説明

薬物融合体および複合体

【課題】 本発明は血清半減期の改善された薬物融合体に関する。
【解決手段】 本発明は、血清半減期が改善された薬物融合体に関する。こうした融合物および複合体はポリペプチド、免疫グロブリン(抗体)単一可変ドメインならびにGLPおよび/またはエキセンディン分子を含んでなる。本発明はさらに、こうした薬物融合体および複合体の使用、それらを含んでなる、製剤、組成物およびデバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血中半減期が改善された薬物融合体および複合体に関する。こうした融合体および複合体は、免疫グロブリン(抗体)の単一の可変ドメイン、ならびにGLPおよび/またはエキセンディン分子を含んでなる。本発明はさらに、そうした薬物融合体および複合体の使用、それらを含んでなる製剤、組成物およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
治療および/または診断の目的に有用であるかもしれない活性を保有する、多くの薬物は、投与されると急速に体内から排出されるので、有用性が限定されている。たとえば、治療上有効な活性を有する多くのポリペプチドは、腎臓を経て、血液循環から速やかに除去される。したがって、望ましい治療効果を得るためには、大量投与しなければならない。改善された薬物動態特性を有する、改善された治療および診断薬が必要である。
【0003】
このような、体内もしくは全身血液循環中の半減期が短い薬物群の一つが、グルカゴン様ペプチド1またはペプチドYYなどのインクレチンホルモン、ならびにエキセンディン、たとえばエキセンディン-4である。
【0004】
グルカゴン様ペプチド(GLP)-1は、グルコース依存性インスリン分泌促進およびグルカゴン分泌抑制作用、膵臓β細胞に対する栄養作用、ならびに消化管の分泌および運動性に対する抑制作用を有するインクレチンホルモンであるが、それらの作用が相まって血漿グルコースを低下させ、血糖の変動幅を小さくする。さらにGLP-1は、満腹感を強める能力によって、食物摂取を減らし、それによって体重増加を抑え、体重減少を引き起こすことすら可能である。以上をまとめると、上記の作用は、GLP-1に際立った特徴を与えており、特に、血糖降下作用のグルコース依存性は重症高血糖のリスクを最小限にするはずであるから、抗糖尿病薬として非常に望ましいと考えられる。しかしながら、その薬物動態/薬力学的特性は、ネイティブGLP-1が治療上有用であるとは限らないというものである。したがって、GLP-1は連続投与すれば最も効果的であるが、1回の皮下注射の効果は短時間である。GLP-1はin vivoで酵素による分解を非常に受けやすいが、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)による切断がおそらく最も関連性が高いとおもわれるのは、これが急速に起こって、インスリン分泌性でない代謝産物を生じるためである。したがって、その代謝安定性および薬物動態/薬力学的特性に影響を及ぼす要因に関する知見に基づいた、GLP-1の治療上の可能性を活用するための方策が、集中的な研究の焦点となっている。
【0005】
GLP-1の分解は遅くするが、それでも生物学的活性は維持するように、ペプチダーゼの阻害またはGLP-1の修飾を試みる、幅広い研究が行われてきた。国際公開第05/027978号は、長く持続する作用特性を有するGLP-1誘導体を記載する。国際公開第02/46227号は、GLP-1または類似体と融合したポリペプチド(たとえばアルブミン)を含んでなる、異種融合タンパク質を記載する(これらの類似体の開示は、本発明で使用することができるGLP-1類似体の例として、参照により本明細書に含めるものとする)。国際公開第05/003296号、国際公開第03/060071号、国際公開第03/059934号は、アミノ融合タンパク質を記載するが、ここでGLP-1は、ホルモンであるGLP-1の半減期を長くするためにアルブミンと融合している。
【0006】
しかしながら、こうした努力にもかかわらず、長時間持続する活性GLP-1は作製されなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第05/027978号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/46227号パンフレット
【特許文献3】国際公開第05/003296号パンフレット
【特許文献4】国際公開第03/060071号パンフレット
【特許文献5】国際公開第03/059934号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、特に糖尿病および肥満の分野において、糖尿病および肥満の治療に特に適したインスリン分泌促進作用を同じように有する、改善されたGLP-1ペプチド、またはエキセンディン-4などの他の薬剤の必要性はきわめて大きい。したがって、それらの低い毒性および治療上の利点を維持する一方で、in vivoでより長い作用持続時間をもたらすように、GLP-1、エキセンディン-4および他のインスリン分泌促進ペプチドを修飾する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、融合体もしくは複合体であって、しかも、(a)インスリン分泌促進薬もしくは分子、またはインクレチン薬もしくは分子、を含んでなる、または(a)からなる、組成物を提供するが、これはたとえば、(b)血清アルブミンと特異的に結合するDOM 7h-14 (Vk)ドメイン抗体 (dAb)、との融合体もしくは複合体として存在する、エキセンディン-4、もしくはGLP-1(たとえば、GLP-1 (7-37) A8G変異体)とすることができる(DOM 7h-14のアミノ酸配列は、図1(h):配列番号8に示す)。
【0010】
状況に応じて、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬、たとえばエキセンディン-4および/またはGLP-1を、dAb、たとえばDOM 7h-14 dAbと結合させる、アミノ酸または化学的リンカーが存在してもよい。リンカーは、たとえば、ヘリックス状リンカー、たとえば、図1(k):配列番号11に示す配列のヘリックス状リンカーとすることができるが、あるいは、図1(l):配列番号12に示すアミノ酸配列を有するgly-serリンカーであってもよい。
【0011】
ある実施形態において、本発明の融合体(または複合体)は、他の分子、たとえば他のペプチドまたはポリペプチドを含有することができる。
【0012】
インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬(たとえば、エキセンディンおよび/またはGLP-1)は、dAbのN末端またはC末端との融合体(または複合体)として存在することができる。
【0013】
ある実施形態において、本発明は、下記から選択される融合体分子を含んでなる、またはその融合体分子からなるポリペプチドを与える:
(a) 2xGLP-1 (7-37) A8G DOM7h-14 dAb融合体(DAT0114、アミノ酸配列は図1(a):配列番号1に示す)、
(b) エキセンディン4 (G4Sリンカー)3 DOM7h-14 dAb融合体(DAT0115、アミノ酸配列は図1(b):配列番号2に示す)、
(c) エキセンディン4 - DOM7h-14 dAb融合体(DAT0116、アミノ酸配列は図1(c):配列番号3に示す)、
(d) エキセンディン4、ヘリックス状リンカー、DOM7h-14 dAb融合体(DAT0117、アミノ酸配列は図1(d):配列番号4に示す)、
(e) GLP-1 (7-37) A8G (G4Sリンカー)3 DOM7h-14 dAb融合体(DAT0118、アミノ酸配列は図1(e):配列番号5に示す)、
(f) GLP-1 (7-37) A8G DOM7h-14 dAb融合体(DAT0119、アミノ酸配列は図1(f):配列番号6に示す)、
(g) GLP-1 (7-37) A8G、ヘリックス状リンカー、DOM7h-14 dAb融合体(DAT0120、アミノ酸配列は図1(g):配列番号7に示す)。
【0014】
本発明はまた、上記のアミノ酸配列を有する複合体分子、すなわち配列番号1から7に示すアミノ酸配列を有する複合体分子も与える。
【0015】
Dom 7h-14は、血清アルブミンと結合した、ヒト免疫グロブリンの単一可変ドメインすなわちdAb(Vk)であって、そのアミノ酸配列は図1(h):配列番号8に示される。Dom 7h-14 dAbのCDR領域は、図1(h):配列番号8に記載のアミノ酸配列中の下線で示される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「融合体」は、第1の部分として、血清アルブミンと結合するDom 7h-14 dAbを、ならびに第2の部分として、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬を含んでなる、融合タンパク質を指す。血清アルブミンと結合するdAb、および作用物質は、単一の連続するペプチド鎖の別々に離れた部分として存在する。第1(dAb)および第2(インクレチン薬もしくはインスリン分泌促進薬)の部分は、ペプチド結合を介して互いに直接結合することも可能であるが、適当なアミノ酸、またはペプチドもしくはポリペプチドリンカーを介して結合していてもよい。必要に応じて、追加の部分、たとえば、ペプチドもしくはポリペプチド(たとえば第3、第4)、および/またはリンカー配列が存在してもよい。第1の部分は、N末端位置、C末端位置に、または第2の部分に対して内側の位置に存在することができる。ある実施形態において、融合タンパク質は、1つもしくは複数(たとえば1から約20個まで)のdAb部分を含有する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「複合体」は、インスリン分泌促進薬もしくはインクレチン薬が共有結合または非共有結合している血清アルブミンと結合するdAbを含んでなる、組成物を表す。インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬はdAbに、共有結合で直接、または適当なリンカー部分を介して間接的に結合することができる。この薬物または作用物質は、任意の適当な位置で、たとえば、アミノ末端、カルボキシ末端、または適当なアミノ酸側鎖(たとえば、リジンのεアミノ基、またはシステインのチオール基)を介してdAbに結合することができる。あるいはまた、該薬物または作用物質はdAbに、非共有結合で、直接(たとえば、静電相互作用、疎水性相互作用)、または間接的に(たとえば、相補的結合パートナーの非共有結合によって(たとえば、ビオチンとアビジン)、この場合、パートナーの一方が薬物に共有結合しており、その相補的結合パートナーがdAbと共有結合している)結合することができる。
【0018】
本発明はさらに、本発明の複合体もしくは融合体、たとえば、DAT0114、 DAT 0115、DAT0116、DAT0117、DAT0118、DAT0119およびDAT120のうちいずれかの(実質的に)純粋なモノマーを与える。ある実施形態において、それは少なくとも純度98、99、99.5%または100%のモノマーである。
【0019】
本発明はまた、本明細書に記載の融合体をコードする核酸、たとえば、DAT0114、 DAT 0115、DAT0116、DAT0117、DAT0118、DAT0119およびDAT120をコードする核酸を与えるが、たとえばその核酸配列は図2(配列番号13-23)に示される。これらの核酸を有する宿主細胞も与えられる。
【0020】
本発明はさらに、本発明の融合体を作製する方法を与えるが、その方法は、本発明の融合体をコードする組換え核酸および/または構築物を有する宿主細胞を、前記組換え核酸の発現に適した条件下で維持し、それによって融合体が産生されることを含むものである。
【0021】
本発明はまた、本発明の融合体もしくは複合体を含んでなる組成物(たとえば医薬組成物)を与える。
【0022】
本発明はまた、本明細書に記載のような疾患もしくは障害、たとえば、高血糖、耐糖能異常、β細胞不全、糖尿病(たとえば、1型もしくは2型糖尿病または妊娠糖尿病)もしくは肥満などの代謝性疾患、または過食によって特徴付けられる疾患を有する個体を治療するための方法を提供するものであって、たとえば、プラダーウィリィ症候群において、その方法を用いて食欲を抑制することができるが、その方法は、前記の個体に、治療上有効な量の、本発明の融合体もしくは複合体を投与することを含む。
【0023】
他の代謝障害には、インスリン抵抗性、インスリン欠乏、高インスリン血症、高血糖、脂質異常症(dyslipidemia)、脂質異常症(hyperlimidemia)、高ケトン血症、高血圧、冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化、腎不全、ニューロパチー(たとえば、自律神経ニューロパチー、副交感神経ニューロパチー、および多発ニューロパチー)、網膜症、白内障、代謝異常(たとえば、インスリンおよび/またはグルコース代謝異常)、内分泌疾患、肥満、体重減少、肝臓の異常(たとえば、肝疾患、肝硬変、および肝臓移植関連疾患)、および上記疾患もしくは障害と関連した疾患があるがそれらに限定されない。
【0024】
さらに、本発明の化合物を用いて予防もしくは治療することができる、糖尿病に関連した疾患には、高血糖、肥満、糖尿病性網膜症、単ニューロパチー、多発ニューロパチー、アテローム性動脈硬化、潰瘍、心臓病、脳卒中、貧血、(たとえば、足および手の)壊疽、不能、感染症、白内障、腎機能低下、自律神経系の不調、白血球機能不全、手根管症候群、デュピュイトラン拘縮、および糖尿病性ケトアシドーシスがあるが、それらに限定されない。
【0025】
本発明はまた、血糖値の上昇に伴う疾患を治療または予防するための方法を与えるが、その方法は、本発明の複合体もしくは融合体、および/または医薬組成物の少なくとも1回分を、患者または被験体に投与することを含む。
【0026】
本発明はさらに、本発明の複合体もしくは融合体を用いて、患者のインスリン応答性を制御する方法、ならびに細胞によるグルコース取り込みを増加させる方法、および細胞のインスリン感受性を制御する方法に関する。患者において、インスリンの合成および放出を刺激する方法、インスリン取り込みに対する脂肪、筋肉または肝臓組織の感受性を高める方法、グルコース取り込みを刺激する方法、消化過程を遅くする方法、またはグルカゴン分泌を阻害する方法も与えられるが、その方法は、前記患者に、本発明の融合体もしくは複合体を投与することを含んでおり、たとえば少なくとも1回分の、本発明の薬物複合体もしくは融合体、および/または医薬組成物を投与することを含んでなる。
【0027】
本発明の融合体もしくは複合体および/または医薬組成物は、単独で投与することができるが、他の分子もしくは部分、たとえば、ポリペプチド、治療用タンパク質および/または分子(たとえば、インスリンならびに/またはインスリン感受性、体重、心臓病、高血圧、ニューロパチー、細胞代謝、および/もしくはグルコース、インスリン、もしくは他のホルモンレベルを患者において制御する他のタンパク質(抗体を含む)、ペプチド、もしくは小分子)と併用して投与してもよい。具体的な実施形態で、本発明の複合体もしくは融合体は、インスリン(またはインスリン誘導体、類似体、融合タンパク質、または分泌促進薬)と併用して投与される。
【0028】
本発明はまた、上記の、たとえば、高血糖、糖尿病(1もしくは2型、または妊娠糖尿病)または肥満などの代謝性疾患のうちいずれかのような疾患もしくは障害の治療用薬剤の製造を目的とする、本発明の複合体もしくは融合体の使用を提供する。
【0029】
本発明はまた、治療、診断または予防で用いる、本明細書に記載の融合体もしくは複合体の使用に関する。
【0030】
本発明の融合体もしくは複合体、たとえば、融合体のdAb成分は、たとえば、PEG基、血清アルブミン、トランスフェリン、トランスフェリン受容体もしくは少なくともそのトランスフェリン結合部分、抗体Fc領域を不可することによって、または抗体ドメインと複合体化することによって、より大きな流体力学的サイズとなるよう、さらに構成(フォーマット化)することにより、半減期をさらに延ばすことができる。たとえば、血清アルブミンと結合するdAbは、より大きい、抗体の抗原結合フラグメントとして、構成することができる(たとえば、Fab、Fab’、F(ab)2、F(ab’)2、IgG、scFvとして構成される)。
【0031】
本明細書を通じて記載される本発明の他の実施形態において、本発明の融合体に"dAb"を使用するかわりに、当業者は、血清アルブミンと結合するdAbのCDR、たとえばDom 7h-14のCDRを含んでなるドメインを使用することができることも想定される(たとえば、適当なタンパク質スキャフォールドもしくは骨格(たとえばaffibody、SpAスキャフォールド、LDL受容体クラスAドメイン、またはEGFドメイン)上にグラフトしたCDR)。したがって本明細書は全体として、dAbの代わりにこうしたドメインの開示を与えると解釈されるべきである。
【0032】
ある実施形態において、本発明は、インスリン分泌促進薬もしくはインクレチン薬、および二重特異性リガンドもしくは多重特異性リガンドを含んでなる本発明の融合体もしくは複合体を与えるが、このリガンドは、血清アルブミンと結合する本発明の第1のdAb、たとえばDom 7h-14、ならびに第1のdAbと同じまたは異なる結合特異性を有する第2のdAbを含有し、さらに状況に応じて、多重特異性リガンドの場合には、その他のdAbを含有することもある。第2のdAb(または他の複数のdAb)は、場合によっては、たとえば、FgFr 1c、またはCD5標的などの異なる標的に結合することができる。
【0033】
こうして、ある態様において本発明は、非経口投与、たとえば、皮下、筋肉もしくは静脈注射によるデリバリー、吸入、鼻内デリバリー、経粘膜デリバリー、経口デリバリー、患者の消化管へのデリバリー、直腸デリバリーまたは眼内デリバリーのための、本発明の融合体もしくは複合体を与える。ある態様において、本発明は、皮下注射によるデリバリー、吸入、静脈内デリバリー、鼻内デリバリー、経粘膜デリバリー、経口デリバリー、患者の消化管へのデリバリー、直腸デリバリーまたは眼内デリバリー用の薬剤の製造における、本発明の融合体もしくは複合体の使用を提供する。
【0034】
ある態様において、本発明は、皮下注射、肺送達、静脈内デリバリー、鼻内デリバリー、経粘膜デリバリー、経口デリバリー、患者の消化管へのデリバリー、直腸または眼内デリバリーによる、患者への投与の方法を提供するが、その方法は、医薬として有効な量の本発明の融合体もしくは複合体を患者に投与することを含んでなる。
【0035】
ある態様において、本発明は、本発明の融合体もしくは複合体を含んでなる、経口製剤、注射製剤、吸入製剤、ネブライザー製剤または眼用製剤を与える。製剤は、錠剤、丸剤、カプセル、液剤またはシロップとすることができる。ある態様において組成物は、経口で、たとえば、肥満治療用の体重減少ドリンクとして市販されるドリンクとして、投与することができる。ある態様において、本発明は、患者に対する直腸デリバリーのための製剤を提供するが、その製剤はたとえば座剤として提供されうる。
【0036】
GLP-1化合物の非経口投与用組成物は、たとえば、WO 03/002136(参照により本明細書に含めるものとする)に記載のように調製することができる。
【0037】
特定のペプチドの鼻内投与用組成物は、たとえば、欧州特許第272097号(Novo Nordisk A/S)、またはWO 93/18785(いずれも参照により本明細書に含めるものとする)に記載のように調製することができる。
【0038】
「被験体」または「個体」という用語は、本明細書では哺乳類などの動物を含むと定義され、この動物には、霊長類(たとえばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ,ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、または他のウシ亜科、ヒツジ、ウマ科、イヌ科、ネコ科、齧歯類もしくはネズミ科の動物種が含まれるがそれらに限定されない。
【0039】
本発明はまた、本発明の組成物(たとえば、本発明の複合体もしくは融合体)を被験体(たとえば、患者)に投与する際に用いるキットを提供するが、そのキットは、組成物(たとえば、本発明の複合体もしくは融合体)、ドラッグデリバリーデバイス、ならびに必要に応じて、使用説明書を含んでなる。組成物(たとえば、複合体もしくは融合体)は、凍結乾燥製剤などの製剤として提供されうる。ある実施形態において、ドラッグデリバリーデバイスは、注射器、吸入器、鼻腔内もしくは眼への投与デバイス(たとえば、噴霧器、点眼もしくは点鼻容器)、および無針注射器からなる一群から選択される。
【0040】
本発明の組成物(たとえば、複合体もしくは融合体)は、保存のために凍結乾燥し、使用前に適当なキャリアー中で溶液に戻すことができる。任意の適当な凍結乾燥法(たとえば、噴霧乾燥、固形物乾燥)および/または溶液に戻す方法を採用することができる。当業者には当然のことであるが、凍結乾燥して溶液に戻すと、さまざまな程度の抗体活性の損失につながる可能性があるので、使用レベルはそれを補うように調整しなければならないことがある。具体的な実施形態において、本発明は、本明細書に記載の、凍結乾燥組成物(たとえば、薬物複合体、薬物融合体)を含んでなる組成物を与える。好ましくは、再び水和した場合、凍結乾燥組成物(たとえば、薬物複合体、薬物融合体)の活性(たとえば、血清アルブミンに対する結合活性)の損失は、活性の約20%以下、または約25%以下、または約30%以下、または約35%以下、または約40%以下、または約45%以下、または約50%以下である。活性は、凍結乾燥以前の組成物の効果をもたらすのに必要とされる組成物(たとえば、薬物複合体、薬物融合体)の量である。たとえば、望ましい血清濃度を達成し,望ましい期間それを維持するために、必要とされる複合体もしくは融合体の量である。組成物(たとえば、薬物複合体、薬物融合体)の活性は、凍結乾燥前に任意の適当な方法で測定することができるが、活性の損失量を測定するために、再水和後に同じ方法で測定することができる。
【0041】
本発明はまた、本発明の融合体もしくは複合体を含んでなる徐放性製剤を提供するが、この徐放性製剤は、本発明の融合体もしくは複合体を、たとえば、ヒアルロン酸、マイクロスフェアもしくはリポソーム、ならびに他の製薬上または薬理学上許容されるキャリア、添加剤および/または希釈剤と組み合わせて含有することができる。こうした徐放性製剤は、たとえば、座剤の形をとることができる。
【0042】
ある態様において、本発明は、本発明の融合体もしくは複合体、および製薬上または薬理学上許容されるキャリア、添加剤もしくは希釈剤を含有する医薬組成物を与える。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1−1】(a) DAT0114(配列番号1)、(b) DAT0115(配列番号2)、(c) DAT0116(配列番号3)、(d) DAT0117(配列番号4)のアミノ酸配列を示す。
【図1−2】(e) DAT0118(配列番号5)、(f) DAT0119(配列番号6)、(g) DAT0120(配列番号7)、(h) Dom7h-14(配列番号8)(dAb)(CDRに下線を付す)、(i) GLP-1 7-37 A(8)G(配列番号9)、(j) exendin-4(配列番号10)のアミノ酸配列を示す。
【図1−3】(k) ヘリックス状リンカー(配列番号11)、(l) Gly-serリンカー(配列番号12)のアミノ酸配列を示す。
【図2−1】(a) DAT0114(哺乳動物構築物)(配列番号13)、(b) DAT0115(哺乳動物構築物)(配列番号14)の核酸配列を示す。
【図2−2】(c) DAT0115(大腸菌構築物に最適化)(配列番号15)、(d) DAT0116(哺乳動物構築物(配列番号16)の核酸配列を示す。
【図2−3】(e) DAT0116(大腸菌構築物に最適化)(配列番号17)、(f) DAT0117(哺乳動物構築物)(配列番号18)の核酸配列を示す。
【図2−4】(g) DAT0117(大腸菌構築物に最適化)(配列番号19)、(h) DAT0118(哺乳動物構築物)(配列番号20)の核酸配列を示す。
【図2−5】(i) DAT0119(哺乳動物構築物)(配列番号 21)、(j) DAT0120(哺乳動物構築物)(配列番号 22)の核酸配列を示す。
【図2−6】(k) Dom7h-14 (配列番号 23)の核酸配列を示す。
【図3a】(a)は、マウスの肥満モデルにおける、DAT0115の投与による用量依存的な体重減少を示す。
【図3b】(b)は、マウスの肥満モデルにおける、DAT0115の投与による毎日の摂餌量を示す。
【図4】DAT0115のDSCを示す:実線 - DAT0115トレース、点線 - 非2状態モデルにフィッティング。
【図5】リゾチームのDSCを示す:実線 - リゾチームトレース、点線 - 非2状態モデルにフィッティング(トレースは重なっているため、点線は見えない)。
【図6】DAT0115のSEC MALLSを示す。
【図7】DAT0117のSEC MALLSを示す。
【図8】DAT0120のSEC MALLSを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
発明の詳細な説明
本明細書において、本発明を、実施形態に準拠して、明瞭かつ簡潔な明細を記述することを可能にするように説明した。本発明から離れることなく、実施形態をさまざまに組み合わせたり分けたりすることができるのは、意図されたことであり、しかも当然のことである。
【0045】
特に指示しない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、(たとえば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション法および生化学分野の)当業者によって普通に理解されるのと同じ意味を持つ。分子、遺伝学および生化学的方法(一般的には、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.、およびAusubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th Ed, John Wiley & Sons, Inc.を参照されたい、これらは参照により本明細書に含めるものとする)ならびに化学的な方法に関して、標準的な技術を用いる。
【0046】
本明細書で使用される「インスリン分泌促進薬」という用語は、ホルモンであるインスリンの合成もしくは発現、またはインスリンの活性を、刺激することができる化合物、またはその合成もしくは発現、またはその活性の、刺激を引き起こすことができる化合物を意味する。インスリン分泌促進薬の既知の例としては、たとえば、グルコース、GIP、GLP、エキセンディン(エキセンディン-4およびエキセンディン-3)、PYYおよびOXMがあるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用される「インクレチン」という用語は、グルコースレベルが正常である場合、または特にグルコースレベルが上昇している場合に、放出されるインスリン量の増加を引き起こす、消化管ホルモンの一種を意味する。例として、GLP-1、GIP、OXM、PYY、VIPおよびPP(膵臓ポリペプチド)が挙げられる。
【0048】
ポリペプチドに関して本明細書で使用される「類似体」という用語は、ペプチドの1つもしくは複数のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されている、および/または、1つもしくは複数のアミノ酸残基がペプチドから欠失している、および/または、1つもしくは複数のアミノ酸残基がペプチドに付加されている、修飾されたペプチドを意味する。このようなアミノ酸残基の付加または欠失は、ペプチドのN末端で,および/またはペプチドのC末端で起こる可能性があり、あるいはペプチドの内部に生じることもある。GLP-1の類似体を表すために、簡単なシステムが用いられる:たとえば、GLP-1 A8G (7-37アミノ酸)は、天然に存在する8位のアラニンがグリシン残基で置換されたGLP-1類似体を示す。ペプチド類似体およびその誘導体の構造は、IUPAC-IUB命名法にしたがって使用される、アミノ酸の標準的な1文字略号を用いて記される。
【0049】
本明細書で使用される「断片」は、ペプチドに関して使用される場合、天然に存在する完全なポリペプチドのアミノ酸配列と、一部は同じであるが、全部同じというわけではない、アミノ酸配列を有するポリペプチドである。断片は、独立していてもよいが、より大きなポリペプチドの内部に含まれていてもよく、この断片は、1つの大きなポリペプチドの中の1つの連続した領域として、大きなポリペプチドの一部もしくは区域をなしている。例として、天然に存在するGLP-1の断片は、天然に存在するアミノ酸1-36のうち、アミノ酸7-36を含む。その上、ポリペプチドの断片は、天然に存在する部分配列のバリアントであってもよい。たとえば、天然に存在するGLP-1のアミノ酸7-36を有するGLP-1の断片は、その部分配列内にアミノ酸置換を有するバリアントであってもよい。
【0050】
本発明の適当なインスリン分泌促進薬の例としては、GLP-1、GLP-1誘導体、GLP-1類似体、またはGLP-1類似体の誘導体が挙げられる。それに加えて、エキセンディン-4、エキセンディン-4類似体およびエキセンディン-4誘導体もしくは断片、ならびにエキセンディン-3、エキセンディン-3誘導体およびエキセンディン-3類似体がある。
【0051】
本明細書で使用される「GLP-1」という用語は、GLP-1 (7-37)、GLP-1 (7-36)、GLP-1 (7-35)、GLP-1 (7-38)、GLP-1 (7-39)、GLP-1 (7-40)、GLP-1 (7-41)、GLP-1類似体、GLP-1ペプチド、GLP-1誘導体もしくは変異体もしくは断片、またはGLP-1類似体の誘導体を意味する。こうしたペプチド、変異体、類似体および誘導体は、インスリン分泌促進薬である。
【0052】
たとえば、GLP-1は、図1(i):配列番号9に示すアミノ酸配列を有するGLP-1 (7-37) A8G変異体とすることができる。
【0053】
他のGLP-1類似体が、国際特許出願第90/11296号(The General Hospital Corporation)に記載されているが、これは、GLP-1 (7-36)およびその機能的誘導体を含有し、かつ、GLP-1 (1-36)もしくはGLP-1 (1-37)のインスリン分泌促進活性を上回るインスリン分泌促進活性を有するペプチド断片、ならびにそれらをインスリン分泌促進薬として使用することに関する(特に、本発明で用いる薬物の例として、参照により本明細書に含めるものとする)。
【0054】
国際特許出願第91/11457号(Buckleyら)は、本発明のGLP-1薬としても有用でありうる、活性GLP-1ペプチド7-34、7-35、7-36、および7-37の類似体を記載する(特に、本発明で用いる薬物の例として、参照により本明細書に含めるものとする)。
【0055】
本明細書で使用される「エキセンディン-4ペプチド」という用語は、エキセンディン-4(1-39)、エキセンディン-4類似体、エキセンディン-4ペプチドの断片、エキセンディン-4誘導体、もしくはエキセンディン-4類似体の誘導体を意味する。このようなペプチド、断片および誘導体は、インスリン分泌促進薬である。エキセンディン-4(1-39)のアミノ酸配列は、図1(j):配列番号10に示される。
【0056】
本発明に有用な他のエキセンディン類似体が、PCT特許公報WO 99/25728 (Beeley ら)、WO 99/25727 (Beeley ら)、WO 98/05351 (Youngら)、WO 99/40788 (Youngら)、WO 99/07404 (Beeleyら)、およびWO 99/43708 (Knudsenら)に記載されている(特に、本発明で用いる薬物の例として、参照によりすべて本明細書に含めるものとする)。
【0057】
本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、ペプチド結合で互いに連結された約2から約50個までのアミノ酸を表す。
【0058】
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合で互いに連結された少なくとも約50個のアミノ酸を表す。ポリペプチドは一般に三次構造を有しており、折り畳まれて機能的ドメインとなっている。
【0059】
本明細書で使用される「ディスプレイシステム」は、ポリペプチドもしくはペプチドの集団が、所望の特性、たとえば物理的、化学的もしくは機能的特性に基づく選択のためにアクセスできるシステムを表す。ディスプレイシステムは、ポリペプチドもしくはペプチドの適当なレパートリーであるといえる(たとえば、溶液中、適当な担体上に固定化)。ディスプレイシステムは、細胞の発現系を使用するシステム(たとえば、形質転換細胞、感染細胞、トランスフェクト細胞もしくは形質導入細胞などにおける核酸ライブラリーの発現、ならびにコードされたポリペプチドの細胞表面上でのディスプレイ)、または無細胞発現系を使用するシステム(たとえば、エマルションコンパートメント化およびディスプレイ)とすることもできる。典型的なディスプレイシステムは、核酸のコード機能と、核酸によってコードされるポリペプチドもしくはペプチドの物理的、化学的および/または機能的特性とを関連づけるものである。こうしたディスプレイシステムを用いると、望ましい物理的、化学的および/または機能的特性を有するポリペプチドもしくはペプチドを選択することが可能であり、選択されたポリペプチドもしくはペプチドをコードする核酸は、容易に単離または回収することができる。核酸のコード機能と、核酸によってコードされるポリペプチドもしくはペプチドの物理的、化学的および/または機能的特性とを関連づけるいくつものディスプレイシステムが、当技術分野で知られており、たとえば、バクテリオファージディスプレイ(ファージディスプレイ、たとえばファージミドディスプレイ)、リボソームディスプレイ、エマルションコンパートメント化およびディスプレイ、酵母ディスプレイ、ピューロマイシンディスプレイ、細菌ディスプレイ、プラスミド上でのディスプレイ、共有結合ディスプレイなどがある(たとえば、EP 0436597 (Dyax)、米国特許第6,172,197号 (McCaffertyら、)、米国特許第6,489,103号 (Griffithsら)を参照されたい)。
【0060】
本明細書で使用される「機能的」とは、生物学的活性、たとえば特異的な結合活性を有するポリペプチドもしくはペプチドを表す。たとえば、「機能的なポリペプチド」という用語には、抗体またはその抗原結合フラグメントが含まれており、これはその抗原結合部位を介して標的抗原に結合する。
【0061】
本明細書で使用される「標的リガンド」は、ポリペプチドもしくはペプチドが特異的もしくは選択的に結合するリガンドを表す。たとえば、ポリペプチドが抗体またはその抗原結合フラグメントであるならば、その標的リガンドは、任意の望ましい抗原もしくはエピトープとすることができる。標的抗原との結合は、ポリペプチドもしくはペプチドが機能的であることによるものである。
【0062】
本明細書で使用される抗体は、自然に抗体を産生する任意の種に由来するか、組換えDNA技術によって作製されたかを問わず;血清、B細胞、ハイブリドーマ、トランスフェクトーマ(transfectoma)、酵母または細菌のいずれから単離されたかにかかわらず、IgG、IgM、IgA、IgDもしくはIgE、またはフラグメント(たとえば、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合したFv、scFv、閉構造多重特異性抗体、ジスルフィド結合したscFv、ダイアボディ)を指す。
【0063】
本明細書で使用される「抗体フォーマット」は、抗原に対する結合特異性をその構造にもたらす、1つもしくは複数の抗体可変ドメインが組み込まれた、任意の適当なポリペプチド構造を表す。種々の適当な抗体フォーマットが当技術分野で知られているが、それはたとえば、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または軽鎖のホモ二量体およびヘテロ二量体、前記のいずれかの抗原結合フラグメント(たとえば、Fvフラグメント(たとえば一本鎖Fv (scFv)、ジスルフィド結合Fv)、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2 フラグメント)、単一の抗体可変ドメイン(たとえば、dAb, VH, VHH, VL)、ならびに前記のいずれかの修飾された形(たとえば、ポリエチレングリコールもしくは他の適当なポリマー、またはヒト化VHHの共有結合による修飾)などである。
【0064】
「免疫グロブリンの単一可変ドメイン」という表現は、他のV領域もしくはドメインとは無関係に独立して、抗体もしくはエピトープに特異的に結合する抗体可変ドメイン(VH、VHH、VL)を指す。免疫グロブリンの単一可変ドメインは、他の可変領域もしくは可変ドメインを有するフォーマット(たとえば、ホモもしくはヘテロ多量体)において存在しうるが、この場合、他の領域もしくはドメインは、免疫グロブリン単一可変ドメインによる抗原結合には必要でない(すなわち、免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の可変ドメインと無関係に抗原と結合する)。「ドメイン抗体」または「dAb」は、本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じものである。「単一の免疫グロブリン可変ドメイン」は、本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。「単一の抗体可変ドメイン」は、本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。免疫グロブリン単一可変ドメインは、ある実施形態ではヒト抗体可変ドメインであるが、齧歯類(たとえば、WO 00/29004に記載、その内容は参考としてその全体を本明細書に含めるものとする)、テンジクザメ、およびラクダ科動物のVHH dAbなどの他種由来の単一抗体可変ドメインもこれに含まれる。ラクダ科動物VHHは、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、およびグアナコなどの種に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドであって、これらの種は、もともと軽鎖を欠いた重鎖抗体を産生する。VHHはヒト化することができる。
【0065】
「ドメイン」は、タンパク質の他の部分とは独立した三次構造を有する、折り畳まれたタンパク質構造である。一般に、ドメインは、タンパク質の個別の機能的特性に関与しており、多くの場合、タンパク質の残りの部分および/またはそのドメインの機能を失うことなしに、他のタンパク質に付加したり、取り除いたり、移したりすることができる。「単一の抗体可変ドメイン」は、抗体可変ドメインを特徴付ける配列を含有する、折り畳まれたポリペプチドドメインである。したがって、これには、完全な抗体可変ドメイン、および改変された可変ドメイン、たとえば、1つもしくは複数のループが抗体可変ドメインに特徴的ではない配列で置き換えられた抗体可変ドメイン、あるいはトランケートされた、またはNもしくはC末端伸長部を有する抗体可変ドメイン、ならびに少なくとも全長ドメインの結合活性および特異性を保有する、折り畳まれた可変ドメインフラグメントがある。
【0066】
「ライブラリー」という用語は、異種ポリペプチドもしくは核酸の混合物を表す。ライブラリーはメンバーから構成されるが、そのメンバーはそれぞれ、単一のポリペプチドもしくは核酸配列を有する。この点で、「ライブラリー」は、「レパートリー」と同義である。ライブラリーメンバー間の配列の相違が、ライブラリーに存在する多様性の原因である。ライブラリーは、ポリペプチドもしくは核酸の単純な混合物の形をとることもあるが、核酸のライブラリーで形質転換された、たとえば細菌、ウイルス、動物もしくは植物細胞などの生物または細胞の形をとることもある。ある実施形態において、個々の生物もしくは細胞は、ほんの1つまたは限られた数のライブラリーメンバーを含有する。ある実施形態において、核酸は、その核酸によってコードされるポリペプチドの発現を可能にするために、発現ベクターに組み込まれている。したがって、ある態様において、ライブラリーは、宿主生物の集団の形をとっていてもよく、それぞれの生物は、核酸型のライブラリーの単一メンバーを含有する発現ベクターのコピーを、1つもしくは複数個、含有しており、それを発現させてそれに対応するポリペプチドメンバーを生成することができる。このように、宿主生物の集団は、多様なポリペプチドからなる大規模なレパートリーをコードする可能性を有している。
【0067】
本明細書で使用される「用量」という用語は、一度にまとめて(1回量)、または一定の時間間隔で2回ないし3回以上の投与で、被験体に投与される融合体もしくは複合体の量を表す。たとえば、用量は、1日(24時間)(1日量)、2日、1週間、2週間、3週間、または1ヶ月以上の間に(たとえば、1回投与で、または2回ないし3回以上の投与で)被験体に投与される融合体もしくは複合体の量を表すといえる。投与間隔は、任意の望ましい時間とすることができる。
【0068】
「半減期」という表現は、融合体もしくは複合体の血清濃度もしくは血漿濃度がin vivoで、たとえば、自然のメカニズムによる分解および/またはクリアランスまたはゼクエストレーションによって、50%だけ減少するのにかかる時間を指す。本発明の融合体もしくは複合体はin vivoで安定化されており、その半減期は、分解および/またはクリアランスまたはゼクエストレーションに抵抗する血清アルブミン分子、たとえばヒト血清アルブミン(HSA)との結合によって長くなる。こうした血清アルブミン分子は、それ自体in vivoで長い半減期を有する、天然に存在するタンパク質である。分子の半減期は、その機能的活性がin vivoで、半減期を増加させる分子に特異的でない類似の分子よりも長期間持続するならば、増加している。たとえば、ヒト血清アルブミン(HSA)に特異的なdAb、およびインクレチン薬またはインスリン分泌促進薬、たとえばGLP-1もしくはエキセンディンを含有する本発明の融合体もしくは複合体は、HSAに対する特異性がなくHSAとは結合せずに別の分子と結合する同じリガンドと、比較される。たとえば、それは細胞上の第3の標的に結合することができる。典型的には、半減期は、10%、20%、30%、40%、50% またはそれ以上増加する。2x、3x、4x、5x、10x、20x、30x、40x、50xまたはそれ以上の範囲内で半減期の増加がありうる。その代わりに、またはそれに加えて、最大で30x、40x、50x、60x、70x、80x、90x、100x、150xの範囲内で半減期の増加がありうる。
【0069】
本明細書で使用される「流体力学的サイズ」は、水溶液中での分子の拡散に基づいた、分子(たとえば、タンパク質分子、リガンド)の見かけの大きさを表す。溶液中での分子の拡散または運動を分析処理して、タンパク質の見かけの大きさを導くことができるが、この大きさは、タンパク質粒子の「ストークス半径」または「流体力学的半径」によって与えられる。タンパク質の「流体力学的半径」は、質量と形(立体構造)の両方に依存するので、同じ分子量を有する2つのタンパク質が、タンパク質の全体的な立体構造に基づいて,異なる流体力学的サイズを有することもある。
【0070】
2つの配列間の「相同性」または「同一性」または「類似性」(これらの用語は,本明細書ではいずれも同じ意味で用いられる)の計算は、以下のように行われる。配列は、最適な比較ができるようにアラインされる(たとえば、最適なアラインメントのために、第1および第2のアミノ酸もしくは核酸配列の一方または両方にギャップを導入し、非相同配列は、比較の目的で無視することができる)。ある実施形態において、比較のためにアラインされる参照配列の長さは、その参照配列の長さの少なくとも30%、もしくは少なくとも40%、もしくは少なくとも50%、もしくは少なくとも60%、もしくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に、対応するアミノ酸位置もしくはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドによって占められているならば、その分子は、その位置では同一である(本明細書で使用されるアミノ酸もしくは核酸「相同性」は、アミノ酸もしくは核酸「同一性」と同等である)。2つの配列間のパーセント同一性は、配列が共有する同一位置数の関数であり、ギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮に入れるが、それらは2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要がある。本明細書で定義される、アミノ酸およびヌクレオチド配列アラインメントおよび相同性、類似性もしくは同一性は、BLAST 2配列のアルゴリズムによって、デフォルトパラメーターを用いて計算し、決定することができる(Tatusova, T. A.ら、FEMS Microbiol Lett, 174:187-188 (1999))。
【0071】
核酸、宿主細胞:
本発明は、本明細書に記載された本発明の融合体(たとえば配列番号13-23によってコードされる融合体)をコードする、単離された核酸、および/または組換え核酸に関する。
【0072】
本明細書において「単離された」と称される核酸は、もとの環境中の(たとえば、細胞内、またはライブラリーなどの核酸混合物中の)他の材料(たとえば、ゲノムDNA、cDNAおよび/またはRNAなどの他の核酸)から分離された核酸である。単離された核酸は、ベクターの一部として単離されることもある(たとえば、プラスミド)。
【0073】
本明細書において「組換え」と称される核酸は、組換えDNA法(これには、たとえば制限酵素、相同組換え、ウイルスなどを用いた、ベクターもしくは染色体へのクローニングといった、人為的組換えによる方法が含まれる)によって作製された核酸、ならびに、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて調製された核酸である。
【0074】
本発明はまた、本明細書に記載の本発明の融合体をコードする核酸を含有する、(1つもしくは複数の)組換え核酸または発現構築物を含有する組換え宿主細胞(たとえば、哺乳動物または微生物)に関する。本明細書に記載の本発明の融合体を調製する方法も与えられるが、その方法は、本発明の組換え宿主細胞(たとえば、哺乳動物または微生物)を融合ポリペプチドの発現に適した条件下で維持することを含む。その方法はさらに、必要に応じて、融合体を単離または回収するステップを含んでいてもよい。
【0075】
たとえば、本発明の融合ポリペプチドをコードする核酸分子(すなわち1つもしくは複数の核酸分子)、またはこの核酸分子を含有する発現構築物(すなわち1つもしくは複数の構築物)を、選択された宿主細胞に適した任意の方法(たとえば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、感染)を用いて、その核酸分子(1つもしくは複数)が、1つもしくは複数の発現制御エレメント(たとえば、ベクター内のエレメント、細胞内プロセスによって作製される構築物中のエレメント、宿主細胞ゲノムに組み込まれたエレメント)に機能的に連結されるように、適切な宿主細胞に導入し、組換え宿主細胞を作製することができる。その結果得られた組換え宿主細胞を、発現に適した条件下で(たとえば、誘導因子存在下、適当な動物において、適切な塩、増殖因子、抗生物質、追加栄養などを添加した適当な培地中で)維持することができ、それによって、コードされたペプチドもしくはポリペプチドが産生される。必要に応じて、コードされたペプチドもしくはポリペプチドを(たとえば、動物、宿主細胞、培地、乳汁から)単離または回収することができる。このプロセスには、トランスジェニック動物の宿主細胞における発現が含まれる(たとえば、WO 92/03918、GenPharm Internationalを参照されたい)。
【0076】
本明細書に記載の本発明の融合ポリペプチドは、適当なin vitro発現系で、たとえば化学合成によって、または何か他の適当な方法によって、作製することもできる。
【0077】
本明細書に記載され、実証されるように、本発明の融合体もしくは複合体は概して血清アルブミンと、高い親和性によって結合する。
【0078】
たとえば、本発明の融合体もしくは複合体は、約5μMから約100 pMまでの親和性、たとえば約1μMから約100 pMまで、たとえば400-800 nM、たとえば約600 nMの親和性(KD; KD=Koff (kd)/Kon (ka) [表面プラズモン共鳴により測定])で、ヒト血清アルブミンと結合することができる。
【0079】
本発明の融合体もしくは複合体は、大腸菌(E. coli)またはピキア(Pichia)属酵母(たとえばP. pastoris)で、発現させることができる。ある実施形態において、融合体は、大腸菌またはピキア属酵母(たとえばP. pastoris);または哺乳動物細胞培養(たとえばCHOまたはHEK 293細胞)で発現させた場合、すくなくとも約0.5 mg/lの量が分泌される。大腸菌またはピキア属酵母または哺乳動物細胞で発現させたとき、本明細書に記載の融合体もしくは複合体は分泌型であり得るが、任意の適当な方法、たとえば化学合成法、または大腸菌またはピキア属酵母を使用しない生物学的生成法を用いて、作製することもできる。
【0080】
ある実施形態において、本発明の融合体および複合体は、WO 2006 /059106(たとえば、公開されたWO 2006 /059106の104-105ページ)に記載のような、または本明細書の実施例に記載のような動物モデルにおいて、有効量を投与すれば効果がある。一般に、有効量は、約0.0001 mg/kgから約10 mg/kgまで(たとえば約0.001 mg/kgから約10 mg/kgまで、たとえば約0.001 mg/kgから約1 mg/kgまで、たとえば約0.01 mg/kgから約1 mg/kgまで、たとえば約0.01 mg/kgから約0.1 mg/kgまで)である。疾病のモデルは、ヒトでの治療効果を予測するものとして、当業者に認められている。
【0081】
一般に、本発明の融合体および複合体は、精製された状態で、薬理学的もしくは生理学的に適当なキャリアとともに使用されることになる。典型的には、こうしたキャリアには、水溶液もしくはアルコール/水溶液、乳濁液もしくは懸濁液、生理食塩水および/または緩衝液を含む任意のものを挙げることができる。非経口投与用溶媒には、塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖加リンゲル液、ブドウ糖および塩化ナトリウムを加えた乳酸リンゲル液が挙げられる。懸濁液中でポリペプチド複合体を維持するために必要ならば、適当な生理学的に許容されるアジュバントを、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアルギン酸塩などの増粘剤から選択することができる。
【0082】
静脈注射用溶媒は、ブドウ糖加リンゲル液をベースとした溶媒のように、液体および栄養補給物質および電解質補充物質を含有する。また、防腐剤および他の添加物、たとえば抗生物質、酸化防止剤、キレート剤および不活性ガスを含んでいてもよい(Mack (1982) Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版)。持続放出製剤などの、さまざまな適切な製剤を使用することができる。
【0083】
本発明の医薬組成物の投与経路は、当業者に広く知られている任意の経路とすることができる。治療のために、本発明の薬物融合体もしくは複合体を、標準的な技術にしたがって、任意の患者に投与することができる。
【0084】
投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、経皮、肺経路などの任意の適当な方法で、または、適切ならば、カテーテルを用いた直接注入によっても可能である。投与量および投与回数は、患者の年齢、性別および状態、他の薬物の併用投与、禁忌、ならびに臨床医によって考慮される他のパラメーターによって決まる。投与は、処方により、局所でも全身でも可能である。
【0085】
ある実施形態において、本発明は、肺に送達するための肺製剤であって、(a)本発明の複合体および融合体、ならびに (b)製薬上許容されるバッファーを含んでなる前記肺製剤を与えるが、この場合、組成物は液滴を含んでなり、組成物中に存在するの液滴の約40%以上、たとえば50%以上は、約6μm未満、たとえば、約1から約6μmまで、たとえば約5μm未満、たとえば約1から5μmまでの範囲の大きさを有する。こうした組成物は、たとえば、直接的な局所的肺送達によって被験体に投与するのに特に適している。こうした組成物は、たとえば、吸入によって、たとえば噴霧器を使用することによって、肺に直接、投与することができる。肺送達用のこうした組成物は、生理学的に許容されるバッファーを含有することができるが、そのpH範囲は、約4から約8まで、たとえば約7から約7.5まであり、その粘度は、約5%から約10% PEG 1000を1.2%(w/v)ショ糖含有50mMリン酸バッファーに入れた溶液の粘度とほぼ等しい。
【0086】
本発明の融合体もしくは複合体は、保存のために凍結乾燥し、使用前に適当なキャリア中で溶液に戻すことができる。この方法は、従来の免疫グロブリンで有効であることが判明しており、当技術分野で知られている凍結乾燥および再溶解法を用いることができる。当業者には当然のことながら、凍結乾燥および再溶解は、さまざまな程度の抗体活性の損失をもたらす可能性がある(たとえば、従来の免疫グロブリンについては、IgM抗体はIgG抗体より多くの活性を損失する傾向がある)ので、使用レベルは、補填のために上方に調整する必要があり得る。
【0087】
予防に使用するために、たとえば、前糖尿病のある個体、またはインスリン抵抗性を有する個体に投与する場合、本発明の融合体もしくは複合体を含有する組成物は、疾患の発症を予防、抑制し、または遅らせる(たとえば、寛解もしくは静穏期を持続させるた、または急性期を予防する)ために、やはり同様の、もしくはやや少ない用量で投与することができる。熟練した臨床医は、疾患を治療、抑制または予防できるように、適当な投与間隔を決定することができる。本発明の融合体もしくは複合体が疾病の治療,抑制または予防のために投与される場合、1日4回まで、週2回、週1回、2週間に1回、月1回または2ヶ月に1回、たとえば、約0.0001 mg/kgから約 10 mg/kgまで(たとえば約0.001 mg/kgから約10 mg/kgまで、たとえば約0.001 mg/kgから約1 mg/kgまで、たとえば約0.01 mg/kgから約1 mg/kgまで、たとえば約0.01 mg/kgから約0.1 mg/kgまで)の用量で投与することができる。
【0088】
本明細書に記載の組成物を用いて行われる治療は、1つもしくは複数の症状が、治療前にあった症状と比べて弱まる、またはその組成物で治療されない個体(ヒトもしくはモデル動物)の症状、もしくは他の適当な対照と比べて(たとえば、少なくとも10%だけ、または臨床評価スケールで少なくとも1ポイントだけ)弱まるならば、「有効」とされる。症状は、目的とする疾患もしくは障害の厳密な特徴に応じて、明白にさまざまに変化するが、当業者である臨床医もしくは検査助手はそれを評価することができる。
【0089】
同様に、本明細書に記載の組成物を用いて行われる予防は、その組成物で処置されない同様の個体(ヒトもしくはモデル動物)の症状と比較して、1つもしくは複数の症状の発症または重症度を、遅らせる、下げる、または消失させるならば、「有効」である。
【0090】
本発明の融合体もしくは複合体を、単独で投与される組成物として使用することができるが、他の治療薬もしくは活性物質、たとえば他のポリペプチドもしくはペプチド、または小分子、と併用して投与してもよい。これらの他の薬剤としては、たとえば、メトフォルミン、インスリン、グリタゾン(たとえばロシグリタゾン)、免疫抑制薬、免疫賦活薬などのさまざまな薬物を挙げることができる。
【0091】
本発明の融合体もしくは複合体は、1つもしくは複数の追加の治療薬もしくは活性物質とともに、投与および/または製剤することができる。本発明の融合体もしくは複合体が追加の治療薬とともに投与される場合、その融合体もしくは複合体は、追加薬剤の投与の前、それと同時、またはその後に、投与することができる。総じて本発明の融合体もしくは複合体は、治療効果の重複をもたらすように投与される。
【0092】
半減期
インスリン分泌促進薬、またはインクレチン薬、たとえばGLP-1もしくはエキセンディンリガンドの半減期を長くすることは、in vivoでの適用に役立つ。本発明はこの課題を、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬、たとえばGLPおよびエキセンディンのin vivoでの半減期の増加をもたらし、そしてその結果として、これらの分子の機能的活性の、体内での持続時間の延長をもたらすことによって解決する。
【0093】
本明細書に記載のように、本発明の組成物(すなわち、本明細書に記載の融合体もしくは複合体を含んでなる組成物)は、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬単独と比べて、著しく長くなったin vivo血清もしくは血漿半減期、および/または増加したAUC,および/または増加した平均滞留時間(MRT)を有しうる。加えて、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬の活性は、本発明の組成物(たとえば、複合体もしくは融合体)において、概して、実質的に変化していない。しかしながら、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬単独と比べて、本発明の組成物の活性の、ある程度の変化は許容範囲であり、本発明の複合体もしくは融合体の薬物動態特性の改善によって総じて埋め合わせられるものである。たとえば、本発明の薬物複合体もしくは融合体は、薬物単独より低い親和性により薬物標的と結合するかもしれないが、薬物組成物の薬物動態特性の改善(たとえば、in vivo血清半減期の延長、AUCの増大)によって、薬物単独と比べてほぼ等しい、または優れた有効性を有する可能性がある。それに加えて、本発明の複合体もしくは融合体の半減期の増大によって、そうした複合体もしくは融合体は、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬単独よりも少ない回数で投与可能であり(たとえば、月1回または週1回患者に投与することができる)、また、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬の単独投与より、いっそう恒常的なインスリン分泌促進薬またはインクレチン薬レベルを実現し、それによって望ましい治療もしくは予防効果を達成する。
【0094】
薬物動態解析法およびリガンド半減期を測定する方法は、当業者によく知られている。詳細は、Kenneth, Aら: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists、ならびにPetersら、Pharmacokinetc analysis: A Practical Approach (1996)に見いだすことができる。“Pharmacokinetics”, M Gibaldi & D Perron, published by Marcel Dekker, 2nd Rev. ex edition (1982)についても引用するが、これは、薬物動態パラメーター、たとえばtαおよびtβ半減期、ならびに曲線下面積(AUC)を記載する。
【0095】
半減期(t1/2αおよびt1/2β)およびAUCおよびMRTは、時間に対するリガンドの血漿もしくは血清濃度の曲線から決定することができる。WinNonlin解析パッケージ(Pharsight Corp., Mountain View, CA94040, USAより入手可能)を使用して、たとえば曲線を形に表すことができる。第1相(α相)では、患者において、主にリガンドの分布が、ある程度の消失とともに起こっている。第2相(β相)は、リガンドの分配が済んで,患者からリガンドが除去されるにつれて血清濃度が低下していく終末相である。tα半減期は、第1相の半減期であり、tβ半減期は第2相の半減期である。加えて、当業者によく知られている非コンパートメントフィットモデルを用いて半減期を決定することもできる。
【0096】
ある実施形態において、本発明は、たとえばヒト被験体において、約12時間以上、たとえば約12時間から約21日まで、たとえば約24時間から約21日まで、たとえば約2-8日、たとえば約3-4日の消失半減期を有する本発明の融合体もしくは複合体を与える。
【0097】
本発明の融合体もしくは複合体はまた、たとえば、PEG基、血清アルブミン、トランスフェリン、トランスフェリン受容体もしくは少なくともそのトランスフェリン結合部分、抗体Fc領域を結合することによって、または抗体ドメインとの結合によって、より大きな流体力学的サイズを有するように、さらに形を整えることができる。
【0098】
流体力学的サイズは、当業者によく知られている方法を用いて測定することができる。たとえば、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて、リガンドの流体力学的サイズを決定することができる。リガンドの流体力学的サイズを測定するのに適したゲル濾過担体、たとえば架橋アガロース担体がよく知られており,容易に入手できる。
【0099】
本発明の組成物、すなわち本明細書に記載の融合体および複合体を含有する組成物は、他にいくつかの利点を与える。ドメイン抗体成分は非常に安定であり、抗体および抗体の他の抗原結合フラグメントに比べて小さく、大腸菌もしくは酵母(たとえば、Pichia pastoris)における発現によって高収率で作製することが可能であって、血清アルブミンと結合する、抗体の抗原結合フラグメントは、ヒト起源のライブラリー、または任意の望ましい種に由来するライブラリーから容易に選択することができる。したがって、血清アルブミンと結合するdAbを含んでなる本発明の組成物は、一般に哺乳動物細胞で作製される治療薬(たとえば、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体)より簡単に作製することができ、免疫原性のないdAbを使用することができる(たとえば、ヒトdAbはヒトの疾患を治療または診断するために使用することができる)。
【0100】
インスリン分泌促進薬またはインクレチンが、血清アルブミンと結合するdAbを含有する薬物組成物の一部である場合、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬の免疫原性を低下させることができる。したがって、本発明は、血清アルブミンと結合したdAbを含有する薬物組成物に関して、(たとえば、インスリン分泌促進薬またはインクレチン単独よりも)免疫原性が低下し、または実質的に免疫原性のない、融合体もしくは複合体組成物を与える。したがって、このような組成物は、被験体の免疫系による抗薬物抗体の産生に起因する、有効性の損失を最小限に抑え、被験体に長期間にわたって繰り返し投与することができる。
【0101】
さらに、本明細書に記載の複合体もしくは融合体組成物は、インスリン分泌促進薬またはインクレチン単独より安全性が高く、副作用が少ない可能性がある。たとえば、dAbの血清アルブミン結合活性の結果として、本発明の融合体もしくは複合体は、血液循環における滞留時間が長くなっている。加えて、本発明の融合体もしくは複合体は、実質的に血液脳関門を超えることができず、全身投与(たとえば、静脈内投与)後に中枢神経系に蓄積することはあり得ない。したがって、本発明の融合体もしくは複合体は、インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬単独と比較して、安全性が高まり副作用が減少した状態で投与することができる。同様に、該融合体もしくは複合体を、薬物単独よりも、特定の臓器(たとえば、腎臓または肝臓)に対する毒性の低減されたものとすることができる。
【0102】
(実施例)
【実施例1】
【0103】
GLP-1 (A8G)またはエキセンディン-4とDOM7h-14 AlbudAbとの遺伝子融合体の発現
エキセンディン-4、または8位のアラニンがグリシンで置き換えられたGLP-1(7-37)([Gly8] GLP-1)のいずれか一方を、DOM7h-14(下記に示すアミノ酸配列を有する、血清アルブミンと結合するドメイン抗体(dAb)(albudab))との融合体として、pTT-5ベクター(CNRC, Canadaより入手可能)にクローニングした。それぞれの場合に、GLP-1またはエキセンディン-4は構築物の5’末端にあり、dAbは3’末端に存在した。合計7個の構築物(DAT0114、DAT 0115、DAT0116、DAT 0117、DAT 0118、DAT 0119、DAT 0120)が作製されたが,そのアミノ酸配列は図1(A-G)に示す。リンカーは存在しないか、gly-serリンカー(G4S)、もしくはヘリックス状リンカー(Arai, R., H. Uedaら、(2001). "Design of the linkers which effectively separate domains of a bifunctional fusion protein." Protein Eng 14(8): 529-32.456)、もしくは第2のGLP-1部分からなるリンカーが、GLP-1またはエキセンディン-4とdAbとの間に存在するかのいずれかであった。リンカーは、GLP-1もしくはエキセンディン-4とGLP-1受容体間の結合の立体障害を防ぐために、GLP-1もしくはエキセンディン-4をdAbから空間的に分離するスペーサーとして追加した。構築物の配列は、図1(A-G)に示す。
【0104】
エンドトキシンを含まないDNAを大腸菌において、アルカリ溶菌法を用いて調製し(エンドトキシンフリープラスミドGigaキット、Qiagen CAより入手可能、を使用)、それを用いてHEK293E細胞(CNRC, Canadaより入手可能)にトランスフェクトした。トランスフェクションは、フラスコ当たり333μlの293fectin(Invitrogen)および250μgのDNAを用いて、1.75x106細胞/mlのHEK293E細胞を250ml/フラスコの状態とし、発現は30℃にて5日間とした。上清を遠心によって回収し、精製はProtein Lによるアフィニティ精製によった。タンパク質は樹脂にバッチで結合させて、カラムに充填し、カラム容積の10倍のPBSで洗浄した。タンパク質は、50mlの0.1MグリシンpH 2で溶出し、Tris pH 8で中和した。予想されるサイズのタンパク質をSDS-PAGEゲルで同定し、サイズを下記表1に示す。
【表1】

【実施例2】
【0105】
GLP-1およびエキセンディン-4 AlbudAb融合体は血清アルブミンと結合することを示す
GLP-1およびエキセンディン-4 AlbudAb融合体は、表面プラズモン共鳴(Biacore AB、GE Healthcareから入手可能)で解析して、親和性に関する情報が得られた。解析は、血清アルブミンでコートしたCM5 Biacoreチップ(カルボキシメチル化デキストランマトリックス)を用いて行った。テストする各血清アルブミン(ヒト、ラットおよびマウス血清アルブミン)約1000レゾナンスユニット(RU)を、酢酸バッファーpH 5.5中で固定化した。Biocore ABのフローセル1は、コートされない、ブロックされたネガティブコントロールとしたが、フローセル2はヒト血清アルブミン(HSA)(815RU)でコートし、フローセル3はラット血清アルブミン(RSA)(826RU)でコートし、フローセル4はマウス血清アルブミン(MSA)(938RU)でコートした。テストした各融合体分子は、上記実施例に記載のように哺乳動物組織培養で発現された。
【0106】
BIACORE HBS-EPバッファー(0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005% Surfactant P20)中で希釈することによって、さまざまな濃度の融合体分子(16nMから2μM)を調製し、それをBIACOREチップに流した。
【0107】
親和性(KD)は、BIACORE出力から、結合速度および解離速度曲線を、KD領域内のdAb濃度によって生じた出力に対してフィッティングすることによって計算した。親和性(KD)は、下記の表2にまとめて記載する。
【表2】

【0108】
上記の結果は、融合体分子が全種類の血清アルブミンと結合する能力を保持していることを示しており、これはその融合体分子の半減期が長くなっている可能性があることを示している。
【実施例3】
【0109】
GLP-1およびエキセンディン-4 AlbudAb融合体はGLP-1受容体結合アッセイ(GLP-1R BA)において活性がある
融合体は、100 mM NaCl、20 mMクエン酸 pH 6.2にバッファー交換した。一方で、CHO 6CRE GLP1R細胞(ルシフェラーゼレポーター遺伝子を駆動する6 cAMP応答配列、ならびにヒトGLP-1受容体で安定にトランスフェクトされたCHO K1細胞(American Type Tissue Collection, ATCCより入手可能))を、懸濁培地中で2 x 105 細胞/mlとなるよう播種した。懸濁培養を24時間維持した。次に細胞を2mM Lグルタミン含有15mM HEPESバッファー(Sigmaより購入可)で希釈し(2.5 x 105 細胞/ml)、アッセイする化合物をウェル当たり10μl含有する384ウェルプレートに分注した。アッセイコントロールを添加後、プレートをインキュベーターに戻し、3時間37℃で5% CO2とした。インキュベーション後、Steady-Gloルシフェラーゼ基質(Promegaより購入可)を、キットに記載のようにウェルに添加し、粘着性のプレートシール(Weber Marking Systems Inc. カタログ番号607780)でプレートを密閉した。プレートをリーダー(Viewlux, Perkin Elmer)の中に置き、5分間プレインキュベートした後、蛍光を読み取り、結果をプロットした。化合物はさまざまな濃度で、10μMアルブミン存在下、および非存在下でアッセイし、用量反応曲線をアルブミンあり、およびなしで、フィッティングした。EC50が算出されたが、それをまとめて下記の表3に示す。
【表3】

【0110】
上記の結果は、テストしたすべての融合体分子が、GLP-1受容体に結合する能力を保持していることを示している。その結果はまた、この能力が血清アルブミンの存在下でも保持されることを明示する。したがって、これらの融合体分子は、in vivoでGLP-1受容体と結合する能力を保有する可能性が高い。
【実施例4】
【0111】
HEK 293哺乳動物組織培養におけるDAT0115、DAT0116、DAT0117およびDAT0120の発現とその後のプロテインLによるアフィニティ捕捉およびイオン交換クロマトグラフィー
この実験は、in vivoおよびin vitro特性解析のためにタンパク質を作製することを目的とした。タンパク質は、前記のように哺乳動物組織培養でHEK 293E細胞においてpTT-5ベクターから発現させた。簡単に述べると、エンドトキシンを含まないDNAを調製し、精製して、HEK 293E細胞をトランスフェクトするために使用した。タンパク質発現は、振とう培養器内で、30℃にて5日間とし、培養物を遠沈して、(目的のタンパク質を含有する)上清を回収した。その上清から、Protein LアガロースStreamlineアフィニティ樹脂(樹脂はGE Healthcare製、Protein Lは当所でカップリング)によるアフィニティ捕捉によってタンパク質を精製した。次に樹脂をカラム容積の10倍量のPBSで洗浄した後、カラム容積の5倍量の0.1MグリシンpH2.0でタンパク質を溶出した。カラム容積と同量の1MTris-グリシン pH8.0で中和した。この場合(前の実施例とは対照的に)、次にさらに精製を行った。タンパク質(Tris-グリシン中)は、20mM酢酸バッファーpH5.0にバッファー交換した後、あらかじめ20mM酢酸バッファーpH5.0で平衡化された1つの(または並行して2つの)6ml Resource Sカラム(GE Healthcare)上にAktaを用いて添加した。同じバッファーで洗浄後、20mM酢酸バッファーpH5.0中0-0.75Mまたは0-1M NaCl濃度勾配によってタンパク質を溶出した。次いで正しいサイズの画分をSDS-PAGE電気泳動および質量分析により同定した後、画分を合わせてタンパク質の最終サンプルを作製した。その後、タンパク質を20mM クエン酸バッファーpH6.2、100mM NaClにバッファー交換し、0.5-5mg/mlに濃縮した。タンパク質を0.2μMフィルターで濾過して無菌性を確保した。タンパク質はその後、下記の実施例に使用した。
【実施例5】
【0112】
1回、3回および6回の凍結融解サイクルに対するDAT0115、DAT0116、DAT0117およびDAT0120の安定性の比較
この研究は、1回、3回および6回の凍結融解サイクルに対するDAT0115、DAT0116、DAT0117およびDAT0120の安定性を比較することを目的とした。各タンパク質は、前記のように哺乳動物組織培養でHEK 293E細胞においてpTT-5ベクターから発現させ、Protein Lアフィニティ樹脂で精製し、次いでイオン交換クロマトグラフィーで精製した。タンパク質は、20mM クエン酸バッファー、100mM NaClにバッファー交換し、同バッファーを用いて0.5mg/mlに希釈した。各タンパク質から取り分けた0.5mlを(エッペンドルフチューブに入れて)次に、0回、1回、3回または6回の凍結融解サイクルに供したが、各サイクルでは3分間ドライアイスに接触させた後2分間37℃のウォーターバスに入れた。(タンパク質溶液を完全に融解させるには37℃2分間で十分であることが、実験中に認められた。)必要な回数の凍結融解サイクルを終えた後、タンパク質サンプルは次に分析するまで2-8℃で保存した。その後タンパク質はSDS PAGE電気泳動、GLP-1R結合アッセイ、Superdex 75カラムでのサイズ排除クロマトグラフィー、および質量分析法による分析に供した。4つタンパク質すべてのSDS PAGE分析結果、GLP-1R BAによる能力、および質量分析結果は、1回、3回または6回の凍結融解サイクルによって、ベースラインから有意には変化しないことが観測された。SEC分析における最大ピークの高さは影響を受け、DAT0115、DAT0116、DAT0117およびDAT0120のそれぞれについて、6回の凍結融解サイクル後、最大の高さの78%、86%、104%および57%が維持された。DAT0120は、凍結融解サイクルに対して他の3つのタンパク質より安定性が低いと結論づけられた。
【表4】

【実施例6】
【0113】
II型糖尿病のdb/dbマウスモデルにおけるDAT0115の作用持続時間の実証
この研究は、db/dbマウスにおいて、経口耐糖能に対するDAT0115の作用の持続時間を測定することを目的とした。実験を開始する3日前にグルコースレベルの低下で動物を分類し、その後ブロック化した。各ブロック内の動物1個体を、26の実験群のそれぞれに割り当てた。このことは、各実験群において類似した平均開始グルコースレベルを保証した。DAT0115(上記のようにHEK 293E細胞で作製し、精製された)を、経口ブドウ糖負荷の5、24、48、72、96、もしくは120時間前に、1mg/Kg、0.3mg/Kgまたは0.1mg/Kg皮下投与した。(必ずしもすべての用量をすべての時点で投与したわけではなく、詳細については下表を参照されたい。)DAT0115は、溶媒で処置したdb/dbマウスと比べて、0.1mg/Kgおよび0.3mg/Kgの用量については24時間まで(24時間を含む)、1mg/Kgの用量については72時間まで(72時間を含む)の時点で、2時間の経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)について、グルコースAUCを有意に減少させた。エキセンディン-4を42μg/Kg、ポジティブコントロールとして投与したが、経口グルコース投与の5時間前に投与すると、OGTTによるグルコースAUCを、やはり有意に減少させた。下記の表5は、DAT0115の各実験群を溶媒と比較した、AUCの減少のパーセンテージを示す。星印は、偽発見率修正(false discovery rate correction)を用いて、溶媒に対するDAT0115の比較について、P<0.05であることを示す。
【表5】

【実施例7】
【0114】
食餌性肥満(DIO)の肥満マウスモデルにおけるDAT0115の有効性の証明
本研究は、確立されたマウス摂食モデル(食餌性肥満マウス)を用いて、摂餌量および、結果的に、体重が、DAT0115による治療によって影響を受けるかどうかを調べることを目的とした。これはヒトへの予想となりうる。Male C57Bl/6マウス(Taconicより購入)は、12週間、60% kcal高脂肪の放射線照射済み食餌で太らせた後、社内施設に移した。到着後ただちに、そのマウスを、温度および湿度を制御した室内(70-72 oF、湿度= 48-50%、5 AM/5 PM光サイクル)のALPHA-dri床敷上に、個別に収容した。食餌を45%高脂肪食に変えて、18日間順応させた。テスト化合物を投与する前に、3日間1日1回マウスに生理食塩水を皮下注射し、摂餌量を測定した。マウスは、グループ間ないしグループ内で体重および摂餌量に相違のないように、区分けして、グループ分けした。実験当日、8匹のマウスからなるグループは、5 ml/kgの注射量で下記のように皮下投与を受けた:3グループはDAT0115の投与を受け(低、中および高用量)、1グループはネガティブコントロール分子(DOM7h-14 AlbudAb、ただしエキセンディン-4複合体を含まない)、また1グループはエキセンディン-4ポジティブコントロールの投与を受けた。
【表6】

【0115】
1日の摂餌量および体重を10日間毎日測定した。DAT0115は対照DOM7h-14と比較して用量依存的な体重及び摂餌量の減少を示した(図3aおよび3bを参照されたい)。したがって、このマウス実験から得られたデータは、DAT0115がすぐれた臨床候補であるという仮説を支持すると結論づけられた。
【実施例8】
【0116】
II型糖尿病マウスモデルにおけるDAT0115、DAT0116およびDAT0117の血漿半減期の測定
本研究は、II型糖尿病マウスモデル(db/dbマウス)においてDAT0115、DAT0116およびDAT0117の血漿消失プロファイルを決定し、その結果からPKパラメーターを算出することを目的とした。DAT0115、DAT0116およびDAT0117タンパク質は前記のように調製した:手短に述べると、HEK 293E細胞を用いて哺乳動物組織培養でタンパク質を発現させて、Protein Lアガロースアフィニティ樹脂へのバッチ吸着によって精製した後、グリシンバッファーpH 2.0 で溶出し、Trisバッファー pH 8.0で中和した。これに続いて、Resource Sカラムで、20mM 酢酸バッファーpH5.0中0-1Mの塩濃度勾配を用いてイオン交換クロマトグラフィーを行った。次に、求めるタンパク質を含有する画分を合わせ、100mM NaCl、20mMクエン酸バッファーpH6.2にバッファー交換した。タンパク質はin vivoで使用する前に、濾過滅菌、バッファー交換およびエンドトキシン除去を行ってテストした。非絶食の雄db/dbマウス(レプチン受容体遺伝子(lepr)に変異があり、レプチン受容体を欠失したLEPr dbホモ接合体マウス)のグループは、皮下または静脈内に、1mg/Kg DAT0115、DAT0116またはDAT0117の投与を受けた。iv投与については、投与前、投与の0.25、0.5、1, 4、7、12、24、36、48および60時間後、ならびにsc投与については、投与前、投与の0.5、1、4、7、12、24、36、48および60時間後に、血液サンプルを末梢採血(terminal bleed)によって採取し、血漿を調製した。血漿サンプルは凍結し、後に必要に応じて、固相抽出およびLC/MS/MSによりDAT0115、DAT0116またはDAT0117レベルを分析するために解凍して、タンパク質断片の存在を検出した(タンパク質のエキセンディン-4部分から)。次に、計算された血漿レベルを用いて、WinNonLinソフトウェアによる薬物動態パラメーターフィッティングを行った。皮下および静脈内投与後の半減期およびバイオアベイラビリティの概要を下表に示す。その結果から(下記の表7を参照されたい)、3つの化合物はいずれも、II型糖尿病マウスモデルにおいて、望ましい薬物動態パラメーターを示すと結論づけられた。したがって、これらの分子は、糖尿病のヒトにおいて、すぐれたPKパラメーターをもたらす可能性があり、この研究はDAT0117よりもDAT0115もしくはDAT0116の選択を支持する。
【表7】

【実施例9】
【0117】
ラットにおけるDAT0115、DAT0116、DAT0117の血漿半減期の測定
本研究は、ラットにおいてDAT0115、DAT0116およびDAT0117の血漿消失プロファイルを決定し、その結果からPKパラメーターを算出することを目的とした。DAT0115、DAT0116およびDAT0117タンパク質は前記のように調製した:手短に述べると、HEK 293E細胞を用いて哺乳動物組織培養でタンパク質を発現させて、Protein Lアガロースアフィニティ樹脂へのバッチ吸着によって精製した後、グリシンバッファーpH 2.0 で溶出し、Trisバッファー pH 8.0で中和した。これに続いて、Resource Sカラムで、20mM 酢酸バッファーpH5.0中0-1Mの塩濃度勾配を用いてイオン交換クロマトグラフィーを行った。次に、求めるタンパク質を含有する画分を合わせ、100mM NaCl、20mMクエン酸バッファーpH6.2にバッファー交換した。タンパク質はin vivoで使用する前に、濾過滅菌、バッファー交換し、性質検討した。
【0118】
血漿半減期を測定するために、3匹のラットからなるグループは、1回の静脈内(i.v.)または皮下(S.C.)注射で0.3mg/Kg(iv)または1mg/Kg(SC)のDAT0115、DAT0116またはDAT0117の投与を受けた。血漿サンプルは、72時間にわたって尾静脈から順次出血させることによって得られ、LC/MS/MSによって分析して、融合体の断片の存在を検出した(融合体のエキセンディン-4部分から)。次に、計算された血漿レベルを用いて、WinNonLinソフトウェアによる薬物動態パラメーターフィッティングを行った。皮下および静脈内投与後の半減期およびバイオアベイラビリティの概要を下記の表8に示す。その結果から、3つの化合物はいずれも、ラットにおいて、望ましい薬物動態パラメーターを示すと結論づけられた。したがって、これらの分子はすべて、ヒトにおいて、すぐれたPKパラメーターをもたらす可能性があり、この研究は、DAT0116もしくはDAT0117よりもDAT0115の選択を支持する。
【表8】

【実施例10】
【0119】
カニクイザルにおけるDAT0115の血漿半減期の測定
本研究は、ヒト以外の霊長類(カニクイザル)においてDAT0115に関する薬物動態パラメーターを決定して、パラメーターの非比例的なスケーリングを行うことができるようにすること、ならびにDAT0115がヒトにおいて良好なPKプロファイルを有する可能性が高いかどうかについてできる限り最善の指標を与えることである。DAT0115エキセンディン-4 AlbudAb融合体は、哺乳動物組織培養においてHEK 293E細胞で発現させ、前記のように精製した。手短に述べると、タンパク質は、Protein L-アガロースアフィニティ樹脂にバッチ吸着させた後、グリシンバッファーpH 2.0で溶出し、TrisバッファーpH 8.0で中和することによって精製した。これに続いて、Resource Sカラムで20mM 酢酸バッファー pH5.0中0-1M塩濃度勾配を用いてイオン交換クロマトグラフィーを行った。その後、求めるタンパク質を含有する画分を集め、バッファーを100mM NaCl、20mMクエン酸バッファーpH6.2に交換した。
【0120】
タンパク質はさまざまな性質検討を行い(SDS-PAGE、質量分析、活性アッセイ:GLP-1R-BA、pHチェック、モル浸透圧濃度チェック)、濾過滅菌して、エンドトキシンを除去した。低エンドトキシンが確認されたタンパク質(<0.05 EU/mgタンパク質)をその後in vivo実験に使用した。
【0121】
この実験には6匹の雌カニクイザル(Macaca fascicularis; Charles River Laboratories BRF, Houston, TX, Primate Products, Miami, FLおよび/またはCovance Research Products, Inc., Alice, TX)を使用した。サルは、投与開始時に2-9年齢(体重範囲は約2-5キログラム)であった。サルは個別に、環境制御室(華氏64度-84度;相対湿度30-70%、12時間明暗サイクル)内のステンレスケージに収容した。雌サルには、Monkey Diet #5038 (PMI Nutrition International, Richmond, IN)のビスケット6個程度を1日2回、および毎日割り当ての新鮮な果物を提供した。各動物は、投与グループ(3 scおよび3 iv)に応じて、テスト化合物(DAT0115)の皮下もしくは静脈内投与を受けた。用量は0.1mg/Kgとした。投与当日は、それぞれのサルへの投与後約1時間以内に、最初の摂餌を行った(実験に関わる手順のために、動物を長時間、その飼育ケージから出しておくことが必要ならば、投与後2.5時間まで延長される)。2回目の摂餌は、1回目の摂餌の2時間後以内には行わなかった。環境強化のために、追加の果物、豆類および/または野菜(たとえば、ブドウ、ベビーキャロット、ピーナッツ)を、生存能力チェック時もしくはその前後に、または順応もしくは実験関連処置後の報償の方法として、それぞれのサルに与えた。濾過した水道水(Aqua Pennsylvania, Inc.提供、定期的に分析)は自由に利用可能とした。
【0122】
投与前(0時間)、ならびに投与後わずか5分(ivグループのみ)、0.5、4、8、24、48、96、144、192、288、336、504および672時間の時点で、大腿血管から血漿サンプル(約2ml)を採取した。(iv投与群の動物のうち1頭から得られたPKサンプルは、24時間までしか採取しなかったので、この動物はPKフィッティングから除外した。)サンプルの分析は、質量分析によって行い、データのフィッティングは、WinNonLinフィッティングソフトウェアによって行った。PKパラメーターは下記のとおり、iv投与(n=2)については、T1/2 67h、MRT 46h、Vz 327ml/KgならびにCl 3.3 ml/hr/Kgであり、sc投与(n=3)については、T1/2 68h、MRT 98h、Vz 306ml/KgならびにCl 3.1 ml/hr/Kgであった。バイオアベイラビリティは99%と計算された。
【0123】
この研究(ならびにカニクイザルおよびヒト血清アルブミンのBiacore結合データ)から、(上記の)DAT0115のカニクイザルにおける68時間という皮下投与の半減期は、同分子のヒトにおける半減期が、週1回(またはより少ない回数の)投与の要件に関連づけられるほど十分に長い可能性が高い、という確信を与えると結論づけられた。
【実施例11】
【0124】
カニクイザルにおけるDAT0115のPDの測定
カニクイザルで上記のようにPK研究を行った。本研究の主な目的は、(前期実施例に記載のように)カニクイザルにおいてDAT0115に関する薬物動態(PK)パラメーターを決定することであるが、二次的には、そのサルにおけるDAT0115化合物の有効性の兆候を得ることを目的とした(統計的有意性のために十分な、研究における検出力なしに)。この二次的目的を達成するために、サルによるビスケットの消費を本研究の過程においてモニターした。投与後数日間、すべてのサルに、摂餌量の減少傾向があることがわかった。これはおそらく、当該分子のエキセンディン-4部分の、十分に立証された、食欲抑制剤としての効果に起因すると結論づけられた。したがって、DAT0115はin vivoで活性のあることが明らかである。動物の生活の確保のため、果物およびおやつはビスケット消費に関わりなくほとんどの日に消費された。
【表9】

【実施例12】
【0125】
表面プラズモン共鳴によるDAT0115エキセンディン-4 AlbudAb融合体のラット、カニクイザルおよびヒト血清アルブミンとの結合
DAT0115を発現させて精製した後、表面プラズモン共鳴((Biacore, GE Healthcare)によって解析し、親和性に関する情報を得た。解析は、ビオチン化血清アルブミンをコートしたストレプトアビジンチップ(SA)を用いて行った。200-1000レゾナンスユニット(RU)の各血清アルブミンをチップ上に固定化した。フローセル1は非コート、フローセル2はHSA(ヒト血清アルブミン)、フローセル3はRSA(ラット血清アルブミン)、そしてフローセル4はCSA(カニクイザル血清アルブミン)でコートした。さまざまな濃度の融合体を、15.6 nMから2μMまでの範囲として、BIACORE HBS-EPバッファー(0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005% Surfactant P20)中への希釈によって調製し、BIACOREチップ上に流した。
【0126】
親和性(KD)は、BIACORE出力から、結合速度および解離速度曲線を、KD領域内のdAb濃度によって生じた出力に対してフィッティングすることによって計算した。親和性(KD)の概要を下記の表に示す。
【表10】

【実施例13】
【0127】
示差走査熱量測定によるDAT0115熱変性の特性評価
この実験は、オートサンプラーを備えたキャピラリーセルマイクロ熱量計VP-DSC (Microcal)を用いて、DSC(示差走査熱量測定)によってDAT0115の熱変性を測定することを目的とした。タンパク質は、20mMクエン酸バッファーpH6.2、100mM NaCl中で一晩透析し、濾過した後、280nmの吸光度による測定として1 mg/mlの濃度に調製した。濾過した透析バッファーを全サンプルに対する標準として使用した。180℃/時間の加熱率でDSCを行った。各サンプルの前に、1% Decon溶液、次いでバッファーを注入し、セルをきれいにして、計器のベースラインを与えた。得られた出力を、Origin 7 Microcalソフトウェアを用いて解析した。標準バッファーから得られたDSC出力をサンプル出力から差し引いた。計算にはサンプルの正確なモル濃度を用いた(Originにより自動的に実施)。遷移前後の上および下のベースライン直線領域の両方に対するベースラインセッティングは、三次connect関数を用いて選択し関連づけられた。その結果得られたグラフは、非2状態モデルにフィッティングされ、見かけのTmおよびΔH/ΔHv値を与える。
【0128】
DAT0115から得られた出力記録は、非2状態遷移モデルにフィッティングされ、見かけのTm(appTm)は56.3℃であった。適合度は十分であった(図4を参照されたい)。同じ装置を使って実行されたコントロール出力のリゾチームは、予想どおり完全なフィットを示す良好な品質データを与えた。(リゾチームについて得られたappTmは76.2℃であったが、これは文献で報告されたものと一致する(図5を参照されたい)。)したがって、この実験は、DAT0115が臨床候補にふさわしい56.3℃の融点を有する分子であることを示す、信頼性のあるデータを与えると結論づけられた。
【実施例14】
【0129】
SEC MALLSによる溶液状態のDAT0115、DAT0117およびDAT0120の特性評価
この実験は、DAT0115、DAT0117およびDAT0120の溶液状態をSEC MALLSによって測定することを目的とした。サンプルは、精製し、適当なバッファー(PBS)に対して透析して、透析後濾過し、濃度を測定して1mg/mlに調整した。BSAおよびHSAをSigmaより購入し、それ以上精製することなく使用した。
【0130】
計測の詳細
オートサンプラー(SIL-20A)およびSPD-20A Prominence UV/Vis検出器を備えたShimadzu LC-20AD Prominence HPLCシステムを、Wyatt Mini Dawn Treos (MALLS、多角度光散乱検出器)およびWyatt Optilab rEX DRI(示差屈折計)に接続した。検出器は次の順序で接続した - LS-UV-RI。RIおよびLS機器はいずれも、488nmの波長で操作した。50もしくは200 mMリン酸バッファー(塩を含有する、または含有しない)、pH7.4または1xPBSの移動相を用いて、TSK2000 (Tosoh corporation)またはBioSep2000 (Phenomenex)カラムを使用した。使用する流速は0.5ないし1ml/分とし、作動時間は異なる流速を反映するように調整したが(45または23分)、分子の分離に有意な影響を及ぼさないと予想される。タンパク質はPBS中で1mg/mlの濃度に調製し、注入量は100μlとした。光散乱検出器は、メーカーの説明書にしたがってトルエンでキャリブレートした。UV検出器およびRI検出器のアウトプットは光散乱装置と接続し、Wyatt ASTRA ソフトウェアを用いて3つの検出器からのシグナルをすべて同時に集められるようにした。PBS移動相に溶解したBSAの注入(0.5または1ml/分)を、Tosoh TSK2000カラム上に数回行って、UV、LSおよびRIシグナルをWyattソフトウェアにより収集した。次に、ASTRAソフトウェアを用いて出力を解析し、メーカーの説明書にしたがって、シグナルを正規化して,アラインし、バンド幅の広がりを補正する。次に較正定数を平均し、将来のサンプル実行に使用されるテンプレートにインプットする。
【0131】
絶対モル質量の計算
1mg/mlのサンプル100μlを、あらかじめ平衡化された適当なカラムに注入した。SECカラムの後、サンプルを3つのオンライン検出器、UV、MALLS(多角度光散乱)およびDRI(示差屈折率)検出器に通し、絶対モル質量の測定が可能となった。カラムで生じる希釈はほぼ10倍であり、よって溶液中の状態を測定しているときの濃度は、100μg/ml、言い換えると約8μM dAbとなる。
【0132】
ASTRAソフトウェアでの計算、ならびにZimmプロット法の原理(多くの場合バッチサンプルモードで実施される)は、Zimm[J. Chem. Phys. 16, 1093-1099 (1948)]が提供する式である:
【数1】

【0133】
[式中、
cは、溶媒中の溶質分子の質量濃度であり(g/ml)
Mは、重量平均モル質量であり(g/mol)
A2は、第2ビリアル係数であり(mol mL / g2
K* = 4p2 n02 (dn/dc)2 l0-4 NA-1は光学定数であり、n0は入射光(真空)波長での溶媒の屈折率、l0はナノメーター単位で表された入射光(真空)波長、NAはアボガドロ数(6.022 x 1023 mol-1)、ならびにdn/dcは、溶媒-溶質溶液の、溶質濃度の変化に対する示差屈折率の増加をml/gで表したものである(このファクターはdRI検出器を用いて、独立に測定しなければならない)、
P(q)は、理論的に導かれた形状因子であって、1 - 2μ2<r2>/3! + ・・・ にほぼ等しく、ここでμは、μ = (4π/λ)sin(θ/2)であり、<r2>は平均二乗半径である。P(q)は、分子のz平均サイズ、形および構造の関数であり、
Rqは過剰Rayleigh比である(cm-1)]。
【0134】
この式は、垂直に偏光した入射光を想定しており、c2の次数まで有効である。
【0135】
sin2(q/2)に対するRq /K*cのプロットへのフィットである、Zimmフィット法により計算を行うために、式1の逆数を展開して、cの一次式とする必要がある。
【0136】
sin2(q/2)に対するRq /K*cのプロットへのフィットである、Zimmフィット法により計算を行うために、式1の逆数を展開して、cの一次式とする必要がある。
【数2】

【0137】
この場合、適切な結果は
【数3】

【0138】
および
【数4】

【0139】
であり、式中
【数5】

【0140】
である。
【0141】
計算は、ASTRAソフトウェアにより自動的に行われ、その結果、プロットが得られて、それぞれのスライスについてモル質量が決定された[ASTRAマニュアル]。
【0142】
クロマトグラムで観察されたそれぞれのピークについてのプロットから得られたモル分子量を、タンパク質の単一ユニットの予想分子量と比較する。これによって、溶解状態にあるタンパク質ついて結論を下すことができる。
【0143】
実験データ
DAT0115
20mMクエン酸バッファー、0.1M NaCl、pH6.2で平衡化したSuperdex 200カラムに、1mg/ml DAT0115を100μl注入した。流速は0.5ml/分にセットした。タンパク質は単一ピークとして溶出し、分子量はピークの全幅にわたって17.4 kDaと測定された(単量体について予想される分子量は16.9 kDaである)。溶出効率は100%である。(HSA対照は予想通りの挙動をとり、DAT0115に関する実験結果を実証した。それは分子量64 kDa (単量体)および110 kDa (二量体)の2つのピークとして溶出する。HSA二量体の分子量は、このピークに含まれるタンパク質の量が非常に少ないため、あまり正確でない可能性がある。)。
【0144】
DAT0117
50mMリン酸バッファー、pH7.4で平衡化したTSK2000カラムに、1mg/ml DAT0117を100μl注入した。流速は1ml/分にセットした。DAT0117の注入量の約50%は、35-45 kDa(二量体以上)程度の分子量を有する2つの重なり合ったピークとしてカラムから流出したが、そのことは、このテスト条件での強い自己会合を示している。(BSA対照は予想通りの挙動をとってDAT0117の実験結果を実証し、分子量61 kDaおよび146 kDa (単量体および二量体)の2つのピークを与えた。)SEC Malの結果については図7を参照されたい。
【0145】
DAT0120
50mMリン酸バッファー、pH7.4で平衡化したTSK2000カラムに、1mg/ml DAT0120を100μl注入した。流速は1ml/分にセットした。DAT0120の注入量の約50%は、25kDa程度と測定された分子量を有するやや非対称のピークとしてGFカラムから流出した。これは、このテスト条件でのDAT0120の強い自己会合を示しており、タンパク質は単量体-二量体の迅速平衡状態にあると思われる。(BSA対照は予想通りの挙動をとってDAT0120の実験結果を実証し、分子量61 kDaおよび146 kDa (単量体および二量体)の2つのピークを与えた。)SEC Malの結果については図8を参照されたい。
【0146】
上記の実験結果から、DAT0115は、ここで使用された条件下で、有意な自己会合を示す他の2つの分子と比べて、自己会合が有意に小さい(場合によっては、ない)と結論付けられた。溶解している単量体状態は、in vivo作用に関して好ましく、製造時の上流および下流プロセスに関しても好ましいと考えられるので、DAT0115は、溶解状態に関して、臨床的進展のために最も理想的な分子であるといえる。
【実施例15】
【0147】
アフィニティマトリックスProtein Lを使用しない哺乳動物発現からの精製
DAT0120およびDAT0115はいずれも、HEK 293上清から精製した。それぞれのタンパク質は、哺乳動物組織培養でHEK 293E細胞においてpTT-5ベクターから発現された。MEP Hypercel樹脂の1mlカラムをPBSで平衡化し、0.1M水酸化ナトリウムで洗浄した後、PBSで再び平衡化した。上清200mlを2.5ml/分でカラムに加えた後、カラムをPBSで洗浄して0.1Mグリシン、pH2で溶出した。
【0148】
溶出後、1/5容の1M Trisバッファー、pH 8を加えて、サンプルを中和し、室温で保存した。サンプルは保存後に少量の沈殿が見られたので、脱塩処理の前にステリフリップ(Steriflip)装置を用いて濾過した。
【0149】
2つの26/10 HiPrep脱塩カラムは、20mM酢酸ナトリウム、pH5(実測pH 5.3)を用いて10ml/分で平衡化し、0.1M NaOHを添加して洗浄し、20mM酢酸ナトリウム、pH5で再平衡化した。
【0150】
DAT0115は脱塩して20mM酢酸ナトリウム、pH5に含まれる状態とした後、20mM酢酸ナトリウム、pH5(実測5.2)で平衡化した1ml HiTrap SPFFにロードした。そのカラムを洗浄後、20mM酢酸ナトリウム、pH5、1M NaClを用いて0-100%濃度勾配に供し、5mAUsを越える吸光度を有する溶出画分を集めてSDS-PAGEで分析した。
【0151】
SP FF画分を一晩保存した後、そのサンプルを0.2μm濾過し、20mM クエン酸ナトリウム、pH6.2、100mM NaClで平衡化した2つの26/10 HiPrep脱塩カラムに加えた。溶出物を20ml遠心濃縮器に入れて濃縮し、濾過滅菌して、エンドトキシンを1/10および1/200希釈でテストした。
【0152】
2通りの希釈でエンドトキシンをテストしたが、1/10希釈はスパイク回収率250で30EU/mlの値を与えた。1/200テストは、スパイク回収率126%で<10.8EU/mlの値を与えた。ID 27823を用いて、サンプルを質量分析に供した。高負荷量では、80kDaマーカーより下、および100-160 kDaマーカーの間に、目に見える低レベルの夾雑物がある。サンプルの純度は95%より高いと思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 融合体もしくは複合体として存在するインスリン分泌促進薬またはインクレチン薬、および(b) 血清アルブミンと結合し、図1(h)(配列番号8)に示すアミノ酸配列を有するDOM 7h-14ドメイン抗体 (dAb)からなる、またはそれらを含んでなる、融合体または複合体組成物。
【請求項2】
薬物がエキセンディン-4またはGLP-1分子である、請求項1に記載の融合体または複合体。
【請求項3】
薬物が、(a) 図1(i)(配列番号9)に示すアミノ酸配列を有する GLP-1 (7-37) A8G変異体、または(b) 図1(j)(配列番号10)に示すアミノ酸配列を有するエキセンディン-4分子から選択される、請求項1または2に記載の融合体または複合体。
【請求項4】
薬物とdAbをつなぐアミノ酸リンカーまたは化学的リンカーを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の融合体または複合体。
【請求項5】
アミノ酸リンカーが、図1(k)(配列番号11)に示すアミノ酸配列を有するヘリックス状リンカー、または図1(l)(配列番号12)に示すアミノ酸配列を有するgly-serリンカーである、請求項4に記載の融合体または複合体。
【請求項6】
インスリン分泌促進薬またはインクレチン薬が融合体の一部として、dAbのN末端またはC末端に存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の融合体。
【請求項7】
請求項6に記載の融合体であって、
(a) 2xGLP-1 A8G DOM7h-14融合体 (DAT0114)

(配列番号1)、
(b) エキセンディン-4、(G4S)3リンカー、DOM7h-14融合体 (DAT0115)

(配列番号2)、
(c) エキセンディン-4 DOM7h-14融合体 (DAT0116)

(配列番号3)、
(d) エキセンディン-4、ヘリックス状リンカー、DOM7h-14融合体 (DAT0117)

(配列番号4)、
(e) GLP-1 A8G、(G4S)3リンカー、DOM7h-14融合体 (DAT0118)

(配列番号5)、
(f) GLP-1 A8G、PSSリンカー、DOM7h-14融合体 (DAT0119)

(配列番号6)、または
(g) GLP-1 A8G、ヘリックス状リンカー、DOM7h-14融合体 (DAT0120)

(配列番号7)
から選択されるアミノ酸配列からなる、またはそれを含んでなる前記融合体。
【請求項8】
次のもの、すなわち、PEG基、血清アルブミン、トランスフェリン、トランスフェリン受容体もしくは少なくともそのトランスフェリン結合部分、抗体Fc領域、から選択される分子を、dAbに結合することによって、または抗体ドメインと複合体化することによって、dAbの流体力学的サイズが大きくなるよう、dAbがさらに構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の融合体または複合体。
【請求項9】
追加のペプチドもしくはポリペプチド部分を含んでなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の融合体または複合体。
【請求項10】
Dom7h-14 dAbと同じ、または異なる結合特異性を有する、追加のdAb部分を含んでなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の融合体または複合体。
【請求項11】
ヒトにおける消失半減期が、12-21日など、12時間以上である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の融合体または複合体。
【請求項12】
約5μMから約1pMまでの範囲のKDでヒト血清アルブミンと結合する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の融合体または複合体。
【請求項13】
製薬上または生理学上許容されるキャリア、添加剤、または希釈剤と組み合わせて、請求項1〜12のいずれか1項に記載の融合体または複合体を含んでなる医薬組成物。
【請求項14】
他の治療薬または活性物質を含んでなる、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
(a)請求項1〜12のいずれか1項に記載の融合体もしくは複合体、および(b)他の治療薬または活性物質を含んでなる、被験体への個別投与、逐次投与または同時投与のための組成物。
【請求項16】
代謝性疾患もしくは障害の治療または予防に用いる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
疾患もしくは障害が、高血糖、耐糖能異常、β細胞不全、糖尿病(1型もしくは2型糖尿病または妊娠糖尿病)、肥満、過食を特徴とする疾患から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
代謝性疾患もしくは障害を治療または予防するための薬剤の製造における、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
皮下注射、静脈注射、または筋肉注射により被験体に投与するための薬剤の製造における、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項20】
非経口、経口、直腸、経粘膜、眼、肺、または消化管デリバリー用の薬剤の製造における、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項21】
治療または予防に有効な量の、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物を、患者に投与することを含んでなる、代謝性疾患を治療または予防する方法。
【請求項22】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物を含んでなる、経口製剤、注射製剤、吸入製剤、またはネブライザー製剤。
【請求項23】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物を含んでなる、座剤の形などの、徐放性製剤。
【請求項24】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物を含んでなる、凍結乾燥製剤。
【請求項25】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物を含んでなる、デリバリーデバイス。
【請求項26】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の融合体をコードする、単離された核酸または組換え核酸。
【請求項27】
請求項7に記載の融合体をコードする核酸。
【請求項28】
請求項26または27に記載の核酸を含有するベクター。
【請求項29】
請求項26または27に記載の核酸、または請求項28に記載のベクターを含有する、宿主細胞。
【請求項30】
(a)融合体として存在するインスリン分泌促進薬またはインクレチン薬、および(b) 血清アルブミンと結合し、図1(h)に示すアミノ酸配列を有するDOM 7h-14ドメイン抗体 (dAb)からなる、またはそれらを含んでなる、融合ポリペプチドを作製する方法であって、その方法が、請求項29に記載の宿主細胞を、前記核酸またはベクターの発現に適した条件下で維持すること、そしてそれによって融合ポリペプチドが産生されることを含んでいる、前記方法。
【請求項31】
治療または予防に有効な量の、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物を、患者に投与することを含んでなる、ヒト患者などの患者において高血糖に関連する疾患または障害を治療または予防する方法。
【請求項32】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物の少なくとも1回分を前記患者に投与することを含んでなる、ヒト患者などの患者においてインスリン産生を刺激する、および/またはインスリン感受性を増大させる方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−517561(P2011−517561A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501238(P2011−501238)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053640
【国際公開番号】WO2009/121804
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】