説明

蛇口用管継手

【課題】アダプタの連結パイプに極めて簡単な構成で弁部材を組み込むことで水漏れを防止し、かつ、連結パイプからの弁部材の脱落を防止する。
【解決手段】蛇口用管継手10は、蛇口T側に設けられるアダプタ20の連結パイプ21に、給水ホースH側のカプラー30がワンタッチで脱着可能に接続される。連結パイプ21にはパイプ孔の水路を開閉可能な弁部材40が設けられる。弁部材40の弁本体41は、連結パイプ21のパイプ孔に当該パイプ孔よりも長い寸法をもって通される軸部と、この軸部のカプラー30側の端部にパイプ孔よりも大きい外径で形成される抜止め部と、軸部のアダプタ20側の端部にパイプ孔よりも小さい外径で形成される環状溝部とからなる。Oリング42は、弁本体41の環状溝部にパイプ孔よりも大きい外径をもって嵌合し、連結パイプ21の入口周端に押し付けられてパイプ孔の水路を封鎖する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇口用管継手に関するもので、詳しくは洗濯機等の給水ホースを蛇口に接続するためのワンタッチ式の管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、洗濯機の給水ホースを蛇口に接続するためにワンタッチ式の管継手が用いられている。この種の管継手は、蛇口側に設けられるアダプタと、給水ホース側に設けられるカプラーとを組み合せてなる。アダプタの先端軸方向には連結パイプが付いており、この連結パイプにカプラーがワンタッチで脱着可能になっている。
【0003】
通常、カプラーには、連結パイプの外溝に球体等を嵌め込むロック機構が設けられる。アダプタにカプラーを接続するときには、カプラーのロック機構を解除したまま連結パイプにカプラーを押し込み、両者の嵌合状態をロック機構でロックする。逆にアダプタからカプラーを取り外すときには、ロック機構を解除しつつ、連結パイプからカプラーを引き抜く。
このようにアダプタとカプラーとの脱着をロック機構を用いてワンタッチで行うことで給水ホースの接続の信頼性が高まり、修理や交換といったメンテナンスの作業が容易になる。
なお、蛇口用管継手に関する先行技術としては、下記特許文献1〜3が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3270690号公報
【特許文献2】実用新案登録第3035686号公報
【特許文献3】特開2001−263568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したような従来の一般的な蛇口用管継手は、給水ホースの使用時にアダプタからカプラーが外れると、蛇口の水が外に溢れ出す。このため、洗面所やベランダなどの洗濯機の設置場所で水漏れが起こりやすくなっている。
【0006】
これに対し、特許文献1〜3に開示されるように、アダプタの連結パイプに弁部材を組み込むことにより、アダプタからカプラーが外れたときの水漏れを防止する管継手が提案されている。
【0007】
例えば特許文献1では、ホース継手接続部4(連結パイプ)に、栓部8、棒体9および筒状体31からなる弁部材が設けられ(公報図2参照)、栓部8の上方には、弁部材を付勢するスプリング40が組み込まれている(公報図4参照)。ホース継手接続部4(連結パイプ)にホース継手20(カプラー)を接続すると(公報図3参照)、弁部材がスプリング40に反して上方へ押し込まれてホース継手接続部4(連結パイプ)の水路が開く。一方、ホース継手接続部4(連結パイプ)からホース継手20(カプラー)が外れると、スプリング40の付勢力で弁部材が下方に移動し、ホース継手接続部4(連結パイプ)の水路を閉じる。
【0008】
また、特許文献2では、雄型接続部材2(アダプタ)の小径部2c(連結パイプ)に、可動体7、閉鎖部材8およびガスケット10からなる弁部材が設けられる(公報図1参照)。雄型接続部材2(アダプタ)に雌型接続部材3(カプラー)が接続されると、弁部材が雌型接続部材3(カプラー)で押し上げられて小径部2c(連結パイプ)の水路を開き、雄型接続部材2(アダプタ)から雌型接続部材3(カプラー)が外れると、弁部材が下降して水路を閉じる。
【0009】
また、特許文献3では、本体部材3(アダプタ)の通路31(連結パイプ)に、弁体51と弁軸52からなる弁部材5が設けられる(公報図1参照)。通路31(連結パイプ)の入口周端には、弁体51をシールするためのシールワッシャ38が組み込まれる。本体部材3(アダプタ)に連結部材1(カプラー)を接続すると、弁部材51が上方へ押し上げられて通路31(連結パイプ)を開き、本体部材3(アダプタ)から連結部材1(カプラー)が外れると、弁部材51が下降して通路31を閉じる。
【0010】
ところが、このような従来の水漏れ防止機能付きの管継手によっても、次のような問題がある。すなわち、
(1)特許文献1および2に示すように、スプリングや閉鎖部材等の部品を組み合わせて弁部材を構成する管継手では、部品点数が多くなるため、製品や金型などの製造コストが嵩む上、弁部材の組み付け作業が煩雑になる。
(2)また、特許文献3に示すように、連結パイプに単一品としての弁部材を挿入する構成では、部品点数は少なくなるが、蛇口からアダプタが外れたときに、連結パイプから弁部材が脱落てしまうため、弁部材の紛失や破損のおそれがある。
【0011】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、アダプタの連結パイプに極めて簡単な構成で弁部材を組み込むことで水漏れを防止し、かつ、連結パイプからの弁部材の脱落を防止するようにした水漏れ防止機能付きの蛇口用継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[第1発明]
上記課題を解決するための第1発明の蛇口用管継手は、
蛇口側に設けられるアダプタの連結パイプに、洗濯機等の給水ホース側に設けられるカプラーをワンタッチで脱着可能に接続するとともに、前記連結パイプには、パイプ孔の水路を開閉可能な弁部材を設けるようにした蛇口用管継手において、
前記弁部材は、
前記連結パイプのパイプ孔に当該パイプ孔よりも長い寸法をもって通される軸部と、この軸部のカプラー側の端部に前記パイプ孔よりも大きい外径で形成される抜止め部と、および前記軸部のアダプタ側の端部に前記パイプ孔よりも小さい外径で形成される環状溝部とからなる弁本体と、
前記弁本体の環状溝部に前記パイプ孔よりも大きい外径をもって嵌合し、前記連結パイプの入口周端に押し付けられて前記パイプ孔の水路を封鎖する弾性材からなるOリングとを備える構成とした。
【0013】
第1発明の構成によると、アダプタの連結パイプ内で弁部材が抜止め部とOリングとの間のストロークで軸方向に往復移動する。アダプタにカプラーを接続すると、弁部材がカプラーに押し上げられてOリングが連結パイプの入口周端から離れて水路を開く。一方、アダプタからカプラーが外れると、弁部材が水圧で下方に移動してOリングが連結パイプの入口周端に押し付けられて水路を閉じる。これにより、アダプタからの水漏れが防止される。
【0014】
第1発明の構成によれば、弁部材が弁本体とOリングの2個の部品のみからなるため、製造コストを抑えることができ、連結パイプへの弁部材を組付けるときの作業性を良好にすることができる。
具体的には、弁本体からOリングを外した状態で、弁本体の環状溝部を連結パイプの下端の出口側(下流側)から上方に通し、弁本体の抜止め部と環状溝部をそれぞれ連結パイプの両端に露出させた状態とする。このような状態で、弁本体の先端にOリングを拡げて押し込み、環状溝部に嵌め込む。つまり、連結パイプへの弁本体の挿入と、環状溝部へのOリングの取付との2回の工程だけで極めて簡単に連結パイプに弁部材を組み付けることができる。
【0015】
また、連結パイプに弁部材を一旦組み付けてしまえば、弁本体の抜止め部とOリングとによって連結パイプからの弁部材の脱落が防止される。すなわち、本発明では、連結パイプの出口側(下流側)から弁本体を通して入口側(上流側)でOリングを取り付けることで、Oリングが連結パイプの水路を遮断するシール部材としての役割を果たすとともに、連結パイプからの弁部材の抜け止めの役割をも果たす。この結果、蛇口からアダプタが外れても、弁部材の脱落による紛失や破損の心配がなくなる。
さらに、弁部材を付勢するためのスプリングを組み込んだ従来の管継手では、Oリングがスプリングで常にパイプ壁などに押し付けられた状態にあるため、製造工場や販売店に管継手を長期間、未使用のまま置いておくと、スプリングの押圧力でOリングが変形することがあるが、本発明の構成では、このようなスプリングが不要となるため、上記のような問題を回避することができる。管継手の使用開始後も同様にスプリングによるOリングの変形の問題は生じない。
【0016】
第1発明の構成において、Oリングは、そのパッキン縦断面が円形であることが望ましい。このような形状によれば、Oリングの捩れや方向性を気にする必要がなくなるため、組付けミスや不良が生じにくくなり、組み付け時間の短縮を図ることができる。また、Oリングの外周面が曲面になるため、連結パイプの入口周端の内縁に強く押し当てられ、止水効果の信頼性も高くなる。
【0017】
また、第1発明の構成において、環状溝部が溝を挟んで同一径である場合に、パイプ孔の入口径と環状溝部の外径との差は、0.3mm以下であることが望ましい。両者の間に0.3mmを超える隙間が生じていると、弁部材がパイプ孔から押し出されやすくなるためである。発明者らの実験によれば、両者の間に0.3mmを超える隙間を設けると、0.3〜0.4MPa程度の圧力でOリングが隙間に入り込んで弁部材がパイプ孔から押し出されて抜けた。両者の間の隙間が0.3mm以下では、上記のような弁部材の抜けは起こらなかった。
【0018】
さらに、連結パイプの入口周端および環状溝部の溝上端のうち少なくとも一方には、Oリングを曲面で加圧するためのアール形状(面取り)を周方向に連ねるとよい(図15参照)。このような構成によれば、連結パイプの入口周端にOリングを押し付けるとき、入口周端と環状溝部との間の剪断力によってOリングが切断されにくくなる。
【0019】
さらには、連結パイプの入口周端には、Oリングを加圧するためのテーパ面を周方向に連ねてもよい(図16参照)。このような構成によれば、連結パイプの入口周端にOリングを押し付ける際にOリングに剪断力がかかりにくくなる。
【0020】
[第2発明]
第2発明による蛇口用継手は、第1発明の構成を備えるものであって、前記弁本体の軸部に、前記連結パイプのパイプ孔よりも僅かに小さい外径で前記連結パイプの内周面に摺接可能な案内壁が設けられる構成とした。
【0021】
第1発明の構成において、連結パイプ内で弁部材が往復移動する場合、パイプ軸に対して弁部材の軸が大きく傾いていると、Oリングが連結パイプの入口周端に傾いた状態で押し付けられるおそれがある。このような場合、連結パイプの入口周端にOリングが均一に押し付けられず、押し付けのあまい部分では漏水や止水のタイミングが遅れることも起こりうる。
【0022】
第2発明の構成によれば、弁本体の軸部に連結パイプの入口付近の内周面に摺接可能な案内壁が設けられるため、弁部材の上下位置で案内壁によって弁部材と連結パイプの軸が合致するように強制される。これにより、弁部材のOリングが連結パイプの入口周端に正確かつ均等に位置決めされ、水漏れ防止の信頼性を高めることができる。
【0023】
[第3発明]
第3発明による蛇口用継手は、第1または2発明の構成を備えるものであって、前記弁本体の軸部および抜止め部が、前記連結パイプの中心軸から径外方向に向けて放射状に延びる板体をなす構成とした。
【0024】
第1発明の構成において、連結パイプと弁部材との間に十分な水路を確保するためには、連結パイプ内における弁部材の断面積を小さくすることが好ましいが、弁部材の断面積が小さくなると逆に弁部材の構造的な強度が不足しやすくなる。
【0025】
第3発明の構成によれば、弁部材が連結パイプの中心軸から径外方向に向けて放射状に延びる板体をなすため、これらの板体の間に軸方向に延びる水路を確保しつつ、弁部材の構造的な強度を良好に保つことができる。
なお、放射状の板体は、弁部材の周方向に等間隔に配置することが望ましく、少なくとも2枚、望ましくは3枚以上とするとよい。特に、弁本体の軸部から抜止め部にかけて横断面が十文字状になるように4枚の板体を設けると、連結パイプの水路面積と、弁部材の強度とのバランスを良好に保つことができる。
【0026】
[第1〜3発明]
本発明の蛇口用管継手は、洗濯機の給水ホースを蛇口に連結する継手として適用することができるが、これに限定されず、給水ホースを用いる他の製品(食器洗い機等)の継手として適用してもよい。
【0027】
本発明(第1〜3発明)は、単独で適用してもよいし、これらの発明を必要に応じて組み合わせて適用してもよい。また、本発明(第1〜3発明)に本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
本実施形態による蛇口用管継手10を図1〜図5に示した。図1は同管継手を示す断面図、図2は同管継手のカプラーを示す断面図、図3は同管継手の弁部材40を示す斜視図、図4および図5はそれぞれ同管継手の弁部材40の平面図および底面図である。
【0029】
図1に示すように、管継手10は、蛇口T側に設けられるアダプタ20と、洗濯機等の給水ホースH側に設けられるカプラー30とを備えている。アダプタ20の先端(下端)軸方向に連結パイプ21が延び、この連結パイプ21にカプラー30が脱着可能に接続されている。
【0030】
アダプタ20は、連結パイプ21の後端(上端)側に有底筒部22を有する。この有底筒部22は、連結パイプ21よりも大きな内径で同軸上に連通している。有底筒部22の内周には、後述のコネクタ24に締め付けるための雌ネジ22aが切られている。有底筒部22の底部には、連結パイプ21の入口を囲むように環状隔壁23が形成される。この環状隔壁23は、後述のパッキン26に密着して蛇口Tからの水路の水漏れを防止する。
【0031】
蛇口Tの先端には、アダプタ20を蛇口Tに固定するための筒状のコネクタ24が取り付けられる。コネクタ24の上端部には、4本のビス25がビスガイド27を通して径方向に貫通しており、これらのビス25を蛇口Tの側面に締め付けることで、コネクタ24が蛇口Tに固定される。
コネクタ24の外周には、アダプタ20(有底筒部22)を固定するための雄ネジ24aが形成される。コネクタ24の内部には、ゴム等からなる筒状のパッキン26が組み込まれる。コネクタ24の雄ネジ24aにアダプタ20の雌ネジ22aを締め付けると、パッキン26に環状隔壁23が押し付けられてパッキン26の内側に蛇口Tからの水路が形成されることになる。
【0032】
図2に示すように、カプラー30は、アダプタ20の連結パイプ21に嵌まる誘導筒31を有しており、この誘導筒31の同軸上に段差部31aを介してホース接続パイプ32が連通している。ホース接続パイプ32に給水ホースHの先端が固定される。誘導筒31の内側には連結パイプ21の外周の隙間をシールする環状のパッキン39が設けられている。
【0033】
誘導筒31の外側には、アダプタ20にカプラー30をロックするためのスライド筒33が設けられる。スライド筒33の内側にスプリング34が組み込まれており、このスプリング34によってスライド筒33が誘導筒31から図2で上方に押し込まれる方向に付勢されている。
誘導筒31の先端にはリングストッパ35が取り付けられる。スプリング34に押されたスライド筒33は、リングストッパ35に当たって誘導筒31の外側に飛び出さないように保持される。
【0034】
誘導筒31の先端部には、径方向の貫通孔に球体36が組み込まれる。これらの球体36は、周方向に等間隔で4個あり、図2(A)の状態でスライド筒33の内周壁に押されて連結パイプ21の外側の環状溝21a(図6参照)に嵌る。これにより、アダプタ20とカプラー30との連結状態をロックする。
【0035】
スライド筒33によるロック状態を解除する場合には、図2(B)に示すように、誘導筒31を定位置に保ち、スライド筒33をスプリング34に反して下方に押し下げる。すると、球体36が開放されて環状溝21aから誘導筒31の外側へ移動可能となり、ロックが解除される。逆に、図2(B)の状態からスプリング34を開放すると、スライド筒33が元の位置に戻って球体36がロック位置に戻る(図2(A)参照)。
【0036】
アダプタ20とカプラー30との脱着は、上記のようにカプラー30のロック機構を解除した状態で行う。このようなロック機構によってアダプタ20とカプラー30との取付けおよび取外しの作業がワンタッチで行える。
【0037】
図1に示すように、カプラー30の側方には、スライド筒33に一体形成された係止アーム37が延びている。この係止アーム37の先端にはフック38が形成され、このフック38がアダプタ20のフランジ28に係止される。連結パイプ21と球体36とのロックが外れても、フック38とフランジ28との係合によって、アダプタ20からカプラー30が簡単には外れることはない。なお、アダプタ20からカプラー30を外すときには、係止アーム37を図示の状態から外側に拡げることでフランジ28からフック38が外れるようになっている。
【0038】
このようなアダプタ20とカプラー30とによって、蛇口Tと給水ホースHと連結をワンタッチで確実に行うことができるが、給水ホースHの使用時に誤操作などでアダプタ20からカプラー30が外れると、蛇口Tの水がアダプタ20から外に溢れてしまう。そこで、本実施形態においては、アダプタ20の連結パイプ21に水漏れを防止するための弁部材40が組み込んである。
【0039】
図3示すように、弁部材40は、弁本体41とOリング42とからなる。連結パイプ21のパイプ孔に弁本体41が上下動可能に挿入される(図6参照)。
弁本体41は、合成樹脂により一体成形されるもので、軸部44と抜止め部45と環状溝部46とからなる。図6に示すように、軸部44は、連結パイプ21のパイプ孔の長さよりも長い寸法でパイプ孔に通される。軸部44の下端側(カプラー30側)には、パイプ孔の内径L0よりも大きい外径で抜止め部45が形成され、軸部44の上端側(アダプタ20側)には、パイプ孔の内径L0よりも小さい外径L2で環状溝部46が形成される。これらの軸部44と抜止め部45と環状溝部46が同一軸線上に連なっている。
【0040】
Oリング42は、ゴム等の弾性材からなるもので、そのパッキン縦断面はほぼ円形になっている。Oリング42の内径は環状溝部46よりも小さい。Oリング42を拡げて環状溝部46の先端に押し込むと、その環状溝46aにOリング42が嵌ってその弾性力によって溝面に密着する。
Oリング42の外径L3は、上記のように環状溝部46に嵌った状態で連結パイプ21のパイプ孔の内径L0よりも大きい。この結果、Oリング42が連結パイプ21への止水と弁部材40の抜け止めとの二つの役割を果たすことになる。
【0041】
弁本体41の軸部44および抜止め部45は、その中心軸から径外方向に向けて十文字状に延びる板体41aをなしている(図4および図5参照)。板体41aは、ほぼ均一な厚みで軸方向に連なる。連結パイプ21内ではこれらの板体41aの間に水路が形成される。
このように弁本体41の軸部44と抜止め部45の部分を放射状の板体41aとすることで、連結パイプ21の水路を広く確保しつつ、弁部材40の強度を高めることが可能となる。
【0042】
軸部44の図6で上端部および下端部には、案内壁44a,44bが形成される。案内壁44a,44bの外径は、連結パイプ21の内径L0よりも僅かに小さく、これらの周壁面が連結パイプ21の内周面に摺接可能になっている。
案内壁44a,44bは、弁部材40が連結パイプ21の水路を開閉する際に、弁部材40の傾きを軸方向に強制し、連結パイプ21の入口周端21bにOリング42を正確に位置決めする役割を果たす。
【0043】
軸部44のうち案内壁44a,44bに挟まれた中間部は、中心軸側にくびれて連結パイプ21の内周面との間に十分な隙間を保つ。このように軸部44にくびれ部分を設けることで、連結パイプ21内の水路を広く確保することができる。また、弁本体41との連結パイプ21の内周面との接触面積を少なくして弁部材40の上下動に伴う摺動抵抗を低減することが可能になる。
【0044】
抜止め部45の形状については、軸部44から連なる連結パイプ21との接触部分で板面が末広状に傾斜する羽根板となっている。このような形状を採用することにより、弁本体41の成形時の型抜きが行いやすく歩留りのよい高品質な弁部材40を製造することが可能になる。また、弁部材40が水流の抵抗を受けにくくなる。
【0045】
連結パイプ21に弁部材40を組み付ける手順としては、まず図7に示すように、アダプタ20をコネクタ24に取り付ける前の状態で、Oリング42を連結パイプ21の入口周端21bに置き、弁本体41を連結パイプ21の出口側から通す。次いで、連結パイプ21の出口側から連結パイプ21(抜止め部45)を押し上げ、入口側に環状溝部46を突き出させ、同時に環状溝部46の先端でOリング42を押し拡げて環状溝46aに嵌める。その後、アダプタ20にコネクタ24を取り付けることで組み付けが完了する。
【0046】
次に、弁部材40の作用効果を説明する。
図8に示すように、アダプタ20の連結パイプ21にカプラー30を接続すると、誘導筒31の段差部31aが弁部材40の下端に当たって弁部材40を上方に押し上げ、Oリング42を連結パイプ21の入口周端21bから離れた位置に保持する。このとき、連結パイプ21の水路が開いて図8矢印に示すように、アダプタ20側からカプラー30側へ蛇口Tの水が流れる。
【0047】
アダプタ20からカプラー30が外れると、図9に示すように、弁部材40が水圧を受けて下方へ移動し、Oリング42が連結パイプ21の入口周端21bに押し付けられて水路を閉じる。
【0048】
このように本実施形態の管継手10によれば、連結パイプ21に弁部材40を組み込むことで、アダプタ20からカプラー30が外れたときの水漏れを確実に防止することができる。このため、誤操作や災害等でカプラー30が外れても、蛇口Tの周囲が水浸しになることはなく、蛇口Tを開けたままでも安心して給水ホースHを使用することができる。
【0049】
また、本実施形態では、弁部材40が単一の成形品としての弁本体41と1個のパッキンとしてのOリング42との二部品の極めて簡単な構成であるため、金型コストを抑え、連結パイプ21への組み付けが簡単で製品を安価に製造することができる。アダプタ20とカプラー30には弁部材40を組み込むための特別な構造を設ける必要がないため、水漏れ防止機能の付いていない既存の管継手に弁部材40を後付けするといったことも簡単に行うことができる。
【0050】
さらに、連結パイプ21に弁部材40を組み付けた後は、抜止め部45とOリング42との間で弁部材40を抜け止め状態で保持することができる。このため、弁部材40の脱落による破損や紛失といった心配もない。
【0051】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図10および図11に示した。
第2実施形態は、有底筒状の弁部材50を採用したものである。なお、弁部材50以外の構成部分は、実質的に第1実施形態と同一の構成である。
【0052】
図11に示すように、弁部材50は、有底筒状の弁本体51とOリング52とからなる。弁本体51には軸部54、抜止め部55および環状溝部56が形成され、環状溝部56の環状溝56aにOリング52が嵌まる。環状溝部56の上端は筒底になっており、フランジ状の抜止め部55側が筒口になっている。
軸部54と環状溝部56との外径(筒径)は、連結パイプ21の内径よりも小さく、抜止め部55の外径(フランジ径)は、連結パイプ21の内径よりも大きい。Oリング52の外径は、環状溝部56に嵌った状態で連結パイプ21の外径よりも大きく設定される。
【0053】
軸部54の上端付近には、筒側面に通水孔Pが貫通している。蛇口Tからアダプタ20に入った水は、この通水孔Pを通って筒内に入りカプラー30側に送られる。
【0054】
図10に示すように、アダプタ20の連結パイプ21にカプラー30を接続すると、誘導筒31の段差部31aが弁部材50を上方に押し上げ、Oリング52を連結パイプ21の入口周端21bから離れた位置に保持する。これにより、連結パイプ21の水路が開いてアダプタ20側からカプラー30側へ蛇口Tの水が流れる。
アダプタ20からカプラー30が外れると、弁部材50が水圧を受けて下方へ移動し、Oリング52が連結パイプ21の入口周端21bに押し付けられて水路を閉じる。
【0055】
このように第2実施形態の弁部材50によっても、簡単な構成でアダプタ20の水漏れを防止することができる。弁部材50が弁本体51とOリング52のみの極めて簡単な構成であるため、金型コストを抑え、連結パイプ21への組み付けが簡単で製品を安価に製造することができる。
また、連結パイプ21に弁部材50を組み付けた後は、抜止め部55とOリング52との間で弁部材50が抜け止め状態で保持されるため、弁部材50の脱落による破損や紛失といった心配もない。
【0056】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態を図12および図13に示した。
第3実施形態は、連結パイプ21の出口側に弁部材50を下方(閉弁側)へ支持するスプリング60を設けたものである。その他の構成は、実質的に第2実施形態と同一である。
【0057】
図12に示すように、連結パイプ21の内周部にプリング60を出口側から挿入可能なバネ室が設けられる。スプリング60の一端は、バネ室最上端のバネ座61に支持され、他端は弁部材50の抜止め部55に支持される。図12では、スプリング60がバネ座61と抜止め部55との間で圧縮された状態に保たれている。
【0058】
アダプタ20からコネクタ30が外れると、図13に示すように、スプリング60が弁部材50を連結パイプ21の下方に向けて押し戻す。このとき、弁部材50のOリング52が連結パイプ21の入口周端21bに押し付けられて水路を閉じる。
【0059】
第3実施形態の構成によれば、スプリング60により弁部材50が常に止水方向に支持されるため、水圧の如何に関わらずも連結パイプ21の水路を瞬時に閉じることができる。このため、水漏れ防止機能の信頼性をさらに高めることができる。
また、連結パイプ50の出口側にスプリング60を配置するため、コネクタ24の有無や蛇口の形状にかかわらず、スプリング60を簡単に連結パイプ21に組み込んで強制的な止水機能を実現することができる。
さらには、筒形状の弁部材50の内側が水路となるため、水流がスプリング60に直接触れることがない。このため、弁部材50の水路でスプリング60による抵抗なく流れを保てる利点もある。
【0060】
[他の実施形態]
以上、第1〜第3実施形態の管継手10を説明したが、本発明の実施形態はこれらに限定されることなく、種々の変形を伴ってもよい。
例えば前記第1〜第3実施形態では、蛇口Tの先端にビス固定式のコネクタ24を用いてとアダプタ20を固定しているが、このようなコネクタ24は必ずしも必要なく、蛇口Tの先端に直接アダプタ20を固定するようなものであってもよい。
また、カプラー30のロック機構については、球体36によるものに限られず、ロック爪等の構造であってもよい。
【0061】
第1実施形態の弁部材40については、軸部44および抜止め部45の形状を変更してもよい。例えば、軸部44および抜止め部45の断面形状がH形をなして軸方向に板状に延びる形状(図14(A)参照)、軸部44および抜止め部45の断面形状がS形をなして軸方向に板状に延びる形状など挙げられる。
【0062】
また、図15に示すように、連結パイプ21の入口周端21bと環状溝部46の溝上端46bとに、Oリング42を曲面で加圧するためのアール形状(面取り)を周方向に連ねてもよい。このような構成によれば、連結パイプ21の入口周端にOリング42を押し付けるとき、入口周端21bと溝上端46bとの間の剪断力によってOリング42が切断されにくくなる。
【0063】
さらには、図16に示すように、連結パイプ21の入口周端21bに、Oリング42を加圧するためのテーパ面を周方向に連ねてもよい。このような構成によれば、連結パイプ21の入口周端21bにOリング42を押し付ける際に、Oリング42に剪断力がかかりにくくなる。テーパ面の傾斜角としては、図16の水平基準面に対する仰角θが15゜〜45゜の範囲になるように設定するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1実施形態による蛇口用管継手を示す断面図である。
【図2】同管継手のカプラーを示すもので、(A)はロック状態を示す断面図、(B)はロック解除状態を示す断面図である。
【図3】同管継手の弁部材を示す斜視図である。
【図4】同管継手の弁部材を示す平面図である。
【図5】同管継手の弁部材を示す底面図である。
【図6】同管継手の連結パイプおよび弁部材の寸法を説明するための拡大断面図である。
【図7】同管継手の連結パイプと弁部材との組み付け手順を説明するもので、(A)組立前の断面図、(B)は組立後の断面図である。
【図8】同管継手の使用状態を示すもので、弁部材の水路開放状態を示す断面図である。
【図9】同管継手の使用状態を示すもので、弁部材の水路閉鎖状態を示す断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による蛇口用管継手を示す断面図である。
【図11】同管継手の弁部材を示す半断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態による蛇口用管継手を示す断面図である。
【図13】同管継手のアダプタからカプラーが外れた状態を示す断面図である。
【図14】本発明の実施形態の変形例を示すもので、(A)は断面H形状の弁部材の断面図、(B)は断面S形状の弁部材の断面図である。
【図15】本発明の実施形態の変形例を示すもので、連結パイプの入口周端と環状溝部の溝上端とにアール形状(面取り)を設けた例を示す部分拡大図である。
【図16】本発明の実施形態の変形例を示すもので、連結パイプの入口周端にテーパ面を設けた例を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0065】
10 管継手(蛇口用管継手)
20 アダプタ
21 連結パイプ
21b 入口周端
22 有底筒部
23 環状隔壁
26 パッキン
28 フランジ
30 カプラー
31 誘導筒
31a 段差部
32 ホース接続パイプ
33 スライド筒(ロック機構)
34 スプリング(ロック機構)
35 リングストッパ(ロック機構)
36 球体(ロック機構)
37 係止アーム
38 フック
40 弁部材
41 弁本体
41a 板体
42 Oリング
44 軸部
44a,44b 案内壁
45 抜止め部
46 環状溝部
T 蛇口
H 給水ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇口側に設けられるアダプタの連結パイプに、洗濯機等の給水ホース側に設けられるカプラーをワンタッチで脱着可能に接続するとともに、前記連結パイプには、パイプ孔の水路を開閉可能な弁部材を設けるようにした蛇口用管継手において、
前記弁部材は、
前記連結パイプのパイプ孔に当該パイプ孔よりも長い寸法をもって通される軸部と、この軸部のカプラー側の端部に前記パイプ孔よりも大きい外径で形成される抜止め部と、前記軸部のアダプタ側の端部に前記パイプ孔よりも小さい外径で形成される環状溝部とからなる弁本体と、
前記弁本体の環状溝部に前記パイプ孔よりも大きい外径をもって嵌合し、前記連結パイプの入口周端に押し付けられて前記パイプ孔の水路を封鎖する弾性材からなるOリングとを備えたことを特徴とする蛇口用管継手。
【請求項2】
請求項1記載の管継手であって、前記弁本体の軸部に、前記連結パイプのパイプ孔よりも僅かに小さい外径で前記連結パイプの内周面に摺接可能な案内壁が設けられる、蛇口用管継手。
【請求項3】
請求項1または2記載の管継手であって、前記弁本体の軸部および抜止め部が、前記連結パイプの中心軸から径外方向に向けて放射状に延びる板体をなす、蛇口用管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−144785(P2009−144785A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321317(P2007−321317)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(591167669)株式会社三洋化成 (9)
【Fターム(参考)】