説明

薬液容器の中栓

【課題】ノズル孔から滴下する液滴に気泡が含まれる不具合を防止した薬液容器の中栓を提供する。
【解決手段】容器Cの口部C1 に装着するノズル部12付きの中栓10に対し、縦長のチャンバ12cと、薬液の流通経路の狭窄部としての小孔14aとを設け、チャンバ12c内の薬液の流下速度を薬液中の気泡の浮上速度より小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば目薬、点滴剤、滴定試薬などのように、所定量の薬液を液滴として滴下させて使用する用途に好適な薬液容器の中栓に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液を液滴として滴下させて使用する場合、各液滴のサイズを適切にコントロールすることが必要である。そこで、滴下ノズルの基部の入口断面積より小さな有効断面積の絞り装置を滴下ノズルの下部に配置することが提案されている(たとえば特許文献1)。
【0003】
この提案は、容器の口部に装着する中栓の滴下ノズルの下側に、滴下ノズルの入口断面積より小さな断面積の流通孔を有する隔壁を設け、滴下ノズルと隔壁との間に中間チャンバを設けている。そこで、このものは、隔壁の流通孔を介して容器内の薬液を極く少量ずつ滴下ノズルに供給することにより、滴下ノズルから常に適切なサイズの液滴を滴下させることができ、たとえば薬液が不用意にストリーム状に流出したり、極端なサイズの液滴が生じたり、多数の液滴が連続的に発生したりする不具合を防止することができる。なお、多数の液滴が不用意に連続的に生じる現象は、いわゆる「液走り」として知られている。
【特許文献1】特表2004−529827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、滴下ノズルから滴下される液滴に気泡が含まれることがあり、液滴のサイズにばらつきを生じたり、不用意に液滴が弾けて周囲に飛散したりすることがあるという問題があった。なお、この現象は、「泡噛み」などと呼ばれており、中間チャンバや、小断面積の流通孔付きの隔壁を設けない場合には、一層顕著であり、普通に見られる不具合である。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、ノズル孔に連通する縦長のチャンバと、薬液の流量を制限する狭窄部とを適切に組み合わせることによって、ノズル孔からの液滴に気泡が含まれることに起因する泡噛みの不具合を有効に排除することができる薬液容器の中栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、容器の口部に装着するスカート部と、スカート部の上方に突出するノズル部と、ノズル部の先端のノズル孔に連通する縦長のチャンバとを一体成形してなり、容器の内部からチャンバに至る薬液の流通経路には、流量を制限する狭窄部を設け、ノズル孔から薬液を滴下させる際に、チャンバ内の薬液の流下速度を薬液中の気泡の浮上速度より小さくすることをその要旨とする。
【0007】
なお、狭窄部は、チャンバの下端の仕切壁に小孔として設けることができ、スカート部に内装する栓体に小孔として設けることができる。
【発明の効果】
【0008】
かかる発明の構成によるときは、狭窄部は、容器の内部からチャンバに至る薬液の流通経路に設けられ、薬液の流量を制限することにより、チャンバ内の薬液の流下速度を薬液中の気泡の浮上速度より小さくすることができる。そこで、薬液は、チャンバ内において有効に気水分離されるから、チャンバに連通するノズル孔から滴下する液滴に気泡が含まれることがなく、泡噛みの不具合や、液走りなどの不具合がない。なお、チャンバ内の液面の上昇速度を気泡の浮上速度より小さくするためには、狭窄部における薬液の最大流量Q、チャンバの断面積S、薬液中の気泡の浮上速度Vとして、V>Q/Sとすればよい。たとえば、チャンバの下端の仕切壁に設ける小孔を狭窄部とする場合、小孔の内径0.3≦d≦0.5mmとして、チャンバの内径D≧5d、チャンバの長さL≧8mm程度とすることが好ましい。また、ノズル孔の最小径da は、d<da <Dとし、ノズル孔の最大径を含む内部形状は、薬液の性状や液滴の所要サイズなどに基づき適切に定めるものとする。
【0009】
狭窄部は、スカート部に内装する栓体に設けてもよい。すなわち、円筒形の栓体の中間、下端または上端を仕切る仕切壁に対し、小孔を形成して狭窄部とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0011】
薬液容器の中栓10は、容器Cの口部C1 に装着するスカート部11と、スカート部11の上方に突出するノズル部12とを備えてなる(図1、図2)。
【0012】
容器Cは、可撓性のプラスチック容器であって、手指で胴部を押圧して弾性変形させることにより、内部の薬液を排出させることができる。なお、容器Cの具体的な形状は、単純な円筒形などの他、たとえば図2の紙面に平行な寸法より紙面に垂直な寸法が大きい偏平形状などを含む任意形状である。
【0013】
中栓10は、中間のフランジ部13の上下に、ノズル部12、スカート部11を一体成形して構成されている。スカート部11は、容器Cの口部C1 に適合するものとし、中栓10は、フランジ部13の下面を口部C1 の上端に当接させるようにしてスカート部11を口部C1 に圧入することにより、口部C1 に装着されている。なお、スカート部11の外周には、口部C1 の内周の係合凹溝C1aに対応する係合突条11aが形成されており、したがって、中栓10は、係合突条11aが係合凹溝C1aに係合することにより抜け止めされている。
【0014】
スカート部11の天面は、フランジ部13とほぼ同一高さの仕切壁14となっている。また、仕切壁14の中心、すなわち中栓10の軸心A上には、内径dの小孔14aが形成されている。スカート部11の上部には、フィルタ15が内装されており、フィルタ15は、スカート部11の内周の係合突条11bを介して抜け止めされている。フィルタ15の上面が当接する仕切壁14の下面には、小孔14aを中心とするチャンネル状の溝14b、14b…をたとえば十字状に形成することにより、フィルタ15の有効面積を大きくして変形を防止することができる。ただし、各溝14bは、小孔14aと同心の大径の座ぐり穴14cに開口している。なお、フィルタ15は、これを省略してもよく、そのとき、座ぐり穴14c、溝14b、14b…も省略可能である。
【0015】
ノズル部12の先端には、上向きに開拡するノズル孔12aが軸心A上に形成されている。ノズル孔12aの基部側には、ノズル孔12aの最小径da を規定する平行部12bが形成されている。
【0016】
ノズル部12内には、長さL、内径Dの縦長のチャンバ12cが軸心A上に形成されている。小孔14aの内径d=0.3〜0.5mmとして、チャンバ12cの内径D≧5d、ノズル孔12aの最小径da =d〜Dとなっており、チャンバ12cの長さL≧8mmとなっている。また、チャンバ12cは、平行部12bを介してノズル孔12aに連通しており、チャンバ12cの下端は、小孔14aを有する仕切壁14を介して区切られている。
【0017】
容器Cの口部C1 には、ねじ式のキャップ30が付属している。キャップ30は、天面のシール部31を介してノズル部12のノズル孔12aを封止することができる。なお、キャップ30の外面には、ローレット32、32…が形成され、キャップ30は、下部内面の雌ねじ33、口部C1 の外面の雄ねじC2 を介して口部C1 に着脱することができる。
【0018】
キャップ30を取り外して全体を倒立させ(図3)、容器Cを押圧して弾性変形させると、容器Cの内圧が高くなり、容器C内の薬液をノズル部12の先端のノズル孔12aから液滴LDとして滴下させることができる。すなわち、容器C内の薬液は、小孔14aを介してチャンバ12cに流入し、チャンバ12c内において一旦滞留しながら平行部12bを介してノズル孔12aに流出し、液滴LDとして成長することによりノズル孔12aから分離して自由落下する。
【0019】
そこで、中栓10には、小孔14aを介し、容器Cの内部からチャンバ12c、ノズル部12の平行部12b、ノズル孔12aに至る薬液の流通経路が形成されている。また、小孔14aは、このような薬液の流通経路において、薬液の流量を制限する狭窄部となっている。よって、小孔14aにおける薬液の最大流量Q、チャンバ12cの断面積S=πD2 /4、チャンバ12c内における薬液中の気泡の浮上速度Vとして、V>Q/Sに設定することにより、チャンバ12c内の薬液の流下速度を気泡の浮上速度Vより小さくすることができ、チャンバ12cからノズル孔12aに流出する薬液中に気泡が含まれることがなく、泡噛みの不具合を有効に防止することができる。また、このとき、小孔14aによって最大流量Qが絞られるため、液走りなどの不具合もない。
【他の実施の形態】
【0020】
中栓10のスカート部11には、小孔22aを有する栓体20を内装することができる(図4、図5)。ただし、図4(A)、(B)は、それぞれ図1相当の要部模式組立図、栓体20の全体斜視図である。
【0021】
栓体20は、円筒体21の中間部に仕切壁22を設け、仕切壁22の中心に小孔22aを形成している。円筒体21の外周両端部には、滑らかな円弧状の切欠き21a、21aが全周に形成され、円筒体21の外径は、スカート部11の内径に適合する。栓体20は、スカート部11に圧入し、スカート部11の内周の係合突条11bを越えることにより抜け止めされている。そこで、栓体20の小孔22aは、容器Cの内部から中栓10のチャンバ12cに至る薬液の流通経路において、薬液の流量を制限する狭窄部を形成している。
【0022】
栓体20は、小孔22aを設ける仕切壁22を円筒体21の下端に形成し、全体として有底円筒状に形成することができる(図6)。ただし、図6(A)、(B)は、それぞれ図1相当の要部模式組立図、栓体20の全体斜視図である。
【0023】
栓体20の外周上端には、直線的な斜面の切欠き21aが全周に形成され、中栓10には、チャンバ12cを下向きに延長するようにして、補助スカート12dがスカート部11の天面に垂設されている。なお、補助スカート12dの下部外周は、テーパ状に先細になっており、栓体20は、補助スカート12dに対して外側から嵌合させるようにしてスカート部11に内装されている。栓体20の底部の小孔22aは、薬液の流通経路の狭窄部を形成しており、栓体20は、補助スカート12dとともに、ノズル部12の見掛けの長さL1 <Lとして使い勝手を向上させることができる。
【0024】
以上の説明において、栓体20は、図4、図5のように上下対称に形成することにより、中栓10のスカート部11に組み込むに際して上下方向を選別する必要がなく、組立工程を簡単にすることができる。また、中栓10、栓体20は、それぞれ、たとえば高密度ポリエチレン樹脂や低密度ポリエチレン樹脂により一体成形することができ、キャップ30は、たとえばポリプロピレン樹脂により一体成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】全体模式縦断面図
【図2】使用状態を示す半断面組立図
【図3】模式動作説明図
【図4】他の実施の形態を示す構成説明図(1)
【図5】図4の使用状態を示す図2相当図
【図6】他の実施の形態を示す構成説明図(2)
【符号の説明】
【0026】
C…容器
C1 …口部
10…中栓
11…スカート部
12…ノズル部
12a…ノズル孔
12c…チャンバ
14…仕切壁
14a…小孔
20…栓体
22a…小孔

特許出願人 伸晃化学株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着するスカート部と、該スカート部の上方に突出するノズル部と、該ノズル部の先端のノズル孔に連通する縦長のチャンバとを一体成形してなり、容器の内部から前記チャンバに至る薬液の流通経路には、流量を制限する狭窄部を設け、前記ノズル孔から薬液を滴下させる際に、前記チャンバ内の薬液の流下速度を薬液中の気泡の浮上速度より小さくすることを特徴とする薬液容器の中栓。
【請求項2】
前記狭窄部は、前記チャンバの下端の仕切壁に小孔として設けることを特徴とする請求項1記載の薬液容器の中栓。
【請求項3】
前記狭窄部は、前記スカート部に内装する栓体に小孔として設けることを特徴とする請求項1記載の薬液容器の中栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−37481(P2008−37481A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217010(P2006−217010)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000190068)伸晃化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】