説明

蛍光X線分析装置及び蛍光X線分析方法

【課題】作業効率に優れ、かつ安全に試料測定を行える蛍光X線分析装置及び蛍光X線分析方法を提供する。
【解決手段】試料S上の照射ポイントP1に放射線を照射する放射線源2と、X線検出器3と、試料と放射線源及びX線検出器とを相対的に移動可能な移動機構8と、筐体10と、筐体の内外に試料を出入りさせる開口10aを開閉する扉20と、照射ポイントの高さを測定可能な高さ測定機構7と、測定した照射ポイントの高さに基づいて試料と、放射線源及びX線検出器との距離を調整する移動機構制御部9と、照射ポイントに可視光レーザを照射するレーザ部7と、扉が開状態の時、レーザ部を作動させて可視光レーザを照射させると共に、扉が閉状態の時、レーザ部を停止させるレーザ部作動制御部9と、扉が開状態の時、高さ測定機構を作動させて照射ポイントの高さを測定させる高さ測定機構作動制御部9と、を備えた蛍光X線分析装置100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料表面の蛍光X線分析等を行うための蛍光X線分析装置及び蛍光X線分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光X線分析は、X線源から出射されたX線を試料に照射し、試料から放出される特性X線(蛍光X線)をX線検出器で検出することで、そのエネルギーからスペクトルを取得し、試料の定性分析又は定量分析を行うものである。この蛍光X線分析は、試料を非破壊で迅速に分析可能なため、工程・品質管理などで広く用いられている。近年では、蛍光X線分析の高精度化・高感度化が図られて微量測定が可能になり、特に材料や複合電子部品などに含まれる有害物質の検出を行う分析手法として普及が期待されている。
【0003】
ところで、従来の蛍光X線分析では、試料とX線源との距離(z方向の高さ)が一定となるよう、試料を光学的に観察しながら手動で焦点を合わせる(高さ調整をする)必要があり、作業効率が低下していた。そこで、X線源と光学系とを同軸とし、光学系による試料の焦点合わせを自動で行う技術が開示されている(特許文献1)。
又、従来の蛍光X線分析では、装置内の試料を光学的に観察しながらx−y方向に移動させてX線照射位置を位置合せする必要があり、やはり作業効率の低下を招いていた。そこで、X線源に近接するレーザからレーザ光を試料に照射することで、X線照射位置をレーザスポットとして肉眼で観察でき、位置合せを容易にする技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-274518号公報(図1の符号39)
【特許文献2】特開2006-329944号公報(図1の符号9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、仮に特許文献2記載の技術を用いた場合、試料を光学的に観察する際にもレーザ光が照射されると、輝点となって観察を妨害したり作業者の眼を疲れさせるという問題がある。又、このときにレーザを手動でオフするのは作業が煩雑であり、作業効率の低下を招く。
一方、試料とX線源との距離を自動焦点装置で調整する場合、焦点深度との関係で調整範囲が狭い(10mmレベル)という問題がある。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、作業効率に優れ、かつ安全に試料測定を行うことができる蛍光X線分析装置及び蛍光X線分析方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の蛍光X線分析装置は、試料上の照射ポイントに放射線を照射する放射線源と、前記試料から放出される特性X線及び散乱X線を検出し、該特性X線及び散乱X線のエネルギー情報を含む信号を出力するX線検出器と、前記信号を分析する分析器と、前記試料を載置する試料ステージと、該試料ステージ上の前記試料と前記放射線源及び前記X線検出器とを相対的に移動可能な移動機構と、少なくとも前記放射線源、前記試料ステージ、及び前記移動機構を収容する筐体と、前記筐体の内外に前記試料を出入りさせるための開口を開閉する扉と、前記試料における前記照射ポイントの高さを測定可能な高さ測定機構と、測定した前記照射ポイントの高さに基づいて前記移動機構を作動して、前記試料と、前記放射線源及び前記X線検出器との距離を調整する移動機構制御部と、前記照射ポイントに可視光レーザを照射するレーザ部と、前記扉の開閉状態を検知する扉開閉検知部と、前記扉開閉検知部によって前記扉が開状態と検知された時、前記レーザ部を作動させて前記可視光レーザを照射させると共に、前記扉開閉検知部によって前記扉が閉状態と検知された時、前記レーザ部を停止させるレーザ部作動制御部と、前記扉開閉検知部によって前記扉が開状態と検知された時、前記高さ測定機構を作動させて前記照射ポイントの高さを測定させる高さ測定機構作動制御部と、を備えていることを特徴とする。
このように、扉を開けて筐体内の試料ステージに試料を載置した際、可視光レーザを照射するので、照射ポイントがレーザスポットとして肉眼で確認でき、試料の位置決めが容易になる。そして、試料の位置決め後に可視光レーザの照射を停止するので、位置決め後に試料を観察した際に、可視光レーザの輝点が作業者の目に入ることがなく、観察を妨害したり作業者の眼を疲れさせることが無くなる。
【0007】
前記レーザ部が前記高さ測定機構を兼用していてもよい。
このように、照射されたレーザ光を利用して照射ポイントの高さを測定するようにすれば、位置決めのためのレーザスポットの照射と同時に高さ情報を取得することができ、試料とX線源との距離を手動で調整する必要がなく、作業効率が向上する。又、レーザスポットの照射と高さ情報の測定を1つのレーザ部で行えばよいので、装置がコンパクトかつ簡易となると共に、試料とX線源との距離の調整範囲が広くなる。
【0008】
前記レーザ部作動制御部は、前記扉開閉検知部によって前記扉が閉状態と検知された時であって、かつ前記移動機構の作動を検知した時、前記レーザ部を作動させて前記可視光レーザにより前記照射ポイントの高さを測定させると共に、前記移動機構の作動の停止を検知した時、前記レーザ部を停止させてもよい。
この構成によれば、試料がX、Y、Zの少なくともいずれかの方向に移動したとき、試料と放射線源及びX線検出器との距離を再調整するので、例えば凹凸のある試料のように、試料が移動して照射ポイントをわずかに変えただけで上記距離や焦点が変動する場合にも自動で距離や焦点が調整され、精度良くX線分析を行うことができる。
【0009】
前記レーザ部は、前記可視光レーザを照射する第1レーザ部と、前記可視光以外の非可視光レーザを照射する第2レーザ部とを備え、前記第2レーザ部が前記高さ測定機構を兼用すると共に、前記レーザ部作動制御部は、前記扉開閉検知部によって前記扉が開状態と検知された時、前記第1レーザ部を作動させて前記可視光レーザを照射させると共に、前記扉開閉検知部によって前記扉が閉状態と検知された時、前記第1レーザ部を停止させてもよい。
この構成によれば、扉を開けた際、可視光レーザを照射するので、照射ポイントがレーザスポットとして肉眼で確認でき、試料の位置決めが容易になる。一方、位置決め後に扉を閉めて試料を観察している際には、作業者が視認できない非可視光レーザで高さの測定を行うので、観察を妨害したり作業者の眼を疲れさせずに高さ測定を行える。
【0010】
前記移動機構制御部は、前記照射ポイントの高さが所定の閾値以下となった時に前記移動機構を停止させてもよい。
この構成によれば、照射ポイント(つまり試料の表面)が蛍光X線分析装置の各種構成(放射線源、X線検出器等)に近接すると試料の移動をストップするので、試料が蛍光X線分析装置の各種構成に接触、衝突する不具合が防止される。
【0011】
前記放射線源から放射される前記放射線の光軸と、前記レーザ部の光軸とが同軸であり、前記放射線と前記レーザ部から出射される可視光レーザが前記試料に照射されるとよい。
この構成によれば、放射線の照射位置が標準位置から照射ポイントの高さへ変化してもレーザ部の光軸は変化せず、位置決めのためのレーザスポットを照射ポイントに精度良く照射することができる。
【0012】
本発明の蛍光X線分析装置において、前記試料を観察する観察系と、前記観察系の焦点切替をする焦点切替駆動機構と、前記高さ測定機構により測定した前記照射ポイントの高さに基づいて前記焦点切替駆動機構を作動させ、前記観察系の焦点位置を調整する観察系焦点制御部と、をさらに備えるとよい。
この構成によれば、試料の移動等による観察系の焦点位置の変動を照射ポイントの高さに基づいて自動的に調整するので、作業者が観察系の焦点調整を手動で行う必要がなく、作業効率が向上する。
【0013】
前記放射線源から放射される前記放射線の光軸と、前記観察系の光軸と、前記レーザ部の光軸とが同軸であり、前記放射線と前記レーザ部から出射される可視光レーザが前記試料に照射されるとよい。
この構成によれば、放射線の照射位置が標準位置から照射ポイントの高さへ変化してもレーザ部の光軸は変化せず、位置決めのためのレーザスポットを照射ポイントに精度良く照射することができる。又、放射線の照射位置が標準位置から照射ポイントの高さへ変化しても観察系の光軸も変化しないので、試料の観察が容易となる。
【0014】
本発明の蛍光X線分析装置において、前記放射線の光軸上に前記レーザ部の光軸を同軸に置くためのミラーと、前記放射線の光軸と前記レーザ部の光軸と前記観察系の光軸とを同軸におくためのビームスプリッターと、を有していてもよい。
この構成によれば、蛍光X線分析装置がコンパクトかつ簡易となる。
【0015】
前記高さ測定機構は、前記試料ステージ上に前記試料を載置した状態で前記照射ポイントの高さを測定可能であってもよい。
この構成によれば、試料ステージ上に試料が載置された状態で、照射ポイントの高さを測定することができ、実際の放射線の照射位置とのずれが無くなる。
【0016】
本発明の蛍光X線検出方法は、試料を載置する試料ステージと、該試料ステージ上の前記試料と放射線源及びX線検出器とを相対的に移動可能な移動機構と、少なくとも前記放射線源、前記試料ステージ、及び前記移動機構を収容する筐体と、前記筐体の内外に前記試料を出入りさせるための開口を開閉する扉とを備えた蛍光X線分析装置に用いられ、前記放射線源により試料上の照射ポイントに放射線を照射し、前記X線検出器により前記試料から放出される特性X線及び散乱X線を検出して該特性X線及び散乱X線のエネルギー情報を含む信号を出力すると共に、前記信号を分析する蛍光X線検出方法であって、前記扉が開状態と検知された時、可視光レーザを照射させると共に、前記扉が閉状態と検知された時、前記レーザ可視光レーザの照射を停止させるレーザ部作動制御ステップと、前記扉が開状態と検知された時、前記照射ポイントの高さを測定する照射ポイント高さ測定ステップと、測定した前記照射ポイントの高さに基づいて前記移動機構を作動して、前記試料と、前記放射線源及び前記X線検出器との距離を調整する移動機構制御ステップと、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の蛍光X線検出方法において、測定した前記照射ポイントの高さに基づいて、前記試料を観察する観察系の焦点位置を調整する観察系焦点調整ステップをさらに有してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蛍光X線分析において、作業効率に優れ、かつ安全に試料測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る蛍光X線分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】放射線源、観察系、及びレーザ部の配置を示す斜視図である。
【図3】試料と、放射線源及びX線検出器とを相対的に移動させる態様を示す図である。
【図4】観察系の焦点位置を調整する態様を示す図である。
【図5】制御コンピュータで行う位置合せ及び距離測定フローを示す図である。
【図6】レーザ部の作動及び停止を司る制御回路基板の論理構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る蛍光X線分析装置の構成を示すブロック図である。
【図8】第2の実施形態において、制御コンピュータで行う位置合せ及び距離測定フローを示す図である。
【図9】第2の実施形態において、第1及び第2レーザ部の作動及び停止を司る制御回路基板の論理構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各構成部分を認識可能な大きさとするため、必要に応じて縮尺を適宜変更している。
図1は本発明の第1の実施形態に係る蛍光X線分析装置100の構成を示すブロック図である。蛍光X線分析装置100は、例えばエネルギー分散型の蛍光X線分析装置であって、試料Sを載置する試料ステージ1と、X線管球(放射線源)2と、X線検出器3と、分析器4と、観察系5と、焦点切替駆動機構6と、レーザ部7と、測定ヘッド部移動機構8と、制御コンピュータ(特許請求の範囲の「移動機構制御部」、「レーザ部作動制御部」、「高さ測定機構作動制御部」、「観察系焦点制御部」に相当)9とを備えている。
又、蛍光X線分析装置100の各構成部分(制御コンピュータ9を除く)は装置外部へのX線の漏洩を防ぐ構造になっている。そして、筐体10には開口10aが設けられ、この開口10aから筐体10の内外に試料Sを出入させるようになっている。開口10aには扉20が配置されて開口10aを開閉すると共に、扉開閉センサ等からなる扉開閉検知部21が扉20の開閉状態を検知する。扉開閉検知部21は制御コンピュータ9に接続されており、扉開閉検知部21の検知情報が制御コンピュータ9に送られるようになっている。扉開閉センサとしては、フォトマイクロセンサを用いることができる。又、本発明においては、蛍光X線分析装置100の内部を減圧できる構成としてもよいし、圧力を調整しなくてもよい。
【0021】
X線管球2は試料ステージ1より上方に位置し、試料S上の任意の照射ポイントP1に1次X線(放射線)X1を照射する。X線管球2は例えば、管球内のフィラメント(陽極)から発生した熱電子がフィラメント(陽極)とターゲット(陰極)との間に印加された電圧により加速され、ターゲット(W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)など)に衝突して発生したX線を1次X線X1としてベリリウム箔などの窓から出射するものである。
X線検出器3は試料ステージ1より上方に位置しつつX線管球2と離間している。X線検出器3は、試料Sから放出される特性X線及び散乱X線を検出し、この特性X線及び散乱X線のエネルギー情報を含む信号を出力する。X線検出器3は例えば、X線の入射窓に設置されている半導体検出素子(例えば、pin構造ダイオードであるSi(シリコン)素子)(図示略)を備え、X線光子1個が入射すると、このX線光子1個に対応する電流パルスを発生させるものである。この電流パルスの瞬間的な電流値が、入射した特性X線のエネルギーに比例する。また、X線検出器3は、半導体検出素子で発生した電流パルスを電圧パルスに変換及び増幅し、信号として出力するように設定されている。
分析器4は、X線検出器3に接続されて上記信号を分析する。分析器4は例えば、上記信号から電圧パルスの波高を得てエネルギースペクトルを生成する波高分析器(マルチチャンネルアナライザー)である。
【0022】
観察系5は光学顕微鏡等を有しており、電球等の照明手段(図示せず)で照明された試料Sの画像を、画像データとして表示可能な光学系である。観察系5は試料ステージ1より上方に位置しつつX線管球2と離間している。観察系5は、例えば、ミラー5aと、ビームスプリッター5bと、ビームスプリッター5bを介して試料Sの拡大画像等を視認及び撮像可能な光学顕微鏡及び観察用カメラ等とで構成されている。そして、試料Sの画像は、1次X線X1の光軸を通ってビームスプリッター5bで横方向に反射され、さらにミラー5aで上方に反射されて光学顕微鏡及び観察用カメラに下から入射する。
焦点切替駆動機構6は、観察系5をその光軸方向に沿って移動させ、焦点位置を切り替えることが可能となっている。焦点切替駆動機構6による観察系5の移動は、これらに接続又は内蔵されたボールねじ又はベルト等のアクチュエータを使用し、ステッピングモータ等の駆動により行うことができる。
【0023】
レーザ部7は試料ステージ1より上方に位置しつつ、X線管球2より下方でX線管球2と離間して配置されている。レーザ部7は可視光レーザを横方向に照射可能であり、試料S上の任意の照射ポイントP1における試料高さTを測定可能になっている。図2に示すように、レーザ部7としては、例えば半導体レーザ素子等からなる発光部7aと、CCD、光位置検出素子(PSD)又はリニアイメージセンサ等からなる受光部7bと、投光レンズ及び受光レンズ(図示せず)とを備え、三角測量を応用した反射型センサ(三角測距方式のレーザ変位センサ)を用いることができる。レーザ変位センサは一般に市販されている。なお、「可視光」とは、JIS−Z8120に規定する短波長側が360〜400 nm、長波長側が760〜830 nmの波長の光である。
ここで、図2に示すように、観察系5の光軸はミラー5a及びビームスプリッター5bで反射され、1次X線X1の光軸と同軸になるように設定されている。同様に、1次レーザ光L1の光軸はミラー5cで下方に反射され、1次X線X1の光軸と同軸になるように設定されている。つまり、1次レーザ光L1の光軸及び観察系5の光軸が、1次X線X1の光軸とが同軸になるよう、ビームスプリッター5b及びミラー5cが1次レーザ光L1の光軸上に配置されている。但し、ビームスプリッター5b及びミラー5cは可動式であって、X線による分析時に1次X線X1の進路(光軸)上から退避可能になっている。
【0024】
このようにして、1次レーザ光L1は照射ポイントP1に照射される。そして、照射ポイントP1に1次レーザ光L1を照射すると2次レーザ光L2が発生し、この2次レーザ光L2は受光部7bに回帰する。従って、この2次レーザ光L2の感知状態を検出することで、距離(試料ステージ1からの試料Sの高さT)情報を取得することができ、この出力が制御コンピュータ9へ送られる。なお、試料Sから回帰した2次レーザ光L2のレーザ強度を減衰させないよう、2次レーザ光L2の光軸は1次X線X1の光軸からずれ、ビームスプリッター5bを介さずに受光部7bに入光するようになっている。
【0025】
なお、本実施形態では、試料ステージ1は、試料Sを載置した状態で上下左右の水平移動が可能なXYステージになっている。一方、試料Sの高さ方向(Z方向)の相対移動は測定ヘッド部移動機構8によって行われる。つまり、X線管球2、X線検出器3、分析器4、観察系5、焦点切替駆動機構6、及びレーザ部7は測定ヘッド部11に一体に搭載され、測定ヘッド部移動機構8は測定ヘッド部11によって1次X線X1の進路方向(高さ方向(Z方向))に沿って移動可能になっている。このため、測定ヘッド部11が試料ステージ1に対してZ方向に進退することで、試料Sと、X線管球2及びX線検出器3との距離が調整される。試料ステージ1の移動、及び測定ヘッド部移動機構8による測定ヘッド部11の移動は、これらに接続又は内蔵されたボールねじ又はベルト等のアクチュエータを使用し、ステッピングモータ等の駆動により行うことができる。
試料ステージ1及び測定ヘッド部移動機構8が特許請求の範囲の「移動機構」に相当する。
【0026】
制御コンピュータ9は、分析器4から送られるエネルギースペクトルから特定の元素に対応したX線強度を判別する制御部本体9aと、これに基づいて分析結果を表示するディスプレイ部9bと、照射ポイントP1の位置入力等の各種命令や分析条件等を入力可能な操作部9cと、を備えている。また、制御部本体9aは焦点切替駆動機構6、測定ヘッド部移動機構8等と通信制御する機能も備えている。制御部本体9aは、公知のCPU、ROM、RAM、ハードディスク等の記録媒体、及びレーザ部7の作動及び停止を行う制御回路基板9d等を備える。
【0027】
また制御コンピュータ9は、図3に示すようにして、試料Sと、X線管球2及びX線検出器3との距離を調整する。まず、制御コンピュータ9は、レーザ部7から高さT情報を取得する。そして、高さTが1次X線X1の標準照射位置P2の高さより低いとき、制御コンピュータ9は、TとP2の差分Dの距離をキャンセルするように測定ヘッド部移動機構8を作動させる。これにより、照射ポイントP1をP2と一致させる。
ここで、標準照射位置P2は、X線管球2からの1次X線X1の照射軸と、X線検出器3の(最良感度の)向きとが交差する位置である。そして、標準照射位置P2(の高さ)は予め制御コンピュータ9に記憶されている。
【0028】
さらに制御コンピュータ9は、図4に示すようにして、レーザ部7から取得した高さTに基づいて観察系5の焦点位置も同時に調整する。つまり、上記した差分Dの距離をキャンセルするように焦点切替機構6を作動させて観察系5の焦点位置を調整する。これにより、作業者は、試料Sを観察するために観察系5の焦点位置を手動で調整する必要がない。制御コンピュータ9による焦点切替機構6の作動制御は、例えば観察系5の画像のコントラストが最も大きくなる位置を焦点位置とみなすことで行うことができる。
なお、制御コンピュータ9は、標準照射位置P2を焦点切替駆動機構6の原点位置(図示略)としても予め記憶しており、原点位置からの焦点切替駆動機構6の変位量に基づいて高さTを求めることもでき、観察系5は、距離測定手段としても機能することができる。焦点切替駆動機構6の変位量は、例えば駆動用のステッピングモータ等の入力パルス数、又はエンコーダからの出力パルス数を演算することにより求めることができる。そして、制御コンピュータ9は、距離測定手段である観察系5で求めた高さTから算出した差分Dに応じ、制御コンピュータ9で定量計算に使用するX線照射距離等のパラメータを補正するように設定されている。
【0029】
なお、制御コンピュータ9による焦点切替駆動機構6と測定ヘッド部移動機構8の制御は、同時又は独立して制御可能としている。
【0030】
次に、蛍光X線分析装置100を用いたX線分析について、図5を参照して説明する。図5は、制御コンピュータ9で行う制御フロー(位置合せ及び距離測定フロー)を示す。
まず、制御コンピュータ9は扉開閉検知部21から検知情報を取得し、扉20が開状態か否かを判定する(ステップS1)。扉20が開状態であれば、作業者が新たな試料Sを試料ステージ1に載置していることとなる。従って、ステップS1で「Yes」であれば、制御コンピュータ9はレーザ部7を作動させ、照射ポイントP1に可視光レーザを照射させる(ステップS3)。レーザ部7は照射ポイントP1から発生した2次レーザ光L2を受光し、距離(試料ステージ1からの試料Sの高さT)情報を取得して制御コンピュータ9へ送信する。
制御コンピュータ9は、取得した照射ポイントP1の高さT情報に基づき差分Dを算出し、差分Dをキャンセルするように測定ヘッド部移動機構8を作動させる(ステップS5)。これにより、照射ポイントP1がP2に一致し、試料Sと放射線源2との距離が調整される。同時に、制御コンピュータ9は、差分Dをキャンセルするように焦点切替機構6を作動させて観察系5の焦点を調整する(ステップS5)。ステップS5が終了した後、ステップS1に戻る。
【0031】
次に、扉20が閉じられた状態は、試料Sの試料ステージ1への載置が終了し、作業者が観察系5により試料Sの表面を観察してX線分析するポイントの確認をしていることになる。この際に可視光レーザが照射されると、輝点となって観察を妨害したり作業者の眼を疲れさせる。従って、ステップS1で「No」であれば、制御コンピュータ9はレーザ部7を停止させ、可視光レーザの照射をオフする(ステップS7)。
【0032】
次に、制御コンピュータ9は試料SがX、Y、Zの少なくともいずれかの方向に移動したか否かを判定する(ステップS9)。試料SがX、Y、Zの少なくともいずれかの方向に移動した場合、作業者が観察系5により試料Sの表面を観察しながら、X線分析するポイントを動かしたこととなる。つまり、上記ステップS3、S5で調整した距離や焦点を再度調整し直すことが必要となる。従って、ステップS9で「Yes」であれば、ステップS3に戻り、制御コンピュータ9は距離や焦点を再調整する。なお、試料Sの移動の有無は、試料ステージ1や測定ヘッド部移動機構8を作動させるステッピングモータ等のアクチュエータの駆動によって判定することができる。
又、扉20が閉じられた後で試料Sが移動した場合には、可視光レーザの輝点を見ながら試料Sの表面を観察することとなるが、扉20を開けて最初に試料Sを試料ステージ1へ載置する場合に比べると、試料Sの移動量は少ないので、可視光レーザの輝点を見る時間も少なく、作業者への影響は低い。
【0033】
一方、ステップS9で「No」であれば、X線分析する新たなポイントが決まったことになるから、作業者が操作部9cから「位置合せ終了」を指示したことを条件にして(ステップS11で「Yes」)、処理を終了する。又、ステップS11で「No」であれば、位置合せが終了しないこととなり、ステップS1に戻る。
【0034】
以上のようにして、位置合せ及び距離測定フローが終了し、さらにX線分析を行うことができる。X線分析自体は公知であり、まず、X線管球2から1次X線X1を試料Sに照射することにより、発生した特性X線及び散乱X線をX線検出器3で検出する。X線を検出したX線検出器3は、その信号を分析器4に送り、分析器4はその信号からエネルギースペクトルを取り出し、制御コンピュータ9へ出力する。制御部本体9aは、分析器4から送られたエネルギースペクトルから特定元素に対応するX線強度を判別し、これらの分析結果をディスプレイ部9bに表示する。
【0035】
図6は、レーザ部7の作動及び停止を司る制御回路基板9dの論理構成を示すブロック図である。制御回路基板9dはそれぞれOR回路からなる3つのトランジスタ91〜93を備え、トランジスタ91及び92の出力がトランジスタ93に入力されるようになっている。トランジスタ91には、扉20の開状態を「1」とする入力と、試料SのX方向の移動(動作)が生じた状態を「1」とする入力が入る。又、トランジスタ92には、試料SのY,Z方向の移動(動作)が生じた状態をそれぞれ「1」とする入力が入る。
従って、扉20の開状態、及び試料SがX、Y、Zの少なくともいずれかの方向に移動した場合にトランジスタ93がレーザ部7の作動(「1」)を出力する。制御回路基板9dはそれぞれOR回路からなる3つのトランジスタ91〜93を備え、トランジスタ91及び92の出力がトランジスタ93に入力されるようになっている。トランジスタ91には、扉20の開状態を「1」とする入力と、試料SのX方向の移動(動作)が生じた状態を「1」とする入力が入る。又、トランジスタ92には、試料SのY,Z方向の移動(動作)が生じた状態をそれぞれ「1」とする入力が入る。
従って、扉20の開状態、及び試料SがX、Y、Zの少なくともいずれかの方向に移動した場合にトランジスタ93がレーザ部7の作動(「1」)を出力する。
なお、レーザ部7の作動及び停止は、上記した制御回路基板9dで実現してもよく、ソフトウェアで条件判定してもよい。
【0036】
以上のように、本実施形態の蛍光X線分析装置によれば、扉20を開けて筐体10内の試料ステージ1に試料Sを載置した際、可視光である1次レーザ光L1を照射するので、照射ポイントP1がレーザスポットとして肉眼で確認でき、試料Sの位置決めが容易になる。そして、試料Sの位置決め後に1次レーザ光L1の照射を停止するので、位置決め後に試料を観察した際に、可視光レーザの輝点が作業者の目に入ることがなく、観察を妨害したり作業者の眼を疲れさせることが無くなる。
さらに、照射された1次レーザ光L1を利用して照射ポイントP1の高さTを測定するようにすれば、位置決めのためのレーザスポットの照射と同時に高さT情報を取得することができ、試料とX線源との距離を手動で調整する必要がなく、作業効率が向上する。又、レーザスポットの照射と高さT情報の測定を1つのレーザ部7で行えばよいので、装置がコンパクトかつ簡易となると共に、試料とX線源との距離の調整範囲が広くなる(100mmレベル)。
さらに加えて、取得した高さT情報に基づいて観察系5の焦点位置の調整を同時に行うようにすれば、作業者の手動による観察系5の焦点調整が不要となる。
また、レーザ部7によって高さTを測定するようにすれば、非接触で試料Sの高さTを正確に測定することが可能になると共に、試料ステージ1上に試料Sを載置した状態(X線分析する状態)で試料Sの高さTを測定するので、分析時の試料SとX線管球2及びX線検出器3との距離をより正確に得ることができる。
【0037】
さらに、試料SがX、Y、Zの少なくともいずれかの方向に移動したとき、試料SとX線管球2及びX線検出器3との距離や観察系5の焦点を再調整するようにすれば、例えば凹凸のある試料のように、試料が移動して照射ポイントをわずかに変えただけで上記距離や焦点が変動する場合にも自動で距離や焦点が調整され、精度良くX線分析を行うことができる。
【0038】
なお、制御コンピュータ(移動機構制御部)9は、照射ポイントP1の高さTが所定の閾値以下となった時に、移動機構1,8を停止させる制御を行うと好ましい。これにより、試料Sが観察系5やX線管球2等の構成部分に接触することが防止される。
【0039】
又、上記した実施形態では、差分Dをキャンセルするよう試料Sを相対移動し、標準照射位置P2で1次X線X1が試料Sに照射されるようにしているが、より簡便(迅速)にX線分析を行う場合には、差分Dの算出のみを行い、試料Sを相対移動しなくても良い。この場合、試料Sを相対移動せず、照射ポイントP1(の高さT)で1次X線X1を試料Sに照射する。制御コンピュータ9は、この時に分析器4で得られたエネルギースペクトルの波高値のデータから、差分Dに応じて定量分析の計算に用いるパラメータを補正し、補正値を用いて特定元素に対応するX線強度を計算する。もちろん、差分Dに基づいて観察系5の焦点位置の調整を行ってよいのはいうまでもない。
【0040】
ここで、1次X線X1の照射位置が標準照射位置P2から照射ポイントP1の高さへ変化すると、X線管球2と照射ポイントP1の距離、照射ポイントP1とX線検出器3の距離、X線検出器3の向き(検出方向)と照射ポイントP1のなす角度などが変化する。そして、これに伴い、試料S上に照射される1次X線X1のエネルギー密度や照射領域が変化する。具体的には、試料Sから放出される蛍光X線や散乱X線の強度等が変化したり、X線検出器3で検出される蛍光X線や散乱X線の強度が変化する。そこで、これらX線管球2と照射ポイントP1の距離、照射ポイントP1とX線検出器3の距離、X線検出器3の向きと照射ポイントP1のなす角度などのパラメータを補正する(以下、補正パラメータとも称す)ことで、定量分析を正確に行うことが可能になる。
【0041】
また、制御コンピュータ9は、個々の照射ポイントP1における高さTを記憶することが可能である。この場合、1次レーザ光L1を試料Sに照射しながら試料ステージ1を移動させることにより、試料Sの2次元方向の高さTのデータを取得し、試料の2次元方向の高さ変化(凹凸形状)を得ることができる。
【0042】
次に、本発明の第2の実施形態に係る蛍光X線分析装置102について、図7を参照して説明する。図7は蛍光X線分析装置102の構成を示すブロック図である。蛍光X線分析装置102は、第1の実施形態に係る蛍光X線分析装置100の各構成部分に加え、第2レーザ部7xを備えていること、及び制御コンピュータ9xで行う制御フロー(位置合せ及び距離測定フロー)が異なること以外は、蛍光X線分析装置100と同一であるので、同一構成部分を同一符号を付して説明を省略する。又、第2レーザ部7xと区別するため、レーザ部7を「第1レーザ部7」と称する。第1レーザ部7は可視光レーザを照射し、第2レーザ部7xは非可視光レーザを照射する。非可視光とは、可視光の波長範囲を除く波長光である。第2レーザ部7xは第1レーザ部7と同様な構成(レーザ変位センサ等)とすることができる。
【0043】
図7において、第2レーザ部7xは、レーザ部7より上方で、X線管球2より下方に配置されている。第2レーザ部7xは非可視光レーザを横方向に照射可能であり、非可視光レーザの光軸はミラー5dで下方に反射され、1次X線X1の光軸と同軸になるように設定されている。つまり、非可視光レーザの光軸が1次X線X1の光軸とが同軸になるよう、ミラー5dが1次レーザ光L1の光軸上に配置されている。但し、ミラー5dは可動式であって、X線による分析時に1次X線X1の進路(光軸)上から退避可能になっている。
第2の実施形態において第1レーザ部7は、扉20を開けて試料ステージ1に試料Sを載置した際、第1の実施形態と同様に可視光レーザ光を照射するので、照射ポイントP1がレーザスポットとして肉眼で確認できる。一方、第2レーザ部7xは、扉20を閉めた後に試料SがX、Y、Zの少なくともいずれかの方向に移動したとき、試料SとX線管球2及びX線検出器3との距離や観察系5の焦点を再調整するのに用いられる。つまり、作業者が試料を観察している際に、非可視光レーザで上記距離を測定するので、可視光レーザの輝点が作業者の目に入ることがなく、上記距離や焦点を再調整することができる。
なお、第2レーザ部7xによる距離(高さT)の測定方法は、レーザ部7と同様であり、既に述べたとおりである。
【0044】
図8は、第2の実施形態において、制御コンピュータ9xで行う制御フロー(位置合せ及び距離測定フロー)を示す。
まず、制御コンピュータ9xは扉開閉検知部21から検知情報を取得し、扉20が開状態か否かを判定する(ステップS101)。ステップS101で「Yes」であれば、制御コンピュータ9xは第1レーザ部7を作動させ、照射ポイントP1に可視光レーザを照射させる(ステップS103)。第1レーザ部7は照射ポイントP1から発生した2次レーザ光L2を受光し、距離(試料ステージ1からの試料Sの高さT)情報を取得して制御コンピュータ9xへ送信する。
制御コンピュータ9xは、取得した照射ポイントP1の高さT情報に基づき差分Dを算出し、差分Dをキャンセルするように測定ヘッド部移動機構8を作動させる(ステップS105)。これにより、照射ポイントP1がP2に一致し、試料Sと放射線源2との距離が調整される。同時に、制御コンピュータ9xは、差分Dをキャンセルするように焦点切替機構6を作動させて観察系5の焦点を調整する(ステップS105)。ステップS105が終了した後、ステップS101に戻る。
次に、ステップS101で「No」であれば、制御コンピュータ9xは第1レーザ部7を停止させ、可視光レーザの照射をオフする(ステップS107)。
なお、ステップS101〜S107は、第1の実施形態のステップS1〜S7と同一のフローである。
【0045】
次に、制御コンピュータ9xは試料SがX、Y、Zの少なくともいずれかの方向に移動したか否かを判定する(ステップS109)。ここで、ステップS109で「Yes」であれば、制御コンピュータ9xは第2レーザ部7xを作動させ、試料Sが移動後の新たな照射ポイントP1に非可視光レーザを照射させる(ステップS111)。第2レーザ部7xは照射ポイントP1から発生した非可視光からなる2次レーザ光L2を受光し、距離(試料ステージ1からの試料Sの高さT)情報を取得して制御コンピュータ9xへ送信する。
制御コンピュータ9xは、取得した照射ポイントP1の高さT情報に基づき差分Dを算出し、差分Dをキャンセルするように測定ヘッド部移動機構8を作動させる(ステップS113)。これにより、照射ポイントP1がP2に一致し、試料Sと放射線源2との距離が調整される。同時に、制御コンピュータ9xは、差分Dをキャンセルするように焦点切替機構6を作動させて観察系5の焦点を調整する(ステップS113)。ステップS113が終了した後、ステップS101に戻る。
【0046】
以上のように、ステップS109で「Yes」であれば、第1レーザ部7の代わりに第2レーザ部7xを作動させることで、作業者が観察系5により試料Sの表面を観察しながらX線分析するポイントを変更しても、可視光レーザの輝点が生じず、作業者への影響が抑制される。又、試料SとX線管球2及びX線検出器3との距離や観察系5の焦点の再調整は、非可視光レーザによって行われるので、これらの再調整を作業者が手動で行う必要がないのは、第1の実施形態と同様である。
【0047】
一方、ステップS109で「No」であれば、X線分析する新たなポイントが決まったことになるから、作業者が操作部9cから「位置合せ終了」を指示したことを条件にして(ステップS115で「Yes」)、制御コンピュータ9xは第2レーザ部7xを停止させ(ステップS117)、処理を終了する。又、ステップS115で「No」であれば、位置合せが終了しないこととなり、ステップS101に戻る。
【0048】
図9は、第2の実施形態において、第1レーザ部7、第2レーザ部7xの作動及び停止を司る制御回路基板9dの論理構成を示すブロック図である。制御回路基板9dはそれぞれOR回路からなる2つのトランジスタ95、96、AND回路からなるトランジスタ97、及びダイオード98を備えている。トランジスタ95の出力と、試料SのX方向の移動(動作)が生じた状態を「1」とする入力がトランジスタ96に入力されるようになっている。又、トランジスタ96及びダイオード98の出力がトランジスタ97に入力されるようになっている。なお、ダイオード98は信号論理の反転を行う素子である。
扉20の開状態を「1」とする入力は、第1レーザ部7のオンオフ信号を稼動する条件として直接用いられると共に、ダイオード98に入力される。トランジスタ95には、試料SのY,Z方向の移動(動作)が生じた状態をそれぞれ「1」とする入力が入る。
従って、扉20が開状態の場合に第1レーザ部7が作動(「1」)する。一方、試料SがX、Y、Zの少なくともいずれかの方向に移動し、かつ扉20が閉じられている場合に、トランジスタ97が第2レーザ部7xの作動(「1」)を出力する。
なお、第1レーザ部7、第2レーザ部7xの作動及び停止は、上記した制御回路基板9dで実現してもよく、ソフトウェアで条件判定してもよい。
【0049】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態では、試料Sの高さ測定機構として機能するレーザ部に三角測距方式レーザ変位センサを用いているが、直線回帰型のレーザ変位センサを採用しても構わない。直線回帰型のレーザ変位センサの場合、2次レーザ光が1次レーザ光と同軸上で回帰するため、ミラー面積を少なくできると共に調整機構を簡略化することができる。
また、上記実施形態では、ビームスプリッター5bとミラー5cを可動式とし、分析時には1次X線X1の進路上から退避可能とすることで1次X線の強度を減衰せずに試料に照射可能としているが、1次X線照射中にリアルタイムに試料の状態を観察したい場合には、ビームスプリッター5bとミラー5cの位置を固定すればよい。この場合、一次X線が可能な限り減衰しないよう、ビームスプリッター5bとミラー5cの厚さを設定し、これらの部材を通して1次X線を透過させる。これにより、1次X線照射中にリアルタイムに試料の状態を観察することができる。
【0051】
なお、高さ測定機構として、レーザ部を兼用することが好ましいが、超音波センサを採用しても構わない。
【0052】
また、上記実施形態では、筐体内を減圧雰囲気にして分析を行っているが、真空(減圧)雰囲気でない状態で分析を行っても構わない。
【0053】
また、上記実施形態では、蛍光X線分析装置はエネルギー分散型の蛍光X線分析装置であるが、例えば波長分散型の蛍光X線分析装置や、照射する放射線として電子線を使用し二次電子像も得ることができるSEM−EDS(走査型電子顕微鏡・エネルギー分散型X線分析)装置であっても構わない。
また、上記実施形態では、X線検出器に半導体検出器を用いているが、比例計数管を用い、本発明を蛍光X線膜厚計に適用しても構わない。
【符号の説明】
【0054】
1・・・試料ステージ
2・・・X線管球(放射線源)
3・・・X線検出器
4・・・分析器
5・・・観察系
6・・・焦点切替駆動機構
7・・・レーザ変位センサ(レーザ部)
7x・・第2レーザ部
8・・・移動機構
9・・・制御コンピュータ(移動機構制御部、レーザ部作動制御部、高さ測定機構作動制御部、観察系焦点制御部)
10・・・筐体
10a・・・開口
100,102・・・蛍光X線分析装置
P1・・・照射ポイント
S・・・試料
T・・・試料の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料上の照射ポイントに放射線を照射する放射線源と、
前記試料から放出される特性X線及び散乱X線を検出し、該特性X線及び散乱X線のエネルギー情報を含む信号を出力するX線検出器と、
前記信号を分析する分析器と、
前記試料を載置する試料ステージと、
該試料ステージ上の前記試料と前記放射線源及び前記X線検出器とを相対的に移動可能な移動機構と、
少なくとも前記放射線源、前記試料ステージ、及び前記移動機構を収容する筐体と、
前記筐体の内外に前記試料を出入りさせるための開口を開閉する扉と、
前記試料における前記照射ポイントの高さを測定可能な高さ測定機構と、
測定した前記照射ポイントの高さに基づいて前記移動機構を作動して、前記試料と、前記放射線源及び前記X線検出器との距離を調整する移動機構制御部と、
前記照射ポイントに可視光レーザを照射するレーザ部と、
前記扉の開閉状態を検知する扉開閉検知部と、
前記扉開閉検知部によって前記扉が開状態と検知された時、前記レーザ部を作動させて前記可視光レーザを照射させると共に、前記扉開閉検知部によって前記扉が閉状態と検知された時、前記レーザ部を停止させるレーザ部作動制御部と、
前記扉開閉検知部によって前記扉が開状態と検知された時、前記高さ測定機構を作動させて前記照射ポイントの高さを測定させる高さ測定機構作動制御部と、
を備えていることを特徴とする蛍光X線分析装置。
【請求項2】
前記レーザ部が前記高さ測定機構を兼用していることを特徴とする請求項1に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項3】
前記レーザ部作動制御部は、前記扉開閉検知部によって前記扉が閉状態と検知された時であって、かつ前記移動機構の作動を検知した時、前記レーザ部を作動させて前記可視光レーザにより前記照射ポイントの高さを測定させると共に、前記移動機構の作動の停止を検知した時、前記レーザ部を停止させる請求項2に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項4】
前記レーザ部は、前記可視光レーザを照射する第1レーザ部と、前記可視光以外の非可視光レーザを照射する第2レーザ部とを備え、
前記第2レーザ部が前記高さ測定機構を兼用すると共に、
前記レーザ部作動制御部は、前記扉開閉検知部によって前記扉が開状態と検知された時、前記第1レーザ部を作動させて前記可視光レーザを照射させると共に、前記扉開閉検知部によって前記扉が閉状態と検知された時、前記第1レーザ部を停止させる請求項2又は3に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項5】
前記移動機構制御部は、前記照射ポイントの高さが所定の閾値以下となった時に前記移動機構を停止させる請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光X線分析装置。
【請求項6】
前記放射線源から放射される前記放射線の光軸と、前記レーザ部の光軸とが同軸であり、前記放射線と前記レーザ部から出射される可視光レーザが前記試料に照射されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の蛍光X線分析装置。
【請求項7】
前記試料を観察する観察系と、
前記観察系の焦点切替をする焦点切替駆動機構と、
前記高さ測定機構により測定した前記照射ポイントの高さに基づいて前記焦点切替駆動機構を作動させ、前記観察系の焦点位置を調整する観察系焦点制御部と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の蛍光X線分析装置。
【請求項8】
前記放射線源から放射される前記放射線の光軸と、前記観察系の光軸と、前記レーザ部の光軸とが同軸であり、前記放射線と前記レーザ部から出射される可視光レーザが前記試料に照射されることを特徴とする請求項7に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項9】
前記放射線の光軸上に前記レーザ部の光軸を同軸に置くためのミラーと、
前記放射線の光軸と前記レーザ部の光軸と前記観察系の光軸とを同軸におくためのビームスプリッターと、
を有することを特徴とする請求項8に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項10】
前記高さ測定機構は、前記試料ステージ上に前記試料を載置した状態で前記照射ポイントの高さを測定可能であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の蛍光X線分析装置。
【請求項11】
試料を載置する試料ステージと、該試料ステージ上の前記試料と放射線源及びX線検出器とを相対的に移動可能な移動機構と、少なくとも前記放射線源、前記試料ステージ、及び前記移動機構を収容する筐体と、前記筐体の内外に前記試料を出入りさせるための開口を開閉する扉とを備えた蛍光X線分析装置に用いられ、
前記放射線源により試料上の照射ポイントに放射線を照射し、前記X線検出器により前記試料から放出される特性X線及び散乱X線を検出して該特性X線及び散乱X線のエネルギー情報を含む信号を出力すると共に、前記信号を分析する蛍光X線検出方法であって、
前記扉が開状態と検知された時、可視光レーザを照射させると共に、前記扉が閉状態と検知された時、前記レーザ可視光レーザの照射を停止させるレーザ部作動制御ステップと、
前記扉が開状態と検知された時、前記照射ポイントの高さを測定する照射ポイント高さ測定ステップと、
測定した前記照射ポイントの高さに基づいて前記移動機構を作動して、前記試料と、前記放射線源及び前記X線検出器との距離を調整する移動機構制御ステップと、
を有することを特徴とする蛍光X線検出方法。
【請求項12】
測定した前記照射ポイントの高さに基づいて、前記試料を観察する観察系の焦点位置を調整する観察系焦点調整ステップをさらに有することを特徴とする請求項11に記載の蛍光X線分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−52817(P2012−52817A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193167(P2010−193167)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】