を仮焼成処理する工程と、
加熱処理及び加圧処理を同時に実行して、前記第1の組成層と前記第2の組成層より銀薄膜を形成する工程と、
を含み、
前記第1の組成層において前記銀粉末の含有量は前記銀ナノ粒子の含有量より少なく、前記第2の組成層において前記銀粉末の含有量は前記銀ナノ粒子の含有量より多いことを特徴とする銀薄膜製造方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【公開番号】特開2012−9546(P2012−9546A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142776(P2010−142776)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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