説明

薄鋼帯の連続製造方法

本発明は薄鋼帯の連続製造方法に関し、溶融鋼が溶融鋼だめから同期して動く2つの回転冷却鋳造ロール4、5の間に導入され、鋳造鋼帯6が鋳造ロール4、5において鋳造鋼帯6を形成するために少なくとも部分的に凝固し、溶融鋼は少なくとも以下の合金成分:1重量%未満のニッケル(Ni)、1重量%未満のクロム(Cr)、0.8重量%未満の炭素(C)、特に0.4重量%未満の炭素(C)、少なくとも0.55重量%のマンガン(Mn)を含み、鋳造ロール4、5の少なくとも一方の表面には、無作為模様状に、鋳造ロール4、5面にわたり均一に凹みが配置され、更に、鋳造ロール4、5におけるロール分離力が5から150N/mm、特に5から100N/mmの間に設定及び/又は調節されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄鋼帯の連続製造における方法及び機械設備に関し、詳細には、少なくとも、2つの鋳造ロール及びサイドプレートを備え、該サイドプレートはキャスティングだめとして利用可能なように鋳造ロールの側方に適宜配置されており、作業中に薄鋼帯が鋳造ロール間及びサイドプレート間に形成されるように、キャスティングだめから鋳造ロールへ液状の溶融鋼が導入され得るような製造方法及び機械設備に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも以下の合金構成成分
・1重量%未満のニッケル(Ni)
・1重量%未満のクロム(Cr)
・0.8重量%未満の炭素(C)、特に0.4重量%未満の炭素(C)
・少なくとも0.55重量%のマンガン(Mn)
を含む溶融鋼より鋼帯を製造する工程において製造される鋳造鋼帯は、特に従来の技術として周知である2つのロールを用いた処理において、鋼帯の品質を著しく低下させる原因となる多くの亀裂や表面欠陥が生じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、このように周知である従来の技術の欠陥を解消すること、且つ、請求項1に記載される鋼のグレード処理を更に向上させることにあり、また、請求項19のプレアンブルに記載される機械設備により、対応する鋼帯をより経済的に製造することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、本発明の目的は請求項1の特徴を有する処理工程により達成され、また、請求項19の特徴を有する機械設備により達成される。
【0005】
本発明の特定の実施形態では、鋳造ロールは、2ロール鋳造工程で使用される鋳造ロールを示すものとする。しかしながら、これに加え、定義における鋳造ロールは、従来の技術より周知である他のすべての壁面をも含むものとする。従来の技術によれば、鋳造ロールの表面は、特に、施削及び/又は研削による異物除去切削を含む技術的工法処理により製造されるのが好ましい。従来の技術より周知である鋳造ロールを用いた、詳細には2ロール鋳造工程に基づいて、従来の技術で通常用いられるRSF指数が100N/mmから250N/mmの間(ロール分離強度)における鋼帯の製造工程において、製造された鋼帯は、亀裂の重要な証拠を示すと共に、鋼帯の幅方向と交差する長さ方向に沿って著しく顕著な温度差異の証拠を示す。これにより、強度や不均一凝固特性におけるかなりの上下変化(ばらつき)が推測され得る。
【0006】
厚さ1mmから10mmの薄鋼帯を形成させる、非ステンレス(Cr及び/又はNiの構成が各々1%未満)液状鋼の直接鋳造工法において、従来の技術で周知である処理パラメータの使用では、不適格な品質の鋼帯が製造される。この意味において、鋼帯に度々形成される微小亀裂は特に危険である。
【0007】
前述した溶融鋼の成分を用いた本発明による処理によって、良好な鋼帯特性、特に良好な鋼帯先端を有する亀裂のない鋼帯を製造することが初めて可能となった。更に、従来技術より均質である鋼帯の幅直交方向における鋼帯の温度分布を均一に、永久型すなわち鋳造ロールの直下において、特に鋼帯幅においてプラスマイナス(±)25K以内とすることが可能となった。本発明による製造工程を用いて製造された鋼帯には、一般に熱により誘発され得るすじかい状の縞が生じず、この鋼帯はエッジにおける良好な品質において際立っている。
【0008】
本発明の特定の実施形態によれば、2ロール鋳造工法を実施するための2つの鋳造ロールが必要で、この場合、鋳造ロールの表面には、一様な無作為模様状に配設されたケース凹み(溝)が、両方の鋳造ロールの表面に形成されている。
【0009】
本発明の特定の実施形態によれば、使用される鋳造ロールの表面構成は、実質上均一に配置された凹みによって特徴付けられる。一の特定実施形態によれば、これらの凹みは、機械的に形成された圧こん及び/又は隆起であって、例えば、鋳造ロールの表面において、リムの間に設けられた、詳細にはバリと凹みの最深部との高さが、3から80マイクロメータ、特に20から40マイクロメータの高さを有している。
【0010】
本発明に基づく製造方法の実施形態によれば、鋳造ロールの表面に形成された1から20平方ミリメートル(mm)の大きさの凹みが、鋳造ロールの表面に無作為模様状に、鋳造ロール表面の全体にわたり均一に配置されている。
【0011】
試験により示されたように、本発明に係る方法によって、特に高品質表面を有する鋼帯を製造することが可能である。
【0012】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、溶融鋼のシリコン(Si)成分が、0.35重量%未満である。
【0013】
試験により示されたように、本発明に係る方法によって、特に向上された靭性と共に高品質機械特性を有する鋼帯を製造することが可能である。
【0014】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、少なくとも部分的に凝固された鋳造鋼帯が、毎分30m超の速度で鋳造ロールから分離される。
【0015】
実際に、本発明による方法によって、特に高品質表面を実現しつつ同時に工法の経済性を向上させることが可能となった。鋼帯表面上のオーバーフロ−や折り目の形成(表面亀裂と共に度々生じる)が、より低い確率で、規則性の向上と共に認められる。
【0016】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、鋳造ロールの少なくとも一つの表面における平均的粗さは3マイクロメータ(μm)超に規定され、確率的に構成された凹みは特にショットピーニングによる鋳造ロール面の機械的処理の影響を受ける。
【0017】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、鋳造ロール面の機械的処理が、0.5mmから2.2mmの範囲の目標直径Dを有する微小片(ショット)を用いたショットピーニングにより実施され、該ショットピーニングでは、表面領域1平方ミリメートル(mm)当たり1から250個の微小片を、本工程でショットピーニングがなされる表面の部分に衝突させる。
【0018】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、ショットピーニングで使用される微小片における前述した目標直径Dからの乖離は、多くとも最大標準偏差が30%となっている。
【0019】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、液状鋼のメニスカス(=鋳造レベル)は、幾何学的なキッシングポイントから30°から50°の角度に向けられ、すなわち、鋳造ロール軸から、一方では幾何学的なキッシングポイントの水平方向へ半径運動し、他方では30°から50°のスチールバス接触角度を含むメニスカスの方向に半径運動する。
【0020】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、溶融鋼だめは2つの鋳造ロール及び好適なサイドプレートにより区切られ、好適なカバーによってその上部の少なくとも一部分が覆われている。これによって、処理工程の一部を構成しない、特に粉塵大気及び/又は酸化ガスの媒体進入を実質的に防止する。
【0021】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、溶融鋼だめは実質的に不活性大気中に露呈され、当該不活性ガスは、0−100容量%の窒素(N)で残りがアルゴン或いは別の理想気体又は二酸化炭素(CO)で構成されるように供給される。
【0022】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、供給される不活性ガスには7%までの水素が含まれる。
【0023】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、溶融鋼だめと上部カバーとの空間は、溶融鋼に対して実質的に不活性である気体により少なくとも一部充填され又は浄化される。
【0024】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、溶融鋼だめに適用される不活性大気は、酸素(O)の成分割合が最大で0.05容量%に制限される。
【0025】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、鋳造鋼帯のクラウンやエッジドロップは、鋳造ロールからの出口の測定断面において決定される。
【0026】
ストリップクラウン及びエッジドロップは、DINスタンダードに基づいて定義される。
【0027】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、鋳造ロールには、鋼帯が該永久型を出る時に、
・ストリップクラウンが20μmから150μmであり、且つ
・鋼帯エッジと鋼帯エッジから40mmの距離との間の鋼帯厚さのエッジドロップが150μm未満
となるように、冷間で予備的プロファィルが与えられている。
【0028】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、鋳造ロールには、一つ又は複数の適宜なアクチュエーターにより、鋳造中に熱間でのプロファイルが、
・気体成分
・鋼帯厚さ
・凝固熱
・鋳造速度
・メニスカスアングル
のうちの一つ又は複数の鋳造パラメータに基づいて与えられ、且つ、該プロファイルは、鋼帯が永久的な成形をされた時に、
・ストリップクラウンが20μmから150μmであり、且つ
・鋼帯エッジと鋼帯エッジから40mmの距離との間の鋼帯厚さのエッジドロップが150μm未満
となるように与えられている。
【0029】
試験により示されたように、ロール分離力(RSF)を考慮しつつ、本発明に係る方法によって、特に鋼帯エッジ部を含む鋳造鋼帯の幅全体にわたり十分に均一な凝固を形成させることが可能となり、これによって、本発明に基づく処理工程の効率を更に向上させることが可能である。
【0030】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、30μmから90μmのストリップクラウン及び100μm未満のエッジドロップが鋳造鋼帯において設定される。
【0031】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、鋳造ロールの少なくとも一方の鋳造ロール表面の粗さは、特に計算上の粗さ平均が3−30mmの鋳造ロールのエッジ部においても最大で2μmと、極めてスムースに設定される。
【0032】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、ロール分離力は、ロール分離力目標値に対して少なくとも±15N/mmの精度で調節及び/又は制御されている。
【0033】
本処理は、以下の溶融鋼構成成分
・1重量%未満のニッケル(Ni)
・1重量%未満のクロム(Cr)
・0.8重量%未満の炭素(C)、特に0.4重量%未満の炭素(C)
・少なくとも0.55重量%のマンガン(Mn)
・残りが鉄(Fe)及び副産不純物
を有する鋼鉄種に好ましく適用される。
【0034】
本発明は、また請求項19に記載された機械設備により特徴付けられる。
【0035】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、鋳造ロール表面領域の1mm当たり、1から20個の凹みが形成されている。
【0036】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、ショットピーニングによる生成される表面構成は、詳細には、直径0.5mmから2.2mmの微小片を、ショットダイアメータ拡散率を30%(目標ダイアメータ値Dに対して前記目標範囲内に位置する割合)で、好ましくは1mm当たり1から250個の微小片を吹き付けることにより、鋳造ロール面が形成される。
【0037】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、溶融鋼だめを覆って利用可能であるカバーが、2つの鋳造ロールに設けられる。
【0038】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、溶融鋼に対して実質的に不活性に作用する大気ガスを、溶融鋼だめの領域における、溶融鋼の上方で、特に溶融鋼とカバーとの間の空間に適用可能とするような好適な装置が設けられる。
【0039】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、鋳造鋼帯のクラウン、及び/又は、鋼帯エッジと鋼帯エッジから40mmの距離との間の鋼帯厚さのエッジドロップを決定するための測定断面が設けられる。
【0040】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、鋳造ロールの少なくとも一方には冷間での予備的プロファイルが与えられる。
【0041】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、鋳造ロールの熱間でのプロファイルを以下の鋳造パラメータ:
・気体成分
・鋼帯厚さ
・凝固熱
・鋳造速度
・メニスカスアングル
の一つ又は複数に基づいて設定可能にする少なくとも一つのアクチュエーターが、鋳造ロールの少なくとも一方に設けられている。
【0042】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、鋳造ロールの少なくとも一方の熱間でのプロファイル及び/又は冷間でのプロファイルを、測定された鋳造鋼帯のクラウン、及び、鋼帯エッジと鋼帯エッジから40mmの距離との間の鋼帯厚さの測定されたエッジドロップに基づいて、設定可能にする調節装置が設けられている。
【0043】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、鋳造ロールの少なくとも一方は、3から30mmのエッジ領域における表面粗さ平均が最大でも2μmとなっている。
【0044】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、少なくとも±15N/mmの精度でロール分離力を調節する装置が設けられている。
【0045】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、複数の鋳造ロールが互いの方向に動作可能なように配置されている。本発明に基づく機械設備の更なる実施形態によれば、一方では鋳造ロールが互いの方向に動作される力を測定する装置が設けられ、他方では互いの方向への鋳造ロールの動作を測定された力に基づいて制御する装置も設けられている。
【0046】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、機械設備稼働中に、鋳造ロールの少なくとも一方におけるキャンバの変更に使用され得る好適な装置が設けられている。
【0047】
本発明に基づく機械設備の別の一実施形態によれば、機械設備稼働中に、鋳造ロールの少なくとも一方のエッジ領域におけるホット形状の変更に使用され得る好適な装置が設けられている。
【0048】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、メニスカスアングルを測定する好適な装置が設けられ、適切にはメニスカスアングルを調節及び/又は制御する好適な装置も設けられている。
【0049】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、鋼帯特性を測定する装置が設けられている。
【0050】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、鋳造ロールの少なくとも一方は、特に銅又は銅合金のような良好な熱伝導性を有する材料から実質的に構成されている。本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、機械設備の少なくとも一つはその内部に配置された冷却装置を備えている。
【0051】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、鋳造ロールの少なくとも一方は、最小層厚が10μmのクロム被覆によりその外側が被覆されている。更なる実施形態によれば、特にニッケル及び/又はニッケル合金からなる少なくとも0.5mmの厚さの中間層が、クロム被覆の下に形成されている。
【0052】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、鋳造ロールの少なくとも一方の速度を測定する装置であって、更に、決定された所望のスピードに設定するために所望のスピード指数を例えば現在のロール分離力及び/又は現在のメニスカスアングル等の他の重要な鋳造パラメータのいくつかを考慮したクローズドループ制御回路を介して鋳造ロールの駆動源に伝達する装置が設けられている。
【0053】
本発明に基づく機械設備の一の実施形態によれば、所望のメニスカスアングルに設定可能又は好適なクローズドループ制御回路により調節可能なように、メニスカスアングルの実数値を少なくとも考慮し、溶融鋼の供給を絞りつつ調節する装置が設けられている。
【0054】
炭素(C)成分0.45%未満、特に0.1%未満の非ステンレス(Cr及び/又はNiの構成が各々1%未満)溶融鋼を、2ロール鋳造工程を用いて厚さ1から10mmの薄鋼帯に加工する直接鋳造の場合、表面位相や、従来の技術より周知とされる鋳造ロールの冷間でのプロファイルや、従来の技術で慣習的である標準不活性ガス混合(永久型内における)が受容されることは不可能であって、更に、微小亀裂のない鋼帯、又は、幅方向にわたって温度の均一性が±30K以内(幾何学的なキッシングポイント下約1−2mを測定)に、安定し、断続しない連続的な鋳造工程を実現するように、周知のAISI304等級に基づいて選択されたロール分離力が供与されることも不可能であった。鋳造速度が毎分30m超、特に毎分50m超において、一方では永久型の下の温度特性測定ポイントに傾斜した横行性の条痕が認められ、他方ではかなりの鋼帯エッジブリーディング及び楔形エッジの発生が認められた。
【0055】
本発明の一の実施形態によれば、炭素(C)成分が0.5%のステンレス鋼が、以下に示すパラメータ:
・0.5から2.2mmまでの直径dに対しd±30%の精度を有する所定の直径に形成されたスチール微小片を用いたショットピーニングにより実現された、安定的な鋳造ロール表面位相。なお、このショットピーニング処理中には、鋳造ロール表面領域の1平方ミリメートル当たり1から250個の微小片を衝突させる必要がある。
・2つの鋳造ロールの間の液状クレータは、その上部が永久型カバーによってカバーされ、キャスティングレベル上の大気を不活性にするために使用される以下の成分を有する気体により覆われている。すなわち、0−100%の窒素(N);残りがアルゴン(Ar)又は他の理想気体若しくは二酸化炭素(CO);工業用等級ガスではほとんど回避不能なように、7%までの水素(H)及び最少不純物、を含む気体が許容され得る(いかなる割合においても酸素O成分は0.05%未満)。
・凝固熱
・鋼帯幅1メートル当たり5から100KNの鋳造圧力又はロール分離力
・20から120μm、好ましくは30から90μmのストリップクラウン(DIN STANDARDによるホットストリップに基づいて定義される)
の一つ又はそれ以上を用いて、毎分30m超、特に毎分50m超の鋳造速度により鋳造される。
【0056】
本発明の更に好適な実施形態によれば、鋳鋼は以下の構成成分:
・0.1%未満の炭素(C)成分、及び/又は0.5から1.5%のマンガン(Mn)成分、及び/又は0.01から0.35%のシリコン(Si)成分
を有する。
【0057】
本発明の更に好適な一実施形態によれば、使用される鋳造ロールの平均粗さが、Ra>3μm、好ましくはRa>6μmである。
【0058】
本発明の更に好適な一実施形態によれば、使用される鋳造ロールの少なくとも一方には、少なくとも10μmの層厚を有するクロム被覆が施され、好ましくは0.5mmの層厚を有するニッケル被覆がクロム被覆の下に形成される。本発明の更に好適な一実施形態によれば、鋳造ロールの側面は、必要に応じていかなる種類のロール被覆に対してもベースとして使用され得る銅で形成されている。
【0059】
本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、鋳造ロールは、3mmから30mmのエッジ領域において、大きな粗さ(Raは20μm以下)には形成されていない。
【0060】
本発明の一の実施形態によれば、2ロール鋳造装置における鋼帯の連続製造中には、溶融鋼が水平方向に配置された2つの鋳造ロールの間に導入される。なお、当該鋳造ロールはそれぞれ半体方向に回転し、更に好ましい特に水冷式の冷却装置が各ロールに配設されている。溶融鋼は、冷却された鋳造ロールとの接触において直ちに凝結シェルが形成され、該凝結シェルは、キャスティング面間の幾何学的なキッシングポイントの位置(キャスティング面間で最も距離の短い位置)において、低いロール分離力下で少なくとも部分的なプレスを受ける。凝結ストランド又は凝結鋼帯はキッシングポイント下で分離される。
【0061】
本発明の種々の実施形態によれば、溶融鋼は桶から小さな容器へ鋳入され、好適なキャスティングノズルを経由して鋼帯キャスティング機械設備又は2つの鋳造ロールの間のキッシングポイント上の空間に鋳入される。本発明の一の実施形態によれば、導入された鋼はキッシングポイント上で溶融鋼だめを形成し、該溶融鋼だめは一方で鋳造ロールの表面で区切られ、他方では好適なサイドプレート又は、例えば好適な電磁式装置のようなその他の好適な装置により区切られる。更に、サイドプレートは可動式に設計されるのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
本発明は、概略を示した図面に関する一の特定の実施形態に基づいて、但しその形態に限定されることなく以下に説明される。
【0063】
図1に示される鋳造及びロール装置は、鋳物桶2、キャスティングノズル3及び互いに反対側に回転する2つの鋳造ロール4、5から構成された鋼帯鋳造機械設備1を備える。鋳造鋼帯6は、冷却領域7を通過してローリングスタンド8に供給される。ローリングスタンド8において、鋼帯の厚さは少なくとも10%減少させられる。このように、引き伸ばされた鋼帯は、保持及び/又は熱処理装置9に供給された後、コイラー10でコイル状に成形される。本発明に基づく製造方法の一の実施形態によれば、コイル状の鋼帯は熱処理機械設備(図示せず)によって熱処理されることが好ましい。
【0064】
メニスカスアングルαの定義について図2を参照して説明する。メニスカスアングルαは、ノーマルセクション(鋳造ロールの中心軸に垂直に交わる面)に基づいて決定され、すなわち、
・キャスティングレベル及び鋳造ロールの外周の交点と
・鋳造ロールの中心点と
を結ぶ線、及び、
・キャスティンロールの中心点と、
・他の鋳造ロールの中心点と
を結ぶ線により形成される。
【0065】
本発明に係る一の実施形態によれば、メニスカスアングルは、例えば、キャスティングレベルの高さを決定することにより測定される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る薄鋼帯を製造するための装置及び処理工程を示す概略図である。
【図2】本発明に係る薄鋼帯を製造するための装置及び処理工程の詳細を示す概略図である。
【符号の説明】
【0067】
1 鋼帯鋳造機械設備
2 鋳物桶
3 キャスティングノズル
4、5 鋳造ロール
6 鋳造鋼帯
7 冷却領域
8 ローリングスタンド
9 熱処理装置
10 コイラー
α メニスカスアングル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄鋼帯の連続製造方法であって、溶融鋼が、溶融鋼だめから特に同期して鋳造鋼帯と共に動く2つの回転冷却鋳造ロールの間に導入され、且つ前記鋳造ロールにおいて部分的に凝固して前記鋳造鋼帯を形成し、更に前記溶融鋼が少なくとも以下の合金成分を含み:
・1重量%未満のニッケル(Ni)
・1重量%未満のクロム(Cr)
・0.8重量%未満の炭素(C)、特に0.4重量%未満の炭素(C)
・少なくとも0.55重量%のマンガン(Mn)
且つ、前記鋳造ロールの少なくとも一方の表面には、複数の凹みが、無作為模様状に、該鋳造ロール面にわたって均一に配置されており、更に、前記鋳造ロールにおけるロール分離力が5から150N/mm、特に5から100N/mmの間に設定及び/又は調節されていることを特徴とする薄鋼帯の製造方法。
【請求項2】
鋳造ロールの表面1平方ミリメートル(mm)当たり1から20個の凹みが、無作為模様状に、前記鋳造ロール面にわたって均一に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項3】
前記溶融鋼のシリコン(Si)成分が0.35重量%未満に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項4】
少なくとも部分的に凝固された前記鋳造鋼帯が、毎分30m超の速度で前記鋳造ロールから取り出されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項5】
少なくとも一方の前記鋳造ロールの表面粗さ平均が3μm超に設定され、前記凹みの確率的な配置が前記鋳造ロール面の機械的処理、特にショットピーニングによって形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項6】
前記鋳造ロール面の前記機械的処理が、0.5から2.2mmまでの範囲における目標直径Dを有する微小片を用いたショットピーニングによりなされ、この処理において前記ショットピーニングがなされる表面領域に1平方ミリメートル(mm)当たり1から250個までの微小片を衝突させることを特徴とする請求項5に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項7】
前記ショットピーニングで使用される前記ショットが最大基準偏差30%で前記目標直径Dから乖離していることを特徴とする請求項6に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項8】
メニスカスが幾何学的なキッシングポイントから30°から50°の角度に向けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項9】
前記溶融鋼だめは、側方が前記2つの鋳造ロール及び好適なサイドプレートにより区切られており、且つ、前記処理を構成しない媒体の進入を実質的に防止するための好適なカバーが少なくともその上部を部分的に覆うように設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項10】
前記溶融鋼だめが実質的に不活性大気に露呈され、供給される不活性ガスは0−100容量%の窒素(N)、残りがアルゴン又は他の理想気体若しくは二酸化炭素(CO)、及び任意の7%までの水素(H)よりなされていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項11】
前記不活性大気は、定常鋳造工程において、酸素成分が最大0.05容量%に制限されていることを特徴とする請求項10に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項12】
前記鋳造鋼帯のクラウン及びエッジドロップが、前記鋳造ロールからの出口における測定断面において決定されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項13】
前記鋳造ロールには、前記鋼帯が該永久型を出る時に、
・ストリップクラウンが20μmから150μmであり、且つ
・鋼帯エッジと鋼帯エッジから40mmの距離との間の鋼帯厚さのエッジドロップが150μm未満
となるように、冷間で予備的プロファィルが与えられていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項14】
前記鋳造ロールには、一つ又は複数の適宜なアクチュエーターにより、鋳造中に熱間でのプロファイルが、
・気体成分
・鋼帯厚さ
・凝固熱
・鋳造速度
・メニスカスアングル
のうちの一つ又は複数のキャスティングパラメータに基づいて与えられ、且つ、該プロファイルは、前記鋼帯が永久的な成形をされた時に、
・ストリップクラウンが20μmから150μmであり、且つ
・鋼帯エッジと鋼帯エッジから40mmの距離との間の鋼帯厚さのエッジドロップが150μm未満
となるように与えられていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項15】
30μmから90μmの前記ストリップクラウン及び100μm未満の前記エッジドロップが前記鋳造鋼帯において実現されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項16】
前記鋳造ロールの少なくとも一方の鋳造ロール表面粗さは、計算上の粗さ平均が3−30mmの前記鋳造ロールのエッジ部において最大2μmと極めて平滑に形成されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項17】
前記ロール分離力が少なくとも±15N/mmの精度で調節又は制御されていることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項18】
前記溶融鋼が以下の構成成分:
・1重量%未満のニッケル(Ni)
・1重量%未満のクロム(Cr)
・0.8重量%未満の炭素(C)、特に0.4重量%未満の炭素(C)
・少なくとも0.55重量%のマンガン(Mn)
・残りが鉄(Fe)及び副産不純物
よりなっていることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載の薄鋼帯の製造方法。
【請求項19】
少なくとも2つの回転冷却鋳造ロール及びサイドプレートを備え、該サイドプレートは溶融鋼だめとして利用可能に前記鋳造ロールの側方に適宜配置され、液状の溶融鋼が該溶融鋼だめから前記鋳造ロールに導入されて前記鋳造ロール及びサイドプレートの間に形成されるような薄鋼帯の連続製造用機械設備において、前記鋳造ロールの表面には無作為模様状に、該鋳造ロール面にわたって均一に凹みが配置され、更に、該機械設備はロール分離力を5から150N/mm、特に5から100N/mmの数値範囲に調節して設定する好適な装置を備えていることを特徴とする薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項20】
前記鋳造ロールの表面領域1平方ミリメートル(mm)当たり1から20個の凹みが形成されていることを特徴とする請求項19に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項21】
ショットピーニングによる生成された表面構成、特に直径0.5mmから2.2mmまでの微小片を目標ダイアメータ値Dに対するショットダイアメータ拡散率を30%未満で、好適には1mm当たり1から250個の前記微小片を吹き付けることにより形成された表面構成が、前記鋳造ロール面として構成されていることを特徴とする請求項19又は20に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項22】
前記溶融鋼だめを覆い利用可能である一つのカバーが、2つの前記鋳造ロールの上方に設けられていることを特徴とする請求項19乃至21のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項23】
前記溶融鋼に対して実質的に不活性及び/又は還元的に作用する大気ガスを前記溶融鋼だめの領域における前記溶融鋼の上方で特に前記溶融鋼と前記カバーとの間の空間に充填可能とするような好適な装置が設けられていることを特徴とする請求項19乃至22のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項24】
前記鋳造鋼帯のクラウン、及び/又は、鋼帯エッジと鋼帯エッジから40mmの距離との間の鋼帯厚さのエッジドロップを決定するための測定断面が設けられていることを特徴とする請求項19乃至23のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項25】
前記鋳造ロールの少なくとも一方には冷間での予備的プロファイリングが与えられていることを特徴とする請求項19乃至24のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項26】
前記鋳造ロールの熱間でのプロファイルを、以下の鋳造パラメータ:
・気体成分
・鋼帯厚さ
・凝固熱
・鋳造速度
・メニスカスアングル
のうちの一つ又は複数に基づいて設定可能にする少なくとも一つのアクチュエーターが前記鋳造ロールの少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項19乃至24のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項27】
測定された前記鋳造鋼帯の前記クラウン、及び、鋼帯エッジと鋼帯エッジから40mmの距離との間の鋼帯厚さの測定された前記エッジドロップに対応して、前記鋳造ロールの少なくとも一方における熱間でのプロファイルを設定可能にする調節装置が設けられていることを特徴とする請求項19乃至26のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項28】
前記鋳造ロールの少なくとも一方の3から30mmのエッジ領域における表面粗さ平均が最大でも2μmに形成されていることを特徴とする請求項19乃至27のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項29】
少なくとも±15N/mmの精度でロール分離力を調節する装置が設けられていることを特徴とする請求項19乃至28のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項30】
複数の前記鋳造ロールが互いの方向に動作可能なように配置され、一方では前記鋳造ロールが互いの方向に動作される力を測定する装置が設けられ、他方では測定された力に基づいて前記鋳造ロールの互いの方向への動作を制御する装置が設けられていることを特徴とする請求項19乃至29のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項31】
前記機械設備稼働中、前記鋳造ロールの少なくとも一方におけるキャンバの変更に使用され得る好適な装置が設けられていることを特徴とする請求項19乃至30のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項32】
前記機械設備稼働中、前記鋳造ロールの少なくとも一方の前記エッジ領域におけるホット形状の変更に使用され得る好適な装置が設けられていることを特徴とする請求項19乃至30のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項33】
メニスカスアングルを測定する好適な装置と、該メニスカスアングルを調節及び/又は制御する好適な装置と、が設けられていることを特徴とする請求項19乃至32のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項34】
前記鋼帯のプロファイルを測定する装置が設けられていることを特徴とする請求項19乃至33のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項35】
前記鋳造ロールの少なくとも一方は、特に銅又は銅合金のような良好な熱伝導性を有する材料から実質的になり、更にその内部に配置された冷却装置を備えていることを特徴とする請求項19乃至34のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項36】
前記鋳造ロールの少なくとも一方は最小層厚が30μmのクロム被覆によりその外側が被覆され、適切には、特にニッケル及び/又はニッケル合金よりなる少なくとも0.5mmの厚さの中間層が前記クロム被覆の下に形成されていることを特徴とする請求項19乃至35のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項37】
前記鋳造ロールの少なくとも一方の速度を測定し、且つ、決定された所望のスピードに設定するために所望のスピード指数を例えば現在のロール分離力及び/又は現在のメニスカスアングル等の他の重要な鋳造パラメータのいくつかを考慮したクローズドループ制御回路を介して前記鋳造ロールの駆動源に伝達する装置が設けられていることを特徴とする請求項19乃至36のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。
【請求項38】
所望の前記メニスカスアングルに設定可能又は好適なクローズドループ制御回路により調節可能なように、前記メニスカスアングルの実数値を少なくとも考慮し、前記溶融鋼の供給を絞り調節する装置が設けられていることを特徴とする請求項19乃至37のいずれか一項に記載の薄鋼帯の連続製造用機械設備。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−502862(P2006−502862A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544076(P2004−544076)
【出願日】平成15年10月6日(2003.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011007
【国際公開番号】WO2004/035247
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(301041586)ヴォエスト・アルピーネ・インデュストリーアンラーゲンバウ・ゲーエムベーハー・ウント・コ (41)
【Fターム(参考)】