説明

螺子棒用取付クリップ

【課題】螺子棒にワンタッチで確実に取り付けられるクリップを提供する。
【解決手段】金属製バネ材からなる細長矩形形状の板状本体部12の両側短辺10tの略中央部から相対向する方向に所定幅の切込部12を形成し、この板状本体部10を側面視略コ字形状に折曲して両脚部22を形成する。両切込部12をその両側短辺10tから折曲部10fを越えて、両脚部22を接続する中央の中央接続部20に至るまで形成する。両切込部12の幅は被取付部材である螺子棒の谷径よりも小さく形成する。切込部12の両側短辺10tから所定位置に螺子棒に適合させるための穴部14を形成する。穴部14の内径は螺子棒の谷径とほぼ同じとする。これにより板状本体部10の両側短辺10tの切込部12を螺子棒に強制嵌合させて、螺子棒のネジ山谷部に前記穴部14を係合させる。板状本体部10の中央接続部20には各種ケーブルや管体等の固定具を取付けるための取付手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り下げボルトや所謂寸切ボルトと呼ばれる螺子棒にワンタッチで取り付けることができる金属製クリップに関するものであり、このクリップには各種のケーブルや管体等の固定具を取り付け、固定することができるものである。
また、このクリップは螺子棒ばかりでなく、鉄筋等の外周面に凹凸を有する棒状体或いは外周面が滑らかな棒状体にも取り付けることができるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、管体やケーブル等の固定具を取り付けるための取付金具としては、下記特許文献に記載のクリップがある。
この特許文献に記載のクリップは、本願出願人が先に提案したものであるが、建築構築物の骨組等を構成するアングル材、チャンネル材、H型鋼材、或いはフラットバー等の骨組部材の縁部にワンタッチで取り付けられる金属製バネ材からなるクリップであって、このクリップには管体やケーブル等の固定具を取り付けることができるものである。
しかしながら、上記のクリップは、吊り下げボルトや所謂寸切ボルト等の長尺ボルト(螺子棒)には全く取り付けることが出来ない。
【0003】
図8は、従来の螺子棒に取り付けることができる螺子棒用のクリップを示す説明図である。
この従来のクリップ60は、金属製バネ材を使用した細長板状本体部から形成され、例えばパイプ70を固定できるサドル71を螺子等によって固定する取付部61と、その取付部61の両側(図では上方側と下方側)から斜めに延長する両脚部62、62とから構成されているものである。
【0004】
このクリップ60の両方の脚部62、62のそれぞれの一方の側縁部に略楕円形形状の切欠部63が設けられている。
両方の脚部62、62の端部を手の指により把持して、矢印Dの方向に力を加え、クリップ60を中央部に向かって折り曲げるようにし、螺子棒80に切欠部63、63を係合させ、その後手の力を抜くことによって、クリップ60自身の弾性反発力により両脚部62、62が元の形状に復帰する力により、クリップ60が螺子棒80に取り付けられるものである。
クリップ60が螺子棒80に取り付けられた後に、サドル71によって管体70或いは各種ケーブル等を固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−275181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の図8に示した螺子棒用クリップにあっては、クリップの素材として金属製のバネ材を利用しているが、その形状から両脚部により螺子棒の挟持力或いは把持力はそれ程大きいものではなく、何かの衝撃で外れてしまう恐れがある。
というのも、その螺子棒に係合する切欠部63は、側縁部から設けられた切欠部であって、大きな開口部が存在しているからである。
また、螺子棒のネジ山と係合する切欠部の上方縁部と下方縁部は、ねじ山と斜めに係合するために、両者の係合が確実なものとならず、取り付け後、下方にクリップがずれてしまうという恐れもあった。
【0007】
そこで、本発明においては、螺子棒に取り付けることができる螺子棒用の取付クリップが、より良好に、より確実に螺子棒に取り付けられ、固定され得るものを提供することをその課題としている。
また、このクリップを螺子棒に取り付けるに際して、より簡単にワンタッチで行うことができることも本発明の課題である。
同時に、その製造も簡単で、製造コストの低減化も本発明の課題となる。
尚、勿論このクリップを螺子棒以外の棒状体に適用することもできるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、金属製バネ材からなる略矩形形状の板状本体部は、側面視略コ字形状を有し、2つの脚部とその中間の中央接続部とからなり、それぞれの脚部の端縁部の略中央部から中央接続部に向かって相対向する方向に所定幅の切込部を形成し、この切込部は脚部の根元部の折曲部を越えて中央接続部に至るまで形成し、前記両切込部の幅は、被取付部材である螺子棒の谷径よりも小さく形成し、前記切込部の脚部端縁部から所定位置のそれぞれには前記螺子棒に適合させるために、当該螺子棒の谷径とほぼ同じ内径を有する穴部を形成し、これにより、前記板状本体部の両切込部の両開口部位を被取付部材である螺子棒に強制嵌合させて、螺子棒のネジ山谷部に前記両穴部を係合させることができ、板状本体部の中央接続部には、各種ケーブルや管体等の固定具を取付けるための取付手段を設けた螺子棒用取付クリップである。
【0009】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、中央接続部の両側縁部から既に形成されている前記両脚部と同一方向にそれぞれ更に脚部を延設し、これら両脚部のそれぞれの端縁部の略中央部から中央接続部に向かって相対向する方向に所定幅の切込部を形成し、この切込部は脚部の根元部の折曲部を越えて中央接続部に至るまで形成し、これら両切込部の幅は、被取付部材である螺子棒の谷径よりも小さく形成し、前記切込部の脚部端縁部から所定位置のそれぞれには螺子棒に適合させるために、当該螺子棒の谷径とほぼ同じ内径を有する穴部を形成し、これら両脚部の長さを既設の両脚部の長さと異ならせることによって、交差した螺子棒に取り付けることができるようにしたことを特徴とする螺子棒用取付クリップである。
【0010】
本発明の第3のものは、上記第1又は第2の発明において、前記各種ケーブルや管体等の固定具を取り付けるための取付手段が、螺子等を挿通できる貫通孔から形成されていることを特徴とする螺子棒用取付クリップである。
【0011】
本発明の第4のものは、上記第1又は第2の発明において、前記各種ケーブルや管体等の固定具を取り付けるための取付手段が、結束バンド等の固定具を挿通させるために、中央接続部に相対向して位置する切込部の端部にそれぞれ形成された2つの挿通孔部から成ることを特徴とする螺子棒用取付クリップである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1のものにおていは、板状本体部の両脚部の端縁部から相対向する方向に設けた切込部が、それぞれの脚部から折曲部を越えて中央接続部まで設けられていることにより、切込部の開口部から螺子棒を強制嵌合させる際に、良好に切込部が拡開して螺子棒が穴部に係合することができるのである。
また、穴部の内径は、螺子棒のネジ山の谷径と略同一なために、一度穴部に螺子棒のねじ山谷部が係合すると、両者の係合はほぼ完全なものとなり、外れてしまう恐れが無くなるのである。というのも穴部が螺子棒の両ネジ山間の谷部と係合するからである。
【0013】
更に、両者の係合がねじ山の谷部と係合しているために、本発明に係るクリップは、ナットと同様に、螺子棒の周りで回転させると、ネジ山に沿ってその長手方向に上昇又は下降することができる。
これは、例えば吊り下げボルトに本発明のクリップが取り付けられると、これを回転させて、その取付高さ位置の微調整を行うことも可能となるのである。
本発明に係るクリップは、螺子棒に取り付けられると、その後、クリップの中央接続部に設けられた取付手段を利用して各種のケーブルや管体等の固定具を取り付けることができるものである。
【0014】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、板状本体部の中央接続部の両側縁から更にそれぞれ脚部を、既設の両脚部と同じ方向に設け、これら新たに設けた両脚部の構成を既設の脚部と同一に形成し、且つこれら新たに設けた両脚部の長さを既設の両脚部の長さと異ならせることにより、交差した螺子棒に本発明に係るクリップを取り付けることが出来ることとなるのである。
繰り返すと、前記第1の発明においては、1本の螺子棒に取り付けることができるのであるが、本第2の発明においては、直角に交差する螺子棒の交差部分に取り付けることができるのである。
更に換言すると、この発明に係るクリップは、ケーブルや管体等を固定する固定具を取り付けることができると同時に、2本の直交する螺子棒同士を仮に連結固定することもできる仮止め機能をも有することとなるのである。
【0015】
本発明の第3のものは、ケーブルや管体等の固定具を取り付ける取付手段として貫通孔を設けたが、この貫通孔を利用して、螺子、ボルト・ナット、リベット等の固定手段を用いて各種の固定具を取り付け固定することができる。
例えば、各種形状のサドルを固定して各種ケーブルや管体等を固定することができ、またフック等を固定してケーブル等を保持することができるのである。
【0016】
本発明の第4のものは、同様に取り付け手段として、結束バンド等を挿通させることができる挿通孔部を中央接続部に位置する切込部の端部にそれぞれ設けているために、市販の各種の合成樹脂製の結束バンドをそれら両挿通孔部に挿通して、ケーブルや管体等を簡単に固定することができるものとなる。
また、挿通孔部が切込部の端部に形成されている関係上、本発明に係るクリップを螺子棒に取り付けた後に、切込部を利用してこの切込部の側から結束バンド等を容易に挿通させ、その後挿通孔部内に移行させて適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る一実施形態の全体を示しており、その(A)が板状本体部を成形する前の状態を示す平面図、その(B)が成形後の完成品の状態を示す斜視図である。
【図2】上記実施形態に係るクリップを螺子棒に取り付ける状態を示す説明図であり、その(A)が取り付ける前の状態を示し、その(B)が取り付け後の状態を示している。
【図3】上記実施形態に係るクリップを螺子棒に係合する初期状態を図示する平面説明図である。
【図4】上記実施形態に係るクリップにケーブル等の固定具である結束バンドを取り付けた状態を示す説明図である。
【図5】上記実施形態に係るクリップに各種の固定具を取り付けた状態を示す説明図である。
【図6】上記実施形態に係るクリップ2個を直交する方向に固定し、これを螺子棒に取り付けた状態を示し、その(A)が正面図、その(B)が左側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態を示し、脚部を同一方向に4つ設けたものであり、その(A)が正面図、その(B)が左側面図、その(C)が平面図、その(D)が背面図、その(E)が展開図を示している。
【図8】従来の螺子棒用取付クリップを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を用いて本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る一実施形態に係るクリップの全体を示しており、その(A)が板状本体部を成形する前の状態を示す平面図、その(B)が成形後の完成品の状態を示す斜視図である。
【0019】
板状本体部10は、金属製のバネ材を使用しており、例えば、バネ用ステンレス鋼材であれば、SUS301やSUS304等を使用することができ、スチール製であれば、SK3〜SK5等のSK材を使用することができる。即ち、この板状本体部10の材質は、特殊鋼或いは炭素鋼と一般に呼ばれるもので、外力が加えられた後に、その外力が取り除かれると元の形状に復帰できる性質(弾性力)を有するものであればよい。
この板状本体部10は、縦横のサイズが略20mm×70mm程度の細長い略矩形形状のものであり、その厚みは約0.8mmであるが、必要に応じて適宜大きさのものを採用することができる。
【0020】
この板状本体部10の両側の短辺(端縁部)10t、10tの略中央部から、相対向する方向に切込部12、12をそれぞれ設ける。
これらの切込部12、12は、後にプレスされ、折り曲げられる折曲部10f、10fを越えて中央接続部20の部分にまで延長している。
【0021】
切込部12の両側短辺10t、10tのそれぞれの開口部12kから少し内側部位に切込部12の横幅よりも大きい内径を有する穴部14が形成されている。
この穴部14に、後に説明するが、螺子棒が係合するのである。
更に、それぞれの切込部12の中央部側端部には、挿通孔部16が設けられている。
この挿通孔部16、16には後に説明する結束バンドが挿通されるのであるが、この挿通孔部16は、略楕円形形状を有し、その長辺が切込部12の横幅よりも大きく形成している。
【0022】
また中央接続部20の略中央部には、略円形の穴部18が設けられ、この穴部18を利用して、螺子、ボルト・ナット、リベット等の固定手段を用いて、後の図5において説明するが、各種のサドル部材やフック等が固定されるのである。
このサドル部材やフックには各種のケーブルや管体等が固定又は保持されることとなる。
【0023】
尚、図1(A)の状態から、プレスされて、図1(B)の形状に成形されるのであるが、本発明に係るクリップ10は、図示した通り、両端部側の2つの脚部22、22と、これら脚部22、22を接続する中央接続部20とからなり、側面視略コ字形状を有するものである。
そして、切込部12が、両側短辺10t、10tから相対向する方向に設けられ、脚部22から折曲部10fを越えて中央接続部20の部分にまで形成されている点が重要であり、本発明の一つの特徴部分となるものである。
【0024】
図2は、本発明に係るクリップ10が螺子棒30に取り付けられる状態を示す説明図であり、その(A)が取り付ける前の状態を示し、その(B)が取り付け後の状態を示している。
図2(A)において、クリップ10の両脚部22、22を上下の位置にして、切込部12、12の開口部12k、12kを螺子棒30の側に向けて強制的に嵌合する。
【0025】
このクリップ10は、鋼製バネ材を使用しているために、次の図3により説明するが、強制的に嵌合することにより、前記開口部12k、12kが拡開して、螺子棒30のネジ山の谷部にクリップ10の穴部14、14が係合するのである。
係合した後は、穴部14、14の内径が螺子棒30の谷径と略同一に形成されている関係上、切込部12の開口部12kの拡開状態が元に戻って、元の間隔に復帰し、螺子棒30と穴部14との両者の係合がより確実なものとなるのである。
図2(B)に図示した状態が、この両者の係合を示しており、切欠部12の開口部12kの間隔が元に復帰した状態を示している。
【0026】
図3は、上記実施形態に係るクリップ10を螺子棒30に係合する初期状態を図示する平面説明図である。
この図において、クリップ10の切込部12の開口部12kが螺子棒30の谷部に係合して、拡開した状態を示している。
この状態で、図からも解る通り、直交する基準線x軸とy軸において、中央接続部20が基準線y軸から基準線x軸の方向に少しだけ折曲することができるのである。
【0027】
図1(A)の折曲前の状態において、切込部12の開口部12kを拡開しようとすると先ず不可能なのであるが、この板状本体部10を図1(B)のようにプレスして略コ字形状とすることにより、図3から解る通り、切込部12の開口部12kが拡開できることとなるのである。
そして、螺子棒30のネジ山谷部に穴部14が係合すると、その素材の特質により切込部12の開口部12kは、元に戻り、その間隔が初期状態となり、螺子棒30から本発明に係るクリップは分離できなくなるのである。
【0028】
図4は、上記実施形態に係るクリップにケーブル等の固定具である結束バンドを取り付けた状態を図示する説明図である。
この図に示した通り、本発明に係るクリップの板状本体部10の両脚部22、22に形成された穴部14、14を螺子棒30に係合した後、市販の合成樹脂製の結束バンド40を、中央接続部20の上下の両側に形成された挿通孔部16、16に挿通して取り付け、図示はしていないが、ケーブル等をこの結束バンド40で固定することにより、本発明に係るクリップによって、ケーブル等を支持し、固定することが出来るのである。
【0029】
結束バンド40は、可撓性のある合成樹脂製の長尺バンドからなり、一方端部に挿通孔が設けられた固定部41を有し、他方端部42の一面には凹凸部が設けられたのもから成り、他方端部42を固定部41に挿通して締め付けると、凹凸部が挿通孔に設けられている係合爪部に固定されるものである。
この結束バンド40によりケーブルばかりでなく、管体等も固定されるのである。
また、この板状本体部10の中央接続部20には、その中央部に貫通孔18も設けられており、図5に図示したサドル部材等を螺着することもできるのである。
更に、次図において説明するが、この貫通孔18にはフック等のケーブル支持具をもリベット等を利用して固定することもできる。
【0030】
図5は、上記実施形態に各種の固定具を取付けた状態を示す説明図である。
図5(A)は、前図4に図示した結束バンド40を板状本体部10に取り付けた状態を示している。
図5(B)は、金属製フリーバンド43を板状本体部10に螺子により固定したものを示している。このフリーバンド43は、パイプ等を挿通して、その開放端部43tを本体43hに係止し、締め付けネジ43sを締め付けて前記パイプ等を固定できる。
【0031】
図5(C)は、ワニ型クランプ44を板状本体部10に固定したものを示しており、図5(D)は、フック45を板状本体部10に固定したものを示しており、図5(E)は、輪状サドル46を板状本体部10に固定した状態を示しており、図5(F)は、横断面略矩形形状のケーブル等の支持部材47をL字型ブラケット48を介して支持した状態を図示している。
このように、本発明に係るクリップには、種々のケーブルや管体等を支持する固定具を取り付け、固定することが出来るのである。
【0032】
図6は、本発明に係るクリップ2個を、略直交する方向に固定したものを図示しており、これを螺子棒に取り付けた状態を示し、その(A)が正面図、その(B)が左側面図である。
このように、本発明に係るクリップを直交する方向に螺着或いは溶接着して使用することにより、螺子棒30、30、例えば鉄筋と寸切ボルト等を直交するように配設する際の交差仮止め金具として使用することもできるのである。
【0033】
図7は、前図6において説明したクリップにおいて、脚部を同一方向に設けるようにして一体的に成形した第2の実施形態を図示しており、その(A)が正面図、その(B)が左側面図、その(C)が平面図、その(D)が背面図、その(E)が展開図を示している。
この実施形態においては、展開図において、略十文字形状の金属製バネ材からなる板状本体部10において、これらの十文字形状の各先端部分を同一方向に折曲して、4つの脚部22n、22m、…を形成するのである。
【0034】
しかも、これらの4つの脚部のうち対向する一対ずつの長手方向長さをそれぞれ同一とし、これら2組の脚部のうちの一方の組の脚部22n、22nの長さを他方の組の脚部22m、22mの長さよりも長く形成するのである。
それぞれの脚部22n、22m、…に形成する切込部12の形態は、上記実施形態と同一である。つまり、折曲部10fを越えて中央接続部20に至るまで形成するのである。
取付手段は円形の貫通孔18で、前記実施形態と同じである。
【0035】
この第2の実施形態においては、例えば鉄筋と寸切ボルトの交差部位にこのクリップを使用することにより直角に鉄筋と寸切ボルトを配設して仮止めすることが簡単に出来るのである。
従来の鉄筋の交差部位の固定方法は、針金で縛り付けて固定していたので、この鉄筋の交差部位の仮止め手段又は固定手段としても極めて便利なものと成るのである。
このように、本発明においては、螺子棒用として開発したが、このクリップを螺子棒ばかりでなく、鉄筋等の凹凸のある鋼製棒状体にも適用することができる。
勿論、凹凸のない、単なる棒状体に取り付けて使用することもできるのである。
しかし、本発明の構成上、被取り付け部材としては、凹凸のある、即ち横断面径に大小のある棒状体、即ち螺子棒や鉄筋等が最適に被取り付け部材と成る。
このように、第2の実施形態においては、ケーブルや管体等を固定する機能ばかりでなく、鉄筋等の棒状体を直角に仮止めする固定具としての機能も発揮するものとなる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明においては以下の通り設計変更することができる。
まず本発明に係るクリップは、寸切ボルトや吊り下げボルト用のものとして開発したが、螺子棒以外に、外周面に凹凸を有する鉄筋コンクリート用の鉄筋や、外周面が滑らかな単なる棒状体にも取り付けることもできる。
またこのクリップの取付手段である貫通孔を利用して螺子等により、このクリップを壁等に固定することも可能である。この場合には寸切ボルトがこのクリップによって支持されることとなる。
このように本発明に係るクリップはその用途又は応用範囲が極めて広範なものであるため、本願の特許請求の範囲に記載した構成を有するものは、上記した用途に限られず、その技術的範囲に属することとなる。
【0037】
板状本体部の縦横のサイズは、適宜必要に応じて設計変更することが出来るが、厚みは取り付ける螺子棒のネジ山間の間隔サイズに適合するように設計する。
上記第1の実施形態において、図1(A)において縦の長さを横の長さよりも大きく設計することもできる。
切込部の横幅は、取り付ける螺子棒の谷径よりも小さく設計し、穴部の内径は、その谷径と略同一とする。
本発明においては、切込部が脚部から折曲部を越えて中央接続部まで設けられている点が重要となる。この構成により切込部が適切に拡開するからである。
【0038】
折曲部の位置も自由であり、この位置により脚部の長さも決定できるし、中央接続部のサイズも任意に設定することができる。
脚部は、板状本体部に2つのみ形成するのもよいし、上記第2の実施形態のように、板状本体部の中央接続部の4つの方向にそれぞれ同一方向に直角に形成することもできる。
4つの脚部を形成するときは、対向位置にある一対の1組の脚部の長さと、他の一対の1組の脚部の長さを異ならせる必要がある。螺子棒を交差できるようにするためである。
4つの脚部を設けた場合には、本発明に係るクリップは、ケーブルや管体等の固定具を取り付けるばかりでなく、2本の螺子棒や棒状体を直角に交差するように仮止めする固定具としての機能をも持たせることができるものとなる。
この場合には、2本の螺子棒、或いは鉄筋と寸切ボルトを直角に交差させ、且つ接触させた状態に仮止めすることができる。また、鉄筋と寸切ボルトを直角に仮止めするための確認治具とすることもできる。
【0039】
中央接続部に形成する取付手段も全く自由に設計することができる。
上記実施形態では、その一つとして一番単純な構成である貫通孔として実施したが、この貫通孔の部位に雌ネジを形成した部材を設けることもできるし、その貫通孔自体にネジ山を形成して、直接螺着できるようにすることもできる。
貫通孔は、円形形状なく、長手方向に長い長孔とすることもできる。
【0040】
更に、上記実施形態では、挿通孔部を中央接続部の両側にそれぞれ設け、且つ切込部の端部に形成したが、この切込部と連続的に形成せずとも勿論実施可能である。
しかし、挿通孔部を中央接続部の対向する位置にある切込部端部に設けることにより、螺子棒に本発明に係るクリップを取り付けた後に、切込部の切り込みを利用してこの結束バンドを楽に取り付けることができるために、切込部の端部に形成することが好ましいものとなる。
挿通孔部の形状も全く自由に設計することができ、上記実施形態では、略楕円形形状に形成したが、これを略三角形形状とすることも自由である。
結束バンド等が適合し易い形状とすればよいのである。
【0041】
穴部は、切込部の開口部から上記実施形態では、約3mm乃至5mm程度の位置に設けているが、その位置も全く自由に設計変更することができる。この穴部の位置により、螺子棒と中央接続部の間隔距離も適宜設定することができる。
以上、本発明は、簡易な構成であるが、極めて便利にワンタッチで螺子棒に取り付けることができるものであって、しかもその取り付けが極めて確実で、このクリップに各種のケーブルや管体等を固定できる固定具を固定することができるものを提供することができた。
【符号の説明】
【0042】
10 板状本体部
10t 両側短辺
10f 折曲部
12 切込部
12k 開口部
14 穴部
16 挿通孔部
18 貫通孔
20 中央接続部
22 脚部
22n、22m 脚部
30 螺子棒
40 結束バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製バネ材からなる略矩形形状の板状本体(10)部は、側面視略コ字形状を有し、2つの脚部(22, 22)とその中間の中央接続部(20)とからなり、
それぞれの脚部(22)の端縁部(10t) の略中央部から中央接続部(20)に向かって相対向する方向に所定幅の切込部(12)を形成し、この切込部(12)は脚部(22)の根元部の折曲部(10f) を越えて中央接続部(20)に至るまで形成し、
前記両切込部(12, 12)の幅は、被取付部材である螺子棒の谷径よりも小さく形成し、前記切込部(12, 12)の脚部端縁部から所定位置のそれぞれには前記螺子棒に適合させるために、当該螺子棒の谷径とほぼ同じ内径を有する穴部(14)を形成し、
これにより、前記板状本体部(10)の両切込部(12, 12)の両開口部(12k, 12k)を被取付部材である螺子棒に強制嵌合させて、螺子棒のネジ山谷部に前記両穴部(14, 14)を係合させることができ、
板状本体部(10)の中央接続部(20)には、各種ケーブルや管体等の固定具を取付けるための取付手段(16, 18)を設けた螺子棒用クリップ。
【請求項2】
中央接続部(20)の両側縁部から既に形成されている前記両脚部(22, 22)と同一方向にそれぞれ更に脚部(22n, 22n)を延設し、これら両脚部(22n, 22n)のそれぞれの端縁部の略中央部から中央接続部(20)に向かって相対向する方向に所定幅の切込部(12)を形成し、この切込部(12)は脚部(22n)の根元部の折曲部(10f)を越えて中央接続部(20)に至るまで形成し、
これら両切込部(12, 12)の幅は、被取付部材である螺子棒の谷径よりも小さく形成し、前記切込部(12, 12)の脚部端縁部から所定位置のそれぞれには螺子棒に適合させるために、当該螺子棒の谷径とほぼ同じ内径を有する穴部(14, 14)を形成し、
これら両脚部(12n, 12n)の長さを既設の両脚部(12, 12)の長さと異ならせることによって、交差した螺子棒に取り付けることができるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の螺子棒用クリップ。
【請求項3】
前記各種ケーブルや管体等の固定具を取り付けるための取付手段が、螺子等を挿通できる貫通孔(18)から形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の螺子棒用クリップ。
【請求項4】
前記各種ケーブルや管体等の固定具を取り付けるための取付手段が、結束バンド等の固定具を挿通させるために、中央接続部(20)に相対向して位置する切込部(12, 12)の端部にそれぞれ形成された2つの挿通孔部(16, 16)から成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の螺子棒用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−270719(P2009−270719A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−117075(P2009−117075)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(504145537)有限会社三神製作所 (9)
【Fターム(参考)】