説明

蛍光X線分析装置

【課題】微小試料の測定室への落下による装置の不具合と故障を、未然に防止することができる蛍光X線分析装置を提供する。
【解決手段】測定部に備えられた撮像装置7によって、試料3下部の透明な落下防止板11を通して試料3の被測定部位を、例えば0.5秒に一回撮影する。この画像を画像記憶装置16によって記憶し、画像比較装置15直近の2つの画像を比較する画像に差がある場合は、表示装置17に警報を表示するとともに、制御装置14を介して落下防止板11の動作を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれる元素の濃度を測定する蛍光X線分析装置に関し、特にエネルギー分散型蛍光X線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蛍光X線分析装置の一般的な構成を図2に示す。
【0003】
エネルギー分散型蛍光X線分析装置は、底部に試料台102を備えた試料室101と、壁面にX線管105と検出器106を備えた測定室104によって構成されており、これらの空間は筺体118によって気密に囲繞され、必要に応じて内部を真空に保つことができる。試料台102には、円形の開口が形成されており、X線管105の出射する1次X線がこの開口上に搭載された試料103を照射する。この時に試料103の発する2次X線(蛍光X線)は、検出器106に入射し、蛍光X線の波長と強度が測定される。
【0004】
測定室104には、シャッター108と、1次X線フィルター109と、コリメータ110が図2の紙面に垂直方向にスライド可能な状態で取り付けられており、これらは、測定中の必要な時点で駆動機構112によってそれぞれ独立に、1次X線の光路に挿入される。また、試料台102の円形開口の下方には、試料103が誤って測定室104に落下することを防止するために、アクリル樹脂製の板等の透明な材料で作製された落下防止板111が設けられており、駆動機構113によって左右にスライドされる。
【0005】
測定室104の下部には、試料103の下面の被測定部位を、測定以前あるいは測定中に観察するための撮像装置107が設置されている。撮像装置107は、透明な落下防止板111を通して試料103を撮影する。撮像装置107としては、CMOSカメラやCCDカメラなどが利用される。得られた画像は、図2には示されていない液晶ディスプレイ等の画像表示装置で表示されるが、画質の向上の改良のために種々の工夫がなされている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−68955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の蛍光X線分析装置では、試料103が固い固形状のもので、サイズが試料台102の開口より大きい場合には問題はないが、比較的軟らかいものあるいは脆くて分裂しやすい試料の場合には、一部が開口より小さな破片となって落下防止板111の上に落下する場合がある。また、試料103が複数の構成部品から成る組立品であり、部品間の固定が不完全な場合には、一部の構成部品が開口より落下防止板111上に落下する場合がある。このままで測定を開始し、落下防止板111を移動させると、上記の小さな破片や部品が測定室104内に落下し、シャッター108、1次X線フィルター109およびコリメータ110あるいは駆動機構112、113を汚染したり、内部に巻き込まれて、これらの機構を破損または故障を引き起こす危険がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するために、開口を有し、その開口の上に試料を載置する試料台と、前記開口から落下する試料を捕止するための落下防止板と、前記試料の被測定部位に下方より前記開口を通してX線を照射するX線管と、前記試料の発する蛍光X線を検出する検出器と、前記試料の被測定部位を観察するためのカメラを備えた蛍光X線分析装置において、前記カメラの画像を記憶する画像記憶手段と、記憶された画像間の変化を検出する画像比較手段と、前記画像比較手段の出力によって前記落下防止板に落下試料が捕止されたことを検出する捕止検出手段と、この捕止検出手段の出力に基づいて前記落下防止板の動作を制御する制御手段と、前記落下防止板に落下試料が捕止されたことを報知する警報手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
測定開始前に落下防止板上に試料の落下があれば、落下防止板の移動と共に試料が移動するため、画像に変化が現れる。この変化を検知した画像比較装置が信号を出力して、落下防止板の移動を停止させるとともに、表示装置に画像と共に警報を表示する。
【発明の効果】
【0010】
小さな試料が落下防止板上に捕止されると、落下防止板の移動が停止され、警報が表示装置に現出する。これによって試料が測定室内に落下することが未然に防止され、測定室内の駆動系の故障が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る蛍光X線分析装置の概略構成図である。
【図2】従来の蛍光X線分析装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図1に従って説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明に係るエネルギー分散型蛍光X線分析装置は、底部に試料台2を備えた試料室1と、壁面にX線管5と検出器6を備えた測定室4によって構成されており、これらの空間は筺体18によって気密に囲繞され、必要に応じて内部を真空に保つことができる。試料台2には、円形の開口が形成されており、X線管5の出射する1次X線がこの開口上に搭載された試料3を照射する。この時に試料3の発する2次X線(蛍光X線)は、検出器6に入射し、蛍光X線の波長と強度が測定される。
【0014】
測定室には、シャッター8と、1次X線フィルター9と、コリメータ10が、駆動機構12によって、図2の紙面に垂直方向にスライド可能な状態で取り付けられている。シャッター8は鉛などのX線吸収物質で作られており、必要な時に1次X線の光路に挿入して1次X線を遮断することができる。
【0015】
1次X線フィルター9は、目的に応じて選択された金属膜によって作成されており、X線管5から発せられる1次X線のうちのバックグラウンド成分を吸収して、必要な特性X線の波長部分のみを透過させる、これによって、S/N比の高い測定が可能となる。実際の装置では、異なる種類の金属で作成された複数枚のフィルターが使用されており、目的に応じて選択されたものが駆動機構12によって1次X線の光路に挿入される。
【0016】
コリメータ10は、中央に円形の開口を有する鉛などのX線吸収材で作られたアパーチャーで、試料3を照射する1次X線のビームの大きさを決定する。実際の装置では、開口径の異なる複数枚のコリメータ10が、図2の紙面に垂直な方向に並設されており、目的に応じて選択されたものが駆動機構12によって1次X線ビームライン上に挿入される。
【0017】
試料台2の円形開口の下方には、開口を塞ぐ位置に落下防止板11が設けられている。落下防止板11は、アクリル樹脂製の板等の透明な材料で作成されており、試料3を試料台2上に設置する際に、誤って試料3が開口を通して測定部内に落下することを防止するためのものである。落下防止板11は、駆動機構13によって図1上の矢印の示す如く、左右に移動させることができる。一旦試料3が安定して試料台2上に設置された後は、測定を妨害することのないよう、落下防止板11は開口から離れた位置に移動させられる。
【0018】
測定室4の下部には、試料3の下面の被測定部位を、測定以前あるいは測定中に観察するために、撮像装置7が設置されている。撮像装置7は、透明な落下防止板11を通して試料3を撮影する。撮像装置7としては、CMOSカメラやCCDカメラなどが利用される。撮像装置7から画像信号は画像記憶装置16に送られ、画像記憶装置16は、あらかじめ指定された時点における画像を記憶する。
【0019】
撮像装置7からのリアルタイム画像は、表示装置17によって表示される。表示装置17は、液晶ディスプレイやCRTなどを利用した装置で、画像および文字情報を表示できる。
【0020】
画像比較装置15は、画像記憶装置16に記憶された画像と、撮像装置7から送られるリアルタイムの画像を比較し、その2個の画像の間に差異があることを検知した場合には、制御装置14に信号を送るとともに、表示装置17に警報信号を送り、表示装置17の画面上に警報サインを表示させる。
【0021】
制御装置14は、画像比較装置15からの信号を受けると直ちに、駆動機構13に信号を送って、落下防止板11の移動を停止する。
【0022】
まず、測定開始前の画像を画像記憶装置16に記憶させる。もし、それまでに何らかの原因で試料3の一部が落下し落下防止板11の上に載っていた場合には、画像比較装置15には、この画像が画像記憶装置16に記憶される。測定が開始されて、落下防止板11が退避のために移動しているときには、撮像装置7から送られるリアルタイムの画像には、落下防止板11と共に移動する落下試料の動きが現れる。画像比較装置15は、測定開始直前画像記憶装置16によって記憶された画像と、リアルタイムの画像を比較し、試料の移動を検知して、制御装置14に信号を出力する。制御装置14は、この信号を受けて、直ちに駆動機構13の動作を停止する。
【0023】
画像記憶装置16に、リアルタイムの画像を実際より短い時間(例えば0.5秒)遅らせて画像比較装置15に出力させることも可能である。この場合には、画像比較装置は15は、測定開始後の画像の0.5秒間における変化を検出することになる。測定開始後、落下防止板が始動したのちに、試料が落下して落下防止板11に捕止された瞬間に、画像比較装置15は画像の変化を検出し、制御装置14に信号を出力して、落下防止板11の移動を停止する。これによって、落下した試料の巻き込みなどによる不具合や故障を未然に防止できる。
【0024】
画像比較装置15は制御装置14に信号を送ると同時に、試料が落下したために落下防止板が停止したことを報知する。これに従って、表示装置17は、画面に警報を表示して、測定者に試料の除去を促すとともに、試料の落下が生じない試料容器などの使用を勧告することができる。
【0025】
本発明に係る蛍光X線分析装置の特徴は、上記の通りであるが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に沿う種々の形態が含まれる。たとえば、画像記憶装置16と画像比較装置15と制御装置14と表示装置17の機能の一部あるは全部を、PC(パソコン)に移管させることも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1、101 試料室
2、102 試料台
3、103 試料
4、104 測定室
5、105 X線管
6、106 検出器
7、107 撮像装置
8、108 シャッター
9、109 1次X線フィルター
10、110 コリメータ
11、111 落下防止板
12、112 駆動機構
13、113 駆動機構
14 制御装置
15 画像比較装置
16 画像記憶装置
17 表示装置
18、118 筺体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有し、その開口の上に試料を載置する試料台と、前記開口から落下する試料を捕止するための落下防止板と、前記試料の被測定部位に下方より前記開口を通してX線を照射するX線管と、前記試料の発する蛍光X線を検出する検出器と、前記試料の被測定部位を観察するためのカメラを備えた蛍光X線分析装置において、前記カメラの画像を記憶する画像記憶手段と、記憶された画像間の変化を検出する画像比較手段と、前記画像比較手段の出力によって前記落下防止板に落下試料が捕止されたことを検出する捕止検出手段と、この捕止検出手段の出力に基づいて前記落下防止板の動作を制御する制御手段と、前記落下防止板に落下試料が捕止されたことを報知する警報手段を備えたことを特徴とする蛍光X線分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−215483(P2012−215483A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81353(P2011−81353)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】