説明

蛍光体、発光装置および蛍光体の製造方法

【課題】高温下でも高い発光効率を得ることができる蛍光体を提供することである。
【解決手段】実施形態の蛍光体は、Euで付活されたSr3Si13Al3221属結晶を含む粒子を含有し、波長250〜500nmの光で励起した際に波長490〜580nmの間に発光ピークを有する発光を示す。前記粒子は、前記粉体は表面から5nmまでの外側領域における前記結晶中の酸素濃度の平均値(Oouter)と、表面から5nmより深い内側領域における前記結晶中の酸素濃度の平均値(Oinner)との比(Oouter/Oinner)が1.0〜3.8であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蛍光体、発光装置および蛍光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、青色光の励起により緑色の発光を示す蛍光体(緑色発光蛍光体)として、Eu付活アルカリ土類正ケイ酸塩蛍光体が提案されている。こうした緑色発光蛍光体は、青色での励起により赤色の発光を示す蛍光体(赤色発光蛍光体)、および青色LEDと組み合わせて白色発光装置が構成される。緑色発光蛍光体は、青色LEDの温度上昇に伴って発光強度の低下が起こることが多い。赤色発光蛍光体は発光強度の低下が僅かであるので、青色LEDによる発光と蛍光体による発光とのバランスが崩れやすい。
【0003】
緑色発光蛍光体と赤色発光蛍光体との温度消光の挙動が異なるため、青色LEDの温度上昇に伴なって緑色と赤色とのバランスも崩れやすい。この結果、蛍光体からの緑色発光および赤色発光と、光源からの青色発光とのバランスが崩れて顕著な「色ずれ」につながる。したがって、温度が上昇しても発光強度の低下(温度消光)が少ない緑色発光蛍光体が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−115633号公報
【特許文献2】特開2002−531955号公報
【特許文献3】特開2005−520916号公報
【特許文献4】特開2004−516688号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】International Tables for Crystallography, Volume A: Space-group symmetry, T. Hahn編,Springer(オランダ国)発行(発行日1983年初版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高温下でも発光強度の低下の少ない蛍光体、これを用いた発光装置、およびかかる蛍光体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の蛍光体は、Euで付活されたSr3Si13Al3221属結晶を含む粒子を含有し、波長250〜500nmの光で励起した際に波長490〜580nmの間に発光ピークを有する発光を示す。前記粒子は、その表面から5nmまでの外側領域における前記結晶中の酸素濃度の平均値(Oouter)と、表面から5nmより深い内側領域における前記結晶中の酸素濃度の平均値(Oinner)との比(Oouter/Oinner)が1.0〜3.8であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態にかかる発光装置の構成を表わす概略断面図。
【図2】他の実施形態にかかる発光装置の構成を表わす概略断面図。
【図3】他の実施形態にかかる発光装置の構成を表わす概略断面図。
【図4】実施例の蛍光体の発光スペクトル。
【図5】実施例の蛍光体の温度特性を表わすグラフ図。
【図6】実施例の発光装置の色度(2度視野)を示すグラフ図。
【図7】実施例の発光装置の色度(2度視野)を示すグラフ図。
【図8】実施例の発光装置の色度(2度視野)を示すグラフ図。
【図9】実施例の蛍光体の温度特性を表わすグラフ。
【図10】実施例の発光装置の色度(2度視野)を示すグラフ図。
【図11】実施例の発光装置の発光スペクトル。
【図12】実施例の蛍光体の温度特性を表わすグラフ。
【図13】実施例の発光装置の発光スペクトル。
【図14】実施例の発光装置の色度(2度視野)を示すグラフ図。
【図15】比較例の緑色発光蛍光体の発光スペクトル。
【図16】緑色発光蛍光体における酸素濃度比(Oouter/Oinner)と量子効率との関係。
【図17】比較例の蛍光体の温度特性を表わすグラフ。
【図18】比較例の発光装置の色度(2度視野)を示すグラフ図。
【図19】比較例の蛍光体の温度特性を表わすグラフ。
【図20】比較例の発光装置の発光スペクトル。
【図21】比較例の発光装置の色度(2度視野)を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を具体的に説明する。
【0010】
一実施形態にかかる蛍光体は、Eu付活されたSr3Si13Al3221属結晶を含む粒子であって、波長250〜500nmの光で励起した際に、波長490〜580nmの間にピークを有する発光を示す。波長490〜580nmの間に発光ピークを有するので、本実施形態にかかる蛍光体は緑色発光蛍光体である。
【0011】
Sr3Si13Al3221属結晶とは、Sr3Al3Si13221と実質的に同一の結晶構造を有する無機化合物をさす。Sr3Al3Si13221結晶は斜方晶系であり、格子定数は、a=14.76Å、b=7.46Å、c=9.03Åである。すなわち、本実施形態にかかる蛍光体は、酸窒化物を母体とした無機化合物であり、この酸窒化物は共有結合性が高い。
【0012】
Sr3Si13Al3221属結晶は、X線回折により同定することができる。対象となる蛍光体について測定したXRDプロファイルの回折ピーク位置が、Sr3Al3Si13221について測定したXRDプロファイルの主要ピークについて一致した時に、当該結晶構造が同じものと特定される。
【0013】
具体的には、X線回折パターンの20°≦2θ≦70°における次の18ピークのうち、10ピーク以上が含まれる場合には、結晶構造が同じもの特定することができる。ただし、いずれのピークも±0.1°の範囲を含む。
【0014】
20.5°,21.6°,23.8°,25.8°,29.4°,31.0°
31.7°,32.0°,34.2°,34.9°,36.1°,36.4°
37.5°,38.4°,39.9°,61.5°,62.3°,63.0°
したがって、Sr3Si13Al3221属結晶は、Sr3Al3Si13221のXRDプロファイルと同一のプロファイルを示す物質のみに限定されない。構成元素が他の元素と入れ替わることにより格子定数が一定の範囲内で変化した物質もまた、本実施形態におけるSr3Si13Al3221属結晶に包含される。
【0015】
構成元素が他の元素で置き換わるものとは、例えば、Si、Al、OおよびNの少なくとも一種の元素の一部が次のように置換されることをさす。具体的には、Sr3Al3Si13221結晶中の元素Siの位置が少なくとも1種の4価の元素で置換された結晶、Alの位置が少なくとも1種の3価の元素で置換された結晶、あるいはNの位置がOおよびCからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素で置換された結晶のことである。ここで、4価の元素は、例えばGe、Sn、Ti、Zr、およびHfからなる群から選択され、3価の元素は、例えばB、Ga、In、Sc、Y、La、Gd、およびLuからなる群から選択される。
【0016】
また、Sr3Al3Si13221結晶中の元素Oの一部が、NおよびCからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素で置換されてもよい。ただし、Nおよび/またはCによるOの置換量は、99モル%未満にとどめることが望まれる。
【0017】
Alの一部がSiで置き換わった構造、およびSiの一部がAlで置き換わった構造もまた、Sr3Al3Si13221属結晶に含まれる。例えばSr3Al2Si14ON22、Sr3AlSi1523、Sr3Al4Si12320、Sr3Al5Si11419、およびSr3Al6Si10518等である。
【0018】
一実施形態にかかる緑色発光蛍光体の組成は、例えば下記組成式(1)で表わすことができる。
【0019】
(Sr1-xEux3-yAl3+zSi13-z2+u21-w (1)
(式中、0<x<1、−0.1≦y≦0.30、−3≦z≦1、−3<u−w≦1.5)
各元素の組成が上述した範囲内に規定された場合には、より高い量子効率が得られる。こうした蛍光体が蛍光層に含まれる発光装置は、温度消光が抑制されて好ましい温度特性を示す。
【0020】
上記組成式(1)に示されるように、発光中心元素EuはSrの一部を置換する。Srの少なくとも0.1モル%がEuで置換されていれば、十分な発光効果を得ることができる。Euによる置換量が50モル%未満の場合には、発光確率の低下(濃度消光)を抑制する効果がよりいっそう高められる。
【0021】
一実施形態にかかる蛍光体は、基本的にSr、Eu、Al、Si、O、およびNからなる。しかしながら、所望の効果を損なわない範囲であれば、微量の不純物が含まれていてもよい。このような不純物は、例えば原料に含まれているものや、製造過程で混入するものである。具体的には、Na、Ba、Ca、Mg、Cu、Fe、Pb、Cl、CおよびBなどである。蛍光体中におけるこうした不純物元素の含有量は、通常0.2質量%以下であり、300ppm以下が好ましい。
【0022】
一実施形態による蛍光体は、上述したような組成を有する結晶を含む粒子を含有し、かかる粒子においては、Sr3Al3Si13221結晶中の酸素は均一に存在しない。この結晶中の酸素は、粒子の比較的表面近傍に偏っている。具体的には、粒子の表面から5nmまでの外側領域における酸素濃度の平均値(Oouter)と、粒子の表面から5nmより深い内側領域における酸素濃度の平均値(Oinner)の比(Oouter/Oinner)が1.0〜3.8である。
【0023】
従来知られている同様の蛍光体では、X線回折パターンにおいて、回折ピーク位置2θが15.2〜15.5°であるピークの半値幅は0.16°以上である。本実施形態による蛍光体のような半値幅が狭いものは知られていなかった。これは実施形態による蛍光体の結晶性が高いことを意味している。また、本実施形態による蛍光体は、一般的に結晶形状が板状である。板状とは、板のように二次元的に広がる2つの面が対向し、その2面間の距離が2面の1辺の30%程度以下である状態をさす。蛍光体の結晶形状は、例えば、蛍光顕微鏡や走査型二次電子顕微鏡等により確認することができる。
【0024】
本実施形態の蛍光体粒子における酸素濃度は、X線光電子分光法(XPS)により求められる。具体的には、Quantera SXM(PHI社製)を用いて、以下の条件で測定することができる。
【0025】
・X線源/出力/分析領域:単結晶AlKα/4.5W/φ20μm
・Pass Energy:Narrow Scan−280.0eV(0.25eV/Step)
・ジオメトリ:θ=45°(θ:試料表面と検出器との角度)
・Ar+エッチング条件:
加速電圧 2kV
ラスターサイズ 2×2mm
インターバル 0.25min/step(約1.7nm/step)
レート 約6.9nm/min(T−SiO2の場合)
こうした測定から得られるのは、表面から深さ方向に向かった位置における原子数の比である。測定結果に基づいて、蛍光体粒子の表面から5nmまでの外側領域における酸素濃度の平均値(Oouter)は、表面から5nmまでの各位置における原子数比の平均を算出することにより求めることができる。また、表面より5nmから150nmまでの位置における原子数比の平均を算出することによって、粒子の表面から5nmより深い内側領域における酸素濃度の平均値(Oinner)が求められる。
【0026】
本実施形態の蛍光体粒子においては、表面から5nmまでの外側領域における前記結晶中の酸素濃度の平均値(Oouter)と、表面から5nmより深い内側領域における前記結晶中の酸素濃度の平均値(Oinner)との比(Oouter/Oinner)が1.0〜3.8である。すなわち、本実施形態の蛍光体粒子においては、Sr3Si13Al3221属結晶中の酸素は均一に存在せず、粒子の外側領域の酸素農奴が粒子の内側領域の酸素濃度より高い。
【0027】
蛍光体粒子における酸素濃度について、本発明者らは次のような知見を得た。蛍光体粒子の内側領域における酸素濃度が、外側領域と同程度の場合には量子効率が低下する。なお、蛍光体粒子の粒径は、通常20〜100μm程度である。蛍光体粒子の断面を顕微鏡で観察したところ、表面部と内部とで観察像のコントラストが異なることから、本発明者らは、表面から5nmまでの外側領域と、表面から5nmより深い内側領域とに着目した。
【0028】
表面から5nmまでの蛍光体粒子の外側領域の酸素濃度の平均値(Oouter)が、表面から5nmより深い蛍光体粒子の内側領域の酸素濃度の平均値(Oinner)より大きいことに起因して屈折率に差が生じる。その結果、光の取り出し効率が向上する。しかしながら、粒子の外側領域の酸素濃度の平均値(Oouter)が過剰に大きくなると、上述したようなSr3Al3Si13221属結晶の組成から外れてしまう。
【0029】
所定の結晶の組成を維持しつつ高い量子効率を得るために、本実施形態においては、粒子の表面から5nmまでの外側領域における酸素濃度の平均値(Oouter)と、表面から5nmより深い内側領域における酸素濃度の平均値(Oinner)との比(Oouter/Oinner)を1.0〜3.8に規定した。この範囲内であれば、65%以上の量子効率が確保される。酸素濃度比(Oouter/Oinner)が1.0〜3.2の範囲内の場合には、70%以上の高い量子効率が得られる。
【0030】
量子効率が高いことに起因して、本実施形態の緑色発光蛍光体は温度が上昇しても発光強度の低下が少ない。これは次のように説明される。温度による発光強度低下の一因として結晶内部の欠陥が挙げられる。すなわち、結晶内部の欠陥が少ないと、量子効率が高くなるからである。
【0031】
本実施形態の緑色発光蛍光体は、各元素を含む原料粉体を混合し、焼成することによって製造することができる。
【0032】
Sr原料は、例えば、Srの窒化物、酸化物および水酸化物から選択することができる。Al原料は、例えばAlの窒化物、酸化物および炭化物から選択することができ、Sr原料は、例えばSiの窒化物、酸化物および炭化物から選択することができる。発光中心元素Euの原料としては、Euの酸化物、窒化物または炭酸塩を用いることができる。
【0033】
なお、窒素は、窒化物原料から与えることができ、酸素は、酸化物原料および窒化物原料の表面酸化皮膜から与えることができる。
【0034】
例えば、Sr32、AlN、Si34、Al23およびEuNを、目的の組成となるような仕込み組成で混合する。Sr32の代わりにCa32、Ba32、Sr2NあるいはSrN等、もしくはこれらの混合物を用いてもよい。均一な混合粉体を得るために、質量の少ない原料粉体から順に乾式混合することが望まれる。
【0035】
原料は、例えばグローブボックス中で乳鉢を用いて混合することができる。混合粉体をるつぼ内に収容し、所定の条件で焼成することによって、本実施形態にかかる蛍光体が得られる。るつぼの材質は特に限定されず、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、カーボン、窒化アルミニウム、サイアロン、酸化アルミ、モリブデン、およびタングステン等から選択することができる。
【0036】
混合粉体は、まず、窒素雰囲気中で熱処理して焼成される。窒素雰囲気中での熱処理時間は、一般的には2時間以上であり長いほうが好ましい。熱処理時間は4時間以上であることが好ましく、6時間以上であることがより好ましく、8時間以上であることが最も好ましい。熱処理時間が短すぎると、結晶成長が不十分となって量子効率が低下することがある。
【0037】
窒素雰囲気中での熱処理は、大気圧以上の圧力で行なうことが望ましい。大気圧以上の圧力で熱処理が行なわれると、窒化ケイ素が分解しにくい点で有利となる。窒化ケイ素の高温での分解を抑制するためには、5気圧以上であることがより好ましく、熱処理温度は1500〜2000℃の範囲が好ましい。この程度の温度範囲であれば、材料または生成物の昇華といった不都合を引き起こさずに、目的の焼結体が得られる。熱処理温度は、1700〜1950℃がより好ましい。
【0038】
こうした窒素雰囲気中で熱処理することによりAlNの酸化を避けつつ焼成が行なわれて、酸素濃度の分布が制御された蛍光体が得られる。
【0039】
窒素雰囲気中での熱処理後の粉体を破砕し、混合した後、真空雰囲気中で熱処理する。ここでの真空とは、13.3Pa以下の真空度をさす。真空雰囲気での熱処理の温度は、400〜600℃の範囲である。400℃未満の場合には、目的とする特性を備えた蛍光体が得られない。一方、600℃を越えると表面の酸化が著しく進行するおそれがある。真空雰囲気中での熱処理温度は、450〜550℃が好ましい。
【0040】
真空雰囲気中での熱処理時間は、0.1〜12時間程度が好ましい。この程度の時間で熱処理が行なわれると、所望の効果を得ることができる。熱処理時間は、1.0〜6時間程度がより好ましい。
【0041】
引き続いて行なわれる高温熱処理前に、吸着水分を可能な限り除去することが狙いであることから、ここでの真空雰囲気は13.3Pa以下とすることが望まれる。真空雰囲気中、400〜600℃の温度で熱処理が行なわれることによって、蛍光体中における酸素が表面近傍に偏って存在するものと推測される。
【0042】
真空雰囲気中での熱処理後、雰囲気をN2/H2の還元性雰囲気に切り替えて熱処理を行なう。結晶内部における酸素を窒素に還元することが目的であることから、ここでのN2/H2の還元性雰囲気における水素濃度は、1%以上100%未満に規定される。
【0043】
還元性雰囲気中での熱処理温度は、1300〜1700℃の範囲が好ましい。この程度の温度範囲であれば、材料または生成物の昇華といった不都合を引き起こさずに、目的の蛍光体が得られる。熱処理温度は、1400〜1600℃がより好ましい。還元性雰囲気中での熱処理時間は、0.5〜24時間程度が好ましい。この程度の時間で熱処理が行なわれると、所望の効果を得ることができる。熱処理時間は、1.0〜12時間程度がより好ましい。
【0044】
還元性雰囲気中での熱処理後には、洗浄等の後処理を必要に応じて施して、一実施形態にかかる蛍光体が得られる。洗浄を行なう場合には、例えば純水洗浄、酸洗浄により行なうことができる。酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ化水素酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸などの有機酸、またはこれらの混合酸等を用いることができる。
【0045】
一実施形態にかかる発光装置は、前述の蛍光体を含む蛍光層と、前述の蛍光体を励起する発光素子とを具備する。図1は、一実施形態にかかる発光装置の構成を表わす概略図である。
【0046】
図1に示す発光装置においては、基材100の上に、リード101、102およびパッケージカップ103が配置されている。基材100およびパッケージカップ103は樹脂性である。パッケージカップ103は、上部が底部より広い凹部105を有しており、この凹部の側面は反射面104として作用する。
【0047】
凹部105の略円形底面中央部には、発光素子104がAgペースト等によりマウントされている。発光素子106としては、例えば発光ダイオード、およびレーザダイオード等を用いることができる。例えば、紫外発光を行なうものを用いることができ、特に限定されるものではない。紫外光以外の光、例えば、青色や青紫、あるいは近紫外光などを発光する発光素子も使用してもよい。具体的には、GaN系等の半導体発光素子などが挙げられる。
【0048】
発光素子106の電極(図示せず)は、Auなどからなるボンディングワイヤー107および108によって、リード101およびリード102にそれぞれ接続されている。リード101および102の配置は、適宜変更することができる。
【0049】
パッケージカップ103の凹部105内には、一実施形態にかかる蛍光体110を含有する蛍光層109が配置される。蛍光層109においては、例えばシリコーン樹脂からなる樹脂層111中に、5〜50質量%の量で蛍光体が含有される。上述したように、本実施形態にかかる蛍光体には、共有結合性の高い酸窒化物が母体として用いられている。このため、本実施形態にかかる蛍光体は疎水性であり、樹脂との相容性が極めて良好である。したがって、樹脂層と蛍光体との界面での散乱が著しく抑制されて、光取出し効率が向上する
発光素子106としては、n型電極とp型電極とを同一面上に有するフリップチップ型のものを用いることもできる。この場合には、ワイヤーの断線や剥離、ワイヤーによる光吸収等のワイヤーに起因した問題を解消して、信頼性の高い高輝度な半導体発光装置が得られる。また、n型基板を有する発光素子を用いて、次のような構成とすることもできる。発光素子のn型基板の裏面にn型電極を形成し、基板上に積層された半導体層の上面にはp型電極を形成する。n型電極はリード上にマウントし、p型電極はワイヤーにより他方のリードに接続する。
【0050】
本実施形態にかかる蛍光体は、温度が上昇しても発光強度の低下が少ない緑色発光蛍光体である。したがって、図1に示す発光装置は、温度が上昇しても強度の高い緑色発光を発することができる。
【0051】
発光素子106のサイズ、凹部105の寸法および形状は、適宜変更することができる。
【0052】
一実施形態にかかる発光装置は、図1に示したようなパッケージカップ型に限定されず、適宜変更することができる。具体的には、砲弾型LEDや表面実装型LEDの場合も、実施形態の蛍光体を適用して同様の効果を得ることができる。
【0053】
図2には、他の実施形態にかかる発光装置の構成を表わす概略図を示す。図示する発光装置においては、放熱性の絶縁基板401の所定の領域には電極(図示せず)が形成され、この上に発光素子402が配置されている。放熱性の絶縁基板の材質は、例えばAlNとすることができる。発光素子402における一方の電極は、その底面に設けられており、放熱性の絶縁基板401の電極に電気的に接続される。発光素子402における他方の電極は、金ワイヤー403により放熱性の絶縁基板401上の電極(図示せず)に接続される。発光素子402としては、例えば波長250〜500nmの光を発する発光ダイオードを用いることができる。
【0054】
発光素子402上には、ドーム状の透明樹脂層404、第一の蛍光層405および第二の蛍光層406が順次形成される。透明樹脂層404は、例えばシリコーン等を用いて形成することができる。第一の蛍光層405は、例えば赤色発光蛍光体が分散された樹脂層とすることができ、第二の蛍光層406は、本実施形態の緑色発光蛍光体が分散された樹脂層とすることができる。図示する発光装置においては、透明樹脂層404の上に、赤色発光層としての第一の蛍光層405および緑色発光層としての第二の蛍光層406が順次積層されている。
【0055】
図2に示した発光装置においては、本実施形態にかかる緑色発光蛍光体は、青色を発光する発光素子および赤色発光蛍光体と組み合わせて用いられる。すなわち、図示する発光装置は、白色発光装置である。すでに説明したように本実施形態にかかる緑色発光蛍光体は、温度が上昇しても発光強度の低下が少ない。温度が上昇しても緑色と赤色とのバランスが崩れることは抑制されることから、「色ずれ」の少ない白色発光装置を得ることができる。
【0056】
発光素子402として、波長250〜430nmの光を発する発光ダイオードが用いられる場合には、図3に示すように第二の蛍光層406上に第三の蛍光層407を形成してもよい。第三の蛍光層407は、例えば青色発光蛍光体が分散された樹脂層とすることができる。図示する発光装置においては、透明樹脂層404の上に、赤色発光層としての第一の蛍光層405、緑色発光層としての第二の蛍光層406、および青色発光層としての第三の蛍光層407が順次積層されている。
【0057】
図2に示した発光装置と同様、図3に示した発光装置も白色発光装置である。図3に示した発光装置は青色発光層が設けられていることから、図2に示した発光装置と比較して、演色性が高くなることが特徴である。
【0058】
第二の蛍光層406中に含有される赤色発光蛍光体、および第三の蛍光層407中に含有される青色発光蛍光体について、以下に説明する。
【0059】
赤色発光蛍光体としては、例えば、下記組成式(2)で表わされる組成を有する赤色発光蛍光体(R)を用いることができる。
【0060】
(Sr1-sEusaSibAlOcd (2)
(式中、0<s<1.0,0.55<a<0.95、2<b<3.9、0<c<0.6、
4<d<5.7)
赤色発光蛍光体(R)は、Sr2Si7Al3ON13と実質的に同一の結晶構造を有する無機化合物を基本としている。かかる蛍光体は、各元素の組成が所定の範囲内に規定されていることによって、高い量子効率を示す。
【0061】
上記組成式(2)に示されるように、赤色発光蛍光体(R)は、組成式(1)に示した緑色発光蛍光体と同様の元素を含有する。この赤色発光蛍光体(R)は、前述の緑色発光蛍光体の場合と同様の原料粉体を用いて合成することができる。所定の組成となるように原料粉体が混合された混合粉体を焼成して、赤色発光蛍光体(R)が得られる。ただし、焼成のための熱処理の条件は緑色発光蛍光体の場合と異なる。
【0062】
混合粉体を窒素雰囲気中で熱処理して、赤色発光蛍光体が得られる。ここでの熱処理時間は、一般に4時間以下であり短いほうが好ましい。熱処理時間は、3時間以下であることが好ましく、2時間以下であることがより好ましく、1時間以下であることが最も好ましい。熱処理時間が長すぎると、結晶の凝集が進行して粒子径が大きくなってしまい、量子効率が低下するためである。また、熱処理時間が長い場合には、所定のアスペクト比を有する結晶の割合も低下する傾向にある。
【0063】
少なくとも0.1時間以上の熱処理が行なわれれば、反応は十分に進行して目的の赤色発光蛍光体が得られる。熱処理時間は、0.5時間以上であることがより好ましく、1時間以上であることが最も好ましい。
【0064】
本実施形態にかかる緑色発光蛍光体の場合と同様の理由から、赤色発光蛍光体の場合も、大気圧以上の圧力で熱処理が行なわれることが望まれる。熱処理の温度範囲もまた、前述の緑色発光蛍光体の場合と同様とすることができる。
【0065】
焼成後の粉体に洗浄等の後処理を必要に応じて施して、組成式(2)で表わされる組成を有する赤色発光蛍光体が得られる。洗浄を行なう場合には、例えば純水洗浄、酸洗浄により行なうことができる。
【0066】
青色発光蛍光体は、400〜490nmの間にピークを有する発光を示し、所定の温度特性を有するものであれば、特に限定されない。色ずれの少ない発光装置を得るためには、青色発光蛍光体の温度特性は、赤色発光蛍光体および緑色発光蛍光体と同等に良好であることが望まれる。
【0067】
好ましい青色発光蛍光体の具体例としては、例えば(Ba,Eu)MgAl1017、(Sr,Ca,Ba,Eu)10(PO45Cl2、および(Sr,Eu)Si9Al19ON31などが挙げられる。
【0068】
本実施形態の緑色発光蛍光体とともに、上述したような赤色発光蛍光体が用いられると、発光装置から放射される赤色光成分と緑色光成分とのバランスは、よりいっそう崩れにくくなり、色ずれを抑制する効果が高められる。
【0069】
こうした緑色発光蛍光体および赤色発光蛍光体は、いずれも温度消光が少ない。このため、高パワーで駆動した際でも、緑色光成分および赤色光成分の変動が小さい発光装置が得られる。室温から200℃程度の温度領域中の各温度において、前述の赤色発光蛍光体の温度消光の挙動は、本実施形態の緑色発光蛍光体の温度消光の挙動と同程度である。したがって、高パワーでの駆動によりデバイス温度が上昇した場合でも、緑色光成分と赤色光成分との色ずれを大幅に低減することができる。
【0070】
なお、上述した緑色発光蛍光体および赤色発光蛍光体が含有されていれば、それらとは異なる組成の緑色発光蛍光体および赤色発光蛍光体がさらに含まれてもよい。
【0071】
青色発光蛍光体を用いた場合、青色発光蛍光体の温度消光は、赤色および緑色発光蛍光体と同程度であることが好ましい。こうした蛍光体を組み合わせて用いることによって、白色発光装置の色ずれをよりいっそう低減することができる。上述したように、緑色発光蛍光体および赤色発光蛍光体は、駆動時の温度消光が小さいため、発光素子からの発光や青色発光蛍光体から放射される青色成分とのバランスも崩れにくい。したがって、色ずれをよりいっそう低減することができる。なお、青色発光蛍光体による発光波長は、発光素子であるLEDによって補うことができるため、必ずしも赤色発光蛍光体や緑色発光蛍光体のように厳密である必要はない。
【0072】
発光装置に用いられる発光素子は、用いる蛍光体に応じて適切なものが選択される。すなわち、発光素子から放射される光が、用いられる蛍光体を励起することができるものであることが必要である。白色発光装置を構成する場合には、蛍光体から放射される光を補うような波長の光を放射する発光素子を用いることが好ましい。
【0073】
このような観点から、図2を参照して説明したように、蛍光体として赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体とを用いた白色発光装置においては、発光素子としては、250〜500nmの波長の光を放射するものが選択される。また、図3を参照して説明したように、蛍光体として赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体と青色発光蛍光体とを用いた白色発光装置においては、発光素子としては、250〜430nmの波長の光を放射するものが選択される。
【0074】
上述したように、本実施形態の緑色発光蛍光体は、高温において発光強度の低下が少ない。かかる蛍光体が用いられるので、本実施形態の発光装置は、高パワー駆動時でも色ずれが抑制される。
【0075】
以下、蛍光体の具体例を示す。
【0076】
<緑色発光蛍光体(G1)〜(G4)の合成>
原料粉体として、Sr32、EuN、Si34、Al23およびAlNを用意し、バキュームグローブボックス中でそれぞれ秤量した。Sr32、EuN、Si34、Al23およびAlNの配合質量は、それぞれ2.676g、0.398g、6.080g、0.680g、および0.683gとした。秤量された原料粉体は、配合質量の少ないものから順にめのう乳鉢内で乾式混合した。得られた混合物を窒化ホウ素(BN)るつぼに充填し、7.5気圧の窒素雰囲気中、1850℃で4時間熱処理することにより焼成して粉体を得た。
【0077】
窒素雰囲気中での熱処理後の粉体を破砕・混合後、10Paの真空雰囲気中500℃で30分熱処理して焼成した。引き続き、水素濃度が50%のN2/H2還元性雰囲気中1500℃で12時間熱処理して焼成し、設計組成が(Sr0.92Eu0.083Al3Si13221である蛍光体(G1)を得た。
【0078】
さらに、真空雰囲気中での熱処理温度を以下のように変更する以外は緑色発光蛍光体(G1)の場合と同様にして、緑色発光蛍光体(G2)〜(G4)を得た。
【0079】
緑色発光蛍光体(G2):400℃
緑色発光蛍光体(G3):450℃
緑色発光蛍光体(G4):475℃
焼成後の蛍光体(G1)〜(G4)は、いずれも体色が黄緑色の粒子であり、ブラックライトで励起した結果、緑色発光が観察された。
【0080】
こうして得られた緑色発光蛍光体(G1)〜(G4)について、X線回折パターンにおける主要ピークをそれぞれ調べた。X線回折にあたっては、粉末X線回折装置(M18XHF22 ブルカー・エイ・エックス社製)を用い、θ/2θ法、ターゲット:CuKα、40kV−100mA、走査速度:1°/minの条件で行なった。得られた主要ピークのうち、標準としてのSr3Al3Si13221結晶のX線回折パターンの20°≦2θ≦70°における主要ピークと一致するものの数を求めた。
【0081】
なお、Sr3Al3Si13221結晶のX線回折パターンの20°≦2θ≦70°における主要ピークは、次の18ピークとした。ただし、いずれのピークも±0.1°の範囲を含む。
【0082】
20.5°,21.6°,23.8°,25.8°,29.4°,31.0°
31.7°,32.0°,34.2°,34.9°,36.1°,36.4°
37.5°,38.4°,39.9°,61.5°,62.3°,63.0°
また、それぞれの蛍光体における酸素濃度をXPS法により測定した。用いた測定装置はQuantera SXM(PHI社製)であり、測定条件は以下のとおりとした。
【0083】
・X線源/出力/分析領域:単結晶AlKα/4.5W/φ20μm
・Pass Energy:Narrow Scan−280.0eV(0.25eV/Step)
・ジオメトリ:θ=45°(θ:試料表面と検出器との角度)
・Ar+エッチング条件:
加速電圧 2kV
ラスターサイズ 2×2mm
インターバル 0.25min/step(約1.7nm/step)
レート 約6.9nm/min(T−SiO2の場合)
測定により、表面から深さ方向に向かった位置における原子数の比が得られた。この測定結果に基づいて、表面から5nmまでの外側領域における酸素濃度の平均値(Oouter)、および表面から5nmより深い内側領域における酸素濃度の平均値(Oinner)を得た。具体的には、表面から5nmまでの各位置における原子数比の平均と、表面より5nmから150nmまでの位置における原子数比の平均との割合を算出することによって、(Oouter)および(Oinner)を得、酸素濃度比(Oouter/Oinner)を算出した。
【0084】
それぞれの蛍光体について、絶対PL量子効率測定装置(C9920−02G 浜松ホトニクス株式会社)を用いて量子効率を測定した。具体的には、蛍光体に照射された光子が全て蛍光体に吸収され、吸収された全ての光子が波長変換されて放出された場合を100%として、量子効率を算出した。量子効率は65%以上であることが求められる。
【0085】
さらに、各蛍光体を波長457nmの光でそれぞれ励起して、発光ピークの波長を調べた。
【0086】
得られた結果を、真空雰囲気中での熱処理温度とともに下記表1にまとめる。
【表1】

【0087】
上記表1に示されるように、蛍光体(G1)〜(G4)は、いずれも14ピーク以上が標準と一致していることから、Sr3Al3Si13221属結晶である。これら蛍光体(G1)〜(G4)においては、酸素濃度比は1.0〜3.8の範囲内であり、74%以上の量子効率が得られている。
【0088】
いずれの蛍光体も490〜580nmの間に発光ピークを有しており、緑色発光蛍光体である。
【0089】
また、緑色発光蛍光体(G1)〜(G4)の457nm励起における発光スペクトルは、図4に示すとおりであった。図4に示す相対強度は、励起光源のピーク強度を1として求めた。図示するように、緑色発光蛍光体(G1)〜(G4)は、波長490〜580nmにおける相対強度が、最低でも0.2程度であり、最高では0.3にも及んでいる。通常、相対強度は、0.1以上であることが求められるので、緑色発光蛍光体(G1)〜(G4)は、いずれも十分な強度で発光することが確認された。
【0090】
<赤色発光蛍光体(R1)の合成>
出発原料として、Sr32、EuN、Si34、Al23およびAlNを用意し、バキュームグローブボックス中でそれぞれ秤量した。Sr32、EuN、Si34、Al23およびAlNの配合質量は、それぞれ2.579g、0.232g、4.583g、0.476g、および1.339gとした。秤量された原料粉体は、めのう乳鉢内で乾式混合した。得られた混合物をBNるつぼに充填し、7.5気圧の窒素雰囲気中、1850℃で4時間焼成して、設計組成が(Sr0.95Eu0.052Al3Si7ON13であるような蛍光体(R1)を得た。
【0091】
焼成後の蛍光体(R1)は、体色が橙色の粒子であり、ブラックライトで励起したところ、赤色発光が観察された。また、波長457nmの光で励起したところ、この蛍光体(R1)の発光ピーク波長は598nmであった。
【0092】
ここで、緑色発光蛍光体(G1)および赤色発光蛍光体(R1)の発光強度の温度依存性を図5に示す。図示する結果は、室温における発光強度を1として規格化したものである。図5に示されるように、緑色発光蛍光体(G1)は、200℃における発光強度は室温の場合の0.6程度である。200℃において室温の場合の50%程度の発光強度が確保できれば合格であり、緑色発光蛍光体(G1)は温度上昇による発光強度の低下が小さいことがわかる。なお、図5に示されるように赤色発光蛍光体(R1)の温度特性は、緑色発光蛍光体(G1)の温度特性と同程度である。
【0093】
発光中心であるEuの濃度がいずれも同程度であることから、緑色発光蛍光体(G2)、(G3)および(G4)も、この緑色発光蛍光体(G1)と同様に、温度上昇による発光強度の低下が小さい。
【0094】
<実施例1>
緑色発光蛍光体(G1)および赤色発光蛍光体(R1)を用いて、図2に示した構成の発光装置を作製した。8mm角のAlNパッケージ401の上に、発光素子402としての発光ピーク波長455nmの発光ダイオードを半田接合した。金ワイヤー403を介して、発光素子402の一方の電極をAlNパッケージ401の電極に接続した。
【0095】
発光素子402上には、シリコーンをドーム状に塗布して透明樹脂層404を形成した。透明樹脂層404の上には、第一の蛍光層405および第二の蛍光層406を順次形成した。第一の蛍光層405の形成は、赤色発光蛍光体(R1)が30質量%含有された透明樹脂(シリコーン)を用いた。第二の蛍光層406の形成には、緑色発光蛍光体(G1)が30質量%含有された透明樹脂(シリコーン)を用いた。
【0096】
この発光装置を積分球内に設置し、20mA、3.1Vの条件で駆動させたところ、色度(0.345,0.352)、色温度5000K、光束効率67.9lm/W、Ra=86であった。
【0097】
この発光装置の駆動電流を350mAまで上昇させながら、前述と同様の手法により発光特性を測定した。その結果を図6に示す。図6中、801は黒体輻射の色軌跡を表わし、802〜806は、JIS規格による所定の色の色度範囲を表わす。具体的には次のとおりである。
【0098】
802:昼光色の色度範囲
803:昼白色の色度範囲
804:白色の色度範囲
805:温白色の色度範囲
806:電球色の色度範囲
図示するように、赤色発光蛍光体(R1)とともに緑色発光蛍光体(G1)を用いた本実施例の発光装置は、駆動電流が上昇しても色度の変動が少なく、350mA駆動時においてもJIS規格の色度範囲を逸脱することがない。光束効率およびRaもまた、以下に示すように駆動電流が上昇しても変動が少なかった。
【0099】
240mA駆動:52.0lm/W、Ra=79
300mA駆動:48.3lm/W、Ra=77
350mA駆動:43.9lm/W、Ra=75
<実施例2>
緑色発光蛍光体を緑色発光蛍光体(G2)に変更した以外は実施例1と同様にして、本実施例の発光装置を作製した。この発光装置を積分球内に設置し、20mA、3.1Vで駆動させたところ、色度(0.345,0.352)、色温度5000K、光束効率73.8lm/W、Ra=79であった。
【0100】
この発光装置の駆動電流を350mAまで上昇させながら、前述と同様の手法により発光特性を測定し、その結果を図7に示す。図示するように、赤色発光蛍光体(R1)とともに緑色発光蛍光体(G2)を用いた本実施例の発光装置は、駆動電流が上昇しても色度の変動は少なく、350mA駆動時においてもJIS規格の色度範囲を逸脱することがなかった。光束効率およびRaもまた、以下に示すように変動が少なかった。
【0101】
240mA駆動:56.8lm/W、Ra=78
300mA駆動:53.5lm/W、Ra=77
350mA駆動:49.1lm/W、Ra=76
<実施例3>
緑色発光蛍光体を緑色発光蛍光体(G3)に変更した以外は実施例1と同様にして、本実施例の発光装置を作製した。この発光装置を積分球内に設置し、20mA、3.1Vで駆動させたところ、色度(0.345,0.352)、色温度5000K、光束効率64.8lm/W、Ra=90であった。
【0102】
この発光装置の駆動電流を350mAまで上昇させながら、前述と同様の手法により発光特性を測定し、その結果を図8に示す。図示するように、赤色発光蛍光体(R1)とともに緑色発光蛍光体(G3)を用いた本実施例の発光装置は、駆動電流が上昇しても色度の変動は少なく、350mA駆動時においてもJIS規格の色度範囲を逸脱することがなかった。光束効率およびRaもまた、以下に示すように変動が少なかった。
【0103】
240mA駆動:51.0lm/W、Ra=85
300mA駆動:48.0lm/W、Ra=84
350mA駆動:44.3lm/W、Ra=82
<緑色発光蛍光体(G5)〜(G7)の合成>
真空雰囲気中での熱処理温度を以下のように変更する以外は緑色発光蛍光体(G1)の場合と同様にして、緑色発光蛍光体(G5)〜(G7)を得た。
【0104】
緑色発光蛍光体(G5):525℃
緑色発光蛍光体(G6):550℃
緑色発光蛍光体(G7):600℃
焼成後の蛍光体(G5)〜(G7)は、いずれも体色が黄緑色の粒子であり、ブラックライトで励起した結果、緑色発光が観察された。
【0105】
こうして得られた緑色発光蛍光体(G5)〜(G7)について、前述と同様にピーク一致数、酸素濃度比、量子効率、および発光波長を調べた。その結果を、真空雰囲気中での熱処理温度とともに下記表2にまとめる。
【表2】

【0106】
上記表2に示されるように、蛍光体(G5)〜(G7)は、いずれも13ピーク以上が標準と一致していることから、Sr3Al3Si13221属結晶である。これら蛍光体(G5)〜(G7)においては、酸素濃度比は1.1〜3.8の範囲内であり、65%以上の量子効率が得られている。
【0107】
いずれの蛍光体も490〜580nmの間に発光ピークを有しており、緑色発光蛍光体である。
【0108】
また、緑色発光蛍光体(G5)〜(G7)の457nm励起における発光スペクトルは、図4に示すとおりであった。図4に示す相対強度は、励起光源のピーク強度を1として求めた。図示するように、緑色発光蛍光体(G5)〜(G7)は、波長490〜580nmにおける相対強度が、最低でも0.2程度であり、最高では0.30にも及んでいる。緑色発光蛍光体(G5)〜(G7)は、いずれも十分な強度で発光することが確認された。
【0109】
発光中心であるEuの濃度がいずれも同程度であることから、緑色発光蛍光体(G5)、(G6)および(G7)も、前述の緑色発光蛍光体(G1)と同様に、温度上昇による発光強度の低下が小さい。
【0110】
<実施例4>
緑色発光蛍光体を緑色発光蛍光体(G5)に変更した以外は実施例1と同様にして、本実施例の発光装置を作製した。この発光装置を積分球内に設置し、20mA、3.1Vで駆動させたところ、色度(0.345,0.352)、色温度5000K、光束効率69.73lm/W、Ra=88であった。
【0111】
この発光装置の駆動電流を350mAまで上昇させながら、前述と同様の手法により発光特性を測定した。その結果、駆動電流が上昇しても色度の変動は少なく、光束効率およびRaも同様に変動が少なかった。
【0112】
<実施例5>
緑色発光蛍光体を緑色発光蛍光体(G6)に変更した以外は実施例1と同様にして、本実施例の発光装置を作製した。この発光装置を積分球内に設置し、20mA、3.1Vで駆動させたところ、色度(0.345,0.352)、色温度5000K、光束効率62.9lm/W、Ra=79であった。
【0113】
この発光装置の駆動電流を350mAまで上昇させながら、前述と同様の手法により発光特性を測定した。その結果、駆動電流が上昇しても色度の変動は少なく、光束効率およびRaもまた、変動が少なかった。
【0114】
<実施例6>
緑色発光蛍光体を緑色発光蛍光体(G7)に変更した以外は実施例1と同様にして、本実施例の発光装置を作製した。この発光装置を積分球内に設置し、20mA、3.1Vで駆動させたところ、色度(0.345,0.352)、色温度5000K、光束効率74.8lm/W、Ra=90であった。
【0115】
この発光装置の駆動電流を350mAまで上昇させながら、前述と同様の手法により発光特性を測定した。その結果、駆動電流が上昇しても色度の変動は少なく、光束効率およびRaもまた、変動が少なかった。
【0116】
<実施例7>
緑色発光蛍光体(G4)を、赤色発光蛍光体および青色発光蛍光体とともに用いて、図3に示した構成の発光装置を作製した。赤色発光蛍光体としては、前述の赤色発光蛍光体(R1)を用い、青色発光蛍光体(B1)としては(Ba0.9Eu0.1)MgAl1017を用いた。
【0117】
8mm角のAlNパッケージ401上に、発光素子402として発光ピーク波長390nmの発光ダイオードを半田接合した。金ワイヤー403を介して、発光素子402の一方の電極をAlNパッケージ401の電極に接続した。
【0118】
発光素子402上には、シリコーンをドーム状に塗布して透明樹脂層404を形成した。透明樹脂層404の上には、第一の蛍光層405、第二の蛍光層406、および第三の蛍光層407を順次形成した。第一の蛍光層405は、赤色発光蛍光体(R1)が30質量%含有された透明樹脂(シリコーン)を用いた。第二の蛍光層406の形成には、緑色蛍発光光体(G4)が30質量%含有された透明樹脂(シリコーン)を用いた。第三の蛍光層407の形成には、青色発光蛍光体(B1)が30質量%含有透明樹脂(シリコーン)を用いた。
【0119】
ここで用いた緑色発光蛍光体(G4)、赤色発光蛍光体(R1)および青色発光蛍光体(B1)の発光強度の温度依存性は、図9に示すとおりであった。図示する結果は、室温における発光強度を1として規格化したものである。図9に示されるように、緑色発光蛍光体(G4)は、200℃における発光強度は室温の場合の0.6程度である。2000℃において室温の場合の50%の発光強度が確保できれば合格であり、緑色発光蛍光体(G4)は、温度上昇による発光強度の低下が小さいことがわかる。なお、図9に示されるように、赤色発光蛍光体(R1)および青色発光蛍光体(B1)の温度特性は、緑色発光蛍光体(G4)の温度特性と同程度である。
【0120】
本実施例の発光装置を積分球内に設置し、20mA、3.1Vで駆動させたところ、色度(0.345,0.352)、色温度5000K、光束効率62.39lm/W、Ra=90であった。
【0121】
この発光装置の駆動電流を350mAまで上昇させながら、前述と同様の手法により発光特性を測定し、その結果を図10に示す。図示するように、赤色発光蛍光体(R1)および青色発光蛍光体(B1)とともに緑色発光蛍光体(G4)を用いた本実施例の発光装置は、駆動電流が上昇しても色度の変動は少なく、350mA駆動時においてもJIS規格の昼白色の色度範囲を逸脱することがない。
【0122】
光束効率、Raおよび色度もまた、以下に示すように変動が少なかった。
【0123】
240mA駆動:47.7lm/W、Ra=89
(x,y)=(0.341,0.348)
300mA駆動:44.7lm/W、Ra=88
(x,y)=(0.339,0.349)
350mA駆動:41.5lm/W、Ra=88
(x,y)=(0.336,0.347)
図11には、実施例1の発光装置の発光スペクトルを示す。実施例2〜7の発光装置の発光スペクトルも図11とほぼ同様のものが得られた。
【0124】
<実施例8>
出発原料としてSrCO3、Eu23、Si34およびAlNを用意した。これら各々0.664g、0.792g、3.788g、7.009gを秤量後、めのう乳鉢内で乾式混合した。得られた混合物をBNるつぼに充填し、7.5気圧の窒素雰囲気中、1800℃で4時間焼成して、設計組成が(Sr0.50Eu0.503Al19Si9ON31であるような青色発光蛍光体(B2)を合成した。
【0125】
前述と同様の赤色発光蛍光体(R1)および緑色発光蛍光体(G1)を用意し、前述の青色発光蛍光体とともに発光強度の温度依存性を調べた。室温における発光強度を1として規格化して図12に示す。図12に示されるように、緑色発光蛍光体(G1)は、200℃における発光強度は室温の場合の0.6程度である。200℃において室温の場合の50%程度の発光強度が確保できれば合格であり、緑色発光蛍光体(G1)温度上昇による発光強度の低下が小さいことがわかる。なお、図12に示されるように、赤色発光蛍光体(R1)および青色発光蛍光体(B2)の温度特性は、緑色発光蛍光体(G1)の温度特性と同程度である。
【0126】
これら3種類の蛍光体を用いる以外は実施例7と同様にして、本実施例の発光装置を作製した。この発光装置を積分球内に設置し、20mA、3.1Vで駆動させたところ、色度(0.345,0.352)、色温度5000K、光束効率56.09lm/W、Ra=89であった。この発光装置の発光スペクトルは図13に示すとおりであった。
【0127】
この発光装置の駆動電流を350mAまで上昇させながら、前述と同様の手法により発光特性を測定した。その結果を図14に示す。図示するように、赤色発光蛍光体(R1)および青色発光蛍光体(B2)とともに緑色発光蛍光体(G1)を用いた本実施例の発光装置は、駆動電流が上昇しても色度の変動は少なく、350mA駆動時においてもJIS規格の昼白色の色度範囲を逸脱することがなかった。
【0128】
光束効率およびRaもまた、以下に示すように変動が少なかった。
【0129】
240mA駆動:43.9lm/W、Ra=85
(x,y)=(0.331,0.340)
300mA駆動:43.9lm/W、Ra=85
(x,y)=(0.329,0.339)
350mA駆動:38.0lm/W、Ra=84
(x,y)=(0.327,0.337)
<緑色発光蛍光体(G8)〜(G10)の合成>
原料粉体として、Sr32、EuN、Si34、Al23およびAlNを用意し、バキュームグローブボックス中でそれぞれ秤量した。Sr32、EuN、Si34、Al23およびAlNの配合質量は、それぞれ2.676g、0.398g、6.548g、0.340g、および0.547gとした以外はG1と同様の方法で緑色発光蛍光体(G8)を得た。
【0130】
また、Sr32、EuN、Si34、Al23およびAlNの配合質量を、それぞれ2.676g、0.398g、6.431g、0.425g、および0.581gとした以外はG1と同様の方法で緑色発光蛍光体(G9)を得た。
【0131】
さらに、Sr32、EuN、Si34、Al23およびAlNの配合質量を、それぞれ2.676g、0.398g、6.314g、0.510g、および0.615gとした以外はG1と同様の方法で緑色発光蛍光体(G10)を得た。
【0132】
焼成後の蛍光体(G8)〜(G10)は、いずれも体色が黄緑色の粒子であり、ブラックライトで励起した結果、緑色発光が観察された。
【0133】
こうして得られた緑色発光蛍光体(G8)〜(G10)について、前述と同様にピーク一致数、酸素濃度比、量子効率、および発光波長を調べた。その結果を、真空雰囲気中での熱処理温度とともに下記表3にまとめる。
【表3】

【0134】
上記表3に示されるように、蛍光体(G8)〜(G10)は、いずれも14ピーク以上が標準と一致していることから、Sr3Al3Si13221属結晶である。これら蛍光体(G8)〜(G10)においては、酸素濃度比は1.0〜3.8の範囲内であり、88%以上の量子効率が得られている。
【0135】
いずれの蛍光体も490〜580nmの間に発光ピークを有しており、緑色発光蛍光体である。
【0136】
発光中心であるEuの濃度がいずれも同程度であることから、緑色発光蛍光体(G8)、(G9)および(G10)も、前述の緑色発光蛍光体(G1)と同様に、温度上昇による発光強度の低下が小さく、赤色発光蛍光体(R1)とを用いて作製した発光装置においても同様の発光特性が得られることが推測される。
【0137】
<緑色発光蛍光体(G11)〜(G13)の合成>
真空雰囲気中での熱処理条件を次のように変更する以外は緑色発光蛍光体(G1)の場合と同様にして、緑色発光蛍光体(G11)〜(G13)を得た。
【0138】
緑色発光蛍光体(G11):真空雰囲気中での熱処理なし
緑色発光蛍光体(G12):350℃
緑色発光蛍光体(G13):650℃
焼成後の蛍光体(G11)〜(G13)は、体色が黄緑色の粒子であり、ブラックライトで励起した結果、緑色発光が観察された。
【0139】
こうして得られた緑色発光蛍光体(G11)〜(G13)について、前述と同様にピーク一致数、酸素濃度比、量子効率、および発光波長を調べた。その結果を、真空雰囲気中での熱処理温度とともに下記表4にまとめる。
【表4】

【0140】
上記表4に示されるように、蛍光体(G11)〜(G13)は、いずれも13ピーク以上が標準と一致しているものの、酸素濃度比は1.0〜3.8の範囲外である。量子効率が高々63%なのは、これが原因であると推測される。
【0141】
緑色発光蛍光体(G11)〜(G13)の457nm励起における発光スペクトルは図15に示すとおりであった。図15に示す発光強度は、励起光源のピーク強度を1として求めた。図示するように緑色発光蛍光体(G11)〜(G13)は、波長490〜580nmにおける発光強度は、たかだか0.08である。図4に示した緑色発光蛍光体(G1)〜(G4)の結果と比較すると、緑色発光蛍光体(G11)〜(G13)は、十分な発光強度が得られないことがわかる。これは、窒素雰囲気中での熱処理の後、還元性雰囲気中での熱処理の前に、真空雰囲気中での熱処理が行なわれなかったことが原因であると推測される。
【0142】
緑色発光蛍光体(G1)〜(G13)について、酸素濃度比(Oouter/Oinner)と量子効率との関係を、図16にまとめて示す。図16に示されるように、酸素濃度比が小さすぎる場合には、量子効率を高めることができず、酸素濃度比が大きすぎる場合にも、量子効率を高めることができない。量子効率を高めるには、適切な酸素濃度比の範囲が存在することがわかる。
【0143】
<比較例1>
緑色発光蛍光体を緑色発光蛍光体(G11)に変更した以外は実施例1と同様にして、本比較例の発光装置を作製した。
【0144】
緑色発光蛍光体(G11)と赤色発光蛍光体(R1)の発光強度の温度依存性を、室温における発光強度を1として規格化すると図17に示すとおりであった。図17に示されるように、緑色発光蛍光体(G11)は、200℃における発光強度は室温の場合の0.3未満であることから、温度上昇による発光強度の低下が大きいことがわかる。
【0145】
この発光装置を積分球内に設置し、20mA、3.1Vで駆動させたところ、色度(0.345,0.352)、色温度5000K、光束効率24.0lm/W、Ra=91であった。
【0146】
この発光装置の駆動電流を350mAまで上昇させながら、前述と同様の手法により発光特性を測定し、その結果を図18に示す。図示するように、赤色発光蛍光体(R1)とともに緑色発光蛍光体(G11)を用いた本実施例の発光装置は、駆動電流が上昇により色度が顕著に変化し、JIS規格の色度範囲を大きく逸脱した。光束効率およびRaも、以下に示すように著しく減少した。
【0147】
240mA駆動:15.5lm/W、Ra=72
300mA駆動:14.0lm/W、Ra=66
350mA駆動:12.2lm/W、Ra=53
<比較例2>
緑色発光蛍光体(G14)として(Ba0.1Sr0.82SiO4:Eu2+を用い、赤色蛍光体(R2)としてピーク波長585nmの(Sr0.8Ca0.2)SiO4:Eu2+を用いて、図2に示した構成の発光装置を作製した。8mm角のAlNパッケージ401の上に、発光素子402として発光ピーク波長455nmの発光ダイオードを半田接合した。金ワイヤー403を介して、発光素子402の一方の電極をAlNパッケージ401の電極に接続した。
【0148】
発光素子402の上には、シリコーンをドーム状に塗布して透明樹脂層404を形成した。透明樹脂層404の上には、第一の蛍光層405および第二の蛍光層406を順次形成した。第一の蛍光層405の形成は、赤色発光蛍光体(R2)が40質量%含有された透明樹脂(シリコーン)を用いた。第二の蛍光層406の形成には、緑色発光蛍光体(G11)が30質量%含有された透明樹脂(シリコーン)を用いた。
【0149】
なお、緑色発光蛍光体(G14)および赤色発光蛍光体(R2)の発光強度の温度依存性は、図19に示すとおりであった。図示する結果は、室温における発光強度を1として規格化したものである。図19に示されるように、緑色発光蛍光体(G14)は、200℃における発光強度は室温の場合の0.3未満であることから、温度上昇による発光強度の低下が大きいことがわかる。
【0150】
この発光装置を積分球内に設置し、20mA、3.1Vの条件で駆動させたところ、色度(0.345,0.352)、色温度5000K、光束効率68.6lm/W、Ra=86であった。この発光装置の発光スペクトルは、図20に示すとおりであった。
【0151】
この発光装置の駆動電流を350mAまで上昇させながら、前述と同様の手法により発光特性を測定し、その結果を図21に示す。図示するように、赤色発光蛍光体(R2)とともに緑色発光蛍光体(G14)を用いた本比較例の発光装置は、駆動電流の上昇により色度が顕著に変化し、JIS規格の色度範囲を大きく逸脱した。光束効率およびRaも、以下に示すように著しく減少した。
【0152】
240mA駆動:43.9lm/W、Ra=76
300mA駆動:33.9lm/W、Ra=68
350mA駆動:26.9lm/W、Ra=57
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0153】
100…樹脂基材; 101,102…リード; 103…パッケージカップ
104…反射面; 105…凹部; 106…発光チップ
107…ボンディングワイヤー; 108…ボンディングワイヤー; 109…蛍光層
110…蛍光体; 111…樹脂層; 401…AlNパッケージ
402…発光ダイオード; 403…ボンディングワイヤー: 404…透明樹脂層
405…第一の蛍光層; 406…第二の蛍光層; 407…第三の蛍光層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Euで付活されたSr3Si13Al3221属結晶を含む粒子を含有し、波長250〜500nmの光で励起した際に波長490〜580nmの間に発光ピークを有する発光を示す蛍光体であって、前記粒子は、表面から5nmまでの外側領域における前記結晶中の酸素濃度の平均値(Oouter)と、表面から5nmより深い内側領域における前記結晶中の酸素濃度の平均値(Oinner)との比(Oouter/Oinner)が1.0〜3.8であることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
前記蛍光体は、下記組成式(1)で表わされる組成を有することを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
(Sr1-xEux3-yAl3+zSi13-z2+u21-w (1)
(式中、0<x<1、−0.1≦y≦0.30、−3≦z≦1、−3<u−w≦1.5)
【請求項3】
波長250〜500nmの光を発する発光素子と、
前記発光素子からの光を受けて緑色発光する蛍光体を含有する緑色発光層とを具備し、前記緑色発光する蛍光体は請求項1または2に記載の蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
前記発光素子は250〜500nmの波長範囲の光を発し、
波長580〜660nmの間に発光ピークを有する赤色発光蛍光体を含有する赤色発光層をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子は250〜430nmの波長範囲の光を発し、
波長580〜660nmの間に発光ピークを有する赤色発光蛍光体を含有する赤色発光層、および波長400〜490nmの間に発光ピークを有する青色発光蛍光体を含有する青色発光層をさらに具備することを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項6】
請求項1に記載の蛍光体の製造方法であって、
Sr原料、Al原料、Si原料およびEu原料を含む混合粉体を、窒素雰囲気中で熱処理する工程と、
前記窒素雰囲気中での熱処理後、真空雰囲気中、400〜600℃で熱処理する工程と、
前記真空雰囲気中での熱処理後、水素濃度1%以上100%未満のN2/H2の還元性雰囲気中で熱処理する工程と
を具備することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項7】
前記真空雰囲気は、13.3Pa以下であることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−43937(P2013−43937A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182626(P2011−182626)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】