薬物を供給するためのシステム及び方法
パッチポンプ器具は、概して、少なくとも1つの流体供給源と、流体連通部と、電気化学アクチュエータとを備える。流体連通部は流体供給源と流体連通している。電気化学アクチュエータは、流体供給源から流体連通部に流体を供給するように動作する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年7月26日に出願された米国仮特許出願第60/952,217号の利益を主張する。本願はまた、2007年11月21日に出願された米国仮特許出願第60/989,605号の利益も主張する。これらの出願は双方とも、参照により本明細書に援用される。
【0002】
発明の背景
本発明は、概して医療器具の分野であり、より詳細には、薬物供給器具の分野である。
【背景技術】
【0003】
薬物供給には、薬物又は他の治療化合物を体内に供給することが関わる。典型的には、薬物は、多くの要因に基づき慎重に選択された技術を用いて供給される。そうした要因としては、限定はされないが、薬物の用量、薬物動態学、複雑性、費用、及び吸収性などの薬物の特徴、所望の薬物供給プロファイルの特徴(一様なもの、非一様なもの、若しくは患者の自己調節によるものなど)、投与様式の特徴(患者、医師、看護師、若しくは他の介護者にとってのその投与様式の容易性、費用、複雑性、及び有効性など)、又は他の要因若しくはこれらの要因の組み合わせが挙げられる。
【0004】
従来の薬物供給技術は、様々な課題を提起する。ある剤形の経口投与は比較的単純な供給様式であるが、薬物のなかには、経口投与された場合に所望のバイオアベイラビリティを実現しなかったり、及び/又は望ましくない副作用を生じたりし得るものもある。さらに、治療上の必要によっては、経口供給に伴う投与時点から実効時点までの遅延が望ましくないこともある。注射による非経口投与は、所望の部位への薬物の比較的迅速な供給をもたらすなど、経口投与に伴う問題のいくつかを回避し得るが、従来の注射は不便で、自己投与が難しく、且つ患者にとっては痛い、又は不快なものであり得る。さらに、特定の供給/放出プロファイルを、特に持続的な期間にわたって実現するには、注射は好適でないことがある。
【0005】
従来の経皮パッチなどの受動的な経皮技術は、ユーザにとって比較的簡便であり得るとともに、経時的に比較的一様な薬物放出を可能とし得る。しかしながら、薬物のなかには、高度に帯電しているか、又は極性の高い薬物、ペプチド、タンパク質及び他の巨大分子活性薬剤などのように、角質層を透過せず、効果的に供給されないものもあり得る。さらに、薬物が効果を生じるまでには、比較的長い始動時間が必要とされ得る。従って、薬物放出は比較的連続したものとなり得るが、これは場合によっては望ましくないこともある。また、薬物の有効負荷量の相当な部分を供給できないこともあり、パッチが取り外されるとそれがパッチに残り得る。
【0006】
イオントフォレシス、ソノフォレシス、及びポレーション技術を含む能動的な経皮システムは、高価であり得るとともに、予測し得ない結果を生じることもある。能動的な経皮供給に適しているのは、水性で安定な化合物などの一部の薬物製剤だけである。さらに、複雑なシステムを使用することなしには、かかるシステムを用いて薬物の供給を調節又は制御することは不可能であり得る。
【0007】
注入ポンプシステムは大型であり得るとともに、ポンプと注入装置との間にチューブ材が必要となり得るため、クオリティ・オブ・ライフに影響する。さらに、注入ポンプは高価であり得るとともに、使い捨てし得るものではない。以上から、こうした、及び他の欠点の一部又は全てを克服する新規の改良された薬物供給システム及び方法を提供するならば、望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
パッチポンプ器具は、概して、少なくとも1つの流体供給源と、流体連通部と、少なくとも1つの電気化学アクチュエータとを備える。流体連通部は流体供給源と流体連通している。電気化学アクチュエータは、流体供給源から流体連通部に流体を供給するように動作する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の簡単な説明
【図1】流体供給システムの実施形態を示す概略ブロック図である。
【図2(a)】電気化学アクチュエータの実施形態の概略図であり、充電状態の電気化学アクチュエータを示す。
【図2(b)】電気化学アクチュエータの実施形態の概略図であり、放電するときの電気化学アクチュエータを示す。
【図3(a)】電気化学アクチュエータの別の実施形態の概略図であり、充電状態の電気化学アクチュエータを示す。
【図3(b)】電気化学アクチュエータの別の実施形態の概略図であり、放電するときの電気化学アクチュエータを示す。
【図4(a)】ポンプ器具の実施形態の側断面図であり、組み立てられていない位置のポンプ器具を示す。
【図4(b)】ポンプ器具の実施形態の側断面図であり、組み立てられた位置のポンプ器具を示す。
【図4(c)】ポンプ器具の実施形態の側断面図であり、そこから流体を圧送しているポンプ器具を示す。
【図5(a)】ポンプ器具の別の実施形態を示し、組み立てられていない位置のポンプ器具の上面平面図である。
【図5(b)】ポンプ器具の別の実施形態を示し、組み立てられていない位置のポンプ器具の側断面図である。
【図5(c)】ポンプ器具の別の実施形態を示し、組み立てられた位置のポンプ器具の上面平面図である。
【図5(d)】ポンプ器具の別の実施形態を示し、組み立てられた位置のポンプ器具の側断面図である。
【図6(a)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、ポンプ器具の基部に取り付けられる針挿入機構を示す。
【図6(b)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、ポンプ器具の基部を貫通して針及びカニューレを挿入する針挿入機構を示す。
【図6(c)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、組み立てられていない位置のポンプ器具を示す。
【図6(d)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、組み立てられた位置のポンプ器具を示す。
【図7(a)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、組み立てられていない位置のポンプ器具を示す。
【図7(b)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、組み立てられた位置のポンプ器具を示す。
【図8(a)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、組み立てられていない位置のポンプ器具を示す。
【図8(b)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、組み立てられた位置のポンプ器具を示す。
【図9】ポンプ器具の実施形態で使用され得る電気回路の実施形態を示す回路図である。
【図10】変位曲線の例示的で非限定的な一実施形態を示すグラフであり、図9の電気回路に配置される電気化学アクチュエータについての時間に対する変位挙動を示す。
【図11】流体流動曲線の例示的で非限定的な一実施形態を示すグラフであり、図9の電気回路に関連する流体供給源についての時間に対する流体の流れ挙動を示す。
【図12】電気接点を備える電気回路の実施形態を示す回路図である。
【図13】可変抵抗器を備える電気回路の実施形態を示す回路図である。
【図14】スイッチを備える電気回路の実施形態を示す回路図である。
【図15】変位曲線を示すグラフであり、図14の電気回路に関連する流体供給源についての時間に対する変位挙動を示す。
【図16】制御システムのある実施形態を備える器具の実施形態の概略図である。
【図17】異なる電気化学アクチュエータによって動作する複数の流体供給源を備えるポンプ器具の実施形態の側断面図である。
【図18】同じ電気化学アクチュエータによって動作する複数の流体供給源を備えるポンプ器具の実施形態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
以下には、薬物を含み得る流体を、それを必要としている患者に供給するシステム及び方法の実施形態が記載される。患者は、例えばヒト又は他の哺乳動物であってよい。実施形態において、本システム及び方法は、流体の皮下供給又は静脈内供給に適したポンプ器具を具体化してもよく、この流体は、1つ又は複数の薬物を含んでも、又は含まなくともよい。本ポンプ器具は電気化学アクチュエータを用いてもよく、これはバッテリとポンプとの双方の特徴を有し得る。具体的には、電気化学アクチュエータは、放電時に圧送力を生じる電気化学セルを備え得る。このように、本ポンプ器具は従来の薬物ポンプと比べて比較的少ない数の部品を有し得るため、従って本ポンプ器具は、従来の薬物ポンプと比べて比較的コンパクトで、使い捨てができ、且つ信頼性が高い。本ポンプ器具のこうした特質により、注入薬物療法に伴う費用及び不快感を低減することが可能となり得る。さらに、かかるポンプ器具は、制御装置及び/又は他の回路部品などの、ポンプ器具からの薬物又は流体の流れを調整するように動作する制御手段を有し得る。かかる制御手段により、本ポンプ器具を使用した1つ又は複数の放出プロファイルの実行を可能とすることができ、放出プロファイルとしては、特に、一様な流れ、非一様な流れ、連続した流れ、不連続な流れ、プログラム化された流れ、スケジュール化された流れ、ユーザによって開始される流れ、又はフィードバック応答性の流れを要件とするものが含まれる。このように、本ポンプ器具は、他のポンプ器具と比べてより多様な薬物療法を効果的に遂行し得る。
【0011】
図1は、流体供給システム100の実施形態を示す概略ブロック図である。流体供給システム100は、概して、流体供給源104と結合する電気化学アクチュエータ102と流体連通部106とを備える。流体供給源104は、流体連通部106を介して標的108に供給される流体を含み得る。電気化学アクチュエータ102は、作動されるか、又はその他の方法で圧送力を生み出し、流体供給源104からの流体を流体連通部106に供給し得る。具体的には、電気化学アクチュエータ102は、そこで起こる電気化学反応に応じて容積又は位置が変化する任意の器具であり得る。例えば、電気化学アクチュエータ102は充電された電気化学セルを備えてもよく、電気化学セルが放電すると、その電気化学セルの少なくとも一部分が作動し得る。このように、電気化学アクチュエータ102は、動力内蔵アクチュエータ又はバッテリとアクチュエータとの組み合わせと見なすことができる。
【0012】
使用時、流体連通部106が標的108と結合され得るとともに、電気化学アクチュエータ102が動作し得る。具体的には、電気化学アクチュエータ102が放電して作動し得る。得られる力学的仕事は流体供給源104に作用し得るか、又は介在機構を通じて流体供給源104に伝達されてもよく、それによって流体が流体連通部106を通じて標的108に供給される。
【0013】
実施形態において、流体供給システム100は、薬物を人体に供給するためのシステムであってもよい。かかる実施形態において、流体供給源104は、リザーバ、ポーチ、若しくはブラダ、又は薬物を流体形態で収容する他の公知の流体供給源であってもよく、及び標的108は、薬物療法又は予防を必要としているヒトであってもよい。流体連通部106は、針、カテーテル、カニューレ、注入装置、又は、薬物供給のために人体に挿入されるか、又はその他の方法で結合される他の公知の供給器具であってもよい。電気化学アクチュエータ102で電気化学反応が起こると、電気化学アクチュエータ102は、薬物を流体供給源104から人体に送り得る。かかる薬物供給は、例えば、流体連通部106の位置及び/又は薬物の流入位置に応じて、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、心腔内、骨内、皮内、髄腔内、腹腔内、腫瘍内、硬膜外、及び/又は神経周囲へのものであり得る。
【0014】
実施形態において、流体供給システム100は、薬物を含む薬物製剤、つまり医薬品有効成分を含む治療薬又は予防薬を供給するために使用され得る。他の実施形態において、流体供給システム100は、薬物を含有しない流体を供給し得る。例えば、流体は生理食塩水か、又は造影剤などの診断用薬であってもよい。
【0015】
薬物は、純粋な形態であってもよく、又は当該技術分野において公知の1つ又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤を使用して、特に、溶液、懸濁液、若しくは乳剤中に配合されてもよい。例えば、その薬物に対する薬学的に許容可能な溶媒が提供されてもよく、それは本質的に、当該技術分野において公知の任意の水性又は非水性溶媒であり得る。水性溶媒の例としては、生理食塩水溶液、デキストロース又はマンニトールなどの糖の溶液、及び薬学的に許容可能な緩衝液が挙げられ、非水性溶媒の例としては、固定植物油、グリセリン、ポリエチレングリコール、アルコール、及びオレイン酸エチルが挙げられる。溶媒は、抗菌防腐剤、抗酸化剤、等張化剤、緩衝剤、安定剤、又は他の成分をさらに含み得る。
【0016】
本器具の実施形態により供給され得る薬物の代表的な例としては、限定はされないが、オピオイド系麻酔薬、例えば、フェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、モルヒネ、ヒドロモルホン、オキシコジエン(oxycodiene)及びそれらの塩;非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えば、ジクロフェナク、ナプロキセン、イブプロフィン(ibuprofin)、及びセレコキシブ;局所麻酔薬、例えば、リドカイン、テトラカイン、及びブピビカイン;ドパミン拮抗薬、例えば、アポモルヒネ、ロチゴチン、及びロピネロール(ropinerole);アレルギーの治療及び/又は予防に使用される薬物、例えば、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、抗コリン作動薬、及び免疫療法剤;鎮痙薬、例えば、チザニジン及びバクロフィン(baclofin);ビタミン、例えばナイアシン;セレギリン;並びにラサギリンが挙げられる。通常、皮下、筋肉内、若しくは静脈内注射又は他の非経口経路によって供給される、特に、本質的に任意のペプチド、タンパク質、生物学的製剤、又はオリゴヌクレオチドが、本明細書に記載される器具の実施形態を使用して供給され得る。実施形態において、本器具を使用して2種以上の異なる組み合わせの薬物が投与されてもよく、これは、薬剤を一定の割合で供給することのできる単一の、若しくは複数の供給ポートを用いるか、又は各薬剤の供給を個別に調節することが可能な手段によって行われる。例えば、2種以上の薬物は、同時に、若しくは連続的に、又はそれらの組み合わせで(例えば、重複して)投与することができる。
【0017】
本明細書に記載される流体供給システム100及び他のシステム並びに方法は、人体に薬物を送るものとして記載されるが、かかるシステム及び方法を用いることにより、任意の好適な生体適合性又は粘度の任意の流体を、任意の物体、生物又は無生物に供給し得る。例えば、本システム及び方法を用いて、他の生体適合性流体を、人間及び他の動物を含む生物体に供給し得る。さらに、本システム及び方法は、薬物又は他の流体を、人間以外の生物体、例えば動物及び植物生命体に供給し得る。また、本システム及び方法は、任意の流体を、任意の標的、生物又は無生物に供給してもよい。本明細書に記載されるシステム及び方法は、概して、動力内蔵アクチュエータ及び/又はバッテリとアクチュエータとの組み合わせを含む電気化学アクチュエータを使用して流体を供給するシステム及び方法である。
【0018】
かかる電気化学アクチュエータの実施形態は、概して、Chiang et al.による「Electrochemical Methods, Devices, and Structures」と題される米国特許出願第11/150,477号、Chiang et al.による「Electrochemical Actuator」と題される米国特許出願第11/881,830号、及びChiang et al.による「Electrochemical Actuator」と題される米国特許出願第12/035,406号に記載され、これらの各々は参照により本明細書に援用される。かかる電気化学アクチュエータは、容積又は位置の変化を受けることによって電圧又は電流の印加に反応する少なくとも1つの構成要素を備え得る。容積又は位置が変化することで力学的仕事が発生してもよく、それが流体供給源に作用し得るか、又は流体供給源に伝達され得ることにより、流体供給源から流体が供給され得る。
【0019】
実施形態において、電気化学アクチュエータは正電極と負電極とを備えてもよく、そのうちの少なくとも一方が作動電極である。電気化学アクチュエータのこうした、及び他の構成要素が電気化学セルを形成してもよく、セルは最初に充電され得る。電極間の回路を閉じると電気化学セルは放電し始め、作動電極が作動する。それによって作動電極は、例えば、流体供給源又は流体供給源に結合された伝達構造などの別の構造体に対し仕事を加え得る。その仕事により、流体が流体供給源から標的に圧送されるか、又はその他の形で送り出され得る。
【0020】
より具体的には、閉じた回路が形成されると、作動電極は容積又は位置の変化を受け得るとともに、この容積又は位置の変化によって流体供給源又は伝達構造に仕事が加わり得る。例えば、作動電極は、膨張するか、屈曲するか、座屈するか、折り重なるか、陥凹するか、伸長するか、収縮するか、又はその他の形で、容積、サイズ、形状、向き、配置、若しくは所在位置が変化を受けてもよく、それによって作動電極の少なくとも一部分の容積又は位置が変化を受ける。実施形態において、容積又は位置の変化は作動電極の一部分が受け得る一方、全体としての作動電極は逆の変化を受けてもよく、又は全く変化を受けなくともよい。電気化学アクチュエータは実際には、直列、並列、又はそれらの組み合わせで配置された多数の電気化学アクチュエータを備え得ることに留意すべきである。例えば、多数のかかる電気化学アクチュエータが互いに積み重ねられてもよい。別の例として、2つ以上の流体供給源に作用する1つ又は複数の電気化学アクチュエータを備えることにより、複数の薬剤の同時供給又は逐次供給が実現され得る。
【0021】
図2は、電気化学アクチュエータ202の実施形態の概略図である。図示されるとおり、電気化学アクチュエータ202は、正電極210と、負電極212と、電解質214とを備え得る。これらの構成要素が電気化学セルを形成してもよく、セルは最初に放電され、次に充電されてから使用されるか、又は図2(a)に示されるとおり、最初から充電されている。正電極210は、電解質214の存在下に膨張するように構成され得る。電極210と212との間の回路が閉じられると、電流が正電極210から負電極212に流れ得る。正電極210は容積の変化を受け、その結果、図2(b)に示されるとおり、正電極210の少なくとも一部分が長手方向に変位する。それにより正電極210が、流体リザーバ204か、又は例示されるプレートなどの、それと結合している伝達構造216に対して圧送力又は圧力を及ぼし得る。圧送力又は圧力により、流体リザーバ204から流体が圧送され得る。このように、電気化学アクチュエータ202は、動力内蔵型の電気化学ポンプと見なすことができる。例示される実施形態において、電気化学セルは正電極210を有し、これは、セルの充電時に作用イオンについてより低い化学ポテンシャルを有するように選択され、従ってセルが放電されると、自発的に負電極212から作用イオンを受け入れることができる。実施形態において、作用イオンとしては、限定はされないが、プロトン又はリチウムイオンが挙げられる。作用イオンがリチウムのとき、正電極210は、LiCoO2、LiFePO4、LiNiO2、LiMn2O4、LiMnO2、LiMnPO4、Li4Ti5O12、並びにこれらの修飾組成物及び固溶体を含む1つ又は複数のリチウム金属酸化物;酸化チタン、酸化マンガン、酸化バナジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化コバルト、酸化ニッケル若しくは酸化鉄のなかの1つ若しくは複数を含む酸化物化合物;TiSi2、MoSi2、WSi2、並びにこれらの修飾組成物及び固溶体のなかの1つ若しくは複数を含む金属硫化物;アルミニウム、銀、金、ホウ素、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、鉛、アンチモン、ケイ素、スズ、若しくは亜鉛のなかの1つ若しくは複数を含む金属、金属合金、若しくは金属間化合物;リチウム金属合金;又は、グラファイト、炭素繊維構造、ガラス状炭素構造、高配向性熱分解グラファイト、若しくは不規則炭素構造のなかの1つ若しくは複数を含む炭素を含み得る。負電極212は、リチウム金属、リチウム金属合金、又は正電極化合物として列挙された上記の化合物のいずれかを含み得るが、但しかかる化合物は、負電極として使用されるとき、セルの充電時に負電極からリチウムを自発的に受け入れることが可能な正電極と対をなすことを条件とする。他の構成もまた可能である。
【0022】
実施形態において、電気化学アクチュエータは、陽極と、陰極と、リチウムイオンなどの化学種とを備え得る。電極の少なくとも一方は、第1の部分と第2の部分とを備える作動電極であり得る。これらの部分は少なくとも1つの異なる特性を有してもよく、従って電圧又は電流の存在下で、第1の部分は第2の部分と異なる形で化学種に反応する。例えば、これらの部分は異なる材料から形成されてもよく、又はこれらの部分は、特に、厚さ、寸法、多孔度、密度、若しくは表面構造が異なってもよい。電極は充電され得るとともに、回路が閉じられると電流が流れ得る。化学種は第1の部分について、第2の部分と異なる程度にインターカレートし、デインターカレートし、共に合金し、還元し、又はメッキする。第1の部分の化学種との反応は第2の部分と異なるため、作動電極は容積又は位置の変化を被り得る。
【0023】
かかる実施形態の例が図3に示され、これは、電気化学アクチュエータ302の別の実施形態の概略図である。電気化学アクチュエータ302は、正電極310と、負電極312と、化学種314とを備え得る。化学種314は、例えばリチウムイオンを含む電解質であり得る。正電極310は、第1の部分と第2の部分とを備え得る。第1の部分は、化学種の存在下にあるとき寸法が変わる材料を含み得る。例えば、アルミニウムはリチウムと合金したり、又はリチウムによってインターカレートされたりすると膨張する。第2の部分は、化学種の存在下にあっても寸法が変わらないか、又は第1の部分の材料と比べて寸法の変化量が比較的小さい材料を含み得る。例えば、銅は、リチウムをインターカレートしたり、又はそれと合金したりすることが実質的にない。従って、正電極310はバイモルフ構造と見なすことができ、これらの部分の一方が正電流集電体として機能する。
【0024】
負電極312は負電流集電体として機能し得る。例えば、負電極312は、銅の層上に接着又は堆積されたリチウム金属層を備え得る。図3(a)に示されるとおり、初めに電極は充電され得るが、閉じた回路は形成しなくともよい。正電極310は、リチウムについて負電極312より低い化学ポテンシャルを有し得る。図3(b)に示されるとおり2つの電極間の回路が閉じられると、電流は負電極312に向かって流れ得る。正電極310の第1の部分はリチウムと合金するか、又はリチウムをインターカレートし、それによって容積が膨張し得る一方、第2の部分は機械的拘束として機能し得る。従って、正電極310は屈曲するか、又はその他の形で変位し得る。正電極310の変位は流体リザーバ304に伝達され、それによって流体リザーバ304が流体を吐き出し得る。
【0025】
上述されるとおり、かかる電気化学アクチュエータは、薬物を含有する流体又は薬物を含有しない流体をヒト患者又は他の標的に供給するのに適した流体供給器具に動力を供給し得る。かかる流体供給システムは、人体の皮膚に取り外し可能に取り付けることのできるパッチ器具などの、比較的小さい自蔵型の使い捨て器具として具体化され得る。電気化学アクチュエータはバッテリ及びポンプの双方として機能するため、このパッチ器具は比較的小さく、且つ自蔵型であり得る。この器具の小型で自蔵型という性質から、有利には、器具を衣服の下に隠すことが可能となり得るとともに、患者は、薬物が供給されるときにも通常の活動を続けることができる。従来の薬物ポンプと異なり、流体を流体リザーバから体内に送るための外部的なチューブ材は不要であり得る。代わりに、任意のチューブ材を器具内に含んでもよく、針又は他の流体連通部が器具から体内に伸張し得る。電気化学アクチュエータは初めに充電されてもよく、パッチ器具が作動されると放電し始め、薬物又は他の流体を体内に圧送するか、又はその他の形で供給し得る。電気化学アクチュエータが完全に放電したか、又は流体リザーバが空になると、パッチ器具は取り外され、廃棄され得る。本器具の電気化学アクチュエータ及び他の構成要素の小型で安価な性質から、維持しておかれるポンプを有する従来のポンプ器具と異なり、器具全体を使い捨てすることが可能となり得る。このように、本器具は、数分間から数日間に至るまで様々であり得る所定期間にわたる薬物供給、例えば、皮下又は静脈内薬物供給を可能とし得る。その後、器具は体から取り外され、廃棄され得る。
【0026】
本開示の目的上、用語「使い捨て」は、概して、廃棄されるよう意図された単回使用の器具又はその構成要素を意味する。電気化学アクチュエータはバッテリとして機能し得るため、電気化学アクチュエータは使用するうちに放電し、後に廃棄され得る。しかしながら、電気化学アクチュエータはポンプ機構としても機能するため、電気化学アクチュエータを廃棄すると、ポンプ機構もまた廃棄される。かかる構成が従来の注入ポンプと異なり、従来のものは、後に再使用するため維持しておかれるポンプ機構を備える。従来の注入ポンプと異なり、電気化学アクチュエータを含むパッチポンプ器具は、完全に使い捨てであり得る。
【0027】
かかる器具は、概して、ハウジングと結合された薬物又は流体供給システムを備え得る。概して上述されるとおり、薬物供給システムは、薬物を流体リザーバから針又は他の流体連通部を通じて送り込むのに適した電気化学アクチュエータを備え得る。ハウジングは、流体供給システムを少なくとも部分的に収容し得るとともに、流体供給システムをヒト皮膚と取り外し可能に結合するのに適し得る。
【0028】
器具を皮膚に装用できるように、ハウジングの裏面を剥離可能な接着剤が少なくとも部分的に被覆し得る。接着剤は、非毒性で生体適合性、且つヒト皮膚から剥離可能であり得る。器具が使える状態になるまで接着剤を保護するため、取り外し可能な保護被覆材が接着剤を被覆してもよく、その場合、この被覆材は器具を皮膚に貼付する前に取り外され得る。或いは、接着剤は感熱性又は感圧性であってもよく、その場合、器具を皮膚に貼付すると、接着剤が作用し始め得る。例示的接着剤としては、限定はされないが、包帯などの医療用具を皮膚に固定するために一般的に使用されるタイプのアクリレートベースの医用接着剤が挙げられる。しかしながら、接着剤は必ずしも必要ではなく、省略されてもよいが、その場合、ハウジングは皮膚か、又は概して体に、任意の他の方法で結合され得る。
【0029】
器具のサイズ、形状、及び重量は、器具が接着剤によって貼付された後、その器具が皮膚に快適に装用され得るように選択され得る。例えば、器具は、約1インチ×約1インチ×約0.1インチ〜約5インチ×約5インチ×約1インチの範囲、及びある実施形態では、約2インチ×約2インチ×約0.25インチ〜約4インチ×約4インチ×約0.67インチの範囲のサイズを有し得る。器具の重量は、約5グラム〜約200グラムの範囲、及びある実施形態では、約15グラム〜約100グラムの範囲であり得る。器具は、約0.1ミリリットル〜約1000ミリリットルの範囲、及びある場合には、約0.3ミリリットル〜約100ミリリットルの範囲、例えば、約0.5ミリリットル〜約5ミリリットルの容量を送り出すことが可能であり得る。器具の形状は、器具が衣服の下にあることが比較的分かり難いものであり得るように選択され得る。例えば、ハウジングは比較的平滑で、鋭端がないものであり得る。しかしながら、任意のサイズ、形状、又は重量が可能である。
【0030】
ハウジングは、比較的軽量で可撓性の、しかし頑丈な材料で形成され得る。ハウジングはまた、例えば特定の剛性部分と特定の可撓性部分とを提供するように、材料の組み合わせで形成されてもよい。材料はまた、比較的低価格であってもよく、それにより器具を使い捨てとし得る。例示的な材料としては、プラスチック及びゴム材料、例えば、ポリスチレン、ポリブテン、カーボネート、ウレタンゴム、ブテンゴム、シリコーン、並びに他の同等の材料及びそれらの混合物が挙げられるが、これらの材料の組み合わせ又は任意の他の材料が用いられてもよい。
【0031】
実施形態において、ハウジングは2つの部分、すなわち基部と可動部とを備え得る。基部は、皮膚への取り付けに適し得る。例えば、基部は比較的柔軟であり得る。基部の裏面に接着剤が付着されてもよく、この裏面は比較的平坦であるか、又は特定の身体領域に合致するような形状とされ得る。可動部は、基部と結合するサイズ及び形状とされ得る。実施形態において、2つの部分は、ロック機構などを介して互いに係止するように設計され得る。ある場合には、2つの部分は解除可能なロック機構などを介して互いに解除可能に係止されてもよく、従って可動部は基部と取り外し可能に結合し得る。器具を組み立てるため、可動部は基部に対し、組み立てられていない位置と組み立てられた位置との間で動かすことが可能であり得る。組み立てられた位置では、2つの部分は、器具を衣服の下に隠すのに適した外形を有する器具を形成し得る。かかる器具の実施形態が、概して、以下に図4〜10を参照して記載されるが、しかしながら様々な構成が可能である。
【0032】
図4は、パッチ器具400の実施形態の側断面図である。器具400は、概して、ハウジング418と結合された流体供給システムを備え、ハウジング418は基部422と可動部424とを備え得る。基部422の裏面に接着剤420が配置され得る。可動部424は、電気化学アクチュエータ402、流体リザーバ404、及び流体連通部406などの、流体供給システムの1つ又は複数の構成要素を内蔵し得る。可動部424は、基部422に挿入されるサイズ及び形状であってもよい。より具体的には、可動部424は基部422に対し、図4(a)に図示される組み立てられていない位置と、図4(b〜c)に図示される組み立てられた位置との間で動かすことが可能であり得る。組み立てられた位置では、2つの部分422、424は嵌合し、互いに係止し得る。組み立てられると、器具400の外表面は比較的平滑で、衣服の下に隠し易いものとなり得る。
【0033】
図4に示される実施形態において、解除可能なロック機構は、可動部424の外表面に位置する戻り止め426と、基部422の内表面に位置する溝付きフランジ428とによって形成される。組み立てられていない位置では、戻り止め426は溝付きフランジ428に載置され、それによって可動部424が基部422の上方に支持される。器具400を組み立てるためには、可動部424に力Fが加えられ、可動部424が下方に押し込まれる。力Fによって溝付きフランジ428が外側に撓み、戻り止め426が溝付きフランジ428を越えて進む。このように、可動部424が基部422の中へとさらに進むと、そこに着座して動かなくなる。溝付きフランジ428が元に戻ると、戻り止め426は上方に移動できなくなり、器具400が一体に解除可能に係止される。このように組み立てられると、器具400は比較的鋭端の少ない球形状をとる。ある実施形態では、ロック機構は解除可能でなくともよいことに留意すべきである。
【0034】
図5に示される実施形態において、器具500は、概して、基部522と可動部524とから形成されるハウジングを備える。器具400と同様に、器具500を皮膚に結合するため、基部522は裏面に接着剤を有し得る(明確にするため図示せず)。流体供給システムが、概して可動部524に収容され得る(明確にするため図示せず)。
【0035】
より具体的には、基部522は、比較的楕円形の外側と、可動部524を受け入れるサイズ及び形状の内側とを有し得る。例えば、可動部524は本体530と突起532とを有してもよく、及び基部522は内側スロット534と開口536とを有してもよい。内側スロット534は、突起532を受け入れるサイズ及び形状であってもよく、及び開口536は、本体530を受け入れるサイズ及び形状であってもよい。器具500を組み立てるには、図5(b)に示されるとおり、突起532が開口536からスロット534に沿って挿入され得る。図5(d)に示されるとおり、可動部524が基部522に着座して動かなくなるように、本体530が開口536に押し込まれ得る。このように組み立てられると、可動部524はその形状によって上方及び後方への移動が必然的に制限され、2つの部分522、524が互いに解除可能に係止され得る。組み立てられた器具500は、鋭端が比較的少なく、且つ比較的低い断面形を有する平滑な楕円形状をとってもよく、それにより器具500を衣服の下に隠すことができる。
【0036】
図6に示される実施形態、具体的に図6(c)及び図6(d)において、器具600は、基部622に挿入するのではなく、その外側にスナップ留めする可動部624を備え得る。具体的には、基部622は、基材638と、基材638から上方に突出するガイド640とを備え得る。基材638は、接着層、例えば、可撓性の両面接着層であってもよい。或いは、基材638は、裏面に接着剤を有するプレートを含んでもよい。可動部624は、電気化学アクチュエータ602、流体供給源604、及び関連電子装置672などの流体供給システムの構成要素を内蔵するキャビティを有し得る(この実施形態は、以下に図10を参照して記載される)。可動部624には、ガイド640を受け入れるための凹部642が形成され得る。基部622と可動部624とを組み立てるには、図6(c)に示されるとおり、可動部624が基部622に被せて位置決めされ得る。ガイド640により凹部642の位置を合わせることができ、従って部分622、624が正しく整列する。図6(d)に示されるとおり、力が加えられることで可動部624が基部622に嵌め込まれ得る。ガイド640と凹部642とはスナップ嵌めを形成することができ、従って器具600が一体に解除可能に係止された状態となる。或いは、基材638が両面接着層である実施形態などにおいて、可動部624は基部622に接着されてもよい。組み立てられると、器具600は比較的平滑で低い外側断面形を有し、それにより器具を衣服の下に隠すことが可能となり得る。
【0037】
この器具の種々の実施形態は、異なる手の動きを用いて組み立てられ得ることに留意しなければならない。例えば、図4に示される器具400は、図4(b)に示されるとおり、可動部424に対して皮膚の表面とほぼ垂直な方向に力を及ぼすことによって組み立てられ得る一方、図5に示される器具500は、図5(b)に示されるとおり、可動部524に対して皮膚の表面とある角度をなす方向に力を及ぼすことによって組み立てられ得る。このように、以下でさらに記載されるとおり、身体の異なる部分に対するアセンブリ、又は異なる角度で挿入される流体連通部を有するアセンブリには、器具の異なる実施形態がより良く適し得る。また、器具400、器具500、及び器具600など、器具のいくつかの実施形態は、片手を用いて組み立てられ得ることにも留意しなければならない。器具を片手で組み立てられるため、体のなかの容易にアクセスできない部分に器具を取り付け易くなり得る。例えば、ある薬物又は他の流体は体の背中側から注入されてもよく、これは両手でのアクセスが困難であり得る。例えば、片手を用いて組立てることのできる器具の実施形態では、器具を体の背中側で組み立てることは比較的容易であり得る。
【0038】
実施形態において、器具を組み立てると、同時に流体連通部が体に挿入されるように器具が設計され得る。具体的には、流体連通部は初めはハウジング内に引き込まれていてもよく、器具を組み立てる間にハウジングから体内に移動し得る。より具体的には、ハウジングを組み立てられていない位置から組み立てられた位置に動かす力が、針を体に刺入するのにも有効であり得る。
【0039】
図4に示される器具400の実施形態において、例えば、流体連通部406は、可動部424から下方に伸張する針であり得る。図4(a)に示されるとおり、器具400が組み立てられていない位置にあるとき、針は基部422の内部に保護されていてもよい。セプタム444又は他の穿通可能部材が、基部422において針に隣接して位置決めされてもよく、針が汚染物に曝露されないように基部422を密閉する。図4(b)に示されるとおり、力Fが加えられることで可動部424が組み立てられた位置に動くと、針がセプタム444を穿通して皮膚に侵入する。力Fは皮膚の表面と比較的垂直に加えられるため、針は、皮膚の表面と比較的垂直な角度で体内に侵入し得る。かかる構成は、針を垂直な向きで挿入することを好む患者に、又は、垂直な向きの針を介した供給に適した薬物若しくは他の流体に適し得る。しかしながら、他の実施形態では他の構成が可能である。
【0040】
例えば、図5に示される器具500の実施形態において、流体連通部506は、突起532の端部に位置する針であり得る。スロット534は、基部522を貫通して下方に、基部522の裏面とある角度をなして延在し得る。スロット534は、基部522の裏面を貫通して形成された開口部546を終端とし得る。突起532は、突起532がスロット534に位置決めされると、針が開口部546を越えて皮膚に入り込むようなサイズであり得る。器具500を組み立てるには、突起532がスロット534に挿通される。皮膚の表面に対してある角度で力Fを加えると、突起532はスロット534に沿って押し込まれ、従って力Fを加え続けると、針が皮膚の表面に対してある角度で体内に挿入される。ユーザによっては、及び/又は薬物若しくは流体供給のタイプによっては、ある角度で針を挿入するほうが好ましいことがある。
【0041】
図4及び図5を参照して上述される実施形態において、器具を組み立てられた位置に動かす力は、針を体内に挿入するよう針に作用する力と同じである。かかる実施形態において、針は、可動部が基部内を進む方向と同じ方向に体内を進む。他の実施形態において、器具は、力が針に作用する前に力の方向を変える機構を備え得る。かかる実施形態において、力は可動部に対してある方向に作用し得るとともに、針に対して別の方向に作用し得る。例えば、力が針に作用する前にこの機構によって垂直な力の方向が変えられてもよく、それによってその力は、針をある角度で体内に挿入することができる。例示的な機構としてはスプリング及びラッチを挙げることができ、このとき、可動部を基部と結合するとラッチが解除され、スプリングによって針が体内に挿入される。かかる実施形態において、機構は、ダイアルを回転させるか、又はスライダを摺動させることによるなどして針の挿入角度を選択可能にするものであってもよく、それによってユーザは、自身の好みに基づき挿入角度を調節することができる。当業者は、上記の開示に基づきかかる機構を設計する能力を有し得る。
【0042】
さらに他の実施形態において、針を体内に刺入する力は、器具を組み立てられた位置に設定する力と完全に別個に加えられ得る。例えば、針は、器具を針と結合する前に、手動で体内に挿入されてもよい。別の例としては、電気化学アクチュエータによって針に力を加えることで、針を体内に挿入してもよい。さらに、針を体内に挿入するための別個の挿入機構が提供されてもよい。
【0043】
かかる実施形態が図6に示され、具体的には図6(a)及び図6(b)が参照される。具体的には、器具600は別個の針挿入機構648と共に使用するのに適し得る。針挿入機構648は、流体連通部606、例えば針又はカニューレを、器具600の基部622を通じて体内に挿入するように構成され得る。例えば、基部622は流体連通部606を受け入れるための開口650を備えてもよく、この開口650は、ガイド640及び基板638を貫通して形成される。針挿入機構648を基部622と整列させることができるように、より具体的には、流体連通部606を開口650と整列させることができるように、針挿入機構648は、ガイド640と合致するサイズ及び形状の凹部652を備え得る。
【0044】
流体連通部606を挿入するために、図6(b)に示されるとおり、針挿入機構648が基部622上に置かれ得る。概して針挿入機構648内に圧縮状態で保持されるスプリング654が、解除可能ラッチ656によって解除され得る。スプリング654は流体連通部606と連通していてもよく、ラッチ656が解除されると、流体連通部606が針挿入機構648から吐き出され得る。図6(b)に示されるとおり、流体連通部606は開口650を通じて進み、図6(c)に示されるとおり、体内に入り得る。その後、図6(c)に示されるとおり、針挿入機構648は基部622から取り外されてもよく、それによって、図6(d)に示されるとおり、その上に可動部624を配置し得る。続いて針挿入機構648は廃棄されてもよく、又は実施形態によっては再使用のために保管され得る。
【0045】
実施形態において、流体連通部606はソフトカニューレ658であってもよい。図6(b)に示されるとおり、スプリング654に針660が固定して結合されてもよく、これが最初に皮膚を穿刺してソフトカニューレ658の体内への挿入を補助し得る。続いて針660は引き込まれ、すなわち体から取り外されてもよく、図6(c)に示されるとおり、ソフトカニューレ658がその場に残る。整列ガイド662がソフトカニューレ658を体内にさらに誘導し得るが、しかし整列ガイド662は必ずしも必要ではなく、省略されてもよい。
【0046】
実施形態において、針挿入機構は、届きにくい場所にカテーテルを挿入し易くするため片手操作用として設計され得る。さらに、針挿入機構は、ユーザが選択した角度を含め、様々な異なる角度で針を挿入するように設計され得る。実施形態によっては、針又はソフトカニューレ以外の流体連通部が針挿入機構によって挿入され得る。針を挿入する力は、スプリングによるか、又は他の方法で、例えばユーザにより手動で供給されてもよく、その場合にはスプリングは省略されてもよい。例示される針挿入機構は、器具のサイズ及び/又は重量を低減することができるように器具とは別個のものであるが、針挿入機構は、針が挿入された後も器具内に保持される器具の一体部分であってもよい。また、上述の、ソフトカニューレの挿入を補助する穿刺針が後に取り出される構成が、他の実施形態に関連して用いられ得ることにも留意しなければならない。
【0047】
例として、流体連通部は、針又はカニューレであるものとして上述される。実施形態において、針又はソフトカニューレは、快適性のため比較的細くてよい。他の実施形態において、流体連通部は、流体を体内に供給するための任意のカテーテル若しくは他の器具、又はそれらの組み合わせであり得る。実施形態において、流体連通部は比較的無菌であり得る。さらに、器具は従来の注入装置と併せて使用されてもよく、その場合、流体連通部は注入装置の1つ又は複数の部品、例えば、標準ルアーロック若しくは器具を注入装置と接続するように構成された他のコネクタであってもよく、又は流体連通部は完全に省略されてもよい。別の実施形態において、ポンプパッチは皮下供給に限定されない。例えば、器具は留置注入ポート、例えば、当該技術分野において公知の中心静脈アクセスポートと接続されてもよく、その場合、流体連通部は、器具をポートと結合するのに好適なアダプタであってよい。さらに別の実施形態において、流体連通部は、当該技術分野において公知のとおりの、流体薬物の経皮供給に好適なマイクロニードルアレイを含み得る。
【0048】
器具の実施形態は、一体に組み立てることのできる2つの別個の部分、又は2つの別個の部分及び針挿入機構を含むものとして上述されるが、他の実施形態において、器具は単一の部分であってもよく、又は器具は、3つ以上の別個の部分を有してもよい。
【0049】
さらに、上述の実施形態において、流体供給システムは概して器具のある部分、すなわち可動部に内蔵される。他の実施形態において、流体供給システムは、器具の他の部分、例えば基部に内蔵されてもよく、又は器具のいくつかの部分の組み合わせ、例えば基部と可動部との組み合わせのなかに内蔵され得る。例が図7及び図8に示される。例えば、図7は器具500とほぼ同様の器具700の実施形態を示す。しかしながら、器具700の流体供給システムは、基部722と可動部724との間で分割され得る。図7(a)に示される組み立てられていない位置では、基部722は電気化学アクチュエータ702を内蔵し得る一方、可動部724は流体供給源704と流体連通部706とを内蔵し得る。図7(b)に示される組み立てられた位置では、電気化学アクチュエータ702は、流体供給源704と直接的又は間接的に連通した状態となり得る。
【0050】
図8は、器具600とほぼ同様の器具800の実施形態を示す。しかしながら、器具800の流体供給システムは、基部822と可動部824との間で分割され得る。図8(a)に示される組み立てられていない位置では、基部822は電気化学アクチュエータ802と制御システム872とを内蔵し得る。流体連通部806もまた、針挿入機構を介して挿入された後に、基部822に位置決めされ得る。可動部824は流体供給源804を内蔵し得る。図8(b)に示される組み立てられた位置では、電気化学アクチュエータ802は、流体供給源804と直接的又は間接的に連通した状態となり得る。
【0051】
実施形態によっては、電気化学アクチュエータ、流体供給源、及び流体連通部を含む流体供給システムの構成要素は、基部、可動部、及び針挿入機構(存在する場合)など、器具の様々な部分に配置され得る。安全性の増加、費用の低減、又はクオリティ・オブ・ライフの向上など、選択された設計基準を達成するため、構成要素は、器具が組み立てられるまで分離されていてもよい。例えば、流体供給源及び流体連通部などの、湿潤した無菌の構成要素が、安全のために、電気化学アクチュエータ及び任意の関連電子装置などの、乾燥した無菌でない構成要素と分離され得る。かかる実施形態の例としては、器具700及び器具800が挙げられる。
【0052】
一部の構成要素を分離することで、1つ又は複数の構成要素を再使用し、その一方で1つ又は複数の他の構成要素を廃棄することが可能となり得る。かかる実施形態により、使用済みとなったり、又は損傷を受けたりした特定の部品を処分する一方、未使用で機能している他の部分を再使用することが可能となり得る。例えば、比較的高価な薬物の入った流体供給源が電気化学アクチュエータ及び/又は関連電子装置と分離されてもよく、それにより、電気化学アクチュエータ又は電子装置に欠陥がある場合に、流体供給源を再使用することが可能となる。或いは、比較的高容量で供給される薬物の入った流体供給源が電気化学アクチュエータ及び関連電子装置と分離されてもよく、それにより電気化学アクチュエータ及び電子装置を複数の流体供給源と共に再使用することが可能となる。別の例として、電子装置が流体供給源及び/又は電気化学アクチュエータと分離されてもよく、それにより、流体供給源が空になった後、及び/又は電気化学アクチュエータが完全に放電した後であっても、電子装置を再使用することが可能となる。さらに、流体連通部が1つ又は複数の他の構成要素と分離されてもよく、それにより、針の挿入に失敗したり、又は針の交換が必要となったりした場合に、他の構成要素を再使用することが可能となる。かかる実施形態の一例が器具600であり、これは関連する針挿入機構を備える。さらに、流体連通部を再度挿入することなく、器具を分解して再び組み立てることを可能とするように、一部の構成要素が分離されてもよい。かかる実施形態により、特定の活動、例えば買い物及び入浴が可能となり得る。かかる実施形態の一例が器具600である。上記の開示に基づき、様々な他の構成が可能である。例えば、器具は、流体連通部分と、電気化学アクチュエータ部分と、流体供給源部分と、電子装置部分とを備え得る。これらの部分は、組み立てることで本明細書に記載されるタイプの器具を形成し得るとともに、さらに必要に応じて分解して再び組み立てられることで、部分が取り替えられたり、廃棄されたりし得る。
【0053】
以下にさらに記載されるとおり、器具が組み立てられた後、電気化学アクチュエータが始動されてもよく、それにより電気化学アクチュエータは放電し始める。電気化学アクチュエータは放電するときに作動し、流体供給源に直接的又は間接的に作用して流体を体内に送り込む。例えば、電気化学アクチュエータは、流体供給源と直接接触するように位置決めされてもよく、従って電気化学アクチュエータは作動すると流体供給源に直接作用し、それによって流体供給源から流体が送り出される。或いは、伝達構造又は他の然るべき機構が電気化学アクチュエータと流体供給源との間に配置されてもよく、従って電気化学アクチュエータの作動は伝達構造を介して流体供給源に伝達される。実施形態において、伝達構造は、電気化学アクチュエータの受ける容積の変化又は変位を増幅してもよく、従って比較的小さい容積の変化又は変位が流体供給源に対する所望の効果を生じ得る。
【0054】
例えば、図4に示される実施形態において、電気化学アクチュエータ402は流体供給源404に直接作用し得る。図4(a)に示されるとおり、流体供給源404は、電気化学アクチュエータ402と直接接触するように位置決めされた変形可能なブラダ又はポーチであってもよい。電気化学アクチュエータ402が作動すると、図4(b)に示されるとおり流体供給源404に力又は圧力が加わるため、流体供給源404が変形し得る。図4(c)に示されるとおり、流体供給源404内の圧力が上昇し、流体連通部406を通じて流体が送り込まれ得る。
【0055】
図6に示される実施形態において、電気化学アクチュエータ602は、例えば伝達構造668を介して、流体供給源604に間接的に作用し得る。図6(c)に示されるとおり、流体供給源604はチャンバであってもよく、及び伝達構造668はチャンバと連通するピストンであってもよい。電気化学アクチュエータ602が作動すると、伝達構造668に力が加わり得る。ひいては、伝達構造668が流体供給源604に力を加え、流体連通部606を通じて流体が送り込まれ得る。
【0056】
伝達構造は、例としてピストンとして記載されるが、伝達構造は、本開示に基づき当業者によって想定される任意の他の構成を有し得る。かかる伝達構造は、電気化学アクチュエータからの仕事を流体供給源に伝達することが可能な、器具に任意の組み合わせ及び/又は配置で構成された1つ又は複数の公知の機械的又は電気的構成要素を含み得る。伝達構造を備えると、電気化学アクチュエータは流体供給源と物理的に直接接触しなくともよいため、器具は様々な異なる形状、サイズ及び寸法を有することが可能となり得る。
【0057】
例として、流体供給源は、ブラダ、リザーバ、ポーチ、チャンバ又はバレルであるものとして上述される。他の実施形態において、流体供給源は、流体又は流体形態の薬物を保持することが可能な任意の構成要素であり得る。例示される実施形態において、流体供給源は詰め替え可能でなくともよく、それにより器具の使い捨てが可能となる。他の実施形態において、流体供給源は再補充されてもよく、それにより、器具の少なくとも一部分を再使用したり、及び/又は器具によって供給される薬物若しくは流体を変えたりすることが可能となり得る。
【0058】
実施形態において、流体供給源は、電気化学アクチュエータの電気化学的ポテンシャルと相互に関連するサイズであり得る。例えば、流体供給源のサイズ及び/又は容積は、電気化学アクチュエータがほぼ実質的に放電された状態になるのとほぼ同時に、流体供給源がほぼ実質的に空になるように選択され得る。電気化学アクチュエータの送り込む能力と比べて流体供給源が大き過ぎたり、又は薬物を多く含み過ぎたりすることがなく、且つ同様に、流体供給源中の薬物量と比べて電気化学アクチュエータが大き過ぎたり、又は大き過ぎる出力を含んだりすることもないため、かかる構成によって器具のサイズ及び/又は費用を低減することが可能となり得る。他の実施形態において、電気化学アクチュエータは流体供給源に対して過大であってもよい。かかる構成は比較的高価な薬物で用いられてもよく、それにより、電気化学アクチュエータが完全に放電する前に、確実に流体供給源がほぼ実質的に空になるため、無駄になる薬物が低減し得る。
【0059】
さらに、ある実施形態において、器具は2つ以上の流体供給源を備え得る。かかる構成により、単一の器具を使用して2種以上の薬物又は流体を供給することが可能となり得る。2種以上の薬物又は流体は、個別に、同時に、交互に、プログラム又はスケジュールに従い、又は以下にさらに記載されるとおりの任意の他の方法で供給され得る。かかる実施形態において、流体供給源は、同じ若しくは異なる電気化学アクチュエータ、同じ若しくは異なる流体連通部、同じ若しくは異なる動作電子装置、又は同じ若しくは異なるハウジング部分と結合され得る。
【0060】
一例示的実施形態が図17に示され、これは、複数の流体供給源1704aと1704bとを備えるポンプ器具1700の実施形態の側断面図である。流体供給源1704a及び1704bは、それぞれ異なる電気化学アクチュエータ1702a及び1702bによって動作する。器具1700は、任意の構成で2種以上の薬物又は流体を供給するのに適し得る。例えば、器具1700は、薬物が数日間など、長期間にわたりまれな間隔で供給される実施形態において使用され得る。かかる実施形態では、一方の流体供給源1704aが薬物を含んでもよく、及び他方の流体供給源1704bが、生理食塩水などの流体を含んでもよい。生理食塩水は、薬物の投薬間に定期的に投与され、流体連通部1706に目詰まりが形成されることを防止し得る。
【0061】
別の例示的実施形態が図18に示され、これは、同じ電気化学アクチュエータ1802によって動作する複数の流体供給源1802aと1804bとを備えるポンプ器具1800の実施形態の側断面図である。器具1800は、様々な構成で2種以上の薬物又は流体を供給するのに適し得る。例えば、器具1800は、薬物又は流体が体内への供給前は隔離されている構成成分を有する実施形態において使用され得る。例えば、薬物は一方の画室に乾燥粉末形態で(例えば、凍結乾燥されて)保存されてもよく、その後、投与の少し前若しくは直前に、当該技術分野において公知の好適な流体溶媒、例えば生理食塩水によって溶液又は懸濁液中に供給用に再構成されてもよい。これは、生物製剤又はタンパク質薬物などの、保管中の薬物の安定性、すなわち貯蔵安定性を提供するために好ましくは凍結乾燥又は他の乾燥粉末形態であり得る特定の薬物について、特に有利であり得る。これらの、及び他の実施形態において、流体供給源1802は、再構成することのできる薬物又は他の非流体物の保存に適した薬物保管リザーバを含み得る。実施形態において、介在機構が様々な方法で電気化学アクチュエータ1802の変位を流体供給源1804a及び1804bの各々に対して伝達及び/又は増幅してもよく、それにより流体供給源1804b及び1804bからの様々な流体流量が可能となる。2つの流体供給源を有する器具が例示されるが、当業者は、他の実施形態において3つ以上の流体供給源が提供され得ることを理解するであろう。
【0062】
2つ以上の流体供給源を有する器具は、本開示の範囲及び趣旨のなかで多くの異なる構成を有し得る。例えば、流体供給源は種々のハウジング部分に分けられてもよく、それにより、流体供給源の1つを他の流体供給源と比べて比較的高い頻度で交換することが可能となり得る。さらに、電気化学アクチュエータが任意の他のポンプ器具に置き換えられてもよく、その場合、1つ又は複数の別個のバッテリもまた提供され得る。流体供給源はまた、器具の用途に応じて種々のサイズ、形状、及び構成を有し得る。
【0063】
電気化学アクチュエータは比較的小型であり得ることに留意しなければならない。例えば、電気化学セルは、約5立方ミリメートル〜約10立方センチメートルの範囲、より具体的には約0.1立方センチメートル〜約1立方センチメートルの範囲の容積を有し得る。小型サイズの電気化学アクチュエータにより、器具のサイズを低減することが可能となり得る。さらに、電気化学アクチュエータは比較的少ない数の部品を備え得るため、器具のサイズ及び費用が低減されるとともに、その信頼性が高まる。電気化学アクチュエータは、器具の他の構成要素に動力を供給し得る。例えば、電気化学アクチュエータは、ディスプレイ、針挿入機構、又は器具の他の構成要素に動力を供給し得る。また、電気化学アクチュエータは、従来のバッテリと類似した方法による比較的高い拡張性を有し得る。例えば、2つ以上の電気化学アクチュエータが提供されてもよく、及び実施形態において、それらの電気化学アクチュエータは再充電可能であってもよい。例として、電気化学アクチュエータは、流体供給源からの流体を送り込み、圧送し、又は吐き出すものとして記載される。しかしながら、当業者は、流体供給源から流体を供給する他の方法を本開示が包含することを理解するであろう。例えば、電気化学アクチュエータは、他の可能な構成のなかでも特に、流体供給源内に真空を作り出すなどして流体供給源から流体を引き込んでもよい。さらに、電気化学アクチュエータは、任意の公知のポンプか、又は流体供給源からの流体の流れを生じさせるのに適した他の器具に置き換えられてもよく、その場合、別個の電源もまた提供され得る。
【0064】
電気化学アクチュエータは、器具内の電気回路に配置され得る。電気化学アクチュエータは電気化学セルを含んでもよく、これは初めに充電され、それが放電するときに作動する。電気回路が開かれているとき、電気化学アクチュエータは放電することができないため、同時に電気化学アクチュエータは作動することもできない。従って、流体は流体供給源から流れ出ることができない。電気回路が閉じられると、電気化学アクチュエータは放電し始め、同時に電気化学アクチュエータが作動し得る。従って、流体は流体供給源から流れ出ることが可能となり得る。このように、電気回路が閉じられているとき、流体は流体供給源から吐き出され得るが、それ以外で吐き出されることはない。
【0065】
実施形態において、電気化学アクチュエータは、電気回路の特性に依存する速度で放電し、作動する。電気回路の特性が異なると、電気化学アクチュエータの放電率が異なり得るため、同時に電気化学アクチュエータの作動も異なり得る。従って、流体供給源から出る流体の流量が異なり得る。実施形態において、器具は、器具からの流体の流れを制御又は調整するための手段を備え得る。流れ制御手段は、電気回路に関連する特性を変化させて、それにより器具からの流体の流れを開始し、器具からの流体の流れを停止させ、及び/又は器具からの流体の流量を変化させるなどするように動作し得る。流れ制御手段の実施形態は以下に詳細に記載され、1つ又は複数の放出プロファイルに従い薬物を供給することができるように、任意の組み合わせで実行することができる。実行され得る放出プロファイルとしては、特に、線形的な流れ、非線形的な流れ、ユーザによって開始される流れ、フィードバック応答性の流れ、又はこれらの流れの組み合わせを有する放出プロファイルを挙げることができる。本開示の目的上、線形的な流れという用語は、概して、比較的一定した流量を有する流れを意味する。非線形的な流れという用語は、概して、必ずしも比較的一定した流量を有するとは限らない流れを意味し、調節される流れ、脈動する流れ、不連続な流れ、及び/又は必ずしも比較的一定の流量を要求するとは限らないプログラム又はスケジュールと相互に関連する流れが含まれる。ユーザによって開始される流れという用語は、概して、器具への入力に応答して開始される流れを意味する。フィードバック応答性の流れという用語は、概して、1つ又は複数の検知された条件に応じて調整を行う流れを意味し、以下に記載される。このように、ポンプ器具は、他のポンプ器具と比べてより多様な薬物療法を遂行するのに有効であり得る。
【0066】
図9は、ポンプ器具の実施形態に動力を供給するために用いられ得る電気回路900の実施形態を示す回路図である。図示されるとおり、電気回路900は、抵抗器980と電気的に連通するように位置決めされた電気化学アクチュエータ902を備え得る。電気化学アクチュエータ902は電気化学セルを含んでもよく、これは初めに比較的一定の電圧で充電され、放電するときに変位する。抵抗器980は、比較的一定の電気抵抗を有し得る。図示されるとおり、電気回路900が閉じられると、電気回路900に電流982が誘導され得る。電気化学アクチュエータ902は抵抗器980を通じて放電し始め得るため、同時に電気化学アクチュエータ902が作動し得る。従って、流体が流体供給源から流れ出ることが可能となり得る。
【0067】
より具体的には、電気化学アクチュエータ902の放電は、電気回路900を通じて流れる電流982、又は言い換えれば、抵抗器980の電気抵抗に比較的比例し得る。抵抗器980の電気抵抗は比較的一定であり得るため、電気化学アクチュエータ902は比較的一定の速度で放電し得る。このように、時間の経過に伴う電気化学アクチュエータ902の放電は比較的線形であってもよく、つまり、時間の経過に伴う電気化学アクチュエータ902の変位は比較的線形であり得る。
【0068】
図10は、変位曲線1000の実施形態を示すグラフであり、図9の電気回路900に位置決めされた電気化学アクチュエータ902についての時間に対する変位挙動を示す。図示されるとおり、上記の条件下で、時間の経過に伴う電気化学アクチュエータ902の変位は比較的線形である。実施形態において、電気化学アクチュエータ902は、数分間から数日間に及ぶ期間にわたって線形的に変位し得る。例えば、電気化学アクチュエータ902は、約5分間〜約5週間の範囲、より具体的には約5時間〜約5日間の範囲の期間にわたって線形的に変位し得る。その後、線形的な変位は徐々に弱まり、電気化学セルが完全な放電状態に達して電気化学アクチュエータ902が作動停止すると、非線形的となり得る。
【0069】
図11は、流体の流動曲線1100の実施形態を示すグラフであり、図9の電気回路900に関連した流体供給源についての時間に対する流体の流れ挙動を示す。図10に示されるとおり、電気化学アクチュエータ902の変位率は比較的一定であるため、器具からの流体の流量もまた、図11に示されるとおり比較的一定であり得る。このように、電気回路900を含む器具は、流体供給源が空になるか、又は電気化学アクチュエータが完全に放電した状態になるまで、比較的連続した放出プロファイルに従って流体を供給することができ、つまり、流体は比較的一定の速度で流れ得る。
【0070】
実施形態において、器具は始動時に短い起動期間を経てもよく、その間の流体の流量は、比較的一定しないことがあり得る。例えば、変位曲線1000は、電気化学アクチュエータ902の最初の放電時、電気化学アクチュエータ902が短い起動期間を経過し得ることを示している。起動期間の間、電気化学アクチュエータ902には反応生成物が蓄積されていないため、電気化学アクチュエータ902は線形的に変位することができない。かかる起動期間を補償するため、電気化学アクチュエータ902は使用前に短時間だけ放電されてもよく、それによって器具を使用するときになると、電気化学アクチュエータ902は、ほぼ直ちに比較的線形の変位を経過し得る。さらに、流体流動曲線1100は、電気化学アクチュエータ902が最初に変位するとき、流体供給源が短い起動期間を経過し得ることを示している。起動期間の間、流体供給源は加圧され得るとともに、流体が流体連通部に向かって流れ始め得る。かかる起動期間を補償するため、流体供給源が初めに加圧され得るとともに、流体連通部に隣接して逆止弁が提供されてもよく、それによって、電気化学アクチュエータが変位し始めたほぼ直後に流体が流体連通部を通じて流れ始める。例えば、図6(d)に示される器具600では流体供給源604は加圧されないため、初めは流体が器具600から比較的一定の速度で流れ出ないこともあり得るが、しかしかかる問題は、流体供給源604を加圧し、且つ流体連通部606に隣接して逆止弁を提供することによって対処され得る。
【0071】
電気化学アクチュエータの変位は、電気回路を通過する電流に比較的比例し得るため、電気化学アクチュエータは比較的容易に制御され得る。例えば、電気化学アクチュエータの変位は、電気回路に位置決めされた1つ又は複数の流れ制御手段によって変化させ得る。かかる流れ制御手段の例としては、以下にさらに記載されるとおり、1つ又は複数の電気接点、スイッチ、制御装置、回路構成部品、又はこれらの組み合わせが挙げられる。流れ制御手段は、電気回路を制御するように動作し得る。例えば、流れ制御手段は、電気回路を開いたり、又は閉じたりするように動作し得る。流れ制御手段が電気回路を開くと、電気化学アクチュエータは放電及び作動を停止し得るため、従って流体供給源から流体は吐き出されない。流れ制御手段が電気回路を閉じると、電気化学アクチュエータは放電及び作動を開始し得るため、従って流体供給源から流体が吐き出される。流れ制御手段はまた、電気回路の抵抗を変化させるなどして、電気回路に通じる電流を変化させるようにも動作し得る。流れ制御手段が電流又は抵抗を変化させると、電気化学アクチュエータは異なる速度で放電し得るため、従って電気化学アクチュエータは異なる速度で変位し、流体供給源から異なる流量で吐き出す。
【0072】
図12は、電気接点1264を備える電気回路1200の実施形態を示す回路図である。電気接点1264が互いに電気的に連通しているとき、電気接点1264は電気化学アクチュエータ1202の変位を可能とし得るが、それ以外では変位は可能でない。図示されるとおり、電気接点1264は互いに電気的に連通していない。従って、電気回路1200は切断されている。電気化学アクチュエータ1202は放電又は変位していないため、流体は流れていない。実施形態において、かかる電気接点1264は、器具が組み立てられるまで電気化学アクチュエータ1202を充電状態に維持することができ、従って器具が使用されるまでに電気化学セルが充電を失うことはなくなり得る。かかる電気接点1264はまた、器具が組み立てられるまで流体の流れも阻止し得る。
【0073】
かかる実施形態が、再び図4を参照して図示及び説明される。具体的には、電気接点464が、基部422及び可動部424に位置決めされ得る。電気接点464は、説明のため(+)及び(−)として示されるが、他の実施形態においてこの構成は逆であってもよい。器具400が図4(a)に示される組み立てられていない位置にあるとき、電気接点464は互いに接触しておらず、電気回路は切断されているため、電気化学アクチュエータ402は放電及び作動することができない。器具400が図4(b)に示される組み立てられた位置に動かされると、電気接点464が互いに接触して電気回路が閉じられ、電気回路が他の何らかの場所で切断されていないとすれば、それによって電気化学アクチュエータ402は放電及び作動を開始することが可能となり得る。続いて、電気化学アクチュエータ402が流体リザーバ404に作用し、図4(c)に示されるとおり、流体を流体連通部406から送り出し得る。器具400を組み立てることによって電気接点464が互いに直接接触するのではなくてもよく、代わりに、電気回路を閉じることができるように電気接点464が互いに電気的に連通した状態に設定されてもよいことに留意しなければならない。或いは、電気接点は完全に省略されてもよく、その場合、器具が組み立てられていないときの電気化学アクチュエータは、放電できても、又はできなくともよい。
【0074】
再び図12を参照すると、電気接点1264が、比較的一定の電圧を有する電気化学アクチュエータ1202と比較的一定の電気抵抗を有する抵抗器1280と共に電気回路1200に配置されるとき、流体は器具が組み立てられるまで供給されないこともあり、その後流体は、比較的連続的な放出プロファイルに従って供給され得る。具体的には、流体は器具が組み立てられると流れ始め得るとともに、電気化学アクチュエータが完全に放電された状態になるか、又は流体供給源が空になるまで、比較的一定の速度で流れ続け得る。或いは、以下にさらに記載されるとおり1つ又は複数の追加的な流れ制御手段を実行することにより、放出プロファイルは変化させてもよい。
【0075】
図13は、可変抵抗器1380を備える電気回路1300の実施形態を示す回路図である。可変抵抗器1380は、変更又は制御され得る電気抵抗を有する任意の電気部品であり得る。より具体的には、可変抵抗器1380を変更すると、回路1300に誘導される電流1382が変わり得るため、ひいては電気化学アクチュエータ1302の放電率が変わり得る。同様に、電気化学アクチュエータ1302の放電率が変わると、電気化学アクチュエータ1302の変位率が変わり得るため、ひいては流体供給源からの流体の流量が変わり得る。このように、可変抵抗器1380の電気抵抗を調整することにより、流体供給源からの流体の流れを制御し得る。上記の原理から、流体の流れの調整は電気抵抗の調整に比例し得る。
【0076】
図14は、スイッチ1484を備える電気回路1400の実施形態を示す回路図である。スイッチ1484は、電気回路1400を開いたり、又は閉じたりするように動作し得る。スイッチ1484が閉じられると、電気化学アクチュエータ1402は放電し得る。例えば、抵抗器1480が比較的一定の電気抵抗を有する実施形態では、電気化学アクチュエータ1402は比較的一定の速度で放電し得る。スイッチ1484が開放されると、電気化学アクチュエータ1402は放電することができなくなり得るため、電気化学アクチュエータ1402は変位することができなくなり得る。このように、スイッチ1484を調整することにより、流体供給源からの流体の流れを制御し得る。
【0077】
図15は変位曲線1500を示すグラフであり、図14の電気回路1400に関連する流体供給源についての時間に対する変位挙動を示す。スイッチ1484を断続的に開閉することで電気化学アクチュエータ1402のデューティサイクルを変化させ、それによって電気化学アクチュエータ1402の変位を変化させ得る。例えば、完全オンのサイクル中、スイッチ1484は閉じられていてもよく、電気化学アクチュエータ1402は比較的一定の速度で変位し得る。デューティサイクル中、スイッチ1484は断続的に開閉され、従って電気化学アクチュエータ1402の有効変位率は、完全オンサイクル中の変位率と比べて比較的低くなる。具体的には、有効変位率は、スイッチ1484が開放位置と閉鎖位置とに費やす時間の長さに依存し得る。変位曲線1500は、デューティサイクル中に、それぞれ、16%の時間、33%の時間、及び66%の時間はスイッチ1484が閉じられるときの電気化学アクチュエータ1402の変位を示すが、任意の構成が可能である。図示されるとおり、スイッチ1484を66%の時間にわたり閉じると、結果として、スイッチ1484を33%の時間又は16%の時間にわたり閉じたときと比べて比較的高い有効変位率、従って比較的高い流体流量が生じる。
【0078】
図16は、制御システム1672の実施形態を備える器具1600の実施形態の概略図である。制御システム1672は、電気化学アクチュエータ1602を制御するように構成され得る。具体的には、制御システム1672は、電気化学アクチュエータ1602の変位を変化させることにより、流体供給源1604から流体連通部1606を通じ、ユーザ1608へと至る流体の流量を変化させ得る。例えば、制御システム1672は、回路を開いたり、回路を閉じたり、又は回路の電流若しくは抵抗を変化させたりすることにより、電気化学アクチュエータ1602の変位を変化させ得る。従って、制御システム1672により、選択された放出プロファイルを管理したり、又は放出プロファイルを変更したりすることが可能となり得る。例えば、制御システム1672は、一定の流体流量、変化する流体流量、連続的な流体の流れ、不連続的な流体の流れ、調節される流体の流れ、脈動する流体の流れ、プログラム化された流体の流れ、スケジュール化された流体の流れ、フィードバック応答性の流体の流れ、ユーザにより制御される流体の流れ、又は生物学的又は機械的測定値に応じて速度が変化する流体の流れを管理し得る。従って、制御システム1672により、ユーザ1608に有益な形で薬物療法を安全に遂行することが可能となり得る。
【0079】
制御システム1672は、1つ又は複数の流れ制御手段、例えば、上記の電気接点、抵抗器、可変抵抗器、及びスイッチのうちの1つ若しくは複数、又は他の公知の回路構成部品又はそれらの組み合わせを含み得る。実施形態において、制御システム1672はまた、制御装置及びメモリ、例えばマイクロ制御装置又は状態機械も含み得る。メモリは、制御装置により実行可能な命令セットを含む動作プログラムを含み得る。制御装置は動作プログラムを実行し、命令セットに従い電気回路の電流又は抵抗を変化させ得る。例えば、制御装置は1つ又は複数の流れ制御手段を制御するように動作することができ、それにより回路が開いたり、回路が閉じたり、又は回路の電流若しくは抵抗が変化したりする。従って、制御装置は、器具からの流体の流れを変化させて、選択された放出プロファイルを実現するように動作し得る。例えば、放出プロファイルは、プログラム化された放出プロファイル、スケジュール化された放出プロファイル、又は、例えばフィードバックシステム1676若しくはユーザインタフェース1678から受信したもう1つの入力に応じた放出プロファイルであってもよい。実施形態において、制御システム1672は、外部電源1674によって動力が供給され得る。電源1674は、好適な電圧の別の電気化学アクチュエータであり得るが、電源1674は任意の他の構成を有してもよく、又は省略されてもよい。
【0080】
他の実施形態において、流れ制御手段は電気回路内において、経時的に特別な方法で回路を制御するように配置されてもよく、その場合、制御システム1672は制御装置を備えなくともよく、その場合、予め定義された放出プロファイルが電気回路に「ハードコード」され得る。
【0081】
実施形態において、制御システム1672は時刻に従って電気回路を制御し得る。例えば、ユーザによりスケジュールが設定されてもよい。かかる実施形態により、体のサーカディアンリズムに従って流れを制御することが可能となり得る。
【0082】
実施形態において、制御システム1672により、フィードバックシステム1676及びユーザインタフェース1678の一方又は双方から受信する入力に応じて電気回路を制御することが可能となり得る。例えば、制御システム1672は入力に応答して、回路を開いたり、回路を閉じたり、又は回路の電流若しくは抵抗を変化させたりし得る。
【0083】
フィードバックシステム1676は、器具及び/又はユーザに関連する1つ又は複数の条件を計測するか、又は他の方法で検知するように構成され得る。例えば、フィードバックシステム1676は、電気回路に通じる実電流、電気回路にわたる実電圧、電気化学アクチュエータ1602の実放電、電気化学アクチュエータ1602の実変位、流体供給源1604から出る流体の実流動、流体連通部1606を通じる流体の実流動、電気回路を通じた実電流率、電気回路にわたる実電圧率、電気化学アクチュエータ1602の実放電率、電気化学アクチュエータ1602の実変位率、流体供給源1604から出る流体の実流量、流体連通部1606を通じる流体の実流量、こうした条件の代用物、他の条件、又はこれらの組み合わせを検知し得る。例えば、フィードバックシステム1676は、当該技術分野において公知の、器具1600内に適切に位置決めされた1つ又は複数のセンサ、特に、歪みゲージ、容量センサ、可変抵抗センサ、流量センサ、又は視覚センサなどを含み得る。フィードバックシステム1676は、検知された条件を制御システム1676に提供してもよく、制御システムは、検知された条件に応じて、回路を開いたり、回路を閉じたり、又は回路の電流若しくは抵抗を変化させたりするなどして、電気化学アクチュエータ1602の放電率を変更するように動作し得る。従って、制御システム1676は所望の放出プロファイルを維持し得る。
【0084】
実施形態において、フィードバックシステム1676はユーザと通信し得るとともに、ユーザに関連した1つ又は複数の条件を検知し得る。例えば、フィードバックシステム1676は、ユーザ1608から体液を採取してもよく、それに応じて制御システム1672が放出プロファイルを調整してもよい。フィードバックシステム1676はまた、別の電気化学アクチュエータであり得る電源、例えば電源1674とも通信し得る。別の変形例では、フィードバックシステム1676はバイオセンサを備え、例えば、患者の生理流体中の1つ又は複数の分析物の濃度を評価し得る。
【0085】
上述されるとおり、制御システム1672はユーザインタフェース1608と通信し得る。ユーザインタフェース1678は、ユーザから1つ又は複数の入力を受け取り得るとともに、その入力に応じて制御システム1672が放出プロファイルを調整し得る。ユーザ入力としては、以下のうちの1つ又は複数が含まれ得る;流体の流動を開始させるための要求、流体の流動を中断するための要求、一時的に流体の流動を生じさせるため要求、及び流体の流量を変化させるための要求。例えば、器具は、1つ又は複数のユーザ応答性コントロール、例えば、スイッチ、ボタン、又はスライダを備え得る。スイッチにより、ユーザは回路を開いたり、又は閉じたりするなどして、流体の流動をオン又はオフに切り換えることが可能となり得る。ボタンにより、ユーザは回路を一時的に閉じるなどして、一時的な流体の流動を開始することが可能となり得る。スライダにより、ユーザは電気回路を通じる電流を変化させるなどして、流体の流れの流量を変化させることが可能となり得る。ユーザインタフェース1608はまたディスプレイを備えてもよく、これは、用量が送り出された回数及び/又は残りの投薬数などの、制御システム1672によって送られる情報を表示し得る。かかる情報は、例えばフィードバックシステム1676によって制御システム1672に提供され得る。
【0086】
このように、制御システム1672により、薬物を連続的に、オンデマンドで、又は調節される方法で供給することが可能となり得る。本器具は、例えば、通常は注射される化合物の持続供給、力価測定及び正確な制御が要求される化合物の供給、又はオンデマンドの患者自己調節鎮痛に使用され得る。
【0087】
器具1600は例として図示及び記載されるもので、本開示の範囲内には他の構成が含まれる。例えば、電気化学アクチュエータ1602の変位は、図示されるとおり伝達機構1668を介して流体供給源1604に伝達され得るが、しかしながら伝達機構1668は省略されてもよい。さらに、フィードバックシステム1676及び/又はユーザインタフェース1678が省略されてもよく、その場合、制御システム1676は、ユーザ1608から受信した、それぞれフィードバック又は入力に応答しないものであり得る。
【0088】
例として、流れ制御手段は、電気化学アクチュエータの放電を制御することによって器具からの流体の流れを制御するものとして上述される。かかる実施形態は電気化学アクチュエータのポテンシャルを蓄えることができ、従って電気化学アクチュエータが放電すると、結果としてそれと相互に関連する流体の流れが生じる。他の実施形態において、電気化学アクチュエータは充電時に作動してもよく、その場合、電気化学アクチュエータを充電すると、それと相互に関連する流体の流れが生じる。さらに他の実施形態において、流れ制御手段は、電気化学アクチュエータと流体供給源との間の伝達構造又は他の介在機構を制御することによって流体の流れを制御し得る。かかる実施形態において、電気化学アクチュエータは連続的に放電し得るが、それと相互に関連する変位の伝達は、伝達機構による増幅のなかで妨害又は低減され得る。当業者は、上記の開示に基づきかかる構成を実行する能力を有し得る。
【0089】
本開示を読めば、当業者は、記載される器具の実施形態が、本開示の範囲及び幅を伝える説明的な例に過ぎないことを理解するであろう。上記の実施形態の一部を組み合わせた器具の他の実施形態が、本開示の範囲内に含まれる。
【0090】
本器具の実施形態は、1つ又は複数の放出プロファイルに従った様々な薬物の供給に使用され得る。例えば、薬物は、比較的一様な流量に従うか、変化する流量に従うか、予めプログラム化された流量に従うか、調節される流量に従うか、器具により検知された条件に応じるか、ユーザ若しくは他の外部ソースからの要求若しくは他の入力に応じるか、又はこれらの組み合わせで、供給され得る。
【0091】
このように、本器具の実施形態は、半減期が短い薬物、治療ウィンドウの狭い薬物、オンデマンド型の投薬によって供給される薬物、持続供給などの他の供給様式が望ましい、通常は注射される化合物、力価測定及び正確な制御が要求される薬物、並びに調節して供給するか、又は非一様な流量により供給することで治療有効性が向上する薬物の供給に使用され得る。こうした薬物は、既に適切な既存の注射用製剤を有し得る。
【0092】
例えば、本器具は、多種多様な治療法に有用であり得る。代表的な例としては、限定はされないが、1型又は2型糖尿病向けのインスリン;不妊症向けの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)又は卵胞刺激ホルモン(FSH);自己免疫疾患向けの免疫グロブリン;パーキンソン病向けのアポモルヒネ;慢性B型肝炎、慢性C型肝炎、固形悪性腫瘍又は血液悪性腫瘍向けのインターフェロンA;癌の治療向けの抗体;先端巨大症向けのオクトレオチド;疼痛、難治性うつ病、又は神経因性疼痛向けのケタミン;術後の血液希薄化向けのヘパリン;MSの治療向けのコルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン);術後痛又は慢性痛及び突出痛用のモルヒネ、ヒドロモルホン、フェンタニル又は他のオピオイド若しくは非オピオイド;及び痙縮(例えば、MS、SCI等)向けのチザニジンの供給が挙げられる。
【0093】
特定の実施形態では、本器具は、難治性うつ病又は他の気分障害を治療するためのケタミンの投与に使用され得る。実施形態において、ケタミンは、ラセミ化合物、単一鏡像異性体(R/S)、又は代謝産物(ここで、S−ノルケタミンは活性であり得る)のいずれかを含み得る。
【0094】
別の特定の実施形態において、本明細書のなかの器具の実施形態は、C型肝炎を治療するためのインターフェロンAの投与に使用され得る。一実施形態において、週に3回、日中若しくは一晩中、数時間型の注入パッチが装用されるか、又は持続的供給システムが1日24時間、装用される。有利には、かかる器具によってボーラス注射を緩徐注入に切り替え得るため、副作用が低減し、患者はさらなる高用量を耐容することができる。他のインターフェロンA療法では、器具はまた、悪性メラノーマ、腎細胞癌、ヘアリー細胞白血病、慢性B型肝炎、尖圭コンジローム、濾胞性(非ホジキンリンパ腫、及びAlDS関連カポジ肉腫の治療においても使用され得る。
【0095】
さらに別の特定の実施形態において、本明細書に記載される器具の実施形態は、パーキンソン病(「PD」)の治療におけるアポモルヒネ又は他のドパミン作動薬の投与に使用され得る。現在、PD患者に刺激を与えて「オフ」状態から迅速に抜け出させるためには、アポモルヒネのボーラス皮下注射が用いられ得る。しかしながら、アポモルヒネは比較的半減期が短く、且つ副作用が比較的重篤なため、その使用は限られている。本明細書に記載される器具は持続供給を提供し得るとともに、アポモルヒネ及びドパミンの双方の増減に伴う副作用を劇的に低減し得る。特定の一実施形態において、本器具は、アポモルヒネ又は他のドパミン作動薬の持続供給を提供し、場合により、患者の「オフ」状態を治療するための調整可能なベースライン及び/又はボーラスボタンを有する。有利には、この治療方法は、ボーラス投薬ではない、緩徐で安定した注入の結果として、体内のドパミン作動レベルの向上、例えば、ジスキネジーイベントの減少、「オフ」状態の減少、「オフ」状態にある合計時間の減少、「オン」と「オフ」との状態間の繰り返しの減少、及びレボドパの必要性の低減;「オフ」状態が起きた場合に、そこからの迅速な回復;及びアポモルヒネの悪心/嘔吐の副作用の低減又は解消を提供し得る。
【0096】
さらに別の実施形態において、器具の実施形態は、疼痛の治療において、モルヒネ、ヒドロモルホン、フェンタニル又は他のオピオイドなどの鎮痛薬の投与に使用され得る。有利には、本器具は、術後痛の管理などのために、それほど煩雑でない、及び/又は低侵襲的な技術で快適性の向上を提供し得る。特に、本器具は患者自己調節鎮痛用に構成され得る。
【0097】
本明細書に引用される刊行物及びそれらが引用する材料は、参照によって具体的に援用される。前述の詳細な説明から、本明細書に記載される方法及び器具の修正例及び変形例が、当業者には明らかであろう。かかる修正例及び変形例は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年7月26日に出願された米国仮特許出願第60/952,217号の利益を主張する。本願はまた、2007年11月21日に出願された米国仮特許出願第60/989,605号の利益も主張する。これらの出願は双方とも、参照により本明細書に援用される。
【0002】
発明の背景
本発明は、概して医療器具の分野であり、より詳細には、薬物供給器具の分野である。
【背景技術】
【0003】
薬物供給には、薬物又は他の治療化合物を体内に供給することが関わる。典型的には、薬物は、多くの要因に基づき慎重に選択された技術を用いて供給される。そうした要因としては、限定はされないが、薬物の用量、薬物動態学、複雑性、費用、及び吸収性などの薬物の特徴、所望の薬物供給プロファイルの特徴(一様なもの、非一様なもの、若しくは患者の自己調節によるものなど)、投与様式の特徴(患者、医師、看護師、若しくは他の介護者にとってのその投与様式の容易性、費用、複雑性、及び有効性など)、又は他の要因若しくはこれらの要因の組み合わせが挙げられる。
【0004】
従来の薬物供給技術は、様々な課題を提起する。ある剤形の経口投与は比較的単純な供給様式であるが、薬物のなかには、経口投与された場合に所望のバイオアベイラビリティを実現しなかったり、及び/又は望ましくない副作用を生じたりし得るものもある。さらに、治療上の必要によっては、経口供給に伴う投与時点から実効時点までの遅延が望ましくないこともある。注射による非経口投与は、所望の部位への薬物の比較的迅速な供給をもたらすなど、経口投与に伴う問題のいくつかを回避し得るが、従来の注射は不便で、自己投与が難しく、且つ患者にとっては痛い、又は不快なものであり得る。さらに、特定の供給/放出プロファイルを、特に持続的な期間にわたって実現するには、注射は好適でないことがある。
【0005】
従来の経皮パッチなどの受動的な経皮技術は、ユーザにとって比較的簡便であり得るとともに、経時的に比較的一様な薬物放出を可能とし得る。しかしながら、薬物のなかには、高度に帯電しているか、又は極性の高い薬物、ペプチド、タンパク質及び他の巨大分子活性薬剤などのように、角質層を透過せず、効果的に供給されないものもあり得る。さらに、薬物が効果を生じるまでには、比較的長い始動時間が必要とされ得る。従って、薬物放出は比較的連続したものとなり得るが、これは場合によっては望ましくないこともある。また、薬物の有効負荷量の相当な部分を供給できないこともあり、パッチが取り外されるとそれがパッチに残り得る。
【0006】
イオントフォレシス、ソノフォレシス、及びポレーション技術を含む能動的な経皮システムは、高価であり得るとともに、予測し得ない結果を生じることもある。能動的な経皮供給に適しているのは、水性で安定な化合物などの一部の薬物製剤だけである。さらに、複雑なシステムを使用することなしには、かかるシステムを用いて薬物の供給を調節又は制御することは不可能であり得る。
【0007】
注入ポンプシステムは大型であり得るとともに、ポンプと注入装置との間にチューブ材が必要となり得るため、クオリティ・オブ・ライフに影響する。さらに、注入ポンプは高価であり得るとともに、使い捨てし得るものではない。以上から、こうした、及び他の欠点の一部又は全てを克服する新規の改良された薬物供給システム及び方法を提供するならば、望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
パッチポンプ器具は、概して、少なくとも1つの流体供給源と、流体連通部と、少なくとも1つの電気化学アクチュエータとを備える。流体連通部は流体供給源と流体連通している。電気化学アクチュエータは、流体供給源から流体連通部に流体を供給するように動作する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の簡単な説明
【図1】流体供給システムの実施形態を示す概略ブロック図である。
【図2(a)】電気化学アクチュエータの実施形態の概略図であり、充電状態の電気化学アクチュエータを示す。
【図2(b)】電気化学アクチュエータの実施形態の概略図であり、放電するときの電気化学アクチュエータを示す。
【図3(a)】電気化学アクチュエータの別の実施形態の概略図であり、充電状態の電気化学アクチュエータを示す。
【図3(b)】電気化学アクチュエータの別の実施形態の概略図であり、放電するときの電気化学アクチュエータを示す。
【図4(a)】ポンプ器具の実施形態の側断面図であり、組み立てられていない位置のポンプ器具を示す。
【図4(b)】ポンプ器具の実施形態の側断面図であり、組み立てられた位置のポンプ器具を示す。
【図4(c)】ポンプ器具の実施形態の側断面図であり、そこから流体を圧送しているポンプ器具を示す。
【図5(a)】ポンプ器具の別の実施形態を示し、組み立てられていない位置のポンプ器具の上面平面図である。
【図5(b)】ポンプ器具の別の実施形態を示し、組み立てられていない位置のポンプ器具の側断面図である。
【図5(c)】ポンプ器具の別の実施形態を示し、組み立てられた位置のポンプ器具の上面平面図である。
【図5(d)】ポンプ器具の別の実施形態を示し、組み立てられた位置のポンプ器具の側断面図である。
【図6(a)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、ポンプ器具の基部に取り付けられる針挿入機構を示す。
【図6(b)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、ポンプ器具の基部を貫通して針及びカニューレを挿入する針挿入機構を示す。
【図6(c)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、組み立てられていない位置のポンプ器具を示す。
【図6(d)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、組み立てられた位置のポンプ器具を示す。
【図7(a)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、組み立てられていない位置のポンプ器具を示す。
【図7(b)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、組み立てられた位置のポンプ器具を示す。
【図8(a)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、組み立てられていない位置のポンプ器具を示す。
【図8(b)】ポンプ器具の別の実施形態の側断面図であり、組み立てられた位置のポンプ器具を示す。
【図9】ポンプ器具の実施形態で使用され得る電気回路の実施形態を示す回路図である。
【図10】変位曲線の例示的で非限定的な一実施形態を示すグラフであり、図9の電気回路に配置される電気化学アクチュエータについての時間に対する変位挙動を示す。
【図11】流体流動曲線の例示的で非限定的な一実施形態を示すグラフであり、図9の電気回路に関連する流体供給源についての時間に対する流体の流れ挙動を示す。
【図12】電気接点を備える電気回路の実施形態を示す回路図である。
【図13】可変抵抗器を備える電気回路の実施形態を示す回路図である。
【図14】スイッチを備える電気回路の実施形態を示す回路図である。
【図15】変位曲線を示すグラフであり、図14の電気回路に関連する流体供給源についての時間に対する変位挙動を示す。
【図16】制御システムのある実施形態を備える器具の実施形態の概略図である。
【図17】異なる電気化学アクチュエータによって動作する複数の流体供給源を備えるポンプ器具の実施形態の側断面図である。
【図18】同じ電気化学アクチュエータによって動作する複数の流体供給源を備えるポンプ器具の実施形態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
以下には、薬物を含み得る流体を、それを必要としている患者に供給するシステム及び方法の実施形態が記載される。患者は、例えばヒト又は他の哺乳動物であってよい。実施形態において、本システム及び方法は、流体の皮下供給又は静脈内供給に適したポンプ器具を具体化してもよく、この流体は、1つ又は複数の薬物を含んでも、又は含まなくともよい。本ポンプ器具は電気化学アクチュエータを用いてもよく、これはバッテリとポンプとの双方の特徴を有し得る。具体的には、電気化学アクチュエータは、放電時に圧送力を生じる電気化学セルを備え得る。このように、本ポンプ器具は従来の薬物ポンプと比べて比較的少ない数の部品を有し得るため、従って本ポンプ器具は、従来の薬物ポンプと比べて比較的コンパクトで、使い捨てができ、且つ信頼性が高い。本ポンプ器具のこうした特質により、注入薬物療法に伴う費用及び不快感を低減することが可能となり得る。さらに、かかるポンプ器具は、制御装置及び/又は他の回路部品などの、ポンプ器具からの薬物又は流体の流れを調整するように動作する制御手段を有し得る。かかる制御手段により、本ポンプ器具を使用した1つ又は複数の放出プロファイルの実行を可能とすることができ、放出プロファイルとしては、特に、一様な流れ、非一様な流れ、連続した流れ、不連続な流れ、プログラム化された流れ、スケジュール化された流れ、ユーザによって開始される流れ、又はフィードバック応答性の流れを要件とするものが含まれる。このように、本ポンプ器具は、他のポンプ器具と比べてより多様な薬物療法を効果的に遂行し得る。
【0011】
図1は、流体供給システム100の実施形態を示す概略ブロック図である。流体供給システム100は、概して、流体供給源104と結合する電気化学アクチュエータ102と流体連通部106とを備える。流体供給源104は、流体連通部106を介して標的108に供給される流体を含み得る。電気化学アクチュエータ102は、作動されるか、又はその他の方法で圧送力を生み出し、流体供給源104からの流体を流体連通部106に供給し得る。具体的には、電気化学アクチュエータ102は、そこで起こる電気化学反応に応じて容積又は位置が変化する任意の器具であり得る。例えば、電気化学アクチュエータ102は充電された電気化学セルを備えてもよく、電気化学セルが放電すると、その電気化学セルの少なくとも一部分が作動し得る。このように、電気化学アクチュエータ102は、動力内蔵アクチュエータ又はバッテリとアクチュエータとの組み合わせと見なすことができる。
【0012】
使用時、流体連通部106が標的108と結合され得るとともに、電気化学アクチュエータ102が動作し得る。具体的には、電気化学アクチュエータ102が放電して作動し得る。得られる力学的仕事は流体供給源104に作用し得るか、又は介在機構を通じて流体供給源104に伝達されてもよく、それによって流体が流体連通部106を通じて標的108に供給される。
【0013】
実施形態において、流体供給システム100は、薬物を人体に供給するためのシステムであってもよい。かかる実施形態において、流体供給源104は、リザーバ、ポーチ、若しくはブラダ、又は薬物を流体形態で収容する他の公知の流体供給源であってもよく、及び標的108は、薬物療法又は予防を必要としているヒトであってもよい。流体連通部106は、針、カテーテル、カニューレ、注入装置、又は、薬物供給のために人体に挿入されるか、又はその他の方法で結合される他の公知の供給器具であってもよい。電気化学アクチュエータ102で電気化学反応が起こると、電気化学アクチュエータ102は、薬物を流体供給源104から人体に送り得る。かかる薬物供給は、例えば、流体連通部106の位置及び/又は薬物の流入位置に応じて、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、心腔内、骨内、皮内、髄腔内、腹腔内、腫瘍内、硬膜外、及び/又は神経周囲へのものであり得る。
【0014】
実施形態において、流体供給システム100は、薬物を含む薬物製剤、つまり医薬品有効成分を含む治療薬又は予防薬を供給するために使用され得る。他の実施形態において、流体供給システム100は、薬物を含有しない流体を供給し得る。例えば、流体は生理食塩水か、又は造影剤などの診断用薬であってもよい。
【0015】
薬物は、純粋な形態であってもよく、又は当該技術分野において公知の1つ又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤を使用して、特に、溶液、懸濁液、若しくは乳剤中に配合されてもよい。例えば、その薬物に対する薬学的に許容可能な溶媒が提供されてもよく、それは本質的に、当該技術分野において公知の任意の水性又は非水性溶媒であり得る。水性溶媒の例としては、生理食塩水溶液、デキストロース又はマンニトールなどの糖の溶液、及び薬学的に許容可能な緩衝液が挙げられ、非水性溶媒の例としては、固定植物油、グリセリン、ポリエチレングリコール、アルコール、及びオレイン酸エチルが挙げられる。溶媒は、抗菌防腐剤、抗酸化剤、等張化剤、緩衝剤、安定剤、又は他の成分をさらに含み得る。
【0016】
本器具の実施形態により供給され得る薬物の代表的な例としては、限定はされないが、オピオイド系麻酔薬、例えば、フェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、モルヒネ、ヒドロモルホン、オキシコジエン(oxycodiene)及びそれらの塩;非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えば、ジクロフェナク、ナプロキセン、イブプロフィン(ibuprofin)、及びセレコキシブ;局所麻酔薬、例えば、リドカイン、テトラカイン、及びブピビカイン;ドパミン拮抗薬、例えば、アポモルヒネ、ロチゴチン、及びロピネロール(ropinerole);アレルギーの治療及び/又は予防に使用される薬物、例えば、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、抗コリン作動薬、及び免疫療法剤;鎮痙薬、例えば、チザニジン及びバクロフィン(baclofin);ビタミン、例えばナイアシン;セレギリン;並びにラサギリンが挙げられる。通常、皮下、筋肉内、若しくは静脈内注射又は他の非経口経路によって供給される、特に、本質的に任意のペプチド、タンパク質、生物学的製剤、又はオリゴヌクレオチドが、本明細書に記載される器具の実施形態を使用して供給され得る。実施形態において、本器具を使用して2種以上の異なる組み合わせの薬物が投与されてもよく、これは、薬剤を一定の割合で供給することのできる単一の、若しくは複数の供給ポートを用いるか、又は各薬剤の供給を個別に調節することが可能な手段によって行われる。例えば、2種以上の薬物は、同時に、若しくは連続的に、又はそれらの組み合わせで(例えば、重複して)投与することができる。
【0017】
本明細書に記載される流体供給システム100及び他のシステム並びに方法は、人体に薬物を送るものとして記載されるが、かかるシステム及び方法を用いることにより、任意の好適な生体適合性又は粘度の任意の流体を、任意の物体、生物又は無生物に供給し得る。例えば、本システム及び方法を用いて、他の生体適合性流体を、人間及び他の動物を含む生物体に供給し得る。さらに、本システム及び方法は、薬物又は他の流体を、人間以外の生物体、例えば動物及び植物生命体に供給し得る。また、本システム及び方法は、任意の流体を、任意の標的、生物又は無生物に供給してもよい。本明細書に記載されるシステム及び方法は、概して、動力内蔵アクチュエータ及び/又はバッテリとアクチュエータとの組み合わせを含む電気化学アクチュエータを使用して流体を供給するシステム及び方法である。
【0018】
かかる電気化学アクチュエータの実施形態は、概して、Chiang et al.による「Electrochemical Methods, Devices, and Structures」と題される米国特許出願第11/150,477号、Chiang et al.による「Electrochemical Actuator」と題される米国特許出願第11/881,830号、及びChiang et al.による「Electrochemical Actuator」と題される米国特許出願第12/035,406号に記載され、これらの各々は参照により本明細書に援用される。かかる電気化学アクチュエータは、容積又は位置の変化を受けることによって電圧又は電流の印加に反応する少なくとも1つの構成要素を備え得る。容積又は位置が変化することで力学的仕事が発生してもよく、それが流体供給源に作用し得るか、又は流体供給源に伝達され得ることにより、流体供給源から流体が供給され得る。
【0019】
実施形態において、電気化学アクチュエータは正電極と負電極とを備えてもよく、そのうちの少なくとも一方が作動電極である。電気化学アクチュエータのこうした、及び他の構成要素が電気化学セルを形成してもよく、セルは最初に充電され得る。電極間の回路を閉じると電気化学セルは放電し始め、作動電極が作動する。それによって作動電極は、例えば、流体供給源又は流体供給源に結合された伝達構造などの別の構造体に対し仕事を加え得る。その仕事により、流体が流体供給源から標的に圧送されるか、又はその他の形で送り出され得る。
【0020】
より具体的には、閉じた回路が形成されると、作動電極は容積又は位置の変化を受け得るとともに、この容積又は位置の変化によって流体供給源又は伝達構造に仕事が加わり得る。例えば、作動電極は、膨張するか、屈曲するか、座屈するか、折り重なるか、陥凹するか、伸長するか、収縮するか、又はその他の形で、容積、サイズ、形状、向き、配置、若しくは所在位置が変化を受けてもよく、それによって作動電極の少なくとも一部分の容積又は位置が変化を受ける。実施形態において、容積又は位置の変化は作動電極の一部分が受け得る一方、全体としての作動電極は逆の変化を受けてもよく、又は全く変化を受けなくともよい。電気化学アクチュエータは実際には、直列、並列、又はそれらの組み合わせで配置された多数の電気化学アクチュエータを備え得ることに留意すべきである。例えば、多数のかかる電気化学アクチュエータが互いに積み重ねられてもよい。別の例として、2つ以上の流体供給源に作用する1つ又は複数の電気化学アクチュエータを備えることにより、複数の薬剤の同時供給又は逐次供給が実現され得る。
【0021】
図2は、電気化学アクチュエータ202の実施形態の概略図である。図示されるとおり、電気化学アクチュエータ202は、正電極210と、負電極212と、電解質214とを備え得る。これらの構成要素が電気化学セルを形成してもよく、セルは最初に放電され、次に充電されてから使用されるか、又は図2(a)に示されるとおり、最初から充電されている。正電極210は、電解質214の存在下に膨張するように構成され得る。電極210と212との間の回路が閉じられると、電流が正電極210から負電極212に流れ得る。正電極210は容積の変化を受け、その結果、図2(b)に示されるとおり、正電極210の少なくとも一部分が長手方向に変位する。それにより正電極210が、流体リザーバ204か、又は例示されるプレートなどの、それと結合している伝達構造216に対して圧送力又は圧力を及ぼし得る。圧送力又は圧力により、流体リザーバ204から流体が圧送され得る。このように、電気化学アクチュエータ202は、動力内蔵型の電気化学ポンプと見なすことができる。例示される実施形態において、電気化学セルは正電極210を有し、これは、セルの充電時に作用イオンについてより低い化学ポテンシャルを有するように選択され、従ってセルが放電されると、自発的に負電極212から作用イオンを受け入れることができる。実施形態において、作用イオンとしては、限定はされないが、プロトン又はリチウムイオンが挙げられる。作用イオンがリチウムのとき、正電極210は、LiCoO2、LiFePO4、LiNiO2、LiMn2O4、LiMnO2、LiMnPO4、Li4Ti5O12、並びにこれらの修飾組成物及び固溶体を含む1つ又は複数のリチウム金属酸化物;酸化チタン、酸化マンガン、酸化バナジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化コバルト、酸化ニッケル若しくは酸化鉄のなかの1つ若しくは複数を含む酸化物化合物;TiSi2、MoSi2、WSi2、並びにこれらの修飾組成物及び固溶体のなかの1つ若しくは複数を含む金属硫化物;アルミニウム、銀、金、ホウ素、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、鉛、アンチモン、ケイ素、スズ、若しくは亜鉛のなかの1つ若しくは複数を含む金属、金属合金、若しくは金属間化合物;リチウム金属合金;又は、グラファイト、炭素繊維構造、ガラス状炭素構造、高配向性熱分解グラファイト、若しくは不規則炭素構造のなかの1つ若しくは複数を含む炭素を含み得る。負電極212は、リチウム金属、リチウム金属合金、又は正電極化合物として列挙された上記の化合物のいずれかを含み得るが、但しかかる化合物は、負電極として使用されるとき、セルの充電時に負電極からリチウムを自発的に受け入れることが可能な正電極と対をなすことを条件とする。他の構成もまた可能である。
【0022】
実施形態において、電気化学アクチュエータは、陽極と、陰極と、リチウムイオンなどの化学種とを備え得る。電極の少なくとも一方は、第1の部分と第2の部分とを備える作動電極であり得る。これらの部分は少なくとも1つの異なる特性を有してもよく、従って電圧又は電流の存在下で、第1の部分は第2の部分と異なる形で化学種に反応する。例えば、これらの部分は異なる材料から形成されてもよく、又はこれらの部分は、特に、厚さ、寸法、多孔度、密度、若しくは表面構造が異なってもよい。電極は充電され得るとともに、回路が閉じられると電流が流れ得る。化学種は第1の部分について、第2の部分と異なる程度にインターカレートし、デインターカレートし、共に合金し、還元し、又はメッキする。第1の部分の化学種との反応は第2の部分と異なるため、作動電極は容積又は位置の変化を被り得る。
【0023】
かかる実施形態の例が図3に示され、これは、電気化学アクチュエータ302の別の実施形態の概略図である。電気化学アクチュエータ302は、正電極310と、負電極312と、化学種314とを備え得る。化学種314は、例えばリチウムイオンを含む電解質であり得る。正電極310は、第1の部分と第2の部分とを備え得る。第1の部分は、化学種の存在下にあるとき寸法が変わる材料を含み得る。例えば、アルミニウムはリチウムと合金したり、又はリチウムによってインターカレートされたりすると膨張する。第2の部分は、化学種の存在下にあっても寸法が変わらないか、又は第1の部分の材料と比べて寸法の変化量が比較的小さい材料を含み得る。例えば、銅は、リチウムをインターカレートしたり、又はそれと合金したりすることが実質的にない。従って、正電極310はバイモルフ構造と見なすことができ、これらの部分の一方が正電流集電体として機能する。
【0024】
負電極312は負電流集電体として機能し得る。例えば、負電極312は、銅の層上に接着又は堆積されたリチウム金属層を備え得る。図3(a)に示されるとおり、初めに電極は充電され得るが、閉じた回路は形成しなくともよい。正電極310は、リチウムについて負電極312より低い化学ポテンシャルを有し得る。図3(b)に示されるとおり2つの電極間の回路が閉じられると、電流は負電極312に向かって流れ得る。正電極310の第1の部分はリチウムと合金するか、又はリチウムをインターカレートし、それによって容積が膨張し得る一方、第2の部分は機械的拘束として機能し得る。従って、正電極310は屈曲するか、又はその他の形で変位し得る。正電極310の変位は流体リザーバ304に伝達され、それによって流体リザーバ304が流体を吐き出し得る。
【0025】
上述されるとおり、かかる電気化学アクチュエータは、薬物を含有する流体又は薬物を含有しない流体をヒト患者又は他の標的に供給するのに適した流体供給器具に動力を供給し得る。かかる流体供給システムは、人体の皮膚に取り外し可能に取り付けることのできるパッチ器具などの、比較的小さい自蔵型の使い捨て器具として具体化され得る。電気化学アクチュエータはバッテリ及びポンプの双方として機能するため、このパッチ器具は比較的小さく、且つ自蔵型であり得る。この器具の小型で自蔵型という性質から、有利には、器具を衣服の下に隠すことが可能となり得るとともに、患者は、薬物が供給されるときにも通常の活動を続けることができる。従来の薬物ポンプと異なり、流体を流体リザーバから体内に送るための外部的なチューブ材は不要であり得る。代わりに、任意のチューブ材を器具内に含んでもよく、針又は他の流体連通部が器具から体内に伸張し得る。電気化学アクチュエータは初めに充電されてもよく、パッチ器具が作動されると放電し始め、薬物又は他の流体を体内に圧送するか、又はその他の形で供給し得る。電気化学アクチュエータが完全に放電したか、又は流体リザーバが空になると、パッチ器具は取り外され、廃棄され得る。本器具の電気化学アクチュエータ及び他の構成要素の小型で安価な性質から、維持しておかれるポンプを有する従来のポンプ器具と異なり、器具全体を使い捨てすることが可能となり得る。このように、本器具は、数分間から数日間に至るまで様々であり得る所定期間にわたる薬物供給、例えば、皮下又は静脈内薬物供給を可能とし得る。その後、器具は体から取り外され、廃棄され得る。
【0026】
本開示の目的上、用語「使い捨て」は、概して、廃棄されるよう意図された単回使用の器具又はその構成要素を意味する。電気化学アクチュエータはバッテリとして機能し得るため、電気化学アクチュエータは使用するうちに放電し、後に廃棄され得る。しかしながら、電気化学アクチュエータはポンプ機構としても機能するため、電気化学アクチュエータを廃棄すると、ポンプ機構もまた廃棄される。かかる構成が従来の注入ポンプと異なり、従来のものは、後に再使用するため維持しておかれるポンプ機構を備える。従来の注入ポンプと異なり、電気化学アクチュエータを含むパッチポンプ器具は、完全に使い捨てであり得る。
【0027】
かかる器具は、概して、ハウジングと結合された薬物又は流体供給システムを備え得る。概して上述されるとおり、薬物供給システムは、薬物を流体リザーバから針又は他の流体連通部を通じて送り込むのに適した電気化学アクチュエータを備え得る。ハウジングは、流体供給システムを少なくとも部分的に収容し得るとともに、流体供給システムをヒト皮膚と取り外し可能に結合するのに適し得る。
【0028】
器具を皮膚に装用できるように、ハウジングの裏面を剥離可能な接着剤が少なくとも部分的に被覆し得る。接着剤は、非毒性で生体適合性、且つヒト皮膚から剥離可能であり得る。器具が使える状態になるまで接着剤を保護するため、取り外し可能な保護被覆材が接着剤を被覆してもよく、その場合、この被覆材は器具を皮膚に貼付する前に取り外され得る。或いは、接着剤は感熱性又は感圧性であってもよく、その場合、器具を皮膚に貼付すると、接着剤が作用し始め得る。例示的接着剤としては、限定はされないが、包帯などの医療用具を皮膚に固定するために一般的に使用されるタイプのアクリレートベースの医用接着剤が挙げられる。しかしながら、接着剤は必ずしも必要ではなく、省略されてもよいが、その場合、ハウジングは皮膚か、又は概して体に、任意の他の方法で結合され得る。
【0029】
器具のサイズ、形状、及び重量は、器具が接着剤によって貼付された後、その器具が皮膚に快適に装用され得るように選択され得る。例えば、器具は、約1インチ×約1インチ×約0.1インチ〜約5インチ×約5インチ×約1インチの範囲、及びある実施形態では、約2インチ×約2インチ×約0.25インチ〜約4インチ×約4インチ×約0.67インチの範囲のサイズを有し得る。器具の重量は、約5グラム〜約200グラムの範囲、及びある実施形態では、約15グラム〜約100グラムの範囲であり得る。器具は、約0.1ミリリットル〜約1000ミリリットルの範囲、及びある場合には、約0.3ミリリットル〜約100ミリリットルの範囲、例えば、約0.5ミリリットル〜約5ミリリットルの容量を送り出すことが可能であり得る。器具の形状は、器具が衣服の下にあることが比較的分かり難いものであり得るように選択され得る。例えば、ハウジングは比較的平滑で、鋭端がないものであり得る。しかしながら、任意のサイズ、形状、又は重量が可能である。
【0030】
ハウジングは、比較的軽量で可撓性の、しかし頑丈な材料で形成され得る。ハウジングはまた、例えば特定の剛性部分と特定の可撓性部分とを提供するように、材料の組み合わせで形成されてもよい。材料はまた、比較的低価格であってもよく、それにより器具を使い捨てとし得る。例示的な材料としては、プラスチック及びゴム材料、例えば、ポリスチレン、ポリブテン、カーボネート、ウレタンゴム、ブテンゴム、シリコーン、並びに他の同等の材料及びそれらの混合物が挙げられるが、これらの材料の組み合わせ又は任意の他の材料が用いられてもよい。
【0031】
実施形態において、ハウジングは2つの部分、すなわち基部と可動部とを備え得る。基部は、皮膚への取り付けに適し得る。例えば、基部は比較的柔軟であり得る。基部の裏面に接着剤が付着されてもよく、この裏面は比較的平坦であるか、又は特定の身体領域に合致するような形状とされ得る。可動部は、基部と結合するサイズ及び形状とされ得る。実施形態において、2つの部分は、ロック機構などを介して互いに係止するように設計され得る。ある場合には、2つの部分は解除可能なロック機構などを介して互いに解除可能に係止されてもよく、従って可動部は基部と取り外し可能に結合し得る。器具を組み立てるため、可動部は基部に対し、組み立てられていない位置と組み立てられた位置との間で動かすことが可能であり得る。組み立てられた位置では、2つの部分は、器具を衣服の下に隠すのに適した外形を有する器具を形成し得る。かかる器具の実施形態が、概して、以下に図4〜10を参照して記載されるが、しかしながら様々な構成が可能である。
【0032】
図4は、パッチ器具400の実施形態の側断面図である。器具400は、概して、ハウジング418と結合された流体供給システムを備え、ハウジング418は基部422と可動部424とを備え得る。基部422の裏面に接着剤420が配置され得る。可動部424は、電気化学アクチュエータ402、流体リザーバ404、及び流体連通部406などの、流体供給システムの1つ又は複数の構成要素を内蔵し得る。可動部424は、基部422に挿入されるサイズ及び形状であってもよい。より具体的には、可動部424は基部422に対し、図4(a)に図示される組み立てられていない位置と、図4(b〜c)に図示される組み立てられた位置との間で動かすことが可能であり得る。組み立てられた位置では、2つの部分422、424は嵌合し、互いに係止し得る。組み立てられると、器具400の外表面は比較的平滑で、衣服の下に隠し易いものとなり得る。
【0033】
図4に示される実施形態において、解除可能なロック機構は、可動部424の外表面に位置する戻り止め426と、基部422の内表面に位置する溝付きフランジ428とによって形成される。組み立てられていない位置では、戻り止め426は溝付きフランジ428に載置され、それによって可動部424が基部422の上方に支持される。器具400を組み立てるためには、可動部424に力Fが加えられ、可動部424が下方に押し込まれる。力Fによって溝付きフランジ428が外側に撓み、戻り止め426が溝付きフランジ428を越えて進む。このように、可動部424が基部422の中へとさらに進むと、そこに着座して動かなくなる。溝付きフランジ428が元に戻ると、戻り止め426は上方に移動できなくなり、器具400が一体に解除可能に係止される。このように組み立てられると、器具400は比較的鋭端の少ない球形状をとる。ある実施形態では、ロック機構は解除可能でなくともよいことに留意すべきである。
【0034】
図5に示される実施形態において、器具500は、概して、基部522と可動部524とから形成されるハウジングを備える。器具400と同様に、器具500を皮膚に結合するため、基部522は裏面に接着剤を有し得る(明確にするため図示せず)。流体供給システムが、概して可動部524に収容され得る(明確にするため図示せず)。
【0035】
より具体的には、基部522は、比較的楕円形の外側と、可動部524を受け入れるサイズ及び形状の内側とを有し得る。例えば、可動部524は本体530と突起532とを有してもよく、及び基部522は内側スロット534と開口536とを有してもよい。内側スロット534は、突起532を受け入れるサイズ及び形状であってもよく、及び開口536は、本体530を受け入れるサイズ及び形状であってもよい。器具500を組み立てるには、図5(b)に示されるとおり、突起532が開口536からスロット534に沿って挿入され得る。図5(d)に示されるとおり、可動部524が基部522に着座して動かなくなるように、本体530が開口536に押し込まれ得る。このように組み立てられると、可動部524はその形状によって上方及び後方への移動が必然的に制限され、2つの部分522、524が互いに解除可能に係止され得る。組み立てられた器具500は、鋭端が比較的少なく、且つ比較的低い断面形を有する平滑な楕円形状をとってもよく、それにより器具500を衣服の下に隠すことができる。
【0036】
図6に示される実施形態、具体的に図6(c)及び図6(d)において、器具600は、基部622に挿入するのではなく、その外側にスナップ留めする可動部624を備え得る。具体的には、基部622は、基材638と、基材638から上方に突出するガイド640とを備え得る。基材638は、接着層、例えば、可撓性の両面接着層であってもよい。或いは、基材638は、裏面に接着剤を有するプレートを含んでもよい。可動部624は、電気化学アクチュエータ602、流体供給源604、及び関連電子装置672などの流体供給システムの構成要素を内蔵するキャビティを有し得る(この実施形態は、以下に図10を参照して記載される)。可動部624には、ガイド640を受け入れるための凹部642が形成され得る。基部622と可動部624とを組み立てるには、図6(c)に示されるとおり、可動部624が基部622に被せて位置決めされ得る。ガイド640により凹部642の位置を合わせることができ、従って部分622、624が正しく整列する。図6(d)に示されるとおり、力が加えられることで可動部624が基部622に嵌め込まれ得る。ガイド640と凹部642とはスナップ嵌めを形成することができ、従って器具600が一体に解除可能に係止された状態となる。或いは、基材638が両面接着層である実施形態などにおいて、可動部624は基部622に接着されてもよい。組み立てられると、器具600は比較的平滑で低い外側断面形を有し、それにより器具を衣服の下に隠すことが可能となり得る。
【0037】
この器具の種々の実施形態は、異なる手の動きを用いて組み立てられ得ることに留意しなければならない。例えば、図4に示される器具400は、図4(b)に示されるとおり、可動部424に対して皮膚の表面とほぼ垂直な方向に力を及ぼすことによって組み立てられ得る一方、図5に示される器具500は、図5(b)に示されるとおり、可動部524に対して皮膚の表面とある角度をなす方向に力を及ぼすことによって組み立てられ得る。このように、以下でさらに記載されるとおり、身体の異なる部分に対するアセンブリ、又は異なる角度で挿入される流体連通部を有するアセンブリには、器具の異なる実施形態がより良く適し得る。また、器具400、器具500、及び器具600など、器具のいくつかの実施形態は、片手を用いて組み立てられ得ることにも留意しなければならない。器具を片手で組み立てられるため、体のなかの容易にアクセスできない部分に器具を取り付け易くなり得る。例えば、ある薬物又は他の流体は体の背中側から注入されてもよく、これは両手でのアクセスが困難であり得る。例えば、片手を用いて組立てることのできる器具の実施形態では、器具を体の背中側で組み立てることは比較的容易であり得る。
【0038】
実施形態において、器具を組み立てると、同時に流体連通部が体に挿入されるように器具が設計され得る。具体的には、流体連通部は初めはハウジング内に引き込まれていてもよく、器具を組み立てる間にハウジングから体内に移動し得る。より具体的には、ハウジングを組み立てられていない位置から組み立てられた位置に動かす力が、針を体に刺入するのにも有効であり得る。
【0039】
図4に示される器具400の実施形態において、例えば、流体連通部406は、可動部424から下方に伸張する針であり得る。図4(a)に示されるとおり、器具400が組み立てられていない位置にあるとき、針は基部422の内部に保護されていてもよい。セプタム444又は他の穿通可能部材が、基部422において針に隣接して位置決めされてもよく、針が汚染物に曝露されないように基部422を密閉する。図4(b)に示されるとおり、力Fが加えられることで可動部424が組み立てられた位置に動くと、針がセプタム444を穿通して皮膚に侵入する。力Fは皮膚の表面と比較的垂直に加えられるため、針は、皮膚の表面と比較的垂直な角度で体内に侵入し得る。かかる構成は、針を垂直な向きで挿入することを好む患者に、又は、垂直な向きの針を介した供給に適した薬物若しくは他の流体に適し得る。しかしながら、他の実施形態では他の構成が可能である。
【0040】
例えば、図5に示される器具500の実施形態において、流体連通部506は、突起532の端部に位置する針であり得る。スロット534は、基部522を貫通して下方に、基部522の裏面とある角度をなして延在し得る。スロット534は、基部522の裏面を貫通して形成された開口部546を終端とし得る。突起532は、突起532がスロット534に位置決めされると、針が開口部546を越えて皮膚に入り込むようなサイズであり得る。器具500を組み立てるには、突起532がスロット534に挿通される。皮膚の表面に対してある角度で力Fを加えると、突起532はスロット534に沿って押し込まれ、従って力Fを加え続けると、針が皮膚の表面に対してある角度で体内に挿入される。ユーザによっては、及び/又は薬物若しくは流体供給のタイプによっては、ある角度で針を挿入するほうが好ましいことがある。
【0041】
図4及び図5を参照して上述される実施形態において、器具を組み立てられた位置に動かす力は、針を体内に挿入するよう針に作用する力と同じである。かかる実施形態において、針は、可動部が基部内を進む方向と同じ方向に体内を進む。他の実施形態において、器具は、力が針に作用する前に力の方向を変える機構を備え得る。かかる実施形態において、力は可動部に対してある方向に作用し得るとともに、針に対して別の方向に作用し得る。例えば、力が針に作用する前にこの機構によって垂直な力の方向が変えられてもよく、それによってその力は、針をある角度で体内に挿入することができる。例示的な機構としてはスプリング及びラッチを挙げることができ、このとき、可動部を基部と結合するとラッチが解除され、スプリングによって針が体内に挿入される。かかる実施形態において、機構は、ダイアルを回転させるか、又はスライダを摺動させることによるなどして針の挿入角度を選択可能にするものであってもよく、それによってユーザは、自身の好みに基づき挿入角度を調節することができる。当業者は、上記の開示に基づきかかる機構を設計する能力を有し得る。
【0042】
さらに他の実施形態において、針を体内に刺入する力は、器具を組み立てられた位置に設定する力と完全に別個に加えられ得る。例えば、針は、器具を針と結合する前に、手動で体内に挿入されてもよい。別の例としては、電気化学アクチュエータによって針に力を加えることで、針を体内に挿入してもよい。さらに、針を体内に挿入するための別個の挿入機構が提供されてもよい。
【0043】
かかる実施形態が図6に示され、具体的には図6(a)及び図6(b)が参照される。具体的には、器具600は別個の針挿入機構648と共に使用するのに適し得る。針挿入機構648は、流体連通部606、例えば針又はカニューレを、器具600の基部622を通じて体内に挿入するように構成され得る。例えば、基部622は流体連通部606を受け入れるための開口650を備えてもよく、この開口650は、ガイド640及び基板638を貫通して形成される。針挿入機構648を基部622と整列させることができるように、より具体的には、流体連通部606を開口650と整列させることができるように、針挿入機構648は、ガイド640と合致するサイズ及び形状の凹部652を備え得る。
【0044】
流体連通部606を挿入するために、図6(b)に示されるとおり、針挿入機構648が基部622上に置かれ得る。概して針挿入機構648内に圧縮状態で保持されるスプリング654が、解除可能ラッチ656によって解除され得る。スプリング654は流体連通部606と連通していてもよく、ラッチ656が解除されると、流体連通部606が針挿入機構648から吐き出され得る。図6(b)に示されるとおり、流体連通部606は開口650を通じて進み、図6(c)に示されるとおり、体内に入り得る。その後、図6(c)に示されるとおり、針挿入機構648は基部622から取り外されてもよく、それによって、図6(d)に示されるとおり、その上に可動部624を配置し得る。続いて針挿入機構648は廃棄されてもよく、又は実施形態によっては再使用のために保管され得る。
【0045】
実施形態において、流体連通部606はソフトカニューレ658であってもよい。図6(b)に示されるとおり、スプリング654に針660が固定して結合されてもよく、これが最初に皮膚を穿刺してソフトカニューレ658の体内への挿入を補助し得る。続いて針660は引き込まれ、すなわち体から取り外されてもよく、図6(c)に示されるとおり、ソフトカニューレ658がその場に残る。整列ガイド662がソフトカニューレ658を体内にさらに誘導し得るが、しかし整列ガイド662は必ずしも必要ではなく、省略されてもよい。
【0046】
実施形態において、針挿入機構は、届きにくい場所にカテーテルを挿入し易くするため片手操作用として設計され得る。さらに、針挿入機構は、ユーザが選択した角度を含め、様々な異なる角度で針を挿入するように設計され得る。実施形態によっては、針又はソフトカニューレ以外の流体連通部が針挿入機構によって挿入され得る。針を挿入する力は、スプリングによるか、又は他の方法で、例えばユーザにより手動で供給されてもよく、その場合にはスプリングは省略されてもよい。例示される針挿入機構は、器具のサイズ及び/又は重量を低減することができるように器具とは別個のものであるが、針挿入機構は、針が挿入された後も器具内に保持される器具の一体部分であってもよい。また、上述の、ソフトカニューレの挿入を補助する穿刺針が後に取り出される構成が、他の実施形態に関連して用いられ得ることにも留意しなければならない。
【0047】
例として、流体連通部は、針又はカニューレであるものとして上述される。実施形態において、針又はソフトカニューレは、快適性のため比較的細くてよい。他の実施形態において、流体連通部は、流体を体内に供給するための任意のカテーテル若しくは他の器具、又はそれらの組み合わせであり得る。実施形態において、流体連通部は比較的無菌であり得る。さらに、器具は従来の注入装置と併せて使用されてもよく、その場合、流体連通部は注入装置の1つ又は複数の部品、例えば、標準ルアーロック若しくは器具を注入装置と接続するように構成された他のコネクタであってもよく、又は流体連通部は完全に省略されてもよい。別の実施形態において、ポンプパッチは皮下供給に限定されない。例えば、器具は留置注入ポート、例えば、当該技術分野において公知の中心静脈アクセスポートと接続されてもよく、その場合、流体連通部は、器具をポートと結合するのに好適なアダプタであってよい。さらに別の実施形態において、流体連通部は、当該技術分野において公知のとおりの、流体薬物の経皮供給に好適なマイクロニードルアレイを含み得る。
【0048】
器具の実施形態は、一体に組み立てることのできる2つの別個の部分、又は2つの別個の部分及び針挿入機構を含むものとして上述されるが、他の実施形態において、器具は単一の部分であってもよく、又は器具は、3つ以上の別個の部分を有してもよい。
【0049】
さらに、上述の実施形態において、流体供給システムは概して器具のある部分、すなわち可動部に内蔵される。他の実施形態において、流体供給システムは、器具の他の部分、例えば基部に内蔵されてもよく、又は器具のいくつかの部分の組み合わせ、例えば基部と可動部との組み合わせのなかに内蔵され得る。例が図7及び図8に示される。例えば、図7は器具500とほぼ同様の器具700の実施形態を示す。しかしながら、器具700の流体供給システムは、基部722と可動部724との間で分割され得る。図7(a)に示される組み立てられていない位置では、基部722は電気化学アクチュエータ702を内蔵し得る一方、可動部724は流体供給源704と流体連通部706とを内蔵し得る。図7(b)に示される組み立てられた位置では、電気化学アクチュエータ702は、流体供給源704と直接的又は間接的に連通した状態となり得る。
【0050】
図8は、器具600とほぼ同様の器具800の実施形態を示す。しかしながら、器具800の流体供給システムは、基部822と可動部824との間で分割され得る。図8(a)に示される組み立てられていない位置では、基部822は電気化学アクチュエータ802と制御システム872とを内蔵し得る。流体連通部806もまた、針挿入機構を介して挿入された後に、基部822に位置決めされ得る。可動部824は流体供給源804を内蔵し得る。図8(b)に示される組み立てられた位置では、電気化学アクチュエータ802は、流体供給源804と直接的又は間接的に連通した状態となり得る。
【0051】
実施形態によっては、電気化学アクチュエータ、流体供給源、及び流体連通部を含む流体供給システムの構成要素は、基部、可動部、及び針挿入機構(存在する場合)など、器具の様々な部分に配置され得る。安全性の増加、費用の低減、又はクオリティ・オブ・ライフの向上など、選択された設計基準を達成するため、構成要素は、器具が組み立てられるまで分離されていてもよい。例えば、流体供給源及び流体連通部などの、湿潤した無菌の構成要素が、安全のために、電気化学アクチュエータ及び任意の関連電子装置などの、乾燥した無菌でない構成要素と分離され得る。かかる実施形態の例としては、器具700及び器具800が挙げられる。
【0052】
一部の構成要素を分離することで、1つ又は複数の構成要素を再使用し、その一方で1つ又は複数の他の構成要素を廃棄することが可能となり得る。かかる実施形態により、使用済みとなったり、又は損傷を受けたりした特定の部品を処分する一方、未使用で機能している他の部分を再使用することが可能となり得る。例えば、比較的高価な薬物の入った流体供給源が電気化学アクチュエータ及び/又は関連電子装置と分離されてもよく、それにより、電気化学アクチュエータ又は電子装置に欠陥がある場合に、流体供給源を再使用することが可能となる。或いは、比較的高容量で供給される薬物の入った流体供給源が電気化学アクチュエータ及び関連電子装置と分離されてもよく、それにより電気化学アクチュエータ及び電子装置を複数の流体供給源と共に再使用することが可能となる。別の例として、電子装置が流体供給源及び/又は電気化学アクチュエータと分離されてもよく、それにより、流体供給源が空になった後、及び/又は電気化学アクチュエータが完全に放電した後であっても、電子装置を再使用することが可能となる。さらに、流体連通部が1つ又は複数の他の構成要素と分離されてもよく、それにより、針の挿入に失敗したり、又は針の交換が必要となったりした場合に、他の構成要素を再使用することが可能となる。かかる実施形態の一例が器具600であり、これは関連する針挿入機構を備える。さらに、流体連通部を再度挿入することなく、器具を分解して再び組み立てることを可能とするように、一部の構成要素が分離されてもよい。かかる実施形態により、特定の活動、例えば買い物及び入浴が可能となり得る。かかる実施形態の一例が器具600である。上記の開示に基づき、様々な他の構成が可能である。例えば、器具は、流体連通部分と、電気化学アクチュエータ部分と、流体供給源部分と、電子装置部分とを備え得る。これらの部分は、組み立てることで本明細書に記載されるタイプの器具を形成し得るとともに、さらに必要に応じて分解して再び組み立てられることで、部分が取り替えられたり、廃棄されたりし得る。
【0053】
以下にさらに記載されるとおり、器具が組み立てられた後、電気化学アクチュエータが始動されてもよく、それにより電気化学アクチュエータは放電し始める。電気化学アクチュエータは放電するときに作動し、流体供給源に直接的又は間接的に作用して流体を体内に送り込む。例えば、電気化学アクチュエータは、流体供給源と直接接触するように位置決めされてもよく、従って電気化学アクチュエータは作動すると流体供給源に直接作用し、それによって流体供給源から流体が送り出される。或いは、伝達構造又は他の然るべき機構が電気化学アクチュエータと流体供給源との間に配置されてもよく、従って電気化学アクチュエータの作動は伝達構造を介して流体供給源に伝達される。実施形態において、伝達構造は、電気化学アクチュエータの受ける容積の変化又は変位を増幅してもよく、従って比較的小さい容積の変化又は変位が流体供給源に対する所望の効果を生じ得る。
【0054】
例えば、図4に示される実施形態において、電気化学アクチュエータ402は流体供給源404に直接作用し得る。図4(a)に示されるとおり、流体供給源404は、電気化学アクチュエータ402と直接接触するように位置決めされた変形可能なブラダ又はポーチであってもよい。電気化学アクチュエータ402が作動すると、図4(b)に示されるとおり流体供給源404に力又は圧力が加わるため、流体供給源404が変形し得る。図4(c)に示されるとおり、流体供給源404内の圧力が上昇し、流体連通部406を通じて流体が送り込まれ得る。
【0055】
図6に示される実施形態において、電気化学アクチュエータ602は、例えば伝達構造668を介して、流体供給源604に間接的に作用し得る。図6(c)に示されるとおり、流体供給源604はチャンバであってもよく、及び伝達構造668はチャンバと連通するピストンであってもよい。電気化学アクチュエータ602が作動すると、伝達構造668に力が加わり得る。ひいては、伝達構造668が流体供給源604に力を加え、流体連通部606を通じて流体が送り込まれ得る。
【0056】
伝達構造は、例としてピストンとして記載されるが、伝達構造は、本開示に基づき当業者によって想定される任意の他の構成を有し得る。かかる伝達構造は、電気化学アクチュエータからの仕事を流体供給源に伝達することが可能な、器具に任意の組み合わせ及び/又は配置で構成された1つ又は複数の公知の機械的又は電気的構成要素を含み得る。伝達構造を備えると、電気化学アクチュエータは流体供給源と物理的に直接接触しなくともよいため、器具は様々な異なる形状、サイズ及び寸法を有することが可能となり得る。
【0057】
例として、流体供給源は、ブラダ、リザーバ、ポーチ、チャンバ又はバレルであるものとして上述される。他の実施形態において、流体供給源は、流体又は流体形態の薬物を保持することが可能な任意の構成要素であり得る。例示される実施形態において、流体供給源は詰め替え可能でなくともよく、それにより器具の使い捨てが可能となる。他の実施形態において、流体供給源は再補充されてもよく、それにより、器具の少なくとも一部分を再使用したり、及び/又は器具によって供給される薬物若しくは流体を変えたりすることが可能となり得る。
【0058】
実施形態において、流体供給源は、電気化学アクチュエータの電気化学的ポテンシャルと相互に関連するサイズであり得る。例えば、流体供給源のサイズ及び/又は容積は、電気化学アクチュエータがほぼ実質的に放電された状態になるのとほぼ同時に、流体供給源がほぼ実質的に空になるように選択され得る。電気化学アクチュエータの送り込む能力と比べて流体供給源が大き過ぎたり、又は薬物を多く含み過ぎたりすることがなく、且つ同様に、流体供給源中の薬物量と比べて電気化学アクチュエータが大き過ぎたり、又は大き過ぎる出力を含んだりすることもないため、かかる構成によって器具のサイズ及び/又は費用を低減することが可能となり得る。他の実施形態において、電気化学アクチュエータは流体供給源に対して過大であってもよい。かかる構成は比較的高価な薬物で用いられてもよく、それにより、電気化学アクチュエータが完全に放電する前に、確実に流体供給源がほぼ実質的に空になるため、無駄になる薬物が低減し得る。
【0059】
さらに、ある実施形態において、器具は2つ以上の流体供給源を備え得る。かかる構成により、単一の器具を使用して2種以上の薬物又は流体を供給することが可能となり得る。2種以上の薬物又は流体は、個別に、同時に、交互に、プログラム又はスケジュールに従い、又は以下にさらに記載されるとおりの任意の他の方法で供給され得る。かかる実施形態において、流体供給源は、同じ若しくは異なる電気化学アクチュエータ、同じ若しくは異なる流体連通部、同じ若しくは異なる動作電子装置、又は同じ若しくは異なるハウジング部分と結合され得る。
【0060】
一例示的実施形態が図17に示され、これは、複数の流体供給源1704aと1704bとを備えるポンプ器具1700の実施形態の側断面図である。流体供給源1704a及び1704bは、それぞれ異なる電気化学アクチュエータ1702a及び1702bによって動作する。器具1700は、任意の構成で2種以上の薬物又は流体を供給するのに適し得る。例えば、器具1700は、薬物が数日間など、長期間にわたりまれな間隔で供給される実施形態において使用され得る。かかる実施形態では、一方の流体供給源1704aが薬物を含んでもよく、及び他方の流体供給源1704bが、生理食塩水などの流体を含んでもよい。生理食塩水は、薬物の投薬間に定期的に投与され、流体連通部1706に目詰まりが形成されることを防止し得る。
【0061】
別の例示的実施形態が図18に示され、これは、同じ電気化学アクチュエータ1802によって動作する複数の流体供給源1802aと1804bとを備えるポンプ器具1800の実施形態の側断面図である。器具1800は、様々な構成で2種以上の薬物又は流体を供給するのに適し得る。例えば、器具1800は、薬物又は流体が体内への供給前は隔離されている構成成分を有する実施形態において使用され得る。例えば、薬物は一方の画室に乾燥粉末形態で(例えば、凍結乾燥されて)保存されてもよく、その後、投与の少し前若しくは直前に、当該技術分野において公知の好適な流体溶媒、例えば生理食塩水によって溶液又は懸濁液中に供給用に再構成されてもよい。これは、生物製剤又はタンパク質薬物などの、保管中の薬物の安定性、すなわち貯蔵安定性を提供するために好ましくは凍結乾燥又は他の乾燥粉末形態であり得る特定の薬物について、特に有利であり得る。これらの、及び他の実施形態において、流体供給源1802は、再構成することのできる薬物又は他の非流体物の保存に適した薬物保管リザーバを含み得る。実施形態において、介在機構が様々な方法で電気化学アクチュエータ1802の変位を流体供給源1804a及び1804bの各々に対して伝達及び/又は増幅してもよく、それにより流体供給源1804b及び1804bからの様々な流体流量が可能となる。2つの流体供給源を有する器具が例示されるが、当業者は、他の実施形態において3つ以上の流体供給源が提供され得ることを理解するであろう。
【0062】
2つ以上の流体供給源を有する器具は、本開示の範囲及び趣旨のなかで多くの異なる構成を有し得る。例えば、流体供給源は種々のハウジング部分に分けられてもよく、それにより、流体供給源の1つを他の流体供給源と比べて比較的高い頻度で交換することが可能となり得る。さらに、電気化学アクチュエータが任意の他のポンプ器具に置き換えられてもよく、その場合、1つ又は複数の別個のバッテリもまた提供され得る。流体供給源はまた、器具の用途に応じて種々のサイズ、形状、及び構成を有し得る。
【0063】
電気化学アクチュエータは比較的小型であり得ることに留意しなければならない。例えば、電気化学セルは、約5立方ミリメートル〜約10立方センチメートルの範囲、より具体的には約0.1立方センチメートル〜約1立方センチメートルの範囲の容積を有し得る。小型サイズの電気化学アクチュエータにより、器具のサイズを低減することが可能となり得る。さらに、電気化学アクチュエータは比較的少ない数の部品を備え得るため、器具のサイズ及び費用が低減されるとともに、その信頼性が高まる。電気化学アクチュエータは、器具の他の構成要素に動力を供給し得る。例えば、電気化学アクチュエータは、ディスプレイ、針挿入機構、又は器具の他の構成要素に動力を供給し得る。また、電気化学アクチュエータは、従来のバッテリと類似した方法による比較的高い拡張性を有し得る。例えば、2つ以上の電気化学アクチュエータが提供されてもよく、及び実施形態において、それらの電気化学アクチュエータは再充電可能であってもよい。例として、電気化学アクチュエータは、流体供給源からの流体を送り込み、圧送し、又は吐き出すものとして記載される。しかしながら、当業者は、流体供給源から流体を供給する他の方法を本開示が包含することを理解するであろう。例えば、電気化学アクチュエータは、他の可能な構成のなかでも特に、流体供給源内に真空を作り出すなどして流体供給源から流体を引き込んでもよい。さらに、電気化学アクチュエータは、任意の公知のポンプか、又は流体供給源からの流体の流れを生じさせるのに適した他の器具に置き換えられてもよく、その場合、別個の電源もまた提供され得る。
【0064】
電気化学アクチュエータは、器具内の電気回路に配置され得る。電気化学アクチュエータは電気化学セルを含んでもよく、これは初めに充電され、それが放電するときに作動する。電気回路が開かれているとき、電気化学アクチュエータは放電することができないため、同時に電気化学アクチュエータは作動することもできない。従って、流体は流体供給源から流れ出ることができない。電気回路が閉じられると、電気化学アクチュエータは放電し始め、同時に電気化学アクチュエータが作動し得る。従って、流体は流体供給源から流れ出ることが可能となり得る。このように、電気回路が閉じられているとき、流体は流体供給源から吐き出され得るが、それ以外で吐き出されることはない。
【0065】
実施形態において、電気化学アクチュエータは、電気回路の特性に依存する速度で放電し、作動する。電気回路の特性が異なると、電気化学アクチュエータの放電率が異なり得るため、同時に電気化学アクチュエータの作動も異なり得る。従って、流体供給源から出る流体の流量が異なり得る。実施形態において、器具は、器具からの流体の流れを制御又は調整するための手段を備え得る。流れ制御手段は、電気回路に関連する特性を変化させて、それにより器具からの流体の流れを開始し、器具からの流体の流れを停止させ、及び/又は器具からの流体の流量を変化させるなどするように動作し得る。流れ制御手段の実施形態は以下に詳細に記載され、1つ又は複数の放出プロファイルに従い薬物を供給することができるように、任意の組み合わせで実行することができる。実行され得る放出プロファイルとしては、特に、線形的な流れ、非線形的な流れ、ユーザによって開始される流れ、フィードバック応答性の流れ、又はこれらの流れの組み合わせを有する放出プロファイルを挙げることができる。本開示の目的上、線形的な流れという用語は、概して、比較的一定した流量を有する流れを意味する。非線形的な流れという用語は、概して、必ずしも比較的一定した流量を有するとは限らない流れを意味し、調節される流れ、脈動する流れ、不連続な流れ、及び/又は必ずしも比較的一定の流量を要求するとは限らないプログラム又はスケジュールと相互に関連する流れが含まれる。ユーザによって開始される流れという用語は、概して、器具への入力に応答して開始される流れを意味する。フィードバック応答性の流れという用語は、概して、1つ又は複数の検知された条件に応じて調整を行う流れを意味し、以下に記載される。このように、ポンプ器具は、他のポンプ器具と比べてより多様な薬物療法を遂行するのに有効であり得る。
【0066】
図9は、ポンプ器具の実施形態に動力を供給するために用いられ得る電気回路900の実施形態を示す回路図である。図示されるとおり、電気回路900は、抵抗器980と電気的に連通するように位置決めされた電気化学アクチュエータ902を備え得る。電気化学アクチュエータ902は電気化学セルを含んでもよく、これは初めに比較的一定の電圧で充電され、放電するときに変位する。抵抗器980は、比較的一定の電気抵抗を有し得る。図示されるとおり、電気回路900が閉じられると、電気回路900に電流982が誘導され得る。電気化学アクチュエータ902は抵抗器980を通じて放電し始め得るため、同時に電気化学アクチュエータ902が作動し得る。従って、流体が流体供給源から流れ出ることが可能となり得る。
【0067】
より具体的には、電気化学アクチュエータ902の放電は、電気回路900を通じて流れる電流982、又は言い換えれば、抵抗器980の電気抵抗に比較的比例し得る。抵抗器980の電気抵抗は比較的一定であり得るため、電気化学アクチュエータ902は比較的一定の速度で放電し得る。このように、時間の経過に伴う電気化学アクチュエータ902の放電は比較的線形であってもよく、つまり、時間の経過に伴う電気化学アクチュエータ902の変位は比較的線形であり得る。
【0068】
図10は、変位曲線1000の実施形態を示すグラフであり、図9の電気回路900に位置決めされた電気化学アクチュエータ902についての時間に対する変位挙動を示す。図示されるとおり、上記の条件下で、時間の経過に伴う電気化学アクチュエータ902の変位は比較的線形である。実施形態において、電気化学アクチュエータ902は、数分間から数日間に及ぶ期間にわたって線形的に変位し得る。例えば、電気化学アクチュエータ902は、約5分間〜約5週間の範囲、より具体的には約5時間〜約5日間の範囲の期間にわたって線形的に変位し得る。その後、線形的な変位は徐々に弱まり、電気化学セルが完全な放電状態に達して電気化学アクチュエータ902が作動停止すると、非線形的となり得る。
【0069】
図11は、流体の流動曲線1100の実施形態を示すグラフであり、図9の電気回路900に関連した流体供給源についての時間に対する流体の流れ挙動を示す。図10に示されるとおり、電気化学アクチュエータ902の変位率は比較的一定であるため、器具からの流体の流量もまた、図11に示されるとおり比較的一定であり得る。このように、電気回路900を含む器具は、流体供給源が空になるか、又は電気化学アクチュエータが完全に放電した状態になるまで、比較的連続した放出プロファイルに従って流体を供給することができ、つまり、流体は比較的一定の速度で流れ得る。
【0070】
実施形態において、器具は始動時に短い起動期間を経てもよく、その間の流体の流量は、比較的一定しないことがあり得る。例えば、変位曲線1000は、電気化学アクチュエータ902の最初の放電時、電気化学アクチュエータ902が短い起動期間を経過し得ることを示している。起動期間の間、電気化学アクチュエータ902には反応生成物が蓄積されていないため、電気化学アクチュエータ902は線形的に変位することができない。かかる起動期間を補償するため、電気化学アクチュエータ902は使用前に短時間だけ放電されてもよく、それによって器具を使用するときになると、電気化学アクチュエータ902は、ほぼ直ちに比較的線形の変位を経過し得る。さらに、流体流動曲線1100は、電気化学アクチュエータ902が最初に変位するとき、流体供給源が短い起動期間を経過し得ることを示している。起動期間の間、流体供給源は加圧され得るとともに、流体が流体連通部に向かって流れ始め得る。かかる起動期間を補償するため、流体供給源が初めに加圧され得るとともに、流体連通部に隣接して逆止弁が提供されてもよく、それによって、電気化学アクチュエータが変位し始めたほぼ直後に流体が流体連通部を通じて流れ始める。例えば、図6(d)に示される器具600では流体供給源604は加圧されないため、初めは流体が器具600から比較的一定の速度で流れ出ないこともあり得るが、しかしかかる問題は、流体供給源604を加圧し、且つ流体連通部606に隣接して逆止弁を提供することによって対処され得る。
【0071】
電気化学アクチュエータの変位は、電気回路を通過する電流に比較的比例し得るため、電気化学アクチュエータは比較的容易に制御され得る。例えば、電気化学アクチュエータの変位は、電気回路に位置決めされた1つ又は複数の流れ制御手段によって変化させ得る。かかる流れ制御手段の例としては、以下にさらに記載されるとおり、1つ又は複数の電気接点、スイッチ、制御装置、回路構成部品、又はこれらの組み合わせが挙げられる。流れ制御手段は、電気回路を制御するように動作し得る。例えば、流れ制御手段は、電気回路を開いたり、又は閉じたりするように動作し得る。流れ制御手段が電気回路を開くと、電気化学アクチュエータは放電及び作動を停止し得るため、従って流体供給源から流体は吐き出されない。流れ制御手段が電気回路を閉じると、電気化学アクチュエータは放電及び作動を開始し得るため、従って流体供給源から流体が吐き出される。流れ制御手段はまた、電気回路の抵抗を変化させるなどして、電気回路に通じる電流を変化させるようにも動作し得る。流れ制御手段が電流又は抵抗を変化させると、電気化学アクチュエータは異なる速度で放電し得るため、従って電気化学アクチュエータは異なる速度で変位し、流体供給源から異なる流量で吐き出す。
【0072】
図12は、電気接点1264を備える電気回路1200の実施形態を示す回路図である。電気接点1264が互いに電気的に連通しているとき、電気接点1264は電気化学アクチュエータ1202の変位を可能とし得るが、それ以外では変位は可能でない。図示されるとおり、電気接点1264は互いに電気的に連通していない。従って、電気回路1200は切断されている。電気化学アクチュエータ1202は放電又は変位していないため、流体は流れていない。実施形態において、かかる電気接点1264は、器具が組み立てられるまで電気化学アクチュエータ1202を充電状態に維持することができ、従って器具が使用されるまでに電気化学セルが充電を失うことはなくなり得る。かかる電気接点1264はまた、器具が組み立てられるまで流体の流れも阻止し得る。
【0073】
かかる実施形態が、再び図4を参照して図示及び説明される。具体的には、電気接点464が、基部422及び可動部424に位置決めされ得る。電気接点464は、説明のため(+)及び(−)として示されるが、他の実施形態においてこの構成は逆であってもよい。器具400が図4(a)に示される組み立てられていない位置にあるとき、電気接点464は互いに接触しておらず、電気回路は切断されているため、電気化学アクチュエータ402は放電及び作動することができない。器具400が図4(b)に示される組み立てられた位置に動かされると、電気接点464が互いに接触して電気回路が閉じられ、電気回路が他の何らかの場所で切断されていないとすれば、それによって電気化学アクチュエータ402は放電及び作動を開始することが可能となり得る。続いて、電気化学アクチュエータ402が流体リザーバ404に作用し、図4(c)に示されるとおり、流体を流体連通部406から送り出し得る。器具400を組み立てることによって電気接点464が互いに直接接触するのではなくてもよく、代わりに、電気回路を閉じることができるように電気接点464が互いに電気的に連通した状態に設定されてもよいことに留意しなければならない。或いは、電気接点は完全に省略されてもよく、その場合、器具が組み立てられていないときの電気化学アクチュエータは、放電できても、又はできなくともよい。
【0074】
再び図12を参照すると、電気接点1264が、比較的一定の電圧を有する電気化学アクチュエータ1202と比較的一定の電気抵抗を有する抵抗器1280と共に電気回路1200に配置されるとき、流体は器具が組み立てられるまで供給されないこともあり、その後流体は、比較的連続的な放出プロファイルに従って供給され得る。具体的には、流体は器具が組み立てられると流れ始め得るとともに、電気化学アクチュエータが完全に放電された状態になるか、又は流体供給源が空になるまで、比較的一定の速度で流れ続け得る。或いは、以下にさらに記載されるとおり1つ又は複数の追加的な流れ制御手段を実行することにより、放出プロファイルは変化させてもよい。
【0075】
図13は、可変抵抗器1380を備える電気回路1300の実施形態を示す回路図である。可変抵抗器1380は、変更又は制御され得る電気抵抗を有する任意の電気部品であり得る。より具体的には、可変抵抗器1380を変更すると、回路1300に誘導される電流1382が変わり得るため、ひいては電気化学アクチュエータ1302の放電率が変わり得る。同様に、電気化学アクチュエータ1302の放電率が変わると、電気化学アクチュエータ1302の変位率が変わり得るため、ひいては流体供給源からの流体の流量が変わり得る。このように、可変抵抗器1380の電気抵抗を調整することにより、流体供給源からの流体の流れを制御し得る。上記の原理から、流体の流れの調整は電気抵抗の調整に比例し得る。
【0076】
図14は、スイッチ1484を備える電気回路1400の実施形態を示す回路図である。スイッチ1484は、電気回路1400を開いたり、又は閉じたりするように動作し得る。スイッチ1484が閉じられると、電気化学アクチュエータ1402は放電し得る。例えば、抵抗器1480が比較的一定の電気抵抗を有する実施形態では、電気化学アクチュエータ1402は比較的一定の速度で放電し得る。スイッチ1484が開放されると、電気化学アクチュエータ1402は放電することができなくなり得るため、電気化学アクチュエータ1402は変位することができなくなり得る。このように、スイッチ1484を調整することにより、流体供給源からの流体の流れを制御し得る。
【0077】
図15は変位曲線1500を示すグラフであり、図14の電気回路1400に関連する流体供給源についての時間に対する変位挙動を示す。スイッチ1484を断続的に開閉することで電気化学アクチュエータ1402のデューティサイクルを変化させ、それによって電気化学アクチュエータ1402の変位を変化させ得る。例えば、完全オンのサイクル中、スイッチ1484は閉じられていてもよく、電気化学アクチュエータ1402は比較的一定の速度で変位し得る。デューティサイクル中、スイッチ1484は断続的に開閉され、従って電気化学アクチュエータ1402の有効変位率は、完全オンサイクル中の変位率と比べて比較的低くなる。具体的には、有効変位率は、スイッチ1484が開放位置と閉鎖位置とに費やす時間の長さに依存し得る。変位曲線1500は、デューティサイクル中に、それぞれ、16%の時間、33%の時間、及び66%の時間はスイッチ1484が閉じられるときの電気化学アクチュエータ1402の変位を示すが、任意の構成が可能である。図示されるとおり、スイッチ1484を66%の時間にわたり閉じると、結果として、スイッチ1484を33%の時間又は16%の時間にわたり閉じたときと比べて比較的高い有効変位率、従って比較的高い流体流量が生じる。
【0078】
図16は、制御システム1672の実施形態を備える器具1600の実施形態の概略図である。制御システム1672は、電気化学アクチュエータ1602を制御するように構成され得る。具体的には、制御システム1672は、電気化学アクチュエータ1602の変位を変化させることにより、流体供給源1604から流体連通部1606を通じ、ユーザ1608へと至る流体の流量を変化させ得る。例えば、制御システム1672は、回路を開いたり、回路を閉じたり、又は回路の電流若しくは抵抗を変化させたりすることにより、電気化学アクチュエータ1602の変位を変化させ得る。従って、制御システム1672により、選択された放出プロファイルを管理したり、又は放出プロファイルを変更したりすることが可能となり得る。例えば、制御システム1672は、一定の流体流量、変化する流体流量、連続的な流体の流れ、不連続的な流体の流れ、調節される流体の流れ、脈動する流体の流れ、プログラム化された流体の流れ、スケジュール化された流体の流れ、フィードバック応答性の流体の流れ、ユーザにより制御される流体の流れ、又は生物学的又は機械的測定値に応じて速度が変化する流体の流れを管理し得る。従って、制御システム1672により、ユーザ1608に有益な形で薬物療法を安全に遂行することが可能となり得る。
【0079】
制御システム1672は、1つ又は複数の流れ制御手段、例えば、上記の電気接点、抵抗器、可変抵抗器、及びスイッチのうちの1つ若しくは複数、又は他の公知の回路構成部品又はそれらの組み合わせを含み得る。実施形態において、制御システム1672はまた、制御装置及びメモリ、例えばマイクロ制御装置又は状態機械も含み得る。メモリは、制御装置により実行可能な命令セットを含む動作プログラムを含み得る。制御装置は動作プログラムを実行し、命令セットに従い電気回路の電流又は抵抗を変化させ得る。例えば、制御装置は1つ又は複数の流れ制御手段を制御するように動作することができ、それにより回路が開いたり、回路が閉じたり、又は回路の電流若しくは抵抗が変化したりする。従って、制御装置は、器具からの流体の流れを変化させて、選択された放出プロファイルを実現するように動作し得る。例えば、放出プロファイルは、プログラム化された放出プロファイル、スケジュール化された放出プロファイル、又は、例えばフィードバックシステム1676若しくはユーザインタフェース1678から受信したもう1つの入力に応じた放出プロファイルであってもよい。実施形態において、制御システム1672は、外部電源1674によって動力が供給され得る。電源1674は、好適な電圧の別の電気化学アクチュエータであり得るが、電源1674は任意の他の構成を有してもよく、又は省略されてもよい。
【0080】
他の実施形態において、流れ制御手段は電気回路内において、経時的に特別な方法で回路を制御するように配置されてもよく、その場合、制御システム1672は制御装置を備えなくともよく、その場合、予め定義された放出プロファイルが電気回路に「ハードコード」され得る。
【0081】
実施形態において、制御システム1672は時刻に従って電気回路を制御し得る。例えば、ユーザによりスケジュールが設定されてもよい。かかる実施形態により、体のサーカディアンリズムに従って流れを制御することが可能となり得る。
【0082】
実施形態において、制御システム1672により、フィードバックシステム1676及びユーザインタフェース1678の一方又は双方から受信する入力に応じて電気回路を制御することが可能となり得る。例えば、制御システム1672は入力に応答して、回路を開いたり、回路を閉じたり、又は回路の電流若しくは抵抗を変化させたりし得る。
【0083】
フィードバックシステム1676は、器具及び/又はユーザに関連する1つ又は複数の条件を計測するか、又は他の方法で検知するように構成され得る。例えば、フィードバックシステム1676は、電気回路に通じる実電流、電気回路にわたる実電圧、電気化学アクチュエータ1602の実放電、電気化学アクチュエータ1602の実変位、流体供給源1604から出る流体の実流動、流体連通部1606を通じる流体の実流動、電気回路を通じた実電流率、電気回路にわたる実電圧率、電気化学アクチュエータ1602の実放電率、電気化学アクチュエータ1602の実変位率、流体供給源1604から出る流体の実流量、流体連通部1606を通じる流体の実流量、こうした条件の代用物、他の条件、又はこれらの組み合わせを検知し得る。例えば、フィードバックシステム1676は、当該技術分野において公知の、器具1600内に適切に位置決めされた1つ又は複数のセンサ、特に、歪みゲージ、容量センサ、可変抵抗センサ、流量センサ、又は視覚センサなどを含み得る。フィードバックシステム1676は、検知された条件を制御システム1676に提供してもよく、制御システムは、検知された条件に応じて、回路を開いたり、回路を閉じたり、又は回路の電流若しくは抵抗を変化させたりするなどして、電気化学アクチュエータ1602の放電率を変更するように動作し得る。従って、制御システム1676は所望の放出プロファイルを維持し得る。
【0084】
実施形態において、フィードバックシステム1676はユーザと通信し得るとともに、ユーザに関連した1つ又は複数の条件を検知し得る。例えば、フィードバックシステム1676は、ユーザ1608から体液を採取してもよく、それに応じて制御システム1672が放出プロファイルを調整してもよい。フィードバックシステム1676はまた、別の電気化学アクチュエータであり得る電源、例えば電源1674とも通信し得る。別の変形例では、フィードバックシステム1676はバイオセンサを備え、例えば、患者の生理流体中の1つ又は複数の分析物の濃度を評価し得る。
【0085】
上述されるとおり、制御システム1672はユーザインタフェース1608と通信し得る。ユーザインタフェース1678は、ユーザから1つ又は複数の入力を受け取り得るとともに、その入力に応じて制御システム1672が放出プロファイルを調整し得る。ユーザ入力としては、以下のうちの1つ又は複数が含まれ得る;流体の流動を開始させるための要求、流体の流動を中断するための要求、一時的に流体の流動を生じさせるため要求、及び流体の流量を変化させるための要求。例えば、器具は、1つ又は複数のユーザ応答性コントロール、例えば、スイッチ、ボタン、又はスライダを備え得る。スイッチにより、ユーザは回路を開いたり、又は閉じたりするなどして、流体の流動をオン又はオフに切り換えることが可能となり得る。ボタンにより、ユーザは回路を一時的に閉じるなどして、一時的な流体の流動を開始することが可能となり得る。スライダにより、ユーザは電気回路を通じる電流を変化させるなどして、流体の流れの流量を変化させることが可能となり得る。ユーザインタフェース1608はまたディスプレイを備えてもよく、これは、用量が送り出された回数及び/又は残りの投薬数などの、制御システム1672によって送られる情報を表示し得る。かかる情報は、例えばフィードバックシステム1676によって制御システム1672に提供され得る。
【0086】
このように、制御システム1672により、薬物を連続的に、オンデマンドで、又は調節される方法で供給することが可能となり得る。本器具は、例えば、通常は注射される化合物の持続供給、力価測定及び正確な制御が要求される化合物の供給、又はオンデマンドの患者自己調節鎮痛に使用され得る。
【0087】
器具1600は例として図示及び記載されるもので、本開示の範囲内には他の構成が含まれる。例えば、電気化学アクチュエータ1602の変位は、図示されるとおり伝達機構1668を介して流体供給源1604に伝達され得るが、しかしながら伝達機構1668は省略されてもよい。さらに、フィードバックシステム1676及び/又はユーザインタフェース1678が省略されてもよく、その場合、制御システム1676は、ユーザ1608から受信した、それぞれフィードバック又は入力に応答しないものであり得る。
【0088】
例として、流れ制御手段は、電気化学アクチュエータの放電を制御することによって器具からの流体の流れを制御するものとして上述される。かかる実施形態は電気化学アクチュエータのポテンシャルを蓄えることができ、従って電気化学アクチュエータが放電すると、結果としてそれと相互に関連する流体の流れが生じる。他の実施形態において、電気化学アクチュエータは充電時に作動してもよく、その場合、電気化学アクチュエータを充電すると、それと相互に関連する流体の流れが生じる。さらに他の実施形態において、流れ制御手段は、電気化学アクチュエータと流体供給源との間の伝達構造又は他の介在機構を制御することによって流体の流れを制御し得る。かかる実施形態において、電気化学アクチュエータは連続的に放電し得るが、それと相互に関連する変位の伝達は、伝達機構による増幅のなかで妨害又は低減され得る。当業者は、上記の開示に基づきかかる構成を実行する能力を有し得る。
【0089】
本開示を読めば、当業者は、記載される器具の実施形態が、本開示の範囲及び幅を伝える説明的な例に過ぎないことを理解するであろう。上記の実施形態の一部を組み合わせた器具の他の実施形態が、本開示の範囲内に含まれる。
【0090】
本器具の実施形態は、1つ又は複数の放出プロファイルに従った様々な薬物の供給に使用され得る。例えば、薬物は、比較的一様な流量に従うか、変化する流量に従うか、予めプログラム化された流量に従うか、調節される流量に従うか、器具により検知された条件に応じるか、ユーザ若しくは他の外部ソースからの要求若しくは他の入力に応じるか、又はこれらの組み合わせで、供給され得る。
【0091】
このように、本器具の実施形態は、半減期が短い薬物、治療ウィンドウの狭い薬物、オンデマンド型の投薬によって供給される薬物、持続供給などの他の供給様式が望ましい、通常は注射される化合物、力価測定及び正確な制御が要求される薬物、並びに調節して供給するか、又は非一様な流量により供給することで治療有効性が向上する薬物の供給に使用され得る。こうした薬物は、既に適切な既存の注射用製剤を有し得る。
【0092】
例えば、本器具は、多種多様な治療法に有用であり得る。代表的な例としては、限定はされないが、1型又は2型糖尿病向けのインスリン;不妊症向けの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)又は卵胞刺激ホルモン(FSH);自己免疫疾患向けの免疫グロブリン;パーキンソン病向けのアポモルヒネ;慢性B型肝炎、慢性C型肝炎、固形悪性腫瘍又は血液悪性腫瘍向けのインターフェロンA;癌の治療向けの抗体;先端巨大症向けのオクトレオチド;疼痛、難治性うつ病、又は神経因性疼痛向けのケタミン;術後の血液希薄化向けのヘパリン;MSの治療向けのコルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン);術後痛又は慢性痛及び突出痛用のモルヒネ、ヒドロモルホン、フェンタニル又は他のオピオイド若しくは非オピオイド;及び痙縮(例えば、MS、SCI等)向けのチザニジンの供給が挙げられる。
【0093】
特定の実施形態では、本器具は、難治性うつ病又は他の気分障害を治療するためのケタミンの投与に使用され得る。実施形態において、ケタミンは、ラセミ化合物、単一鏡像異性体(R/S)、又は代謝産物(ここで、S−ノルケタミンは活性であり得る)のいずれかを含み得る。
【0094】
別の特定の実施形態において、本明細書のなかの器具の実施形態は、C型肝炎を治療するためのインターフェロンAの投与に使用され得る。一実施形態において、週に3回、日中若しくは一晩中、数時間型の注入パッチが装用されるか、又は持続的供給システムが1日24時間、装用される。有利には、かかる器具によってボーラス注射を緩徐注入に切り替え得るため、副作用が低減し、患者はさらなる高用量を耐容することができる。他のインターフェロンA療法では、器具はまた、悪性メラノーマ、腎細胞癌、ヘアリー細胞白血病、慢性B型肝炎、尖圭コンジローム、濾胞性(非ホジキンリンパ腫、及びAlDS関連カポジ肉腫の治療においても使用され得る。
【0095】
さらに別の特定の実施形態において、本明細書に記載される器具の実施形態は、パーキンソン病(「PD」)の治療におけるアポモルヒネ又は他のドパミン作動薬の投与に使用され得る。現在、PD患者に刺激を与えて「オフ」状態から迅速に抜け出させるためには、アポモルヒネのボーラス皮下注射が用いられ得る。しかしながら、アポモルヒネは比較的半減期が短く、且つ副作用が比較的重篤なため、その使用は限られている。本明細書に記載される器具は持続供給を提供し得るとともに、アポモルヒネ及びドパミンの双方の増減に伴う副作用を劇的に低減し得る。特定の一実施形態において、本器具は、アポモルヒネ又は他のドパミン作動薬の持続供給を提供し、場合により、患者の「オフ」状態を治療するための調整可能なベースライン及び/又はボーラスボタンを有する。有利には、この治療方法は、ボーラス投薬ではない、緩徐で安定した注入の結果として、体内のドパミン作動レベルの向上、例えば、ジスキネジーイベントの減少、「オフ」状態の減少、「オフ」状態にある合計時間の減少、「オン」と「オフ」との状態間の繰り返しの減少、及びレボドパの必要性の低減;「オフ」状態が起きた場合に、そこからの迅速な回復;及びアポモルヒネの悪心/嘔吐の副作用の低減又は解消を提供し得る。
【0096】
さらに別の実施形態において、器具の実施形態は、疼痛の治療において、モルヒネ、ヒドロモルホン、フェンタニル又は他のオピオイドなどの鎮痛薬の投与に使用され得る。有利には、本器具は、術後痛の管理などのために、それほど煩雑でない、及び/又は低侵襲的な技術で快適性の向上を提供し得る。特に、本器具は患者自己調節鎮痛用に構成され得る。
【0097】
本明細書に引用される刊行物及びそれらが引用する材料は、参照によって具体的に援用される。前述の詳細な説明から、本明細書に記載される方法及び器具の修正例及び変形例が、当業者には明らかであろう。かかる修正例及び変形例は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの流体供給源と、
前記少なくとも1つの流体供給源と流体連通している流体連通部と、
前記少なくとも1つの流体供給源から前記流体連通部に流体を供給するように動作する電気化学アクチュエータと、
を含む、パッチポンプ器具。
【請求項2】
前記電気化学アクチュエータが充電された電気化学セルを含み、及び
前記電気化学セルの少なくとも一部分が、電流又は電圧の印加に応じて容積又は位置の変化を受ける、
請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項3】
前記少なくとも1つの流体供給源が変形可能なブラダを含み、及び
前記電気化学アクチュエータが前記変形可能なブラダと直接接触している、
請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項4】
前記少なくとも1つの流体供給源と前記電気化学アクチュエータとの間に位置決めされた伝達構造であって、前記電気化学アクチュエータによって発生した力学的仕事を前記少なくとも1つの流体供給源に伝達するように構成された伝達構造をさらに含む、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項5】
前記少なくとも1つの流体供給源がチャンバ又はバレルを含み、及び
前記伝達構造がピストンを含む、
請求項4に記載のパッチポンプ器具。
【請求項6】
前記器具からの流体の流れを調整するように動作する制御手段をさらに含む、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項7】
線形的な流れ、非線形的な流れ、連続した流れ、不連続な流れ、プログラム化された流れ、ユーザによって開始される流れ、及びフィードバック応答性の流れのうちの1つ又は複数を含む、前記少なくとも1つの流体供給源からの流体の放出プロファイルを実行するように動作する制御手段をさらに含む、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項8】
1つ又は複数の検知された条件に応じて前記器具からの流体の流れを調整するように動作する制御手段をさらに含む、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項9】
前記検知された条件が、前記電気回路に通じる実電流、前記電気回路にわたる実電圧、前記電気化学アクチュエータの実放電、前記電気化学アクチュエータの実変位、前記流体供給源から出る流体の実流動、前記流体連通部を通じる流体の実流動、前記電気回路を通じた実電流率、前記電気回路にわたる実電圧率、前記電気化学アクチュエータの実放電率、前記電気化学アクチュエータの実変位率、前記流体供給源から出る流体の実流量、及び前記流体連通部を通じる流体の実流量のうちの1つ又は複数を含む、請求項8に記載のパッチポンプ器具。
【請求項10】
1つ又は複数のユーザ入力に応じて前記器具からの流体の流れを調整するように動作する制御手段をさらに含む、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項11】
前記1つ又は複数のユーザ入力が、流体の流動を開始させるための要求、流体の流動を中断するための要求、一時的に流体の流動を生じさせるため要求、及び流体の流量を変化させるための要求のうちの1つ又は複数を含む、請求項10に記載のパッチポンプ器具。
【請求項12】
前記電気化学アクチュエータが電気回路に配置され、及び
前記パッチポンプ器具が、前記電気回路の開放、前記電気回路の閉鎖、前記電気回路を通じる電流の変更、及び前記電気回路の抵抗の変更のうちの1つ又は複数を実施するように動作する制御手段をさらに含む、
請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項13】
前記電気化学アクチュエータが、電気回路を通じる電流に比較的比例した変位を受け、及び
前記器具から出る流体の流量が、前記電気化学アクチュエータの変位率に比較的比例する、
請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項14】
前記電気化学アクチュエータの前記変位率を変化させるように動作することによって前記器具から出る前記流体の流量を変化させる制御手段をさらに含む、請求項13に記載のパッチポンプ器具。
【請求項15】
第2の流体供給源をさらに含む、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項16】
前記流体連通部が前記第2の流体供給源と流体連通するように動作し、且つ前記電気化学アクチュエータが、前記第2の流体供給源から前記流体連通部に流体を供給するように動作する、請求項15に記載のパッチポンプ器具。
【請求項17】
第2の電気化学アクチュエータをさらに含み、前記流体連通部が前記第2の流体供給源と流体連通するように動作し、且つ前記第2の電気化学アクチュエータが、前記第2の流体供給源から前記流体連通部に流体を供給するように動作する、請求項15に記載のパッチポンプ器具。
【請求項18】
前記少なくとも1つの流体供給源が第1の薬物を含み、且つ前記第2の流体供給源が第2の薬物を含む、請求項16又は17に記載のパッチポンプ器具。
【請求項19】
前記第1の薬物と前記第2の薬物とを同時に供給するように動作する、請求項18に記載のパッチポンプ器具。
【請求項20】
前記第1の薬物と前記第2の薬物とを逐次供給するように動作する、請求項18に記載のパッチポンプ器具。
【請求項21】
前記少なくとも1つの流体供給源が薬物を含み、且つ前記第2の流体供給源が、薬物を含まない生理食塩水を含む、請求項16又は17に記載のパッチポンプ器具。
【請求項22】
前記薬物を断続的に供給し、且つ前記薬物を含まない前記生理食塩水を、薬物が供給されていないときに1回又はそれ以上の回数、供給するように動作する、請求項21に記載のパッチポンプ器具。
【請求項23】
前記少なくとも1つの流体供給源が、少なくとも1つの薬物を含む流体を含む、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項24】
薬物を含む薬物保管リザーバをさらに備え、前記少なくとも1つの流体供給源が前記薬物保管リザーバと流体連通するように動作することにより、前記薬物が前記流体連通部に送られる際に前記流体中に再構成される、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項25】
前記薬物保管リザーバ中の前記薬物が、凍結乾燥又は他の乾燥粉末形態である、請求項24に記載のパッチポンプ器具。
【請求項26】
少なくとも1つの流体供給源と、
前記少なくとも1つの流体供給源と流体連通している流体連通部と、
前記少なくとも1つの流体供給源から前記流体連通部に流体を供給するように動作する電気化学アクチュエータと、を備える流体供給システムと、
前記流体供給システムを人体に取り外し可能に結合するのに適したハウジングと、
を含む、器具。
【請求項27】
前記電気化学アクチュエータが充電された電気化学セルを含み、
前記電気化学セルの少なくとも一部分が、印加された電流に応じて容積又は位置の変化を受ける、
請求項26に記載の器具。
【請求項28】
前記少なくとも1つの流体供給源が流体薬物製剤を含む、請求項26に記載の器具。
【請求項29】
前記流体連通部が挿入機構を介して体内に挿入され、前記挿入機構が、前記ハウジングの少なくとも一部分と取り外し可能に結合されるように構成される、請求項26に記載の器具。
【請求項30】
前記ハウジングが、前記器具を人体に取り外し可能に結合するための接着剤を含む、請求項26に記載の器具。
【請求項31】
前記ハウジングが基部と可動部とを備え、
前記基部に対して前記可動部を動かすことによって、前記ハウジングを組み立てられていない位置と組み立てられた位置との間で動かすことができる、
請求項26に記載の器具。
【請求項32】
前記ハウジングが前記組み立てられた位置にあるとき、前記ハウジングが、比較的平滑で鋭端のない外形をとる、請求項31に記載の器具。
【請求項33】
前記ハウジングが前記組み立てられた位置にあるとき、前記基部と前記可動部とが互いに解除可能に係止される、請求項31に記載の器具。
【請求項34】
前記ハウジングを前記組み立てられた位置と前記組み立てられた位置との間で動かすことにより、前記流体供給システムが作動したり、及び停止したりする、請求項31に記載の器具。
【請求項35】
前記基部が第1の電気接点を含み、
前記可動部が第2の電気接点を含み、
前記第1の電気接点と前記第2の電気接点とが、前記ハウジングが前記組み立てられた位置にあるとき互いに接触し、しかし前記ハウジングが前記組み立てられていない位置にあるときには接触しないように位置決めされる、
請求項31に記載の器具。
【請求項36】
前記ハウジングが前記組み立てられていない位置にあるとき、前記流体連通部が前記ハウジング内に後退し、且つ前記ハウジングが前記組み立てられた位置にあるとき、前記流体連通部が前記ハウジングの外側に移動するようにして前記流体連通部が前記ハウジングと結合される、請求項31に記載の器具。
【請求項37】
前記ハウジングを前記組み立てられていない位置から前記組み立てられた位置に動かすことによって、前記流体連通部が挿入される、請求項31に記載の器具。
【請求項38】
前記器具からの流体の流れを調整するように動作する制御システムをさらに含む、請求項26に記載の器具。
【請求項39】
前記制御システムと通信するフィードバックシステムをさらに含む、請求項38に記載の器具。
【請求項40】
前記制御システムと通信するユーザインタフェースをさらに含む、請求項38に記載の器具。
【請求項41】
薬物を、それを必要としている患者に投与する方法であって、
使い捨て注入ポンプを患者の皮膚に固定するステップであって、前記使い捨て注入ポンプが、(i)少なくとも1つの薬物を含む流体を保存するリザーバと、(ii)電気化学アクチュエータと、(iii)患者の皮膚を穿通するように位置決めされた、又は位置決め可能な少なくとも1つの流体連通部とを含む、ステップと、
前記電気化学アクチュエータを作動させることにより、前記リザーバから前記流体連通部を通じて前記患者の体内まで前記流体が供給されるステップと、
を含む、方法。
【請求項42】
前記薬物が、インスリン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、卵胞刺激ホルモン、免疫グロブリン、アポモルヒネ、インターフェロンA、オクトレオチド、ケタミン、ヘパリン、コルチコステロイド、オピオイド、非オピオイド鎮痛薬;チザニジン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
患者の難治性うつ病を治療する方法であって、
前記患者に、使い捨て注入ポンプを使用した持続注入によってケタミンを投与するステップ、
を含む、方法。
【請求項44】
患者のC型肝炎を治療する方法であって、
前記患者に、使い捨て注入ポンプを使用した持続注入によってインターフェロンAを投与するステップ、
を含む、方法。
【請求項45】
患者のパーキンソン病を治療する方法であって、
前記患者に、使い捨て注入ポンプを使用した持続注入によってアポモルヒネ又は他のドパミン作動薬を投与するステップ、
を含む、方法。
【請求項46】
前記使い捨て注入ポンプが、前記患者の「オフ」状態を治療するため、アポモルヒネ又は他のドパミン作動薬の調整可能なベースライン及び/又はボーラスを供給するように動作する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
患者の疼痛を治療する方法であって、
前記患者に、使い捨て注入ポンプを使用した持続注入によってフェンタニルを投与するステップ、
を含む、方法。
【請求項48】
患者に徐放性デポー製剤を皮下投与する方法であって、
前記患者に、使い捨て注入ポンプを使用した持続注入によって前記デポー製剤を投与するステップ、
を含む、方法。
【請求項49】
前記デポー製剤が、少なくとも1時間の持続期間にわたって毎時3mL未満の速度で供給される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記デポー製剤が、少なくとも1時間の持続期間にわたって毎時1mL未満の速度で供給される、請求項48に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも1つの流体供給源と、
前記少なくとも1つの流体供給源と流体連通している流体連通部と、
前記少なくとも1つの流体供給源から前記流体連通部に流体を供給するように動作する電気化学アクチュエータと、
を含む、パッチポンプ器具。
【請求項2】
前記電気化学アクチュエータが充電された電気化学セルを含み、及び
前記電気化学セルの少なくとも一部分が、電流又は電圧の印加に応じて容積又は位置の変化を受ける、
請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項3】
前記少なくとも1つの流体供給源が変形可能なブラダを含み、及び
前記電気化学アクチュエータが前記変形可能なブラダと直接接触している、
請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項4】
前記少なくとも1つの流体供給源と前記電気化学アクチュエータとの間に位置決めされた伝達構造であって、前記電気化学アクチュエータによって発生した力学的仕事を前記少なくとも1つの流体供給源に伝達するように構成された伝達構造をさらに含む、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項5】
前記少なくとも1つの流体供給源がチャンバ又はバレルを含み、及び
前記伝達構造がピストンを含む、
請求項4に記載のパッチポンプ器具。
【請求項6】
前記器具からの流体の流れを調整するように動作する制御手段をさらに含む、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項7】
線形的な流れ、非線形的な流れ、連続した流れ、不連続な流れ、プログラム化された流れ、ユーザによって開始される流れ、及びフィードバック応答性の流れのうちの1つ又は複数を含む、前記少なくとも1つの流体供給源からの流体の放出プロファイルを実行するように動作する制御手段をさらに含む、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項8】
1つ又は複数の検知された条件に応じて前記器具からの流体の流れを調整するように動作する制御手段をさらに含む、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項9】
前記検知された条件が、前記電気回路に通じる実電流、前記電気回路にわたる実電圧、前記電気化学アクチュエータの実放電、前記電気化学アクチュエータの実変位、前記流体供給源から出る流体の実流動、前記流体連通部を通じる流体の実流動、前記電気回路を通じた実電流率、前記電気回路にわたる実電圧率、前記電気化学アクチュエータの実放電率、前記電気化学アクチュエータの実変位率、前記流体供給源から出る流体の実流量、及び前記流体連通部を通じる流体の実流量のうちの1つ又は複数を含む、請求項8に記載のパッチポンプ器具。
【請求項10】
1つ又は複数のユーザ入力に応じて前記器具からの流体の流れを調整するように動作する制御手段をさらに含む、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項11】
前記1つ又は複数のユーザ入力が、流体の流動を開始させるための要求、流体の流動を中断するための要求、一時的に流体の流動を生じさせるため要求、及び流体の流量を変化させるための要求のうちの1つ又は複数を含む、請求項10に記載のパッチポンプ器具。
【請求項12】
前記電気化学アクチュエータが電気回路に配置され、及び
前記パッチポンプ器具が、前記電気回路の開放、前記電気回路の閉鎖、前記電気回路を通じる電流の変更、及び前記電気回路の抵抗の変更のうちの1つ又は複数を実施するように動作する制御手段をさらに含む、
請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項13】
前記電気化学アクチュエータが、電気回路を通じる電流に比較的比例した変位を受け、及び
前記器具から出る流体の流量が、前記電気化学アクチュエータの変位率に比較的比例する、
請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項14】
前記電気化学アクチュエータの前記変位率を変化させるように動作することによって前記器具から出る前記流体の流量を変化させる制御手段をさらに含む、請求項13に記載のパッチポンプ器具。
【請求項15】
第2の流体供給源をさらに含む、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項16】
前記流体連通部が前記第2の流体供給源と流体連通するように動作し、且つ前記電気化学アクチュエータが、前記第2の流体供給源から前記流体連通部に流体を供給するように動作する、請求項15に記載のパッチポンプ器具。
【請求項17】
第2の電気化学アクチュエータをさらに含み、前記流体連通部が前記第2の流体供給源と流体連通するように動作し、且つ前記第2の電気化学アクチュエータが、前記第2の流体供給源から前記流体連通部に流体を供給するように動作する、請求項15に記載のパッチポンプ器具。
【請求項18】
前記少なくとも1つの流体供給源が第1の薬物を含み、且つ前記第2の流体供給源が第2の薬物を含む、請求項16又は17に記載のパッチポンプ器具。
【請求項19】
前記第1の薬物と前記第2の薬物とを同時に供給するように動作する、請求項18に記載のパッチポンプ器具。
【請求項20】
前記第1の薬物と前記第2の薬物とを逐次供給するように動作する、請求項18に記載のパッチポンプ器具。
【請求項21】
前記少なくとも1つの流体供給源が薬物を含み、且つ前記第2の流体供給源が、薬物を含まない生理食塩水を含む、請求項16又は17に記載のパッチポンプ器具。
【請求項22】
前記薬物を断続的に供給し、且つ前記薬物を含まない前記生理食塩水を、薬物が供給されていないときに1回又はそれ以上の回数、供給するように動作する、請求項21に記載のパッチポンプ器具。
【請求項23】
前記少なくとも1つの流体供給源が、少なくとも1つの薬物を含む流体を含む、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項24】
薬物を含む薬物保管リザーバをさらに備え、前記少なくとも1つの流体供給源が前記薬物保管リザーバと流体連通するように動作することにより、前記薬物が前記流体連通部に送られる際に前記流体中に再構成される、請求項1に記載のパッチポンプ器具。
【請求項25】
前記薬物保管リザーバ中の前記薬物が、凍結乾燥又は他の乾燥粉末形態である、請求項24に記載のパッチポンプ器具。
【請求項26】
少なくとも1つの流体供給源と、
前記少なくとも1つの流体供給源と流体連通している流体連通部と、
前記少なくとも1つの流体供給源から前記流体連通部に流体を供給するように動作する電気化学アクチュエータと、を備える流体供給システムと、
前記流体供給システムを人体に取り外し可能に結合するのに適したハウジングと、
を含む、器具。
【請求項27】
前記電気化学アクチュエータが充電された電気化学セルを含み、
前記電気化学セルの少なくとも一部分が、印加された電流に応じて容積又は位置の変化を受ける、
請求項26に記載の器具。
【請求項28】
前記少なくとも1つの流体供給源が流体薬物製剤を含む、請求項26に記載の器具。
【請求項29】
前記流体連通部が挿入機構を介して体内に挿入され、前記挿入機構が、前記ハウジングの少なくとも一部分と取り外し可能に結合されるように構成される、請求項26に記載の器具。
【請求項30】
前記ハウジングが、前記器具を人体に取り外し可能に結合するための接着剤を含む、請求項26に記載の器具。
【請求項31】
前記ハウジングが基部と可動部とを備え、
前記基部に対して前記可動部を動かすことによって、前記ハウジングを組み立てられていない位置と組み立てられた位置との間で動かすことができる、
請求項26に記載の器具。
【請求項32】
前記ハウジングが前記組み立てられた位置にあるとき、前記ハウジングが、比較的平滑で鋭端のない外形をとる、請求項31に記載の器具。
【請求項33】
前記ハウジングが前記組み立てられた位置にあるとき、前記基部と前記可動部とが互いに解除可能に係止される、請求項31に記載の器具。
【請求項34】
前記ハウジングを前記組み立てられた位置と前記組み立てられた位置との間で動かすことにより、前記流体供給システムが作動したり、及び停止したりする、請求項31に記載の器具。
【請求項35】
前記基部が第1の電気接点を含み、
前記可動部が第2の電気接点を含み、
前記第1の電気接点と前記第2の電気接点とが、前記ハウジングが前記組み立てられた位置にあるとき互いに接触し、しかし前記ハウジングが前記組み立てられていない位置にあるときには接触しないように位置決めされる、
請求項31に記載の器具。
【請求項36】
前記ハウジングが前記組み立てられていない位置にあるとき、前記流体連通部が前記ハウジング内に後退し、且つ前記ハウジングが前記組み立てられた位置にあるとき、前記流体連通部が前記ハウジングの外側に移動するようにして前記流体連通部が前記ハウジングと結合される、請求項31に記載の器具。
【請求項37】
前記ハウジングを前記組み立てられていない位置から前記組み立てられた位置に動かすことによって、前記流体連通部が挿入される、請求項31に記載の器具。
【請求項38】
前記器具からの流体の流れを調整するように動作する制御システムをさらに含む、請求項26に記載の器具。
【請求項39】
前記制御システムと通信するフィードバックシステムをさらに含む、請求項38に記載の器具。
【請求項40】
前記制御システムと通信するユーザインタフェースをさらに含む、請求項38に記載の器具。
【請求項41】
薬物を、それを必要としている患者に投与する方法であって、
使い捨て注入ポンプを患者の皮膚に固定するステップであって、前記使い捨て注入ポンプが、(i)少なくとも1つの薬物を含む流体を保存するリザーバと、(ii)電気化学アクチュエータと、(iii)患者の皮膚を穿通するように位置決めされた、又は位置決め可能な少なくとも1つの流体連通部とを含む、ステップと、
前記電気化学アクチュエータを作動させることにより、前記リザーバから前記流体連通部を通じて前記患者の体内まで前記流体が供給されるステップと、
を含む、方法。
【請求項42】
前記薬物が、インスリン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、卵胞刺激ホルモン、免疫グロブリン、アポモルヒネ、インターフェロンA、オクトレオチド、ケタミン、ヘパリン、コルチコステロイド、オピオイド、非オピオイド鎮痛薬;チザニジン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
患者の難治性うつ病を治療する方法であって、
前記患者に、使い捨て注入ポンプを使用した持続注入によってケタミンを投与するステップ、
を含む、方法。
【請求項44】
患者のC型肝炎を治療する方法であって、
前記患者に、使い捨て注入ポンプを使用した持続注入によってインターフェロンAを投与するステップ、
を含む、方法。
【請求項45】
患者のパーキンソン病を治療する方法であって、
前記患者に、使い捨て注入ポンプを使用した持続注入によってアポモルヒネ又は他のドパミン作動薬を投与するステップ、
を含む、方法。
【請求項46】
前記使い捨て注入ポンプが、前記患者の「オフ」状態を治療するため、アポモルヒネ又は他のドパミン作動薬の調整可能なベースライン及び/又はボーラスを供給するように動作する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
患者の疼痛を治療する方法であって、
前記患者に、使い捨て注入ポンプを使用した持続注入によってフェンタニルを投与するステップ、
を含む、方法。
【請求項48】
患者に徐放性デポー製剤を皮下投与する方法であって、
前記患者に、使い捨て注入ポンプを使用した持続注入によって前記デポー製剤を投与するステップ、
を含む、方法。
【請求項49】
前記デポー製剤が、少なくとも1時間の持続期間にわたって毎時3mL未満の速度で供給される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記デポー製剤が、少なくとも1時間の持続期間にわたって毎時1mL未満の速度で供給される、請求項48に記載の方法。
【図1】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図5(d)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図6(d)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図5(d)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図6(d)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2010−534530(P2010−534530A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518435(P2010−518435)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/071368
【国際公開番号】WO2009/015389
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(510022923)エントラ ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/071368
【国際公開番号】WO2009/015389
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(510022923)エントラ ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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