説明

薬液容器、薬液保冷庫および培養処理装置

【課題】 内部の薬液を外部にこぼすことなく開口部を開閉でき、他の薬液への混入等を不都合の発生を防止する。
【解決手段】 薬液Aを貯留する容器本体2と、該容器本体2に、薬液Aを吸引するためにピペットを挿入可能に設けられた開口部3を開閉する開閉機構4とを備え、該開閉機構4が、開口部3の内面に設けた収容部6に、開口部3の軸線に直交する軸線回りに回転可能に収容され、角度位置に応じて開口部3を開閉する弁体7と、該弁体7に収容部6の側壁を貫通して接続される操作部9とを備える薬液容器1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液容器、薬液保冷庫および培養処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置等に用いられる試薬等を供給する薬液容器および薬液保冷庫としては、例えば、特許文献1〜特許文献3に開示された構造のものが知られている。
特許文献1の薬液容器は、水平な試薬テーブル上に複数載置され、所定の温度に維持するための薬液保冷庫内に収容されている。この薬液容器には、内部に貯留されている薬液をピペットにより吸引するために開口部が上方に向けて開口しており、保冷庫の天井面に設けた封止体開閉手段の作動によって、球状の封止体が開口部に乗せられたり、吸引退避されたりすることで、開口部が開閉されるように構成されている。
【0003】
また、特許文献2には、開口部に被せたキャップを上下方向にワンタッチで開閉する開閉機構を備えた薬液容器が開示されている。
また、特許文献3には、回転駆動される円板状のテーブル上に複数の薬液容器を配列してなる薬液保冷庫であって、薬液容器を収納する内部空間に冷却媒体を循環させる薬液保冷庫が開示されている。
【特許文献1】特開平7−20132号公報
【特許文献2】特開2004−177255号公報
【特許文献3】特開平5−280851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示された薬液容器および薬液保冷庫においては、以下の問題点がある。
すなわち、これらの特許文献1、2に開示されている薬液容器は、いずれも、容器本体の開口部に対して蓋体を上下方向に取り外すことで開口部を開放し、蓋体を上方から被せることで開口部を密封する構造のものであるため、内部の薬液が蓋体の内側に付着していた場合に、開かれた蓋体から付着していた薬液が外部にこぼれて薬液保冷庫内を汚染してしまう不都合が考えられる。
【0005】
また、薬液保冷庫外においても、例えば、搬送中において容器本体が転倒すると、開口部から蓋体が外れて、薬液がこぼれてしまう不都合が考えられる。
また、特許文献3の薬液保冷庫においては、冷却媒体を循環させているため、薬液保冷庫内にこぼれた薬液が乾燥すると、循環している冷却媒体によって巻き上げられ、開口部が開放されている状態の薬液容器内に混入してしまう不都合がある。
【0006】
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、内部の薬液を外部にこぼすことなく開口部を開閉でき、他の薬液への混入等を不都合の発生を防止することができる薬液容器、薬液保冷庫および培養処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明は、薬液を貯留する容器本体と、該容器本体に、薬液を吸引するためにピペットを挿入可能に設けられた開口部を開閉する開閉機構とを備え、該開閉機構が、開口部の内面に設けた収容部に、開口部の軸線に直交する軸線回りに回転可能に収容され、角度位置に応じて開口部を開閉する弁体と、該弁体に収容部の側壁を貫通して接続される操作部とを備える薬液容器を提供する。
【0008】
本発明に係る薬液容器によれば、容器本体の内部に貯留されている薬液をピペットによって外部に吸引する場合には、操作部を操作して容器本体の収容部内の弁体を回転させる。弁体は開口部の軸線に直交する軸線回りに回転可能に支持されれているので、所定の角度位置まで回転させることにより、開口部を開放することができる。開口部が開放された状態で外部からピペットを挿入して内部の薬液を吸引することができる。
【0009】
一方、開口部を閉鎖するには、操作部の操作により収容部内の回転体を上記とは逆方向に所定の角度位置まで回転させることにより、簡易に開口部を閉鎖することができる。本発明によれば、容器本体の開口部を開閉する際に、蓋体を容器本体の収容部内に保持した状態に維持でき、したがって、あけた蓋体に付着していた薬液が外部にこぼれる不都合を防止することができる。また、収容部内において蓋体を回転させる方式であるため、蓋体が開口部を閉鎖する角度位置に配されている状態で、容器本体が転倒しても内部の薬液が漏れることを防止できる。したがって、搬送時等における取扱性も向上することができる。
【0010】
上記発明においては、前記弁体が球体状に形成され、回転軸線に直交する中心軸に沿って穿孔された貫通孔が設けられていることとしてもよい。
このように構成することにより、貫通孔が開口部の軸線に沿うような角度位置まで弁体を回転させることにより、開口部が貫通孔によって開放される。これにより、外部から貫通孔内にピペットを挿入して容器本体の薬液を吸引することが可能となる。また、弁体を90°回転させることで、貫通孔が開口部から見えないように配置することが可能となり、これにより、容器本体の開口部が密封されることになる。したがって、開閉による液だれを防止しつつ、簡易かつ確実に開口部を開閉することが可能となる。
【0011】
また、上記発明においては、前記弁体が円柱状に形成され、半径方向に沿って穿孔された貫通孔が設けられていることとしてもよい。このようにすることで、弁体が球体の場合と同様に、開閉による液だれを防止しつつ、簡易かつ確実に開口部を開閉することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記弁体が、前記開口部の口径より薄い厚さの円板状に形成されていることとしてもよい。
このように構成することで、開口部を塞ぐ角度位置と、弁体の表面を開口部の軸線に沿うように配置して開口部に隙間を形成する角度位置との間で円板状の弁体を回転させることにより、開口部を容易に開閉することができる。弁体と収容部内壁との間に形成された隙間にピペットを差し込んで容器本体の内部に貯留されている薬液を簡易に吸引することが可能となる。
【0013】
また、本発明は、上記いずれかの薬液容器を複数収容し、所定の温度に維持する薬液保冷庫であって、複数の薬液容器を周方向に並べて載置し、周方向に移動させることで、いずれかの薬液容器の開口部をピペットによる吸引位置に選択的に配置するターンテーブルと、該ターンテーブルにより吸引位置に配置された薬液容器の操作部に係合して、開閉機構を作動させる駆動装置とを備える薬液保冷庫を提供する。
【0014】
本発明に係る薬液保冷庫によれば、薬液を貯留した複数の薬液容器を収容し、薬液を所定の温度に維持することができる。一の薬液容器に貯留した薬液を吸引したい場合には、ターンテーブルを回転させて、その薬液容器を吸引位置に配置する。このとき、薬液容器の操作部には駆動装置が係合するので、駆動装置の作動により操作部が操作され、弁体が収容部内において回転させられる。これにより、容器本体の開口部が開放されるので、吸引位置の上方に配置されているピペットを加工させて容器本体の開口部に差し込み、容器本体内部に貯留している薬液を吸引することができる。
【0015】
また、薬液の吸引が終了した後には、再度駆動装置を作動させて、操作部を操作し、弁体を開口部の閉鎖位置まで回転させることにより、容器本体を密封することができる。そして、他の薬液容器内の薬液を吸引したいときには、ターンテーブルを回転させ、吸引したい薬液を貯留している薬液容器を吸引位置に配置することで、操作部を駆動装置に係合させ、容器本体の開口部を開閉させることが可能となる。したがって、単一の駆動装置により、複数の薬液容器を選択的に開閉することができ、簡易な構成の薬液保冷庫を提供することができる。
【0016】
上記発明においては、内部の薬液容器が配置されている空間に下降気流を生じさせる下降気流発生装置を備えることが好ましい。下降気流発生装置の作動により、薬液容器が配置されている空間に下降気流が発生されるので、薬液保冷庫内に浮遊する塵埃等が、誤って、開放されている薬液容器の開口部から容器本体の内部に混入してしまうことを防止することができる。
【0017】
また、本発明は、上記いずれかの薬液保冷庫と、該薬液保冷庫内に配置された薬液容器からの薬液の吸引位置と、薬液保冷庫外部に配置され、培養される検体に対して薬液の分注を行う分注位置との間でピペットを移動させる移動機構とを備える培養処理装置を提供する。
本発明によれば、薬液保冷庫内に収容されている薬液容器から薬液を吸引するときには、薬液保冷庫のターンテーブルが作動させられて薬液容器が吸引位置に配置されるとともに、駆動装置の作動により容器本体の開口部が開かれる。そして、移動機構の作動によりピペットが薬液容器内に挿入されることにより吸引位置に配置される。ピペットにより薬液を吸引した後には、移動機構を作動させてピペットを薬液保冷庫外部の分注位置まで移動させ、分注することができる。一方、薬液保冷庫内においては、駆動装置の作動により容器本体の開口部が閉鎖される。これにより、薬液保冷庫における液だれが防止され、塵埃の発生を防止しつつ薬液の分注を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、内部に貯留している薬液が蓋体の開閉によって外部にこぼれる不都合をより確実に防止し、かつ、振動や転倒によっても薬液を漏洩させることがなく、しかも、簡易に開閉することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る薬液容器、薬液保冷庫および培養処理装置について、図1〜図6を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る薬液容器1は、図1〜図3に示されるように、薬液Aを貯留する容器本体2と、該容器本体2に設けられた開口部3を開閉する開閉機構4とを備えている。
【0020】
前記開口部3は、容器本体2の上部に配置され、上方に向かって延びる略円筒状の筒状部5に、容器本体2の内外を連通するように形成されている。筒状部5にはその長さ方向の途中位置に、図2および図3に示されるように、全周にわたって球面状の溝からなる収容部6が形成され、該収容部6には、該収容部6の内面に密着する球体状の弁体7が収容されている。
【0021】
収容部6の側壁には半径方向に貫通する貫通孔8が設けられ、該貫通孔8を貫通して操作ロッド(操作部)9が、図1に矢印Bに示されるように、長手軸線回りに回転可能に挿入されている。操作ロッド9は、その一端を収容部6に収容されている弁体7に固定されている。これにより、薬液容器1の外部において操作ロッド9を長手軸線回りに回転させることで、収容部6内の弁体7を所望の角度位置に回転させることができるようになっている。また、前記操作ロッド9の先端は、例えば、図2に示されるように、長手軸方向に沿う2つの平行な平面部10によって切り欠かれている。
【0022】
弁体7には、図1〜図3に示されるように、中央位置に直径方向に貫通して貫通孔11が設けられている。貫通孔11は、薬液Aを吸引するためのピペット12よりも大きな口径を有している。これにより、弁体7が所定の角度位置に配置されることで、貫通孔11が筒状部5の長さ方向に沿うように上下方向に配置されると、図3に示されるように、上方から貫通孔11内にピペット12を挿入して容器本体2内の薬液Aを吸引することができるようになっている。また、図2に示されるように、図3の角度位置から弁体7が長手軸回りに90°回転させられると、貫通孔11が略水平に配される結果、貫通孔11の両端が収容部6の側面によって密閉されるようになっている。
【0023】
すなわち、これら収容部6,弁体7および操作ロッド9とによって、開閉機構4が構成されている。そして、この操作ロッド9の先端の平面部10を略水平に配することにより、収容部6内の弁体7の貫通孔11を略水平にして開口部3を閉鎖し、前記平面部10を上下方向に配することにより、貫通孔11を上下方向に配して開口部3を開放することができるようになっている。
【0024】
また、本発明の一実施形態に係る薬液保冷庫20は、図4に示されるように、複数の薬液容器1を収容可能な略円筒状の保冷庫本体21と、該保冷庫本体21内に略水平に配置されたターンテーブル22と、薬液容器1の操作ロッド9を駆動する駆動装置23とを備えている。
【0025】
保冷庫本体21は、図示しない冷却装置を備え収容した薬液容器1内の薬液Aを所定の温度、例えば、4〜10℃程度に調節することができるようになっている。また、保冷庫本体21には、その上部に正常な下降空気流Cを発生させる送風機24と、その下部に保冷庫本体21内を流通してきた下降空気流Cを吸引して保冷庫本体21内から排気する換気装置25とが設けられている。保冷庫本体21内部の上下壁面21a,21bには複数の貫通孔(図示略)が設けられており、送風機24から換気装置25に向かう下降気流がスムーズに形成されるようになっている。また、保冷庫本体21の上面の一部には、保冷庫本体21内に収容されている薬液容器1内の薬液Aを吸引するために上方からピペット12を挿入可能な取出孔26が設けられている。取出孔26は、図示しない駆動手段によって駆動される可動蓋27によって開閉可能に設けられている。
【0026】
ターンテーブル22は、円板状に形成されるとともに、略水平に配置され、モータ28により鉛直軸線回りに回転させられるようになっている。ターンテーブル22上には複数の薬液容器1を周方向に配列して搭載することができるようになっている。ターンテーブル22の回転角度位置は薬液容器1毎に予め設定されており、外部に取り出す薬液Aが指定されたときには、その薬液Aを収容している薬液容器1の開口部3を取出孔26の真下に配置するように回転駆動されるようになっている。ターンテーブル22上に搭載された薬液容器1は、その操作ロッド9を半径方向の内側に向けて配置されている。
【0027】
駆動装置23は、図5に示されるように、操作ロッド9の先端に設けられた2つの平面部10よりも若干広い間隔をあけ一方向に開くコ字状の把持部29と、該把持部29を水平な軸線回りに回転させるモータ30とを備えている。駆動装置23は、図4に示されるように、把持部29の開口を半径方向外方に向けて保冷庫本体21の天井面に固定されている。そして、駆動装置23の把持部29は、図4に示されるように、取り出したい薬液Aが収容されている薬液容器1の開口部3が、ターンテーブル22の作動により、取出孔26の真下に配置されたときに、図6に示されるように、操作ロッド9の先端の平面部10に係合するように配置されている。
【0028】
また、培養処理装置は、上記薬液保冷庫20と、該薬液保冷庫20内の薬液容器1に貯留されている薬液を吸引して、薬液保冷庫20外部に配置されている検体に対し薬液を分注するピペット12と、該ピペット12を薬液の吸引位置と分注位置との間で移動させる移動機構(図示略)とを備えている。
【0029】
このように構成された本実施形態に係る薬液容器1、薬液保冷庫20および培養処理装置の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る薬液容器1によれば、容器本体2内に薬液Aを貯留し、収容部6内において弁体7を回転させて貫通孔11が収容部6の内壁によって閉鎖されるように配置することで、容器本体2内部が密封され、容器本体2内において薬液Aが蒸発等して浮遊しても、容器本体2外部に放出されることが防止される。また、薬液容器1外部から容器本体2内に塵埃が混入することも防止できる。
【0030】
薬液容器1内から薬液Aを吸引するには、操作ロッド9を操作して容器本体2の外部から弁体7を回転させることにより、弁体7に設けられた貫通孔11を上下方向に配置する。これにより、容器本体2の開口部3は開放され、貫通孔11を介して容器本体2の上方から容器本体2の内部にピペット12の先端を挿入することが可能となり、ピペット12によって容器本体2内部の薬液Aを吸引することができる。必要量の薬液Aを吸引した後には、再度操作ロッド9を操作して弁体7を90°回転させることにより、再度貫通孔11を横向きにしてその両端を密封することができる。
【0031】
このように、本実施形態に係る薬液容器1によれば、開口部3を構成する筒状部5に設けた収容部6内において弁体7を回転させるだけで、容器本体2の開口部3を簡易に開閉することができる。したがって、弁体7の表面に薬液Aが付着した状態で開口部3を開閉しても容器本体2の外部に薬液Aがこぼれることがより確実に防止されることになる。
また、収容部6内において弁体7を回転させることにより開口部3を開閉する方式なので、搬送中等に薬液容器1が転倒したり落下したりしても、容器本体2の密封状態が解除されることがなく、容器本体2内部の薬液Aが外部にこぼれることを防止できる。
【0032】
また、本実施形態に係る薬液保冷庫20によれば、ターンテーブル22上に配置された複数の薬液容器1を保冷庫本体21内において温度調節し、所定の温度に維持する。そして、上部に設けた送風機24の作動により保冷庫本体21内に下降空気流Cが発生させられ、下部に設けた換気装置25によって吸引することにより、保冷庫本体21内に浮遊する塵埃を下方に押し流し、巻き上がって薬液容器1内に混入しないようにすることができる。
【0033】
そして、外部に取り出したい薬液Aが指定されたときには、ターンテーブル22が回転させられて、指定された薬液Aを収容している薬液容器1の開口部3が取出孔26の真下に配置される。このとき図6(a)に示されるように、薬液容器1に設けられた操作ロッド9も回転させられて、その先端位置を移動させられる。その先端位置の移動軌跡上には、駆動装置23の把持部29が配置されているので、ターンテーブル22によって回転されるだけで、図6(b)に示されるように、操作ロッド9の先端の平面部10が駆動装置23の把持部29に係合する。そして、平面部10が把持部29に係合した位置でターンテーブル22を停止し、図5(b)および図6(c)に示されるように、駆動装置23を作動させて把持部29を回転させることにより、操作ロッド9をその長手軸回りに回転させ、操作ロッド9の先端に固定された弁体7を回転させることができる。
【0034】
駆動装置23により操作ロッド9を長手軸回りに90°回転させることで、弁体7が閉位置から開位置に移動させられ、弁体7に設けた貫通孔11が上下方向に配置される。
このとき、薬液容器1の開口部3は、保冷庫本体21に設けた取出孔26の鉛直下方に配置されているので、取出孔26の上方から近接させたピペット12を、図3に示されるように取出孔26および弁体7の貫通孔11に挿入して、その先端を薬液容器1の内部に薬液Aに接触させ、吸引することによって外部に取り出すことが可能となる。
【0035】
必要量の薬液Aを吸引した後には、ピペット12を上昇させて保冷庫本体21の外部に抜き出し、保冷庫本体21の取出孔26を閉鎖するとともに、駆動装置23の作動によって弁体7を逆方向に90°回転させて閉位置に移動させる。これにより、薬液容器1の開口部3が密封される。したがって、仮に、保冷庫本体21内に塵埃等が浮遊していても、薬液容器1内に混入することが防止される。
【0036】
また、この状態で、ターンテーブル22の回転によってコ字状の把持部29から操作ロッド9を水平方向に外し、他の操作ロッド9を係合させることができるようになる。したがって、単一の駆動装置23により、複数の薬液容器1を選択的に開閉することができ、簡易な構成の薬液保冷庫20を提供することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る培養処理装置によれば、薬液容器1および薬液保冷庫20により、薬液保冷庫20内における液だれ等の発生が防止されるので、塵埃等の浮遊を抑えて清浄な環境下において分注作業を行うことができる。
【0038】
なお、本実施形態に係る薬液容器1においては、収容部6内において回転する球体状の弁体7を採用したが、これに代えて、図7に示されるように、円柱状の弁体7′を採用してもよい。さらに、図8に示されるように、水平方向に配されたときに開口部3を閉鎖し、上下方向に配されたときにピペット12を挿入可能に開口部3を開放する平板状の弁体7″を採用してもよい。
【0039】
また、本実施形態に係る薬液保冷庫20においては、薬液容器1の操作ロッド9を半径方向内方に向けてターンテーブル22上に配置し、操作ロッド9を回転駆動する駆動装置23として半径方向外方に開口する把持部29を有するものを採用したが、これに代えて、半径方向内方に把持部29を開口させた駆動装置23を薬液容器1よりも半径方向外方に配置し、操作ロッド9を半径方向外方に延びるようにターンテーブル22上に薬液容器1を配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬液容器を示す斜視図である。
【図2】図1の薬液容器の弁体が閉位置に配されている状態を示す縦断面図である。
【図3】図1の薬液容器の弁体が開位置に配されている状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る薬液保冷庫を示す模式的な縦断面図である。
【図5】図4の薬液保冷庫において薬液容器の弁体を開閉する駆動装置を示す正面図である。
【図6】図4の駆動装置と薬液容器の操作ロッドとの相互関係を示す平面図である。
【図7】図1の薬液容器の開閉機構の変形例を示す平断面図である。
【図8】図1の薬液容器の開閉機構の他の変形例を示す平断面図である。
【符号の説明】
【0041】
A 薬液
1 薬液容器
2 容器本体
3 開口部
4 開閉機構
6 収容部
7,7′,7″ 弁体
9 操作ロッド(操作部)
11 貫通孔
12 ピペット
20 薬液保冷庫
22 ターンテーブル
23 駆動装置
24 送風機(下降気流発生装置)
25 換気装置(下降気流発生装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を貯留する容器本体と、
該容器本体に、薬液を吸引するためにピペットを挿入可能に設けられた開口部を開閉する開閉機構とを備え、
該開閉機構が、開口部の内面に設けた収容部に、開口部の軸線に直交する軸線回りに回転可能に収容され、角度位置に応じて開口部を開閉する弁体と、該弁体に収容部の側壁を貫通して接続される操作部とを備える薬液容器。
【請求項2】
前記弁体が球体状に形成され、回転軸線に直交する中心軸に沿って穿孔された貫通孔が設けられている請求項1に記載の薬液容器。
【請求項3】
前記弁体が円柱状に形成され、半径方向に沿って穿孔された貫通孔が設けられている請求項1に記載の薬液容器。
【請求項4】
前記弁体が、前記開口部の口径より薄い厚さの円板状に形成されている請求項1に記載の薬液容器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の薬液容器を複数収容し、所定の温度に維持する薬液保冷庫であって、
複数の薬液容器を周方向に並べて載置し、周方向に移動させることで、いずれかの薬液容器の開口部をピペットによる吸引位置に選択的に配置するターンテーブルと、
該ターンテーブルにより吸引位置に配置された薬液容器の操作部に係合して、開閉機構を作動させる駆動装置とを備える薬液保冷庫。
【請求項6】
内部の薬液容器が配置されている空間に下降気流を生じさせる下降気流発生装置を備える請求項5に記載の薬液保冷庫。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の薬液保冷庫と、
該薬液保冷庫内に配置された薬液容器からの薬液の吸引位置と、薬液保冷庫外部に配置され、培養される検体に対して薬液の分注を行う分注位置との間でピペットを移動させる移動機構とを備える培養処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−189346(P2006−189346A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1925(P2005−1925)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】