説明

薬学的組成物およびその利用

多価不飽和脂肪酸(「PUFA」)またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体(例えば、EPAおよび/またはDHA)が、免疫抑制剤または抗腫瘍薬の少なくとも1つと組み合わせて、急性または慢性の不適切な免疫応答が関係している症状の処置において使用される。上記薬剤(単数または複数)は、少なくとも1つのアミノ酸残基またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体(例えば、メトトレキセートまたはシクロスポリン)を有している。処置することができる具体的な症状としては、慢性の炎症性疾患(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)ならびに腫瘍疾患(例えば、腸ガンおよび前立腺ガン)が挙げられる。本発明の好ましい実施形態の1つの利点は、免疫抑制剤または抗腫瘍薬の生体利用性が高まることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性腸疾患(「IBD」)、関節リウマチ、ベーチェット症候群、乾癬、前立腺ガン、または腸ガンのような急性または慢性の不適切な免疫応答が関係している症状を処置するための、免疫抑制剤および抗腫瘍薬またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体の少なくとも1つと組み合わせた少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸(「PUFA」)またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Martindale(「The Complete Drug Reference」;第32版;1999)によると、IBDには、消化(「GI」)管の慢性の非特異的炎症症状が含まれる。IBDの2つの主要な形態は、クローン病と潰瘍性大腸炎である。
【0003】
クローン病は、GI壁の肥厚部を特徴とし、これには、全ての層にまたがる炎症、深い潰瘍、および粘膜の亀裂、ならびに肉芽腫の存在が伴う。患部は、GI管の任意の部分に生じ、正常な組織の領域がちりばめられた状態となり得る。
【0004】
潰瘍性大腸炎は、結腸と直腸に限られる。炎症は表面的であるが、患部全体に連続している。しかし、肉芽腫は稀である。軽度の病気では、直腸だけが罹患し得る(直腸炎)。重症疾患では、潰瘍は広範囲に及び、粘膜のほとんどが失われる場合があり、これには、結腸の毒性の膨張についての高いリスク、生死にかかわる合併症の可能性が伴う。
【0005】
クローン病と潰瘍性大腸炎との間には相違があるものの、同様の処置が両方の症状に関して使用され得る。コルチコステロイドは、より重症の活動性疾患の処置に使用され、そしてアミノサリチル酸誘導体が、より軽度の活動性疾患の処置に使用され得る。さらに、免疫抑制剤での治療が、慢性の活動性疾患の処置に使用されている。例えば、アザチオプリン(CAS No.446−86−6;6−(1−メチル−4−ニトロイミダゾール−5−イルチオ)プリン)は、クローン病の患者(特に、瘻孔を伴う場合)に有効であることが示されており、そして、難治性潰瘍性大腸炎に有用であり得る。
【0006】
関節リウマチは炎症性関節炎であり、ここでは、関節(通常は手および足の関節を含む)が炎症を起こし、これによって、関節の腫脹、痛み、そして多くの場合には、破壊が生じる。これは、免疫系の成分が関節の内側を覆う柔組織を攻撃する自己免疫疾患と考えられる。症状は、非ステロイド系抗炎症剤(「NSAID」)(例えば、イブプロフェン)、コルチコステロイド(例えば、プレドニソン)、および免疫抑制剤(例えば、メトトレキセートおよびインフリキシマブ)を使用して処置される。
【0007】
ベーチェット症候群は、再発性の有痛性の口のびらん、皮膚の皮膚疱疹、性器びらん、および関節腫脹を生じ得る慢性の再発性の炎症性疾患である。眼、血管、神経系、および消化管もまた、炎症を起こす場合がある。これは自己免疫疾患と考えられる。症状は、コルチコステロイド(例えば、プレドニソン)および免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン)を使用して処置される。
【0008】
乾癬は、慢性の再発性疾患であり、これは、銀色の鱗屑を伴った1つ以上の隆起したまだらな赤らみと、斑と正常な皮膚との間のはっきりとした境界を生じる。これは、免疫系の不具合によって引き起こされると考えられる皮膚細胞の異常に早い増殖速度が原因で生じる。この症状は、これまで光線療法と一緒に、局所用薬物(例えば、コルチコステロイド)と経口用薬物(例えば、シクロスポリンおよびメトトレキセート)を用いて処置されている。
【0009】
前立腺ガンは、米国では男性についての最も一般的なガンであり、ガンによる死亡原因の第2位である。以下の3つの形態の処置が前立腺ガンを処置するために現在使用されている:外科手術、放射線治療、およびホルモン療法。
【0010】
腸ガンは米国および西ヨーロッパでは極めて一般的である。大腸の腫瘍の約50%は、直腸に、そして約20%はS状結腸に生じる。局部にとどまっている疾患についての処置の第一選択は外科手術である。アジュバント療法(通常は、フルオロウラシルに基づく)が広く使用されている。複数の研究によって、フルオロウラシルの長時間注入によって、ボーラス投与を上回るほどに、アジュバント療法の結果を改善することができることが示されている。別のアプローチは、生化学的調節因子(例えば、フォリン酸)または免疫賦活剤(例えば、レバミソール)を使用することである。
【0011】
メトトレキセート(CAS No.59-05-2;4−アミノ−4−デオキシ−10−メチルプテロイル−L−グルタミン酸)は抗腫瘍薬であり、これは、フォリン酸の代謝拮抗剤として作用する。これは、多くの場合には、他の抗腫瘍薬と組み合わせて、種々の悪性疾患(口および胃の腫瘍を含む)の処置に広く使用されている。Martindaleには、メトトレキセートを、結腸または直腸のガンの処置に使用することについての言及はない。その代わりに、フルオロウラシル(5−フルオロピリミジン−2,4−(1H,3H)−ジオン)は、このような悪性新生物を処置するための最適な抗腫瘍薬であるようである。
【0012】
メトトレキセートはまた免疫抑制剤でもあり、これはIBDの処置に使用されている。25mgの用量を1週間に1回筋肉注射で投与すると、メトトレキセートによって、慢性の活動性クローン病の症状が改善し、コルチコステロイド要求が減少する(Feaganら,N.Engl. J. Med. 1995; 332; 292〜7)。低用量のメトトレキセートは、難治性のコルチコステロイド依存性クローン病において寛解の誘導のために、そしてそのステロイド節約効果のために使用されている(Eganら; Mayo Clin. Proc. 1996; 71; 69〜80)。メトトレキセートの経口投与よりも筋肉内注射には、有害な作用は少なく、そして一般的には、再発が稀であることが、この後者の参考文献に開示されている。
【0013】
シクロスポリン(CAS No.59865-13-3;シクロ{−[4−(E)−ブト−2−エニル−N,4−ジメチル−L−スレオニル]−L−ホモアラニル−(N−メチルグリシル)−(N−メチル−L−ロイシル)−L−バリル−(N−メチル−L−ロイシル)−L−アラニル−D−アラニル−(N−メチル−L−ロイシル)−(N−メチル−L−ロイシル)−(N−メチル−L−バリル)−})は免疫抑制剤であり、これは、自己免疫成分を有していると考えられる種々の疾患の処置に使用されている。シクロスポリンは、IBDにおいては第二選択薬として試験され、様々な成功を収めている。静脈内への高用量のシクロスポリンは、難治性の潰瘍性大腸炎に有効であること(Lichtigerら; N. Engl. J. Med. 1994; 330; 1841〜5)、そして浣腸によって投与された場合に有用であり得ること(Sandbornら; Am. J. Gastroenterol. 1993; 88; 640〜5)が明らかにされている。しかし、クローン病についての有効性は不明確である。静脈内治療は難治性瘻孔の治療に有用であることが報告されているが、経口での低用量によっては、活動性のクローン病を有している成人および小児においては期待はずれの結果が生じた(例えば、Feaganら; N. Engl. J. Med. 1994; 330; 1846〜51を参照のこと)。経口投与される場合には、シクロスポリンは通常、カプセルに充填された液体として、または油状懸濁液として投与される。
【0014】
ダクチノマイシン(CAS No.50-76-0;N,N’−(2−アミノ−4,6−ジメチル−3−オキソ−3H−フェノキサジン−1,9−ジイルジカルボニル)−ビス[スレオニル−D−バリルプロリル(N−メチルグリシル)(N−メチルバリン)1.5−3.1−ラクトン]は抗腫瘍薬であり、これは、妊娠性絨毛腫瘍および他の固形腫瘍(脳腫瘍、ウィルムス腫瘍、および種々の非上皮性悪性腫瘍を含む)の処置に使用されている。これは免疫抑制剤でもあり、通常は、静脈内に投与される。
【0015】
エイコサペンタ−5,8,11,14,17−エン酸(「EPA」)、ドコサヘキサ−4,7,10,13,16,19−エン酸(「DHA」)、および他のPUFAは、IBDの処置に使用されていることが知られている(例えば、EP−A−0244832、EP−A−0289204、EP−A−0311091、およびWO−A−93/21912を参照のこと)。
【0016】
EP−A−0825858(Buserら;1996年11月21日に公開された)には、有効成分として、遊離酸の形態またはその薬理学的に許容される塩のいずれかとしてPUFAを含む、経口投与用の形態が開示されている。経口投与用の形態は、回腸でPUFAを放出することができる、時間依存性であって、pH依存性ではない放出コーティング材料でコーティングされる。経口投与用の形態は、IBDの処置に使用される。
【0017】
Zerougaら(Anti-Cancer Drugs 2002;13;301〜311)によって、リン脂質のsn−1およびsn−2位置にそれぞれが共有結合させられた2つの抗ガン剤(DHAとメトトレキセート)を含む、親油性ホスファチジルコリン誘導体が合成され、特性決定された。結果は、DHAとメトトレキセートが、インビトロでマウスの白血病細胞の増殖を阻害したこと、ならびに、個々の薬剤として同時に投与された場合、およびホスファチジルコリン部分を介して互いに連結された場合に、DHAとメトトレキセートとの間におそらく相乗作用があることを示した。
【0018】
Ferguson (Proc. Annu. Meet. Am. Assoc. Cancer Res.1995; 36; A1722) によって、ヒトの扁平上皮ガン細胞株および多剤耐性のカルボプラチン耐性変異体に対する、γ−リノレン酸(「GLA」)の細胞傷害作用と化学的調節作用が研究された。結果は、GLAで予め処理された細胞がビンクリスチンおよびカルボプラチンへの暴露に対して、処理されていない細胞よりも感度が高かったことを示した。GLAの濃度に応じて、カルボプラチンの毒性は、ヒト扁平上皮ガン細胞株およびカルボプラチン耐性変異体細胞株のいずれにおいても、50%以上高くなった。加えて、GLAは、40%までビンクリスチンの毒性を高めることが示された。
【0019】
JP-A-63258816 (Imayadoら;1998年10月26日に公開された)には、低い選択的毒性を有している抗ガン組成物(ビンクリスチン、ダウノルビシン、VP−16、およびシスプラチンから選択される)と、高い選択的毒性を有している高度不飽和脂肪酸(例えば、GLA、アラキドン酸、またはEPA)を含む抗ガン組成物が開示されている。この参考文献には、この組成物を、示される抗ガン剤を使用する適用において従来の様式で使用できることが開示されている。この参考文献には、高度不飽和脂肪酸の1つとの抗ガン剤の種々の組み合わせの、0.5wt%エタノール溶液の作用についてのインビトロでの研究が例示されている。脂肪酸は、全て99%の純度を有していた。
【0020】
JP-A-8092129 (Yazawaら、1996年4月9日に公開された)には、免疫抑制剤とEPAおよび/またはDHAを含む、自己免疫疾患によって引き起こされる眼の症状の治療的処置が開示されている。開示されている免疫抑制剤の例としては、デキサメタゾン、シクロスポリンA、ラパマイシン、FK506、ミゾリビン、シクロホスファミド、アザチオプリン、およびメトトレキセートが挙げられる。説明される実施形態においてのみ、シクロスポリンAを投与した2人の患者と、FK506を投与した他の2人の患者に、6%のEPAと25%のDHAを含むマグロ油を含む軟ゼラチンカプセルが投与された。用量は、1日あたり2400mgであり、これは、投与のために3部に分けられた。
【0021】
WO-A-98/09621 (Scottら、1998年3月12日に公開された)には、14から26個の炭素鎖長を有しており、そして分子内にシスまたはトランス立体配置で2個から6個の二重結合を有しているPUFAを使用する処置方法、およびこれらを使用する抗ガン化学療法の副作用を処置および予防する方法が開示されている。好ましいPUFAとしては、EPAおよびDHAが挙げられる。処置が、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、シクロホスファミド、シスプラチン、ドキソルビシン、タキソール、およびビンクリスチンの使用によって生じる副作用の処置に特に適していることが開示されている。PUFAは、抗ガン剤と同時に投与することができ、また、好ましくは、抗ガン剤自体での治療前および治療中の両方に投与される。PUFAの用量は、1日あたり1mgから100gまでであり得、そしてPUFAは、例えば、カプセルおよび錠剤の形態で、経口を含む任意の適切な様式で投与され得る。
【0022】
メトトレキセートが使用されたWO−A−98/09621に例示されている唯一の実施形態においては、乳ガンの女性が、2g/日の経口でのリチウムGLAでの継続的処置とともに、リチウム塩として30gのGLAの静脈内への累積用量の投与後に、「CMF」法(シクロホスファミド、メトトレキセート、および5−フルオロウラシル)で1週間処置された。抗ガン治療による副作用は減少した。
【0023】
GI管の症状が処置されたWO−A−98/09621に例示されている唯一の実施形態においては、転移性結腸ガンの男性が、5−フルオロウラシルで処置された。化学療法の前の2週間と、化学療法の治療期間全体の間、男性には、3g/日の純粋なEPAのトリグリセリドも投与された。ここでもまた、化学療法による副作用は減少した。
【0024】
Suzukiら (J. Pharm. Sci. 1998; 87(10); 1196〜202) は、脂肪酸乳濁物を使用した、ラットでのペプチドホルモンであるインシュリンの結腸および直腸での吸収の増大を開示している。乳濁物は、インサイチュでラットの腸係蹄に直接投与された。EPAおよびDHAを含む、飽和、単不飽和、および多価不飽和脂肪酸が試験され、結果は、脂肪酸の不飽和のレベルと一致して、インシュリンの吸収のレベルが増大したことを示していた。
【0025】
Barichelloら (Int. J. Pharm. 1999; 183(2); 125〜32) は、不飽和脂肪酸を含むPluronic F−127ゲル処方物を使用した、ラットへのインシュリンの直腸投与を開示している。
【0026】
WO−A−03/92671(Krishnan;2003年11月13日に公開された)には、血管形成を阻害するための組成物が開示されている。この組成物には、アルキル置換脂肪酸が含まれ、これは状況に応じて、シクロスポリンのような免疫抑制剤を有している。この参考文献には、種々のガン、クローン病、および潰瘍性大腸炎を含む、血管形成に関係している多くの症状が開示されている。この参考文献には、アルキル置換された脂肪酸およびシクロスポリンを使用した、ヒト臍帯静脈内皮細胞(「HUVEC」)の増殖の阻害についてのインビボ研究が記載されている。
【特許文献1】EP−A−0825858
【特許文献2】JP−A−63258816
【特許文献3】JP−A−8092129
【特許文献4】WO−A−98/09621
【特許文献5】WO−A−97/44063
【特許文献6】WO−A−03/92671
【特許文献7】EP−A−0297842
【非特許文献1】Zerougaら(Anti-Cancer Drugs 2002; 13; 301〜311)
【非特許文献2】Ferguson (Proc. Annu. Meet. Am. Assoc. Cancer Res.1995; 36; A1722)
【非特許文献3】Suzukiら(J. Pharm. Sci.1998; 87(10); 1196〜202)
【非特許文献4】Barichelloら(Int. J. Pharm. 1999; 183(2); 125〜32)
【発明の開示】
【0027】
急性または慢性の不適切な免疫応答を含む症状(例えば、IBDおよび腸ガン)についての改良された処置が必要とされている。したがって、本発明の目的は、このような症状についての改良された処置を提供することである。
【0028】
本発明の好ましい実施形態の目的は、免疫抑制剤および抗腫瘍薬(特に、メトトレキセートまたはシクロスポリン)の経口による生体利用性を改善することである。
【0029】
本発明の好ましい実施形態の目的はまた、非経口的投与経路に通常付随する全身的な副作用(吐き気および嘔吐を含む)を軽減する、免疫抑制剤および抗腫瘍薬の投与方法を提供することでもある。
【0030】
第1の態様にしたがうと、急性または慢性の不適切な免疫応答を含む症状(特に、腸の症状)の処置のための、免疫抑制剤および抗腫瘍薬(上記薬剤は、少なくとも1つのアミノ酸残基を有している)、またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の少なくとも1つを含む医薬品の製造における、PUFA、またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の使用が提供される。
【0031】
本発明の第1の態様によってはまた、上記症状の処置のための医薬品の製造における、多価不飽和脂肪酸(「PUFA」)、またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体と、免疫抑制剤および抗腫瘍薬(上記薬剤は、少なくとも1つのアミノ酸残基を有している)またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の少なくとも1つの使用もまた提供される。
【0032】
本発明の第1の態様によっては、さらに、上記症状の処置のための、PUFAまたはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体を含む医薬品の製造における、免疫抑制剤および抗腫瘍薬(上記薬剤は、少なくとも1つのアミノ酸残基を有している)、またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の少なくとも1つの使用が提供される。
【0033】
これらの症状の処置は、局所的または全身的作用のための、腸粘膜への有効成分(単数または複数)の局所適用によって提供される。処置される症状が腸の症状である場合には、局所的に適用される有効成分は局所作用を有する。
【0034】
「免疫抑制剤」という表現は、人体または動物の体内で免疫応答を抑制する作用を有する薬理学的に許容される化合物を意味するように意図される。「抗腫瘍薬」という表現は、新生物細胞に対して細胞毒性がある薬理学的に許容される化合物を意味するように意図される。これらの表現は、当業者に容易に明らかであろう。
【0035】
PUFAとともに免疫抑制剤および抗腫瘍薬の少なくとも1つを投与することの1つの利点は、これらの薬剤(単数または複数)の経口による生体利用性が通常は増大し、それによって、他の方法で非経口的に投与されるよりも、急性または慢性の不適切な免疫応答を含む症状を処置するために投与される薬剤(単数または複数)の用量を減少させることができることである。したがって、メトトレキセートまたはシクロスポリンのような薬剤(単数または複数)についての望ましくない皮下および静脈内用量は回避され、これによって、薬剤(単数または複数)の高用量での経口によるまたは非経口的使用に伴う望ましくない副作用の減少または排除が生じる。
【0036】
いずれの特定の理論にも束縛されることは望ましくないが、本発明者らは、薬剤(単数または複数)の取り込みの増大は、薬理学的作用ではなく、薬剤(単数または複数)とのPUFAの相互作用起因する物理的作用によって生じると考えた。薬剤(単数または複数)は、腸粘膜の細胞に吸収されるPUFAの層の中に「パック」することができると考えられる。不飽和のレベルが比較的低い脂肪酸と比較した場合のPUFAのより高い流動性は、したがって、薬剤(単数または複数)について改善された送達を導く場合がある。
【0037】
好ましい実施形態においては、PUFAおよび薬剤(単数または複数)の少なくともいくらかの胃よりも後ろでの放出が存在する。通常、全てまたは実質的に全ての放出は、胃よりも後ろである。腸内での有効成分(単数または複数)の放出位置を標的化させることができ、これは、処置される症状に応じて様々である。
【0038】
症状(例えば、慢性的な炎症または腫瘍疾患)が全身的に処置される場合には、放出は、好ましくは、空腸の中で最初に生じ、そして回腸の大部分に沿って持続する。有効成分(単数または複数)の生体利用性の増大は、腸のこの部分に沿って観察される。通常は、これらの実施形態においては、放出は、回腸終端部よりも手前で完了する。同様の放出プロフィールは、小腸の炎症症状(例えば、小腸のクローン病およびベーチェット症候群)ならびに小腸の腫瘍のような、腸の症状の局所的な処置に使用される場合がある。
【0039】
他の実施形態においては、放出は、小腸の中で始まり、大腸の下の方まで続く。例えば、有効成分(単数または複数)の回腸−結腸放出は、結腸の症状(例えば、結腸ガンおよび結腸直腸ガンの炎症症状(例えば、潰瘍性大腸炎))の局所的な処置に好ましい。
【0040】
薬剤(単数または複数)は、腸粘膜と接触してPUFAと相互作用すると考えられる。PUFAは、腸壁の細胞の中への薬剤(単数または複数)の吸収を助け、これによって、粘膜と腸壁の免疫細胞および腫瘍細胞の中への薬剤の局所的な細胞性の取り込みの増大を生じる。薬剤(単数または複数)の局所投与は、通常、PUFAと、腸壁の免疫細胞および/または腫瘍細胞で利用することができる薬剤(単数または複数)(本発明者らは、これが、複数の成分の作用の有意な増強を生じると考えている)の両方が高濃度であるとの条件で、達成される。
【0041】
PUFAは、抗腫瘍活性と免疫抑制活性を有していることが知られている(上記を参照のこと)。したがって、本発明のさらなる利点は、PUFAとの薬剤(単数または複数)の同時投与によって、薬剤(単数または複数)の抗腫瘍作用および/または免疫抑制作用の相乗作用による増強が生じることである。
【0042】
適切なPUFAとしては、Ω−3、Ω−6、およびΩ−9 PUFAが挙げられる。しかし、いずれのPUFAが使用されるとしても、これらは非置換であることが好ましい。適切な例としては、EPA、DHA、およびGLAが挙げられる。少なくとも1つのPUFAがEPAまたはDHAであることが好ましい。好ましい実施形態においては、EPAとDHAを含むPUFAの混合物が使用される。このような実施形態においては、混合物中のEPAとDNAの合計の量は、好ましくは、混合物の少なくとも約60wt%である。混合物は、濃縮された魚油製品の形態であり得る。好ましい実施形態においては、混合物には、約50から約60wt%まで、好ましくは、55wt%のEPAと、約15から約25wt%、好ましくは、20wt%のDHAが含まれる。
【0043】
少なくとも1つのPUFAが遊離酸の形態であることが好ましい。あるいは、少なくとも1つのPUFAは、リチウム塩またはナトリウム塩のような薬理学的に許容される塩の形態、エチルエステルまたはトリグリセリドエステルのような薬理学的に許容されるエステルの形態、あるいは、薬理学的に許容されるn−3リン脂質の形態である場合もある。
【0044】
免疫抑制剤または抗腫瘍薬には、好ましくは、1個から15個の間のアミノ酸残基が含まれる。適切なアミノ酸に由来する免疫抑制剤としては、メトトレキセート、ダクチノマイシン、シクロスポリン、およびモノクローナル抗体(例えば、インフリキシマブ、ナタリツマブ、ダクリツマブ、またはムロモナブ)が挙げられる。適切なアミノ酸由来の抗腫瘍薬としては、メトトレキセートとダクチノマイシンが挙げられる。
【0045】
他の非アミノ酸由来薬剤を、本発明と組み合わせて使用することもできる。このような薬剤は、複雑な化学構造(例えば、アルカロイド)を有している場合があり、また、真菌もしくは細菌起源のものである場合もある。他の非アミノ酸由来免疫抑制剤の例としては、6−メルカプトプリン(「6−MP」)、シクロホスファミド、ミコフェノール酸塩、プレドニソロン、シロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、FK506、ミゾリビン、アゾチオプリン、およびタクロリムスが挙げられる。他の非アミノ酸由来抗腫瘍薬の例としては、フルオロウラシル、ブレオマイシン、エトポシド、タキソール、ビンクリスチン、ドキソルビシン、シスプラチン、ダウノルビシン、およびVP−16が挙げられる。
【0046】
医薬品には、上記PUFAまたはその上記塩もしくは誘導体と、上記免疫抑制剤および上記抗腫瘍薬またはその上記塩もしくは誘導体の少なくとも1つを含む、少なくとも1つの経口投与形態が含まれ得る。このような実施形態においては、免疫抑制剤または抗腫瘍薬のいずれかが、PUFAと同時に投与される。このような実施形態においては、PUFAは、他の薬剤(単数または複数)とは独立している、すなわち、他の薬剤と結合させられていない。混合物は、基本的に混合物から構成されるか、またはさらに、薬理学的に許容される賦形剤が含まれる場合もある。
【0047】
あるいは、医薬品には、上記PUFAまたはその上記塩もしくは誘導体を含む少なくとも1つの第1の経口投与形態と、上記免疫抑制剤および上記抗腫瘍薬、またはその上記塩もしくは誘導体の少なくとも1つを含む、少なくとも1つの第2の経口投与形態が含まれる場合がある。このような実施形態においては、免疫抑制剤または抗腫瘍薬のいずれかが、PUFAと同時に投与されるか、または連続して投与され得る。第1または第2の経口投与形態にはまた、薬理学的に許容される賦形剤がさらに含まれる場合もある。
【0048】
処置される適切な症状は、慢性の炎症性疾患であり得る。例えば、慢性の炎症性疾患は、免疫応答の過度な抑制、そして一つには、免疫応答の制御の障害によって生じ得る。このような症状の例としては、IBD(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)、関節リウマチ、ベーチェット症候群、および乾癬が挙げられる。
【0049】
処置される別の適切な症状は、腫瘍疾患であり得る。例えば、腫瘍疾患は、免疫認識および異常な細胞に対する応答を欠いていることによって生じ得る。このような症状の例としては、腸ガンおよび前立腺ガンが挙げられる。
【0050】
本発明は、腸の症状の局所的な処置において特定の用途を有している。
【0051】
処置される腸の症状はIBDであり得、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎であり得る。このような実施形態においては、使用される薬剤は、通常は、メトトレキセート、ダクチノマイシン、シクロスポリン、またはモノクローナル抗体のような免疫抑制剤である。
【0052】
処置される腸の症状は腸ガンであり得る。このような実施形態においては、抗腫瘍薬は、メトトレキセートまたはダクチノマイシンであり得る。本発明は、結腸および/または直腸のガンの処置において特定の用途を有する。
【0053】
本発明の第1の態様によってはまた、急性または慢性の不適切な免疫応答を含む症状の処置のための医薬品の中の、免疫抑制剤および抗腫瘍薬(上記薬剤(単数または複数)は、少なくとも1つのアミノ酸残基を有している)の少なくとも1つの全身的な生体利用性および腸の少なくとも一部での局所的な生体利用性を増大させるための、PUFAまたはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の使用も提供される。
【0054】
本発明の第2の態様にしたがうと、急性または慢性の不適切な免疫応答を含む症状の処置方法が提供される。この方法には、PUFAまたはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体と、免疫抑制剤および抗腫瘍薬(上記薬剤は、少なくとも1つのアミノ酸残基を有している)またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の少なくとも1つを同時にまたは連続して投与する工程が含まれる。薬剤は、通常は、問題となっている具体的な症状を処置するために必要とされる治療有効量で投与される。PUFA誘導体が使用される実施形態においては、誘導体は、通常はエステルまたはn−3リン脂質である。処置は、上記の特徴のいずれかを有し得る。
【0055】
上記のように、PUFAおよび薬剤(単数または複数)は、同じ経口投与形態で、また、別の経口投与形態で併用することができる。したがって、「経口投与形態」という表現は、PUFAと薬剤(単数または複数)が同じ経口投与形態で同時投与される実施形態、およびPUFAと薬剤(単数または複数)が別の経口投与形態で投与される実施形態を含むように意図される。適切な形態としては、カプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセル)および錠剤が挙げられる。ゼラチンカプセルを使用する実施形態においては、ゼラチンは、タイプAゼラチンまたはタイプBゼラチンであり得るが、タイプAゼラチンが好ましい。ゼラチンの原料であるコラーゲンの供給源は、ブタ、ウシ、または魚であり得る。他の供給源のゼラチンを使用するカプセルと比較して、カプセル壁とのPUFAの望ましくない相互作用のレベルが低下し、それによって、処方物の安定性と有効保存期間が改善されるとの理由から、遊離酸の形態のPUFAが使用される実施形態においては特に、ブタのゼラチンが好ましい。
【0056】
本発明の第3の態様にしたがうと、PUFAまたはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体と、免疫抑制剤および抗腫瘍薬(上記薬剤は、少なくとも1つのアミノ酸を有している)またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の少なくとも1つを含む経口投与形態が提供される。好ましくは、経口投与形態は、胃を通過してしまうまでPUFAと薬剤(単数または複数)の放出を遅らせるための遅延放出型コーティング(例えば、腸溶コーティング)でコーティングされる。
【0057】
PUFAは、これらの薬剤(単数または複数)とは異なる経口投与形態で同時投与することができる。PUFAの個別の経口投与に適している形態は、EP−A−0825858(上記参照、その開示は引用により本明細書中に組み入れられる)に開示されている。
【0058】
本発明の第4の実施形態にしたがうと、薬剤(単数または複数)の個別の経口投与に適している形態が提供される。ここでは、経口投与形態には、免疫抑制剤および抗腫瘍薬(上記薬剤は、少なくとも1つのアミノ酸残基を有している)またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の少なくとも1つが含まれる。この場合、経口投与形態は、遅延放出型コーティング(例えば、腸溶コーティング)でコーティングされる。このような経口投与形態は、EP−A−0825858(その開示は引用により本明細書中に組み入れられる)に開示されているようなPUFAを含む個別の経口投与形態と組み合わせて使用することができる。
【0059】
腸の症状の局所的な処置に使用される経口投与形態(単数または複数)は、腸の患部に到達するまでPUFAと薬剤(単数または複数)の放出を遅らせることが好ましい。このような実施形態においては、経口投与形態は、腸粘膜への有効成分(単数または複数)の局所投与のための有効成分または個々の有効成分を胃よりも後ろで放出することができるコーティングでコーティングされる場合がある。適切なコーティングは、pH依存性様式またはpH非依存性の様式のいずれかで、薬剤(単数または複数)の最初の放出を遅らせる。
【0060】
経口投与形態(単数または複数)は、pH依存性放出コーティング物質でコーティングすることができる。腸のpHは、十二指腸から結腸に向かって約6から約7.5にまで徐々に増大する。種々のポリアクリル酸系コーティング物質が開発されており、これらは、腸の様々なpHで溶解して、腸に沿った種々の場所で、コーティングされた投与形態から有効成分(単数または複数)を放出する。適切な腸溶コーティング物質としては、Eudragit (登録商標) L、 Eudragit (登録商標) S、およびEudragit (登録商標) F (Rohm Pharma Polymers)が挙げられる。
【0061】
コーティングによって、pH非依存性様式で薬剤(単数または複数)の最初の放出を遅らせることができる。例えば、好ましい実施形態においては、コーティングによって、pH依存性様式ではなく時間依存性様式で、薬剤(単数または複数)の最初の放出が遅らせられる。経口投与形態(単数または複数)は、pH依存性放出のためのコーティング物質ではなく、時間依存性放出のためのコーティング物質でコーティングすることができる。このような実施形態においては、放出の位置は、このようなコーティングの厚みによって変化させることができる。例えば、コーティングの厚みが大きくなればなるほど、最初の放出の位置は、腸のさらに後ろのほうに移動する。したがって、このような物質の比較的薄いコーティングによって、小腸(例えば、回腸)での最初の放出を提供することができ、一方、比較的厚いコーティングによっては、結腸の回腸終端部での最初の放出を提供することができる。
【0062】
いくつかの実施形態においては、コーティングの厚みは、平均で約30分から約60分間、有効成分(単数または複数)の最初の放出を遅らせるために十分な厚みであり得る。このような実施形態は、薬剤(単数または複数)の回腸での放出に適している。他の実施形態においては、コーティングの厚みは、平均で約60分から約120分間、好ましくは、平均で約90分から約120分間、有効成分(単数または複数)の最初の放出を遅らせるために十分な厚みであり得る。このような実施形態は、回腸終端部または結腸の中またはその付近での有効成分(単数または複数)の最初の放出に適している。
【0063】
pH依存性放出のためのコーティング物質ではない、時間依存性放出のためのコーティング物質は、ポリ(エチルアクリレート−メチルメタクリレート)物質のような中性のポリアクリル酸系物質であり得る。適切な物質の例としてはEudragit NE 30-D (Rohm Pharma GmbH)が挙げられ、これは、約800,000の平均分子量を有しており、通常は、徐放マトリックスを形成するために使用される。
【0064】
別の適切なpH非依存性放出のためのコーティングは、細菌酵素の作用によって結腸で生分解されるコーティングである。適切なコーティングの例は、エチルセルロースおよびアミロースから作成されるコーティングであり、これはpH非依存性であって、結腸の細菌の酵素の作用によって分解されて、結腸の中で薬剤(単数または複数)を放出する。同じ方法で作用する他の高分子もまた適していると思われる。
【0065】
有効成分または個々の有効成分の放出は、好ましくは、腸の少なくとも一部に沿って持続する。当該分野で公知の有効成分の徐放に適している任意の方法を使用することができる。しかし、軟ゼラチンカプセルがpH依存性ではなく時間依存性放出のためのコーティング物質でコーティングされる場合は、特に、Eudragit NE 30 Dが使用されると、有効成分(単数または複数)の放出が腸の部分に沿って微小な液滴の様式で生じる。このような徐放プロフィールは、本発明者らによっては特有であると考えられている。
【0066】
いずれの特定の理論によっても束縛されることは望ましくないが、本発明者らは、腸液がコーティングを通過できるように、コーティングが膨張し、穴が開くと考えている。液体がゼラチンと接触すると、カプセルが壁の完全性が失われるほどに膨張し、コーティングの中の穴を通じて微小な液滴として、内容物がカプセルから脱出できるようになる。カプセルは腸に沿って移動し続け、それによって、腸の部分に沿ってカプセルの内容物の放出が持続する。
【0067】
本発明の第3または第4の態様にしたがう経口投与形態は、通常、診断または治療による人体または動物の体の処置での使用に適している。
【0068】
好ましい実施形態においては、医薬品には2つの経口投与形態が含まれる。第1の経口投与形態は、約55wt%のEPAと約20wt%のDHAを、いずれも遊離酸の形態で含む薬学的組成物が400mgまたは800mgのいずれか含まれる、軟ゼラチンカプセルである。このカプセルは、タイプAブタゼラチンから作成され、そしてEudragit NE 30 Dでコーティングされる。第2の経口投与形態は、例えば、2.5mgのメトトレキセート錠剤または25mgのシクロスポリン軟ゼラチンカプセルであり得る。第2の経口投与形態は、Eudragit NE 30 Dでコーティングされることが好ましい。
【0069】
本発明の第5の態様にしたがうと、PUFAまたはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体を含む少なくとも1つの第1の経口投与形態と、免疫抑制剤および抗腫瘍薬(上記薬剤は、少なくとも1つのアミノ酸残基を有している)またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の少なくとも1つを含む少なくとも1つの第2の経口投与形態を含む薬学的製品が提供される。好ましくは、第1の経口投与形態および第2の経口投与形態の少なくとも1つは、上記の様式のいずれかでコーティングされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
以下は、例としての、本発明の現在における好ましい実施形態についての記載である。
【実施例】
【0071】
2つの経口投与形態
第1の経口投与形態(PUFA)
透明な軟ゼラチンカプセルに、それぞれ、少なくとも60重量%のDHAおよびEPAを含む1000mgの魚油濃縮物(Incromega 3F60; Croda Universal Ltd, UK)を充填した。充填したゼラチンカプセルを、被膜コーティング組成物(下記を参照のこと)を25℃で0.8バールの圧力を使用して35ml/分で噴霧し、そして25℃で少なくとも30分間風乾させることによってEudragit (登録商標) NE 30-Dで被膜コーティングして、pH5.5で30分から60分間の抵抗性を持たせた。
【0072】
被膜コーティング組成物(50,000個のカプセルについて)は、シリコン消泡エマルジョン(0.36mg)、酸化褐鉄(brown iron oxide)(E 172;3.00mg)、二酸化チタン(2.35mg)、およびタルク(10mg)を相次いで水(75mg)にゆっくりと添加し、1から2時間攪拌して非常に細かい分散液とすることによって調製した。約800,000の平均分子量を有しているポリ(エチル−アクリレート−メチルメタクリレート)(Eudragit(登録商標)NE 30D;60mg)の30%の水分散液を、少量の水の中のポリソルベート 80(MO 55 F;0.2mg)に添加し、そして得られた混合物を攪拌した。シリコン消泡エマルジョン(2または3滴)を添加して生じた泡を壊し、そして上記の分散液をゆっくりと添加した。容器を水(25mg)で洗浄し、分散液を30分間攪拌し、その後、濾過した(150μm)。
【0073】
第2の経口投与形態(メトトレキセート)
少なくとも1つの錠剤は、2.5mgのナトリウムメトトレキセートと薬理学的に許容される賦形剤を含む。
【0074】
本発明は、好ましい実施形態に関する上記の詳細には限定されず、多数の変更およびバリエーションを、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神または範囲から逸脱することなく行うことができることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価不飽和脂肪酸(「PUFA」)またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の、急性または慢性の不適切な免疫応答を含む症状の処置のための、免疫抑制剤および抗腫瘍薬またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の少なくとも1つを含む医薬品の製造における使用であって、前記薬剤が少なくとも1つのアミノ酸残基を有している、使用。
【請求項2】
少なくとも1つのPUFAがエイコサペンタ−5,8,11,14,17−エン酸(「EPA」)である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
少なくとも1つのPUFAがドコサヘキサ−4,7,10,13,16,19−エン酸(「DHA」)である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
少なくとも1つのPUFAが遊離酸の形態である、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記免疫抑制剤または前記抗腫瘍薬が1個から15個の間のアミノ酸残基を有している、請求項1ないし4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記抗腫瘍薬が、メトトレキセートおよびダクチノマイシンから選択される、請求項1ないし5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記免疫抑制剤が、シクロスポリン;メトトレキセート;ダクチノマイシン;およびモノクローナル抗体から選択される、請求項1ないし4のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記医薬品に、前記PUFAまたはその前記塩もしくは誘導体と、前記免疫抑制剤および前記抗腫瘍薬またはその前記塩もしくは誘導体の少なくとも1つの混合物を含む少なくとも1つの経口投与形態が含まれる、請求項1ないし7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記医薬品に、同時投与または連続投与のための、前記PUFAまたはその前記塩もしくは誘導体を含む少なくとも1つの第1の経口投与形態と、前記免疫抑制剤および前記抗腫瘍薬またはその前記塩もしくは誘導体の少なくとも1つを含む少なくとも1つの第2の経口投与形態が含まれる、請求項1ないし7のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記症状が慢性の炎症性疾患である、請求項1ないし9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記症状が、炎症性腸疾患(「IBD」);クローン病;潰瘍性大腸炎;関節リウマチ;ベーチェット症候群;および乾癬から選択される、請求項1ないし10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記症状が腫瘍疾患である、請求項1ないし9のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
前記症状が、腸ガンおよび前立腺ガンから選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
急性または慢性の不適切な免疫応答を含む症状の処置の方法であって、PUFAまたはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体と、免疫抑制剤および抗腫瘍薬またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の少なくとも1つを同時に、または連続して投与する工程を含み、前記薬剤が少なくとも1つのアミノ酸残基を有している、方法。
【請求項15】
PUFAまたはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体と、免疫抑制剤および抗腫瘍薬またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の少なくとも1つを含む経口投与形態であって、前記薬剤が少なくとも1つのアミノ酸残基を有している、経口投与形態。
【請求項16】
前記経口投与形態が、胃を通過してしまうまで前記有効成分の放出を遅らせるコーティング物質でコーティングされる、請求項15に記載の経口投与形態。
【請求項17】
免疫抑制剤および抗腫瘍薬またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の少なくとも1つを含む経口投与形態であって、前記薬剤が少なくとも1つのアミノ酸残基を有しており、前記経口投与形態が、胃を通過してしまうまで前記有効成分の放出を遅らせる、pH依存性ではなく時間依存性放出のためのコーティング物質でコーティングされる、経口投与形態。
【請求項18】
診断または治療による人体または動物の体の処置での使用のための、請求項15ないし17のいずれかに記載の経口投与形態。
【請求項19】
PUFAまたはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体を含む少なくとも1つの第1の経口投与形態と、免疫抑制剤および抗腫瘍薬またはその薬理学的に許容される塩もしくは誘導体の少なくとも1つを含む少なくとも1つの第2の経口投与形態を含む、薬学的製品。
【請求項20】
第1の経口投与形態と第2の経口投与形態の少なくとも1つが、胃を通過してしまうまで前記有効成分の放出を遅らせるコーティング物質でコーティングされる、請求項19に記載の薬学的製品。
【請求項21】
添付の実施例に関して本明細書中で前記に実質的に記載されているような、請求項1に記載の使用。
【請求項22】
添付の実施例に関して本明細書中で前記に実質的に記載されているような、請求項15または請求項17に記載の経口投与形態。
【請求項23】
添付の実施例に関して本明細書中で前記に実質的に記載されているような、請求項19に記載の薬学的製品。

【公表番号】特表2008−502630(P2008−502630A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515865(P2007−515865)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006412
【国際公開番号】WO2005/123060
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(501279497)ティロッツ・ファルマ・アクチエンゲゼルシャフト (4)
【氏名又は名称原語表記】TILLOTTS PHARMA AG
【Fターム(参考)】