説明

薬剤分配装置

【課題】環状分配皿を有する薬剤分配装置において、該環状分配皿上の残留薬剤をより確実に除去できる薬剤分配装置を提供する。
【解決手段】クリーナー機構40のハウジング41を吸引位置に位置させた状態で、環状分配皿10を回転軸回り一方側へ回転させて吸引機構47及びクリーナー駆動機構48を作動させた後に、ハウジング41を吸引位置に位置させた状態で、環状分配皿10を正転方向とは反対側の反転方向へ回転させて吸引機構47及びクリーナー駆動機構48を作動させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状分配皿を有する薬剤分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環状分配皿を用いて散薬等の薬剤を所定量毎に分配する薬剤分配装置に、クリーナー機構を設けることは、従来から公知である(例えば、特許文献1参照)。
詳しくは、前記特許文献1には、第1回転軸回りに回転する環状分配皿であって、周縁部に上方に開く円弧状凹部が設けられた環状分配皿と、前記環状分配皿を第1回転軸回りに略等速回転させた状態で、前記円弧状凹部に薬剤を供給する薬剤供給機構と、前記環状分配皿を第1回転軸回りに回転させることにより、前記円弧状凹部に堆積された薬剤を第1回転軸回りの所定角度分、集積すると共に、該集積された薬剤を掻き出す掻き出し機構とを備えた薬剤分配装置において、前記掻き出し機構によって掻き出された後に前記環状分配皿に残留する薬剤を除去するクリーナー機構を備えた薬剤分配装置が開示されている。
【0003】
前記クリーナー装置は、前記分配皿の上方に上下動可能に配設された吸引管と、該吸引管の内部に装着された回転ブラシと、前記吸引管における前記分配皿の回転方向後流側の側面に連結された塞ぎ板とを備えている。
前記塞ぎ板は、前記吸引管が下降位置(即ち、前記環状分配皿上の残留薬剤を吸引する吸引位置)に位置する際に、前記円弧状凹部に嵌り込むように構成されており、これにより、前記回転ブラシによってこすり落とされた薬剤が環状分配皿の回転方向後流側へ移動することをある程度防止し得るようになっている。
【0004】
このように、前記特許文献1に記載の従来の薬剤分配装置は、前記構成を備えることにより、前記分配皿上の残留薬剤を比較的効率的に除去できるという利点を有するが、その一方、下記不都合も有している。
即ち、前記従来の薬剤分配装置は、清掃モードにおいて、前記クリーナー装置を下降位置に位置させた状態で、前記環状分配皿を回転させつつ、前記回転ブラシを回転させ且つ吸引装置を作動させるようになっているが、その際に、前記塞ぎ板と前記環状分配皿との間に入り込んだ残留薬剤については全く考慮されていない。
【0005】
詳しくは、前記吸引装置を下降位置に位置させる際に前記塞ぎ板が当接する位置に存在する残留薬剤や、前記回転ブラシによってこすり落とされた残留薬剤のうち, 吸引しきれなかった残留薬剤が、該塞ぎ板と環状分配皿との間に入り込むことになるが、斯かる薬剤については除去することができない。
【特許文献1】実公平6−39789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、環状分配皿を有する薬剤分配装置において、該環状分配皿上の残留薬剤をより確実に除去できる薬剤分配装置の提供を、一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、回転軸回りに回転し、周縁部に上方に開く凹部が設けられた環状分配皿の前記凹部に薬剤を供給し、前記凹部に堆積された薬剤を掻き出し機構によって掻き出す薬剤分包装置であって、前記書き出し機構によって前記凹部に堆積された薬剤を分配した後に、前記環状分配皿における前記凹部を回転軸回りの所定角度に亘ってハウジングで覆った状態で、前記ハウジングの内部空間内の残留薬剤を吸引除去するクリーナー機構を備え、前記クリーナー機構により前記環状分配皿に残留する薬剤を除去する際、前記クリーナー機構に対して前記環状分配皿を前記回転軸回り一方側へ回転させた後、前記環状分配皿を前記回転軸回り他方側へ回転させることを特徴とする薬剤分包装置を提供する。
【0008】
好ましくは、前記ハウジングは、前記環状分配皿の前記回転軸回り一方側の方向における上流側及び下流側のそれぞれに位置する第1壁及び第2壁と、該第1壁及び第2壁を連結する周壁とを有し、
前記ハウジングの第2壁には、前記ハウジングが吸引位置に位置された際に、該ハウジングの第2壁と前記凹部との間の隙間を塞ぐシール部材が連結されており、
前記環状分配皿を前記回転軸回り他方側へ回転させる際、前記環状分配皿は、前記シール部材と前記凹部との当接幅の周方向距離よりも大きく前記回転軸回り他方側へ回転される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クリーナー機構により環状分配皿に残留する薬剤を除去する際、クリーナー機構に対して環状分配皿を前記回転軸回り一方側へ回転させた後に、環状分配皿を反転させるように構成したので、シール部材と環状分配皿との間に入り込んだ残留薬剤をも有効に吸引除去できる。
従って、次の分配作業において、従前の分配作業における薬剤が混入することを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態に係る薬剤分配装置について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1及び図2は、それぞれ、本実施の形態に係る薬剤分配装置1が適用された薬剤分包装置100の正面図及び平面図である。
【0011】
図1及び図2に示されるように、本実施の形態に係る薬剤分配装置1は、散薬用分配装置として前記薬剤分包装置100に組み込まれている。
即ち、前記薬剤分包装置100は、散薬用として使用される前記薬剤分配装置1と、錠剤用として用いられる第2薬剤分配装置200と、前記薬剤分配装置1及び第2薬剤分配装置200の下方に配設された薬剤包装装置300とを備えている。
【0012】
前記薬剤分配装置1は、図2に示されるように、環状分配皿10と、前記環状分配皿10上に薬剤を供給する薬剤供給機構20と、前記環状分配皿10上の薬剤を所定量毎に掻き出す掻き出し機構30と、前記掻き出し機構30によって掻き出された後に前記環状分配皿10に残留する薬剤を除去するクリーナー機構40とを備えている。
【0013】
前記環状分配皿10は、外部信号に基づき、分配皿用駆動機構(図示せず)によって第1回転軸A1回りに回転駆動されるようになっている。
図2に示すように、前記環状分配皿10は、前記分配皿用駆動機構によって駆動される中央部11と、前記第1回転軸A1を基準にして前記中央部11の径方向外方に位置する凹部12とを有している。該凹部12は好ましくは円弧状とされる。
前記凹部12は上方に開いており、前記薬剤供給機構20から供給される薬剤を保留し得るように構成されている。
【0014】
前記薬剤供給機構20は、薬剤を等量ペースで前記環状分配皿10の凹部12に供給し得るように構成されている。
即ち、前記環状分配皿10を前記第1回転軸A1回りに等速回転させた状態で、該薬剤供給機構20を作動させることにより、前記環状分配皿10の凹部12には周方向に亘って均一な量の薬剤が堆積されるようになっている。
【0015】
前記掻き出し機構30は、前記環状分配皿10を第1回転軸A1回りに回転させることにより、前記凹部12に堆積された薬剤を第1回転軸A1回りの所定角度分、集積すると共に、該集積された薬剤を下方へ掻き出すように構成されている。
【0016】
前記掻き出し機構30は、外部信号に基づき、掻き出し機構用駆動機構(図示せず)によって、前記環状分配皿10に堆積された薬剤を掻き出す掻き出し位置と、該環状分配皿10から離間された待避位置とをとり得るように構成されている。
具体的には、該掻き出し機構30は、掻き出し位置に位置する際に、前記凹部12に当接するせき止め板31と、該せき止め板31によって塞き止められた薬剤を環状分配皿10から掻き出す掻き出し部材32と、該掻き出し部材32を駆動する掻き出し部材用駆動機構33とを備えている。
【0017】
所定量の薬剤の分配は以下のように作動する。
即ち、前記掻き出し機構用駆動機構を作動させて該掻き出し機構30を掻き出し位置に位置させた状態で、前記分配皿用駆動機構を作動させて前記分配皿10を第1回転軸A1回りに所定角度だけ回転させることにより、該所定角度に応じた量の薬剤が前記せき止め板31によって集積されるようになっている。
そして、前記掻き出し部材用駆動機構33によって前記掻き出し部材32を作動させることにより、前記集積された薬剤を分配皿10から下方に位置するホッパ310(図2参照)へ移動させ得るようになっている。
【0018】
図3に、前記クリーナー機構40の縦断面図であって、図2におけるIII-III線に沿った断面図を示す。
該クリーナー機構40は、前記環状分配皿10に対して接離可能とされたハウジング41と、該ハウジング41を移動させるハウジング駆動機構42と、前記ハウジング41の内部を吸引する吸引機構47(図2参照)と、前記ハウジング41の内部に回転自在に装着された回転クリーナー部材43と、該回転クリーナー部材43を回転駆動させるクリーナー駆動機構48(図2参照)とを備えている。
【0019】
前記ハウジング41は、前記ハウジング駆動機構42によって、前記環状分配皿10の凹部12の所定領域を覆う吸引位置(図3(a)参照)と、該環状分配皿10から離間された待避位置(図3(b)参照)との間で、移動され得るようになっている。
具体的には、該ハウジング41は、前記環状分配皿10の回転方向一方側への正転方向(図2における矢印F方向)を基準にして、正転方向上流側及び正転方向下流側にそれぞれ位置された第1壁41a及び第2壁41bと、該第1壁41a及び第2壁41bの上端部を連結する周壁41cとを有しており、下方が開口41dとされている。
斯かるハウジング41は、吸引位置に位置された際に、前記下方開口41dが前記凹部12を前記第1回転軸A1回りの所定角度に亘って覆うようになっており、前記第1壁41aと、前記第2壁41bと、前記周壁41cと、前記凹部12のうちの対応する領域とによって、内部空間を画するようになっている。
【0020】
前記吸引機構47は、吸引装置(図示せず)と、該吸引装置の吸引口を前記ハウジング41の内部空間に連通する吸引管47aとを備えており、前記吸引装置を作動させることによって前記ハウジング41の内部空間内の残留薬剤を吸引除去し得るように構成されている。
【0021】
前記回転クリーナー部材43は、前記ハウジング41の内部空間に位置し、且つ、前記環状分配皿10の平面方向に対して略平行な第2回転軸A2回り回転自在となるように、該ハウジング41に支持されている。
より詳しくは、該回転クリーナー部材43は、前記ハウジング41が吸引位置に位置された際に、外周縁部が前記凹部12と接するように構成されている。
斯かる構成を備えることにより、前記クリーナー駆動機構48によって前記回転クリーナー部材43を前記第2回転軸A2回りに回転させることで、凹部12の表面に付着した薬剤を該凹部12から分離させ得るようになっている。
なお、本実施の形態においては、該クリーナー部材43は、図3に示すように、前記第2回転軸A2に相対回転不能に支持される筒部43aと、該筒部43aから径方向外方へ延在されたブラシ部43bとを有しており、前記ハウジング41が吸引位置に位置された際に該ブラシ部43bの径方向外端が凹部12の表面と接するようになっている。
【0022】
前記クリーナー機構40は、さらに、前記ハウジング41が吸引位置に位置された際に、該ハウジング41の第2壁41bと前記環状分配皿10との隙間を塞ぐシール部材45を備えている。
本実施の形態においては、該シール部材45は、前記環状分配皿10の正転方向Fを基準にして、前記第2壁41bの正転方向下流側に位置するように、該ハウジング41に連結されたプレート部材とされている。
該プレート部材は、好ましくは、シリコンパッキンとされる。
【0023】
斯かる構成のクリーナー機構40を備えた前記薬剤分配装置1は、標準清掃モードと、該標準清掃モードの終了後に、自動的又は外部信号に基づき、開始される反転清掃モードをとり得るように構成されている。
前記標準清掃モードは、薬剤分配工程の終了に伴い自動的に、又は、操作パネルによる操作等によって強制的に、前記環状分配皿10の表面に残留している薬剤を除去する。
具体的には、該標準清掃モードにおいては、前記ハウジング41が吸引位置に位置された状態で、前記環状分配皿10が正転方向Fへ回転される。そして、該回転と並行して、又は、該回転後に、前記クリーナー駆動機構48及び前記吸引機構47が作動される。
従って、前記凹部12に付着した残留薬剤は前記回転クリーナー部材43によって前記環状分配皿10から分離されて、前記吸引機構47によって吸引除去される。
【0024】
なお、前記環状分配皿10の正転方向Fへの回転と、前記クリーナー駆動機構48及び前記吸引機構47の作動とは、並行して行ってもよいし、時系列的に行うことも可能である。
即ち、前記環状分配皿10を正転方向Fへ回転させながら、前記クリーナー駆動機構48及び前記吸引機構47を作動させることもできるし、若しくは、前記環状分配皿10を正転方向Fへ所定角度回転させた後、該環状分配皿10の回転を停止させてから、前記クリーナー駆動機構48及び前記吸引機構47を作動させることを繰り返し行うこともできる。
【0025】
なお、前述の通り、前記シール部材45が前記ハウジング41の第2壁41bと前記凹部12との間の隙間を塞いでいる為、前記回転クリーナー部材43によって前記環状分配皿10から分離された薬剤が、前記ハウジング41の第2壁41bから回転方向下流側へ移動することは有効に防止される。
【0026】
前記反転清掃モードは、前記シール部材45と前記環状分配皿10との間に挟まった残留薬剤を吸引除去する。
具体的には、該反転清掃モードにおいては、前記ハウジング41が吸引位置に位置された状態で、前記環状分配皿10が前記正転方向Fとは反対側の反転方向(図2における矢印R)へ回転される。そして、該反転と並行して、又は、該反転後に、前記クリーナー駆動機構48及び前記吸引機構47が作動される。
【0027】
好ましくは、前記環状分配皿10の反転方向Rへの回転は、少なくとも、前記シール部材45と前記凹部12との当接幅の周方向距離を越えるように行われる。
即ち、前記環状分配皿10の反転前に前記シール部材45と当接していた凹部12の所定部位が、該反転後には前記ハウジング41の内部空間によって覆われるように、前記環状分配皿10が反転方向Rへ回転される。
【0028】
このように、本実施の形態に係る薬剤分配装置1においては、標準清掃モードの後に、反転清掃モードを行うように構成されている為、従来の薬剤分配装置においては十分に除去しきれなかったシール部材45と環状分配皿10との間の残留薬剤を確実に吸引除去することができる。
【0029】
なお、前記標準清掃モードから前記反転清掃モードへの切換は種々の態様が存在する。
例えば、前記標準清掃モードにおいて、前記環状分配皿10を正転方向Fへ360度回転させてから、前記反転清掃モードへ移行するように構成することもできるし、若しくは、前記標準清掃モードにおいて、前記環状分配皿10を360度より小さい所定角度回転させて、前記反転清掃モードへ移行させることを繰り返すことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係る薬剤分配装置が適用された薬剤分包装置の正面図である。
【図2】図2は、図1に示す薬剤分包装置の平面図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示す薬剤分配装置におけるクリーナー機構の縦断面図であって、図3(a)及び(b)は、それぞれ、吸引状態及び待避状態を示している。
【符号の説明】
【0031】
1 薬剤分配装置
10 環状分配皿
12 凹部
30 薬剤供給機構
30 掻き出し機構
40 クリーナー機構
41 ハウジング
41a 第1壁
41b 第2壁
41c 周壁
41d 下方開口
43 回転クリーナー部材
45 シール部材
47 吸引機構
48 クリーナー駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸回りに回転し、周縁部に上方に開く凹部が設けられた環状分配皿の前記凹部に薬剤を供給し、前記凹部に堆積された薬剤を掻き出し機構によって掻き出す薬剤分包装置であって、
前記書き出し機構によって前記凹部に堆積された薬剤を分配した後に、前記環状分配皿における前記凹部を回転軸回りの所定角度に亘ってハウジングで覆った状態で、前記ハウジングの内部空間内の残留薬剤を吸引除去するクリーナー機構を備え、
前記クリーナー機構により前記環状分配皿に残留する薬剤を除去する際、前記クリーナー機構に対して前記環状分配皿を前記回転軸回り一方側へ回転させた後、前記環状分配皿を前記回転軸回り他方側へ回転させることを特徴とする薬剤分包装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記環状分配皿の前記回転軸回り一方側の方向における上流側及び下流側のそれぞれに位置する第1壁及び第2壁と、該第1壁及び第2壁を連結する周壁とを有し、
前記ハウジングの第2壁には、前記ハウジングが吸引位置に位置された際に、該ハウジングの第2壁と前記凹部との間の隙間を塞ぐシール部材が連結されており、
前記環状分配皿を前記回転軸回り他方側へ回転させる際、前記環状分配皿は、前記シール部材と前記凹部との当接幅の周方向距離よりも大きく前記回転軸回り他方側へ回転されることを特徴とする請求項1に記載の薬剤分包装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−229456(P2007−229456A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37985(P2007−37985)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【分割の表示】特願2004−41153(P2004−41153)の分割
【原出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【出願人】(593129342)高園産業株式会社 (232)
【Fターム(参考)】