説明

蛍光ランプ、光源装置、及び表示装置

【課題】蛍光ランプにおいて、初期色度変化の抑制を図る。
【解決手段】蛍光体粒子層3を構成する青色発光蛍光体に接する雰囲気を、アルゴン(Ar)とネオン(Ne)とを含み、かつ、アルゴン(Ar)のモル分率をAとし、ネオンのモル分率をNとすると、A/(A+N)≧0.04となる雰囲気とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を有する蛍光ランプと、この蛍光ランプを備える光源装置と、この光源装置を備える表示装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイをはじめとする表示装置には、バックライトなどの形で光源装置が組み込まれている。この光源装置を構成する光源として、複数種類の蛍光体を含む蛍光体粒子層を備える蛍光ランプが挙げられる。具体的には、冷陰極管(Cold Cathode Fluorescent Lamp;CCFL)や熱陰極管(Hot Cathode Fluorescent Lamp;HCFL)である(例えば特許文献1参照)。
従来の蛍光体粒子層の構成としては、例えば、複数種類の蛍光体として、青色発光蛍光体であるBaMgAl10O17:Eu(所謂BAM:Eu)と、緑色発光蛍光体であるLaPO4:Ce,Tb(所謂LAP)と、赤色発光蛍光体であるY2O3:Eu(所謂YO)とを含む構成が挙げられる。
なお、各蛍光体の組成式は、母体と発光中心とを示している。例えば、前述したBAM:Euであれば、BaMgAl10O17の部分が母体、Euの部分が発光中心となる。BAM:Euのように表された場合、発光中心の濃度は任意であることを意味する。
【0003】
BAM:Euは、青色発光蛍光体の中でも発光効率が高いために、広く用いられてきた。しかし、近年では、表示装置を構成する部材(カラーフィルタや光学シート等)の性能向上により、表示装置から最終的に出力される光が一定以上の明るさを得やすくなっているため、発光効率を優先して蛍光体を選定する必要性は低くなってきている。
しかし、BAM:Euについては、青色発光蛍光体であるものの、Mnを固溶させたBAM:Eu,Mnが緑色を呈するほか、Mnの固溶がない青色発光においても緑色域の光が多く含まれてしまうことが指摘されている。すなわち、BAM:Euは、青色域の色純度に関して、優れているとは言い難い。
これに対し、 別の青色発光蛍光体として、(Srx,Bay,Ca (1-x-y))5(PO4)3Cl:Eu (ただし0≦x,y≦1かつx+y≦1)、所謂SCAが注目されている。図5に示すように、SCAの発光スペクトル(実線a)は、BAM:Euの発光スペクトル(鎖線b)に比べて、半値幅が狭く急峻なスペクトル形状を有している。すなわち、SCAは、BAM:Euと比べて色純度の高い、良好な青色を呈する。
【0004】
しかしながら、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、蛍光体粒子層にSCAを含む蛍光ランプにおいて、発光色度の経時変化という特異的な問題が発生することを見出した。
発光色度の経時変化に関する検討として、第1のCCFLと第2のCCFLを作製し、各CCFLを備えた表示装置に対して、色度変化の測定を行った。第1のCCFLは、蛍光体として、SCAと、BAM:Eu,Mnと、YVO4:Euとを含む構成とし、第2のCCFLは、蛍光体として、BAM:Euと、BAM:Eu,Mnと、YVO4:Euとを含む構成とした。
これら第1及び第2の各CCFLを、それぞれ32インチの液晶ディスプレイのバックライト(光源装置)に組み込んだ。そして、ディスプレイの電源をONにした後に生じる、各ディスプレイの表面における色度の経時変化を測定した。測定は、ディスプレイ表面における電源ONから3秒後に開始し、測定開始から120秒経過するまでの色度変化(Δx,Δy)を評価した。
得られた評価結果において、第1のCCFLの色度変化は(Δx=+5/1000,Δy=-33/1000)であり、第2のCCFLの色度変化は(Δx=0/1000,Δy=-8/1000)であった。すなわち、青色発光蛍光体としてSCAが用いられた液晶ディスプレイにおける120秒間の色度変化は、青色発光蛍光体としてBAM:Euが用いられた液晶ディスプレイにおけるよりも大きく、特にy値の変化が大きいことが明らかとなった。
【0005】
このように、発光開始直後における蛍光ランプの色度(初期色度)が変化し続けると、この蛍光ランプを光源として備える表示装置においても、出力される映像情報が、その映像情報とは本来無関係な要因によって、常に変質し続けることになる。このような変質は、映像全体を不自然なものにしてしまう。
したがって、表示装置の光源を構成する蛍光ランプの不安定さは、表示装置における映像情報の変質を通して、最終的に視聴する人間にも不快な印象を与えるなど、深刻な影響を生じてしまう。
【特許文献1】特開2005-332625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、青色発光蛍光体としてSCAを含みながらも、色度の経時変化が抑制された蛍光ランプと、この蛍光ランプを備えた光源装置と、この光源装置を備えた表示装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る蛍光ランプは、少なくとも、組成式(Srx,Bay,Ca(1-x-y))5(PO4)3Cl:Eu(ただし、0≦x,y≦1かつx+y≦1)で表記される青色発光蛍光体を有し、上記青色発光蛍光体に接する雰囲気が、アルゴン(Ar)とネオン(Ne)とを含み、上記雰囲気中における、アルゴンのモル分率をAとし、ネオンのモル分率をNとすると、A/(A+N)≧0.04であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る光源装置は、蛍光ランプを備える光源装置であって、上記蛍光ランプが、 少なくとも、組成式(Srx,Bay,Ca(1-x-y))5(PO4)3Cl:Eu(ただし、0≦x,y≦1かつx+y≦1)で表記される青色発光蛍光体を有し、上記青色発光蛍光体に接する雰囲気が、アルゴン(Ar)とネオン(Ne)とを含み、上記雰囲気中における、アルゴンのモル分率をAとし、ネオンのモル分率をNとすると、A/(A+N)≧0.04であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る表示装置は、光源装置を有する表示装置であって、上記光源装置が、蛍光ランプを備え、上記蛍光ランプが、少なくとも、組成式(Srx,Bay,Ca(1-x-y))5(PO4)3Cl:Eu(ただし、0≦x,y≦1かつx+y≦1)で表記される青色発光蛍光体を有し、上記青色発光蛍光体に接する雰囲気が、アルゴン(Ar)とネオン(Ne)とを含み、上記雰囲気中における、アルゴンのモル分率をAとし、ネオンのモル分率をNとすると、A/(A+N)≧0.04であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る蛍光ランプによれば、上記青色発光蛍光体に接する雰囲気が、A/(A+N)≧0.04とされていることから、初期色度変化の抑制が図られる。
【0011】
本発明に係る光源装置によれば、蛍光ランプの、上記青色発光蛍光体に接する雰囲気が、A/(A+N)≧0.04とされていることから、蛍光ランプにおける初期色度変化の抑制によって、安定した色度の光を供給することが可能となる。
【0012】
本発明に係る表示装置によれば、蛍光ランプの、上記青色発光蛍光体に接する雰囲気が、A/(A+N)≧0.04であることから、蛍光ランプにおける初期色度変化の抑制によって、映像情報の変質低減が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
<蛍光ランプの実施の形態>
本発明に係る蛍光ランプの実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る蛍光ランプの、概略構成図である。
本実施形態に係る蛍光ランプ1は、図1に示すように、ガラス管2の内面に、組成式(Srx,Bay,Ca(1-x-y))5(PO4)3Cl:Eu(ただし、0≦x,y≦1かつx+y≦1)で表記される青色発光蛍光体と、緑色発光蛍光体と、赤色発光蛍光体とを含む蛍光体粒子層3が、後述するように塗布形成されている。ガラス管2の開放されている両端からは、電極4が先端に設けられたジュメット線5が挿し込まれている。そして、ジュメット線5とガラス管2との隙間がビードガラス6によって埋め込まれることにより、青色発光蛍光体に接する雰囲気が、ガラス管2と、ジュメット線5と、ビードガラス6とによって囲まれる内部空間に密封される。
【0015】
なお、緑色発光蛍光体としては、様々なものを用いることができるが、一例として、BAM:Eu,Mnを挙げることができる。また、赤色発光蛍光体としては、やはり様々なものを用いることができるが、一例として、YVO4:Euを挙げることができる。また、これらの各色に対応した蛍光体は、各色ごとに2種類以上用いられても良い。
また、この蛍光ランプ1は、電極4の加熱による電子放出(熱電子放射)によって放電がなされる場合には熱陰極管であり、電極4に対する高電圧印加によるガラス管内の電子の高速移動によって放電がなされる場合には冷陰極管となる。
【0016】
本実施形態に係る蛍光ランプ1の内部空間に封入されている雰囲気は、少なくとも、アルゴン(Ar)と、ネオン(Ne)と、水銀(Hg)とを含んでいる。水銀は、電極4における放電によって励起されて紫外光を放射する。この放射された紫外光は、蛍光体粒子層3を構成する各蛍光体に対する励起光となる。
また、後述するように、この雰囲気は、アルゴンとネオンのモル分率について、アルゴンのモル分率をAとし、ネオンのモル分率をNとすると、A/(A+N)≧0.04となる割合で構成されている。青色発光蛍光体に接する雰囲気の、アルゴンとネオンの割合がこのように選定された、本実施形態に係る蛍光ランプ1においては、後述するように、初期色度変化が抑制される。
【0017】
<光源装置、及び表示装置の実施の形態>
本発明に係る光源装置及び表示装置の、実施の形態を説明する。
なお、本実施形態では、蛍光ランプを備える光源装置が、バックライトとして表示装置を構成する場合を例として、説明を行う。
【0018】
図2に、本実施形態に係る光源装置を有する表示装置の概略構成図を示す。
この、本実施形態に係る表示装置11は、光源装置12及び光学装置13を有する。
【0019】
本実施形態において、光源装置12は、液晶装置を有する光学装置13に対する、バックライト装置である。
この光源装置12の、樹脂による導光部16内には、前述した蛍光ランプ1が設けられている。
また、本実施形態において、光源装置12の、光学装置13に対向する最近接部には、拡散シート19が設けられている。この拡散シート19は、青色光源や各蛍光体からの光を、光学装置13側へ面状に均一に導くものである。光源装置12の裏面側には、リフレクタ14が設けられている。また、必要に応じて、リフレクタ14と同様のリフレクタ15が、導光部16の側面にも設けられる。
なお、本実施形態に係る光源装置12において、導光部16を構成する樹脂は、エポキシ、シリコーン、ウレタンのほか、様々な透明樹脂を用いることができる。また、発光体6を構成する青色光源の形状も、サイドエミッタータイプや砲弾タイプなど、様々な種類のものから適宜選択して用いることができる。
【0020】
一方、本実施形態において、光学装置13は、光源装置12からの光に対して変調を施すことにより所定の出力光を出力する液晶装置である。
この光学装置13においては、光源装置12に近い側から、偏向板20と、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)用のガラス基板21及びその表面のドット状電極12と、液晶層23及びその表裏に被着された配向膜24と、電極25と、電極25上の複数のブラックマトリクス26と、このブラックマトリクス26間に設けられる画素に対応した第1(赤色)カラーフィルタ27a,第2(緑色)カラーフィルタ27b,第3カラーフィルタ27cと、ブラックマトリクス26及びカラーフィルタ27a〜27cとは離れて設けられるガラス基板28と、偏向板29とが、この順に配置されている。
ここで、偏向板20及び29は、特定の方向に振動する光を形成するものである。また、TFTガラス基板21とドット電極22及び電極25は、特定の方向に振動している光のみを透過する液晶層23をスイッチングするために設けられるものであり、配向膜24が併せて設けられることにより、液晶層23内の液晶分子の傾きが一定の方向に揃えられる。また、ブラックマトリクス26が設けられていることにより、各色に対応するカラーフィルタ27a〜27cから出力される光のコントラストの向上が図られている。これらのブラックマトリクス26及びカラーフィルタ27a及び27cは、ガラス基板28に取着される。
【0021】
そして、本実施形態に係る表示装置11は、その光源装置12において、蛍光ランプ1の雰囲気が、アルゴンとネオンのモル分率についてA/(A+N)≧0.04となる割合で構成されている。したがって、本実施形態に係る蛍光ランプ1においては、蛍光ランプ1の初期色度変化が抑制され、光源装置12から安定した色度の光が供給されることにより、映像情報の変質低減が図られる。
【0022】
<実施例>
本発明の実施例について説明する。
以下の実施例では、前述した本実施形態に係る蛍光ランプ1に対して行った、特性評価の結果について説明する。
特性評価は、蛍光ランプ1蛍光体粒子層3を構成する青色発光蛍光体の組成比を変化させながら、この青色発光蛍光体に触れる雰囲気について、A/(N+A)を0.03〜0.10の間で変化させ、初期色度変化が許容範囲内であるか否かを、人間の目視による主観評価によって判断した。具体的には、被験者10人に、電源ON時から120秒間の色の変化を見てもらい、気になるか(不快か)の回答を得た。10人中、6人以上から気にならないとの回答が得られたA/(N+A)の比率を、好ましいと判定した。テストに用いた映像は、消費者により近い立場での評価を行うため、一般の地上波のテレビ番組を使用した。
なお、初期色度変化についての判定を、数値による客観評価で行わなかった理由は、ディスプレイの良し悪しが、最終的にはそれを使用する人間の主観次第で決まる場合が多いためである。すなわち、色の経時変化のような繊細な特性については、数値による客観評価と目視による主観評価との間で、評価結果にズレが生じるおそれがあり、このズレによって、客観評価の判定結果が、人間にとっても最適な判定結果とならない可能性があるためである。
【0023】
まず、第1実施例として、青色発光蛍光体にSr5(PO)3Cl:Euで表記される蛍光体を用いた蛍光ランプについて、特性評価を行った。結果を〔表1〕に示す。
なお、蛍光ランプを構成する緑色発光蛍光体はBAM:Eu,Mnであり、赤色発光蛍光体はYVO4:Euである。また、蛍光ランプの作製は、ニトロセルロースを有機溶剤に溶解させた溶液に3種類の蛍光体を混合して調製したサスペンションを、ガラス管2に流し込んで乾燥させた後、励起ガス(水銀や希ガス等)を封入し、電極を取り付けることによって行った。
【0024】
【表1】

【0025】
〔表1〕の結果より、この第1実施例において、A/(N+A)が0.04以上であれば初期色度分布を充分に抑制できることが確認できた。
【0026】
次に、第2実施例として、青色発光蛍光体に (Sr0.5,Ba0.5)5(PO4)3Cl:Euを用いた蛍光ランプについても、同様の特性評価を行った。結果を〔表2〕に示す。なお、蛍光ランプの作製方法、及び蛍光ランプを構成する緑色発光蛍光体赤色発光蛍光体は、第1実施例と同様である。
【0027】
【表2】

【0028】
〔表2〕の結果より、第2実施例においても、A/(N+A)が0.04以上であれば初期色度変化を充分に抑制できることが確認できた。
【0029】
次に、第3実施例として、青色発光蛍光体に(Sr0.3,Ba0.3,Ca0.4)5(PO4)3Cl:Euを用いた蛍光ランプについても、同様の特性評価を行った。結果を〔表3〕に示す。なお、蛍光ランプの作製方法、及び蛍光ランプを構成する緑色発光蛍光体赤色発光蛍光体は、第1実施例と同様である。
【0030】
【表3】

【0031】
〔表3〕の結果より、第3実施例においても、A/(N+A)が0.04以上であれば初期色度変化を充分に抑制できることが確認できた。なお、本実施例における評価結果からは、A/(N+A)が0.05以上であれば、初期色度変化を特に高い水準で抑制できることも確認できた。
【0032】
なお、前述の第1実施例に係る蛍光ランプの初期色度変化を測定した。結果を図3に示す。
図3に示すように、測定の結果、A/(N+A)を0.04とした場合(図中c)、A/(N+A)を0.03とした従来の蛍光ランプ(図中d)に比べて、初期色度変化が抑制されることが確認できた。蛍光体の組成比が一部異なる、第2実施例に係る蛍光ランプや、第3実施例に係る蛍光ランプにおいても、同様に初期色度変化の抑制が図られると考えられる。
なお、この蛍光ランプ(図中c)は、青色発光蛍光体にBAM:Euを用いた蛍光ランプ(図中e)よりは初期色度変化が大きいものの、前述したように色純度が高いなどの優れた特性を示す。すなわち、図3の結果から、本実施形態に係る蛍光ランプによれば、初期色度変化が少ないという実用性を兼ね備えながら、優れた特性を示す蛍光ランプを構成できることが確認できた。
【0033】
次に、このように、本実施形態に係る蛍光ランプにおいて、つまり青色発光蛍光体に触れる雰囲気のA/(N+A)が0.04以上に選定された構成において、初期色度変化を特に抑制できる原因を検討した結果について、説明する。
本発明者らは、水銀の主たる発光が、波長185nmと波長253.7nmの2つの波長について生じること、そして水銀におけるこの2波長の発光強度の強弱が、水銀の蒸気圧に応じて相対的に入れ替わることに着目した。
【0034】
電源ON時の蛍光ランプは、水銀が十分に蒸発していない。水銀は、蒸気圧が比較的低い場合、波長185nmの発光が相対的に強まり、蒸気圧が比較的高い場合、波長253.7nmの発光が相対的に強まると考えられている。
また、図4Aに示すように、水銀から波長253.7nmの紫外光が発せられた場合、この紫外光を励起光とするSCAの発光スペクトル(実線a´)は、BAM:Euの発光スペクトル(鎖線b´)よりも発光強度が高いことが確認できた。これに対して、図4Bに示すように、水銀から波長185nmの紫外光が発せられた場合、この紫外光を励起光とするSCAの発光スペクトル(実線a´´)は、BAM:Euの発光スペクトル(鎖線b´´)よりも発光強度が低いことが確認できた。
【0035】
この検討結果から、蛍光体粒子層にSCAを含む蛍光ランプにおける発光色度の経時変化(初期色度変化)は、蛍光管内の温度上昇による水銀の発光波長の変化に起因して生じると考えられる。これは、前述した、第1のCCFLと第2のCCFLにおいて観測された色度変化が、時間経過とともに(水銀からの波長253.7nmの発光が強まるにしたがって)SCAの発光が強まる傾向に進んだこととも、合致する。
本実施形態に係る蛍光ランプにおいては、A/(N+A)の比率を0.04以上に選定することによって、蛍光管内の温度上昇の促進を図ることにより、水銀の蒸気圧を電源ON直後の極初期に上昇させ、その後の変化(変化量;Δx,Δy)を、つまり人間の視覚で認識される時間帯に生じる変化を、抑制できると考えられる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る蛍光ランプによれば、青色発光蛍光体に接する雰囲気が、A/(A+N)≧0.04とされていることから、初期色度変化の抑制が図られる。
また、本実施形態に係る光源装置によれば、蛍光ランプにおける初期色度変化の抑制によって、安定した色度の光を供給することが可能となる。
また、本実施形態に係る表示装置によれば、蛍光ランプにおける初期色度変化の抑制によって、映像情報の変質低減が図られる。
【0037】
なお、SCAは、スペクトルのピークがBAM:Euに比べて短波長側に位置している点からも良好な青色を呈する蛍光体であると言える。また、SCAは、長期使用による色変化も少なく、蛍光ランプ作製時の塗布性にも優れている。
本実施形態に係る蛍光ランプによれば、このような多くの長所を併せ持つSCAに対し、初期色度変化の抑制によって実用性の向上を付与することができる。すなわち、本実施形態に係る蛍光ランプによれば、BAM:Euよりも半値幅が狭く急峻な形状を有するスペクトルを示すSCAを、初期色度変化が少ない発光源として光源装置や表示装置に用いることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態に係る蛍光ランプによれば、青色発光蛍光体として、緑色域での発光が少ないSCAを有していることから、例えば表示装置を構成した場合に、緑色のカラーフィルタへの青色発光蛍光体由来の緑色光の混入も抑制できる。したがって、本実施形態に係る蛍光ランプを有する装置においては、青色の色純度のみならず、緑色の色純度向上も図られる。
また、本実施形態に係る蛍光ランプにおいては、他の希ガス元素に比べて安価なアルゴンとネオンに関する比率選定によって、水銀の温度上昇が促進される蛍光ランプ構成とすることができることから、コストの低減も図られる。
【0039】
以上、本発明に係る蛍光ランプ、光源装置、表示装置の実施形態及び実施例について説明したが、実施の形態の説明で挙げた使用材料及びその量、処理時間及び寸法などの数値的条件は好適例に過ぎず、説明に用いた各図における寸法形状及び配置関係も概略的なものである。すなわち、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0040】
例えば、前述した実施形態では、蛍光体粒子層に、青色発光蛍光体と、緑色発光蛍光体と、赤色発光蛍光体とが含まれる構成を例として説明を行ったが、シアン,マゼンダ,イエローなどの発光色に対応する蛍光体が含まれていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る蛍光ランプの、一例の構成を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る蛍光ランプを備えた、本発明に係る光源装置及び表示装置の、一例の構成を示す概略構成図である。
【図3】蛍光体の発光特性の説明に供する模式図である。
【図4】A,B それぞれ、蛍光体の発光特性の説明に供する模式図である。
【図5】蛍光体の発光スペクトルを示す模式図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・蛍光ランプ、2・・・ガラス管、3・・・蛍光体粒子層、4・・・電極、5・・・ジュメット線、6・・・ビードガラス、11・・・表示装置、12・・・光源装置、13・・・光学装置、14・・・リフレクタ、15・・・リフレクタ、16・・・導光部、19・・・拡散シート、20・・・偏向板、21・・・TFTガラス基板、22・・・ドット電極、23・・・液晶層、24・・・配向膜、25・・・電極、26・・・ブラックマトリクス、27a・・・第1カラーフィルタ、27b・・・第2カラーフィルタ、27c・・・第3カラーフィルタ、28・・・ガラス基板、29・・・偏向板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、組成式(Srx,Bay,Ca(1-x-y))5(PO4)3Cl:Eu(ただし、0≦x,y≦1かつx+y≦1)で表記される青色発光蛍光体を有し、
上記青色発光蛍光体に接する雰囲気が、アルゴン(Ar)とネオン(Ne)とを含み、
上記雰囲気中における、アルゴンのモル分率をAとし、ネオンのモル分率をNとすると、A/(A+N)≧0.04である
ことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
上記青色発光蛍光体とともに、緑色発光蛍光体及び赤色発光蛍光体の少なくとも一方を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
上記青色発光蛍光体及び上記雰囲気が、冷陰極管もしくは熱陰極管を構成する
ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
蛍光ランプを備える光源装置であって、
上記蛍光ランプが、
少なくとも、組成式(Srx,Bay,Ca(1-x-y))5(PO4)3Cl:Eu(ただし、0≦x,y≦1かつx+y≦1)で表記される青色発光蛍光体を有し、
上記青色発光蛍光体に接する雰囲気が、アルゴン(Ar)とネオン(Ne)とを含み、
上記雰囲気中における、アルゴンのモル分率をAとし、ネオンのモル分率をNとすると、A/(A+N)≧0.04である
ことを特徴とする光源装置。
【請求項5】
光源装置を有する表示装置であって、
上記光源装置が、蛍光ランプを備え、
上記蛍光ランプが、
少なくとも、組成式(Srx,Bay,Ca(1-x-y))5(PO4)3Cl:Eu(ただし、0≦x,y≦1かつx+y≦1)で表記される青色発光蛍光体を有し、
上記青色発光蛍光体に接する雰囲気が、アルゴン(Ar)とネオン(Ne)とを含み、
上記雰囲気中における、アルゴンのモル分率をAとし、ネオンのモル分率をNとすると、A/(A+N)≧0.04である
ことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−27863(P2008−27863A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202368(P2006−202368)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】