説明

薬物ののみ易さを改善するための医薬組成物及びその調製方法

本発明は、医薬の苦い又は不快な味をマスクする脂質−ポリマー・マトリクスを含む組成物を開示する。脂質又は脂質ブレンドが酸溶解性又は膨潤性であるpH依存性ポリマーと組み合わせて用いられる。前記脂質−ポリマー組成物を含む苦い薬の味マスクされた医薬組成物を調製する方法が開示される。唾液のpHで縮んだままである酸溶解性ポリマーをあわせて用いることによって、このpHでの薬物放出が抑えられ、それが更に苦さの抑制を助ける。前記組成物はこの苦い薬物の実質的な量を胃のpHで早急に放出し、のみ易さが改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物ののみ易さを改善するための医薬組成物を提供する。さらに詳しくは、本発明は、脂質−ポリマー・マトリクスに薬物を分散させることによる薬物の苦さの抑制に関する。本発明の医薬組成物は、胃のpHで実質的な量の薬物を直ちに放出させる。本発明はまた、これらの組成物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経口、非経口、経鼻、及び経皮などいろいろな投与ルートに関して多種多様な送達システムが開発されている。経口ルートは、投与形態としては容易で、便利な、非侵襲的かつよく知られている薬物送達方法であるため、依然として魅力的な薬物送達ルートである。通常の経口投薬形態は、溶液、懸濁液などの液体混合物、錠剤やカプセルなどの固体形態、及び液体充填カプセル、などがある。固体投与形態は、所望される治療作用によって、制御した放出、拡張した放出又は遅延した放出、などに変形される。しかし、幼児や老人など両極端の年齢層の場合、固体経口投薬形態を嚥下することにしばしば困難がある。これらの患者では、多くの場合、薬物は溶液、エマルジョン、及び懸濁液などの液体投薬形態で投与される。この投薬形態では、通常、活性な薬物成分が味蕾に感じられるほど曝露することになり、薬物が非常に不快な味又は苦い味がするときにはそれが深刻な問題になる。
【0003】
経口投与される薬物の苦い味は、いくつかの観点において不都合である。味は、コンプライアンスを決定する重要なパラメーターの一つである。薬物の不快な味は、嚥下の困難を生じたり、患者に医薬治療を回避させることになり、患者のコンプライアンスを低下させる。甘味料、アミノ酸、香味剤の使用などの通常の味マスキング方法は、キニン、バルベリン、エトリコシブ、などのきわめて苦い薬物、レボフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、シプロフロキサシン、セフロキシム・アキセチル、エリスロマイシン、及びクラリスロマイシンなどの抗生物質の味をマスクすることにはしばしば成功していない。したがって、味をマスクする技術は重要であると考えられ、多くの研究者によって開発が進められている。
【0004】
味マスキングは薬物がきわめて不快で苦い場合に大きな問題であり、この問題は溶液、ドライシロップ、及び懸濁液などの液体経口組成物に限定されるものではなく、活性成分が味蕾に感じられるほどの曝露を引き起こすチュアブル錠剤や分散錠剤などの投与形態の製剤でも遭遇する問題である。投薬形態に応じて薬物の不快な味や苦さを克服するためにいろいろな方法が採用されてきた。いろいろな味マスキング方法がこれまでに試みられている、例えばイオン交換樹脂の使用、苦い薬物を医薬的に受容される賦型剤で錯体化する、脂質及びいろいろなポリマー物質による薬物のコーティング、などである。
【0005】
米国特許 4,797,288は、コアを疎水性マトリクスでコーティングして、コーティングによってコアの水和を遅らせるようにした新しい薬物送達システムを開示している。この送達システムは、咀嚼又は嚥下のために設計された乾燥薬物粒子を含む。コアの水和を遅らせる疎水性コーティングは薬物重量の200-400%を占める。疎水性材料の融点は25-100℃の範囲であった。送達システムは重量で61-95%の脂肪酸を含む。
【0006】
英国特許 1323161は、95℃以下の融点を有する脂質によるアセトキシメチル・ベンジルペニシリネートのコーティングを開示している。脂質のコーティングはスプレー凝固法によって行われる。コーティングされた粉末はpH 6.5で液体に戻る。この組成物はペニシリンを水分から保護し、苦味もマスクする。しかし、脂質を使用すると脂質の疎水性のために薬物の放出が遅延する傾向がある。
【0007】
英国特許208 92は、ワックス状物質及び高分子量の水膨潤性物質の使用を開示している。水膨潤性物質は、溶解を助けて薬物の吸収を助けるために加えられる。しかし、組成物で脂質と一緒に水膨潤性物質を用いることには、ドライシロップを液体に戻すために用いられる水性媒質又は懸濁液で組成物が薬物を浸出させる傾向があるので限界がある。
【0008】
米国特許5,405,617は、溶融ステアリン酸ステアリルのスプレー凝固と活性薬剤の混合による味マスクされた組成物を調製する無溶媒法を開示している。
【0009】
米国特許4,865,851は、粒状形態にあるセフロキシムのきわめて苦い1-アセトキシ・エチル・エステルの味をマスクする脂質又は脂質の混合物によって完全にコーティングすることによって味マスクする方法を開示している。コーティングされた粒子が水性懸濁液に取り込まれる。用いる脂質は水に不溶であるが、胃腸の液で分散又は溶解される。味マスキングのために組成物で用いられる脂質は95-10%の範囲にあり、セフロキシム・アキセチルは5-90%の範囲にある。好ましい脂質の範囲は90-70%であり、好ましいセフロキシム・アキセチルの範囲は10-30%である。この特許で開示された実施例は、薬物:脂質の比が1 : 4以上である。
【0010】
Robson等(H. J. Robson, D. Q. M. Craig, D. Deutsch, International Journal of Pharmaceutics, 190, 1999, 183-192) は、蒸留水、及びpH 5.9,7, 及びpH 8のSorensen修飾バッファーにおけるステアリン酸コーティングされたセフロキシム・アキセチル微小球の溶解を調べた。この研究は、ステアリン酸コーティングされたセフロキシム・アキセチル微小球からの薬物の放出は腸に到達すると増加することを示した。このコーティングは、セフロキシム・アキセチルの味マスキングを助けた。Robson等. (H. J. Robson, D. Q. M. Craig, D. Deutsch, International Journal of Pharmaceutics, 195, 2000, 137-145) は、また、バッファー組成がステアリン酸コーティングされたセフロキシム・アキセチル微小球からのセフロキシム・アキセチルの放出に及ぼす影響を開示している。調べられたバッファーは、Sorensen修飾リン酸バッファー、クエン酸リン酸塩バッファー、ホウ酸バッファー及びリン酸バッファー混合物で、すべてPharmaceutical Codex 1994によるpH範囲 7のものであった。この研究は、pH及びナトリウム・イオンが放出機構に及ぼす影響を示している。ステアリン酸とナトリウム・イオンを含むバッファー媒質の相互作用が放出機構で効果的である。
【0011】
上述の開示では、セフロキシム・アキセチルの放出は塩基性の媒質で研究された。Dantzig等. (Anne H. Dantzig, Dale C. Duckworth, Linda B. Tabas, Biochimica et Biophysica Acta 1191, 1994, 7-13) は、セフロキシム・アキセチルが腸の管腔でエステラーゼによって加水分解されてセフロキシムになり、管腔におけるセフロキシム・アキセチルの濃度が減少し、その結果吸収が減少してヒトにおけるセフロキシム・アキセチルの生物学的利用能の低下につながることを示している。したがって、セフロキシム・アキセチルのような薬物の製剤(formulation)では、薬物が腸のpHではなく胃上方領域で放出されるようにしなければならない。そうでなくとも、セフロキシム・アキセチルの生物学的利用能は32-50%という低い値であるから、製剤の仕方によってさらに生物学的利用能が減少することはできるだけ小さくしなければならない。
【0012】
米国特許 4,897,270 は、苦い薬剤の味をマスクするためにフィルム・コーティングされたセフロキシム・アキセチルの錠剤であって、フィルム・コートが数秒で破れて錠剤がすぐに崩壊するものを開示している。この調製物は、セフロキシム・アキセチルの生物学的利用能を改善するのに有用である。セフロキシム・アキセチルは、水性媒質と接触するとゼラチン状の塊を形成すると教示されている。このゲル化効果は温度に依存し、〜37℃の温度で、すなわち、経口投与された錠剤の崩壊が起こる温度で生じる。さらに、コアにセフロキシム・アキセチルを含む通常のフィルム・コートを有する錠剤は、経口投与されると、フィルム・コートを通して水分がゆっくりと浸透するために薬物のゲル化を生ずると教示されている。ゲル形成は、錠剤コアの崩壊を減少させ、したがってセフロキシム・アキセチルの溶解、吸収、及び生物学的利用能を低下させる。したがって、セフロキシム・アキセチルなどの薬物は、バッファーがコーティング物質にゆっくりと浸透することなく組成物が薬物を胃で直ちに放出するように製剤すべきである。さらに、セフロキシム・アキセチルのコーティング物質は、ゲル化が起こる前に薬物を直ちに放出するようなものでなければならないと教示されている。
【0013】
米国特許5,972,373 は、良好な生物学的利用能を与える、味マスクする医薬組成物を開示している。この組成物は、胃で可溶なポリビニルアセタール・ジエチルアミノ酢酸、アミノアルキルメタクリレート・コポリマーEudagit E及び味マスキングに用いられるモノグリセリド:グリセリル・モノステアレートから成る高ポリマーを含む。このようなコーティング組成物は、胃の上部で良く吸収されるセフロキシム・アキセチルなどの薬物で有用であろう。しかし、セフロキシム・アキセチルはEudagit Eなどのアミノアルキルメタクリレート・コポリマーをベースとするポリマーとのネガティブな相互作用を示す。
【0014】
Alonso等(M. J. Alonso, M. L. Lorenzo-Lamosa, M. Cuna, J. L. Vila-Jato及びD. Torres, Journal of Microencapsulation, 1997, Volume 14, No. 5, 607-616) は、きわめて苦い薬物であるセフロキシム・アキセチルをpH敏感なアクリル微小球にカプセル封入して懸濁物投薬形態として製剤することを研究した。この研究によれば、カチオン性ポリマーEudagit E(ジメチルアミノエチルメタクリレートを含むポリマー)がセフロキシム・アキセチルとネガティブな相互作用を示した。
【0015】
米国特許4,132,753は、ワックス状物質を含み、融点が30-100℃の範囲にある組成物からの医薬の制御された放出の方法を開示している。脂質と医薬の混合物は、ワックス状物質が融ける温度で連続的に攪拌され、医薬粉末がワックス状物質の溶融表面に沈着する。溶融した塊を冷却し、サイズをそろえてコーティングされた顆粒が得られた。開示されたワックス状物質は、グリセリル・モノステアレート、水素添加脂肪、及びワックス状脂肪族アルコール、などである。米国特許6,589,955は、ガチフロキサシンの味マスクされた小児科用製剤を開示している。ステアリン酸やパルミチン酸などの脂肪酸とガチフロキサシンの味マスクされた共沈澱が形成され、ガチフロキサシン対脂肪酸の比は1:1.8乃至1:2.3までの範囲にある。好ましい比は1:2.1である。米国特許6,156,339は、味マスクされた固体経口急速崩壊投薬形態であって、水に分散するキャリア、充填剤、医薬的に活性な物質、及び脂質を含み、医薬的に活性な物質が脂質と結合しているものを開示している。医薬的に活性な物質と脂質の重量比は、1:1から1:10までの範囲にある。
【0016】
日本での特許出願2002138034は、苦い抗ヒスタミン剤マレイン酸クロロフェニラミン及び味をマスクする脂肪酸、すなわち、ステアリン酸、を含むチュアブル錠剤を開示している。この組成物は脂肪酸を1 pt. 重量の薬物あたり0.5 pt.重量乃至3 pt.重量という範囲で含む。
【0017】
医薬が脂質物質でコーティングされたチュアブル錠剤が仏国特許2784895に開示されている。37-75℃の範囲で融ける脂質物質が用いられている。この特許は、薬物のコーティングに10%、好ましくは2-5%、の脂質を使用すると記載している。
【0018】
クランチャブル(crunchable)/チュアブル錠剤又は顆粒などの製剤で味マスクのために用いられる脂質物質は、咀嚼のさいに脂質コーティングが破壊されて医薬の急速な放出を生じ、それが苦みを感知させることにつながる。
【0019】
米国特許6,485,742は、ビタミンを含む親水性コア物質のコーティングであって、流動化したコア物質に溶融脂質を滴下して加え、溶融脂質が固化してコア物質に皮膜を形成するというコーティングを開示している。脂質物質によるコーティングはビタミンの不快な風味をマスクする。コーティング物質はコーティングされた全物質の0.1乃至30重量%の範囲で使用される。PCT国際特許出願WO 00/61119は、医薬のマイクロカプセル封入方法であって、医薬をコーティング物質と混合し、溶融し、攪拌品柄保持するやり方を開示している。溶融物質を、攪拌しながら冷却してマイクロカプセルが得られる。
【0020】
米国特許4,837,381は、生物学的に活性な蛋白質又はペプチドを含むワックス又は脂肪の徐放性微小球の製造を開示している。この発明は、微小球の製造で30-95重量%の脂肪又はワックスと2-70%の蛋白質又はペプチドを使用することを記載している。
【0021】
5-90%の範囲の医薬的活性物質、10-90%のグリセリル・モノステアレート、及び2-15%のポリエチレン・グリコールとグリセリル・パルミトステアレートを含む組成物の熱成形による微小球の調製が米国特許6,117,452に開示されている。
【0022】
日本への特許出願2001288117は、脂肪酸グリセリン・エステル及び任意に容易に水溶性の物質による薬剤レバミピド経口製剤の味マスキングを開示している。脂質マトリクスからの薬物の放出を促進するために水溶性又は膨潤性物質が用いられる。脂質と一緒に水溶性物質を用いることは液体経口製剤におけるその利用を制限している。
【0023】
PCT国際特許出願WO 00/06122は、味が改善された医薬組成物を開示している。薬物はグリセリン・ベースの脂肪酸エステルに、薬物1部に対して重量で1.5乃至15部という割合で分散される、脂肪酸でコーティングされた薬物粒子はさらに水溶性、非水溶性、胃溶性、又は腸溶性ポリマーでコーティングされる。
【0024】
実質的に無味の医薬送達システムがEP 0670716に開示されている。この送達システムは、活性成分、融点が50-200℃の範囲にあるワックス・コアのマトリクス、及び疎水性ポリマーを含む。送達システムに含まれる疎水性物質の量はマトリクスの重量の3-10%であり、マトリクスに含まれるワックス・コアの量はマトリクスの重量の15-85%である。
【0025】
苦い薬物の味マスクとして優れたスプレー固化によって得られる経口投与用の顆粒がPCT国際特許出願WO 00/18372に開示されている。顆粒は、不快な味の薬物と融点が40乃至120℃の範囲にある脂質、及び不快な味をマスクするために用いられるポリマーを含む。脂質と組み合わせて用いられるポリマーは、腸溶性又は胃溶性のポリマーである。
【0026】
PCT国際特許出願WO 03/059349は、生物学的利用能を高めるための微小粒子を含む経口急速分散投薬形態を開示している。微小粒子は、薬物:ゾルピデム、モノグリセリドなどの球形化を助ける脂肪酸、マクロゴルなどの溶解促進剤、及び製品の味マスクするポリマー皮膜、を含む。
【0027】
米国特許出願2004091536は、脂質とポリマー・コーティングで二回、さらに任意に脂質をポリマーと共に含む皮膜で順次コーティングされたテリスロマイシンとワックス状物質のコアから成る液体に戻すことができるドライ・テリスロマイシン懸濁物の顆粒を開示している。
【0028】
苦い薬物クラリスロマイシン、グリセリン脂肪酸エステル、又はステアリル・アルコール、及びヒドロキシプロピル・メチルセルロース・フタレート、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース・アセテート・スクシネート、カルボキシメチル・エチル・セルロース、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、及びメタクリル酸コポリマーS、から選択されるポリマー、を含むマトリクスがPCT国際特許出願WO 01/91761に開示されている。このマトリクスは、クラリスロマイシンの苦い味を示さない経口製剤を与える。
【0029】
以下の特許及び特許出願は、これらの薬物の医薬組成物における脂質の単独での利用、又は脂質とポリマーなどの他の不活性物質の利用を開示している:WO 02/72072;US 4,880,634;US 5,571,533;US 5,169,645;US 6,086,920;WO 99/32092;US 6,139,877;US 5,891,476;EP 0855183。
【0030】
脂質は、撥水性、非毒性、及び問題となる臭いや色が無いこと、などの性質と結びつけられ、組成物になめらかな肌理を与える。このような性質は、味マスキングの用途に関して脂質を良い候補にする。しかし、脂肪酸は良い成膜性を示し、脂質だけによる完全なコーティングは、脂質マトリクスに医薬を完全に分散させる必要があるために多量の脂質を必要とする。溶融顆粒化やスプレー凝固などの方法も、薬物を脂質マトリクスに分散させることが必要になるので、多量の溶融脂質を必要とする。
【0031】
脂質は疎水性であり、したがって、医薬の放出は、脂質を多量に用いた場合は大きく阻害される。上記で開示された多くの製剤は、薬物の放出を速めるためにポリマーを脂質と組み合わせて用いている。脂質とあわせて水膨潤性ポリマー又は水溶性ポリマーを用いることによって、薬物の所望されるような急速放出が可能になるが、所望の味マスキング効果は得られず、特に液体経口組成物又は再構成のための顆粒の場合には得られない。pHに依存しないポリマー、例えばエチル・セルロースを脂質と組み合わせて味マスキングのために用いると、液体経口製剤のように薬物がまわりの水性媒質に浸出することを防止する組成物が得られるが、嚥下したときの薬物の放出が遅くなる。同様に、脂質と組み合わせた腸溶性ポリマーの使用も、薬物が腸に到達するまで薬物の放出を遅らせる傾向を有する。上述の特許出願のいくつかは、胃溶性ポリマーEudragit Eを脂質と組み合わせて用いて、医薬の急速な放出と味マスキング効果を与える。しかし、pH 5.5まで膨潤性を示すEudragit Eは、セフロキシム・アキセチルなどいくつかの薬物との相互作用を示す。
【0032】
したがって、味マスキングの用途に必要な全ポリマー量を減らし、組成物が胃領域で薬物の実質的な部分を遅延なしに放出するような製剤を開発する必要がある。さらに、ポリマーは、広範囲のpHで味マスクされた顆粒を元に戻すことができなければならない。我々はこのたび、我々の同時係属中の出願PCT/IN03/00390及びPCT/IN03/00392で開示され特許が請求されたpH敏感なポリマーは、薬物のコーティングで脂肪酸、脂肪酸エステル、及び高級アルコール、などの脂質と組み合わせて用いると、唾液のpHで苦い薬物の味マスキングを示すということを見出した。効果的な味マスキングを達成するために必要なポリマーの量は、我々の同時係属中の特許出願PCT/IN03/00390及びPCT/IN03/00392及び米国特許出願No.10/971,534におけるものよりも少ない。味マスキングを達成するために必要な脂質の量も、米国特許4,865,851における量よりも顕著に少ない。さらに、本発明における脂質−ポリマー混合物からの薬物の放出速度は、同一の条件の下で脂質又は脂質の混合物をベースとする製剤で得られる速度よりも顕著に高い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
発明の目的
本発明の一つの目的は、pH依存的なポリマーと、単独の脂質又は脂質混合物とのブレンドを用いることである。
【0034】
本発明の別の目的は、脂質を酸溶解性又は膨潤性ポリマーと組み合わせたブレンドを含む味マスキング製剤であって、実質的な量の薬物を直ちに放出でき、同時にのみ易さが改善された製剤を提供することである。
【0035】
本発明の別の目的は、本質的には、胃の酸性pHで溶解又は膨潤するが中性に近い又は中性のpHでは不溶な、特別に合成されたpH感受性ポリマーを用いることによって薬物が胃で溶解する医薬組成物を提供することである。
【0036】
本発明の別の目的は、薬物をコーティングする脂質−ポリマー・マトリクスを提供して、脂質との組み合わせにおいて用いることによって必要なポリマーの量が減少し、薬物の苦い味を阻害する脂質−ポリマー相乗効果によって脂質の量も減少するようにすることである。
【0037】
本発明の別の目的は、脂質−ポリマー溶液を用いて薬物をコーティングし、スプレー凝固又は溶融顆粒化のために溶融脂質に薬物を分散させるために必要な量に比べて、必要とされる脂質の量を減らすことである。
【0038】
本発明の別の目的は、多様な投薬形態における苦い薬物の味マスキングに用いることができ、同時に、嚥下したときの薬物の急速放出を可能にし、薬物の利用能を高めることができる組成物を開発することである。
【0039】
本発明のさらに別の目的は、唾液のpHで薬物を放出しない、薬物の味マスキングのための組成物を提供することである。
【0040】
本発明のさらに別の目的は、懸濁物、ドライシロップ、などの液体経口製剤、及びチュアブル錠剤、急速分散錠剤、及び従来の錠剤などの固体投薬形態で用いることができる味マスクされた粒子を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0041】
発明の要約
したがって、本発明は、薬物、脂質成分、及びpH依存性ポリマーを含む医薬組成物であって、pH依存性ポリマーが酸溶解性又は膨潤性であり、化学式:P[A(x)B(y)C(z)]を有するものを提供する、ここでPは、(A)疎水性モノマー、(B)塩基性モノマー、及び(C)親水性モノマーを含むポリマーであり、(x) = 30-95%, (y) = 5-70%, (z) = 0-60%であり、すべて重量/重量で表され、x + y + z = 100%である。
【0042】
本発明のある実施形態では、pH依存性ポリマーは、酸溶解性ポリマー又は酸膨潤性ポリマーから成る群から選定され、モノマー、メチル・メタクリレート、ヒドロキシ・エチル・メタクリレート、及びビニル・ピリジン、をそれぞれ、50-75重量%、15-35重量%、及び約5-15重量%の範囲で含む。
【0043】
本発明の別の実施形態では、脂質成分は、脂肪酸、脂肪酸のエステル、脂肪アルコール、炭化水素、中性脂肪、及びワックスから選択される。
【0044】
本発明の別の実施形態では、脂肪酸は飽和又は不飽和脂肪酸の群から選択される。
【0045】
本発明の別の実施形態では、飽和脂肪酸は、ラウリン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸などの長鎖脂肪族カルボン酸を含む。
【0046】
本発明の別の実施形態では、脂肪アルコールは、ステアリル・アルコール、パルミチル・アルコール、及びセチル・アルコールなどの長鎖脂肪族アルコールを含む。
【0047】
本発明の別の実施形態では、脂肪酸のエステルは、グリセリル・モノステアレート、グリセリル・モノパルミテート、グリセリル・トリパルミテート、グリセリル・ベヘネート、及び水素添加ヒマシ油などのグリセリンと脂肪酸のエステルを含む。
【0048】
本発明の別の実施形態では、脂質成分が単一の脂質又は脂質のブレンドとして用いられる。
【0049】
本発明の別の実施形態では、組成物はpH依存性ポリマー対脂質の比が1:0.5乃至1:40、好ましくは1:1乃至1:35の範囲にある。
【0050】
本発明の別の実施形態では、組成物は薬物対脂質の比が1:0.1乃至1:8、好ましくは1:0.4乃至1:6の範囲にある。
【0051】
本発明の別の実施形態では、組成物は薬物対pH依存性ポリマーの比が1:0.1乃至1:1、好ましくは1:0.1乃至1:0.6の範囲にある。
【0052】
本発明の別の実施形態では、薬物はそのままで、又は医薬的に受容されるその塩又はエステル又はアミドの形態で用いられる。
【0053】
本発明の別の実施形態では、薬物は、マクロライド抗生物質、例えばエリスロマイシン、アジスロマイシン、及びクラリスロマイシンなど、フルオロキノロン、例えばシプロフロキサシン、エンロフロキサシン、オフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、及びノルフロキサシン;セフロキシム、セファクロール、セファレキシン、セファドロキシル、セプフォドキシム、プロキセチルから成るセファロスポリン、及びイブプロフェン、アスピリン、アセトアミノフェン、及びジクロフェナック・ナトリウム、などの非ステロイド性、抗炎症剤と鎮痛剤;及びCOX2阻害剤、例えばエトリコキシブとセレコキシブ;抗ヒスタミン剤、例えばシメチジン、ラニチジン、ファモチジン、マレイン酸クロルフェニラミン、オキサゾリジノン、例えばリネゾリド、及びデキストロメトルファンなどの他の薬物、の群から選択される。
【0054】
本発明の別の実施形態では、組成物は、唾液のpHで薬物を放出せず、胃で見られるようなpH≦3で実質的な量の薬物を急速に放出する。
【0055】
本発明の別の実施形態では、組成物は粒子の形態であり、薬物はポリマー脂質マトリクス内にそのまま、又は医薬的に受容される投薬形態で分散される。
【0056】
本発明の別の実施形態では、医薬組成物はドライシロップ又は懸濁物などの液体経口薬剤の形態である。
【0057】
本発明の別の実施形態では、医薬組成物はチュアブル、発泡性、急速崩壊、又は分散性錠剤、などの固体投薬形態である。
【0058】
本発明は、また、薬物、脂質成分、及びpH依存性ポリマーを含む医薬組成物を調製する方法を提供する、ここでpH依存性ポリマーは酸溶解性又は膨潤性であり、化学式:P[A(x)B(y)C(z)]を有し、Pは、(A)疎水性モノマー、(B)塩基性モノマー、及び(C)親水性モノマーを含むポリマーであり、(x) = 30-95%, (y) = 5-70%, (z) = 0-60%であり、すべて重量/重量で表され、x + y + z = 100%であり、当該方法は、マイクロカプセル封入、スプレー乾燥、溶融顆粒化、トレー乾燥法、及びスプレー凝固、から成る群から選択される技術によるポリマーと脂質成分のマトリクスでの薬物の分散又はコーティングを含む。
【0059】
ある実施形態では、この方法は、ポリマーと脂質をクロロホルムとジクロロメタンから選択される有機溶媒に溶解して脂質−ポリマー溶液を形成するステップ、薬物を溶液に加えて有機相を形成するステップ、有機相を0.1乃至1重量%という量でポリビニル・アルコールを含む蒸留水に分散させるステップ、混合物を約500-1000 rpmの速度、25-30℃の範囲の温度で、2-3時間の間、機械的に連続攪拌するステップ、次に、得られた微粒子を濾過によって分離し、当該粒子を5-10時間凍結乾燥するステップによる乳化溶媒蒸発法を用いるマイクロカプセル封入を含む。
【0060】
当該方法の別の実施形態では、当該方法は、溶液又は分散形態で薬物を含むジクロロメタン又はクロロホルム中のポリマーと脂質の溶液から鋳造されたスラブを一定サイズに分けるステップと、25-30℃で蒸発によって溶媒を除去するステップを含む。
【0061】
当該方法の別の実施形態では、ポリマーと薬物を融点よりも3-5℃高い温度に保たれた溶融した脂質に攪拌下で分散させて溶融塊を形成し、それを徐々に冷却して顆粒を形成し、次にその顆粒のサイズがそろえられる。
【0062】
当該方法の別の実施形態では、当該方法は、薬物を含む脂質−ポリマー溶液をスプレー乾燥させて微粒子を得るステップを含み、その微粒子が、窒素、アルゴン、二酸化炭素、及び空気の群から選択される乾燥気体の存在下で乾燥される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
発明の詳細な説明
本発明は、経口医薬組成物であって、苦い、不快な、及びその他の点で望ましくない活性成分の味が効果的に抑制される組成物を提供する。より具体的には、本発明は、脂質−ポリマーのブレンドであって、薬物の苦い味をマスクし、投与されたときに胃のpHにおいて薬物の実質的な量を遅延なく放出するブレンドに関する。本出願で開示される組成物は、本質的に酸溶解性又は膨潤性ポリマーと脂質の組み合わせを含んで成る。本発明は、脂質又は脂質ブレンドとpH依存性ポリマーとの組み合わせの利用であって、pH依存性ポリマーが酸溶解性又は膨潤性であるものの利用を開示する。ポリマーの組成及び調製方法は以前に出願された同時係属中の我々の特許出願PCT/IN03/00390及びPCT/IN03/00392に開示されている。
【0064】
合成酸溶解性ポリマーを利用する味マスクされた組成物、及び活性成分の吸収に遅延を生ずることなく実質的に早急な放出を提供する多様な医薬組成物におけるその応用は、特許出願PCT/IN03/00390及びPCT/IN03/00392に開示されている。これらのポリマーの利用は、液体経口薬などの投薬形態、及びチュアブル、分散性、急速崩壊錠剤などの固体投薬形態、で用いられる薬物の味マスキングに効果的である。これらのポリマーの利点は、中性に近いpHで不溶であり、酸性pHで可溶になって胃における薬物の放出には何も影響しないということである。
【0065】
投薬形態のタイプによって、のみ易さを付与するために必要なポリマーの量は異なる。さらに、活性成分の用量もポリマー・コーティングの挙動に影響する。場合によっては、用量が高い場合、効果的なコーティングを得るために必要なポリマーの量は増加する。ドライシロップや懸濁物などの液体投薬形態は、味マスキング効果を付与するためにより一様で完全なコーティングが必要とされ、ポリマー要求は通常の固体投薬形態に比べて高い。
【0066】
米国特許出願No.10/971,534は、pH依存性ポリマー又は非pH依存性ポリマーとの組み合わせにある、味マスキングのための酸溶解性ポリマーを含んで成るポリマー・ブレンドの利用を開示している。このポリマーのブレンドは、ブレンドの各ポリマーの量を、FDAが定めている安全な一日許容量の範囲に収まるように減らし、かつ組成物中のポリマーの総量は味マスキング効果が十分に得られるくらい高い。ポリマーの総量対薬物の好ましい比は、0.5:1乃至4:1である。開示されたポリマー・コーティングの量は唾液又はコーティングされた顆粒を液体に戻すのに用いる水性媒質に薬物が浸出するのを防ぐために必要不可欠なものである。このような組成物は、胃腸管に沿って広い吸収窓を有する薬物に有用であり、また、遅延せずに薬物を早急に放出させるのにも有用である。
【0067】
最小量のポリマーを用いて所望の薬物放出速度を達成することが望ましい。本発明は、不快な味をマスクするために用いるポリマーの量をさらに減らしているという点で従来技術と異なる。本発明は、必要なポリマーの量並びに脂質の量を減らす、味マスキング用途での脂質−ポリマー・マトリクスの使用を開示している。薬物対ポリマー比は、1:0.1乃至1:1である。本発明の組成物は、薬物をほとんど直ちに急速に放出させる。このような急速な放出が可能な組成物は、迅速な治療効果を導くために薬物が急速に吸収される必要がある場合に有用である。この組成物は、また、胃の上部に吸収窓が狭く限定されるので薬物の生物学的利用能が増強される。この組成物で用いられる酸溶解性又は膨潤性ポリマーは、メチル・メタクリレート、ヒドロキシ・エチル・メタクリレート、及びビニル・ピリジンのモノマーを、それぞれ、50-75重量%、15-35重量%、及び5-15重量%の範囲で含む。
【0068】
きわめて苦い薬物をドライシロップ又は懸濁物として製剤化するためには、保護コーティングは十分に疎水性でなければならない。脂質は疎水性物質であり、したがってこのような用途で広く用いられる。しかしながら、疎水性のために薬物の放出が遅れる。さらに、苦さを抑制するために必要な脂質の量は非常に高い。脂質を高い割合で使用すると放出の速度がさらに低下する。これは薬物の生物学的利用能に影響し、特に胃の上部に限定される狭い吸収窓を有する薬物の場合、大きく影響する。
【0069】
本発明は、胃のpHで急速に溶解して薬物の速やかな溶解を促進する酸溶解性又は膨潤性ポリマーと組み合わせて用いられる脂質を開示する。組成物に酸溶解性/膨潤性ポリマーを組み込むことによって、脂質−ポリマー・マトリクスからの薬物の急速な放出が保証される。本発明のpH依存性ポリマーは、唾液のpHで溶解せず、口腔での薬物の浸出が妨げられる。本発明の組成物で用いられる脂質は、脂肪酸、脂肪酸のエステル、脂肪アルコール、炭化水素、中性脂肪、及びワックスである。本発明の組成物で用いるのに適した脂質は、一般に、融点が40℃より高い。脂肪酸は飽和又は不飽和脂肪酸である。組成物で用いられる飽和脂肪酸は、ラウリン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸などの長鎖(C10-C24)脂肪族カルボン酸である。用いられる脂質は、ステアリル・アルコール、パルミチル・アルコール、及びセチル・アルコールなどの脂肪アルコール、好ましくはセチル・アルコール、を含む。用いられる脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸のエステル、例えばグリセリル・モノステアレート、グリセリル・モノパルミテート、グリセリル・トリパルミテート、グリセリル・ベヘネート、及び水素添加ヒマシ油、を含み、好ましくはグリセリル・モノステアレート及び水素添加ヒマシ油である。
【0070】
本発明の別の特徴は、酸溶解性又は膨潤性ポリマーと組み合わせた脂質のブレンドの使用である。組成物中のpH依存性ポリマーと脂質の比は、1:0.5乃至1:40、好ましくは1:1乃至1:35の範囲にある。薬物対脂質の比は、1:0.1乃至1:8、好ましくは1:0.4乃至1:6の範囲にある。薬物とpH依存性ポリマーの比は、1:0.1乃至1:1、好ましくは1:0.1乃至1:0.6の範囲にある。
【0071】
組成物は、また、脂質−ポリマー・マトリクスへの薬物のマイクロカプセル封入によって作ることもできる。薬物のマイクロカプセル封入は、乳化、溶媒蒸発又は溶媒抽出又は脂質−ポリマー溶液又は脂質−ポリマー溶液における薬物の分散を用いる薬物のスプレー乾燥、によって、好ましくは溶媒蒸発及びスプレー乾燥技術によるマイクロカプセル封入、によって達成される。好ましい界面活性剤は、溶媒蒸発によるマイクロカプセル封入のためのポリビニル・アルコールである。好ましくは、溶媒は、薬物、脂質、及びポリマーがすべてその溶媒に可溶であるように選択される。
【0072】
本発明の別の特徴では、溶媒蒸発によるマイクロカプセル封入、スプレー乾燥、スプレー凝固、溶融顆粒化、又はトレー乾燥法により、薬物を脂質−ポリマー・マトリクスに分散させることによって医薬組成物が得られる。薬物、脂質、及びポリマーの可溶化のために選ばれる溶媒は、ジクロロメタンやクロロホルムなどの塩素添加炭化水素である。
【0073】
味マスクされた薬物の微粒子は、乳化溶媒蒸発技術によるマイクロカプセル封入によって得られる。分散相は、脂質−ポリマー溶液に分散又は溶解された薬物を含む有機溶媒であり、分散媒質は蒸留水である。脂質とポリマーが有機溶媒に溶解される。この溶液に薬物が加えられ、その後、有機相がポリビニル・アルコール(0.1乃至1重量%)を含む蒸留水に加えられる。500-1000 rpmという一定速度で、室温での機械的攪拌が2-3時間続けられる。溶媒を蒸発させ、得られた微粒子を濾過によって分離し、5-10時間凍結乾燥させる。
【0074】
あるいはまた、組成物の粒子はスプレー乾燥によって得ることができる。脂質とポリマーが有機溶媒に溶解される。この溶液に薬物が溶解又は分散され、スプレー乾燥されて味マスクされた微粒子が得られる。乾燥気体は、窒素、アルゴン、及び二酸化炭素、などの不活性気体、又は空気でよい。好ましい気体は空気である。スプレー乾燥機への気体の導入温度は用いる溶媒の選択によるが、35-90℃、好ましくは35-75℃の範囲であってよい。気体の排気温度は、同様に溶媒の選択によるが、25-75℃、好ましくは25-55℃の範囲である。脂質とポリマーは、ジクロロメタン又はクロロホルムで溶解され、薬物は脂質−ポリマー溶液に溶解又は分散される。得られた混合物をスプレー乾燥させて微粒子が得られる。
【0075】
本発明の味マスクされた粒子は、また、トレーでスラブを鋳造することによっても得られる。脂質とポリマーが有機溶媒に溶解され、脂質−ポリマー溶液に薬物が分散又は溶解される。得られた溶液がトレーに注がれてスラブが鋳造される。溶媒が25-30℃で2-3時間蒸発させられ、残った溶媒はスラブを真空下で25-30℃で24時間乾燥させて除去される。乾燥物は、サイズを定めて40メッシュの篩に通される。
【0076】
脂質は良い膜を形成しないので、脂質だけで完全なコーティングを行うには多量の脂質で医薬を脂質マトリクスに完全に分散させることが必要になる。溶融顆粒化やスプレー凝固などの技術も、薬物が脂質マトリクスに分散されることが要求されるので、多量の脂質を必要とする。溶融顆粒化の間、薬物を分散するために要求させる大量の脂質は、本明細書で開示された他の実施例で用いられる脂質の量に比べて実施例5及び実施例9で必要とされる脂質の量から明らかである。本発明の別の特徴は、溶媒中の脂質−ポリマー溶液を用いて薬物を脂質−ポリマー・マトリクスに分散させて、組成物中で必要とされる脂質の量を減らすことにある。
【0077】
本発明の味マスクされた粒子は、また、溶融顆粒化によっても得られる。脂質は循環する水糟に取り付けられたジャケット付き容器に入れられる。循環する水の温度は、脂質が融点よりも3-5℃高く保たれるように設定される。ポリマーが攪拌下で溶融脂質に分散され、引き続き薬物が加えられる。循環する水の温度が徐々に下げられ、溶融脂質が冷却される。こうして得られた固体塊をサイズ分けして40メッシュの篩に通す。
【0078】
実施例5や9に見られるように高い量の脂質を含む組成物からの薬物放出は、もっと低量の脂質をポリマーと組み合わせて用いる他の組成物に比べてゆっくりである。
【0079】
本発明で得られる味マスクされた粒子や顆粒は、天然又は人工芳香剤などの芳香剤、クエン酸及び酒石酸、スクロース、サッカリン、及びアスパルテームなどの甘味料、及びその他の医薬的に受容される賦型剤と混合して、従来のような、チュアブル又は分散性錠剤、ドライシロップ、懸濁物、小袋、または任意の他の適切な経口投薬形態として製剤することができる。本発明で得られる味マスクされた粒子及び顆粒は、酸溶解性又は膨潤性ポリマーと脂質のブレンドを含んで成り、液体に戻すpH>3.5の媒質を用いて懸濁させることができる。
【0080】
本明細書はまた、完全なステアリン酸コーティングを有するセフロキシム・アキセチルを含むドライシロップ製品(Glaxo Wellcome Operations, Harmire Road, Barnard Castle county Durham, DL 12 8DT, UKから市販されている、販売Glaxo India Limited)からの薬物放出を本発明の組成物と比較する。セフロキシム・アキセチルは、腸領域に比べて胃の上部で良く吸収される。Dantzig等(Anne H. Dantzig, Dale C. Duckworth, Linda B. Tabas, Biochimica et Biophysica Acta 1191, 1994, 7-13)は、セフロキシム・アキセチルが腸管でエステラーゼによってセフロキシムに加水分解されて腸管におけるセフロキシム・アキセチルの濃度が減少し、その結果吸収が減少してヒトにおけるセフロキシム・アキセチルの生物学的利用能が低下することを示している。セフロキシム・アキセチルは、もともと生物学的利用能が32-50%と低い。したがって、製剤による生物学的利用能のさらなる低下は最小にすべきである。したがって、市販されている製品の溶解は、セフロキシム・アキセチル錠剤の溶解媒質である0.07 N HClを媒質として用いて酸性pHで行われた(米国薬局方26のモノグラフ)。
【0081】
セフロキシム・アキセチルを含むCeftumサンプルの溶解が、125 mgの一用量(one dose)に相当するサンプル重量4.18 gで行われた(41.8 g/50 mlで5 mlが125 mgのセフロキシムに相当)。サンプルは溶解の前に900 mlの媒質から取り出された溶解媒質で濡らされ、その後再び溶解容器に入れられた。サンプルを濡らすのに用いられたガラスのビーカーは、溶解の前に余分に取り出された溶解媒質でゆすがれ、再び溶解容器に入れられた。セフロキシム・アキセチルの放出は、37±0.5℃で100 rpmで回転するUSPタイプII装置を用いて、900 mlの0.07 N塩酸を含むバッファー液中で決定された。サンプルは、30、60、120、180、及び240分で抽出された。各回に抽出された量は新しい媒質で補充されてシンク(sink)状態が維持された。放出された薬物の量は、30分で40%、60分で50%、120分で64.6%、180分で69.5%、そして240分で77.17%であった。
【0082】
実施例1と2は、酸溶解性/膨潤性ポリマーを調製する方法を開示している。以下で示す実施例3から9までに例示される味マスクされた医薬組成物は、時間的な薬物放出について調べられた。サンプルは、溶解の前に900 mlの媒質から取り出された溶解媒質で濡らされた後、再び溶解容器に入れられた。サンプルを濡らすために用いたガラス・ビーカーは、溶解の前に余分に取り出された溶解媒質でゆすがれ、再び溶解容器に入れられた。
【0083】
味マスクされた粒子からのセフロキシム・アキセチルは、37±0.5℃に維持された900 mlの0.07 N塩酸中で、100 rpmで回転させたUSPタイプII装置を用いて測定された。サンプルは、30、60、120、180、及び240分に抽出された。各回に抽出された量は新しい媒質で補充されてシンク(sink)状態が維持された。本発明の医薬組成物は薬物の苦い味をマスクし、唾液のpHで薬物を放出しないが、胃のpHでは遅延なく薬物を放出し、水に溶けない。
【0084】
味マスクされた粒子からの塩酸シプロフロキサシンは、37±0.5℃で900 mlの0.07 N塩酸緩衝剤中で、100 rpmで回転させたUSPタイプII装置を用いて測定された。サンプルは、30、60、120、180、及び240分に抽出された。各回に抽出された量は新しい媒質で補充されてシンク(sink)状態が維持された。本発明の医薬組成物は薬物の苦い味をマスクし、唾液のpHで薬物を放出しないが、胃のpHでは遅延なく薬物を放出し、水に溶けない。
【0085】
味マスクされた組成物及びその性質について、例示的な非限定的な実施例について以下に説明する。
【実施例1】
【0086】
酸溶解性又は膨潤性ポリマーが溶液重合によって合成された。疎水性モノマー、塩基性モノマー、及び任意に親水性モノマーがジメチル・ホルムアミド溶媒に溶解された。ポリマーはメチル・メタクリレート65重量%、ヒドロキシエチル・メタクリレート24重量%、そしてビニル・ピリジン11重量%のモノマー組成物を有す。アゾ開始剤、アゾ・ビス・イソブチロニトリル、がジメチル・ホルムアミド中のモノマー溶液に加えられた。反応混合物は窒素ガスでパージされて不活性雰囲気が形成された。重合反応は、反応混合物を65℃に18時間加熱して行われた。こうして合成されたポリマーは、非溶媒(この場合は水)の中で沈澱によって回収され、真空下、45℃で乾燥された。合成されたポリマーの分子量はWatersゲル浸透クロマトグラフィーと基準としてのポリスチレン標準(Polyscience Inc. USA)を用い、Styragelカラムを用いて決定された。ポリマーの分子量は53,000である。
【実施例2】
【0087】
酸溶解性又は膨潤性ポリマーが溶液重合によって合成された。疎水性モノマー、塩基性モノマー、及び任意に親水性モノマーがジメチル・ホルムアミド溶媒に溶解された。ポリマーはメチル・メタクリレート73重量%、ヒドロキシエチル・メタクリレート18重量%、そしてビニル・ピリジン9重量%のモノマー組成物を有す。アゾ開始剤、アゾ・ビス・イソブチロニトリル、がジメチル・ホルムアミド中のモノマー溶液に加えられた。反応混合物は窒素ガスでパージされて不活性雰囲気が形成された。重合反応は、反応混合物を65℃に18時間加熱して行われた。こうして合成されたポリマーは、非溶媒(この場合は水)の中で沈澱によって回収され、45℃、真空下で乾燥された。合成されたポリマーの分子量はWatersゲル浸透クロマトグラフィーと基準としてのポリスチレン標準(Polyscience Inc. USA)を用い、Styragelカラムを用いて決定された。ポリマーの分子量は52,000である。
【実施例3】
【0088】
味マスクされた組成物は、有機溶媒中の脂質とポリマーの溶液に薬物を溶解し、水中でのマイクロカプセル封入と有機溶媒の蒸発によって当該薬物を含む微粒子を得るという方法で作られる。
【0089】
脂質−ポリマー溶液:多様な脂質−ポリマー・ブレンドを含む組成物が表1に示されている。実施例1で調製された酸溶解性ポリマーがすべての組成物で、pH依存性ポリマーの一つとして用いられている。用いた溶媒の量は、クロロホルム及びジクロロメタンなどの塩素添加炭化水素7 mlである。脂質とポリマーの量は表1に示されている。
【0090】
味マスクされた微粒子は、乳化溶媒蒸発技術によって得られた。セフロキシム・アキセチルが、必要な量の溶媒で作られた脂質−ポリマー溶液に溶解された。薬物を含む脂質−ポリマー溶液が、蒸留水の糟に機械的に攪拌しながら滴下付加された。薬物を含む脂質−ポリマー溶液の分散を促進するために蒸留水に重量で0.1%のポリビニル・アルコールが加えられた。500 rpmという一定速度で室温における機械的攪拌が3-4時間続けられた。溶媒を蒸発させ、得られた微粒子を濾過によって分離し、7時間凍結乾燥させた。調製された組成物の薬物放出パターンがモニターされ、その結果は表2に示されている。
【表1】

【表2】

【実施例4】
【0091】
味マスクされた組成物は、薬物を含む脂質−ポリマーのスラブを鋳造して作られる。有機溶媒中の脂質−ポリマー溶液が薬物を溶液又は分散の形で含むトレーに鋳造される。溶媒を蒸発させ、塊(マス)を40メッシュの篩に通してサイズ分けすることによって粒子が得られる。
【0092】
脂質−ポリマー溶液:多様な脂質−ポリマー・ブレンドを含む組成物が表3に示されている。実施例1で調製された酸溶解性ポリマーがすべてのコーティング組成物で、pH依存性ポリマーの一つとして用いられている。用いた溶媒の量は、クロロホルム及びジクロロメタンなどの塩素添加炭化水素7 mlである。脂質とポリマーの量も表3に示されている。
【0093】
味マスクされた粒子は、薬物を分散された形で含む脂質−ポリマースラブを鋳造して得られた塊(マス)をサイズ分けして調製される。塩酸シプロフロキサシンが、必要な量の溶媒で作られたクロロホルム中の脂質−ポリマー溶液に加えられた。薬物を含む脂質−ポリマー溶液がトレーに注がれてスラブが鋳造された。溶媒を25℃で2-3時間蒸発させた。残った溶媒は、組成物を25℃で24時間、真空中に置くことによって除去された。調製された組成物の薬物放出パターンがモニターされ、結果は表4に示されている。
【表3】

【表4】

【実施例5】
【0094】
味マスクされた粒子は溶融顆粒化法によって得られる。脂質は循環する水槽に取り付けられたジャケット付き容器に入れられる。循環する水の温度は、脂質がその融点よりも3-5℃高い温度に維持されるように設定される。実施例2で調製された酸溶解性ポリマーがこの組成物で用いられる。ポリマーが攪拌下で溶融脂質に分散され、続いて塩酸シプロフロキサシンが加えられる。循環する水の温度を徐々に下げて溶融脂質を冷却する。こうして得られた固体の塊(マス)は40メッシュの篩を通してサイズ分けされる。多様な脂質−ポリマー・ブレンドを含む組成物が表5に示されている。調製された組成物の薬物放出パターンがモニターされ、結果が表6に示されている。
【表5】

【表6】

【実施例6】
【0095】
味マスクされた微粒子はスプレー乾燥によって得られる。脂質とポリマーが有機溶媒に溶解され、この溶液に薬物が溶解又は分散され、スプレー乾燥されて味マスクされた微粒子が得られる。乾燥ガスは窒素、アルゴン、及び二酸化炭素などの不活性気体、又は空気であってもよい。本発明での好ましい気体は空気である。気体導入温度は35-75℃の範囲である。気体排出温度は35-55℃の範囲である。脂質とポリマーはクロロホルムで溶解され、セフロキシム・アキセチルがこの脂質−ポリマー溶液に溶解される。実施例1で調製された酸溶解性ポリマーが組成物で用いられる。得られた混合物をスプレー乾燥して微粒子が得られる。多様な脂質−ポリマー・ブレンドを含む組成物が表7に示されている。調製された組成物の薬物放出パターンがモニターされ、結果が表8に示されている。
【表7】

【表8】

【実施例7】
【0096】
味マスクされた粒子は溶融顆粒化法によって得られる。脂質は循環する水槽に取り付けられたジャケット付き容器に入れられる。循環する水の温度は、脂質がその融点よりも3-5℃高い温度に維持されるように設定される。実施例2で調製された酸溶解性ポリマーがこの組成物で用いられる。ポリマーが攪拌下で溶融脂質に分散され、続いてセフロキシム・アキセチルが加えられる。循環する水の温度を徐々に下げて溶融脂質を冷却する。こうして得られた固体の塊(マス)は40メッシュの篩を通してサイズ分けされる。多様な脂質−ポリマー・ブレンドを含む組成物が表9に示されている。調製された組成物の薬物放出パターンがモニターされ、結果が表10に示されている。
【表9】

【表10】

【0097】
本発明の利点は次のようなものである:
1.本明細書に記載された組成物は、逆腸溶性(reverse enteric)又は酸溶解性ポリマーを脂質又は脂質のブレンドと組み合わせて含み、それが胃のpHでの薬物の急速な放出を促進し、組成物における薬物に対して必要なポリマーの総量が低下する。
【0098】
2.脂肪酸の味マスキングへの応用は公知であるが、薬物を完全にコーティングするためには大量が必要とされ、また疎水性であるために薬物の放出が遅くなる。本発明はpH依存性ポリマーの利用を開示しており、これは唾液のpHでは縮んだままであるので、味の抑制に相乗的に作用する。しかしながら、胃のpHではポリマーは溶解して実質的な量の薬物を遅延なく放出する。
【0099】
3.本発明は、脂質とあわせた酸溶解性ポリマーの利用を開示しており、このポリマーは水中で、またpH>3.5で縮んだままである。これらの製剤は、水溶性ポリマーと脂質のブレンドを用いる組成物に比べて有利であり、後者の製剤は液体経口製剤には適さない。
【0100】
4.酸溶解性ポリマーを脂肪酸とあわせて用いることは、より少ない脂肪酸とポリマーの量で味マスキングを達成するのに役立つ。脂質−ポリマー溶液を用いて、脂質−ポリマー・マトリクスに薬物を分散させることで、苦い薬物を味マスクするために組成物で必要な脂質の量がさらに少なくなる。
【0101】
5.酸溶解性ポリマーを組成物で用いることは、薬物を胃の酸性pHで遅延なしに放出することを助け、さらにポリマーは唾液のpHで薬物を放出しない。したがって、このような組成物は、脂質をpH非依存性ポリマー及び腸溶性ポリマーと組み合わせて用いる組成物に比べて薬物を早急にほぼ完全に放出する。
【0102】
6.本発明で用いられる酸溶解性ポリマーは、Eudragit Eなどのジメチル・アミノエチル・メタクリレートを含む逆腸溶性コーティング物質が示すような薬物セフロキシム・アキセチルとのネガティブな相互作用を示さない。したがって、脂質−ポリマー・マトリクスを含む本発明の組成物は、Eudragit Eとのネガティブな相互作用を示す薬物に適している。
【0103】
7.3.5より高いpHでも縮んだままでいる酸溶解性ポリマーの利用は、3.5以上のpHで液体に戻す必要があるドライシロップや懸濁物組成物などを味マスクする場合、pH 5.5まで膨潤性を示す逆腸溶性ポリマーEudragit Eを導入するシステムと異なり、柔軟性が高い。
【0104】
8.本発明の酸溶解性ポリマーを用いる組成物は、ステアリン酸のみによる薬物の完全脂質コーティングに基づく市販されている組成物Ceftumから放出される量に比べて薬物を急速に放出する。これは、胃の上部でより良い吸収性を有するような、苦い薬物であるセフロキシム・アキセチルの場合において好都合である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物、脂質成分、及びpH依存性ポリマーを含む医薬組成物であって、該pH依存性ポリマーは酸溶解性又は膨潤性であって、化学式:P[A(x)B(y)C(z)]を有し、ここでPは、(A)疎水性モノマー、(B)塩基性モノマー、及び(C)親水性モノマーを含むポリマーであり、(x) = 30-95重量%、(y) = 5-70重量%, (z) = 0-60重量%であり、x + y + z = 100重量%であるように含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
該pH依存性ポリマーは酸溶解性ポリマー又は酸膨潤性ポリマーから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該酸溶解性又は膨潤性ポリマーが、モノマー、メチル・メタクリレート、ヒドロキシ・エチル・メタクリレート、及びビニル・ピリジンから成り、それぞれ、50-75重量%、15-35重量%、及び約5-15重量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該脂質成分は、脂肪酸、脂肪酸のエステル、脂肪アルコール、炭化水素、中性脂肪、及びワックスから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
該脂肪酸は飽和又は不飽和脂肪酸の群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
該飽和脂肪酸は、ラウリン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸から成る群から選択される長鎖脂肪族カルボン酸を含むことを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
該脂肪アルコールは、ステアリル・アルコール、パルミチル・アルコール、及びセチル・アルコールから成る群から選択される長鎖脂肪族アルコールを含むことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
該脂肪アルコールはセチル・アルコールであることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
該脂肪酸のエステルは、グリセリンと脂肪酸のエステルを含んで成り、グリセリル・モノステアレート、グリセリル・モノパルミテート、グリセリル・トリパルミテート、グリセリル・ベヘネート、及び水素添加ヒマシ油、から成る群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
該脂肪酸のエステルは、グリセリル・モノステアレートと水素添加ヒマシ油から選択されることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
該脂質成分が単一の脂質又は脂質の組み合わせとして用いられることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
pH依存性ポリマー対脂質成分の比が1:0.5乃至1:40の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
pH依存性ポリマー対脂質成分の比が1:1乃至1:35の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
薬物対脂質の比が1:0.1乃至1:8の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
薬物対脂質の比が1:0.4乃至1:6の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
薬物対pH依存性ポリマーの比が1:0.1乃至1:1の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
薬物対pH依存性ポリマーの比が1:0.1乃至1:0.6の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
該薬物がそのままの形又は医薬的に受容されるその塩又はエステル又はアミドとして用いられることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
該薬物は、エリスロマイシン、アジスロマイシン、及びクラリスロマイシンから成る群から選択されるマクロライド抗生物質;シプロフロキサシン、エンロフロキサシン、オフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、及びノルフロキサシンから成る群から選択されるフルオロキノロン;セフロキシム、セファクロール、セファレキシン、セファドロキシル、及びセプフォドキシム・プロキセチルから成る群から選択されるセファロスポリン;イブプロフェン、アスピリン、アセトアミノフェン、及びジクロフェナック・ナトリウムから成る群から選択される非ステロイド性抗炎症剤及び鎮痛剤;エトリコキシブとセレコキシブから成る群から選択されるCOX2阻害剤;シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、クロルフェニラミン・マリエートから成る群から選択される抗ヒスタミン剤;リネゾリドを含むオキサゾリジノン;及びデキストロメトルファン;から成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
該組成物は、該薬物がポリマー−脂質マトリクス内に分散されている粒子の形態であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
該組成物は、粒子自体、又は医薬的に受容され得る投薬形態にある粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
該組成物は、ドライシロップと懸濁液から選択される液体経口投薬形態であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
該組成物は、チュアブル錠剤、発泡錠剤、急速崩壊錠剤、及び分散性錠剤から成る群から選択される固体投薬形態であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
薬物、脂質成分、及びpH依存性ポリマーを含む医薬組成物を調製する方法であって、該pH依存性ポリマーは酸溶解性又は膨潤性であり、化学式:P[A(x)B(y)C(z)]を有し、ここでPは、(A)疎水性モノマー、(B)塩基性モノマー、及び(C)親水性モノマーを含むポリマーであり、(x) = 30-95重量%、(y) = 5-70重量%、(z) = 0-60重量%であり、x + y + z = 100重量%であり、該方法は、マイクロカプセル封入、スプレー乾燥、メルト顆粒化、トレー乾燥法、及びスプレー凝固、から成る群から選択される技法によって、ポリマーと脂質成分のマトリクスに薬物を分散又はコーティングすることを含んで成る方法。
【請求項25】
該方法は、該ポリマーと脂質をクロロホルムとジクロロメタンから選択される有機溶媒に溶解して脂質−ポリマー溶液を形成するステップ、該薬物を該溶液に加えて有機相を形成するステップ、該有機相を0.1乃至1重量%の量でポリビニル・アルコールを含む蒸留水に分散させるステップ、該混合物を約500-1000 rpmの速さ及び25-30℃の温度範囲で、2-3時間、機械的に連続攪拌するステップ、次に濾過によって得られた微粒子を分離し、該粒子を5-10時間凍結乾燥するステップによる乳化溶媒蒸発法を用いるマイクロカプセル封入を含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
該方法は、該薬物を溶液又は分散形態で含むジクロロメタン又はクロロホルム中の該ポリマーと脂質の溶液から鋳造されるスラブを一定サイズにするステップ、及び25-30℃で蒸発によって該溶媒を除去するステップを含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項27】
該ポリマーと該薬物を融点よりも3-5℃高い温度に保たれた溶融した脂質に攪拌下で分散して溶融塊を生成し、それを徐々に冷却して顆粒を形成し、次にその顆粒を一定サイズにすることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項28】
該方法は、該薬物を含む該脂質−ポリマー溶液をスプレー乾燥させて微粒子を得るステップを含み、次にその微粒子を窒素、アルゴン、二酸化炭素、及び空気、から成る群から選択される乾燥気体の存在下で乾燥することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項29】
該乾燥気体は空気であることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
該pH依存性ポリマーは酸溶解性ポリマー又は酸膨潤性ポリマーから成る群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項31】
該酸溶解性又は膨潤性ポリマーは、モノマー、メチル・メタクリレート、ヒドロキシ・エチル・メタクリレート、及びビニル・ピリジン、をそれぞれ、50-75%、15-35%、及び約5-15重量%の範囲で含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項32】
該脂質成分は、脂肪酸、脂肪酸のエステル、脂肪アルコール、炭化水素、中性脂肪、及びワックスから成る群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項33】
該脂肪酸は飽和又は不飽和脂肪酸の群から選択されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
該飽和脂肪酸は、ラウリン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸から成る群から選択される長鎖脂肪族カルボン酸を含むことを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
該脂肪アルコールは、ステアリル・アルコール、パルミチル・アルコール、及びセチル・アルコールから成る群から選択される長鎖脂肪族アルコールを含むことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項36】
該脂肪アルコールはセチル・アルコールであることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項37】
該脂肪酸のエステルは、グリセリンと脂肪酸のエステルを含んで成り、グリセリル・モノステアレート、グリセリル・モノパルミテート、グリセリル・トリパルミテート、グリセリル・ベヘネート、及び水素添加ヒマシ油、から成る群から選択されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項38】
該脂肪酸のエステルは、グリセリル・モノステアレートと水素添加ヒマシ油から選択されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項39】
該脂質成分が単一の脂質又は脂質の組み合わせとして用いられることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項40】
pH依存性ポリマー対脂質成分の比が1:0.5乃至1:40の範囲にあることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項41】
pH依存性ポリマー対脂質成分の比が1:1乃至1:35の範囲にあることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項42】
薬物対脂質の比が1:0.1乃至1:8の範囲にあることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項43】
薬物対脂質の比が1:0.4乃至1:6の範囲にあることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項44】
薬物対pH依存性ポリマーの比が1:0.1乃至1:1の範囲にあることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項45】
薬物対pH依存性ポリマーの比が1:0.1乃至1:0.6の範囲にあることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項46】
薬物がそのままの形又は医薬的に受容され得るその塩又はエステル又はアミドとして用いられることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項47】
該薬物は、エリスロマイシン、アジスロマイシン、及びクラリスロマイシンから成る群から選択されるマクロライド抗生物質;シプロフロキサシン、エンロフロキサシン、オフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、及びノルフロキサシンから成る群から選択されるフルオロキノロン;セフロキシム、セファクロール、セファレキシン、セファドロキシル、及びセプフォドキシム・プロキセチルから成る群から選択されるセファロスポリン;イブプロフェン、アスピリン、アセトアミノフェン、及びジクロフェナック・ナトリウムから成る群から選択される非ステロイド性抗炎症剤及び鎮痛剤;エトリコキシブとセレコキシブから成る群から選択されるCOX2阻害剤;シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、及びクロルフェニラミン・マリエートから成る群から選択される抗ヒスタミン剤;リネゾリドを含むオキサゾリジノン;及びデキストロメトルファン;から成る群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項48】
該組成物は、該薬物がポリマー−脂質マトリクスに分散されている粒子の形態であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項49】
該組成物は、粒子自体、又は医薬的に受容され得る投薬形態にある粒子を含むことを特徴とする請求項24に記載の組成物。

【公表番号】特表2008−506770(P2008−506770A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522124(P2007−522124)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/IN2004/000379
【国際公開番号】WO2006/061846
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(506372863)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (4)
【出願人】(307028600)
【出願人】(307028596)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
【Fターム(参考)】