説明

蛍光体及びこれを用いた発光装置

【課題】 本発明は、輝度維持率の高い信頼性の高い緑色発光蛍光体を提供すること、およびそれを用いた発光装置を提供すること。
【解決手段】 実質的な組成がMMgSi16:Eu(Mは、Ca、Sr、Ba、Zn、Mnの群から選ばれる少なくとも1つであり、XはF、Cl、Br、Iの群から選ばれる少なくとも1つである。)の一般式で表される蛍光体であって、該蛍光体は、Y、Sc、Lu、La、Ce、Pr、Tbから選ばれる少なくとも一種の元素が含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体及びこれを用いた発光装置に関し、より詳しくは信頼性の高い緑色発光蛍光体及びこれを用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子より放出される光源光と、これに励起されて光源光と異なる色相の光を放出できる波長変換部材とを組み合わせることで、光の混色の原理により、多様な波長の光を放出可能な発光装置が開発されている。例えば、発光素子より、紫外から可視光に相当する短波長側領域の一次光を出射して、この出射光によって波長変換部材であるR・G・B(Red Green Blue)蛍光体を励起させると、光の三原色である赤色、青色、緑色が加色混合されて白色光が得られる。なかでも、緑色発光蛍光体に関しては白色への寄与が大きいことから発光特性に関する要求度も高く、これまで様々な蛍光体が検討されてきた。
【0003】
例えば、LED(発光ダイオード)ベースの白色に発光する照明ユニットであって、LEDが一次UV放射光または青色光を発するものが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。この照明ユニットには、緑色に発光する蛍光体が含まれており、この蛍光体によって一次放射線の部分的な変換が行われ、照明ユニットから混色光が得られる。この照明ユニットでは、緑色発光の蛍光体として、Euで活性化されたカルシウム−マグネシウム−クロロシリケート(CaMg(SiO)Cl)蛍光体が使用されている。
【0004】
また一方、カラーブラウン管(CRT)、投写管(PRT)、電界放出型ディスプレイ(FED)、蛍光表示管(VFD)などの陰極線管においては、近年高輝度化、高詳細化のニーズが高まっており、これらの陰極線管に用いられる蛍光体に対してもさらなる特性改善が要求されている。また、所望とする放射光の各成分の割合は、機器の最終形態により種々であるが、いずれにしろ有効波長域に相当しない波長域を含む発光は、一部を最終利用系に不適な成分光として、吸収可能なフィルター等でカットされる。この結果、相対的に光束量が低減するという問題があった。
【0005】
例えば液晶表示装置は、白色光からRGB成分に分離するために、色毎のカラーフィルターを備える。カラーフィルターは、所定の波長範囲の光を透過することにより所望の色を表示する。したがって、上記の発光装置と同様の原理で発光素子と蛍光体とを併用して白色光を実現し、さらにこの白色光をカラーフィルターでもって三原色の各成分に分離しようとすれば、カラーフィルターの透過率のピークと、分離された各原色における発光の輝線のピークとが合致していること、また各色のカラーフィルター透過特性のオーバーラップがないことが、光有効性の観点から望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2003−535477号公報
【特許文献2】特表2003−535478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ディスプレイや照明までも含めた発光装置に使用される蛍光体として、上記の緑色発光の蛍光体の組成では、輝度が十分でなく光損失が大きいため、さらなる発光特性の改良が求められている。例えば、上記のクロロシリケート蛍光体で緑色成分を再現しようとすれば、発光のピーク波長が理想波長よりも短波長側に位置する。したがって、余分な輝線を非透過にするため、カラーフィルター内の顔料濃度を高くしてフィルター性を高める必要が生じ、これにより光損失のみならずカラーフィルターの透過率が低下して明るさに欠ける問題があった。
【0008】
また、上記の蛍光体は基準組成に塩素を比較的多く含有しており、発光素子を光源とする発光装置にこの蛍光体を載置した場合には好ましくない影響が生じる。この問題点について、図面を用いて説明する。図1は、一般的な発光装置を示す概略断面図である。この発光装置100は、上部に開口したカップ形状のパッケージ110と、このパッケージ110のカップ形状内に搭載された発光素子101とを備えており、パッケージ110のカップ内は蛍光体102を含有する封止樹脂103でもって充填されている。また発光素子101は、パッケージ110のカップ内の表面に形成された正負のリード電極111と、導電ワイヤ104を介して電気的に接続されている。リード電極111を介して外部より電力の供給を受けて発光素子101は発光する。発光素子101より出射された光は、封止樹脂103内を透過し、また、その一部を蛍光体102でもって波長変換されて、上部から混色光が放出される。
【0009】
このような発光装置100では、発光素子101から出射した光を、反射部材112によって光取り出し側へと反射させる手段が一般的に施されている。反射部材112は一般に銀や金、アルミニウムのような金属であり、リード電極111上に被覆されている。
【0010】
一方、封止部材103の樹脂材料として、耐熱性・耐候性の優れた樹脂材料を用いること多いが、概してこのような樹脂材料はガスバリア性が低い傾向にある。従って、樹脂内に含有された蛍光体102は、樹脂を透過したガスや水分に起因して構成元素が溶出するおそれがあり、この結果、金属製の反射部材を劣化・酸化させることがある。これにより反射特性が低減され、発光装置100の光出力が低下してしまうおそれがあった。
【0011】
さらに、上記カルシウム−マグネシウム−クロロシリケート蛍光体は、他の緑色発光蛍光体である(Ba,Sr)SiO:Eu、βサイアロン、BaSi12:Eu、SrSi:Euなどと比較して温度に対する輝度の維持率(温度特性)が低い問題があった。
【0012】
本発明は上述の問題を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、温度に対する輝度維持率の高い信頼性の高い緑色発光蛍光体を提供すること、およびそれを用いた発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意研究の結果、特定の元素組成比を有する蛍光体により、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、実質的な組成が以下の一般式で表される蛍光体であって、該蛍光体は、Y、Sc、Lu、La、Ce、Pr、Tbから選ばれる少なくとも一種の元素が含有されている。
MgSi16:Eu
(Mは、Ca、Sr、Ba、Zn、Mnの群から選ばれる少なくとも1つであり、XはF、Cl、Br、Iの群から選ばれる少なくとも1つである。)
これにより、温度に対する輝度維持率の高い蛍光体を提供することができる。
前記Y、Sc、Lu、La、Ce、Pr、Tbから選ばれる少なくとも一種の元素は、0.002モルより多く0.010モル以下であることが好ましい。これにより輝度の高い蛍光体を提供することができる。
本発明は、近紫外線から可視光の短波長領域の光を発する光源と、前記光源からの光により励起され、前記光源と異なる波長の光を発する前記蛍光体と、を有する発光装置に関する。これにより発光特性に優れた発光装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、温度に対する輝度維持率の高い緑色発光蛍光体を提供することができる。また、輝度の高い蛍光体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一般的な発光装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための、蛍光体及びこれを用いた発光装置並びに蛍光体の製造方法を例示するものであって、本発明は、蛍光体及びこれを用いた発光装置並びに蛍光体の製造方法を以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0017】
なお色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。具体的には、380nm〜455nmが青紫色、455nm〜485nmが青色、485nm〜495nmが青緑色、495nm〜548nmが緑色、548nm〜573nmが黄緑色、573nm〜584nmが黄色、584nm〜610nmが黄赤色、610nm〜780nmが赤色である。本明細書において、近紫外線から可視光の短波長領域の光は、特に限定されないが250〜485nmの領域をいう。
【0018】
(実施の形態)
実施の形態に係る蛍光体は、実質的な組成が以下の一般式で表される蛍光体であって、この蛍光体は、Y(イットリウム)、Sc(スカンジウム)、Lu(ルテチウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Tb(テルビウム)から選ばれる少なくとも一種の元素が含有されている。
MgSi16:Eu
(Mは、Ca、Sr、Ba、Zn、Mnの群から選ばれる少なくとも1つであり、XはF、Cl、Br、Iの群から選ばれる少なくとも1つである。Xのモル比は合成方法や処理方法によって変化する事がある。)
【0019】
Y、Sc、Lu、La、Ce、Pr、Tbから選ばれる少なくとも一種の元素は、0.002モルより多く0.010モル以下であることが好ましい。
この蛍光体は、近紫外線から可視光の短波長領域の光を吸収して緑色に発光する。具体的には495nm以上548nm以下の波長範囲に発光ピークを有する緑色光である。ただし、含有する元素量や組成の調整によってこの発光ピークは変動する。したがって、組成の質量比を制御することで意図的に発光ピークを変位させることもできる。
この蛍光体は、希土類であるEuが発光中心となる。ただ、Euのみに限定されず、Euの一部を他の希土類金属やアルカリ土類金属に置き換えて、Euと共賦活させたものも使用できる。
【0020】
また、この蛍光体には、フラックスとして種々の添加元素や、必要に応じてホウ素を含有させることもある。これにより、固相反応を促進させて均一な大きさの粒子を形成することが可能となる。
【0021】
また蛍光体は、少なくとも一部が結晶を有することが好ましい。ガラス体(非晶質)は構造がルーズなため、蛍光体中の成分比率が一定せず色度ムラを生じるおそれがある。これを回避するため生産工程における反応条件を厳密に一様になるよう制御することを要する。一方、この蛍光体は、ガラス体でなく結晶性を有する粉体あるいは粒体にできるため、高い発光輝度を有し、製造及び加工が容易である。また、この蛍光体は有機媒体に均一に溶解でき、発光性プラスチックやポリマー薄膜材料の調整が容易に達成できる。具体的に、この蛍光体は、少なくとも50重量%以上、より好ましくは80重量%以上が結晶を有している。これは、発光性を有する結晶相の割合を示し、50重量%以上、結晶相を有しておれば、実用に耐え得る発光が得られるため好ましい。
【0022】
発光装置に搭載することを考慮すれば、蛍光体の粒径は2μm〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは5μm〜50μmである。上記の範囲の粒径を有する蛍光体であれば、光の吸収率及び変換効率が高い。一方、2μmより小さい粒径を有する蛍光体は、凝集体を形成しやすい傾向にある。また、この平均粒径値を有する蛍光体が、頻度高く含有されていることが好ましい。さらに、粒度分布においても狭い範囲に分布しているものが好ましい。粒径、及び粒度分布のバラツキが小さく、光学的に優れた特徴を有する粒径の大きな蛍光体を用いることにより、より色ムラが抑制され、良好な色調を有する発光装置を提供することができる。したがって、
【0023】
(製造方法)
以下に、実施の形態に係る蛍光体の製造方法について説明する。蛍光体は、その組成に含有される元素の単体や酸化物、炭酸塩あるいは窒化物などを原料とし、各原料を所定の組成比となるように秤量する。
【0024】
具体的に、原料混合物中のM量、Eu量、R量、Mg量、Si量、X量の仕込み組成比が、M:Eu:R:Mg:Si:X=(6.5〜7.5):(0.5〜1.5):(0.0001〜0.1):(0.5〜1.5):4:(1.0〜2.5)の関係を満たすように各原料を秤量する。ここでRはY、Sc、Lu、La、Ce、Pr、Tbから選ばれる元素を指し、XはF、Cl、Br、Iから選ばれる元素を指す。混合機を用いてこれらの原料を湿式又は乾式で混合する。混合機は工業的に通常用いられているボールミルの他、振動ミル、ロールミル、ジェットミルなどの粉砕機を用いて粉砕して比表面積を大きくすることもできる。また、粉末の比表面積を一定範囲とするために、工業的に通常用いられている沈降槽、ハイドロサイクロン、遠心分離器などの湿式分離機、サイクロン、エアセパレータなどの乾式分級機を用いて分級することもできる。
【0025】
上記の混合した原料をSiC、石英、アルミナ、BN等の坩堝に詰め、窒素や水素が含まれる還元雰囲気中にて焼成を行う。焼成雰囲気はアルゴン雰囲気、アンモニア雰囲気なども使用することができる。焼成は1000℃から1250℃の温度で、1時間から30時間行う。
【0026】
焼成されたものを粉砕、分散、濾過等して目的の蛍光体粉末を得る。固液分離は濾過、吸引濾過、加圧濾過、遠心分離、デカンテーションなどの工業的に通常用いられる方法により行うことができる。乾燥は、真空乾燥機、熱風加熱乾燥機、コニカルドライヤー、ロータリーエバポレーターなどの工業的に通常用いられる装置により行うことができる。
【0027】
蛍光体原料に関して、蛍光体組成のSiは、酸化物、窒化物化合物を使用することが好ましいが、イミド化合物、アミド化合物などを使用することもできる。例えば、SiO、Si、Si(NH、MgSiなどである。一方、Si単体のみを使用して、安価で結晶性の良好な蛍光体とすることもできる。原料のSiの純度は、2N以上のものが好ましいが、Li、Na、K、B、Cuなどの異なる元素が含有されていてもよい。さらに、Siの一部をAl、Ga、In、Tlで置換することもできる。また、蛍光体組成のSiをGe、Sn、Ti、Zr、Hfに置換してもよい。
【0028】
アルカリ土類金属のMg,Ca,Sr,Baはハロゲン塩と酸化物、炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩などを組み合わせて、所定のハロゲン比率になるように使用することができる。また、ハロゲンを導入する場合、アルカリ土類金属のハロゲン塩の変わりにハロゲンを含むアンモニウム塩を用いることができる。
【0029】
Euは、酸化ユーロピウムEu、窒化ユーロピウム、イミド化合物、アミド化合物などの化合物や金属ユーロピウムも使用可能である。酸化ユーロピウムは、高純度のものが好ましく、また市販のものも使用することができる。
【0030】
さらにY、Sc、Lu、La、Ce、Pr、Tbの元素は、通常、酸化物、若しくは水酸化物で加えられるが、これに限定されるものではなく、メタル、窒化物、イミド、アミド、若しくはその他の無機塩類でも良く、また、予め他の原料に含まれている状態でも良い。また、各々の原料は、平均粒径が約0.1μm以上15μm以下、より好ましくは約0.1μmから10μmの範囲であることが、他の原料との反応性、焼成時及び焼成後の粒径制御などの観点から好ましく、上記範囲以上の粒径を有する場合は、アルゴン雰囲気中若しくは窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行うことで達成できる。
【0031】
また、原料は精製したものが好ましい。これにより、精製工程を必要としないため、蛍光体の製造工程を簡略化でき、安価な蛍光体を提供することができるからである。
【0032】
(発光装置)
実施の形態に係る蛍光体を用いた発光装置について説明する。本発明に係る蛍光体は、従来の発光装置に使用することができる。従来の発光装置には、例えば蛍光ランプ等の照明器具、ディスプレイやレーダ等の表示装置、液晶用バックライト等が挙げられる。このうち、励起光源として近紫外から可視光の短波長領域の光を放つ発光素子を備えた発光装置を使用することができる。
【0033】
励起光源は視感度特性の低い紫外線領域に主発光ピークを持つものが好ましい。人間の目の感じ方と光の波長には視感度特性による関係が成り立ち、555nmの光の視感度が最も高く、短波長及び長波長に向かうほど視感度が低下する。例えば、励起光源として使用する紫外線領域の光は、視感度の低い部分に属し、実質上使用する蛍光物質の発光色によって発光装置の発光色が決定される。また、投入電流の変化等に伴う発光素子の色ズレが生じた場合でも、可視光領域に発光する蛍光物質の色ズレが極めて小さく抑えられるため、結果として色調変化の少ない発光装置を提供することができる。紫外線領域は一般に380nm若しくは400nmよりも短波長のものをいうが、視感度的に420nm以下の光は殆ど見えないため、色調に大きく影響を及ぼさないためである。また、長波長の光よりも短波長の光の方が、エネルギーが高いためである。
【0034】
また、可視光の短波長側の領域に主発光ピークを持つ励起光源を用いることもできる。励起光源を蛍光体が含有された封止樹脂で覆う発光装置では、励起光源から出射された光が蛍光物質に吸収されずに透過し、この透過した光が封止樹脂から外部に放出される。励起光源に可視光の短波長側の光を用いると、この外部に放射される光を有効に利用することができる。よって発光装置から出射される光の損失を少なくすることができ、高効率の発光装置を提供することができる。
【0035】
発光素子を搭載した発光装置には、砲弾型や表面実装型など種々の形式がある。一般に砲弾型とは、外面を構成する樹脂の形状を砲弾型に形成したものを指す。また表面実装型とは、凹状の収納部内に発光素子及び樹脂を充填して形成されたものを示す。
【0036】
(発光素子)
発光素子は、近紫外線から可視光の短波長領域の光を発するものを使用することができる。近紫外線から可視光の短波長領域の光は、特に限定されないが250〜485nmの領域をいう。特に、290nm〜470nmの範囲が好ましい。一層好ましくは445nm〜470nmに発光ピーク波長を有するものである。これにより、本発明に係る蛍光体を効率よく励起し、可視光を有効活用することができるからである。当該範囲の励起光源を用いることにより、発光効率の高い蛍光体を提供することができるからである。また、励起光源に発光素子を利用することによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。可視光の短波長側領域の光は、主に青色光領域となる。
【0037】
(蛍光体)
本発明に係る蛍光体は、単独で用いることもできるが、他の蛍光体と組み合わせて使用することもできる。他の蛍光体は、発光素子からの光を吸収し異なる波長の光に波長変換するものであればよい。例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体・サイアロン系蛍光体、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類硫化物、アルカリ土類チオガレート、アルカリ土類窒化ケイ素、ゲルマン酸塩、又は、Ce等のランタノイド系元素で主に付活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩又はEu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機及び有機錯体等から選ばれる少なくともいずれか1以上であることが好ましい。例えば、(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu、(Y,Gd)(Ga,Al)12:Ce、(Ca,Sr)Si:Eu、CaAlSiN:Euなどである。
これにより種々の色調の発光装置を提供することができる。
【実施例】
【0038】
実施例1乃至12に係る蛍光体は、Y、Sc、Lu、La、Ce、Pr、Tbから選ばれる一種の元素を含有する組成がCaMgSi16Cl:Euとなるものを製造した。EuはCa若しくはMgの一部を置換しており、0.5mol用いる。Y、Sc、Lu、La、Ce、Pr、Tbから選ばれる元素は、0.004mol若しくは0.008mol用いる。
実施例1の製造方法は、仕込み組成比において、CaCO:Eu:Lu:MgO:SiO:CaCl=6.25:0.25:0.002:1:4:1.25(Ca:Cl:Mg:Si:Eu:Lu=7.5:2.5:1:4:0.5:0.004)となるように各原料を秤量する。具体的には、実施例1の蛍光体原料として以下の粉末を計量する。ただし、各蛍光体原料の純度を100%と仮定している。
炭酸カルシウム(CaCO)・・・・53.10g
酸化ユーロピウム(Eu)・・・・7.47g
酸化ルテチウム(Lu)・・・・0.068g
酸化マグネシウム(MgO)・・・3.42g
酸化ケイ素(SiO)・・・・20.39g
塩化カルシウム(CaCl)・・・・15.61g
秤取した原料をボールミルによって乾式で十分に混合し、さらに坩堝に詰め、還元雰囲気中にて1170℃で4時間焼成する。焼成されたものを粉砕及び湿式分散を行い、目的の蛍光体粉末を得ることができた。
実施例2乃至12の製造方法は、実施例1のLuの量及び元素が異なる以外は同様の方法を用いた。
比較例1は、Luに代えて、Dyを0.004mol使用した以外は、実施例1と同様である。
比較例2は、Luを用いなかった以外は、実施例1と同様である。
実施例1乃至10に係る蛍光体の色度座標、発光輝度を測定した。また、実施例1乃至5、7、8、10乃至12に係る蛍光体の輝度維持率、相対輝度維持率を測定した。色度座標、発光輝度は460nm励起におけるものを示す。輝度維持率は、25℃における輝度に対する100℃および200℃における輝度の相対値を示す。また、相対輝度維持率(%)は、比較例2の100℃および200℃における輝度維持率をそれぞれ100%とした時の相対値である。これらの結果を表1及び表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】


この結果から、実施例1乃至10は、比較例1に比べて高い発光輝度を示した。また実施例1乃至5、7、8、10乃至12は、比較例2に比べて100℃においても、200℃においても高い輝度維持率を示した。特に、実施例1乃至5、7、8、10乃至12は、比較例2の蛍光体と比べて、100℃あるいは200℃での相対輝度維持率に約1%以上の増加がある。
実施例1のLuに代えてSm、Ybを0.004mol、0.008molそれぞれ添加したところ、輝度が5%〜32%低下した。このことから、実施例1乃至12は予期せぬ効果を奏するものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の蛍光体及びこれを用いた発光装置は、蛍光表示管、ディスプレイ、PDP、CRT、FL、FEDおよび投射管等、特に青色発光ダイオード又は紫外線発光ダイオードを光源とする発光特性に極めて優れた白色の照明用光源、LEDディスプレイ、バックライト光源、信号機、照明式スイッチ、各種センサ及び各種インジケータ等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
100 発光装置
101 発光素子
102 蛍光体
103 封止樹脂
104 導電ワイヤ
110 パッケージ
111 リード電極
112 反射部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的な組成が以下の一般式で表される蛍光体であって、
該蛍光体は、Y、Sc、Lu、La、Ce、Pr、Tbから選ばれる少なくとも一種の元素が含有されている蛍光体。
MgSi16:Eu
(Mは、Ca、Sr、Ba、Zn、Mnの群から選ばれる少なくとも1つであり、XはF、Cl、Br、Iの群から選ばれる少なくとも1つである。)
【請求項2】
前記Y、Sc、Lu、La、Ce、Pr、Tbから選ばれる少なくとも一種の元素は、0.002モルより多く0.010モル以下である請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
近紫外線から可視光の短波長領域の光を発する光源と、
前記光源からの光により励起され、前記光源と異なる波長の光を発する請求項1又は2に記載の蛍光体と、を有する発光装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−195948(P2010−195948A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43410(P2009−43410)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】