説明

虚像表示装置

【課題】使用感を向上させることができる虚像表示装置を提供する。
【解決手段】虚像表示装置1は、画像光を出射する表示素子6と、前記表示素子6からの画像光を投射する投射レンズ71と、前記投射レンズ71からの画像光を所定位置に導く導光部3と、前記投射レンズ71に対して前記表示素子6を回転可能に支持する回転機構9とを備えている。表示素子6には、当該表示素子6による表示を制御する表示制御手段が設けられてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイ等の虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡のような外観を有し、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示素子にて形成された画像を光学系により虚像として観察者に観察させる虚像表示装置(画像表示装置)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の虚像表示装置は、表示素子(LCD等)及び光学系(プリズム等)等を有するビューワ部と、ビューワ部を回転可能に支持するとともに内部に回路基板(表示制御手段)を内蔵したアーム部と、アーム部を支持するヘッドバンド部とを備える。この虚像表示装置では、アーム部に対してビューワ部を回転させることで、縦横いずれの表示形式でも画像を表示させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−154637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の虚像表示装置では、表示素子と投射レンズとを一緒に回転させるため、これら回転部分の重量が大きくなり、装置全体の重量が増加してしまう。このため、観察者が虚像表示装置を装着すると、観察者に重量的な負担感を与えてしまい、観察者に不快感を与えてしまうという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、使用感を向上させることができる虚像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の虚像表示装置は、画像光を出射する表示素子と、前記表示素子からの画像光を投射する投射レンズと、前記投射レンズからの画像光を所定位置に導く導光部と、前記投射レンズに対して前記表示素子を回転可能に支持する回転機構とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、虚像表示装置は、投射レンズに対して表示素子が回転可能に構成されている。
このことにより、投射レンズや導光部を回転させる必要がないので、回転部分の重量を低減することができる。このため、観察者の負担感を低減することができるので、観察者の使用感を向上させることができる。
【0008】
本発明の虚像表示装置において、前記表示素子には、当該表示素子による表示を制御する表示制御手段が設けられていることが好ましい。
ところで、表示制御手段には、表示素子との間の信号線や画像信号を入力するための信号線が接続されている。ここで、表示制御手段による表示素子の駆動が複雑であることから、表示制御手段と表示素子との間の信号線の本数は、画像信号入力用の信号線の本数よりも多いのが一般的である。このため、前記従来技術のように、表示制御手段を回転させずに表示素子を回転させる場合は、表示制御手段と表示素子との間の多くの信号線を回転させることになり、信号線への負担が大きくなってしてしまう。
これに対し、本発明では、表示制御手段を表示素子に設けたので、表示制御手段は、表示素子とともに回転することになる。このため、表示制御手段と表示素子との間の信号線を回転させる必要がなく、信号線にかかる負担を軽減することができる。
【0009】
本発明の虚像表示装置は、前記導光部から延設されたテンプルを備え、前記回転機構は、前記表示素子を回転操作するための操作部材を備え、前記操作部材は、前記テンプルに設けられていることが好ましい。
ところで、操作部材が導光部側に設けられた場合、観察者が虚像表示装置を装着した状態で操作部材を操作すると、操作部材の操作力が観察者の頭部前方に作用してしまい、操作時に虚像表示装置が位置ずれを起こしやすくなってしまう。
これに対し、本発明では、操作部材の操作力は、テンプルを介して観察者の側頭部で受けることができるため、操作時の虚像表示装置の位置ずれを防止することができ、観察者の使用感をさらに向上させることができる。
【0010】
本発明の虚像表示装置において、前記操作部材は、前記表示素子とともに回転可能に設けられていることが好ましい。
本発明では、操作部材は、表示素子とともに回転可能に設けられているので、操作部材を回転させるだけで、表示素子を回転させることができ、表示素子を手動で回転させることができる。このため、表示素子を駆動させるための駆動機構を設ける必要がなく、虚像表示装置を簡易に構成することができるので、虚像表示装置を小型化でき、かつ安価で製造することができる。
【0011】
本発明の虚像表示装置は、前記回転機構による前記表示素子の回転角度を検出する回転角度検出手段を備え、前記表示制御手段は、前記回転角度検出手段により検出された前記表示素子の回転角度に応じて、前記画像光による表示の縦横比を変更する縦横比変更部を備えていることが好ましい。
本発明では、表示制御手段が、表示素子の回転角度に応じて画像光による表示の縦横比を変更する縦横比変更部を備えているため、表示素子が縦向きおよび横向きのいずれの回転位置にあるかにかかわらず、表示素子の向きに合わせた縦横比で画像を表示させることができる。
【0012】
本発明の虚像表示装置において、前記回転機構は、前記表示素子を縦向きおよび横向きの各回転位置で固定可能に構成されていることが好ましい。
本発明では、回転機構が、表示素子を縦向きおよび横向きの各回転位置で固定可能に構成されているため、表示素子が横向きおよび縦向きの回転位置から不必要に回転してしまうことを防止できる。このため、外部からの衝撃等により、画像の表示向きが変化してしまうことを防ぐことができる。
【0013】
本発明の虚像表示装置において、前記回転機構は、前記表示素子をその中心が前記投射レンズの光軸の延長線上に位置するように支持し、かつ前記表示素子を前記延長線まわりに回転可能に支持することが好ましい。
本発明では、回転機構は、表示素子の中心と表示素子の回転中心とが投射レンズの光軸の延長線上に位置するように表示素子を支持するので、回転機構により表示素子が導光部に対して回転した場合でも、表示素子からの画像光を投射レンズで平行に投射することができる。このため、表示素子が回転した場合でも、良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態における虚像表示装置の外観を示す斜視図。
【図2】虚像表示装置の構成を示すブロック図。
【図3】虚像表示装置の画像形成装置の構成を示す分解斜視図。
【図4】虚像表示装置の使用状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
〔1.虚像表示装置の構成〕
図1は、虚像表示装置1の外観を示す斜視図である。
なお、図1では、説明の便宜上、後述する投射レンズ71の光軸Ax(図3および図4)に平行となる軸をZ軸とし、Z軸に直交する水平軸をX軸、Z軸に直交する鉛直軸をY軸とする。以降の図も同様である。さらに、Z軸において、観察者側を+Z軸側、観察者から離間する側を−Z軸側とする。
【0016】
虚像表示装置1は、図1に示すように、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、当該虚像表示装置1を装着した観察者に対して虚像による画像光を認識させる。また、本実施形態の虚像表示装置1は、外界像をシースルーで観察させることができるシースルー型の虚像表示装置で構成されている。
この虚像表示装置1は、回転角度検出手段11(図2)と、画像形成装置2と、導光部としての導光板3と、導光板3を保持するリム4と、テンプル5とを備える。
【0017】
なお、画像形成装置2、導光板3、及びテンプル5は、図1に示すように、虚像表示装置1を装着する観察者の左目及び右目にそれぞれ対応して一対設けられ、YZ平面を基準として対称(左右対称)となるように配設されている。
一対の画像形成装置2、一対の導光板3、及び一対のテンプル5については、左右で同一の構成を有しているため、以下では、観察者の左目に対応する側のみを説明する。
【0018】
〔2.画像形成装置の構成〕
図2は、画像形成装置2を含む虚像表示装置1の構成を示すブロック図である。
図3は、画像形成装置2の構成を示す分解斜視図である。
図4は、虚像表示装置1の使用状態を示す図である。
画像形成装置2は、画像光を形成して投射する装置であり、図2から図4に示すように、表示素子6と、投射光学装置7と、表示制御手段としての回路基板8と、回転機構9と、筐体10とを備える。
表示素子6は、入射した光を変調して画像光を形成する透過型の液晶表示デバイス61と、液晶表示デバイス61の光入射側に取り付けられ、液晶表示デバイス61に対して光を出射するLED(Light Emitting Diode)等のバックライト62とを備える。
投射光学装置7は、表示素子6から出射された画像光を平行光として投射する投射レンズ71と、投射レンズ71を内部に収納する鏡筒72とを備える。この投射光学装置7は、リム4に固定されており、投射レンズ71は、鏡筒72およびリム4を介して導光板3に固定されている。これにより、投射レンズ71は、導光板3(図1および図4)に対して位置ずれしないように構成されている。
【0019】
回路基板8は、CPU(Central Processing Unit)やIC(Integrated Circuit)チップ等の半導体装置が実装されて構成され、表示素子6による表示を制御する。この回路基板8は、入力した画像信号に基づいて、液晶表示デバイス61を駆動し、画像信号に基づく画像光を液晶表示デバイス61に形成させる。回路基板8には、後述する回転機構9による表示素子6の回転角度を検出する回転角度検出手段11(図2)が接続されている。このような回転角度検出手段11としては、電磁気、抵抗変化、光等を用いて角度検出するものを採用することができる。
【0020】
ところで、入力した画像信号により規定される画像は、縦表示画像の場合と横表示画像の場合とがある。このため、例えば、画像信号により規定される画像が横表示画像である場合、画像を縦長に表示させようとして、表示素子6を回転させて縦向きにしただけでは、画像が回転するだけで縦長には表示されない。これに関し、表示素子6の縦横の向きがかわっても、画像が水平に表示されるよう画像表示を制御することが考えられるが、この場合でも画像の縦横比はかわらないため、画像を縦長に表示させることができない。
【0021】
これに対し、回路基板8は、図2に示すように、画像判定部81と、縦横比変更部82とを備えている。
画像判定部81は、入力した画像信号に基づいて、当該画像信号により規定される画像が縦表示および横表示のいずれの画像であるかを判定する。例えば、画像判定部81は、入力した画像信号に縦表示画像である旨の信号が含まれている場合は縦表示画像であると判定し、そうでない場合は横表示画像であると判定する。
【0022】
縦横比変更部82は、回転角度検出手段11により検出された表示素子6の回転角度に応じて、画像光により表示される画像の縦横比を変更する。また、縦横比変更部82は、表示素子6の縦横の向きがかわった場合でも、例えば、画像が90°回転したりしないよう、画像を水平に表示させる。つまり、縦横比変更部82は、画像判定部81により判定された画像の縦横の向きと、表示素子6の縦横の向きとが異なる場合、画像の縦横比を変更した上で、画像を水平に表示させる。
【0023】
このような構成により、回路基板8は、表示素子6が縦向きおよび横向きのいずれの状態にあるかに関わらず、表示素子6の回転状態に合わせた縦横比で画像が表示されるような画像光を液晶表示デバイス61に形成させる。そして、回路基板8は、表示素子6に取り付けられる。
【0024】
また、回路基板8には、図示を省略するが、回路基板8と液晶表示デバイス61とを接続する配線、回路基板8とバックライト62とを接続する配線、および画像信号を入力するための図示しない信号線等が接続されている。ここで、回路基板8による表示素子6の駆動が複雑であることから、回路基板8と表示素子6との間には、より多くの駆動信号を送信する必要がある。このため、回路基板8と表示素子6との間の配線の本数(本実施形態では41本)は、画像信号入力用の信号線の本数(本実施形態では20本)よりも多くなっている。
【0025】
回転機構9は、投射レンズ71に対して表示素子6を回転可能に支持する。この回転機構9は、筐体10に回転可能に支持されて表示素子6を保持する保持部91と、保持部91とともに回転可能に設けられた操作部材としての操作ダイアル92とを備えている。保持部91と操作ダイアル92とは、互いに回転軸93で接続されており、この回転軸93が筐体10に回転可能に支持されている。これにより、操作ダイアル92は、テンプル5の延設方向と直交する面内で表示素子6とともに回転可能にとなっている。
そして、回転機構9では、操作ダイアル92を手動で回転させることにより、保持部91で支持された表示素子6を回転させることができる。
【0026】
ここで、回転機構9では、表示素子6の中心位置と回転軸93の軸心とが一致し、かつ表示素子6および回転軸93が投射レンズ71の光軸Axの延長線上に位置している。すなわち、回転機構9は、表示素子6をその中心が投射レンズ71の光軸Axの延長線上に位置するように支持し、かつ表示素子6を当該延長線まわりに回転可能に支持している。このため、回転機構9により表示素子6が導光板3に対して回転した場合でも、表示素子6からの画像光を投射レンズ71で平行光として投射することができる。
さらに、回転機構9は、表示素子6を縦向きおよび横向きの各回転位置で固定可能に構成されている。すなわち、回転機構9は、表示素子6を横向きの回転位置と、当該横向きの回転位置を基準として左右90°回転させた縦向きの回転位置とで固定することができる。
【0027】
筐体10は、表示素子6と、回路基板8と、回転機構9の保持部91とを収容する。この筐体10は、有底筒状に形成され、開口部側が投射光学装置7の鏡筒72に固定されている。
【0028】
〔3.導光板の構成〕
導光板3は、光透過性を有する樹脂材料等から構成され、画像形成装置2から投射された画像光を内部に取り込んだ後、外部の所定位置(観察者の左目または右目)に導く。この導光板3は、図4に示すように、Y軸に沿う方向から見た場合に略等脚台形状に形成されている。そして、導光板3には、光入射面31と、第1反射面32と、第1全反射面33と、第2全反射面34と、第2反射面35と、光出射面36とが形成されている。
【0029】
第1反射面32は、光入射面31に対向し、XY平面に対して傾斜する平坦状の斜面にアルミ蒸着等の成膜を施すことにより形成され、光入射面31を介して導光板3内部に取り込まれた画像光を第1全反射面33に向けて反射させる。
【0030】
第1全反射面33は、光入射面31を延長させた(XY平面に平行となる(光軸Axに直交する))平面で構成され、+Z軸側に位置する。
第2全反射面34は、第1全反射面33に平行となる平坦状に形成され、−Z軸側に位置する。
そして、第1反射面32にて反射された画像光は、第1,第2全反射面33,34での全反射により、光入射面31および第1反射面32から離間する方向(他方の導光板3に近接する側)に導かれる。
【0031】
なお、第1,第2全反射面33,34としては、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により画像光を全反射させて導くものに限らず、第1,第2全反射面33,34の全体または一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、第1,第2全反射面33,34の全体または一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射させる場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって第1,第2全反射面33,34の全体または一部がコートされていてもよい。
【0032】
第2反射面35は、光出射面36に対向し、XY平面に対して傾斜する平坦状に形成され、第1,第2全反射面33,34にて導かれた画像光を反射により光出射面36から外部の所定位置(観察者の左目または右目)に導く。この第2反射面35は、ハーフミラー等で構成され、画像光を反射するとともに、外界像も透過可能に構成されている。
なお、第1,第2全反射面33,34にて導かれた画像光を外部の所定位置に導く機能を有していれば、ハーフミラー等の第2反射面35に限らず、偏光ビームスプリッターや、ホログラム回折格子等を採用しても構わない。
【0033】
〔4.テンプルの構成〕
テンプル5は、図4に示すように、内部が中空となっており、当該中空部分に画像形成装置2が収容されている。このテンプル5において、操作ダイアル92が配置される箇所には、テンプル5の延設方向と直交する方向に長い開口51(図1)が設けられ、この開口51から操作ダイアル92が外部に突出している。本実施形態では、導光板3側からテンプル5の先端側に向けて、投射光学装置7、回路基板8が設けられた表示素子6、及び回転機構9が、テンプル5内に順に並んで配置されている。
そして、テンプル5は、虚像表示装置1が観察者に装着された際に、観察者の耳に係止される。
【0034】
上述した実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、虚像表示装置1は、投射レンズ71が導光板3に対して固定され、表示素子6が回転機構9により回転可能に構成されている。
このことにより、投射レンズ71や導光板3を回転させる必要がないので、虚像表示装置1の回転部分の重量を低減することができる。このため、観察者の負担感を低減することができるので、観察者の使用感を向上させることができる。
また、投射レンズ71が導光板3に対して相対的に固定されているため、投射レンズ71と導光板3とが互いに位置ずれを起こすことがなく、良好な画像が得られる。
【0035】
本実施形態では、回路基板8と表示素子6との間の信号線の本数は、画像信号入力用の信号線の本数より多くなっているが、回路基板8は、回路基板8に設けられた表示素子6とともに回転することになるため、回路基板8と表示素子6との間の信号線を回転させる必要がない。このため、信号線にかかる負担を軽減することができる。
【0036】
本実施形態では、操作ダイアル92の操作力は、テンプル5を介して観察者の側頭部で受けることができるため、操作時の虚像表示装置1の位置ずれを防止することができ、観察者の使用感をさらに向上させることができる。
【0037】
また、操作ダイアル92は、表示素子6とともに回転可能に設けられているので、操作ダイアル92を回転させるだけで、表示素子6を回転させることができ、表示素子6を手動で回転させることができる。このため、表示素子6を駆動させるための駆動機構を設ける必要がなく、虚像表示装置1を簡易に構成することができるので、虚像表示装置1を小型化でき、かつ安価で製造することができる。
【0038】
本実施形態では、表示素子6は、テンプル5に設けられている。すなわち、観察者が虚像表示装置1を装着した場合、表示素子6は、観察者の側頭部に位置することになる。
このことにより、虚像表示装置1の重心が後ろ側に移動し、観察者の頭部側に位置することになるため、観察者の首への負担感を軽減することができる。
また、操作ダイアル92は、テンプル5の延設方向と直交する面内で回転可能に設けられている。このため、操作ダイアル92の操作力は、虚像表示装置1を装着した状態で上下方向に作用するので、虚像表示装置1の水平方向の位置ずれを確実に防止することができ、使用感を一層向上させることができる。
【0039】
本実施形態では、回路基板8が、画像光による表示の縦横比を変更する縦横比変更部82を備えているため、表示素子6が縦向きおよび横向きのいずれの回転位置にあるかにかかわらず、表示素子6の向きに合わせた縦横比で画像を表示させることができる。
【0040】
本実施形態では、回転機構9が、表示素子6を縦向きおよび横向きの各回転位置で固定可能に構成されているため、表示素子6が横向きおよび縦向きの回転位置から不必要に回転してしまうことを防止できる。このため、外部からの衝撃等により、画像の表示向きが変化してしまうことを防ぐことができる。
【0041】
本実施形態では、回転機構9は、表示素子6の中心と表示素子6の回転中心とが投射レンズ71の光軸Axの延長線上に位置するように表示素子6を支持するので、回転機構9により表示素子6が導光板3に対して回転した場合でも、表示素子6からの画像光を投射レンズ71で平行に投射することができる。このため、表示素子6が回転した場合でも、良好な画像を得ることができる。
【0042】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、虚像表示装置1は、画像形成装置2及び導光板3が観察者の両目に対応させてそれぞれ一対設けられていたが、これに限らず、一対の画像形成装置2のうち一方の画像形成装置2を省略し、画像を片眼視する構成としても構わない。
前記実施形態では、虚像表示装置1は、透過型の液晶表示デバイス61を備えた表示素子6を採用していたが、これに限らず、その他の構成、例えば、反射型の液晶表示デバイスや、デジタル・マイクロミラー・デバイス等を備えた表示素子を採用しても構わない。また、有機ELデバイス等の自己発光型の表示素子を採用してもよい。
【0043】
前記実施形態では、虚像表示装置1は、表示素子6から出射された画像光を導光板3を介して観察者に認識させる虚像表示型であったが、これに限らず、表示素子6から出射された画像光を観察者に直接認識させる直接表示型としてもよい。また、導光部としては、導光板3に限らず、ミラー等の他の構成を採用してもよい。
【0044】
前記実施形態では、回転機構9は、表示素子6を手動により回転可能に構成されていたが、これに限らず、表示素子6を自動回転可能に回転機構9を構成してもよい。例えば、回転機構9に保持部91を回転駆動するモーターを設けるとともに、テンプル5にボタンスイッチ等の操作部材を設け、当該操作部材が操作されたときにモーターにより保持部91を回転させることで、表示素子6を自動回転させるように構成してもよい。このことにより、操作部材を操作するだけで、自動的に表示素子6を回転させることができるので、観察者の操作負担を軽減することができ、使用感をさらに向上させることができる。
【0045】
前記実施形態では、回路基板8は、表示素子6の表示を制御する表示制御手段として表示素子6に取り付けられていたが、これに限らず、表示素子6が内部に表示制御手段を備えた構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイ等の虚像表示装置に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・虚像表示装置、3・・・導光部(導光板)、5・・・テンプル、6・・・表示素子、8・・・回路基板(表示制御手段)、11・・・回転角度検出手段、71・・・投射レンズ、82・・・縦横比変更部、9・・・回転機構、92・・・操作ダイアル(操作部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を出射する表示素子と、
前記表示素子からの画像光を投射する投射レンズと、
前記投射レンズからの画像光を所定位置に導く導光部と、
前記投射レンズに対して前記表示素子を回転可能に支持する回転機構とを備えている
ことを特徴とする虚像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の虚像表示装置において、
前記表示素子には、当該表示素子による表示を制御する表示制御手段が設けられている
ことを特徴とする虚像表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の虚像表示装置において、
前記導光部から延設されたテンプルを備え、
前記回転機構は、前記表示素子を回転操作するための操作部材を備え、
前記操作部材は、前記テンプルに設けられている
ことを特徴とする虚像表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の虚像表示装置において、
前記操作部材は、前記表示素子とともに回転可能に設けられている
ことを特徴とする虚像表示装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の虚像表示装置において、
前記回転機構による前記表示素子の回転角度を検出する回転角度検出手段を備え、
前記表示制御手段は、前記回転角度検出手段により検出された前記表示素子の回転角度に応じて、前記画像光による表示の縦横比を変更する縦横比変更部を備えている
ことを特徴とする虚像表示装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の虚像表示装置において、
前記回転機構は、前記表示素子を縦向きおよび横向きの各回転位置で固定可能に構成されている
ことを特徴とする虚像表示装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の虚像表示装置において、
前記回転機構は、前記表示素子をその中心が前記投射レンズの光軸の延長線上に位置するように支持し、かつ前記表示素子を前記延長線まわりに回転可能に支持する
ことを特徴とする虚像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−73188(P2013−73188A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214099(P2011−214099)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】