説明

蛍光発光を用いた、分子構造の特定技術、および身体内腔の内側に並ぶ細胞種の治療技術

身体内腔壁を構成する分子から放出される蛍光を検出する技術には、自律性の硬質支持材を身体内腔へ導入する工程が含まれる。身体内腔の内腔壁の細胞は、上記硬質支持材に備えられ、特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源により、光照射される。上記硬質支持材に備えられる検出器は、光照射された細胞が特定の蛍光信号を発しているかを検出する。上記光照射された細胞から特定の蛍光信号が検出された場合、その検出された蛍光信号の上記内腔壁における、位置および/または強度が測定される。これらの技術を用いると、カプセルにより収集される情報を、胃腸癌やその他の腸の病状、疾病群の、治療または診断に活用できる。例えば、これらの技術を用いると、内因性蛍光団および外因性蛍光団を用いた画像診断や、光活性化される薬剤、または光活性化されない薬剤の標的部位での放出により、疾病部位の治療や、治療効果の測定を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本発明は、2002年8月1日になされた米国仮特許出願第60/400325号による恩典(benefit)を主張するものである。米国特許法119条(e)に基づき、参照として、本明細書に、その内容を織り込む。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、分子構造および動物の身体内腔の壁面の細胞種を特定することに関する。具体的には、標識された癌細胞の選択的破壊といった生体内治療などの、診断または治療を行うための、身体内腔壁面の細胞種の蛍光画像処理に関する。本発明は、腸癌、結腸癌、その他の病状および症候群の、診断および治療方法に利用できる。
【0003】
〔背景技術〕
胃腸(GI)管の癌は、早期に発見されれば、その処置が容易である。そのため、癌を早期に発見するための、胃腸管を検査するシステムの開発に、多大な労力がつぎ込まれてきた。その非常に重要な成果の1つが内視鏡であった。内視鏡を用いることで、医療従事者は、胃腸管の内部を検査することができる。内視鏡は、一纏めにされた光ファイバーケーブルの末端に、小型の光源を備えている。反射された光線像は、光ファイバーケーブルを通って、外部のデジタルカメラによって検出され、外部モニターに表示されたり、外部ビデオ記録装置に記録されたりする。また、デジタルビデオカメラによる外部モニター表示、および/または、外部ビデオ記録装置による記録が行われることもある。
【0004】
内視鏡は、食道、胃、および大腸の一部分の検査には適しているが、大腸の一部分(結腸)や小腸の大部分の検査に、内視鏡を用いることは不可能である。
【0005】
近年になって、微小な光学装置、デジタルカメラ、および無線送信システムを備えた飲み込むことができるカプセルが、それと相補的な外部モニターシステムとともに、小腸の検査用に開発された。
【0006】
例えば、上記のようなカプセルおよびモニタリングシステムとして、キブンイメージング社(Given Imagining Ltd.(ヨークニーム(Yokneam)、イスラエル))のM2Aや、RFシステム研究所(RF System Lab.(長野市、日本))のNorikaが販売されている。
【0007】
本明細書を作成する時点において、上記システムに関する情報が、それぞれ、givenimagining.comおよびrfnorika.comというインターネットドメイン名で、ワールドワイドウェブ上に公開されている。上記システムの構成要素に関しては、1997年2月18日に刊行された米国特許第5604531号(発明者:G.V. IddanおよびD. Sturlesi、以後、本特許文献を「Iddan I」と称す)を含む種々の特許に記載されている。そこで、参照として、本明細書に、その内容を織り込む。
【0008】
上記カプセルは、患者により飲み込まれ、小腸へと移動する。蠕動運動によりカプセルが小腸を移動する間、カプセルは、小腸壁を照らし、カメラシステムにより小腸壁を撮影し、その画像を患者の体外のモニタリングユニットに転送する。上記モニタリングユニットには、患者の胴の周囲に取り付ける無線周波数(rf)受信器と、受信した信号を読み取るプロセッサーと、読み取られた画像を記録する記録装置と、医療従事者に画像を示すディスプレイとが含まれる。
【0009】
カプセルが小腸を通過するには、約8時間がかかるため、通常、まず、データを記録し、その後、技術者が短時間(約1時間)でこれを確認できるように、ビデオテープを再生して、データを確認する。
【0010】
その他の身体の開口部(身体内腔)と同様に、小腸および大腸上部(結腸上部)の形態を撮影する上で、上記従来技術は非常に優れているが、上記の従来型カプセルシステムには、いくつかの欠点がある。GivenやNorikaシステムは、反射結像を行うことで、内腔の壁面の形態(腫瘍や内壁の突出などの形状など)をモニターする。
【0011】
しかし、癌細胞や前癌性細胞の中には、発生初期段階において、他の構造に由来する形態と区別できる構造を、上記細胞の壁面に、形成しないものもある。さらに、進行した段階、すなわち、腫瘍が、その形状から認識できる病状まで進行した段階においても、上記の従来型カプセルシステムは、治療効果が現われて死につつある細胞を含んでいる腫瘤と、治療に抵抗している細胞、または成長を続けている細胞を含んでいる腫瘤とを区別することができない。
【0012】
他の腸壁細胞の疾病では、正常な細胞と形態が同じである異常細胞において、異常な機能の発揮、または、異常タンパク質などの異常分子の生成、もしくは、吸収が見られる。例えば、上記の疾病として、胃腸管運動、虚血症、タンパク質失調症(protein-losing disorders)などが挙げられる。したがって、既存のカプセルシステムでは、疾病に深く関与する細胞の種類、および壁面構造を形成している細胞の機能を区別することができない場合がある。
【0013】
上述のように、小腸もしくは大腸上部、またはその両方の細胞の種類および機能を特定する方法に対する必要性は多大なものである。
【0014】
一般的には、身体内腔全般の中でも、胃腸管、洞房管(sinus passage)や、大血管などの壁面の細胞の、種類および機能を決定する技術が必要とされている。
【0015】
〔発明の概要〕
本発明の種々の実施形態では、細胞の変化過程に関与する分子を区別するために、蛍光放射の特性を利用し、自律航行が可能なカプセルによって、身体内腔の壁面の細胞の種類や隆起を検出する。上記カプセルが収集したデータは、疾病の診断および治療に役立てることができる。いくつかの実施形態において、上記カプセルは、光活性化毒素を活性化するといった治療学的機能を1つ以上有している。本発明の特徴には、カプセル、モニタリングユニットおよびモニタリングシステムと、上記カプセルを身体内腔の内部細胞の蛍光を測定するために利用する方法と、それら細胞を含む疾病の診断および治療のために利用する方法とが含まれる。
【0016】
本発明の一態様によると、身体内腔の壁面の細胞の、種類と機能とを決定する方法には、自律性の硬質支持材(autonomous solid support)を身体内腔に導入することが含まれる。身体内腔の壁面の細胞は、上記硬質支持材に取り付けられ、特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源により照射される。上記硬質支持材に取り付けられた検出器は、光を照射された細胞が、特定の蛍光信号を発しているかを検出する。上記の光を照射された細胞から、特定の蛍光信号が検出された場合、その強度または/および身体内腔でその信号が検出された位置が決定される。
【0017】
種々の実施形態において、内因性および/または外因性蛍光プローブより、上記信号は発せられる。
【0018】
本発明の態様に基づく一実施例では、特定の蛍光信号が検出される内腔壁の位置を示す画像が作成される。
【0019】
本発明の態様に基づく別の実施例では、上記内腔壁の特定の細胞に、結合または吸収される、外因性蛍光標識プローブが、上記の光を照射された細胞を含む、上記内腔壁の特定の細胞に導入される。上記の外因性プローブは、血液や消化器系を通じて、上記内腔壁へ導入される。この際、上記の外因性プローブは、腫瘍組織に選択的に取り込まれてもよく、カプセルから内腔に直接放出され、その後、内腔壁の細胞に選択的に取り込まれてもよい。また、その他の既存技術を用いても構わない。いずれの場合にも、上記の外因性プローブは、特定の蛍光信号を放出するものである。
【0020】
本発明の別の実施形態では、上記硬質支持材の容器より、外因性蛍光標識プローブが放出される。このような実施形態では、上記外因性蛍光標識プローブは、内腔壁の細胞によって、局部的に取り込まれる。
【0021】
本発明の別の実施形態では、上記の外因性プローブの局部への吸収を促進するために、超音波が、硬質支持材に備えられた音源より、発せられる。
【0022】
本発明の別の実施例では、上記の外因性プローブの吸収を促進するために、電界が、硬質支持材に備えられた電極によって、生じさせられる。
【0023】
本発明の別の態様によると、腸細胞より発せられる蛍光を、体内で検出する方法には、自律性の硬質支持材を腸の内腔へと導入することが含まれる。腸壁の細胞は、上記硬質支持材に取り付けられ、特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源により、照射される。上記硬質支持材に取り付けられた検出器は、光が照射された細胞が、特定の蛍光信号を発しているかを検出する。特定の蛍光信号が、上記の照射された細胞から検出された場合、その強度または/および上記腸でその信号が検出された位置を検出する。
【0024】
本発明の別の態様によると、動物の腸管内部の異常細胞を破壊する方法には、異常な腸細胞に選択的に結合、または吸収される外因性蛍光標識プローブを、その動物に投与することが含まれる。
【0025】
自律性の硬質支持材は、腸の内腔へ導入される。腸壁の細胞は、硬質支持材に取り付けられ、上記外因性プローブに含まれる、蛍光標識によって発せされる特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源により、照射される。上記硬質支持材に取り付けられた検出器は、光を照射された細胞が、特定の蛍光信号を発しているかを検出する。特定の蛍光信号が検出された場合、異常な腸細胞を破壊する薬剤が放出される。ある実施形態においては、薬剤中の、蛍光団や光活性化毒素を励起し、上記の異常な腸細胞を破壊するように、治療に最適化された信号が、上記硬質支持材より発せられる。
【0026】
本発明の別の態様によると、動物の腸管内部の異常細胞を破壊する方法には、異常な腸細胞に選択的に、結合、または吸収される、1つ以上の種類の外因性プローブを、その動物に投与することが含まれる。少なくとも1つのプローブは、蛍光標識を結合し、また、少なくとも1つのプローブは、光活性化毒素を結合する。多くの場合、光活性化毒素と蛍光標識とは、ひとつの同一物質である。
【0027】
自律性の硬質支持材は、腸の内腔に導入される。腸壁の細胞は、上記硬質支持材に取り付けられ、上記外因性プローブに含まれる、上記蛍光標識の特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源により照射される。上記硬質支持材に取り付けられた検出器は、光を照射された細胞が、特定の蛍光信号を発しているかを検出する。特定の蛍光信号が検出された場合、その細胞は、光活性化毒素を活性化するための光により照射され、異常細胞が破壊される。
【0028】
本発明の別の態様によると、動物の、腸管上部および/または腸管下部の、癌治療の効果を確認する方法には、腸管上部または腸管下部に、癌を有する動物に対し、上記癌細胞に選択的に、結合または吸収される外因性蛍光標識プローブを投与することが含まれる。
【0029】
上記の腸壁の細胞は、腸内腔に導入される第1の自律性の硬質支持材に取り付けられ、上記癌細胞の外因性プローブに含まれる蛍光標識により発せされる特定の蛍光信号を、励起する波長をもつ光源により、照射される。
【0030】
上記の第1の硬質支持材に取り付けられた検出器は、光を照射された癌細胞の、外因性プローブに起因する蛍光信号を検出し、第1蛍光発光量を決定する。第1蛍光発光量が決定された後、上記癌細胞を破壊するために、上記動物に治療薬が投与される。治療薬が投与された後、上記外因性蛍光標識プローブが、上記動物に投与される。
【0031】
腸壁の細胞は、腸の内腔に導入される第2の自律性の硬質支持材に取り付けられ、特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源により、照射される。上記の第2の硬質支持材に取り付けられた検出器は、癌細胞の上記外因性プローブに起因する蛍光信号を検出し、第2蛍光発光量を決定する。上記第1蛍光発光量および第2蛍光発光量の差異に基づき、治療の効果を決定することができる。ある実施形態においては、第1の硬質支持体および第2の硬質支持材は同じものである。
【0032】
本発明の別の態様によると、患者の身体内腔壁の細胞によって発せされる蛍光を検出するカプセルには、身体内腔の内側に収まる硬質支持材が含まれる。光源は、上記硬質支持材に取り付けられており、この光源から、特定分子において特定の蛍光信号を励起する波長の光が発せられる。第1光学部品は、上記硬質支持材に取り付けられており、この第1光学部品は、上記光源の光を利用して、上記身体内腔の上記内腔壁の一部に光を照射する。検出器は、上記硬質支持材に取り付けられており、この検出器は特定の蛍光信号に基づいて、測定を行う。
【0033】
第2光学部品は、上記硬質支持材に取り付けられており、この第2光学部品は、光が照射される部分より発せられる特定の蛍光信号を、上記検出器上へ導くのに用いられる。上記測定に基づくデータを、患者の体外のモニタリングユニットへと転送する、データ転送ユニットもこれに含まれる。
【0034】
上記態様に基づく実施形態においては、特定の蛍光信号以外の波長の光を除去するために、第2光学部品にフィルターが備えられている。
【0035】
上記態様に基づく実施形態においては、上記カプセルは、容器と放出機構とを備えている。上記容器には、少なくとも1つの外因性蛍光標識プローブと、少なくとも1つの異常細胞を破壊する薬剤とが貯蔵されている。上記放出機構は、命令に応じて、上記容器の内容物を放出する。また、本発明の別の実施例によると、上記カプセルには、電極が備えられており、この電極は電界を発生させ、上記内容物の放出後、上記容器より放出される上記内容物が、内腔壁の細胞に取り込まれるのを増進させる。
【0036】
本発明の別の実施例によると、上記カプセルには、音響トランスデューサーが備えられており、この音響トランスデューサーは、音波を発生させ、上記内容物の放出後、上記容器より放出される上記内容物が、内腔壁の細胞に取り込まれるのを増進させる。
【0037】
本発明の別の態様によると、動物の身体内腔の壁面の細胞より放射される蛍光を表示するモニタリングユニットには、上記身体内腔の内側に収まるカプセルからのデータを受信する受信器が備えられている。上記カプセルには、硬質支持材と、光源と、検出器と、データ転送システムとが備えられている。
【0038】
上記光源は、上記硬質支持材に備えられており、特定の分子において、特定の蛍光信号を励起する波長をもつ。上記検出器は、上記硬質支持材に備えられており、上記内腔壁の光を照射された部分より発せられる特定の蛍光信号に基づいて、測定を行う。上記データ転送システムは、上記測定に基づくデータを上記受信器へと転送する。また、上記モニタリングユニットには、上記データに基づく画像を作成するプロセッサーと、その画像を使用者に表示するディスプレイとが含まれる。
【0039】
本発明の別の態様によると、患者の身体内腔の壁面の細胞より放出される蛍光を検出するシステムには、カプセルとモニタリングユニットとが含まれる。上記カプセルには、身体内腔の内側に収まる硬質支持材と、光源と、検出器と、データ転送システムとが備えられている。
【0040】
上記光源は、上記硬質支持材に備えられており、特定分子において、特定の蛍光信号を励起する波長をもつ。上記検出器は、上記硬質支持材に備えられており、上記身体内腔の光を照射された部分より発せられる特定の蛍光信号に基づいて、測定を行う。上記データ転送システムは、上記硬質支持材に備えられており、上記測定に基づくデータを転送する。また、上記モニタリングユニットには、上記カプセルから上記データを受信する受信器と、上記データに基づく画像を作成するプロセッサーと、その画像を使用者に表示するディスプレイとが含まれる。
〔発明の詳細な説明〕
本発明の図表は例示のみを目的としたものであり、本発明は添付図面や参考文献中の構成要素と同等のものに限定されるものではない。本発明には、以下の図面が含まれている。
【0041】
図1は、本発明の実施例に基づく、身体内腔の壁面における細胞の種類や機能を決定する方法を詳細に示すフローチャートである。図2は、本発明の実施例に基づく、身体内腔壁のおける蛍光を検出するシステムを示すブロック図である。図3Aは、本発明の実施例に基づく、身体内腔壁における蛍光を検出する飲み込み式カプセルを示すブロック図である。図3Bは、本発明の実施例に基づく、上記カプセルを3次元的な相対座標を示す透視図である。図4は、本発明の実施例において使用されるコンピューターシステムを示すブロック図である。
【0042】
身体内腔の壁面における細胞の、種類および機能のみならず、特定の分子構造や組織の構成成分を定量的に特定する、方法および器具をここに示す。以下の例示を目的とした記述には、本発明を完全に理解できるように、非常に詳細に記載している。しかし、この分野に明るい当業者は、以下の本発明の詳細な記述を参考にせずとも本発明を実施できることは、明らかである。本発明がいたずらに不明瞭になることを避けるためにも、本発明において周知となる機器とその構造をブロック図に示しておく。
【0043】
本発明の実施例は、人間の腸管の機能不全を、診断および治療することに主眼を置いているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、他の実施例として、本発明の技術は、非ヒト動物に用いられても良い。さらに、他の実施例として、本発明の技術は、胃、食道、鼻腔、気管、および血管といった、腸管以外の身体内腔に用いられても良い。ここでいう、身体内腔とは、鼻、食道、胃、および腸を含む、カプセルが導入されうる全ての内腔を含むものである。また、ここでいう、腸には、小腸、大腸、結腸、および直腸が含まれる。
【0044】
本発明の実施例は、以下の章にその詳細が示されている。
【0045】
1. 機能の概要
2. 生物学的機能をもつ蛍光指標
2.1 生物学的機能をもつ天然蛍光マーカー−内因性プローブ
2.2 生物学的機能をもつ蛍光標識マーカー−外因性プローブ
2.3 生物学的機能をもつマーカーに結合する光活性化毒素
3. 機能性の画像化を行う方法
4. 機能性の画像化を行うシステム
4.1 構造の概要
4.2 自律性カプセルアセンブリ
4.3 外部アセンブリ
5. プロセッサーハードウェアの概要
<1.機能の概要>
本発明にかかる種々の実施例では、分子構造(タンパク質、酵素など)、組織の構成成分(コラーゲンなど)、血液構成成分(ヘモグロビンなど)、および、腸などの身体内腔に並ぶ特定の細胞集団を特定するために、特定の蛍光発光の特徴に基づく蛍光信号が用いられる。疾病の症状は、蛍光画像処理で、検出できるが、肉眼では確認できない微細な形態の変化と関連している。
【0046】
特定の細胞集団とは、通常細胞、または癌のような異常細胞を意味している。上記蛍光信号は、特定の細胞集団にある標的分子と、選択的に、結合または吸収される蛍光標識プローブより発せられる。このような蛍光信号を、以後、「外因性蛍光発光」と称する。また、上記蛍光信号は、細胞内に存在し、本来発光能をもつ、自然に発生する分子により発せられる。このような発光を、「内因性蛍光発光」と称する。いずれの場合にも、蛍光を発する分子が、上記カプセルによる測定の対象となる。このような分子を標的分子と称する。
【0047】
身体内腔に並ぶ細胞より放出される蛍光信号の検出は、上記標的分子の蛍光を励起することができる自律性カプセルを、上記内腔に導入し、上記標的分子により放出される蛍光信号を検出し、さらに、上記蛍光信号の強度および/またはその内腔における位置に関するデータを送信することによって、達成される。
【0048】
外部光源より発せられる励起光の組織への浸透深さの限度は、電磁帯域が、近赤外領域の場合、患者の身体より2000μm〜3000μm(ミクロン、1μm=10−6m)内部に位置する蛍光分子を励起できる程度である。近赤外には、約650nm〜1000nm(ナノメートル、1nm=10−9m)の波長が含まれる。可視帯域では、上記浸透深さは、より小さく、たったの約200μm〜300μmである。
【0049】
また、蛍光信号が検出されるためには、蛍光信号が身体を通り抜けるのに十分なエネルギーを有していなければならない。光ファイバーの内視鏡の範囲外にある腸の領域に位置する細胞からの蛍光放射は、患者身体の外皮から蛍光を測定する従来技術では、検出できなった。
【0050】
本発明のカプセルを、身体内腔に導入することにより、上記カプセルは、上記内腔壁と、直接、接触したり、または非常に近接したりする。そして、上記カプセルは、蛍光分子を励起し、さらに内腔壁の細胞から放出される蛍光信号を検出する。これらの信号は、現在の技術を用いた、身体内腔の外側にある検出器を使っては、測定することはできない。
【0051】
また、小腸やその他の身体内腔を通過する従来のカプセルは、光源から発せられ、内腔によって反射された光を検出するのみである。1つ以上の、広帯域白色光源、もしくは狭帯域光源、またはそれらを組み合わせた光源を用い、操作者は、巨大な腫瘍、ポリープ、腺腫、および炎症性組織のような巨視的な形態的異常、ならびに、時には、反射カラー画像で明らかな反射光の色の変化を探す。
【0052】
本発明の実施例では、カプセルは、標的分子の蛍光発光を励起する光(以後、これを「励起光」と称す)を発する光源と、標的分子の特定の蛍光反応を測定する検出器とを備えている。また、上記カプセルは、測定データを外部モニタリングユニットへと転送するデータ転送システムを備えている。これにより、上記カプセルが身体内腔より外部に取り出された後、または内腔内にある状態のどちらの場合でも、送信されたデータを確認することができる。上記カプセルを図示する実施例については、後の章で述べる。
【0053】
上記カプセルにより集められた情報は、上記内腔に並ぶ細胞に影響を及ぼす疾病の、診断および治療に役立てることができる。ある実施例においては、上記カプセルは、1つ以上の容器を備えており、上記容器には、蛍光標識プローブなどの物質が蓄えられる。
【0054】
また、ある実施例においては、上記カプセルは、局所的な薬剤の投与能、選択的にプローブを吸収する細胞を破壊することができる毒素と結合した蛍光標識プローブの投与能、その他の機能、または、これらを組み合わせた機能といった治療機能を、1つ以上有している。
【0055】
また、ある実施例においては、上記カプセルが、容器から物質を放出する際に、上記カプセルは、電界を発生させ、電気穿孔(electroporation)を誘発することにより、および/または、超音波を放射し超音波穿孔(sonoporation)を誘発することにより、上記内腔壁の細胞への上記放出された物質の吸収を増大させる。
【0056】
図1は、本発明の実施例に基づいた、身体内腔の壁面にある細胞の、種類および機能性を特定する方法を説明するフローチャートである。図1では、図示する都合上、特定の順番で工程を示しているが、他の実施例においては、上記工程は、異なる順番、または時間的に重なって、実行されてもよい。
【0057】
例えば、ある実施例においては、ステップ102は、ステップ110の後に行われるが、他の実施例においては、身体内腔に並ぶ細胞の内因性蛍光発光を評価する場合、ステップ102は行われない。これに関しては、後の章に、より詳細に記されている。
【0058】
ステップ102において、悪性細胞などの内腔壁の細胞集団により、選択的に吸収される蛍光標識プローブが、患者に投与される。上記の蛍光標識プローブ分子は、どのような方法で投与されてもよい。その方法としては、血流への注射、近接組織への注射、経口投与、および身体内腔の内部のそれぞれの地点からの局所的放出などの方法が挙げられる。
【0059】
上記身体内腔の局所へ、上記カプセルの容器から蛍光標識プローブを放出する実施例においては、ステップ102は、ステップ110の後に行われる。これに関しては、次に述べる。ある実施例においては、上記カプセルの容器から、上記蛍光標識プローブが放出される際に、上記カプセルは、電界および/または超音波を発生させ、電気穿孔および/または超音波穿孔により、細胞に吸収されるプローブを増大させることができる。
【0060】
ある実施例においては、正常細胞と異常細胞とを特定するために、内因性蛍光発光の差異を用いる。このような実施例においては、ステップ102は行われない。
【0061】
ステップ110において、カプセルが、小腸などの身体内腔に導入される。上記カプセルは、どのような方法で上記内腔に導入されても構わない。例えば、小腸に上記カプセルを導入する方法としては、患者が上記カプセルを飲み込む方法、内視鏡などの器具を用いて小腸開口部からカプセルを導入する方法、外科的にカプセルを導入する方法などが挙げられる。上記の例の中では、最初の方法が、患者の健康な組織を、最も冒さない。
【0062】
ステップ120において、(ステップ102で導入された)上記外因性蛍光標識プローブ、または内因性蛍光発光を放出することが知られる自然発生分子のいずれかである、標的分子の、蛍光発光を励起する特定の波長をもつ、上記カプセル上の光源により、上記内腔壁の一部分に、光が照射される。上記カプセルに備えられた光源は、どのような方法で腸壁に光を照射しても構わない。具体的な実施例は、後の章に記されている。ある実施例においては、上記標的分子の蛍光発光を励起する特定の波長に、別の波長を加えた光線によって、照射を行ってもよい。
【0063】
ステップ130において、上記標的分子より放出される蛍光信号が、検出器により検出されるかどうかが決定される。蛍光信号が検出された場合は、ステップ160に進み、蛍光信号が検出されなかった場合は、ステップ140へと進む。上記のカプセルは、どのような方法で蛍光発光を検出しても構わない。ステップ130は、上記検出器から測定結果を取得する工程を含む。例えば、ステップ130は、1つ以上の特定の波長で検出器にあたる、上記蛍光信号の光の強度を測定する工程を含む。
【0064】
ステップ140においては、上記カプセルは、(自律的、腸の蠕動運動、または、上記カプセルを移動させるその他の外力、のいずれかにより)腸の端から端に沿って、別の場所へと移動する。ある実施例においては、ステップ140は、上記カプセルが、外部モニタリングユニットに無線周波数(rf)信号を送信することによって、上記カプセルの位置を知らせる工程を含む。また、ある実施例においては、上記検出器からの、上記rf信号に関する陰性の結果は、画像を作成する外部モニタリングユニットに記録されたり、伝えられたりする。
【0065】
ステップ160においては、上記蛍光信号の特徴が、上記検出器によって行われる測定に基づき、特定される。例えば、ある実施例においては、上記蛍光信号に由来する2つの波長の強度比が求められる。別の例としては、種々の実施例において、光を照射された全部分、または光を照射された部分の種々の領域の、蛍光信号の強度または強度比が求められる。ある実施例においては、光が照射された部分におけるそれぞれの領域の強度が、別々に求められ、作成される画像において、別のピクセルになる。ある実施例においては、光が照射された部分の複数領域について、位置を決定し、各々の光照射部分から複数のピクセルを決定する工程が、ステップ160に含まれる。ある実施例においては、画像は、上記カプセルが、腸を通過しながら、ステップ160を数回行うことにより、作成されるピクセルから、作成される。
【0066】
ステップ170においては、ステップ160で特定される、上記標的分子の蛍光信号の特徴に基づき、診断法または治療法が決定される。例えば、特異的に癌細胞に、結合または吸収される蛍光標識プローブ、または悪性細胞と会合する内因性蛍光分子からの、蛍光信号がなければ、腸の光照射部分に、癌は存在しないと決定される。このような実施例においては、蛍光信号の検出は、悪性細胞の存在を決定する。上記蛍光の位置および強度の解析は、癌細胞が存在する位置の画像を作成するために使用される。
【0067】
ある実施例においては、蛍光信号により示される癌の疑いがある場所で、生体組織検査が行われる。ある実施例においては、ステップ170の全て、または、その一部は、前のステップ140で、上記外部モニタリングユニットに送信されたデータに基づいて、実行される。また、ある実施例においては、ステップ170の全て、または、その一部は、上記カプセルに備えられた情報プロセッサーに基づいて、実行される。
【0068】
ある実施例においては、ステップ170は、上記カプセルに備えられた容器から薬剤を放出し、(1)ついさっき光を照射された腸部分にある癌細胞を破壊する、および/または、(2)以下に述べるような光活性化毒素を活性化するために、上記腸部分を再度、照射する、といった、治療機能を実行する工程を含む。上記のように、薬剤の放出を行うような実施例においては、電気穿孔および/または超音波穿孔を行うことで、上記近接細胞による上記薬剤の吸収が増大される。
【0069】
ステップ170の後、前述のように、ステップ140へと移動し、測定されたデータを伝え、さらに腸に沿って、移動する。
【0070】
方法100の工程は、上記カプセルそのもので行われてもよく、また、上記カプセルを含むシステムにより行われてもよい。例えば、ある実施例においては、画像作成および解析は、上記外部モニタリングユニットの構成要素により行われる。上記カプセルを含むシステムに関しては、後の章により詳しい記述が成されている。
【0071】
<2. 生物学的機能をもつ蛍光指標>
上記カプセルの構成要素、およびカプセルにより収集されるデータの使用法は、光源により励起され、検出器により検出される、標的分子または分子に依存する。この章では、内因性蛍光分子および外因性蛍光分子の例と、これら分子と、細胞の機能性および/または細胞の種類との関連性が記載されている。
【0072】
生物学的分子の合成、移動、および吸収を引き起こす、外因性蛍光標識プローブの使用法は周知のものである。例えば、生体外研究において、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗原、タンパク質、酵素、およびペプチドを標識するために、蛍光標識は、広く用いられている。上記の標識された分子は、蛍光放射を引き起こす波長の光を照射される。上記の蛍光放射は、蛍光顕微鏡や、上記標識から放出される蛍光信号の特定の波長を検出するセンサーにより検出される。
【0073】
ロ−ダミン−123のような蛍光標識の場合の低エネルギー波長では、蛍光標識を、疾病の診断および治療に用いるには、厳しい限界がある。このように、放出される蛍光信号のエネルギーは、大きくないため、従来技術を用いて検出することができないので、身体内部、約数百μm以上の深さにある細胞から発せられる、ローダミン−123などの蛍光団による蛍光信号を検出することができる技術は存在しない。
【0074】
<2.1 生物学的機能をもつ天然蛍光マーカー−内因性プローブ>
タンパク質、ペプチド、DNA、およびRNAなどを含む多くの分子は、適切な波長の励起光により励起されると、蛍光を発する。したがって、これらの分子は、内因性蛍光発光源として、特定の細胞集団の同定や、代謝過程の追跡のためのマーカーとして、利用可能である。それぞれの疾病細胞の位置を特定したり、以下に記される方法を使って、薬剤治療に対するこれら細胞の応答をモニターしたりするために、特定の抗原、タンパク質、または、異常な疾病細胞に選択的に発生、結合、または吸収されるその他の分子(以後、これを疾病マーカーと称する)からの蛍光放射を、用いることができる。上記のような内因性分子が、マーカーとして、有効であるためには、上記分子の発光波長は、標的細胞の他分子のものと比較して、独特なものでなければならない。また、特定の正常細胞の集団に発生または蓄積する分子が、異常細胞と比較して、独特な蛍光パターンを有する場合、その正常細胞の集団を特定することも、同様に可能である。
【0075】
正常組織、前癌性組織(腺腫)、および癌組織は、内因性蛍光発光により、区別することが可能である。正常組織の蛍光強度は、前癌性組織よりも遥かに大きく、前癌性組織の蛍光強度は、癌組織のものよりも大きい。組織の可視的な自家発光は、一般的に、たった数種の蛍光団によって、占められている。上記蛍光団には、コラーゲン、エラスチン、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、フラビン、ポルフィリン、トリプトファンが含まれる。
【0076】
結腸における自家発光では、コラーゲンが主要な発光物質であると考えられている(Zonios, et al., "Morphological model of human colon tissue fluorescence," IEEE Trans. Biomed. Eng., vol. 43, no.2, pp.113-122, 1966)。また、血液ヘモグロビンは、コラーゲンの蛍光放射の主要な吸収源である(Brown, 1980 "An introduction to spectroscopy to biochemists" Academic Press, London, England)。大腸腺腫などの上皮腫瘍は、上記の結合組織の内因性蛍光団から放射される光の量をさせる、粘膜下結合組織の構成成分(コラーゲンなど)を遮蔽する、上皮の肥厚によって、しばしば特徴付けられる。この現象は「レッドシフト」と呼ばれる。例えば、大腸腺腫の疑いがある部位は、赤−茶色域の光を放出するが、一方、正常組織は、黄−緑域の帯域の光を放出する(Izuishi et al., "The histological basis of detection of adenoma and cancer in the colon by autofluorescence endoscopic imaging," Endoscopy, vol31, no.7, pp511-516, 1999)。
【0077】
また、放射される蛍光の強度を弱める、他の要素としては、上記の悪性の部位における輸血用血液が増加した結果、起こる、ヘモグロビンによる吸収増大、還元型NADH、ならびに、還元型NADPHおよび/またはフラビンの量の増加が含まれる。それぞれの蛍光の励起波長で、これら内因性蛍光団を励起させることにより、正常細胞と異常細胞とを区別することができる。これまでは、前癌性組織および癌組織の指標として、蛍光発光の変化をモニターすることは、直径が約600μmで、蛍光検出能が表面下約200μm〜450μmである光ファイバーの視界限度により大きく制限されてきた。本発明のシステムおよび方法の一実施形態として、本発明は、光ファイバーを用いることができない場合に用いることができ、例えば、身体内腔に並ぶ異形成細胞や異常細胞の位置を特定するために用いることができる。ある実施例として、本発明は、内因性蛍光源からの蛍光放射のレッドシフトを測定し、前癌部位および癌部位を検出するために用いられる。
【0078】
ドーパミンは、約550nmの波長の蛍光を発する神経伝達物質である。したがって、ある実施例では、ドーパミンを内因性蛍光標識として用いることによって、ドーパミンを大量に合成および蓄積する、身体内腔に位置する神経団、または上記身体内腔を刺激する神経集団を特定することができる。
2.2 生物学的機能をもつ蛍光標識マーカー−外因性プローブ
本発明の多くの実施例においては、標的細胞に特異的に結合または吸収される分子を、患者に投与する前に、十分に特徴付けられた蛍光標識と人為的に結合させ、蛍光標識プローブを作成する。このような外因性蛍光標識プローブは、正常細胞または異常細胞を標的とすることができる。ある実施例においては、外因性蛍光標識プローブは、上記標的細胞上の、特異的な細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体である。蛍光標識と結合するあらゆる分子がプローブとなり得る。上記の分子には、合成分子、非自然発生分子、または無機分子が含まれる。タンパク質、タンパク質前躯体、ペプチド、アンチセンスDNAもしくはアンチセンスRNA、脂質、または、その他の生物学的分子を蛍光分子で標識し、プローブとして用いることができる。たとえ、これらのプローブの一部が、患者の体内で自然に合成されたとしても、それらが、人為的に標識され、患者の体内に投与されるという事実によって、それらのプローブは外因性プローブと認識される。
【0079】
外因性蛍光標識プローブは、既知技術の手順で、患者に投与される。投与方法としては、静脈内投与、経口投与などが挙げられる。以下の3章で、詳細に記されるが、本発明の方法を用いて、外因性蛍光標識プローブを身体内腔の内側に局所的に投与してもよい。これを達成するために、上記プローブは、患者に導入されたカプセルの容器より放出される。
【0080】
ある実施例において用いられる外因性蛍光標識プローブの1つとして、通常のグルコースと同様に、細胞へと吸収される、蛍光標識2−デオキシグルコースが挙げられる。しかしながら、グルコースとは異なり、2−デオキシグルコースは、細胞内で分解されない。したがって、2−デオキシグルコースは、細胞内に蓄積され、ある実施例においては、プローブ分子として役立つ。悪性細胞は、通常細胞よりも、非常に速い速度で、2−デオキシグルコースを吸収、および蓄積するため、上記悪性細胞では、2−デオキシグルコースは、形質転換細胞の有効なマーカーとなる。コンピューター断層撮影(CTスキャン)による診断法は、誤認率(偽陽性および偽陰性)が約33%と容認しがたい程であるが、悪性細胞のマーカーとしての2−デオキシグルコース吸収は、誤認率はわずか約10%である。
【0081】
悪性細胞専用に用いられる別の外因性蛍光標識プローブとしては、フルオレセインで標識したホスホニウムカチオン(PhCs)が挙げられる。PhCsは、ミトコンドリア機能不全の作用により、悪性細胞に選択的に取り込まれる。放射性同位体で標識されたホスホニウムイオンは、ポジトロン放出断層撮影法(PET)の放射性プローブとして、ヒトに利用可能であるか評価が行われている。分子サイズ、分子構造、親油性および正電荷が、代謝安定性、細胞内への高い蓄積性、ミトコンドリア膜電位に対する高い感受性、および多剤耐性などの流出機構への干渉を最小限にするために最適化された、F−18標識ホスホニウムカチオンの開発が行われてきた。
【0082】
単離されたミトコンドリアと犬の心臓血管毒性とに関する研究において、人間への1回投与量の約1000倍量のPhCsが無害であることが示されている。また、PETを用いた研究では、PhCsによって、充実性腫瘍を高階調に検出できることが示されている。なお、階調は、吸収のレベルを示す。さらに、PETを用いた研究で、PhCsは、悪性腫瘍と炎症とを区別することができることが示されている。これにより、擬陽性の場合の、手術および薬剤治療を回避することができる。
【0083】
さらに、PhCsを用いることで、浸潤癌へ向かう分子進行の初期段階の前癌性病変を区別することができる。上記初期段階には、肥厚化の初期段階、形成異常の初期段階、および癌原位の初期段階が含まれる。PhCsの性質に関しては、I. Madar、H. T. Ravert、R. F. Dannals、U. Scheffel、およびJ. J. Frostにより出願された国際公開特許PCT/US03/03740(「Non-Invasive Diagnostic Imaging Technology for Mitochondria Dysfunction Using Radiolabeled Lipophilic Salts」)に、より詳細に記されている。そこで、参照として、本明細書に、その内容を織り込む。。
【0084】
外因性蛍光標識プローブは、治療に対する腫瘍の反応を、迅速かつ高感度に評価するのに、有効である。化学療法薬剤の効果の評価に、従来のX線撮影法(X線、CT)を用いる場合、腫瘍のサイズが変化したかどうかが重要となる。この方法は、非常に時間がかかる上、種々の化学療法を数カ月にわたり繰り返す必要がある。
【0085】
一方で、本発明の方法によると、外因性蛍光標識プローブを用いることにより、腫瘍細胞に特異的な標的分子を画像化することができる。そのため、本発明にかかる方法を用いると、治療に対する腫瘍の反応を、2〜3日以内に、かつ、その他の従来技術よりも高感度に検出および測定することができる。これは、上記の化学療法薬剤によって、活性化される、特異的な分子の事象を標的とする蛍光プローブを用いることによって、達成される。
【0086】
ほとんどの主要な抗癌剤(タキセンズ(taxens)、シスプラチン、ドキソルビシンなど)は、アポトーシスと呼ばれるプロセスを経て、細胞死を引き起こす。アポトーシス細胞死には、膜タンパク質のホスファチジルセリンの表面化が必要である。ある実施例においては、蛍光性のアネキシンVを使用し、ホスファチジルセリンの表面化が検出される。代わりの方法として、アポトーシスは、膜の電位勾配をの作用として、ミトコンドリアに蓄積される蛍光プローブ(このようなプローブは、電圧指標(voltage indicator)と呼ばれる)を用いて、検出される。アポトーシスの主要経路には、蛍光性電圧標識物の蓄積量が減少を引き起こすミトコンドリアの電位勾配の崩壊が関与している。
【0087】
上記の蛍光性電圧標識物には、ローダミン−123、5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチルベンズイミダゾールカルボシアニンヨウ化物(JC−1)、テトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)、およびホスホニウムカチオンなどが挙げられる(Madar et al., "Physiochemical Characteristics and Uptake Kinetics of Voltage Indicator [F-18] Phosphonium CATIONS," Journal of Nuclear Medicine [JNM] vol.44, p50P, 2003; Madar et al., "Quantitative Imaging of Cardiomyopathy in Heart Failure Using the Voltage Indicator [F18]p-Florobenzyl Triphenylphosphonium ( [F-18] p-FBnTP) and PET," JNM vol.44, p87P, 2003; Madar et al.,"In Vitro and In Vivo Correlation of Taxotere-Induced Apoptosis in Malignant Cells and Accumulation of the Voltage Indicator [F18]p-Florobenzyl Triphenylphosphonium ([F-18]p-FBnTP)," JNM vol.44, p179P, 2003; Madar et al., "Detection of Androgen Depletion-Induced Apoptosis in Prostate Using the Voltage Indicator [F18]p-Florobenzyl Triphenylphosphonium ([F-18]P-FBnTP), In Vivo," JNM vol.44, p180PP, 2003; Madar et al., "Differential Distinction Between Tumor and Inflammation Using the Voltage Indicator [F-18]p-Fluorobenzylriphenyl Phosphonium (F-18)p-FBnTP): Comparison with [F-18]FDG," JNM vol.44, p368P, 2003)。
【0088】
上記の外因性プローブに付加される蛍光団は、無毒性であることが理想的である。しかしながら、ヒトへの使用が許可された蛍光団は、非常に限定されている。上記のような蛍光団の例としては、テトラサイクリン、メチレンブルー、フルオレセインが挙げられる。ある実施例において、最適な信号を発する蛍光団には、ヒト(host)での使用が認可されていないものや、全身投与を認可するには毒性が高すぎるものがあるかもしれない。これらの蛍光団により標識されたプローブは、動物実験にとってはやはり有用である。また、いくつかの実施例にあるように、カプセルの容器からプローブを局所的に分与することにより、患者に与える毒性は、軽減される。こうすることによって、未認可または有毒の蛍光団を、高用量な全身投与を避けることができる。
【0089】
既知の蛍光標識としては、5−(および6−)−カルボキシフルオレセイン2酢酸、スクシニミジルエステル(CFDA/SE)、クラゲの緑色蛍光タンパク質(Aequorea green fluorescent protein)(GFP)、2光子蛍光団(two-photon fluorophore)(C625)、discosoma (サンゴ)より得られる赤色蛍光タンパク質(dsRed)、シアニン染料、3,3−ジエチルチアジカルボシアニン、カルボキシフルオレセイン2酢酸塩スクシニミジルエステル(CFSE)、本質的に蛍光タンパク質(コーラルレッド(dsRed)およびコーラルイエロー(Citrine))、フルオレセイン、ローダミン123、スルホローダミン(赤)、ジニトロフェニル(黄)、ダンシル(黄)、ならびに、サフラニンOが挙げられる。本発明の方法による外因性プローブの標識には、既知のあらゆる蛍光分子を用いることができる。
【0090】
また、特定のモノクローナル抗体、アンチセンスDNA、受容体作用薬、および受容体拮抗薬などのように、プローブが高価である場合、上記カプセルからの投与は、局所的であることが好ましい。
【0091】
<2.3 生物学的機能をもつマーカーに結合する光活性化毒素>
光力学的治療法(photo-dynamic therapy)において、現在使用されている蛍光性の光増感剤は、ある程度の腫瘍選択性を有し、特定の波長の光を照射することにより、有毒となる。上記の蛍光性の光増感剤には、ヘマトポルフィリン、5−アミノレブリン酸(ALA)、フォトフリン(photofrin)、ポリヘマトポルフィリン、メソテトラヒドロキシフェニルクロリンなどのポルフィリンが含まれる。上記光増感剤が、一度、腫瘍細胞に吸収されると、適切な励起波長で照射することにより、癌細胞を破壊する有毒化が発現を始める。ある実施例においては、上述の光活性化毒素として、蛍光性の光増感剤が用いられる。
【0092】
1つ以上のカプセルから局所的に投与され、局所的に照射が行われる場合は、非細胞選択性の光増感剤を用いてもよい。
【0093】
<3. 機能性の画像化を行う方法>
本発明の方法は、特定の波長の励起光を発し、蛍光放射を検出するカプセルの使用に基づくものである。多くの実施例において、上記カプセルは、小さく、飲み込むことができる。したがって、健康な組織を冒さず、腸へとカプセルを導入することができる。
【0094】
いくつかの実施例の方法は、従来技術と比較して、多面的かつ動的である。本発明の方法は、正常細胞および異常細胞の機能分析(代謝経路および生理学的反応の評価を含む)を可能とする。その方法は、以下に示されるように、内腔壁における、内因性蛍光分子の発現、または外因性蛍光標識プローブとの相互作用に基づいている。また、疾病の新しい治療方法、および、内腔に並ぶ細胞の疾病に対する薬物療法の効果の新しい評価方法も提供する。
【0095】
上記方法の種々の実施例は、以下のような概要で、用いられる。
【0096】
1. 内因性蛍光発光を利用し、異常細胞を検出する方法。
【0097】
ステップ170において、内因性蛍光発光の分布および発光量が分析される。種々の実施例で用いられる、特異的な内因性蛍光分子には以下のものがある。
【0098】
a.異常細胞のみに存在する内因性蛍光分子。
【0099】
b.特定の種類の異常細胞には存在しない内因性蛍光分子。
【0100】
c.正常細胞と比較して異常細胞において、より強い、もしくは、より弱い蛍光を放射する、または、蛍光の励起波長が変化している内因性蛍光分子。
【0101】
2. 外因性蛍光発光を利用し、異常細胞を検出する方法。
【0102】
ステップ102において、特定の外因性蛍光プローブが投与される。ステップ170において、特定の外因性蛍光発光の分布および発光量が分析される。種々の実施例で用いられる外因性蛍光プローブには以下のものがある。
【0103】
a.異常細胞のみに、結合または吸収される外因性蛍光プローブ。
【0104】
b.異常細胞には、結合または吸収されない外因性蛍光プローブ。
【0105】
c.正常細胞と比較して、区別が可能なレベルで、異常細胞に結合する外因性蛍光プローブ。
【0106】
3. 細胞の種類を特徴づける特定の外因性分子を、多量に、蓄積または合成する、身体内腔に並ぶ特定の細胞を検出する方法。
【0107】
その実施例としては、ドーパミンの内因性蛍光発光を用い、身体内腔のドーパミン作動性神経細胞または身体内腔に分布する神経細胞を特定する方法が挙げられる。ステップ170において、ドーパミンの内因性蛍光発光の分布および発光量が分析される。
【0108】
4. 細胞の種類を特徴づける特定の外因性蛍光分子を多量に蓄積または合成する、身体内腔に並ぶ特定の細胞を検出する方法。
【0109】
その実施例としては、特定の性質のタンパク質を合成する細胞は、ステップ102において、以下のような蛍光標識を導入することによって、同定される。
【0110】
a.上記のタンパク質に対する蛍光標識抗体。
【0111】
b.上記タンパク質の生合成の過程で、上記タンパク質に組み込まれる蛍光標識前躯体
c.上記タンパク質に対する蛍光標識アンチセンスRNAまたはメッセンジャーRNA
ステップ170において、外因性蛍光標識プローブの分布および量が分析される。
【0112】
5. 異常細胞を同定するのと同じ蛍光団を治療物質として用いる方法。
【0113】
その実施例としては、ステップ102において、ポルフィリンなどの蛍光性の光増感剤が導入される。ステップ120において、光増感剤に光が照射される。ステップ170において、異常細胞の位置が特定される。ある実施例においては、上記細胞は、異なる波長、または、より強い光で再度照射される。適正な励起光で照射されると、蛍光性の光増感剤は、有毒化し、上記蛍光性の光増感剤を吸収した異常細胞を破壊する。ある実施例では、ステップ120において、照射による毒性の活性化が行われるが、ある実施例では、ステップ170で毒性の活性化が行われる。
【0114】
6. 異常細胞または癌細胞への薬物送達をターゲットする方法。
【0115】
ステップ110において、薬剤の容器を備えたカプセルが導入され、ステップ140の間に、上記カプセルは、最終的に、腫瘍の場所へと移動する。上記の腫瘍の位置は、上述した方法のうちの1つを使って、特定されたり、または、コンピューター断層撮影法(CTスキャン)、ポジトロン放出断層撮影法(PET)、核磁気共鳴(NMR)画像法、レントゲン、または、これらを組み合わせた技術のような従来技術やその他の技術を使って、特定される。
【0116】
ステップ170の間に、薬剤が局所的に放出される。この方法を使うと、全身投与する場合よりも、相対的に高用量の薬剤が標的細胞へ届くために、副作用を最小限にし、また患者が他の薬剤を服用しているときに起こるような、有害な薬物相互作用を最小限にすることができる。ある実施例においては、薬剤の吸収性を増大させるための、電気穿孔または超音波穿孔が、ステップ170に含まれる。ある実施例においては、蛍光標識はされていないが、ステップ170において、カプセルの光源による光照射により活性化される光増感剤が、上記薬剤に含まれる。
【0117】
7. 異常細胞および癌細胞の生体組織検査をターゲットする方法。
【0118】
ステップ110において、組織検体採取機構(tissue sample mechanism)を備えたカプセルが導入され、ステップ140の間に、上記カプセルは、最終的に、腫瘍の場所へと移動する。腫瘍の場所は、上記のいずれか1つの方法により特定される。ある実施例においては、ステップ140の間に、上記カプセルは移動制御により、組織検体採取機構が異常細胞に隣接するよう移動する。ステップ170の間に、組織の採取が行われる。
【0119】
8. 治療の効果を評価する方法。
【0120】
ステップ170において、上記のいずれかの方法を用いて、第1カプセルにより治療前の異常細胞の範囲が測定される。その後、治療薬が投与される。種々の実施例において、治療薬は、上記の治療方法のいずれかを用いて、ステップ170の間に、第1カプセルもしくは第2カプセルより投与されるか、または、外部より投与される。上記のいずれかの方法を用いて、第1カプセル、第2カプセル、または第3カプセルにより、治療後の異常細胞の範囲が測定される。異常細胞の範囲の差異は、治療の効果の測定に利用される。
【0121】
上記の概要中のいくつかに関する実施例について、以下に、詳細に記されている。
【0122】
腫瘍などの疾患細胞は、CTスキャン、PET、NMR、レントゲンなどの従来技術により検出される場合もある。しかしながら、これらの方法では、多くの偽陽性が検出される。したがって、不必要かもしれない外科手術や薬物療法を行う前に、診断を確認することが望まれている。
【0123】
一実施例においては、従来技術の1つに基づいて腸癌の疑いのあると診断された患者に対して、治療を行う。まず、ステップ102において、悪性細胞に選択的に吸収される蛍光プローブが投与される。その後、ステップ110において、患者に飲み込み式カプセルが与えられる。ステップ120において、カプセルの光源から発せられる、適切な励起波長を有する励起光により、腸における悪性細胞の場所を特定する。ステップ130において、蛍光発光が検出された場合、ステップ160および170において、悪性細胞の存在が確認される。
【0124】
上記カプセルは、ステップ160において、蛍光を放射している細胞の位置、および蛍光強度に関するデータを収集する。このデータは、ステップ170において、蛍光を発している悪性細胞の画像を作成するために使用される。なお、画像の作成は、カプセル上で、または、システムの外部要素のいずれかにおいて、行われる。ある実施例では、ステップ102において投与される蛍光プローブは、蛍光標識されたホスホニウムカチオンである。
【0125】
上記と代替的な実施例としては、ステップ102において、上記カプセルが、悪性細胞から近接位置にある時に、上記カプセルの容器から蛍光標識プローブが放出される。なお、悪性細胞の位置は、PET、レントゲン、NMR画像法、CTスキャン、または、別のカプセルを用いる方法などにより、事前に特定されている。ある実施例においては、蛍光標識プローブの吸収性を増大させるために、カプセル、または、外部の電極やトランスデューサーから、発せられる電界および/または超音波に基づく、電気穿孔または超音波穿孔を用いる工程が、ステップ102に含まれる。
【0126】
ある実施例においては、一度、癌が確認され、ステップ140の間に、カプセルが、悪性細胞の付近まで移動すると、ステップ170において、1つ以上の抗癌剤が、カプセルに備えられた1つ以上の容器から、局所的に放出されることにより、薬物療法が開始される。カプセルから薬剤を局所的に放出することにより、患者の正常細胞に対する副作用を最小限に止めつつも、比較的高用量で、局所的かつ局部的に、非常に毒性の強い濃縮された薬物を、癌細胞に投与することができる。
【0127】
ある実施例においては、薬剤の吸収性を増大させるために、カプセル、または、外部電極やトランスデューサーから発せられる電界および/または超音波に基づく電気穿孔または超音波穿孔が、この工程に含まれる。なお、この健康な組織を冒さない方法は、癌の治療および検証に限定されるものではない。上記方法は、あらゆる異常細胞または、疾患細胞の治療に利用可能である。
【0128】
また、上記方法は、化学的な抗癌剤に限定されるものではないが、放射性薬剤や光増感剤を含んでもよい。例えば、ある実施例においては、上記カプセルは、放射性薬剤を局所へと送達するために、利用される。ある実施例においては、選択的に異常細胞を標的とする化合物に、放射性が付与される。この場合、放射線は、癌細胞などの疾患細胞に、選択的に当てられる。上記放射線が、癌細胞に隣接する正常細胞に浸透する可能性はあるが、局所的に放射性同位体を放出することで、全身の正常細胞に対する損傷を最小限にすることができる。別の実施例では、抗癌剤および放射線標識薬剤の両方は、非常に目的を絞った、かつ局所型の配合薬物療法の目的で、上記カプセルより放出される。
【0129】
ある実施例においては、光増感剤を放出し、電気穿孔または超音波穿孔により吸収性を増大させる工程が、この工程に含まれる。これらの実施例においては、一度、光増感剤が、放出されると、上記光増感剤は、光源によって、光照射されることで活性化される。カプセルが、局所的に、光増感剤を光照射することで、患者の正常細胞への副作用を最小限に抑えつつも、比較的高用量で、毒素を使用することができる。この健康な組織を冒さない方法は、癌の治療および検証に限定されるものではない。上記方法は、あらゆる異常細胞または疾患細胞の治療に利用可能である。
【0130】
本発明のシステムは、上記蛍光プローブの吸収を検出するのと同じカメラを用い、治療の効果を評価するために、用いることができる。ある実施例のステップ170においては、治療前後の蛍光発光の分布および発光量は、同じカプセルを用いて測定される。このような実施例においては、ステップ170の間、移動制御システムにより、身体内腔のカプセルは定位置に保たれる。なお、上記移動制御システムとしては、後により詳細が記されている移動制御システムの中から用いることができる。
【0131】
他の実施例においては、第2カプセルが治療後の測定を行う。ある実施例においては、第3カプセルが、治療を行う。同じカプセルを用いて、治療前後の蛍光発光の分布および発光量を測定する、実施例中のステップ170に関しては、次の段落に例示されている。
【0132】
基準値を得るために、上記の方法により、治療前の蛍光発光の、分布と発光量とが測定される。大部分の抗癌剤は、一度、吸収されると、非常に迅速に、その効果を発揮することが知られている。したがって、多くの癌治療の場合において、カプセルは、抗癌剤を投与した後、約20分〜約60分といった比較的短時間、定位置に保たれる。なお、上記の時間は、臨床用量の抗癌剤タキソールを投与した後、20分〜60分以内に、PETを用いて測定した、アネキシンVの結合の増加、およびホスホニウムカチオン吸収の減少に基づき、見積もられたものである(Madar et al., JNM, vol.44, p179P, 2003)。
【0133】
上記時間の経過後、同じ蛍光標識プローブの第2パルスが、上記カプセルの容器から放出される。上記第2パルスは、上記プローブの第1投与と同様になるように制御されている。内因性蛍光プローブを用いる実施例においては、この工程は省かれる。再度、適切な波長の励起光が、上記カプセルより発せられると、標的分子の蛍光発光が励起される。蛍光信号の位置および強度が、集められ、分析される。そして、随意的に画像が作成される。治療効果の調べるために、治療前後の蛍光発光が比較される。治療前の基準値と比較して、治療後に悪性腫瘍を表す信号が減衰している場合、癌細胞の数、または、蛍光分子の吸収能が減少したと結論づけることができる。定量的な比較を行うことで、治療の効果を量的に評価することができる。
【0134】
<4. 機能性の画像化を行うシステム>
<4.1 構造の概要>
図2は、本実施例による、患者290の身体内腔壁の蛍光発光を、カプセル210を用いて検出するシステム200を示すブロック図である。上記の図示される実施例では、カプセル210は、患者290の身体内腔に位置している。上記システムには、患者290の外部に、モニタリングユニット250が備えられる。患者290は、ヒトを含む、いかなる動物であっても良い。
【0135】
上記モニタリングユニットには、カプセル210のデータ送信システムからのrf伝達(rf transmission)を受信する受信器252と、上記カプセルおよび受信器から受け取った蛍光発光データを処理し、結果を作成するプロセッサー254と、蛍光発光データまたは/および結果を保存するデータ記憶装置256と、蛍光発光データまたは/および結果を表示するディスプレイ258とが備えられている。
【0136】
図示される実施例においては、カプセル210の検出器からのデータを伝達するrf伝達を受信する、複数の無線アンテナが、上記受信器252に備えられている。また、上述したように、およびIddan Iに記されているように、上記受信器252は、複数のアンテナにより受信した伝達(transmission)の振幅を基にして、患者290内部のカプセル210の位置に関するデータを作成する。
【0137】
プロセッサー254は、上記位置および蛍光検出器のデータから、画像を作成し、光源、および蛍光検出器の構成要素の、光学特性および幾何学的配列を補正する。ある実施例においては、もし、モニタリングユニットのプロセッサー254と、カプセル210のプロセッサーとがあれば、両者は、分担して、演算および補正を行う。
【0138】
上記データ記憶装置256は、プロセッサーおよび/または受信器からの、データを保存するもので、その例としては、ビデオテープレコーダーなどが挙げられる。上記ディスプレイは、実験技術者や医師などの使用者に対し、プロセッサーまたはデータ記憶装置からの、データまたは画像を表示するものである。その例としては、印字されたもの、カラー印刷されたもの、コンピューターのモニターなどが挙げられる。
【0139】
また、別の実施例においては、より少数の構成部品が、モニタリングユニット250に備えられている。例えば、あるモニタリングユニットは、データディスプレイ258を備えていない。データ記憶装置256の構成部品は、データおよび結果を、1つ以上の記憶媒体に記録する。その後、上記データは、データ記憶媒体から、別の位置のディスプレイデバイスに、例えば、上記媒体を新しい場所に送ったり、インターネットを通じて上記媒体のデータを送信したり、無線通信機器によりデータを送信したり、それらをいくつか組み合わせたりして、転送される。
【0140】
<4.2 自律性カプセルアセンブリ>
図3Aは、実施例に従った、身体内腔壁の蛍光を検出し、飲み込みが可能な、不消化性のカプセル300を図示したブロック図である。上記カプセルは、内腔壁399により表される身体内腔の生体内に位置した状態を図示している。上記カプセルには、硬質支持材310と、光源320と、光源アセンブリ(source optical assembly)322と、検出器330と、検出器光学アセンブリ332と、プロセッサー340と、通信システム350と、動力管理システム360と、容器372と、電極380と、移動制御システム384とが備えられている。
【0141】
上記硬質支持材310は、適切な材料からなる胴体周囲として示されている。例えば、患者により飲み込まれるカプセルは、プラスチックなどの胃の腐食性環境下で消化されない材料で作られている。ある実施例においては、上記カプセルの外表面の一部または全てには、柔軟性を持たせてある。ある実施例においては、上記硬質支持材は、上記カプセルの内部の胴体であったり、上記胴体を含むものであったりする。上記カプセルでは、構成部品が分離されていたり、副次的システムが取り付けられていたりする。内腔環境下においての使用に適した、従来技術として知られているあらゆる材料を用いても構わない。
【0142】
上記硬質支持材310には、標的分子の蛍光信号を励起する光源320が備えられる。上記標的分子には、コラーゲンのような内因性分子、または、腸壁に結合するPhCプローブ分子などのような外因性分子が挙げられる。様々な波長帯で、様々な波長の光を発する、種々の発光ダイオード(LED)が、広く知られている。ある実施例においては、標的分子の励起波長に一致するように、LEDは選択される。ある実施例においては、上記光源は、白色LEDのような広帯域を有する。他の実施例においては、他の光源が用いられる。狭帯域の光源が、特定の励起波長として、用いることができない場合、上記励起波長を含む、広帯域の光源が用いられる。ある実施例では、上記光源は、エネルギーの節約、および/または、励起光と蛍光との時間的分離のために、パルス状の光を発する。
【0143】
図説するために、例示の実施例では、PhCプローブに結合した蛍光マーカーの励起波長は、λ0で、上記の特定の蛍光マーカーから放出される蛍光信号は、λFの波長を有するものと仮定している。この実施例の場合、上記光源320は、十分な強度をもつλ0の光を発する。
【0144】
ある実施例において、特に、腫瘍細胞を標識する目的で、選択されたプローブ分子を用いるとき、選択的波長の光による照射によって、上記カプセルの治療用途に用いられる光活性化毒素を活性化する。例えば、輝度の高い白色LEDを用いることで、複数の光活性化毒素のどれをも活性化することができる。
【0145】
光源アセンブリ322には、励起波長の光を、内腔壁399へ向ける、1つ以上の光学部品の組合せを備えている。いかなる方法を用いて、励起波長λ0で、内腔壁399を照らしても構わない。上記の図示される実施例では、上記光源アセンブリ322は、硬質支持材310に設けられ、励起波長λ0および蛍光波長λFを透過させる光学窓312と、アキシコン326と、レンズ324とを含む。他の実施例においては、透明ドームや、プローブの縦軸にほとんど平行な光による蛍光発光の励起および検出を可能にする、その他の部品のような光学部品を、1つ以上含む。
【0146】
上記の図示される実施例においては、上記光学窓312は、特定の軸位置で、上記カプセルを取り巻く帯である。図3Bは、本発明の実施例に基づく、カプセルの3次元方向の相対座標を図示した透視図である。図3Bでは、上記カプセルアセンブリ300には、カプセルの縦軸に沿う軸方向314がある。上記カプセルは、上記身体内腔の位置方向と、上記身体内腔を通って、上記カプセルが移動する位置方向とに対して、多くの場合、平行である。
【0147】
上記縦軸に沿う上記カプセル上の位置315は、上記カプセルの相対内部座標システムの原点として、使用される。上記原点315で、上記軸方向314に垂直な平面には、上記原点315から、図示された第1横断方向316aおよび第2横断方向316bへ、放射状に伸びる複数の線分がある。上記第1横断方向316aは、上記カプセルの放射軸である。第1横断方向316aと第2横断方向316bとは、上記垂直平面上において、上記第1横断方向316aから第2横断方向316bへの方位角317により隔てられている。極座標系では、上記原点315から軸方向にそった線をz軸、上記原点315から放射軸316aにそった線を0方位軸(x軸)と呼ぶ。2次元は、x軸からの方位角であって、3次元は、原点から横断方向にそった点までの距離である。デカルト座標系では、3次元は、x軸およびz軸の両方に垂直な上記原点315より伸びる線である。上記の線は、y軸と呼ばれ、点の座標は、x軸、y軸、およびz軸上の距離である。
【0148】
図示される実施例では、上記光学窓312は、環状帯である。上記光学窓の中央にある点により形成される円周が、中央窓円周313である。上記原点315は、中央窓円周313の中心を形成する特定の軸位置で選択される。上記光学窓312は、身体内腔の円柱状部分を、上記励起波長λ0の光にさらす。上記円柱状部分は、一斉に照射されてもよく、また、上記円柱状部分のそれぞれの部分が、別々の時に、照射されてよい。身体内腔を完全に検査するには、カプセルが、軸方向314に上記光学窓の幅と同じ距離を、身体内腔にそって移動する前に、上記円柱状部分の全部分が照射されなければならない。
【0149】
ある実施例においては、図3Bに示されるように、上記光学窓は、上記カプセルの周囲に連続した帯に形成する。また、他の実施例においては、上記窓を横切る構造部材が上記窓を横切る、上記励起波長を通さない部分の1つ以上の部分によって隔てられる、上記励起波長を透過させる一連の部分より、上記の帯は、構成される。例えば、不透過部分は、上記カプセルの片側にある電源を、もう片側にある、電力を消費する構成部品に接続する導電体(conductor)、または、上記カプセルの片側で、プロセッサー340、または、通信システム340によって集められたデータを、上記カプセルの反対側に接続する伝導体(conductor)や、またはそれ以外の接続を組み合わせたものを有する。
【0150】
また、ある実施例においては、上記光学窓は、異なる形状をとる。例えば、ある実施例では、上記光学窓は、上記カプセルのどちらかの軸端で、ドーム状に形成される。上記ドームは、励起波長λ0および蛍光波長λFを透過させる材料により構成される。いかなる実施例においても、光源アセンブリ322は、上記光学窓を通って、励起波長光を放射する。
【0151】
図3Aに示される実施例においては、光源からの平行光線を、アキシコン326の回転軸上に集束させるレンズ324が、上記光学アセンブリに含まれる。アキシコンは、透明または反射性材料よりなる円錐状部分である。ある実施例においては、シキシコンの形状は、回転軸の周囲の三角形または台形を回転させることにより形成される。また、他の実施例においては、上記三角形の斜辺は、三角形の頂点を結ぶ曲線に置き換えられる。これにより、上記の光の集束を可能とする。アキシコンは、回転軸に入射する光線を帯状の光、または環状の光に変換する。また、アキシコンは、円錐表面に入射する帯状の光を、その回転軸に平行な帯状の光線に変換する。アキシコンは、従来技術において、よく知られている。たとえば、アキシコンを介した光の伝播およびアキシコンのデザインに関する詳細が記されている刊行物が挙げられる(L.L. Doskolovich、S.N. Khonina、V.V. Kotlyar、I.V. Nikolsky、V.A. Soifer、G.V. Usplenievによる"Focusators into a ring," Optical and Quantum Electronics V25, pp. 801-814, 1993、および、A. Thaning、A.T. Friberg、Z. Jaroszewiczによる"Synthesis of diffractive axicons for partially coherent light based on asymptotic wave theory," Optics Letters, V26, No. 21, pp. 1648-1650, November 2001)。そこで、参照として、本明細書に、その内容を織り込む。。
【0152】
レンズ324およびアキシコンは、丸い帯状の光学窓312を通って、伝播し、身体内腔399を照射する、環状の光を形成する。光学窓312の大きさに合致する環状の光を形成することにより、蛍光発光を励起しない光を生じさせるときに消費されるエネルギーを、大きく減少させ、上記カプセルの貴重な電力を温存することができる。上記光学窓312に一致させるため、上記アキシコン326は、上記中心円周の中心にある原点の近くに、位置づけられる。そして、その回転軸は、上記軸方向314に合わせられる。
【0153】
別の実施例においては、励起光を光学窓312へ向けるための別の構成部品が、光源アセンブリ322に含まれている。例えば、ある実施例では、光源アセンブリ322のアキシコン326は、光源320からの光線を偏光させる回転鏡で置き換えられる。アキシコン326は、光学窓312を通り、0°〜360°全方位へと、光源320からの1つ以上の光線を導くように位置合わせがなされた回転鏡により、置き換えられる。ある実施例では、レンズ324は、回転鏡へと光線を集束させる1つ、またはそれ以上の異なるレンズにより置き換えられる。
【0154】
また、別の実施例においては、光源アセンブリ322のアキシコン326は、光源320からの励起波長λ0の光の導波管を、種々の方位角で、光学窓312に供給する光ファイバーの束により、置き換えられる。ある実施例において、レンズ324は、光を、光ファイバー束中で連結する1つ以上のレンズにより、置き換えられる。
【0155】
ある実施例においては、光源320より発せられる光から、蛍光波長λFを取り除くフィルター(図示されず)が、光源アセンブリ322に備えられる。ある実施例においては、光源320より放射される光から、励起波長λF以外のほとんどの波長を除去する、1つ以上のフィルター(図示されず)が、光源アセンブリ322に備えられる。
【0156】
上記硬質支持材には、検出器330が備えられており、上記検出器330は、標的分子の蛍光信号(PhCプローブ分子上の蛍光マーカーからの波長λFなど)を感知する。ある実施例においては、1つのセンサーが、内腔壁のあらゆる部分から発せられる波長λFのすべての光を検出するために用いられる。別の実施例においては、内腔壁の照射部分の様々な部分から発せられる、波長λFの光を、別々に検出するために、たくさんのセンサーが用いられる。上記様々な部分とは、軸方向の内腔壁の別の部分、および/または、方位角方向の内腔壁の別の場所を表している。そして、これは、蛍光発光、および、たくさんのセンサーの配置に依存している。電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)など、いかなる光センサーを用いてもよい。
【0157】
図示される実施例には、たくさんのCCDが用いられている。ある実施例においては、3つのCCDアレイが、小型カラービデオカメラの構成部品として商業的に利用されているように、3色を区別するために用いられる。また、ある実施例においては、1つのCCDアレイが使用される。図示される実施例では、検出器330の各センサーから生じるデータは、光子の閾値量の検出を示すだけでなく、その強度、例えば、センサーの積算時間中に、検出器に入射した光子数に比例した値を示す
検出器光学アセンブリ332には、蛍光波長の光を、内腔壁399から、検出器330に向けるための光学部品が、1つ以上備えられている。いかなる方法を用いて、上記蛍光波長の光を上記検出器330に向けてもよい。図示される実施例では、上記検出器光学アセンブリ332は、硬質支持材310に設けられた光学窓312と、アキシコン336と、レンズ334と、フィルター338とを含む。他の実施例においては、別の光学部品が、1つ以上含まれる。
【0158】
図示される実施例においては、上記光学窓312は、環状の帯である。他の実施例においては、上記光学窓は、異なる形状をとる。しかし、いかなる実施例においても、上記検出器光学アセンブリ332は、光学窓312を通って伝播する上記蛍光波長の光を、内腔壁399から検出器330へ向けるように調節されている。
【0159】
図示される実施例においては、円筒状の表面に入射する丸い帯状の光を、回転軸に平行な光線へと変換するアキシコン336が、検出器光学アセンブリ332に含まれる。検出器330に単一のセンサーを用いる実施例においては、アキシコン336およびレンズ334の、光学特性は、アキシコン326に適合するように選択され、その結果、丸い帯状の光学窓312から受け取る蛍光が、検出器に入射する1つの光線を形成する。検出器330に、たくさんのセンサーを使用する実施例においては、アキシコン336およびレンズ334の、光学特性は、アキシコン326と異なるものが選択され、それにより、丸い帯状の光学窓312の様々な部位から受け取る蛍光は、検出器330の様々なセンサー上に、集束される。光学窓312の大きさに合致する環状の光を検出器330上に集束させることで、内腔壁の光照射部分から発せられる蛍光エネルギーは、上記検出器に当たり損ねることによって、無駄になることはない。従って、カプセルの効率が改善される。光学窓312に適合するように、中央窓円周の中心である原点付近に、アキシコン336は、位置づけられ、その回転軸は、軸方向314に合わせられる。
【0160】
他の実施例においては、検出器光学アセンブリ332は、光学窓312からの蛍光を上記検出器に向けるための、別の構成部品を含む。例えば、ある実施例において、光学窓312からの光を、一挙に、0°〜360°の方位角に偏光するために、斜めに置かれた回転鏡により、検出器光学アセンブリ332のアキシコン336が、置き換えられる。その結果得られた光線は、異なる方位角で起こった蛍光を区別するために時間差を使う1つのセンサーにより、測定される。このような実施例では、検出器光学アセンブリ332の回転鏡は、現在は光照射されていないが、その代わり、照射直後の内腔壁部分を反射する、光源アセンブリ322の回転鏡により、オフセットされる。ある実施例においては、各方位角の異なる軸位置を区別するために、空間的アレイが検出器330に使用される。
【0161】
さらに、また別の実施例においては、検出器光学アセンブリ332のアキシコン336は、光学窓312の、種々の方位角からの、蛍光波長λFの光の導波管を、検出器330上のそれぞれのセンサーに供給する、光ファイバーの束のそれぞれによって、置き換えられる。ある実施例においては、レンズ334は、省かれたり、もしくは、光ファイバー束からの光を連結するための1つ以上のレンズによって、置き換えられたりする。
【0162】
検出器光学アセンブリ332には、光学窓312から受け取る光から、励起波長λ0を除去するフィルター338が備えられている。ある実施例においては、光学窓312から受け取る光から、蛍光波長λF以外のほとんどの波長を除去する、1つ以上のフィルター338が、検出器光学アセンブリ332に備えられる。また、フィルター338は使用されない実施例もある。例えば、光源アセンブリ322にフィルターを使用する実施例においては、フィルター338は使用されないことがある。
【0163】
ある実施例においては、検出器光学アセンブリ332には、複数のフィルター338が備えられ、それらフィルターのそれぞれは、光学窓312から受け取られ、検出器330の1つ以上のセンサーからなるアレイに向けられた光から、目的とされる数種の蛍光波長のうちの1つ以外のほとんどの波長を取り除く。数種の目的とされる波長は、同じ蛍光マーカーから放出される場合もあれば、上記カプセルを用いる異なる手法において用いられる別のマーカーから放出される場合もある。説明上、例えば、PhCに結合した蛍光マーカーが、3種の波長、λF1、λF2、およびλF3で蛍光発光すると仮定する。カラービデオカメラに使用される3色検出器では、標準の赤、青、緑フィルターに代わりに、これら3つの波長の、3つのフィルターが用いられる。その結果得られるデータは処理され、上記波長に類似する波長源のデータを除去することにより、蛍光測定の精度および信頼性を向上させることができる。
【0164】
他の例としては、上記3つのフィルターは、コラーゲンなどの内因性蛍光スペクトルにおける3つの波長(例えば、赤褐色、黄色、および緑色)を通す。そこで、赤褐色フィルターの後ろの検出器により検出される強度の、黄色フィルターおよび緑色フィルターの後ろの検出器により検出される強度に対する割合を計算することにより、異常細胞中のコラーゲンのレッドシフトを測定することができる。
【0165】
ある実施例においては、複数の異なる蛍光団を検出するために、複数のフィルターが使用される。例えば、より正確に悪性細胞を測定するために、PhCsおよびコラーゲンの両方を蛍光団として用いる場合、カプセルには、PhC蛍光標識の検出のための1つのフィルターおよび検出器アレイと、コラーゲンのレッドシフトを測定するために、赤褐色用および黄色緑色用に、2つのフィルターと、それに対応する検出器アレイとが用いられる。別の実施例においては、複数のフィルターを用いて、トリプトファン、チロシン、NADH、およびリボフラビンなどの複数の内因性蛍光団を区別する。
【0166】
別の実施例においては、上記の3種の異なる波長は、無関係な疾病の全く異なる方法で使用される3種の異なる蛍光団に用いられる。適切な波長に濾光された検出器アレイからのデータのみを分析することにより、本発明と同等のカプセルを用いて、3種の蛍光団のどれもを検出することができる。そのため、3つの異なるカプセルを制作する必要がない。ある実施例においては、1つの検出器アレイと、可動的に硬質支持材310に取り付けられた複数のフィルター338とが用いられており、カプセル使用者は、1つの検出器アレイの前面にフィルタ−を位置づけるように、制御することができる。
【0167】
ある実施例では、上記検出器光学アセンブリ332は、上記光源が、「ON」のときに、閉じられ、「OFF」のときに、開くシャッター(図示されず)を備える。ある実施例では、上記検出器が、上記光源からの光によって、汚染されていないとき、蛍光発光が、照射後の時間の合間に検出されるように、上記シャッターは作動される。
【0168】
プロセッサー340は、情報処理装置である。例えば、ある実施例においては、プロセッサー340は、特定用途向け集積回路(ASIC)などのカプセル300のために設計されたマイクロプロセッサーである。ある実施例においては、プロセッサー340は、特定の場合に、機能するように、ソフトウェアによりプログラムされた、汎用信号処理またはコンピューターチップであり、これに関しては、後の章で、より詳細に示されている。プロセッサーは、光源320などの、カプセル300の残りの構成部品の動作を制御し、検出器330からの測定に基づくデータを収集するように設定される。
【0169】
例えば、ある実施例においては、プロセッサー340は、各照射部分の蛍光強度を表すピクセルを特定し、その3次元座標(z軸に沿った距離、原点からの縦軸方向の距離、縦軸方向からx軸までの方位角、または、x座標、y座標、z座標など)に関連づける。全方位角の測定を一度に行うような実施例においては、プロセッサー340は、積算強度と釣り合うように、座標を算出する必要はない。
【0170】
ある実施例においては、プロセッサー340は、検出器330の測定、および/またはモニタリングユニット250から伝達されたデータに基づき、上述の診断および治療のいくつかを行うように設定される。例えば、プロセッサー340は、赤褐色フィルターおよび黄色−緑色フィルターの背部の検出器における強度比を算出し、この比が、コラーゲンの内因性蛍光に基づく悪性病変を示す閾値と交差する時を決定する。
【0171】
通信システム350は、センサーの測定に基づくデータを、モニタリングユニット250へと送信する。ある実施例においては、通信システム350は、カプセルへの命令および指令を示すデータを受信する。例えば、通信システム350は、どのフィルターが、検出器330の前面に配置されるかを示すデータを受信する。患者を通して、安全に、データを送信できる、どんな通信システムでも、用いることができる。例えば、ある実施例においては、Iddan Iに示されているようなrf通信システムが使用される。また、ある実施例においては、音響システムが使用される。
【0172】
カプセル300には、動力管理システム360が備えられる。技術的に知られている、あらゆる適切な電源、もしくは、パワーサプライ、ならびに管理システムを、動力管理システム360として、用いてもよい。動力管理システムの原理に関しては、2002年8月6日に公開されたG. V. Iddan、G. Meronによる米国特許第6428469号(以降、Iddan IIと称す)などの、いくつかの特許で述べられている。その内容を参考のために、この明細書に添付する。特に、Norikaカプセルは、外部振動性磁場(external fluctuating magnetic field)によりカプセル内部に電流を発生させる、無線動力伝達システムによって、少なくとも、部分的に動力が供給される。無線動力伝達システムの原理に関しては、1992年12月15日に公開されたR. A. Casper、M. J. McCartney、W. J. Jochem、A. F. Parrによる米国特許第5170801号(以降、Casperと称す)、2002年11月7日に刊行されたA. Glukhovsky、G. J. Iddan、G. Meronらによる米国特許公開US2002/0165592(以降、Glukhovskyと称す)など、複数の特許および刊行物に記されている。そこで、参照として、本明細書に、その内容を織り込む。。
【0173】
図示される実施例では、容器372aと、容器372bとを含む容器372が備えられている。他の実施例においては、容器の数は、図示される実施例よりも多くてもよいし、少なくてもよい。また、容器を含まなくてもよい。他の実施例においては、例えば、軸方向に沿って、蛍光測定のための、カプセルの一端または両端に備えられるドーム状光学窓と対応するように、容器272の位置は、変更される。図示される実施例においては、容器372aは、選択された波長および強度の光照射により活性化されると、光毒性となる蛍光標識プローブの供給を維持し、一方、容器372bは、検出器330による蛍光測定に基づき検出された異常細胞を破壊するために投与される薬剤の供給を維持する。各容器は、その内容物を、命令に応じて、身体内腔へと放出する放出機構を備えている。例えば、容器372aには、弁374aと、弁374bとが、備えられている。一方、容器372bには、弁374cが備えられている。他の実施例においては、容器372は、上記の例より多くの放出機構を備えていたり、より少ない放出機構を備えていたりする。
【0174】
ある実施例においては、カプセル300が身体内腔を通って、移動するときに、動作するように、容器372は配置される。例えば、容器372aは、上記内腔を通って、カプセルが移動する先頭の端で、その内容物の一部を放出する。その結果、光学窓312が、その部分を通り過ぎるまで、その内容物は、内腔壁の細胞によって、吸収される。その後、上記プローブは、光源320から光学窓312を通って、照射することによる励起に適した、上記細胞の壁面に位置する。上記細胞によって吸収されたプローブに基づいて、蛍光発光は測定され、癌が、その局部に存在するかどうかが決定される。癌細胞が、局部に、存在すると決定された場合、その実施例に依存した、局所的治療が実行される。例えば、光活性化毒素が投与された場合、再度、光源による照射を行い、上記光活性化毒素を活性化し、上記光活性化毒素が濃縮された細胞を破壊する。容器374bに蓄えられた局所に使用される薬剤が投与される場合、弁374cは、開き、異常細胞の近傍に薬剤を投与する。上記弁374cが、容器372bの内容物を通過させる孔が、上記異常細胞を有すると決定された位置にあうように、タイミングをあわせて、上記の放出は起こる。
【0175】
図示される実施例においては、カプセルには、電極380aと、電極380bと、電極380cと、電極380dとを含む電極380が備えられている。電極380の作用により、内腔壁の細胞による、容器372から放出される内容物の吸収性を高める。ある実施例においては、容器に含まれるプローブおよび/または薬剤は、電荷(正電荷など)を有している。電極380により、電界を生じさせると、電荷を有するプローブは、エレクトロマイグレーション(electromigration)現象により、特定の方向へと移動し、組織内へと透過する。数マイクロ秒〜数ミリ秒間のショートパルスを繰り返し、発生させることによって、電界を生じさせると、細胞膜の一部は、浸透性となり、その結果、電気穿孔と呼ばれる過程により、プローブまたは薬剤を、細胞内へと透過させることができる。電気穿孔法は、技術的に、よく知られていて、同手法により、リソソームの吸収性が約5倍に増加することが示されている。ある実施例においては、電極380aは、電極280cを含む帯であり、電極380bおよび電極380dを含む第2の帯に関連した1つの電圧で電荷が加えられる。
【0176】
ある実施例においては、1つ以上の電極380に加え、または、その代わりに、音響トランスデューサー(図示されず)が、カプセルに備えられる。このような実施例においては、上記音響トランスデューサーは、超音波の周波数で、作動させられ、その結果、超音波穿孔法により、プローブおよび/または薬剤の吸収性を増加させる。なお、超音波穿孔法は、十分に確立された技術である。
【0177】
図示される実施例では、カプセル300には、移動制御システム384の構成部品が備えられている。移動制御システムには、腸の蠕動運動を、減衰させたり、上記運動に拮抗したり、または、上記運動に逆行するための部品が、カプセル300上に、1つ以上含まれる。ある実施例においては、カプセルは、定位置を保つこと、腸の蠕動運動に逆行して移動すること、または、特定の方向へと向きを変えることができる。上記のような移動制御システムの原理に関しては、2003年5月15日に公開されたB. Kim、Y. Jeong、T. Kim、J. Park、S. Songによる米国特許公開US2003/0092964などの刊行物に記されている。そこで、参照として、本明細書に、その内容を織り込む。。
【0178】
これらの実施例では、伸縮性のヒレや小球を用いて、上記内腔壁に対して、相対的にカプセルを移動させる。また、上記のシステムにより、大腸内で、特定の方向へと、小さいカプセルの向きを変え、カプセルが、大腸を通り抜ける間に、カプセルを別の方法で転がらせる力を相殺することができる。
【0179】
本明細書を作成している時点で、患者の腸内部でカプセルの方向を変える磁気固定子およびローターシステムが、rfnorika.comというドメイン名で、インターネットのワールドワイドウェブのページ上で述べられている。3つのコイルが、ローターコイルの役目を果たすカプセルの内部に、定間隔で配置される。患者に着せるチョッキに内蔵される3つのコイルは、固定子として使用され、回転方向を決定する磁界を発生させる。カプセルの蓄電池は充電されている。ローターコイルから、カプセルの蓄電池が放電するときに、大きな一過性の磁力が、カプセルより生成される。これが、固定子により作られる外部の磁界と相互作用し、カプセルを回転させる。ローターコイルと固定子とに流れる電流を調節することで、カプセルの傾きを15°範囲内で決定することができる。上記システムを用いる実施例においては、カプセルの移動制御システム384には、蓄電池およびローターコイルが含まれる。
【0180】
ある実施例においては、上記移動制御システムを用いて、1つのカプセルを定位置にとどまらせ、上述のように、蛍光指標を使った疾病の治療効果を観察する。ある実施例においては、移動制御システムを用いて、1つのカプセルを定位置にとどまらせて悪性細胞の検出を行い、その後治療を行う。
【0181】
ある実施例においては、カプセル300には、組織検体採取システム(図示されず)が備えられており、検出器330よる蛍光測定に基づいたカプセルの現在の位置で、上記内腔壁から組織の採取が行われる。身体内腔を通り抜けたカプセルから組織を採取するには、技術的に知られたどんな適正な方法を用いてもよい。ある実施例においては、カプセルに吸引ポンプが備えられ、この吸引作用を用いて、生体組織検査が行われる。別の実施例においては、カプセルの楕円形ヘッドを、組織検体を機械的に集めるスプーンとして用い、上記スプーンをねじるローター−固定子の磁界のような移動制御システムにより、組織の採取が行われる。
【0182】
<4.3 外部アセンブリ>
ある実施例では、外部アセンブリには、モニタリングユニット250に示された以外の、多くの、もしくは、異なる部品が含まれる。例えば、ある実施例においては、モニタリングユニット250には、患者体内のカプセルの位置を特定する独立した測位システムと、患者体内のカプセルの移動を制御する移動制御システムと、カプセルへとデータおよび命令を送信するrf送信機と、動力管理システムとが含まれる。
【0183】
測位システムは、カプセルが腸を通って、(腸の筋肉の蠕動運動などにより)移動するときに、上記カプセルの位置を検出する用途に用いられる。その例としては、すでに引用したIddan Iに示される測位システムが挙げられる。カプセルの位置は、患者の体外に備えられた、たくさんのアンテナのそれぞれで受信されるrf伝達の力に基づいて検出される。図示される実施例中の受信器252は、上記のようなたくさんのアンテナを備えている。カプセルが、患者周囲に備えられた音響センサーにより検出される音波を発する実施例においては、音響追跡システムが用いられる。他の実施例においては、磁気のバルクハイゼン効果に基づく磁気追跡システムが用いられる。上記のようなシステムに関しては、2002年1月8日に公開された、R. J. Von Gutfeld、J. F. Ziegler、S. J. McAllister、J. H. Anderson、J. C. Murphy、M. D. Zieglerによる米国特許第6337627号(以降、Von Gutfeldと称する)に記されている。そこで、参照として、本明細書に、その内容を織り込む。。
【0184】
プロセッサー254は、情報処理装置である。例えば、ある実施例においては、プロセッサー254は、特定用途向け集積回路(ASIC)のような、モニタリングユニット250のために設計されたマイクロプロセッサーである。ある実施例においては、プロセッサー254は、特定の場合に機能するように、ソフトウェアによりプログラムされた汎用信号処理またはコンピューターチップであり、これに関しては、後の章で、より詳細に述べる。プロセッサー254は、モニタリングユニット250およびカプセル300の残りの構成部品の動作を制御し、使用者からの入力を受け取るよう設定されている。
【0185】
例えば、ある実施例においては、プロセッサー254は、各照射部分の蛍光強度を表すピクセルを特定し、1次元座標、2次元座標、または3次元座標を、上記ピクセルと関連付ける。ある実施例においては、上記プロセッサーは、上記ピクセルに基づいて画像を作成し、データ記憶装置256にその画像を保存し、データディスプレイ258にその画像を表示する。ある実施例においては、プロセッサー254は、異なる蛍光波長の強度比を算出する。
【0186】
ある実施例においては、プロセッサー254は、カプセル300によってなされた測定、受信器252による測定、もしくは、使用者が伝達された情報、または、これら情報源の組合せに基づき、上述の診断および治療の決定のいくつかを実行するように、設定される。
【0187】
ある実施例においては、モニタリングユニット250には、動力管理システム(図示されず)が備えられている。例えば、上述したように、およびIddan II、Casper、Glukhovskyに述べられているように、動力管理システムには、カプセル300のコイルに電流を発生させ、導線なしで、カプセルへと動力を伝達する振動性磁界を発するコイルが備えられている。
【0188】
ある実施例においては、モニタリングユニット250には、上述のような移動制御システム(図示されず)が備えられる。例えば、モニタリングユニット250には、患者に着せるチョッキに内蔵される3つのコイルが含まれる。上記のコイルは、固定子として使用される。また、上記のコイルは、カプセル300の回転方向を決定する磁界を発生する。
【0189】
モニタリングユニット250の移動制御システムは、カプセルのローターコイルとチョッキの固定子コイルとに流れる電流をモニターすることで、カプセルの傾きを15°以内の範囲内で決定することができる。ある実施例においては、位置制御システムが作動して、生体組織検査を行うために、上記カプセルを特定の位置に配置する。また、ある実施例においては、位置制御システムが作動して、上記カプセルの片側にだけ設けられた、孔をもつ容器から物質を放出する。
【0190】
<5. プロセッサーハードウェアの概要>
図4は、本発明の一部の実施例を満足するコンピューターシステム400を図示したブロック図である。例えば、ある実施例においては、モニタリングユニットのプロセッサーによって行われる機能が、コンピューターシステム400によって行われてもよい。コンピューターシステム400は、上記コンピューターシステム400の他の内部および外部の構成部品間で情報のやりとりを行う、バス410などの通信機構を備えている。なお、ここでいう情報は、測定可能な現象の物理的信号を意味しており、通常は電圧であるが、他の実施例においては、磁気的相互作用、電磁的相互作用、圧力的相互作用、化学的相互作用、分子的相互作用、および原子的相互作用であってもよい。例えば、N極磁界およびS極磁界、または0電圧および非0電圧は、2進数(bit)の2様相(0、1)を表す。一連の2進数は、数字や文字コードを表すために用いられるデジタルデータを構成する。バス410は、多数の情報並列装置(parallel conductors of information)を備えており、その結果、バス410に接続された機器間で、情報は、迅速に転送される。情報処理を行う、1つ以上のプロセッサー402は、バス410に接続されている。プロセッサー402は、情報に基づいて、一連の演算を行う。上記の一連の演算には、バス410からの情報の取得、およびバス410への情報の打ち込みが含まれる。また、上記の一連の演算には、通常、2つ以上の情報単位の比較、情報単位の転送、および、加算および乗算などによる情報単位の合成が含まれる。プロセッサー402が実行する一連の演算により、電算機命令が構成される。
【0191】
コンピューターシステム400には、バス410に接続されたメモリー404が備えられている。ランダムアクセスメモリー(RAM)やその他の動的記憶装置のようなメモリー404は、電算機命令を含む情報を保存する。動的メモリーを用いることで、コンピューターシステム400は、メモリーに保存される情報を変更することができる。RAMは、メモリーアドレスと呼ばれる場所に、一連の情報単位を保存することによって、隣接アドレスにある情報とは独立して、情報の保存や呼び出しを可能にする。
【0192】
メモリー404は、プロセッサー402が電算機命令を実行している間の一時的な数値を保存するために、利用される。コンピューターシステム400には、同システム400により変更されない命令を含む静的情報を保存するために、バス410に接続された、読み出し専用メモリー(ROM)406またはその他の静的記憶装置を備えている。また、磁気ディスクや光学ディスクなどの不揮発性(持久性)記憶装置408が、コンピューターシステム400の電源が投入されていないとき、もしくは、スリープ状態にあるときでさえ、存続する命令を含む情報を保存するために、バス410に接続される。
【0193】
命令を含む情報は、文字数字キーを備え、ヒトである使用者に利用されるキーボード、または、センサーなどの外部入力デバイスから、バス410へと入力され、プロセッサーによる処理が行われる。センサーは、その周囲の状況を検出し、それら検出を、コンピューターシステム400で、情報を表すために利用される信号と、互換性のある信号へと変換する。上記以外に、主に、ヒトと相互作用するために用いられ、バス410に接続される外部機器には、画像を表示するディスプレイ414(例えば、陰極線管(CRT)や液晶ディスプレイ(LCD))と、ディスプレイ414上に表示される小さなカーソル画像を制御したり、または、ディスプレイ414上に表示される画像要素に対応する命令を出したりする、ポインティングデバイス416(例えば、マウス、トラックボール、カーソル方向キー)とが含まれる。
【0194】
図示される実施例においては、特定用途向け集積回路(IC)420などの特定用途向けのハードウェアが、バス410に接続されている。上記特定用途向けハードウェアは、プロセッサー402が特定用途に十分な速度で行うことができない演算を行うよう設定されている。特定用途向け集積回路の例としては、ディスプレイ414に表示する画像を構築するグラフィックアクセレーターカード(graphic accelerator card)、ネットワークを介して送信されるメッセージの暗号化および復号化を行うクリプトグラフィックボード、音声認識、および、ハードウェア上でより効率的に実行される、複雑な一連の命令繰り返し、実行する、ロボアームや医療用スキャン機器などの特殊外部機器のインターフェイスを効果的に繰り返し行うハードウェアであるを接続する、などが挙げられる。
【0195】
コンピューターシステム400には、バス410に接続される、代表的な通信インターフェイス470が、1つ以上備えられている。通信インターフェイス470により、プリンターや、スキャナー、外部ディスクなどのように、それ自身のプロセッサーにより動作する種々の外部機器と連結する双方向通信が可能となる。
【0196】
一般的には、上記の連結は、自身のプロセッサーを有する、種々の外部機器が接続されたローカルネットワーク480に接続されたネットワークリンク478との間で行われる。通信インターフェイス470の例としては、パーソナルコンピューターに備えられたパラレルポート、シリアルポート、またはユニバーサルシリアルバス(USB)などが挙げられる。ある実施例においては、通信インターフェイス470は、それぞれに対応するタイプの電話線に情報通信接続を提供する、総合デジタル通信網(ISDN)カード、またはデジタル加入者回線(DSL)カード、または電話モデムである。
【0197】
ある実施例においては、通信インターフェイス470は、同軸ケーブルを介した通信接続のための信号、または、光ファイバーケーブルを介した通信接続のための光信号に、バス410上の信号を変換するケーブルモデムである。また、別の実施例においては、通信インターフェイス470は、ローカルエリアネットワーク(LAN)カードであり、イーサネット(登録商標)などの互換LANに、データ通信接続を提供する。また、無線接続を用いても構わない。無線接続を行う場合、通信インターフェイス470は、デジタルデータなどの情報の流れを送達する、赤外線信号および光信号を含む、電気的信号、音響的信号、または電磁的信号を送受信する。なお、上記に挙げられた信号として、搬送波が例示される。
【0198】
「コンピューター可読媒体」という用語は、ここでは、プロセッサー402に、実行するための命令を提供するのに関与する、あらゆる媒体をさす。このような媒体は、多くの形態をとり、不揮発性媒体、揮発性媒体、および送信媒体(transmission media)などを含むが、これに限定されるものではない。例えば、不揮発性媒体には、記憶装置408のような、光学ディスク、または、磁気ディスクが含まれる。揮発性媒体には、例えば、動的メモリー404が含まれる。また、送信媒体には、例えば、同軸ケーブル、銅線、光ファイバーケーブル、および、ラジオ無線、光学波、および赤外波を含む、音波および電磁波のように、導線やケーブル無しで、空間を移動する波が含まれる。送信媒体を介して伝達される信号は、ここでは、搬送波と呼ぶ。
【0199】
コンピューター可読媒体の一般的な形態には、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、フレキシブルディスク、磁気テープ、またはその他の磁気メディア;コンパクトディスクROM(CD−ROM)、またはその他の光学メディア;パンチカード、紙テープ、またはその他穴のパターンを利用した物理的メディア;RAM、プログラマブルROM(PROM)、消去可能PROM(EPROM)、FLASH−EPROM、もしくは、その他のメモリーチップまたはカートリッジ;搬送波、または、コンピューターが読み取ることが可能なあらゆる媒体が含まれる。
【0200】
通常、ネットワーク接続478は、情報を処理、または利用する機器に、1つ以上のネットワークを介した情報通信を提供する。例えば、ネットワーク接続478は、ホストコンピューター482、または、インターネットサービスプロバイダ(ISP)により管理される装置484に、ローカルネットワーク480を介したや、接続を提供する。ISPの装置484は、現在、一般的に、インターネット490と称されるネットワークである、公共の世界規模パケット交換方式通信ネットワークを介して、データ通信サービスを、次々と提供する。サーバー492と称される、インターネットに接続されたコンピューターは、インターネットから受け取った情報に対応するサービスを提供する。例えば、サーバー492は、ディスプレイ414上に表示されるビデオデータを表す情報を提供する。
【0201】
本発明は、以下に示される技術を実現する、コンピューターシステム400の使用に関する。本発明の一実施例によれば、これら技術は、メモリー404に含まれる1つ以上が連続した、1つ以上の命令を実行するプロセッサー402に応じて、コンピューターシステム400により実現される。ソフトウェアおよびプログラムコードと呼ばれる、上記のような命令は、記憶装置408のような、別のコンピューター可読媒体から、メモリー404へと読み込まれても構わない。メモリー404に含まれる一連の電算機命令の実行により、プロセッサー402は、本明細書で示された方法の工程を実行する。別の実施例では、特定用途向け集積回路420などのハードウェアが、本発明を実施するソフトウェアの代替物として、または上記ソフトウェアと組み合わせて用いられても構わない。このように、本発明の実施例は、ハードウェアおよびソフトウェアのどんな特定の組み合わせにも、限定されるものではない。
【0202】
コンピューターシステム400から、および、コンピューターシステム400へ、情報を運搬する、ネットワーク接続478、ならびに、通信インターフェイス470を介した他のネットワークに、転送される信号の典型的な形態は、搬送波である。コンピューターシステム400は、通信インターフェイス470、ネットワーク接続478、ならびに、その他の機器間のネットワーク480およびネットワーク490を介して、プログラムコードなどの情報を、送受信することができる。インターネット490を利用する実施例では、サーバー492は、コンピューターシステム400から、インターネット490、ISPの装置484、ローカルネットワーク480、および通信インターフェイス470を介して、送信されたメッセージによる要求に応じて、特定用途向けのプログラムコードを送信する。受信されたコードは、プロセッサー402により実行、および/または、後に実行するために記憶装置408やその他の不揮発性記憶装置に保存される。このようにして、コンピューターシステム400は、搬送波の形で、アプリケーションプログラムコードを得ることができる。
【0203】
様々な形態のコンピューター可読媒体が、実行する1つ以上連続した、1つ以上の命令および/またはデータを、プロセッサー402に送達するのに、関与してもよい。例えば、命令およびデータは、まず、ホスト482などの遠隔コンピューターの磁気ディスクに運ばれる。上記遠隔コンピューターは、命令およびデータを、動的メモリーへと読み込む。そして、モデムを用いて電話線を介して、命令およびデータを送信する。コンピューターシステム400のローカルモデムは、電話線上の命令およびデータを受信し、赤外線送信機を用いて、命令およびデータを赤外線信号、すなわち、ネットワーク接続478として機能する搬送波に変換する。通信インターフェイス470として機能する赤外線受信器は、上記赤外線信号で運ばれる命令およびデータを受信し、命令およびデータを表す情報をバス410上に配置する。バス410は、上記情報をメモリー404に運ぶ。プロセッサー402は、命令と共に送信されたデータの一部を用いて、メモリー404から命令を読み出し、命令を実行する。プロセッサー402に実行される前、または後に、メモリー404で受信された命令およびデータは、随意的に、記憶装置408に保存される。
【0204】
以上、詳述したように、本発明について、特定の実施形態を参照しながら、述べてきた。しかし、本発明の範囲および精神より逸脱することなく、本発明に様々な修正や変更を加えることが可能である。本発明の詳細な記述や図表は、例示のみを目的としたものであり、本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】図1は、本発明の実施例に基づく、身体内腔の壁面における細胞の種類や機能を決定する方法を詳細に示すフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の実施例に基づく、身体内腔壁のおける蛍光を検出するシステムを示すブロック図である。
【図3A】図3Aは、本発明の実施例に基づく、身体内腔壁における蛍光を検出する飲み込み式カプセルを示すブロック図である。
【図3B】図3Bは、本発明の実施例に基づく、上記カプセルを3次元的な相対座標を示す透視図である。
【図4】図4は、本発明の実施例において使用されるコンピューターシステムを示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体内腔の壁面の細胞より発せられる蛍光発光の検出方法であって、
a.身体内腔に自律性の硬質支持材を導入する工程と、
b.上記硬質支持材に備えられ、特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源によって、上記身体内腔の内腔壁の細胞に光を照射する工程と、
c.上記工程bで、光を照射される細胞が、特定の蛍光信号を発しているかを、上記硬質支持材に備えられる検出器によって、検出する工程と、
d.上記の光を照射される細胞から、特定の蛍光信号が検出された場合、検出された上記蛍光信号の、強度、および上記内腔壁における位置のうち、少なくとも1つを測定する工程と、を含む、検出方法。
【請求項2】
上記の特定の蛍光信号が検出された上記内腔壁における位置を示す画像を作成する工程を含む、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
上記の特定の蛍光信号が、上記内腔壁の特定の細胞において、内因性である分子によって発せされる、請求項1に記載の検出方法。
【請求項4】
上記の光を照射される細胞を含む、上記内腔壁の細胞に、上記内腔壁の特定の細胞に結合、または吸収される、外因性蛍光標識プローブを導入する工程を含み、かつ、
上記の特定の蛍光信号が、上記の外因性プローブより発せられる、請求項1に記載の検出方法。
【請求項5】
上記の検出された蛍光信号が、異常細胞の有無を示す、請求項1に記載の検出方法。
【請求項6】
上記内腔壁が、腸壁であって、上記異常細胞が、癌細胞、結腸ポリープ、および前癌性細胞のうちの、少なくとも1つである、請求項1に記載の検出方法。
【請求項7】
請求項4において、上記外因性蛍光標識プローブを導入する、上記工程が、2−デオキシグルコース、アネキシンV(Annexin V)、ホスホニウムカチオン、ローダミン−123、JC1、およびTMREを含む群より、上記の外因性プローブを選択する工程を含む、請求項4に記載の検出方法。
【請求項8】
請求項4において、上記外因性蛍光標識プローブを導入する、上記工程が、外因性プローブを蛍光マーカーにより標識する工程を含み、
上記蛍光マーカーが、5−カルボキシフルオレセイン2酢酸、スクシンイミジルエステル(CFDA/SE)、6−カルボキシフルオレセイン2酢酸、クラゲ緑色蛍光タンパク質(GFP)、2光子蛍光団(C625)、discosoma(サンゴ)由来の赤色蛍光タンパク質(dsRed)、シアニン色素、3,3−ジエチルチアカルボシアミン(3,3-diethylthiadicarbocyamine)、カルボキシフルオレセイン2酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE)、本来、有する蛍光タンパク質(コーラルレッド(dsRed)およびイエロー(Citrine))、フルオロセイン、ローダミン123、スルホローダミン(赤色)、ジニトロフェニル(黄色)、ダンシル(黄色)、サフラニンOを含む群の一員である、請求項4に記載の検出方法。
【請求項9】
請求項4において、上記外因性蛍光標識プローブを上記内腔壁の細胞に導入する、上記工程が、さらに、上記の外因性プローブを上記動物に注射する工程を含む、請求項4に記載の検出方法。
【請求項10】
請求項4において、上記外因性蛍光標識プローブを上記内腔壁の細胞に導入する、上記工程が、上記外因性蛍光標識プローブを、上記硬質支持材に備えられる容器から放出する工程を含む、請求項4に記載の検出方法。
【請求項11】
請求項10において、上記内腔壁の細胞に光を照射する、上記工程の前に、上記の外因性プローブの吸収を増大させるために、上記硬質支持材に備えられる音源より超音波を発する工程を実行する、請求項10に記載の検出方法。
【請求項12】
請求項10において、上記内腔壁の細胞に光を照射する、上記工程の前に、上記の外因性プローブの吸収を増大させるために、上記硬質支持材に備えられる電極によって、電界を生じさせる工程を実行する、請求項10に記載の検出方法。
【請求項13】
腸細胞が発する蛍光の生体内検出方法であって、
a.腸の内腔に自律性の硬質支持材を導入する工程と、
b.上記硬質支持材に備えられ、特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源によって、腸壁の細胞に光を照射する工程と、
c.上記工程bで、光を照射される細胞が、上記の特定の蛍光信号を発しているかを、上記硬質支持材に備えられる検出器によって、検出する工程と、
d.上記の光を照射される細胞から、特定の蛍光信号が検出された場合、その蛍光信号の、強度、および上記腸における位置のうち、少なくとも1つを測定する工程と、を含む、生体内検出方法。
【請求項14】
動物の腸管内の異常細胞を破壊する方法であって、
a.異常な腸細胞に、選択的に、結合または吸収される外因性蛍光標識プローブを、動物に投与する工程と、
b.腸の内腔に、自律性の硬質支持材を導入する工程と、
c.上記硬質支持材に備えられ、上記の外因性プローブ上の蛍光標識によって発せされる特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源によって、腸壁の細胞に光を照射する工程と、
d.上記工程bで、光を照射される細胞が、上記の特定の蛍光信号を発しているかを、上記硬質支持材に備えられる検出器によって、検出する工程と、
e.上記の特定の蛍光信号が検出された場合、上記の異常な腸細胞を破壊する薬剤を放出する工程と、を含む、異常細胞を破壊する方法。
【請求項15】
上記の異常細胞が、癌細胞、結腸ポリープ、および前癌性細胞のうちの、少なくとも1つである、請求項14に記載の異常細胞を破壊する方法。
【請求項16】
請求項14において、上記の異常な細胞を破壊する薬剤を放出する工程が、上記硬質支持材に備えられた容器から、上記腸の内腔に薬剤を放出する工程を含む、請求項14に記載の異常細胞を破壊する方法。
【請求項17】
請求項14において、上記の異常な細胞を破壊する薬剤を放出する工程が、上記腸の内腔に導入される、別の硬質支持材の容器から、上記薬剤を放出する工程を含む、請求項14に記載の異常細胞を破壊する方法。
【請求項18】
上記薬剤の吸収を増大させるために、上記硬質支持材に備えられる音源より、超音波を発する工程を含む、請求項14に記載の異常細胞を破壊する方法。
【請求項19】
上記薬剤の吸収を増大させるために、上記硬質支持材に備えられる電極によって、電界を生じさせる工程を含む、請求項10に記載の異常細胞を破壊する方法。
【請求項20】
動物の腸管の異常細胞を破壊する方法であって、
a.異常な腸細胞に、選択的に、結合または吸収される、1つ以上の外因性プローブを、動物に投与する工程と、
b.腸の内腔に自律性の硬質支持材を導入する工程と、
c.上記硬質支持材に備えられ、上記外因性プローブ上の蛍光標識によって発せされる、特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源によって、腸壁の細胞に光を照射する工程と、
d.上記工程bで、光を照射される細胞が、上記の特定の蛍光信号を発しているかを、上記硬質支持材に備えられる検出器によって、検出する工程と、
e.上記の特定の蛍光信号が検出された場合、上記の異常細胞を破壊する光活性化毒素を、活性化する光を、上記の細胞に照射する工程と、を含み、
上記外因性プローブのうち、少なくとも1つが、蛍光標識に結合しており、および、少なくとも1つが、光活性化毒素に結合している、異常細胞を破壊する方法。
【請求項21】
請求項20において、1つ以上の上記外因性プローブを、一定量、投与する工程が、5−アミノレブリン酸(ALA)、フォトフリン、ポリヘマトポルフィリン、およびメソテトラヒドロキシフェニルクロリンを含む群より、上記外因性プローブを選択する工程を含む、請求項20に記載の異常細胞を破壊する方法。
【請求項22】
動物の腸管上部、および腸管下部の、癌の治療効果を測定する方法であって、
a.腸管上部、または腸管下部に、癌を有する動物に対し、上記癌の細胞に、選択的に、結合または吸収される外因性蛍光標識プローブを、一定量、投与する工程と、
b.腸の内腔に導入された第1の自律性の硬質支持材に備えられ、上記の外因性プローブにある蛍光標識により、発せされる特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源によって、腸壁の細胞に光を照射する工程と、
c.上記工程bで、光を照射される細胞が、上記の特定の蛍光信号を発しているかを、上記第1の硬質支持材に備えられる検出器によって、検出し、第1蛍光発光量を測定する工程と、
d.上記工程cの後、上記癌の細胞を除去するために、腸管上部または腸管下部に、癌を有する上記動物に対し、治療薬を投与する工程と、
e.上記工程dの後、上記動物に一定量の上記外因性蛍光標識プローブを投与する工程、
f.腸内腔に導入された第2の自律性の硬質支持材に備えられ、上記の外因性プローブ上の蛍光標識により、発せられる特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源によって、上記の腸壁の細胞に光を照射する工程と、
g.上記工程fで、光を照射される細胞が、上記の特定の蛍光信号を発しているかを、上記第2の硬質支持材に備えられる検出器によって、検出し、第2蛍光発光量を決定する工程と、
h.上記第1蛍光発光量および第2蛍光発光量の差異を基に、上記治療薬の効果を測定する工程と、を含む、治療効果を測定する方法。
【請求項23】
上記第1の硬質支持材が、上記第2の硬質支持材と同じである、請求項22に記載の治療効果を測定する方法。
【請求項24】
上記第1の硬質支持材が、上記第2硬質支持材と異なる、請求項22に記載の治療効果を測定する方法。
【請求項25】
動物の身体内腔壁の細胞から発せられる蛍光発光を検出するカプセルであって、
身体内腔の内側に収まる硬質支持材と、
上記硬質支持材に備えられ、特定の分子における特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源と、
上記硬質支持材に備えられ、上記光源からの光を用い、上記身体内腔の内腔壁の一部分に光を照射する第1光学部品と、
上記硬質支持材に備えられ、上記の特定の蛍光信号の測定を行う検出器と、
上記硬質支持材に備えられ、上記の光が照射される一部分から発せされる、上記の特定の蛍光信号を、上記検出器へと導く第2光学部品と、
上記の測定に基づくデータを、上記動物の体外にあるモニタリングユニットへ転送するデータ転送システムと、を含む、カプセル。
【請求項26】
上記第2光学部品が、上記の特定の蛍光信号部分ではない波長の光を除去するフィルターを含む、請求項25に記載のカプセル。
【請求項27】
上記第2光学部品が、上記光源が照射を行う際に、光を遮断するシャッターを含む、請求項25に記載のカプセル。
【請求項28】
上記第1光学部品が、上記硬質支持材の外被に透明の帯状域を有する、請求項27に記載のカプセル。
【請求項29】
上記第1光学部品が、上記光源からの軸方向の光線の光パルスを、上記透明の帯状域を透過する放射状の光の帯に変換するアキシコンを含む、請求項28に記載のカプセル。
【請求項30】
上記第1光学部品が、上記光源からの軸方向の光線の光パルスを、上記透明の帯状域を透過する複数の放射状光線へと変換する、光ファイバーの密着された束を含む、請求項28に記載のカプセル。
【請求項31】
上記第1光学部品が、上記光源からの軸方向の光線の光パルスを、上記透明の帯状域を透過する、回転する放射状の光線へと変換する、回転鏡を含む、請求項28に記載のカプセル。
【請求項32】
上記第1光学部品が、上記光源からの光が上記検出器に衝突するのを防止する、請求項25に記載のカプセル。
【請求項33】
上記第2光学部品が、内腔壁の、光が照射される部分からの、上記透明の帯状域を透過する光線を、上記検出器に衝突する、1つ以上の光線へと変換するアキシコンを含む、請求項28に記載のカプセル。
【請求項34】
上記第2光学部品が、上記内腔壁の、光が照射される部分からの、上記透明の帯状域を透過する複数の放射状光線を、上記検出器に集束する、光ファイバーの密着された束を含む、請求項28に記載のカプセル。
【請求項35】
上記第2光学部品が、上記内腔壁の、光が照照射される部分からの、上記透明の帯状域を透過する複数の放射状光線を、次々と、上記検出器上で反射させる回転鏡を含む、請求項28に記載のカプセル。
【請求項36】
上記検出器が、光が照射される部分全域にわたる上記の特定の蛍光信号の光を、積算する1つのセンサーを含む、請求項25に記載のカプセル。
【請求項37】
上記検出器が、上記の光が照射される部分の中の異なる位置ごとの、上記の特定の蛍光信号の光強度を識別する、たくさんのセンサーを含む、請求項25に記載のカプセル。
【請求項38】
上記光源が上記の光が照射された部分への、光の照射を止めた後、異なる経過時間後における、上記の光が照射された部分から発せられる、上記の特定の蛍光信号の光強度を識別するセンサーを、上記検出器が、含む、請求項25に記載のカプセル。
【請求項39】
上記データ転送システムが、上記測定に基づき、画像のピクセルを作成するプロセッサーを含む、請求項25に記載のカプセル。
【請求項40】
個々のピクセルが、上記の光が照射された部分全体に渡って、積算された、上記の特定の蛍光信号の強度を表す、請求項39に記載のカプセル。
【請求項41】
個々のピクセルが、上記の光が照射された部分の一部の、上記の特定の蛍光信号の強度を表す、請求項39に記載のカプセル。
【請求項42】
少なくとも1つの外因性蛍光標識プローブと、異常細胞を破壊する薬剤と、を蓄える容器を有し、かつ、
命令に応じて、上記容器の内容物を放出する放出機構を備える、請求項25に記載のカプセル。
【請求項43】
上記内腔壁の細胞による上記内容物の吸収を増大させるために、上記容器の上記内容物を放出した後、電界を生じさせる電極を含む、請求項42に記載のカプセル。
【請求項44】
上記内腔壁の細胞による上記容器の上記内容物の吸収を増大させるために、上記容器の上記内容物を放出した後、超音波を発する音響トランスデューサーを備える、請求項42に記載のカプセル。
【請求項45】
少なくとも1つの航行システムと、無線動力伝達システムと、を備える、請求項25に記載のカプセル。
【請求項46】
上記内腔壁による蠕動運動に逆らって、動作する位置制御システムを、上記硬質支持材上に備える、請求項25に記載のカプセル。
【請求項47】
動物の身体内腔壁の細胞より発せられる蛍光を表示するモニタリングユニットであって、
動物の身体内腔の内側に収まるカプセルからのデータを受信する受信器と、
上記データに基づき画像を作成するプロセッサーと、
上記画像を使用者に表示するディスプレイと、を備え、
上記カプセルが、
硬質支持材と、
上記硬質支持材に備えられ、特定分子の特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源と、
上記硬質支持材に備えられ、上記内腔壁の、光が照射された部分から、発せされる、上記の特定の蛍光信号の測定を行う検出器と、
上記測定に基づくデータを、上記受信器へと送信するデータ転送システムと、を有する、モニタリングユニット。
【請求項48】
上記受信器が、上記身体内腔における上記カプセルの位置に基づき、位置測定を行うように設定されており、かつ、
上記プロセッサーが、上記受信器による位置測定に基づき、上記カプセルの位置を決定するように設定されている、請求項47に記載のモニタリングユニット。
【請求項49】
上記の蛍光信号が、上記内腔壁の異常細胞に、選択的に、結合または吸収される外因性蛍光標識プローブによって発せられ、
上記カプセルが、少なくとも1つの外因性蛍光標識プローブと、異常細胞を破壊する薬剤とを蓄える容器を有し、命令に応じて、上記容器の内容物を放出する放出機構を備え、
上記プロセッサーが、上記容器の上記内容物を放出する時を決定するよう設定されており、
上記モニタリングユニットが、上記カプセルの受信器に上記命令を送信する送信器を備えている、請求項47に記載のモニタリングユニット。
【請求項50】
動物の身体内腔壁の細胞によって発せられる蛍光発光を検出するシステムであって、
カプセルと、モニタリングユニットと、を含み、
上記カプセルが、身体内腔の内側に収まる硬質支持材と、
上記硬質支持材に備えられ、特定分子の特定の蛍光信号を励起する波長をもつ光源と、
上記硬質支持材に備えられ、上記身体内腔の、光が照射された部分から発せられる上記の特定の蛍光信号の測定を行う検出器と、
上記の測定に基づくデータを転送するデータ転送システムと、を備え、
上記モニタリングユニットが、上記カプセルからのデータを受信する受信器と、
上記データに基づき画像を作成するプロセッサーと、
上記画像を使用者に表示するディスプレイと、を含む、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−512109(P2006−512109A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543229(P2004−543229)
【出願日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2003/024163
【国際公開番号】WO2004/032621
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(500493067)ザ ジョンズ ホプキンズ ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】